説明

積層材の製造方法

【課題】所望の面に熱硬化性の接着剤を塗布した単板の少数枚を、上下一対の加熱盤の間に於て、積層材の各層毎に、階段状にずらして重ね合わせ、積層と接着を順々に繰り返して、積層材を連続的に製造するに際し、製造途中の積層材を、安定的に後退させる。
【解決手段】製造途中の積層材11を、一旦最終移送方向へ前進させて、加熱盤A、Bの後位まで移送すると共に、下面に接着剤Uを塗布して成る単板1g、1hを、積層材11の上へ供給し、次いで、積層材11を最終移送方向と逆方向へ後退させる場合に、積層材11の後端近辺に当接して、該後端の撓みを一定限度以内に抑止する撓み止め部材Dを、加熱盤Aの後位から加熱盤Aの前端付近まで進退自在に備え、少なくとも積層材11を後退させる際には、前記撓み止め部材Dを積層材11と同期的に後退させることにより、積層材11の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ後退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原木から削成した後に、所定の形状に成形して成るベニヤ単板(以下、単に単板と称す)の複数枚を、望ましくは各層毎に適宜距離だけ階段状にずらして重ね合わた状態に積層し、且つ、熱硬化性の接着剤を介して接着して成る積層材の製造方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に特許文献1に開示する如く、加熱蒸気、加熱油、電熱ヒータ等の熱源を介して、所望温度に加熱されており、接着剤を塗布した単板の全長(積層材の長さ方向と同方向の長さの全長)を熱圧するに足る寸法の加熱面を有し、而も上下の両方又は片方が、流体シリンダ等から成る昇降作動機構を介して、昇降自在に備えられた、上下一対の加熱盤の間に、所望の面のみに接着剤を塗布して成る単板の少数枚を、所望の層毎に(望ましくは各層毎に)適宜距離だけ階段状にずらして供給すると共に、少なくとも接着剤を塗布して重ねた直後の単板については、加熱盤による熱圧作用が全面的に及ぶ位置に位置させて、熱圧して接着するように、積層と接着を順々に繰り返して、所望積層数の積層材を連続的に製造することによって、従前の、この種の製造方法の欠陥であった、単板に対する圧締を伴わない接着剤への加熱に起因する、局部的な接着不良の発生を予防できる、有益な製造方法を提案した。本発明は、斯様な製造方法の改良に係わるものであり、基本的な技術思想を同じくするものであるから、本発明の理解を容易化する便宜上、以下、特許文献1で提案した製造方法の概要を、代表的な様態を例に挙げて説明する。
【0003】
即ち、例えば図16(イ)に例示する如く、当初、破線で示す如く上面のみに接着剤Uを塗布した単板2aと、接着剤を塗布しない(接着剤を塗布すべき面を有しない)単板2bとの二枚を準備し、図示矢印で示す如く、既存の基台20の形状に適合させて、適宜距離だけ階段状にずらした状態に重ね合わせるように、前記単板2aの全長を熱圧し得る寸法の加熱面h1、k1を有する上下一対の加熱盤H、Kの間に供給し、次いで、図16(ロ)に例示する如く、前記各単板2a、2bを、適宜の加圧力を以って、加熱盤H、Kで熱圧すると共に、接着剤Uを塗布した二枚の単板2c、2dを準備し、次いで、接着剤の硬化に適する所要時間経過後に、図16(ハ)に例示する如く、加熱盤H、Kによる熱圧を開放すると共に、ロールコンベヤ・チェーンコンベヤ等から成る積層材の移送機構Wを介して、積層材21を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させ、更に図示矢印で示す如く、前記単板2c、2dを、積層材21の形状に適合させて上側と下側へ各一枚ずつ供給し、次いで、図16(ニ)に例示する如く、前記各単板2c、2dを、加熱盤H、Kで熱圧すると共に、接着剤Uを塗布した二枚の単板2e、2fを準備し、次いで、所要時間経過後に、図16(ホ)に例示する如く、加熱盤H、Kによる熱圧を開放すると共に、移送機構Wを介して、積層材22を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させ、更に図示矢印で示す如く、前記単板2e、2fを、積層材22の形状に適合させて上側と下側へ各一枚ずつ供給し、次いで、図16(ヘ)に例示する如く、前記各単板2e、2fを、加熱盤H、Kで熱圧すると共に、接着剤Uを塗布した単板2gと、接着剤を塗布しない単板2hとを準備し、次いで、所要時間経過後に、図16(ト)に例示する如く、加熱盤H、Kによる熱圧を開放すると共に、移送機構Wを介して、当初の図16(イ)の位置まで積層材23を最終移送方向へ移送する。以下、同様の操作を繰り返して、所望層数(図示例は六層)の積層材23を連続的に製造する。
【0004】
述上の如き製造方法によれば、接着剤を塗布して重ねた直後の単板を、加熱盤による熱圧作用が全面的に及ぶ位置に位置させて熱圧するものであるから、単板に対する圧締を伴わない接着剤への加熱に起因する、局部的な接着不良の発生が予防可能であり、従前の製造方法の欠陥が払拭できるのは勿論のこと、一回の熱圧操作によって、上下二枚の単板を一度に積層接着するので、特許文献1に開示した他の様態(図示省略)、即ち、単板を一枚づつ上側又は下側のいずれか片側のみにずらして重ねながら順々に接着する様態に比べれば、能率性が勝る利点もある。
【0005】
