説明

積層型パワーインダクタのギャップ層組成物及び前記ギャップ層を含む積層型パワーインダクタ

【課題】本発明は、積層型パワーインダクタのギャップ層組成物及びこれより製造されたギャップ層を含む積層型パワーインダクタに関する。
【解決手段】本発明は、内部電極を含む複数の磁性体層が積層された本体、及び複数のギャップ層を含み、前記複数のギャップ層は前記本体の両側に形成された外部電極と接触しないように形成されるものである積層型パワーインダクタ、及び前記積層型パワーインダクタのギャップ層組成物に関する。また、本発明によると、前記ギャップ層組成物として3価または4価の誘電体酸化物をペースト形態に製造し、これをギャップ層構造に適用することにより、従来シート状でギャップ層を形成する場合に比べてギャップ層の構造設計及び厚さ調節が容易なだけでなく、本体(body)との拡散を最大限に抑制してDC−bias特性を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型パワーインダクタのギャップ層組成物及びこれより製造されたギャップ層を含む積層型パワーインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
積層型パワーインダクタは、主に、携帯機器内のDC−DCコンバーター(converter)のような電源回路に使用され、小型化、高電流化、低い直流抵抗などに合わせて開発されている。DC−DCコンバーターの高周波化及び小型化に伴って、既存の巻線型チョークコイル(Choke Coil)の代わりに、積層型パワーインダクタの使用が増加している。
【0003】
積層型パワーインダクタは、材料的/構造的に、インダクタの磁気飽和を抑制して高電流で使用することができる。これは、巻線型パワーインダクタに比べて、電流印加によるインダクタンスのL値の変化が大きいという短所があるが、小型化及び厚さの減少が可能であるという長所があり、また直流抵抗において有利である。
【0004】
現在使用されている一般的な積層型パワーインダクタの構造は、添付の図1に示したとおりである。これを参照すると、内部電極10が形成されており、フェライト材料を利用した本体(body)20と、前記本体20の内部にギャップ層(gap layer)30と、を含む。 前記ギャップ層は、本体の内部に挿入され磁束を遮断して電流印加によるインダクタンスの変化値を減少させる機能を行っている。これを約900℃前後の温度で焼成させた後、外部電極40を形成し、Ni及びSnなどを用いてメッキ層50を形成することにより、最終的に積層型パワーインダクタを製造することができる。
【0005】
一般的な積層型パワーインダクタのギャップ層30は、一つの平面上において内部電極の層間にシート(sheet)を成形した後、複数の層を積層して形成させている。また、前記ギャップ層30は、前記本体20の両側外部に形成された外部電極40にまで延長されている構造である。従って、焼結過程において前記外部電極40と接触するギャップ層30が剥離(delamination)される恐れが多い。
【0006】
通常、磁気回路の磁性体構造が非磁性体または空隙(Air Gap)により切断されると、磁気抵抗が増加して流れる磁束の大きさが小さくなる。そのため、有効透磁率が減少し、インダクタンスもともに減少する。しかし、インダクタンスのL値の変化率は非常に小さくなる。
【0007】
従って、通常のインダクタでは、インダクタンスの変化が透磁率に直接比例する反面、ギャップ層のあるインダクタでは、透磁率の変化に対するインダクタンスの影響が大きく抑制される。従って、ギャップ層を挿入することにより、パワーインダクタの直流バイアス(DC−bias)特性を大きく改善させることができる。しかし、このようなインダクタを実質的に製品において使用するためには、室温(room temperature)におけるDC−bais特性だけでなく、零下及び高温のような温度変化(−50〜125℃)によるDC−bais特性(以下、 Bias−TCL)も満足しなければならない。
【0008】
しかし、前記の従来構造のギャップ層を含むパワーインダクタの場合、温度を変化させるにつれて電流印加によるインダクタンス値の変化が大きいため、温度安定性に劣るという短所がある。
【0009】
現在、積層型パワーインダクタギャップ材料として使用される非磁性体は、本体(body)を構成する磁性体材料に類似したフェライト組成物を使用しているが、磁性を除去するために、NiOが含有されていないZn−Cu系のフェライトを主に多く使用している。しかし、前記Zn−Cu系のフェライトは、温度による拡散により温度特性が変化するという短所があるため、Bias−TCL特性を改善するためのギャップ材料を開発する必要がある。
【0010】
