説明

積層圧電素子及びこれを用いた液滴吐出ヘッド並びにこれを有する画像形成装置

【課題】積層圧電素子において側面からの電極取り出しを可能として配線数を低減する。
【解決手段】第1電極、圧電材料、第2電極、圧電材料と順に複数積層して構成された積層圧電素子であって、前記圧電材料を挟んで対向する前記第1電極と前記第2電極に電圧を付与することにより前記圧電材料が能動的に伸縮可能となる前記積層圧電素子の活性部が、行方向及び列方向の2次元的に複数配列され、前記第1電極は、前記2次元的に配列された複数の活性部のうち行方向の複数の活性部で共通であり、かつ、前記第2電極は、前記2次元的に配列された複数の活性部のうち列方向の複数の活性部で共通であることを特徴とすることを特徴とする積層圧電素子を提供することにより前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層圧電素子及びこれを用いた液滴吐出ヘッド並びにこれを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被記録媒体上に画像を形成する画像形成装置として、インクを液滴としてノズル(液滴吐出口)から被記録媒体に向けて吐出し、画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置においても、写真プリントと同様の高精細、高画質の画像を形成することが望まれており、そのためにはノズルを小さくしてノズルから吐出されるインク液滴を小さくするとともに、ノズルを高密度に配置する必要がある。
【0004】
しかしノズルピッチを小さくしてノズルを1列に高密度配置するのは製造上等の制約があり、純粋なノズルピッチを縮めずにノズル配置を高密度化するためにはノズルを(2次元)マトリクス状に配置することが必須となる。
【0005】
その一方で、高粘度のインクを吐出するためには、インクを吐出するための発生圧力が大きくなければならない。例えば、圧電素子(ピエゾ素子)の変形によって圧力室の一部を構成する振動板を変形させ、圧力室の容積を変化(減少)させて圧力室内のインクに圧力を加えてノズルから液滴として吐出する圧電方式の場合には、圧電素子を複数積層することで発生圧力を大きくすることが考えられる。
【0006】
例えばこのような積層圧電素子を用いたものとして、圧電材料と導電性材料の中間電極を交互に積層し焼成して形成した積層圧電素子を、スライシング等により電極を持たない基部(共通台座)を残してカットして溝を形成して、各個々の圧電素子を機械的に分離独立させ、各圧電素子単体ごとに、それぞれの側面から1対の対向電極を引き出すようにして、積層された電極を利用して最表面側に電極を取り出すようにして形成した圧電素子を有するインクジェットヘッドが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0007】
また、インクを加熱して気泡を発生させ、この気泡が成長する際の膨張エネルギーでインクを吐出させるバブルジェット方式でノズルをマトリクス配置したものとして、例えば、複数のセグメント線及びコモン線が格子状に組み合うように配置され、各セグメント線と各コモン線が交叉する点の近傍に、ノズル、ノズルにインクを供給するインク流路及び発熱抵抗体が配置された平面プリンタが知られている(例えば、特許文献2等参照)。
【特許文献1】特開平8−11304号公報
【特許文献2】特開平3−261560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものでは、積層圧電素子を形成した後、一旦溝をつけてから溝の側面に電極を形成する必要があるため、ノズル高密度配置のため溝が細い場合や、高粘度インクを吐出したいとき等の大きな発生力が必要な場合には、圧電総数が多く積層圧電素子の厚みが厚く、溝が深くなり、そのため溝の底部が隠れてしまい、側面に電極を形成することが困難あるいは不可能であるという問題がある。
【0009】
また、上記特許文献2に記載のものは、バブルジェット型のインクジェットプリンタに限定されており、高粘度のインクを吐出するのには向いておらず、さらに、記録画像の階調制御を行うことができないため高画質の画像を形成することができないという問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、積層圧電素子において側面からの電極取り出しを可能として配線数を低減しつつノズルの高密度配置を実現し、クロストークを防止するとともに階調制御を可能として高画質の画像形成を行なえるようにした積層圧電素子及びこれを用いた液滴吐出ヘッド並びにこれを有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1電極、圧電材料、第2電極、圧電材料と順に複数積層して構成された積層圧電素子であって、前記圧電材料を挟んで対向する前記第1電極と前記第2電極に電圧を付与することにより前記圧電材料が能動的に伸縮可能となる前記積層圧電素子の活性部が、行方向及び列方向の2次元的に複数配列され、前記第1電極は、前記2次元的に配列された複数の活性部のうち行方向の複数の活性部で共通であり、かつ、前記第2電極は、前記2次元的に配列された複数の活性部のうち列方向の複数の活性部で共通であることを特徴とすることを特徴とする積層圧電素子を提供する。
【0012】
また、請求項2に示すように、前記積層された第1電極及び第2電極の配線をそれぞれ前記積層圧電素子の端面から取り出すようにしたことを特徴とする。
【0013】