因に、述上の如く、先に積層接着した単板の外側へ、次の単板を順々に積層接着する製造方法によると、直前に積層接着した単板の余熱が、次に積層する単板に塗布された接着剤の硬化に寄与するので、直前に積層接着した単板に当接する部位については、比較的早く接着剤が硬化するが、既存の基台及び積層接着済みの積層材に於ける、次に積層接着されるべき単板が重ね合わされる部分であって、而も接着剤を塗布した単板の全長を熱圧し得る寸法の加熱面を有する加熱盤が直に当接しない部分(前記各図に於て符号zで示す部分)については、同様の余熱が殆ど当てにできないので、結果的に、前記様態にあっては、いずれの層を接着する場合も、接着剤の硬化時間の短縮化を図るには不向きである。
【0006】
それに対して、例えば図17(イ)に例示する如く、接着剤を塗布して重ねる単板2aの全長に加えて、既存の基台20及び部分積層接着済みの積層材21、22に於ける、次に積層接着されるべき単板2c、2d、2e、2fが重ね合わされる部分zの全面をも熱圧するに足る寸法の加熱面h2、k2を有する上下一対の加熱盤Ha、Kaを備えて、先記図16の実例と同様に、図17(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、(へ)、(ト)の順に例示する如く、接着剤Uを塗布した単板2c、2d、2e、2fを順次ずらし重ねて熱圧する際に、既存の基台20及び積層接着済みの積層材21、22に於ける、次に積層接着されるべき単板2c、2d、2e、2fが重ね合わされる部分zの全面をも一緒に熱圧することによって、順々に積層接着する単板2c、2d、2e、2fに対する加熱と併せて、前記部分zの全面へも予熱を施しておく様態によれば、該予熱に伴う余熱が、次に積層接着される単板2c、2d、2e、2fに塗布された接着剤Uの硬化促進に寄与するので、先に厚さ方向の中心付近に積層接着するニ枚(後述する実例に於ては三枚)の単板2a、2b以外の単板を順々に積層接着する際に、熱圧時間の短縮化を図ることができ、先記図16に例示した様態に比べて更に能率性が優れる利点があり、積層数が比較的多い場合に特に有効である。
【0007】
また一方、述上の如く、先に積層接着した単板の外側へ、次の単板を階段状にずらして重ね合わせながら順々に積層接着する製造方法によると、次の単板を熱圧する際に、直前に積層接着した単板の大部分には、現に接着する単板を介して、波及的に圧締力が作用することになるので、例えば単板の含水率のムラなどに起因して、接着剤の硬化が些か不足気味である場合など、たとえ接着が局部的に些か不安定であっても、前記波及的な圧締力が作用した状態の下で、単板の余熱による二次的な接着が遂行されるので、総じて接着が安定化する傾向となる。但し、先記図16及び図17に例示した様態に於ては、直前に積層接着した単板の後端側の一部、つまり、現に接着する単板が当接しない部分(前記各図に於て符号yで示す部分)については、前記波及的な圧締力の作用(いわば、駄目押し作用)が及ばないので、斯様な接着の安定化が期待できない。
【0008】
それに対して、例えば図18(イ)に例示する如く、現に接着する単板の全長を熱圧するに足る加熱面m1、n1を有する主要熱盤部分の後端側に、直前に積層接着した単板の後端側に於ける現に接着する単板が当接しない部分yを熱圧するに足る加熱面m3、n3を有する補助熱盤Mb、Nbを一体状、又は別体状に付設(必要に応じては、図18に例示した補助熱盤Nbの如く、最大限度で、単板の厚さと同等程度、昇降可能又は弾性変位可能に付設)して成る、階段状の加熱面m1、m3、n1、n3を有する上下一対の加熱盤M、Nを備えて、先記各実例に準じ、図18(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、(へ)、(ト)の順に例示する如く、現に接着する単板を熱圧する際に、直前に積層接着した単板の後端側に於ける現に接着する単板が当接しない部分yをも一緒に熱圧する様態によれば、直前に積層接着した単板の全ての部分に於ける接着の安定化を図ることが可能となる。
【0009】
勿論、例えば図19(イ)に例示する如く、接着剤を塗布して重ねる単板2aの全長に加えて、既存の基台20及び部分積層接着済みの積層材21、22に於ける、次に積層接着されるべき単板2c、2d、2e、2fが重ね合わされる部分zの全面をも熱圧するに足る寸法の加熱面m2、n2を有する主要熱盤部分の後端側に、直前に積層接着した単板の後端側に於ける現に接着する単板が当接しない部分yを熱圧するに足る加熱面m3、n3を有する補助熱盤Mb、Nbを一体状、又は別体状に付設(必要に応じては、図19に例示した補助熱盤Nbの如く、最大限度で、単板の厚さと同等程度、昇降可能又は弾性変位可能に付設)して成る、階段状の加熱面m2、m3、n2、n3を有する上下一対の加熱盤Ma、Naを備えて、先記各実例に準じ、図19(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、(へ)、(ト)の順に例示する如く、接着剤を塗布した単板を順次ずらし重ねて熱圧する様態によれば、中心付近以外の単板を積層接着する際の熱圧時間の短縮化と、直前に積層接着した単板の全ての部分に於ける接着の安定化とを、併せて図ることができる。
【0010】
因に、前記各実例を含めて、斯様に各層毎に一枚づつ単板を積層する様態であれば、加熱盤の間へ単板を適確に供給することが比較的容易であるから、必要に応じては、後述する様態を採ることにより、奇数層の積層材を製造することも可能である。
【0011】
