説明

積層型電池の面圧分布検出装置

【課題】発電性能を悪化させることなく、面圧分布を検出することができる積層型電池の面圧分布検出装置を提供する。
【解決手段】面圧分布検出装置は、単位セル10の積層方向に弾性変形可能な内側絶縁部61と、内側絶縁部61の一方の側面に複数設けられる第1電極63と、内側絶縁部61の他方の側面に複数設けられ、第1電極63と対向する第2電極62と、第1電極63と第1電極側単位セル10との間に設けられ、第2電極62と第2電極側単位セル10との間に設けられる一対の外側絶縁部64と、積層方向に弾性変形可能に構成され、第1電極63及び第2電極62に対して電気絶縁した状態で、第1電極側単位セル10と第2電極側単位セル10とを電気的に接続する複数の導電部65を備える。そして、面圧分布測定部90は、第1電極63と第2電極62との対向距離に応じて変化する静電容量に基づいて積層面圧を算出し、積層面圧分布を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単位セルを複数積層した積層型電池の面圧分布検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池やリチウムイオン電池等の積層型電池では、積層面圧が低いと単位セル間や単位セル内の接触抵抗が増加し、内部損失が増大して、発電性能が悪化する。また、電解質膜の面内方向に反応ガスのガス流路を備える燃料電池スタックにおいては、積層面圧が高くなり過ぎるとガス流路が押し潰され、反応ガスの供給量が低下して、発電性能が悪化する。このように積層型電池では、適切な積層面圧を保つことが重要である。
【0003】
しかしながら、周囲温度や単位セルの膨潤収縮等により積層面圧の分布は変化してしまうので、積層型電池において積層面圧の分布を一様にすることは困難である。
【0004】
特許文献1には、燃料電池スタックの一方のエンドプレートに複数のアクチュエータを設け、面圧分布検出装置で検出した面圧分布情報に基づいてアクチュエータを作動させることで、積層面圧の均一化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−213882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の面圧分布検出装置は、積層面圧を検出するとともに単位セルで発電された電流を通電するように、面圧分布を検出するシート状のタクタイルセンサをタクタイルセンサよりも面積の大きい2枚の導電性シートで挟み込み、それら導電性シートの縁部を電気的に接合して構成される。このような面圧分布検出装置では、単位セルで発電された電流が導電性シートの縁部に集中して流れるので、発電電流の電流密度が偏って、燃料電池スタックの発電性能が悪化する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、発電性能を悪化させることなく、面圧分布を検出することができる積層型電池の面圧分布検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0009】
本発明は、発電単位セルが複数積層される積層型電池の積層面圧分布を検出する面圧分布検出装置である。面圧分布検出装置は、単位セルの積層方向に弾性変形可能な内側絶縁部と、内側絶縁部の一方の積層方向側面に複数設けられる第1電極と、内側絶縁部の他方の積層方向側面に複数設けられ、第1電極と対向する第2電極と、第1電極と第1電極側単位セルとの間に設けられるとともに、第2電極と第2電極側単位セルとの間に設けられる一対の外側絶縁部と、を備える。さらに、面圧分布検出装置は、積層方向に弾性変形可能に構成され、第1電極及び第2電極に対して電気絶縁した状態で、第1電極側単位セルと第2電極側単位セルとを電気的に接続する複数の導電部を備える。そして、面圧分布測定部は、第1電極と第2電極との対向距離に応じて変化する静電容量に基づいて積層面圧を算出し、積層面圧に基づいて積層面圧分布を求める。
【発明の効果】
【0010】
本発明の面圧分布検出装置は、積層方向に弾性変形可能に構成されて第1電極側単位セルと第2電極側単位セルとを電気的に接続する複数の導電部を備えるので、第1電極側単位セルと第2電極側単位セルとを通過する電流の電流密度の偏りを抑制することができ、電流密度に起因する発電性能の悪化を抑制しつつ、単位セルにおける面圧分布を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両に搭載される燃料電池スタックの概略構成図である。
【図2】燃焼電池システムの概略構成図である。
【図3】燃料電池スタックに備えられる面圧検出部について説明する図である。