これにより、電極配線の取り出しが容易となりノズルの高密度化を図るとともに、制御回路及び駆動ドライバの個数を削減することが可能となり、ヘッド製造時のハンドリングが容易となる。
【0014】
また、請求項3に示すように、前記第1電極及び第2電極への電圧付与によって活性化しない不活性部の少なくとも一部が凹形状あるいは貫通形状に形成されていることを特徴とする。これにより、各活性部が独立に形成され、各活性部における駆動変位量が拡大されるとともに、隣り合った活性部同士のクロストークを防止することが可能となる。
【0015】
また、請求項4に示すように、前記2次元的に配列された前記第1電極と前記第2電極から成る電極対が、それぞれ独立に駆動可能な複数の領域に分割されたことを特徴とする。特に、請求項5に示すように、前記複数の領域は、前記2次元的配列の略中央部を通り前記行方向及び列方向に平行な2直線によって4分割されていることを特徴とする。
【0016】
これにより、同時に駆動できる活性部の個数を増やすことが可能となる。
【0017】
また、請求項6に示すように、前記第1電極及び第2電極はそれぞれ前記活性部に関し一つ置きに共通であることを特徴とする。これによっても隣り合う活性部でのクロストークを防止することができる。
【0018】
また、請求項7に示すように、前記第1電極及び第2電極はそれぞれ前記活性部に関して一つ置きに共通であり、かつ隣り合った2つの行方向の第1電極が、千鳥状に互い違いに共通であり同時に駆動されるように接続されたことを特徴とする。
【0019】
これにより、隣り合う活性部でのクロストーク及び液滴干渉を防止することができる。
【0020】
また、請求項8に示すように、前記電極対を、前記行方向及び列方向の2次元方向の他に、これらに垂直な積層方向に対しても、層毎にそれぞれ独立に駆動可能なように重ねて形成したことを特徴とする。
【0021】
これにより、電圧を変えずに駆動変位量を可変とすることにより階調制御が可能となるとともに、駆動タイミングを可変とすることができる。
【0022】
また、同様に前記目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層圧電素子を駆動アクチュエータとして用いたことを特徴とする液滴吐出ヘッドを提供する。
【0023】
これにより、電極配線取り出しが容易となりノズルの高密度化が実現され、また高粘度インクの吐出及び階調制御が可能となる。さらにクロストーク及び液滴干渉の防止が可能となる。
【0024】
また、同様に前記目的を達成するために、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の液滴吐出ヘッドを有することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0025】
これにより、高画質な画像形成が可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る積層圧電素子及びこれを用いた液滴吐出ヘッド並びにこれを有する画像形成装置によれば、電極配線の取り出しが容易となりノズルの高密度化を図るとともに、制御回路及び駆動ドライバの個数を削減することが可能となり、ヘッド製造時のハンドリングが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る積層圧電素子及びこれを用いた液滴吐出ヘッド並びにこれを有する画像形成装置について詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る積層圧電素子を用いた液滴吐出ヘッドを有する画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。
【0029】
図1に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(インクジェット記録ヘッド)12K、12C、12M、12Yを有する印字部と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
【0030】
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0031】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って
移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
【0032】
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0033】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0034】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0035】
ベルト33は、記録紙16幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
【0036】
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
【0037】
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0038】
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0039】
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0040】