即ち、例えば図20(イ)に例示する如く、当初、上面のみに接着剤を塗布した単板3a、3cと、接着剤を塗布しない単板3bとの三枚を準備し、図示矢印で示す如く、既存の基台30の形状に適合させて、前記単板3a、3bを適宜距離だけ階段状にずらして、前記図19の実例と同じ下側の加熱盤Maの上に供給し、次いで、図20(ロ)に例示する如く、下側の加熱盤Maを介して、前記単板3a、3bを、基台30の段差に適合する位置まで上昇させると共に、基台30の形状に適合させて、前記単板3cを単板3bの上に供給し、次いで、図20(ハ)に例示する如く、対の上側の加熱盤Naを下降させて、前記単板3a、3b、3cを適宜の加圧力で熱圧すると共に、接着剤Uを塗布した二枚の単板3d、3eを準備し、次いで、所要時間経過後に、図20(ニ)に例示する如く、加熱盤Ma、Naによる熱圧を開放すると共に、移送機構Wを介して、積層材21を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させ、更に前記単板3d、3eを、積層材31の形状に適合させて上側と下側へ各一枚ずつ供給し、次いで、図20(ホ)に例示する如く、前記各単板3d、3eを、加熱盤Ma、Naで熱圧すると共に、接着剤Uを塗布した二枚の単板3f、3gを準備し、次いで、所要時間経過後に、図20(ヘ)に例示する如く、加熱盤Ma、Naによる熱圧を開放すると共に、移送機構Wを介して、積層材32を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させ、更に前記単板3f、3gを、積層材32の形状に適合させて上側と下側へ各一枚ずつ供給し、次いで、図20(ト)に例示する如く、前記各単板3f、3gを、加熱盤Ma、Naで熱圧すると共に、接着剤Uを塗布した単板3h、3kと、接着剤を塗布しない単板3jとを準備し、次いで、図示は省略したが、所要時間経過後に、加熱盤Ma、Naによる熱圧を開放すると共に、移送機構Wを介して、当初の図20(イ)の位置まで積層材33を最終移送方向へ移送する。以下、同様の操作を繰り替えすことによって、奇数層の積層材33を連続的に製造することができる。
【0012】
尚、前記図20の実例の如き様態を採る限りに於ては、図からも明らかな如く、補助熱盤Nbは、いずれの層に供給する単板を熱圧する場合であっても、主要熱盤部分に対する変位が、必須要件ではないから、先記図18、図19の実例等のように、主要熱盤部分に対して昇降可能又は弾性変位可能に付設する必要はなく、主要熱盤部分へ一体状に固定的に付設しても差支えない。
【0013】
因に、前記いずれの様態であっても、単板の積層枚数は、必要に応じて、適宜増減して差支えなく、前記一連の操作の繰り返しによって、所望積層数の積層材が連続状に製造できるので、所望長さ毎に鋸で分断して実用に供する。また、先記既存の基台は、単板を積層接着して成る同種の積層材を用いるのが好便であり、一旦積層材を製造して以降は、残材に継ぎ足しを繰り返すだけで良いが、必ずしも同種の積層材に限るものではなく(特に最初に用いる基台については)、図示は省略したが、木材・プラスチック・軽金属等の如き別の素材を、所要形状に成形したものであっても差支えない。また更に、前記いずれの様態に於ても、特に上下最表層の単板の接着については、一段と適確で安定的な接着が欠かせないから、必要に応じては、十分に余裕のある熱圧の設定を図って、厚さ方向の中心付近にニ枚乃至は三枚の単板を積層接着する場合の熱圧時間と同等の熱圧時間、或はそれ以上の熱圧時間を以って熱圧するようにしても差支えない。また更に、層毎に於ける各単板同士の境界線は、必ずしも先記各図示例の如く概して上下対称である必要はなく、図示は省略したが、必要に応じては、特許文献1に開示する如く、上側と下側の前後に対称的な階段状の段差を設けて成る上下一対の加熱盤を備え、既存の基台の段差位置と単板の供給位置とを、上側と下側とで異ならせて熱圧を繰返すことにより、層毎に於ける各単板同士の境界線を、上下非対称に積層接着して成る積層材を製造するようにしても差支えない。
【0014】
而して、前記各実例の如く、各層毎に一枚づつ単板を積層接着する様態であれば、先述した通り、加熱盤の間へ単板を適確に供給することが比較的容易であって、単板の供給機構(図示省略)を含めた、製造装置全体の構造も比較的簡単になる長所がある反面、能率性には限りがあり、大量生産を図るに適した様態とは言い難い短所がある。
【0015】
そこで、特許文献1に於ては、先記各図示例の如き代表的な様態を基礎として、後述する如き改良例を併せて提案しているので、以下、更に詳述するが、説明の冗長化を避ける便宜上、上下一対の加熱盤の形状については、先記図16に例示した加熱盤の形状と同じ形状を、選択的な実例として挙げるに留め、図17、図18、図19に例示した加熱盤の形状に準ずる設計変更例に関しては、重複的な図示と説明を省略する。
【0016】
先ず、製造装置については、例えば図21(イ)に例示する如く、少なくとも直列状に並べた二枚の単板の全長を熱圧し得る寸法の加熱面q1、r1を有する上下一対の加熱盤Q、Rを備えると共に、下側の加熱盤Qの前位に、少なくとも直列状に並べた二枚の単板を安定的に支持して、下側の加熱盤Qの直上まで移送することが可能な、伝熱性に優れて丈夫な材料、例えばアルミニウム、ステンレス鋼等の如き材料から成る挿入板Pを、単板の全長方向へ進退自在に備えて、製造装置を構成する。
【0017】