【図4】面圧検出部の導電部について説明する図である。
【図5】面圧信号検出回路について説明する図である。
【図6】第2実施形態における面圧検出部の概略構成図である。
【図7】第3実施形態における面圧検出部の概略構成図である。
【図8】第4実施形態における面圧検出部の概略構成図である。
【図9】第5実施形態における面圧検出部の概略構成図である。
【図10】第6実施形態における面圧信号検出回路の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、車両に搭載される燃料電池スタック100の概略構成図である。
【0014】
図1に示すように、燃料電池スタック100は、起電力を生じる固体高分子型燃料電池である単位セル10を複数積層して構成される。
【0015】
単位セル10の積層体の両端には、集電板20と絶縁板30が順次設けられる。
【0016】
集電板20は、ガス不透過性の導電性部材であって、例えば緻密質カーボンによって形成される。集電板20には、燃料電池スタック100で生じた起電力を取り出すための出力端子21が設けられる。
【0017】
絶縁板30は、集電板20の外側に配置される。絶縁板30は、絶縁性のゴム等によって形成される。
【0018】
一方の絶縁板30の外側にはエンドプレート40が設けられ、他方の絶縁板30の外側には可動板50を介してエンドプレート40が設けられる。エンドプレート40と可動板50との間には、単位セル10の積層面圧を調整する面圧調整装置が配置される。
【0019】
エンドプレート40及び可動板50は、剛性を備える金属材料や樹脂材料で形成される。エンドプレート40のうち一方のエンドプレート40には、各単位セル10に水素ガス等の燃料ガスを供給する燃料ガス入口41Aと、燃料ガスを排出する燃料ガス出口41Bと、各単位セル10に酸素等の酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス入口42Aと、酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス出口42Bと、各単位セル10に冷却水を供給する冷却水入口43Aと、冷却水を排出する冷却水出口43Bとが形成される。
【0020】
燃料電池スタック100は、積層方向の任意の位置において、2つの単位セル10の間に面圧検出部60を備える。面圧検出部60は、単位セル10の積層方向に直交する面(積層面)における圧力を検出する。
【0021】
本実施形態では1つの面圧検出部60を設けるようにしたが、積層方向に亘って複数の面圧検出部60を設けるようにしてもよい。また、単位セル10の間に面圧検出部60を設けるようにしたが、単位セル10と集電板20との間に面圧検出部60を設けるようにしてもよい。
【0022】
積層した単位セル10、集電板20、絶縁板30、エンドプレート40、可動板50及び面圧検出部60は、積層面内の四隅の貫通孔にタイロッド70を挿通し、タイロッド70の端部にナットを螺合することによって固定される。タイロッド70は、鋼等の金属材料によって形成される。タイロッド70は、電気短絡を防止するため、表面に絶縁処理が施される。
【0023】
図2は、燃焼電池システムの概略構成図である。
【0024】
燃料電池スタック100は、エンドプレート40と可動板50との間に、複数の面圧調整装置80を備える。面圧調整装置80は圧電アクチュエータや油圧シリンダであって積層方向に伸縮する。これら面圧調整装置80は、コントローラ90によって制御される。
【0025】
コントローラ90は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ90は、面圧検出部60と信号線で接続し面圧信号を検出する面圧信号検出回路91と、検出された面圧信号に基づいて積層面圧を演算する面圧演算回路92とを有する。コントローラは、各面圧検出位置における積層面圧に基づいて面圧分布を算出し、算出された面圧分布に基づいて面圧調整装置80を駆動して積層面圧を調整する。
【0026】
図3(A)及び図3(B)を参照して、燃料電池スタック100の面圧検出部60の構成について説明する。図3(A)は面圧検出部60の一部縦断面図であり、図3(B)は面圧検出部60の分解斜視図である。
【0027】
図3(A)及び図3(B)に示す面圧検出部60は、膜電極接合体(MEA)11とセパレータ12とから構成される単位セル10の間に挟まれるシート状部材であって、電極間の静電容量に基づいて圧力を検出する圧力センサである。
【0028】
面圧検出部60は、内側絶縁部61と、行電極62と、列電極63と、外側絶縁部64と、導電部65と、スペーサ66とを備える。
【0029】