また、新規のギャップ材料の開発だけでなく、Bias−TCL特性を改善させることができる新規構造の積層型パワーインダクタの開発も要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−339532号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2011−0018954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、従来ギャップ層を含むパワーインダクタにおいてギャップ層が焼結過程において剥離(delamination)される問題及び温度変化によるBias−TCL特性を改善させることができる新規のギャップ層構造を有する積層型パワーインダクタを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、従来ギャップ層の材料を使用することにおいて、Bias−TCL特性が劣る問題を解決することができる新規のギャップ層材料組成物を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための本発明の一実施形態による積層型パワーインダクタは、内部電極が形成された複数の磁性体層が積層された本体及び複数のギャップ層を含み、前記複数のギャップ層は、前記本体の両側に形成された外部電極と接触しないように形成されることを特徴とする。
【0015】
前記複数のギャップ層は、前記外部電極から100μm 以上の間隔で離隔され形成されることが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態によると、前記複数のギャップ層は、前記内部電極に取り囲まれたコア領域に形成されることができる。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態によると、前記複数のギャップ層は、両側の内部電極が位置する領域と同一の領域に形成されることができる。
【0018】
本発明の内部電極は、Ag、Cu、及びこれらの合金からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0019】
前記本体(body)は、NiZnCuフェライトの磁性体層であることができる。
【0020】
本発明の実施形態によると、前記ギャップ層は、ペースト形態で印刷されることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、前記他の課題を解決するために、フェライトと反応しない誘電体酸化物を用いた積層型パワーインダクタのギャップ層組成物を提供する。
【0022】
前記誘電体酸化物は、3価または4価の金属酸化物であることが好ましい。
【0023】
前記誘電体酸化物はAl、TiO、ZrO、SnO、及びCeOからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0024】
本発明の一実施形態によると、前記誘電体酸化物の平均粒子サイズは、0.01〜0.1μmであり、比表面積は、10.0〜50.0m/gであることが好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態によると、前記誘電体酸化物は、全体のギャップ層組成物のうち20〜70wt%含まれることが好ましい。
【0026】
本発明による前記ギャップ層組成物は、ペースト形態であることが好ましい。
【0027】
前記ペーストの粘度は、10〜150kcpsの範囲を有することが好ましい。
【0028】
また、本発明の積層型パワーインダクタのギャップ層組成物は、有機樹脂、溶媒、及び添加剤からなる群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、新規のギャップ層を含む積層型パワーインダクタ構造を有しており、前記ギャップ層は、本体の両端に位置した外部電極及びチップの表面と実質的に接触しないように一定間隔に離隔され位置させたり、内部電極の間に、または内部電極間隔と同一の位置に位置させてギャップ層の剥離(delamination)問題を解決することができる。
【0030】
また、本発明では、前記ギャップ層組成物として、3価または4価の誘電体酸化物をペースト形態に製造し、これをギャップ層構造に適用することにより、従来シート状にギャップ層を形成する場合に比べて、ギャップ層の構造設計及び厚さ調節が容易なだけでなく、本体(body)との拡散を最大限に抑制してDC−bias特性を改善させることができる。
【0031】
このようなギャップ層構造を有する本発明による積層型パワーインダクタは、温度変化によるインダクタンス変化率が少ないため、Bias−TCL特性を改善させることができる効果を有し、このような特性を要する様々な材料に広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ギャップ層を含む一般的な積層型パワーインダクタの構造を示した図面である。
【図2】本発明の実施例1による新規のギャップ構造を含む積層型パワーインダクタの構造を示した図面である。