そして、当初は、図21(イ)に例示する如く、加熱盤Q、Rの前位に、上面のみに接着剤Uを塗布した単板4a、4bと、接着剤を塗布しない単板4c、4dとの四枚を準備し、図示矢印で示す如く、適宜距離だけ階段状にずらした状態に重ね合わせるように、挿入板Pの上に供給して載置し、次いで、図21(ロ)に例示する如く、既存の基台40の形状に適合させて、挿入板Pを加熱盤Q、Rの間に前進させる。次いで、図21(ハ)に例示する如く、前記各単板4a、4b、4c、4dを、適宜の加圧力を以って、加熱盤Q、Rで熱圧(但し、加熱盤Qについては、挿入板Pを介しての間接加熱)すると共に、加熱盤Q、Rの前位と後位とに、接着剤Uを塗布した各ニ枚づつの単板4e、4fと、単板4g、4hとを夫々準備し、次いで、接着剤の硬化に適する所要時間経過後に、図22(ニ)に例示する如く、加熱盤Q、Rによる熱圧を開放すると共に、移送機構Wを介して、積層材41を最終移送方向へ適宜距離だけ前進させ、併せて、挿入板Pを当初の待機位置まで後退させた後に、図示矢印で示す如く、前記単板4e、4fを挿入板Pの上へ、また前記単板4g、4hを積層材41の上へ夫々供給する。次いで、図22(ホ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材41を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させると共に、積層材41の形状に適合させて、挿入板Pを加熱盤Q、Rの間に前進させた後に、図22(ヘ)に例示する如く、前記各単板4e、4f、4g、4hを、適宜の加圧力を以って、加熱盤Q、Rで熱圧し、併せて、加熱盤Q、Rの前位と後位とに、接着剤Uを塗布した各二枚づつの単板4j、4kと、単板4m、4nとを夫々準備する。次いで、所要時間経過後に、図23(ト)に例示する如く、加熱盤Q、Rによる熱圧を開放すると共に、移送機構Wを介して、積層材42を最終移送方向へ適宜距離だけ前進させ、併せて、挿入板Pを当初の待機位置まで後退させた後に、図示矢印で示す如く、前記単板4j、4kを挿入板Pの上へ、また前記単板4m、4nを積層材42の上へ夫々供給する。次いで、図23(チ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材42を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させると共に、積層材42の形状に適合させて、挿入板Pを加熱盤Q、Rの間に前進させた後に、図23(リ)に例示する如く、前記各単板4j、4k、4m、4nを、適宜の加圧力を以って、加熱盤Q、Rで熱圧し、併せて、加熱盤Q、Rの前位に、上面のみに接着剤Uを塗布した単板4p、4qと、接着剤を塗布しない単板4r、4sとの四枚を準備する。そして、所要時間経過後に、図示は省略したが、加熱盤Q、Rによる熱圧を開放すると共に、移送機構Wを介して、積層材43を、当初の図21(イ)に例示した位置まで前進させ、併せて、挿入板Pを当初の待機位置まで後退させる。以下、同様の動作を繰り返して、所望層数(図示例は六層)の積層材43を連続的に製造する。
【0018】
述上の如き様態であれば、先記図16〜図20に例示した実例の様態に比べて、単板の供給装置として、単板の移載に使用する移載機構の他に、挿入板と、挿入板用の進退機構(図示省略)が余計に必要になるので、製造装置全体の構造は些か複雑化するものの、製造能力が著しく向上するので、大量生産には好適であり、実用性に富む製造方法である。因に、先記実例は、上下の各層毎に二枚づつの単板を供給するので、製造能率は、二倍弱であるが、必要に応じては、加熱盤と挿入板の寸法を伸ばすことにより、上下の各層毎に三枚乃至はそれ以上の単板を一度に供給して積層接着することも可能である。但し、加熱盤や挿入板の加工、剛性、作動の応答性等にも相応の制約があるので、単板の枚数を無制限に増加させることは不可能であり、各層へ一度に供給する単板は、あくまで少数枚とするのが基本である。また更に付言すると、必要に応じては、普通の単板の全長に比べて異常に長い全長(例えば普通の単板の二倍を超える全長)を有する単板、例えば公知の縦矧手段を用いて、予め所望長さに縦矧して成る長尺縦矧単板を、上下の各層毎に一枚づつ供給して積層接着する様態に、斯様な単板の供給様態を応用(転用)することも当然可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許4051085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
而して、先記図21〜図23に例示した実例の様態の場合に、個々の単板の全長が比較的短い限りに於ては、格別問題が発生する虞はないが、個々の単板の全長が比較的長い場合や、或は各層毎に三枚以上の単板を一度に供給して積層接着する場合等に、後述する如き問題が発生する。
【0021】
即ち、先記図21〜図23の実例に準じて各層毎に二枚づつ単板を積層接着する為に、例えば図24(イ)に例示する如く、直列状に並べた二枚の単板の全長を熱圧し得る寸法の加熱面a1、b1を有する上下一対の加熱盤A、Bを備えると共に、下側の加熱盤Aの前位に、直列状に並べた二枚の単板を安定的に支持して、下側の加熱盤Aの直上まで移送することが可能な挿入板Cを、単板の全長方向へ進退自在に備え、当初、加熱盤A、Bの前位に、上面のみに接着剤Uを塗布した単板1a、1bと、接着剤を塗布しない単板1c、1dとの四枚を準備し、図示矢印で示す如く、挿入板Cの上に供給して載置し、次いで、図24(ロ)に例示する如く、既存の基台10の形状に適合させて、挿入板Cを加熱盤A、Bの間に前進させ、次いで、図24(ハ)に例示する如く、前記各単板1a、1b、1c、1dを、適宜の加圧力を以って、加熱盤A、Bで熱圧すると共に、加熱盤A、Bの前位と後位とに、接着剤Uを塗布した各ニ枚づつの単板1e、1fと、単板1g、1hとを夫々準備し、次いで、接着剤の硬化に適する所要時間経過後に、図25(ニ)に例示する如く、加熱盤A、Bによる熱圧を開放すると共に、移送機構Wを介して、積層材11を最終移送方向へ適宜距離だけ前進させ、併せて、挿入板Cを当初の待機位置まで後退させた後に、図25(ホ)に例示する如く、前記単板1e、1fを挿入板Cの上へ、また前記単板1g、1hを積層材11の上へ夫々供給し、次いで、図25(ヘ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材11を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させると共に、積層材11の形状に適合させて、挿入板Cを加熱盤A、Bの間に前進させようとする際に、個々の単板(1a、1b、……等)の全長が比較的長いと、単板の自重に起因して、積層材11の後端が著しく撓むので、挿入板Cの上に載置された単板(或は挿入板)に当接する現象が発生して、該単板及び/又は積層材を、所望位置まで円滑に移送し得なくなる問題が惹起される。