内側絶縁部61は、積層方向に弾性変形可能な電気絶縁材によって、単位セル10の積層面とほぼ同面積のシート状に形成される。内側絶縁部61は、エンジニアリングプラスチックシートやフッ素系ゴムシート等から形成される。内側絶縁部61は、一方の側面に行電極62を備え、他方の側面に列電極63を備える。なお、図3(B)では図を見やすくするために内側絶縁部61の図示を省略している。
【0030】
行電極62は、短冊状に形成された電極であって、内側絶縁部61の側面に複数設けられる。これら行電極62は、長手側が水平となるように配置され、鉛直方向に所定間隔をあけて平行に配置される。本実施形態では行電極62は4つ設けられるが、行電極62の設置数はこれに限定されるものではない。
【0031】
列電極63は、短冊状に形成された電極であって、行電極62が設けられた内側絶縁部61の側面とは反対側の側面に複数設けられる。これら列電極63は、長手側が鉛直となるように配置され、水平方向に所定間隔をあけて平行に配置される。本実施形態では列電極63は4つ設けられるが、列電極63の設置数はこれに限定されるものではない。
【0032】
行電極62及び列電極63の外側には、外側絶縁部64が設けられる。外側絶縁部64は、電気絶縁材であって、単位セル10の積層面とほぼ同面積のシート状に形成される。外側絶縁部64は、行電極62及び列電極63と単位セル10とを電気的に絶縁する。
【0033】
スペーサ66は、内側絶縁部61と外側絶縁部64の縁部の間に設けられ、内側絶縁部61と外側絶縁部64との間隔を調整する。スペーサ66の厚さは、行電極62及び列電極63と等しく設定される。
【0034】
導電部65は、面圧検出部60に隣接する単位セル10同士を電気的に接続する。導電部65は、格子状に配置される行電極62及び列電極63の隙間を通過するように複数設けられ、外側絶縁部64及び内側絶縁部61を積層方向に貫通する。導電部65は行電極62及び列電極63の隙間を縫って配置されるので、導電部65と行電極62及び列電極63とは電気的に絶縁される。単位セル10で発電された電流は積層面内に複数設けられた導電部65を通って積層方向に流れるので、積層面内方向の電流分布の偏りが抑制される。
【0035】
本実施形態では導電部65は15個設けられるが、導電部65の設置数はこれに限定されるものではない。
【0036】
上記した面圧検出部60の導電部65は、積層方向に弾性変形可能に構成される。図4(A)〜図4(D)を参照して、導電部65について説明する。
【0037】
図4(A)に示すように、導電部65は、棒形状であって、両端に配置される大径筒部65Aと、これら大径筒部65Aを連結する小径筒部65Bとを備える。
【0038】
大径筒部65Aは、単位セル側が開口しており、反対側に端面65Cを有する。2つの大径筒部65Aの端面65Cには、小径筒部65Bが連結する。大径筒部65Aと小径筒部65Bとは同心で配置される。
【0039】
積層面圧ゼロ時の導電部65の様子を示す図4(B)及び最大積層面圧時の導電部65の様子を示す図4(C)を参照すると、大径筒部65Aの深さDA及び外径RA、小径筒部65Bの長さLBは以下のように設定される。
【0040】
【数1】

【0041】
【数2】

【0042】
【数3】

【0043】
上記した導電部65では大径筒部65Aと小径筒部65Bの接合境界である端面65Cがダイアフラムとして機能するので、図4(B)及び図4(C)に示すように導電部65は積層方向に弾性変形することができる。燃料電池スタック100において周囲温度や単位セル10の膨潤収縮等により積層面圧が変化しても、導電部65は速やかに積層方向に変形するので、内側絶縁部61や各電極62、63の変位を妨げることがない。
【0044】
また、図4(D)に示すように、大きな積層面圧が加わってダイアフラムとして機能する端面65Cが塑性変形した場合であっても、行電極62と列電極63との間には内側絶縁部61が介在し、内側絶縁部61の復元力によって行電極62及び列電極63の変形は抑制される。そのため端面65Cが塑性変形しても、積層面圧検出精度が悪化することがない。
【0045】
なお、導電部65では、図4(A)に示すように、大径筒部65Aと外部に設けられた電圧計93とが外側絶縁部64の内部に設けられる信号線93Aを介して接続する。電圧計93は、導電部65の両端間の電位差Viを検出する。コントローラ90は、電圧計93によって検出された電位差Viと、導電部65の形状及び体積抵抗率によって求められる電気抵抗値Rとに基づいて導電部65を流れる電流値Iを導電部65ごとに算出し、面圧検出部60を通過する発電電流の電流密度を算出する。
【0046】