【図3】本発明の実施例2による新規のギャップ構造を含む積層型パワーインダクタの構造を示した図面である。
【図4】本発明の実施例3による新規のギャップ構造を含む積層型パワーインダクタの構造を示した図面である。
【図5】積層型パワーインダクタギャップ周りの焼成時の拡散に関するグラフである。
【図6】フェライト材料を使用したギャップを適用する場合のTCL特性を示したグラフである。
【図7】誘電体材料を使用したギャップを適用する場合のTCL特性を示したグラフである。
【図8】比較例1によるギャップ構造を有するパワーインダクタのDC−bias特性を示したグラフである。
【図9】実施例1によるギャップ構造を有するパワーインダクタのDC−bias特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明をより詳細に説明すると、以下のとおりである。
【0034】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施例を説明するために用いられ、本発明を限定しようとするものではない。本明細書で用いられたように、単数型は文脈上異なる場合を明白に指摘するものでない限り、複数型を含むことができる。また、本明細書で用いられる「含む(comprise)」及び/または「含んでいる(comprising)」は言及した形状、数字、段階、動作、部材、要素、及び/またはこれらの組み合わせが存在することを特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、段階、動作、部材、要素、及び/またはこれらの組み合わせの存在または付加を排除するものではない。
【0035】
本発明は、新規のギャップ層構造を有する積層型パワーインダクタと、前記ギャップ構造の形成のためのギャップ層組成物に関する。
【0036】
1.積層型パワーインダクタ
本発明による積層型パワーインダクタは、内部電極が形成された複数の磁性体層が積層された本体及び複数のギャップ層を含み、前記複数のギャップ層は、前記本体の両側に形成された外部電極と接触しないように形成した構造を有する。
【0037】
図2は、本発明の第1実施例による新規のギャップ層構造を含む積層型パワーインダクタの構造である。これを参照すると、内部電極110が形成された複数の磁性体層が積層された本体120、及び複数のギャップ層130を含み、前記複数のギャップ層130は、前記本体120の両側に形成された外部電極140と接触しないように形成する。
【0038】
前記複数のギャップ層130は、前記外部電極140から一定間隔A´、好ましくは約100μm以上の間隔に離隔され形成することが好ましい。これは、前記ギャップ層130が外部電極140と接触するようになる場合、焼成時に前記ギャップ層130が剥離される問題があるためである。従って、本発明では、焼成時にギャップ層130の剥離問題を解決するために、ギャップ層130を前記外部電極140から100μm 以上程度の間隔を離隔させることが好ましい。
【0039】
また、図3は、本発明の第2実施例による新規のギャップ層の構造を含む積層型パワーインダクタの構造である。これを参照すると、内部電極110が形成された複数の磁性体層が積層された本体120、及び複数のギャップ層130を含み、前記複数のギャップ層130は前記内部電極110に取り囲まれたコア領域にのみ部分的に形成することが好ましい。このような構造は、内部電極110に取り囲まれた領域(コア)にのみギャップ層130が位置することで、前記ギャップ層130の外部は、全て磁性体層である本体120に被覆されているため、外部磁束に露出されず、これによる問題は発生しない。
【0040】
また、図4は、本発明の第3実施例による新規のギャップ層構造を含む積層型パワーインダクタの構造である。これを参照すると、内部電極110が形成された複数の磁性体層が積層された本体120、及び複数のギャップ層130を含み、前記複数のギャップ層130は両側の内部電極110が位置する領域と同一の領域に部分的に形成することが好ましい。このような構造は、内部電極110周りと内部電極110に取り囲まれた領域(コア)にまでギャップ層130を形成する構造である。
【0041】
本発明は、従来図1のように通常の形態である1層のシート(sheet)を使用して両側の外部電極にまで到逹するようにギャップ層を形成することではなく、実質的に本体の両側に形成された外部電極と接触しない位置で、部分的に形成することを特徴とする。従来のようにシート形態にギャップ層を形成する場合、前記ギャップ層を形成した後、希望しない領域に形成されたギャップ層はまた切断しなければならないという煩わしさがある。
【0042】