【0022】
公知の如く、片持ち梁の撓み量は、長さの三乗に比例して増大するので、各層毎に供給する単板の枚数が三枚以上になれば、撓み量が飛躍的に増大する傾向となって、益々所望通りの適確な移送が成し得なくなる。また、たとえ各層毎に供給する単板の枚数が一枚であっても、当該単板の全長が、普通の単板の全長に比べて異常に長い場合には、やはり同様の問題が発生することになる。而して、単板及び/又は積層材を、所望位置まで円滑に移送し得なくなると、積層材の製造自体が不能化する虞が生じ、或は製造自体が不能化しなくても、単板の積層位置の精度が低下したり、或は適正な積層接着が困難となるので、積層材の品質が著しく劣化したりする問題が副次的に惹起される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、述上の如き積層材の製造方法に於ける問題の発生を回避すべく開発したものであって、具体的には、述上の如く積層と接着を順々に繰り返して、所望積層数の積層材を連続的に製造するに際し、先記改良例の様態に準じて、製造途中の積層材を、一旦最終移送方向へ前進させて、前記加熱盤の間から加熱盤の後位まで移送すると共に、下面に接着剤を塗布して成る単板の少数枚を、前記加熱盤の後位に於て、製造途中の積層材の上へ供給し、次いで、積層材を最終移送方向と逆方向へ後退させて、接着剤を塗布して重ねた直後の単板を、加熱盤に合致する位置へ移送し、熱圧して接着する積層材の製造方法であって、製造途中の積層材の後端近辺に当接して、該後端の撓みを一定限度以内に抑止する撓み止め部材を、前記加熱盤の後位から加熱盤の前端付近まで進退自在に備え、少なくとも積層材を後退させる際には、前記撓み止め部材を積層材と同期的に後退させることにより、積層材の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ後退させるようにしたことを特徴とする積層材の製造方法(請求項1)と、加熱盤による熱圧を開放して、製造途中の積層材を、最終移送方向へ前進させるのに先立って、撓み止め部材を、予め加熱盤の前端付近まで後退させると共に、積層材を前進させる際に、撓み止め部材を同期的に前進させることにより、積層材の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ前進させるようにして成る請求項1記載の積層材の製造方法(請求項2)と、製造し終えた積層材を、最終移送方向へ前進させる前に、撓み止め部材を、予め加熱盤の前端付近まで後退させると共に、積層材を前進させる際に、撓み止め部材を同期的に前進させることにより、積層材の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ前進させるようにして成る請求項1又は請求項2記載の積層材の製造方法(請求項3)と、遊転自在なロール状の撓み止め部材を用いて成る請求項1又は請求項2又は請求項3記載の積層材の製造方法(請求項4)とを提案する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1に係る製造方法によれば、撓み止め部材によって、積層材の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ後退させるものであるから、従前(図25参照)の如く、積層材の後端が、挿入板の上に載置された単板(或は挿入板)に当接する現象が発生しなくなって、挿入板の上に載置された単板及び積層材を、常に所望位置まで円滑に移送することができるので、積層材の製造自体が不能化する虞はなく、また、単板の積層位置の精度が安定化するので、積層材の品質が劣化する問題も解消される。
【0025】
また、請求項2或は請求項3に係る製造方法によれば、撓み止め部材によって、積層材の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ前進させるものであるから、積層材の後端が挿入板や下側の加熱盤等に摺接する虞もなくなって、積層材を安定的に前進させることができ、結果的に、次に積層する単板の積層位置の精度も安定化する傾向となる。
【0026】
また、撓み止め部材の具体的な形態としては、積層材の後端に対する接触の円滑性や耐久性等からして、請求項3に開示する遊転自在なロール状が最も望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る製造方法の工程を表す工程説明図である。
【図2】図1の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【図3】図2の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【図4】図3の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【図5】図4の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【図6】本発明の製造方法に係る別の様態の工程説明図である。