図5(A)及び図5(B)を参照して、燃料電池スタック100における面圧分布検出について説明する。図5(A)は、コントローラ90に設けられる面圧信号検出回路91の構成を示す。また、図5(B)は、面圧信号検出回路91における静電容量検出回路91Cの構成を示す。
【0047】
コントローラ90の面圧信号検出回路91は、行電極側スイッチ回路91Aと、列電極側スイッチ回路91Bと、静電容量検出回路91Cとを備える。
【0048】
行電極側スイッチ回路91Aは、面圧検出部60の行電極62毎にスイッチSr1〜Sr4を有している。スイッチSr1〜Sr4は、信号線R1〜R4を介して各行電極62に接続する。
【0049】
列電極側スイッチ回路91Bは、面圧検出部60の列電極63毎にスイッチSc1〜Sc4を有している。スイッチSc1〜Sc4は、信号線C1〜C4を介して各列電極63に接続する。
【0050】
静電容量検出回路91Cは、行電極側スイッチ回路91A及び列電極側スイッチ回路91Bによって選択された行電極62と列電極63との間の静電容量Cdを検出する。
【0051】
面圧検出時には、行電極側スイッチ回路91AのスイッチSr1〜Sr4のいずれか一つをオンにし、その他はオフにするとともに、列電極側スイッチ回路91BのスイッチSc1〜Sc4のいずれか1つをオンにし、その他をオフにして、16ヵ所ある面圧検出位置を順次選択する。静電容量検出回路91Cには、選択された行電極62及び列電極63において、行電極62と列電極63とが対向する位置(面圧検出位置)における行電極信号Cin+と列電極信号Cin−が入力する。静電容量検出回路91Cは、行電極信号Cin+と列電極信号Cin−とに基づいて、面圧検出位置を示す位置情報r、cを付加して静電容量Cdを出力する。
【0052】
また、静電容量検出回路91Cは、選択された行電極62及び列電極63のうち高電位側と同電位の電圧信号Gを、非選択状態にある行電極62及び列電極63に出力するように構成されている。つまり、電圧信号Gは行電極側スイッチ回路91Aと列電極側スイッチ回路91Bへ供給され、オフ状態の行電極62及び列電極63に印加される。これによりオン状態の行電極62、列電極63とオフ状態の行電極62、列電極63との電位差がゼロになり、各信号線間には浮遊静電容量(Stray Capacitor)が形成されないため、静電容量検出回路91Cで検知される静電容量は、オン状態の行電極62と列電極63との間に形成される静電容量のみとなる。また同様にオフ状態となっている行電極62及び列電極63と接続する信号線においても電位差がゼロになることから浮遊静電容量(Stray Capacitor)が形成されることがない。このような構成とした面圧信号検出回路91によれば、面圧検出位置における行電極62と列電極63の間の静電容量の検出精度を高めることができる。
【0053】
上記した静電容量検出回路91Cは、図5(B)に示すように、演算増幅器911と、コンデンサ912、交流信号源913、トランス914と、静電容量算出回路915とを備える。
【0054】
演算増幅器911の反転入力端子には、行電極側スイッチ回路91Aのオン側の信号線が接続する。演算増幅器911の非反転入力端子には、行電極側スイッチ回路91A及び列電極側スイッチ回路91Bのオフ側の信号線が接続する。演算増幅器911の出力部と反転入力端子との間には、基準静電容量Crのコンデンサ912が設けられる。
【0055】
列電極側スイッチ回路91Bのオン側の信号線は、基準電位GNDに接続されるとともに、交流信号源913を介して演算増幅器911の非反転入力端子に接続される。
【0056】
トランス914は、演算増幅器911の出力に含まれる検出信号Vdと測定交流信号Voscのうち、検出信号Vdのみを取り出す。
【0057】
静電容量算出回路915は、次式に基づいて、面圧検出位置における行電極62と列電極63の間の静電容量Cdを出力する。
【0058】
【数4】

【0059】
コントローラ90は、上記のように算出された行電極62と列電極63の間の静電容量Cdに基づき、(5)式及び6(式)から面圧検出位置での面圧Pを求め、全面圧検出位置における面圧Pから積層面における面圧分布を算出する。
【0060】
【数5】

【0061】
【数6】

【0062】
以上により、第1実施形態の面圧分布検出装置では、下記の効果を得ることができる。
【0063】
面圧検出部60は、隣接する単位セル10同士を電気的に接続するとともに積層方向に弾性変形可能な導電部65を、行電極62及び列電極63とは電気的に絶縁した状態で、単位セル10の電極面に対応する領域で複数備える。そのため単位セル10の電極面から面圧検出部60を介して流れる電流の電流密度の偏りを抑制することができる。したがって、面圧検出部60は、電流密度に起因する発電性能の悪化を抑制しつつ、燃料電池スタック100における面圧分布を検出することができる。