しかし、本発明によるギャップ層は、外部電極と一定間隔で離隔された領域と、内部電極と同一の領域と、内部電極に取り囲まれたコア領域と、に部分的に形成する方法を用いる。この場合、ギャップ材料は、ペースト(paste)を使用した印刷方法を用いて形成することが好ましいが、この場合、従来シート状に比べてギャップ層の形態及び厚さの自由度が非常に高いという特徴があり、ギャップ厚さと形態(面積)を調節してDC−bias特徴に優れた製品を製造することができる。
【0043】
本発明の積層型パワーインダクタにおいて前記内部電極は、Ag、Cu及びこれらの合金からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、このうちAgまたはCuであることがさらに好ましい。
【0044】
前記本体(body)は、NiZnCuフェライトからなる磁性体層であることが好ましい。
【0045】
2.積層型パワーインダクタのギャップ層組成物
本発明はまた前記のようなギャップ層構造を形成することにより、効果的な積層型パワーインダクタを提供するためのギャップ層組成物を提供することを特徴とする。
【0046】
本発明による積層型パワーインダクタのギャップ層組成物は、フェライトと反応しない誘電体酸化物を含む。非磁性体である前記ギャップ層組成物として、既存のフェライトでなく、3価または4価の誘電体酸化物を使用して本体(body)との拡散を最大限に抑制してDC−bias特性の改善を誘導した。
【0047】
本発明の3価または4価の誘電体酸化物は、Al、TiO、ZrO、SnO、及びCeOからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0048】
従来前記ギャップ層にフェライト材料を使用する場合、図5のように、焼成後のギャップ層の厚さ変化がひどいことが分かる。前記のように温度変化によるギャップ層の厚さ変化がひどいため、温度による製品のTCL特性(インダクタンス変化率)の変化が大きいことが観察された(図6)。従って、このようなギャップ層を含む積層型パワーインダクタは、様々な温度範囲で使用することにおいて不利に作用した。
【0049】
しかし、本発明のように3価または4価の誘電体酸化物を使用してギャップ層を形成する場合、フェライト材料で発生する同一材料間の拡散現象がないため、ギャップ層の厚み損失が無くなる。このような場合、温度による製品の TCL(Temperature Changed Inductance) 特性の変化が少なくなるという効果を得ることができる(図7)。
【0050】
従来ギャップ層組成物は、Ti、Cu、Bi、Feなどの様々な金属の酸化物材料を混合して使用したが、本発明では前記3価または4価の誘電体酸化物を単独で使用しながら優れた温度特性を有するようにした。
【0051】
また、本発明の一実施形態によると、前記誘電体酸化物の平均粒子サイズは、0.01〜0.1μmであり、比表面積は10.0〜50.0m/gであることが好ましい。前記誘電体酸化物の平均粒子サイズと比表面積を有する場合、低い温度で焼成が可能であるため、有利な効果を有する。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記誘電体酸化物は、全体のギャップ層組成物のうち20〜70wt%含まれることが好ましい。前記誘電体酸化物の含量が20wt%未満である場合、印刷後にギャップ層の厚さが薄く、乾燥後に微細な膜を形成することができず、また、70wt%を超える場合、誘電体樹脂及び溶剤の含量が足りないため印刷性が低下するという問題があり、好ましくない。
【0053】
本発明による前記ギャップ層組成物は、ペースト形態に製造され、印刷方法で塗布させることが好ましい。これは希望する位置に、選択的にギャップ構造を形成することに好適であるためである。
【0054】
従って、本発明による前記ギャップ層組成物である前記ペーストの粘度は、10〜150kcpsの範囲を有することが、印刷性及び作業性を確保することに有利である。
【0055】
本発明の積層型パワーインダクタのギャップ層組成物は、有機樹脂、溶媒、及び添加剤からなる群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0056】
前記有機樹脂は、ペーストに印刷性を与えるために使用され、例えば、エチルセルロース、アクリル、ポリビニルブチラル、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、フェノール、ウレタン、ポリエステル、ロジン、メラミン、及び尿素樹脂を単独または混合して使用することができ、前記誘電体酸化物含量に対して5〜20 wt%含まれることが好ましい。
【0057】
また、ギャップ層組成物に使用される溶媒は、ジヒドロテルピネオール(Dihydroterpineol)、ジヒドロターピニルアセテート(Dihydroterpinyl acetate)、ブチルカルビトール(butyl carbitol)、ブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)、テキサノール(texanol)、ミネラルスピリット(mineral spirit)、オクタノールなどのアルコール系溶媒と、ケトン系(ketone)溶媒と、セロソルブ系(cellosolve)溶媒と、エステル系(ester)溶媒と、エーテル系(ether)溶媒と、を単独または混合して使用することができる。