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、図2に示すように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一
辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
【0041】
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0042】
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0043】
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
【0044】
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0045】
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
【0046】
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0047】
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
【0048】
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)
がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0049】
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
【0050】
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
【0051】
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0052】
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0053】
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
【0054】
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
【0055】
次に、印字ヘッド(液滴吐出ヘッド)について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとし、図3に印字ヘッド50の平面透視図を示す。
【0056】
図3に示すように、本実施形態の印字ヘッド50は、インクを液滴として吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、図示しない共通流路から圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
【0057】
図3に示すように、各圧力室52は、上方から見ると略正方形状をしており、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端にインク供給口53が設けられている。
【0058】
また、図3中のIV-IV 線に沿った断面図を図4に示す。
【0059】
図4に示すように、圧力室ユニット54は、インクを吐出するノズル51と連通する圧力室52によって形成され、圧力室52には、供給口53を介してインクを供給する共通流路55が連通するとともに、圧力室52の一面(図では天面)は振動板56で構成され、その上部には、振動板56に圧力を付与して振動板56を変形させる積層圧電素子58が接合されている。
【0060】
詳しくは、後述するが、積層圧電素子58は、電極層と圧電体層が交互に積層されて形成されている。積層圧電素子58は、2つの電極(共通電極と個別電極(詳しくは後述))によって挟まれた圧電素子が積層されて構成されており、これらの電極に駆動電圧を印加することによって圧電素子が変形して(結局積層圧電素子58全体が変形して)振動板56が押され、圧力室52の容積が縮小されてノズル51からインクが吐出されるようになっている。積層圧電素子58がもとに戻ると、圧力室52の容積が元の大きさに回復し、共通流路55から供給口53を通って新しいインクが圧力室52に供給されるようになっている。
【0061】
また、図5は他の印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。図5に示すように、複数の短尺ヘッド50’を2次元の千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、これらの複数の短尺ヘッド50’全体で印字媒体の全幅に対応する長さとなるようにして1つの長尺のフルラインヘッドを構成するようにしてもよい。
【0062】
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
【0063】
図6に示したように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0064】
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0065】
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
【0066】
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0067】
キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャ
ップ64で覆うようになっている。
【0068】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)に摺動可能である。ノズル面50Aにインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル面50Aに摺動させることでノズル面50Aを拭き取り、ノズル面50Aを清浄するようになっている。
【0069】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ64に向かって予備吐出が行われる。
【0070】
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度が上昇して固化した劣化インクの吸い出しが行われる。
【0071】
すなわち、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ(積層圧電素子58)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(積層圧電素子58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって積層圧電素子58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル面50Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
【0072】
また、ノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
【0073】
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、積層圧電素子58を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ67で吸引する動作が行われる。
【0074】
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図6で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
【0075】
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
【0076】
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画
像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0077】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
【0078】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒーター89を制御する制御信号を生成する。
【0079】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒーター89を駆動するドライバである。
【0080】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0081】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0082】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50のアクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0083】
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサー(図示省略)を含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供するものである。
【0084】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行うようになっている。
【0085】
以下、本発明にかかる積層圧電素子の構成について説明する。
【0086】
図8は、本発明の積層圧電素子の第1実施例を示す平面図である。図8に示すように、本発明の積層圧電素子58は、複数の帯状の行電極(第1電極)90(X1 行、・・・、Xm 行)と複数の帯状の列電極(第2電極)92(Y1 列、・・・、Yn 列)が薄膜状の圧電体94を挟んで格子状に組み合うように構成されている。
【0087】
なお、ここで格子状と言うのは、各行電極90と列電極92は必ずしも直交するのではなく、図8に示すように列電極92が行電極90に対して90°よりもわずかに小さい角度で斜めに交わるように配列されている状態をも言うものとする。
【0088】
そして、この各行電極90と各列電極92との交点96は、図3に示すように印字ヘッド50上に千鳥状の2次元マトリクス状に配列された各圧力室52の位置に対応し、その交点96を通る行電極90と列電極92の両方に電圧が印加されたときにその間に挟まれた圧電体94の部分が変形して圧力室52内のインクがその圧力室52に連通するノズル51から吐出されるようになっている。すなわち、この行電極90と列電極92との交点96の部分は、インクを吐出する際に駆動する活性部となる。
【0089】