【0064】
導電部65は、2つの大径筒部65Aを小径筒部65Bによって連結して、積層方向に伸縮可能に形成したので、燃料電池スタック100において周囲温度や単位セル10の膨潤収縮等により積層面圧が変化しても、内側絶縁部61や各電極62、63の変位を妨げることがなく、面圧検出精度を改善することができる。
【0065】
導電部65は、格子状に配置される行電極62及び列電極63の隙間を通過し、外側絶縁部64及び内側絶縁部61を積層方向に貫通するように設けられるので、面圧検出部60が大形化するのを回避することができる。
【0066】
各導電部65を流れる電流値を外部に設けられた電圧計93を用いて検出するので、面圧検出部60において積層面圧分布を検出するだけではなく、発電電流の電流密度分布をリアルタイムに検出することができる。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態における面圧分布検出装置は、第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、面圧検出部60の導電部65の構成において相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0068】
図6(A)は、面圧検出部60の一部縦断面図である。また、図6(B)は、面圧検出部60の分解斜視図である。なお、図6(B)では図を見やすくするために内側絶縁部61の図示を省略している。
【0069】
第1実施形態では導電部65を面圧検出部60内を積層方向に貫通させて設けたが、第2実施形態では導電部65を面圧検出部60の外側に設ける。
【0070】
導電部65は、隣接する単位セル10を電気的に接続する部材であり、銅やアルミの薄板のように電気導電性と熱伝導性が高い材料によって形成される。導電部65は、帯状に形成され、一対の外側絶縁部64の外縁部分を跨ぐように2つ折りにされる。導電部65の一端側の集電部65Dは行電極62側の外側絶縁部64の外側に接続し、他端側の集電部65Dは列電極63側の外側絶縁部64の外側に接続する。導電部65は2つ折りにされて構成されるので、積層方向に弾性変形が可能となる。
【0071】
導電部65は、図6(B)に示す通り、外側絶縁部64の一端側に4つ設けられ、他端側にも4つ設けられる。これら導電部65は、それぞれ水平状態で設けられ、鉛直方向に平行となるように配置される。
【0072】
なお、各導電部65の集電部65Dの合計面積は、単位セル10の電極面の面積とほぼ等しくなるように設定される。
【0073】
以上により、第2実施形態の面圧分布検出装置では、下記の効果を得ることができる。
【0074】
面圧検出部60は、一対の外側絶縁部64の外縁部分を跨ぐように2つ折りにされ、一端側の集電部65Dが行電極62側の外側絶縁部64の外側に設置され、他端側の集電部65Dが列電極63側の外側絶縁部64の外側に設置される導電部65を複数備えるので、単位セル10の取り出し電流の面内方向の電流分布状態を保ちながら積層面圧分布を検出することができる。
【0075】
また、導電部65は2つ折りにされることで積層方向に弾性変形が可能となり、燃料電池スタック100において周囲温度や単位セル10の膨潤収縮等により積層面圧が変化しても、内側絶縁部61や各電極62、63の変位を妨げることがなく、面圧を感度良く検出することができる。
【0076】
(第3実施形態)
第3実施形態における面圧分布検出装置は、第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、面圧検出部60の内側絶縁部61の構成において相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0077】
図7(A)は、単位セル側から見た面圧検出部60の平面図である。図7(B)は、図7(A)における面圧検出部60のB−B断面図である。
【0078】
図7(A)及び図7(B)に示すように、内側絶縁部61は、行電極62と列電極63との間であって、行電極62と列電極63とが対向する位置に空気室61Aを備える。空気室61Aは、直径rの円柱状に形成される。
【0079】
面圧検出部60は、外側絶縁部64の外側に集電層67を有する。導電部65は、集電層67を介して隣接する単位セル10に電気的に接続する。列電極63側の集電層67は、面内方向に延びる溝部67Aを形成する。
【0080】
列電極63及び列電極63側の外側絶縁部64には、内側絶縁部61の空気室61Aと集電層67の溝部67Aとを連通する貫通孔63A、64Aが形成される。