【0058】
その他の添加剤として、可塑剤、分散制などを添加してペーストの乾燥膜物性及びレオロジーを調整することができる。
【0059】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。以下の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されることに解釈されてはならない。また、以下の実施例では特定化合物を利用して例示しているが、これらの均等物を用いる場合でも、同等類似の程度の効果を奏することができるということは当業者において自明である。
【0060】
[実施例1]
ZrO粉末(平均粒子サイズ80nm、比表面積20m/g)100g(35wt%)、有機樹脂としてエチルセルロース10g(3.5wt%)、溶媒ジヒドロテルピネオール180g(60wt%)、及び残量の可塑剤、及び分散制を添加してペースト形態のギャップ層組成物を製造した。前記ギャップ層組成物の粘度は、100kcpsであった。
【0061】
前記ギャップ層組成物を用いて図2のように、両側の外部電極から約100μm離隔(A´)された領域にのみギャップ層を塗布した。内部電極には、Agを使用し、本体はNiZnCuフェライト100モル%に対してBi、CoO、及びTiOからなる群から選択される1種以上の添加剤を0.2モル%以内に添加して形成した。
【0062】
本発明による積層型パワーインダクタは、前記本体の間にギャップ層(15μm)を3枚形成した構造を有する。
【0063】
[実施例2]
TiO粉末(平均粒子サイズ 30nm、比表面積 40m/g)100g(30wt%)、有機樹脂としてエチルセルロース12g(4wt%)、溶媒ジヒドロテルピネオールとブチルカルビトール190g(63wt%)及び残量の可塑剤、及び分散制を添加してペースト形態のギャップ層組成物を製造した。前記ギャップ層組成物の粘度は、50kcpsであった。
【0064】
前記ギャップ層組成物を用いて図3のように、前記内部電極に取り囲まれたコア領域にのみ部分的にギャップ層を塗布することを除き、前記実施例1と同一の過程で積層型パワーインダクタを製造した。
【0065】
[実施例3]
Al粉末(平均粒子サイズ100nm、比表面積 10m/g)100g(45wt%)、有機樹脂としてエチルセルロースとポリビニルブチラル10g、溶媒ジヒドロターピニルアセテート95g、及び残量の可塑剤、及び分散制を添加してペースト形態のギャップ層組成物を製造した。前記ギャップ層組成物の粘度は、150kcpsであった。
【0066】
前記ギャップ層組成物を用いて図4のように、両側の内部電極が位置する領域と同一の領域に、部分的にギャップ層を塗布することを除き、前記実施例1と同一の過程で積層型パワーインダクタを製造した。
【0067】
[比較例1]
ZnCuフェライトを主成分として含むギャップ層組成物から製造されたシート(sheet)を図1のように、外部電極と接触する部分にまでギャップ層を形成した。また、本体は、前記実施例1と同一の成分を使用し、前記本体の間にZnCuフェライトギャップ層(20μm)を3枚形成した構造を有する。
【0068】
[実験例1:ギャップ層の剥離(delamination)可否の確認]
前記実施例1〜3と比較例1により製造された積層型パワーインダクタにおけるギャップ層の剥離可否を、焼成後の製品の外側及び断面を分析して観察し、その結果を以下の表1に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
前記表1の結果のように、本発明のようなギャップ層構造を有する実施例1〜3の積層型パワーインダクタでは、ギャップ層が剥離されないことが確認された。しかし、従来比較例1による積層型パワーインダクタでは、多数のギャップ層が剥離されることが見付かった。このような結果により、本発明のようにギャップ層構造を適切に調節することで、ギャップ層が剥離される問題を改善することができる。
【0071】
[実験例2:ギャップ層の離隔距離に対する剥離傾向の確認]
ギャップ層の外部領域との離隔距離に対する剥離傾向を確認するために、図2の構造を有する前記実施例1において、離隔距離をそれぞれ50、200μmにしてギャップ層を形成し、剥離現象を観察し、その結果を以下の表2に示した。
【0072】
【表2】

【0073】
前記表2の結果のように、外部電極から離隔されたA´長さが100μm 未満の場合、切断精度の差によりA´長さに変化が発生され得る。それにより、ギャップ層と離隔された外部電極との距離が短くなる結果、剥離(delamination)不良が発生する恐れがある。従って、外部電極から約100μm以上離隔された位置でギャップ層を形成することが最も好ましいと言える。