【図7】本発明の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図8】本発明の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図9】本発明の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図10】本発明の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図11】本発明の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図12】図11の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【図13】図12の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【図14】本発明の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図15】図14の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【図16】既知の製造方法の工程を表す工程説明図である。
【図17】既知の製造方法に係る別の様態の工程説明図である。
【図18】既知の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図19】既知の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図20】既知の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図21】既知の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図22】図21の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【図23】図22の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【図24】既知の製造方法に係る更に別の様態の工程説明図である。
【図25】図24の工程説明図の工程に後続する工程の工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、特許文献1に開示した有益な製造方法の基本的な構成、及び該基本的な構成に基づく設計変更例の様態等については、既に説明済みであるから、説明の冗長化を回避する便宜上、本発明に係る積層材の製造方法の工程全体に関する説明は、最も単純な構成の様態の場合についてのみ詳述するに留め、該単純な構成に基づく設計変更例の様態については、全工程の内の一部についてのみ説明することとし、工程全体については説明を省略する。
【実施例】
【0029】
本発明に係る積層材の製造方法は、例えば図1(イ)に例示する如く、直列状に並べた二枚の単板の全長を熱圧し得る寸法の加熱面a1、b1を有する上下一対の加熱盤A、Bを備えると共に、下側の加熱盤Aの前位に、直列状に並べた二枚の単板を安定的に支持して、下側の加熱盤Aの直上まで移送することが可能な挿入板Cを、単板の全長方向へ進退自在に備え、更に後述する如く製造途中の積層材の後端近辺に当接して、該後端の撓みを一定限度以内に抑止する適宜形態の撓み止め部材、例えば遊転自在なロール状の撓み止め部材Dを、前記加熱盤Aの後位から加熱盤Aの前端付近まで進退自在に備える。
【0030】
そして、当初は、図1(イ)に例示する如く、加熱盤A、Bの前位に、上面のみに接着剤Uを塗布した単板1a、1bと、接着剤を塗布しない単板1c、1dとの四枚を準備し、図示矢印で示す如く、挿入板Cの上に供給して載置し、次いで、図1(ロ)に例示する如く、既存の基台10の形状に適合させて、挿入板Cを加熱盤A、Bの間に前進させ、次いで、図1(ハ)に例示する如く、前記各単板1a、1b、1c、1dを、適宜の加圧力を以って、加熱盤A、Bで熱圧すると共に、加熱盤A、Bの前位と後位とに、接着剤Uを塗布した各ニ枚づつの単板1e、1fと、単板1g、1hとを夫々準備し、次いで、接着剤の硬化に適する所要時間経過後に、図2(ニ)に例示する如く、加熱盤A、Bによる熱圧を開放すると共に、撓み止め部材Dを、加熱盤Aの後位から加熱盤Aの前端付近まで後退させて、製造途中の積層材11の後端を支持し、次いで、図2(ホ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材11を最終移送方向へ適宜距離だけ前進させる際に、撓み止め部材Dも同期的に前進させ、併せて、挿入板Cを当初の待機位置まで後退させた後に、前記単板1e、1fを挿入板Cの上へ、また前記単板1g、1hを積層材11の上へ夫々供給し、次いで、図2(ヘ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材11を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させる際に、撓み止め部材Dも同期的に後退させ、併せて、積層材11の形状に適合させて、挿入板Cを加熱盤A、Bの間に前進させ、次いで、図3(ト)に例示する如く、撓み止め部材Dを、加熱盤Aの前端付近から加熱盤Aの後位まで前進させ、次いで、図3(チ)に例示する如く、前記各単板1e、1f、1g、1hを、適宜の加圧力を以って、加熱盤A、Bで熱圧すると共に、加熱盤A、Bの前位と後位とに、接着剤Uを塗布した各