【0081】
上記の通り、本実施形態の面圧検出部60では、内側絶縁部61の空気室61Aに外気が自由に出入りすることができるようになっている。
【0082】
以上により、第3実施形態の面圧分布検出装置では、下記の効果を得ることができる。
【0083】
面圧検出部60の内側絶縁部61は、行電極62と列電極63とが対向する位置に空気室61Aを備えるので、行電極62と列電極63の間の静電容量における誘電率は空気の誘電率が支配的となる。空気の誘電率は真空中の誘電率にほぼ等しく、温度係数が小さいことから、面圧検出部60の温度環境が大きく変化しても、検出される静電容量の温度依存変動量を低く抑えることができる。したがって、静電容量に基づいて算出される積層面圧の温度依存誤差を低減することができる。
【0084】
また、内側絶縁部61の空気室61Aは外気と連通するように構成されるので、面圧検出部60の温度環境が大きく変化しても空気室61A内の圧力を一定とすることができ、空気室61A内の圧力変化に起因する面圧検出誤差を低減することができる。
【0085】
なお、内側絶縁部61に空気室61Aを形成すると、面圧検出部60の積層方向の剛性が低下してしまう。したがって、面圧検出部60によって高面圧分布を検出する場合には、図7(C)に示すように、空気室61A内に行電極62と列電極63とを支持する支持部材61Bを設けて、行電極62や列電極63、外側絶縁部64の曲げ剛性を補強するようにしてもよい。支持部材61Bは、誘電率の温度係数がなるべく小さいものを選ぶことが望ましい。面圧検出部60においては行電極62と列電極63の間の合成誘電率が検出感度に影響するため、温度係数が大きいものを選ぶと、検出される静電容量の温度依存誤差が大きくなるからである。
【0086】
(第4実施形態)
第4実施形態における面圧分布検出装置は、第3実施形態とほぼ同様の構成であるが、面圧検出部60の内側絶縁部61の構成において相違する。以下、その相違点を中心に説明する
図8(A)は面圧検出部60の内側絶縁部61の斜視図である。図8(B)は、図8(A)における内側絶縁部61のB断面を示す。
【0087】
第3実施形態では内側絶縁部61の空気室61Aを外気に連通するように構成したが、本実施形態では内側絶縁部61の空気室61Aを、図8(B)に示すように行電極62と列電極63との間で密閉するように構成する。
【0088】
また、内側絶縁部61は、図8(A)及び図8(B)に示すように、隣接する空気室61A同士を連通させる連通路61Cと、角部に配置される空気室61Aの1つと圧力調整装置94とを接続する接続通路61Dとを備える。
【0089】
圧力調整装置94は、空気室61A内に乾燥空気を供給したり、空気室61A内の乾燥空気を吸い出したりして、空気室61A内の圧力を調整する装置である。
【0090】
以上により、第4実施形態の面圧分布検出装置では下記の効果を得ることができる。
【0091】
面圧検出部60では行電極62と列電極63との間の絶縁体の変形のしやすさによって面圧検出感度(測定レンジ)が変化する。本実施形態では内側絶縁部61に形成される空気室61Aの圧力を圧力調整装置94によって調整することができるので、面圧検出部60での面圧検出感度を変更することが可能となる。このように面圧検出感度を選択できるようになると、面圧検出部60の適用範囲を拡大する。
【0092】
また、空気室61Aは密閉されるように構成されるので、面圧検出精度の悪化を招く水分や塵等が空気室61A内に入り込むことを防止することができる。
【0093】
(第5実施形態)
第5実施形態における面圧分布検出装置は、第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、面圧検出部60の行電極62及び列電極63の構成において相違する。以下、その相違点を中心に説明する
図9(A)は面圧検出部60の行電極62と列電極63とを模式的に示す図である。図9(B)は、行電極62に対する列電極63の配置状態を示す図である。
【0094】
図9(A)に示すように、面圧検出部60の行電極62は、列電極63と対向する面圧検出位置の形状を直径rAの円形に形成する。1つの行電極62には、4つの円形部が形成される。
【0095】
一方、列電極63は、行電極62と対向する面圧検出位置の形状を直径rBの円形に形成する。列電極63の円形部の直径rBは、行電極62の円形部の直径rAよりも小さく設定される。1つの列電極63には、4つの円形部が形成される。
【0096】
面圧検出部60においては、面圧検出部60の製造時や経時変化によって列電極63が行電極62に対して面内方向にずれることがある。本実施形態では、上記のように行電極62及び列電極63を構成するので、図9(B)に示すように列電極63が行電極62に対してずれても、面圧検出位置における行電極62と列電極63の実質有効検出面積は列電極63の円形部の面積となり、有効検出面積が大きく変化することがない。