【0074】
[実験例3:Bias−TCL特性の確認]
前記比較例1と実施例1により製造された積層型パワーインダクタのBias−TCL特性を確認し、その結果をそれぞれ図8と図9に示した。
【0075】
比較例1により製造された積層型パワーインダクタの場合、図8に示したように、Bias−TCL特性が温度により非常に異なって現われることが分かる。即ち、温度により初期のインダクタンス値の差が大きいことが分かる。これは、従来ギャップ層組成物に使用された成分と、本体に使用された成分が互いに拡散されて温度特性が劣った結果と考えられる。
【0076】
しかし、本発明の実施例1により製造された積層型パワーインダクタのBias−TCL特性グラフ(図9)を見ると、温度変化に対してその特性の差を示さないことが分かる。これは、本発明においてギャップ層組成物を、3価または4価の誘電体酸化物を単独で使用して、ペースト形態に印刷することで厚さが均一なだけでなく、両側の外部電極と接触しない領域内で部分的に形成することにより、ギャップ層と本体層の間に希望しない成分が拡散されることを効果的に制限した結果と言える。
【符号の説明】
【0077】
10、110 内部電極
20、120 本体(body)
30、130 ギャップ層
40、140 外部電極
50 メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極が形成された複数の磁性体層が積層された本体(body)と、
複数のギャップ層と
を含み、
前記複数のギャップ層は、前記本体の両側に形成された外部電極と接触しないように形成されるものである積層型パワーインダクタ。
【請求項2】
前記複数のギャップ層は、前記外部電極から100μm以上の間隔で離隔され形成されるものである請求項1に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項3】
前記複数のギャップ層は、前記内部電極に取り囲まれたコア領域に形成されるものである請求項1または2に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項4】
前記複数のギャップ層は、両側の内部電極が位置する領域と同一の領域に形成されるものである請求項1から3の何れか1項に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項5】
前記内部電極は、Ag、Cu、及びこれらの合金からなる群から選択される1種以上である請求項1から4の何れか1項に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項6】
前記本体は、NiZnCuフェライトである請求項1から5の何れか1項に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項7】
前記ギャップ層は、ペースト形態で印刷されるものである請求項1から6の何れか1項に記載の積層型パワーインダクタ。
【請求項8】
フェライトと反応しない誘電体酸化物を用いた積層型パワーインダクタのギャップ層組成物。
【請求項9】
前記誘電体酸化物は、3価または4価の金属酸化物である請求項8に記載の積層型パワーインダクタのギャップ層組成物。
【請求項10】
前記誘電体酸化物は、Al、TiO、ZrO、SnO、及びCeOからなる群から選択される1種以上である請求項8または9に記載の積層型パワーインダクタのギャップ層組成物。
【請求項11】
前記誘電体酸化物の平均粒子サイズは、0.01〜0.1μmであり、比表面積は、10.0〜50.0m/gである請求項8から10の何れか1項に記載の積層型パワーインダクタのギャップ層組成物。
【請求項12】
前記誘電体酸化物は、全体のギャップ層組成物のうち20〜70wt%含まれる請求項8から11の何れか1項に記載の積層型パワーインダクタのギャップ層組成物。
【請求項13】
前記ギャップ層組成物は、ペースト形態である請求項8から12の何れか1項に記載の積層型パワーインダクタのギャップ層組成物。
【請求項14】
前記ペーストの粘度は、10〜150kcpsである請求項13に記載の積層型パワーインダクタのギャップ層組成物。
【請求項15】
前記積層型パワーインダクタのギャップ層組成物は、有機樹脂、溶媒、及び添加剤からなる群から選択される1種以上をさらに含む請求項8から14の何れか1項に記載の積層型パワーインダクタのギャップ層組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−12741(P2013−12741A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143917(P2012−143917)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】