このとき、交点96において圧電体94を挟む行電極90と列電極92はこの活性部を活性化させるための電極対を形成する。図8に示すように、各行電極90(X1 行、・・・、Xm 行)は、各行方向の複数の活性部において共通となっており、同時に各列電極92(Y1 列、・・・、Yn 列)は、各列方向の複数の活性部において共通となっている。
【0090】
図9(A)に、図8に示す積層圧電素子58の一部を拡大して斜視図で示す。図9(A)は、図8左下の、行電極90(X1 、X2 、X3 )及び列電極92(Y1 、Y2 、Y3 )の部分を示すものである。図9(A)に示すように、各行電極90、列電極92は、それぞれ複数(図9(A)に示す例では3層)積層されている。また、図9(A)では図示は省略したが、各行電極90と列電極92で形成される電極対の間にはそれぞれ活性部となる薄膜の圧電体94(図8あるいは図10参照)が挟まれている。
【0091】
また、図9(A)に示すように、それぞれ複数層に積層された各行電極90(X1 、X2 、X3 )同士は、積層圧電素子58の側面である端部90aにおいてそれぞれ導通するように接続されており、この端部90a(積層圧電素子58の側面)から行電極90への配線を取り出すことができるようになっている。また、列電極92についても同様であり、各列電極92(Y1 、Y2 、Y3 )同士は、積層圧電素子58の他の側面である端部92aにおいてそれぞれ導通するように接続されており、ここから列電極92への配線を取り出すことができる。
【0092】
図9(A)中の行電極90と列電極92の交点96部分のX-X 線に沿った断面図を図10に示す。図10に示すように、積層圧電素子58の行電極90と列電極92の交点96においては、行電極90と列電極92が圧電体94を挟んで交互に積層されている。
【0093】
行電極90及び列電極92は、一方が共通電極、他方が個別電極であり、例えば、行電極Xi に電圧をかけておき、列電極Yj を選択して電圧をかけると(i,j)の位置(図8あるいは図3で、下からi番目、左からj番目)にある圧力室52からインクが吐出されるようになっている。このようにして、2次元マトリクス状に配列された任意の活性部を自由に駆動することができる。
【0094】
また、このとき行電極90のX1 行に対する列電極92のY1 、・・・、Yn 列はいずれも同時駆動が可能であり、行電極90のX1 行を電圧オンにして(X2 、・・・、Xm
行は電圧オフとする。)、これに対して(X1 行で)インクを吐出すべきノズルに対応する列電極92をY1 、・・・、Yn 列の中から選択し、電圧オンとすることにより、X1 行上の所定のノズルからインク吐出が行われる。
【0095】
次に行電極90のX2 行を電圧オンとして(X2 行以外の行電極90は電圧オフとする。)、これに対し(X2 行で)インクを吐出すべきノズルに対応する列電極92をY1 、・・・、Yn 列の中から選択し、電圧オンとすることにより、X2 行上の所定のノズルからインクが吐出される。
【0096】
以下、順次X3 行からXm 行上のノズルからのインク吐出を行い、終了すると記録紙16を紙送りして再びX1 行から同様にして駆動を行う。従って、駆動周波数は純粋な1素子個別電極と比較して遅くなる。しかし、その分、駆動ドライバ数を低減することができるという効果を有する。
【0097】
このようにm行n列に配列された行電極90及び列電極92を駆動することにより、m×n個の圧力室52に対応するノズル51からインクが吐出されて画像が形成される。このとき各行電極90、列電極92から引き出す配線の数は、それぞれ端部90a、92aから引き出すことができるため、行電極90についてm本、列電極92についてn本の計m+n本となる。従って、m×n個の各個別の電極(圧電体活性部)をm+n本の配線で駆動することができる。このように本実施形態では、電極から取り出す配線数を削減することが可能となる。
【0098】
なお、m+n駆動で、圧電体の積層方向に別々に各電極(行電極90、列電極92)から配線を取り出すことにより、1つの圧力室に対して複数のアクチュエータを持つ構成とすることができる。さらに、この場合、この1つの圧力室に対して積層された複数のアクチュエータを別々に配線された電極により独立に駆動することで圧力室に発生する吐出圧力を制御して、吐出するインクの粒径を制御することにより階調制御を行うことが可能となる。
【0099】
また、1つの圧力室に対応した複数のアクチュエータのうち一部をリフィル駆動用のアクチュエータとして使用することも可能である。
【0100】
なお、積層圧電素子58は、以上説明したように圧電体94と行電極90、列電極92を交互に積層して形成された全部一体の構成としてもよいし、あるいは図9(A)の積層圧電素子58の角部に太枠で示したような、行電極90も列電極92も存在しない駆動に使用されない不要部分(不活性部)100の一部または全部を、例えばサンドブラスト等により削り取ることにより、この不要部分(不活性部)100を凹形状あるいは貫通形状とすることにより各活性部を独立に駆動できるようにして、積層圧電素子58の変位効率を向上させるような構成としてもよい。
【0101】
例えば、図9(B)の(1)に符号100で示す積層圧電素子58の角部のような、行電極90も列電極92も存在しない不要部分を、図9(B)の(2)のように除去してもよい。このとき図9(B)の(2)に示すように、複数層に積層された各電極90,92を形成する各層間には圧電体94が挟まれて積層されている。なお、図9(B)に示す例では、このような不要部分100として各行電極90(X1 、X2 、X3)及び各列電極92(Y1 、Y2 、Y3 )間のどちらの電極も存在しない部分を全て上から下まで除去して貫通形状としているが、このように完全には除去せずに不要部分の底部を残した凹形状としてもよい。