【0097】
以上により、第5実施形態の面圧分布検出装置では、下記の効果を得ることができる。
【0098】
面圧検出部60の列電極63は、行電極62と対向する面圧検出位置の形状を行電極62よりも大面積となるように形成するので、面圧検出位置での面積差分相当の位置決め交差が許容され、行電極62と列電極63のずれによる面圧検出精度の悪化を抑制することができる。
【0099】
(第6実施形態)
第6実施形態における面圧分布検出装置は、第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、コントローラ90の面圧信号検出回路91の構成において相違する。以下、その相違点を中心に説明する
図10は、コントローラ90の面圧信号検出回路91の構成を示す図である。
【0100】
第1実施形態の面圧信号検出回路91では行電極側スイッチ回路91Aと列電極側スイッチ回路91Bとが静電容量検出回路91Cに接続するように構成した。これに対して本実施形態では行電極62毎に静電容量検出回路91Cを備え、各静電容量検出回路91Cと列電極側スイッチ回路91Bとを接続するように構成する。したがって、各静電容量検出回路91Cには、各行電極62からの行電極信号Cin+が常時入力する。
【0101】
列電極側スイッチ回路91Bは、列電極63毎にスイッチSc1〜Sc4を有している。スイッチSc1〜Sc4がオンになると、列電極信号Cin−が列電極側スイッチ回路91Bから各静電容量検出回路91Cに出力される。スイッチSc1〜Sc4がオフになると、交流信号源913と同電位の電圧信号Gが静電容量検出回路91Cから列電極側スイッチ回路91Bに出力される。
【0102】
なお、交流信号源913は、4つの静電容量検出回路91Cに共通のものとされる。
【0103】
本実施形態では、面圧検出時に、列電極側スイッチ回路91BのスイッチSc1〜Sc4の内の1つをオンにし、その他はオフとして、1つの列電極63内の4つの面圧検出位置における面圧を同時に検出する。そして、オン状態にするスイッチSc1〜Sc4を順次変更することで、全面圧検出位置の面圧を検出する。
【0104】
以上により、第6実施形態の面圧分布検出装置では、下記の効果を得ることができる。
【0105】
本実施形態では行電極62毎に静電容量検出回路91Cを備えるので、面圧検出時に列電極側スイッチ回路91BのスイッチSc1〜Sc4の内の1つをオンにすることで、1つの列電極63内の4つの面圧検出位置における面圧を同時に検出することができる。これにより、第1実施形態よりも面圧検出速度を高速化でき、面圧分布検出に要する時間を短縮することができる。
【0106】
1つの列電極63の複数位置で静電容量を同時に測定する際には隣接する列電極63との信号干渉が問題となるが、本実施形態では交流信号源913を全静電容量検出回路91Cに共通とするので、列電極63間が等価的に絶縁されて信号干渉を回避することができる。
【0107】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0108】
上記した第1〜第6実施形態では燃料電池の場合について説明したが、本発明における面圧分布検出装置は単位セルを複数積層するリチウムイオン電池等の積層型電池についても適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
100 燃料電池スタック
10 単位セル
60 面圧検出部
61 内側絶縁部
61A 空気室
61B 支持部材
61C 連通路
62 行電極(第2電極)
63 列電極(第1電極)
64 外側絶縁部
65 導電部
65A 大径筒部
65B 小径筒部
65C 端面
65D 集電部
90 コントローラ(面圧分布測定部)
91 面圧信号検出回路
91A 行電極側スイッチ回路(第2電極選択部)
91B 列電極側スイッチ回路(第1電極選択部)
91C 静電容量検出回路(静電容量算出部)
92 面圧演算回路
93 電圧計
94 圧力調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電単位セルが複数積層される積層型電池の積層面圧分布を検出する面圧分布検出装置において、
前記単位セルの積層方向に弾性変形可能な内側絶縁部と、
前記内側絶縁部の一方の積層方向側面に複数設けられる第1電極と、
前記内側絶縁部の他方の積層方向側面に複数設けられ、前記第1電極と対向する前記第2電極と、