ニ枚づつの単板1j、1kと、単板1m、1nとを夫々準備し、次いで、所要時間経過後に、図3(リ)に例示する如く、加熱盤A、Bによる熱圧を開放すると共に、撓み止め部材Dを、加熱盤Aの後位から加熱盤Aの前端付近まで後退させて、製造途中の積層材12の後端を支持し、次いで、図4(ヌ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材12を最終移送方向へ適宜距離だけ前進させる際に、撓み止め部材Dも同期的に前進させ、併せて、挿入板Cを当初の待機位置まで後退させた後に、前記単板1j、1kを挿入板Cの上へ、また前記単板1m、1nを積層材12の上へ夫々供給し、次いで、図4(ル)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材12を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させる際に、撓み止め部材Dも同期的に後退させ、併せて、積層材12の形状に適合させて、挿入板Cを加熱盤A、Bの間に前進させ、次いで、図4(ヲ)に例示する如く、撓み止め部材Dを、加熱盤Aの前端付近から加熱盤Aの後位まで前進させ、次いで、図5(ワ)に例示する如く、前記各単板1j、1k、1m、1nを、適宜の加圧力を以って、加熱盤A、Bで熱圧し、次いで、所要時間経過後に、図5(カ)に例示する如く、加熱盤A、Bによる熱圧を開放すると共に、撓み止め部材Dを、加熱盤Aの後位から加熱盤Aの前端付近まで後退させて、製造した積層材13の後端を支持し、併せて、上面のみに接着剤Uを塗布した単板1r、1sと、接着剤を塗布しない単板1p、1qとの四枚を準備する。次いで、図5(ヨ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材13を最終移送方向へ移送し、当初の図1(イ)の位置まで前進させる際に、撓み止め部材Dも同期的に前進させ、併せて、挿入板Cを当初の待機位置まで後退させる。以下、同様の動作を繰り返して、所望層数(図示例は六層)の積層材13を連続的に製造する。
【0031】
述上の如き製造方法によれば、図2(ヘ)、図4(ル)からも明らかな如く、撓み止め部材Dによって、製造途中の積層材(11、12)の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ後退させるものであるから、先記図25(ヘ)に例示する如く、積層材の後端が、挿入板の上に載置された単板(或は挿入板)に当接する現象が発生しなくなって、挿入板の上に載置された単板及び積層材を、常に所望位置まで円滑に移送することができるので、積層材の製造自体が不能化する虞がなくなるのは勿論のこと、単板の積層位置の精度が安定化するので、積層材の品質が劣化する問題も解消される。
【0032】
また、図2(ニ)、(ホ)、或は図3(リ)、及び図4(ヌ)、更には図5(カ)、(ヨ)に例示する如く、製造途中の積層材、及び製造し終えた積層材を前進させるのに先立って、予め撓み止め部材を、加熱盤の後位から加熱盤の前端付近まで後退させ、該撓み止め部材によって、後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ、積層材と撓み止め部材とを同期的に前進させる様態によれば、積層材の後端が、挿入板や下側の加熱盤等に摺接する虞もなくなって、積層材を安定的に前進させることができ、結果的に、次に積層する単板の積層位置の精度も安定化する傾向となる。
【0033】
但し、例えば既存の基台、或は既存の積層材の重量が十分にある、或は図示は省略したが、例えば上下一対の搬送部材によって積層材を挟持して搬送する形態の搬送機構を用いるなどの要因によって、移送機構と積層材との係合関係が強固であり、常に安定して積層材を前進させ得る条件が整っていれば、例えば図6(ハ)、(ホ)、(へ)の順に例示する如く、予め撓み止め部材を単独で後退させた後に、製造途中の積層材と一緒に前進させる工程を省略し、撓み止め部材によって後端を支えることなく、積層材のみを前進させる様態を採っても、実用的には格別支障なく、また、図示は省略したが、製造し終えた積層材を前進させる場合についても、同様に斯様な工程を省略しても差支えない。
【0034】
また、撓み止め部材の具体的な形態としては、積層材の後端に対する接触の円滑性や耐久性等からして、前記実施例に例示する如き遊転自在なロール状が最も望ましいが、必ずしも限定するものではなく、例えば図7に例示する如き、断面が蒲鉾状の摺接式の撓み止め部材Vであっても、積層材に当接する面を滑らかに成形した部材であれば、実用的に格別支障なく、図7(ハ)、(ホ)、(へ)に例示するように、積層材の後端を支えることが可能であり、要は積層材の本来の所在位置に悪影響を及ぼさずに、前後に進退することができ、積層材の後端の撓みを一定限度以内に抑止し得る部材であれば足りる。
【0035】
而して、本発明に係る積層材の製造方法にあっても、先記既知の製造方法の場合と同様に、必要に応じては、加熱盤の形態を種々設計変更して、実用性の一段の向上を図っても差支えないことは勿論であり、例えば図8に例示する如く、接着剤を塗布して供給する二枚の単板(1a、1b、……)の全長に加えて、既存の基台(10)及び部分積層接着済みの積層材(11、12)に於ける、次に積層接着されるべき単板(1g、1h、1m、1n)が重ね合わされる部分zの全面をも熱圧するに足る寸法の加熱面b2を有する上側の加熱盤Baを備えると共に、階段状の加熱面、即ち、接着剤を塗布して重ねる単板(1a、1b、……)の全長を熱圧するに足る寸法の加熱面e1と、該加熱面e1に対して挿入板Cの厚さと同等の高さだけ高い位置に位置し、次に積層接着されるべき単板(1e、1f、1j、1k)が重ね合わされる部分zの全面を熱圧し得る加熱面e4とを有する下側の加熱盤Eを備えて、図8(イ)、(ロ)、(ハ)の順に例示する如く、次に積層接着されるべき単板が重ね合わされる部分zに予熱を施す様態を採れば、中心付近以外の単板を積層接着する際の熱圧時間の短縮化を図ることが可能である。