【0102】
このように形成することにより、隣り合った活性部同士でのクロストークや液滴干渉を防止することが可能となる。
【0103】
以上説明した第1実施例における、各圧力室に対応するいわゆる活性部が2次元マトリクス状に配列された積層圧電素子においては、その側面から電極を取り出すことができるため、電極配線の取り出しが容易であり、制御回路及び駆動ドライバの個数を削減することができ、またその結果ハンドリングが容易となるという効果を有する。
【0104】
しかし、このように電極を配置すると(図8参照)、同じ行電極の上に並ぶノズルを同時に駆動することはできるが、例えば選択される列電極のパターンが同じでないと、隣の行電極を同時に駆動することができない場合がある。
【0105】
次に説明する第2実施例の積層圧電素子は、このような問題に対処するためのものである。図11に、第2実施例の積層圧電素子を示す。
【0106】
図11は、前述した図8と同様の平面図である。図11に示すように、第2実施例の積層圧電素子158においては、太い破線で示すように、行電極及び列電極を積層圧電素子158の中央部で行方向及び列方向に平行な直線によってそれぞれ2つに分割し、行電極90−1、90−2及び列電極92−1、92−2とすることにより、積層圧電素子158が、左上、右上、左下、右下の4つのブロックに分割される。このように電極を分け、各ブロック毎に各2方向の端部から電極配線を引き出すようにして、各ブロック毎の電極を独立に駆動することで、各異なるブロックごとの電極に対応するノズルは、それぞれ独立して駆動することができる。
【0107】
これにより同時に駆動することのできる電極の本数、すなわち同時に駆動できるノズル数を増やすことができ、より高速の印字が可能となる。なお、このように独立に駆動できる複数領域への分割は図11に示したような、4分割に限定されるものではなく、任意の数に分割することにより、同時駆動できるノズル数を増やすことが可能である。
【0108】
次に第3実施例の積層圧電素子について説明する。
【0109】
図12は、第3実施例の積層圧電素子の概略構成を示す斜視透視図である。図12は、特に電極の配置を示したものであり、各電極に挟まれる圧電体は図示を省略している。
【0110】
図12に示すように、本実施例の積層圧電素子258は、行方向、列方向に加え、積層方向に2種類以上のパターン電極を持たせるようにしたものである。行方向は、行電極290のうち例えばX11行は、2本の平行な電極(行電極)X11a及びX11b上に形成された後述する列電極とともに活性部を活性化させる電極対を形成する電極によって構成されている。電極X11b上には、活性部に対応する電極対を形成する電極X11-1、X11-3等が、また電極X11a上には、同様に活性部に対応する電極対を形成する電極X11-2等が、それぞれ互い違いに、かつ1つ置きに形成されている。
【0111】
また、列方向も同様に、例えば列電極292のうちY11列は、2本の平行な電極(列電極)Y11a及びY11b上にそれぞれ形成された活性部に対応する電極対を形成する電極Y11-1及びY11-2等によって構成されている。
【0112】
図12の各行電極290及び各列電極292の積層構造をその上部の4層について図13(a)〜(d)に分解して各層毎に示す。
【0113】
図13(a)は、図12における最上層の電極を形成する行電極290−1を示し、例えば電極X11a上に電極X11-2等が形成されている。図13(b)は、図12における上から2番目の電極層を形成する行電極290−2を示し、例えば電極X11b上に電極X11-1、X11-3等が形成されている。
【0114】
図13(c)は、さらにその下の電極層を形成する列電極292−1を示し、例えば電極Y11b上に電極Y11-2等が形成されている。また、図13(d)は、さらにその下の電極層を形成する列電極292−2を示し、例えば電極Y11a上に電極Y11-1等が形成されている。
【0115】
このように、行電極290−1、290−2、・・・及び列電極292−1、292−2、・・・がその間に圧電体(図示省略)を挟んで積層されて図12に示すような積層圧電素子258が形成される。そして、図12に示すように、行電極X11上の電極X11-1の
下には列電極Y11上の電極Y11-1が配置されて電極対を形成し、さらにその下に同様にして電極対を形成する行電極及び列電極が配置される。
【0116】
また、行電極X11上の電極X11-2の下には、列電極Y12上の電極Y12-1が配置されて電極対を形成するとともに、行電極X12上の電極X12-1の下には列電極Y11上の電極Y11-2が配置されて電極対が形成される。そして、いずれもそれぞれの下に電極対を形成する行電極、列電極がさらに配置されている。
【0117】
図14は、各行電極290、列電極292の配置を模式的に示す平面図である。行電極290を形成する電極Xa上には電極X-12 、X-14 が形成され、同様に電極Xb上には電極X-11 、X-13 が形成され、しかも電極Xa上に形成される電極(X-12 、X-14 等)と、電極Xb上に形成される電極(X-11 、X-13 等)は、それぞれ互い違いに1つ置きに配置されている。
【0118】
また、列電極292についても同様であり、電極Ya上に形成される電極Y-11 、Y-13 と電極Yb上に形成される電極Y-12 、Y-14 は、それぞれ互い違いに1つ置きに配置されている。なお、電極Yb上に形成される電極Y-12 は行電極290の電極X-11 の下に配置されているため、図には表示されていない。