前記第1電極と第1電極側単位セルとの間に設けられるとともに、前記第2電極と第2電極側単位セルとの間に設けられる一対の外側絶縁部と、
積層方向に弾性変形可能に構成され、前記第1電極及び前記第2電極に対して電気絶縁した状態で、前記第1電極側単位セルと前記第2電極側単位セルとを電気的に接続する複数の導電部と、
前記第1電極と前記第2電極との対向距離に応じて変化する静電容量に基づいて積層面圧を算出し、積層面圧に基づいて積層面圧分布を求める面圧分布測定部と、
を備えることを特徴とする面圧分布検出装置。
【請求項2】
前記第1電極は、短冊状に形成された電極であって、前記内側絶縁部の一方の積層方向側面に互い平行に配置され、
前記第2電極は、短冊状に形成された電極であって、前記内側絶縁部の他方の積層方向側面に互いに平行に配置されるとともに、前記第1電極に対して直交して交差するように設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の面圧分布検出装置。
【請求項3】
前記導電部は、前記内側絶縁部と前記外側絶縁部とを積層方向に貫通するように形成され、前記第1電極側単位セル及び前記第2電極側単位セルに当接する一対の大径筒部と、前記一対の大径筒部を連結する小径筒部とを備え、積層方向に弾性変形できるように前記小径筒部が接続する前記大径筒部の端面をダイアフラムとして機能させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の面圧分布検出装置。
【請求項4】
前記導電部は、帯状に形成され、両端部に前記外側絶縁部の外側に配置される集電部を備え、積層方向に弾性変形できるように前記外側絶縁部の縁部を跨いで2つ折りにする、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の面圧分布検出装置。
【請求項5】
前記内側絶縁部は、対向する前記第1電極と前記第2電極との間に空気室を形成する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の面圧分布検出装置。
【請求項6】
前記内側絶縁部の空気室は、大気に連通するように構成される、
ことを特徴とする請求項5に記載の面圧分布検出装置。
【請求項7】
前記内側絶縁部の空気室内の圧力を調整する圧力調整装置をさらに備える、
ことを特徴とする請求項5に記載の面圧分布検出装置。
【請求項8】
対向する前記第1電極と前記第2電極のうち一方の電極が他方の電極領域を内包するように、一方の電極の面圧検出位置における電極面積を他方の電極面積よりも大きくする、
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の面圧分布検出装置。
【請求項9】
前記面圧分布測定部は、前記導電部の両端の電位差に基づいて前記導電部を流れる電流値を算出し、算出された電流値に基づいて積層面内における電流値分布を検出する、
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の面圧分布検出装置。
【請求項10】
前記面圧分布測定部は、
複数の前記第1電極から1つの電極を選択する第1電極選択部と、
複数の前記第2電極から1つの電極を選択する第2電極選択部と、
順次選択された前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量を算出する静電容量算出部と、を備え、
全面圧検出位置での静電容量に基づいて積層面圧を算出し、積層面圧分布を求める、
ことを特徴とする請求項2に記載の面圧分布検出装置。
【請求項11】
前記面圧分布測定部は、
複数の前記第1電極から1つの電極を選択する第1電極選択部と、
前記第2電極毎に設けられ、それぞれの前記第2電極と選択された前記第1電極との間の静電容量を同時に算出する静電容量算出部と、を備え、
全面圧検出位置での静電容量に基づいて積層面圧を算出し、積層面圧分布を求める、
ことを特徴とする請求項2に記載の面圧分布検出装置。
【請求項12】
前記面圧分布測定部は、選択されていない前記第1電極及び前記第2電極に、選択された電極間の電位差と同電位差の電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の面圧分布検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−276520(P2010−276520A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130537(P2009−130537)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】