【0119】
図14は、平面図であったが、図12において例えば行電極X11に沿った部分の断面図を図15に示す。図15に示すように、圧電体94を挟んで行電極と列電極が交互に積層されている。
【0120】
図13に各電極の積層構造を示したが、実際にこの積層構造を形成する様子を図16(a)〜(d)に示す。実際の積層圧電素子の製作においては、各電極パターンが形成されたグリーンシートを薄膜圧電体のシートと順番に交互に積層して形成される。図16(a)〜(d)はその積層の順番を示すものであり、行電極290−1、行電極290−2、列電極292−1、列電極292−2の順番に積層される。
【0121】
このように、行電極290−1、290−2及び列電極292−1、292−2と、それぞれ2層ずつ全体で4層積層したものを1組として、さらにこの組を2組積層して、それぞれ第1組を行電極1、列電極1とし、第2組を行電極2、列電極2として、行方向、列方向の他に積層方向(T方向)をも用いて、後で説明するように、クロストーク、記録紙16上に隣接して着弾した液滴同士が混合する等の干渉を起こす液滴干渉を防ぐ配置で駆動することができるようにしてもよい。
【0122】
図17に、このような駆動方法の一例を示す。
【0123】
例えば、図12において電極X11aとX12aを接続し、これらの上に形成された電極X12-1、X11-2、X12-3等を同時に駆動することができるようにすると、図17に破線Aで示した折れ線ライン上の電極が駆動される。
【0124】
また、図12において電極X11bとX12bを接続し、これらの上に形成された電極X11-1、X12-2、X11-3等を同時に駆動することができるようにすることで、図17に実線Bで示した折れ線ライン上の電極を同時に駆動することができる。
【0125】
このように電極の接続(配線)を工夫することで、同じ行方向において隣接した電極を同時に駆動しないようにすることにより、クロストーク及び液滴干渉を防止することが可能となる。
【0126】
次に、前述した行方向及び列方向の他に第3の方向であるT方向(積層方向あるいは斜め方向)にも電極を駆動する方法について図を用いて説明する。
【0127】
図18は、積層圧電素子258の平面図であり、各圧力室上に圧電体を挟んで電極層が積層されて形成された積層圧電素子(の活性部)が行方向及び列方向に配列された様子を示している。
【0128】
図18中のXIX-XIX 線に沿った断面図を図19に示す。図19に示す例では、行電極290と列電極292がそれぞれ2層ずつ積層された4層からなる電極層の組(第1組と第2組)が2組T方向に積層されている。
【0129】
このように電極を積層して、さらに行方向、列方向の他にT方向(積層方向)にも電極を独立に駆動することができるように配線を工夫することで、クロストーク、液滴干渉を防止することが可能となる。また、積層方向に電極の組を複数積層してそれぞれ独立に駆動可能とした場合に、一方の電極の組を圧力室内のインク圧力を検出して吐出状態を判断するためのセンサとして用いるようにしてもよい。
【0130】
なお、図19では、積層方向(T方向)に2組の電極層を配置したが、第3組、第4組とさらに多くの電極層を積層してもよい。このように多数の電極層をT方向に積層して各層を独立に駆動することで発生圧力を複数段階に制御して階調制御を容易に行うことが可能となる。また、リフィル駆動用のアクチュエータとして構成することもできる。
【0131】
以上説明した実施形態によれば、電極を行方向、列方向に配置して側面から配線するようにしたため、電極の行数及び列数をいくらでも増やすことができる。また、積層のマトリクス構造であるため、従来の単板の圧電素子の場合と比較して高い発生圧力を得ることができ、高粘度インクの吐出が可能である。
【0132】
また、積層数を増やすことで低電圧で大きな発生圧力を得ることができ、駆動効率を向上させることができ、さらに、マトリクスに対応した長尺の1枚ものを作製した場合には単板よりもハンドリングが容易である。
【0133】
また、行方向列方向に配線してマトリクス駆動とし、配線数を減らしたため、従来ノズル数分だけ必要であった駆動ドライバの数を低減することが可能である。
【0134】
以上、本発明の積層圧電素子及びこれを用いた液滴吐出ヘッド並びにこれを有する画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明に係る積層圧電素子を用いた液滴吐出ヘッドを有する画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。
【図2】図1に示したインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図である。
【図3】印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図4】圧力室の構造例を示す、図3中のIV-IV 線に沿った断面図である。
【図5】印字ヘッドの他の例を示す平面図である。
【図6】インクジェット記録装置のインク供給系の構成を示した概略図である。
【図7】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【図8】本発明の積層圧電素子の第1実施例を示す平面図である。
【図9(A)】図8の積層圧電素子の一部を拡大して示す斜視図である。
【図9(B)】(1)、(2)は図9(A)の積層圧電体の不要部分を除去する様子を示す斜視図である。
【図10】図9(A)中のX-X 線に沿った断面図である。
【図11】本発明の積層圧電素子の第2実施例を示す平面図である。
【図12】本発明の積層圧電素子の第3実施例を示す斜視図である。
【図13】(a)〜(d)は、図12の積層圧電素子を形成する電極の積層構造を示す分解図である。
【図14】各行電極及び列電極の配置を模式的に示す平面図である。
【図15】各行電極及び列電極の積層構造を模式的に示す断面図である。
【図16】(a)〜(d)は、第3実施例の積層圧電素子の電極層の積層順序を示す説明図である。
【図17】第3実施例の積層圧電素子の駆動方法の一例を示す説明図である。
【図18】積層圧電素子の電極の配列方法を示す平面図である。
【図19】積層方向に複数組の電極層を積層した様子を示す図18中のXIX-XIX 線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0136】
10…インクジェット記録装置、12…印字部、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…吸着ベルト搬送部、24…印字検出部、26…排紙部、28…カッター、30…加熱ドラム、31、32…ローラー、33…ベルト、34…吸着チャンバー、35…ファン、36…ベルト清掃部、40…加熱ファン、42…後乾燥部、44…加熱・加圧部、45…加圧ローラー、48…カッター、50…印字ヘッド、50A…ノズル面、51…ノズル、52…圧力室、53…インク供給口、54…圧力室ユニット、55…共通流路、56…振動板、58…積層圧電素子、60…インクタンク、62…フィルタ、64…キャップ、66…ブレード、67…吸引ポンプ、68…回収タンク、70…通信インターフェース、72…システムコントローラ、74…画像メモリ、76…モータドライバ、78…ヒータドライバ、80…プリント制御部、82…画像バッファメモリ、84…ヘッドドライバ、86…ホストコンピュータ、88…モータ、89…ヒーター、90…行電極、92…列電極、94…圧電体、96…(行電極と列電極の)交点、100…不要部分、290…行電極、292…列電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、圧電材料、第2電極、圧電材料と順に複数積層して構成された積層圧電素子であって、
前記圧電材料を挟んで対向する前記第1電極と前記第2電極に電圧を付与することにより前記圧電材料が能動的に伸縮可能となる前記積層圧電素子の活性部が、行方向及び列方向の2次元的に複数配列され、
前記第1電極は、前記2次元的に配列された複数の活性部のうち行方向の複数の活性部で共通であり、かつ、前記第2電極は、前記2次元的に配列された複数の活性部のうち列方向の複数の活性部で共通であることを特徴とすることを特徴とする積層圧電素子。
【請求項2】
前記積層された第1電極及び第2電極の配線をそれぞれ前記積層圧電素子の端面から取り出すようにしたことを特徴とする請求項1に記載の積層圧電素子。
【請求項3】
前記第1電極及び第2電極への電圧付与によって活性化しない不活性部の少なくとも一部が凹形状あるいは貫通形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層圧電素子。
【請求項4】
前記2次元的に配列された前記第1電極と前記第2電極から成る電極対が、それぞれ独立に駆動可能な複数の領域に分割されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
【請求項5】
前記複数の領域は、前記2次元的配列の略中央部を通り前記行方向及び列方向に平行な2直線によって4分割されていることを特徴とする請求項4に記載の積層圧電素子。
【請求項6】
前記第1電極及び第2電極はそれぞれ前記活性部に関し一つ置きに共通であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
【請求項7】
前記第1電極及び第2電極はそれぞれ前記活性部に関して一つ置きに共通であり、かつ隣り合った2つの行方向の第1電極が、千鳥状に互い違いに共通であり同時に駆動されるように接続されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
【請求項8】
前記電極対を、前記行方向及び列方向の2次元方向の他に、これらに垂直な積層方向に対しても、層毎にそれぞれ独立に駆動可能なように重ねて形成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層圧電素子を駆動アクチュエータとして用いたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の液滴吐出ヘッドを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(A)】
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【図9(B)】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−19712(P2006−19712A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159922(P2005−159922)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
2.イ−サネット
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】