【0036】
また、例えば図9に例示する如く、接着剤を塗布して供給する二枚の単板(1a、1b、……)の全長を熱圧するに足る寸法の加熱面f1、g1を有する主要熱盤部分の後端側に、直前に積層接着した単板の後端側に於ける現に接着する単板が当接しない部分yを熱圧するに足る加熱面f3、g3を有する補助熱盤Fb、Gbを一体状、又は別体状に付設(必要に応じては、補助熱盤Fbの如く、最大限度で、単板の厚さと同等程度、昇降可能又は弾性変位可能に付設)して成る、階段状の加熱面f1、f3、g1、g3を有する上下一対の加熱盤F、Gを備えて、図9(ト)、(チ)、(リ)の順に例示する如く、現に接着する単板を熱圧する際に、直前に積層接着した単板の後端側に於ける現に接着する単板が当接しない部分yをも一緒に熱圧する様態を採れば、直前に積層接着した単板の全ての部分に於ける接着の安定化を図ることが可能となる。
【0037】
勿論、例えば図10に例示する如く、接着剤を塗布して供給する二枚の単板(1a、1b、……)の全長に加えて、既存の基台(10)及び部分積層接着済みの積層材(11、12)に於ける、次に積層接着されるべき単板(1g、1h、1m、1n)が重ね合わされる部分zの全面をも熱圧するに足る寸法の加熱面f2を有する主要熱盤部分の後端側に、直前に積層接着した単板の後端側に於ける現に接着する単板が当接しない部分yを熱圧するに足る加熱面f3を有する補助熱盤Fbを、最大限度で、単板の厚さと同等程度、昇降可能又は弾性変位可能に付設して成る、上側の加熱盤Faを備えると共に、接着剤を塗布して供給する二枚の単板(1a、1b、……)の全長を熱圧するに足る寸法の加熱面s1と、次に積層接着されるべき単板(1e、1f、1j、1k)が重ね合わされる部分zの全面を熱圧し得る加熱面s4とを有する主要熱盤部分の後端側に、直前に積層接着した単板の後端側に於ける現に接着する単板が当接しない部分yを熱圧するに足る加熱面s3有する補助熱盤Sbを、一体状に付設して成る、下側の加熱盤Sを備えて、図10(ト)、(チ)、(リ)の順に例示する如く、接着剤を塗布した単板を順次ずらし重ねて熱圧する様態を採れば、中心付近以外の単板を積層接着する際の熱圧時間の短縮化と、直前に積層接着した単板の全ての部分に於ける接着の安定化とを、併せて図ることができる。
【0038】
また、既知の製造方法の説明に於ては言及しなかったが、同じ層に積層する各単板の端面同士の相対位置関係については、前記各図面に例示する如く、実質的に隙間を有しない密接状を基本とするものの、密接状に限定するものではなく、図示は省略したが、例えば端面同士が所望の僅少の隙間を有する様態、或は例えば端面同士が所望の僅少の寸法だけ重なり合う様態等でも差支えない。
【0039】
また更に、各単板の端面の形態についても、前記各図面に例示する如き、板面に対して実質的に垂直な形態に限定するものではなく、板面に対して斜め状とすることも可能であり、必要に応じては、後述する実施例の如く、単板の端面を板面に対して斜め状に形成すると共に、所望の端面へも接着剤を塗布して重ね合わせ、適宜形状の加熱面を有する上下一対の加熱盤を用いて熱圧する様態を採れば、単板の積層接着と併せて、同じ層に積層する単板同士をスカーフ接着することができる。
【0040】
即ち、例えば図11に例示する如く、接着剤を塗布して供給する二枚の単板(5a、5b、……)の全長に加えて、既存の基台(50)及び部分積層接着済みの積層材(51、52)に於ける、次に積層接着されるべき単板(5g、5h、5m、5n)が重ね合わされる部分zをも熱圧するに足る寸法の加熱面j2を有する主要熱盤部分の後端側に、次に積層接着されるべき単板(5g、5h、5m、5n)の斜め状の端面に適合する加熱面j5と、直前に積層接着した単板の後端側に於ける現に接着する単板が当接しない部分yを熱圧するに足る加熱面j3とを有する補助熱盤Jcを、最大限度で、単板の厚さと同等程度、昇降可能又は弾性変位可能に付設して成る、上側の加熱盤Jを備えると共に、接着剤を塗布して供給する二枚の単板(5a、5b、……)の全長を熱圧するに足る寸法の加熱面t1と、次に積層接着されるべき単板(5e、5f、5j、5k)が重ね合わされる部分zを熱圧し得る加熱面t4とを有する主要熱盤部分の後端側に、次に積層接着されるべき単板(5e、5f、5j、5k)の斜め状の端面に適合する加熱面j5と、直前に積層接着した単板の後端側に於ける現に接着する単板が当接しない部分yを熱圧するに足る加熱面t3有する補助熱盤Tcを、一体状に付設して成る、下側の加熱盤Tを備える。
【0041】
そして、当初は、図11イ)に例示する如く、加熱盤J、Tの前位に、上面と上向きの端面とに接着剤Uを塗布した単板5a、5bと、上向きの端面のみに接着剤Uを塗布した単板5c、5dとの四枚を準備し、図示矢印で示す如く、挿入板Cの上に供給して載置し、次いで、図11(ロ)に例示する如く、既存の基台50の形状に適合させて、挿入板Cを加熱盤J、Tの間に前進させ、次いで、図11(ハ)に例示する如く、前記各単板5a、5b、5c、5dを、適宜の加圧力を以って、加熱盤J、Tで熱圧すると共に、下側の加熱盤Tの前位には、上面と上向きの端面とに接着剤Uを塗布した単板5e、5fを、また上側の加熱盤Jの後位には、下面と下向きの端面とに接着剤Uを塗布した単板5g、5hを夫々準備し、次いで、接着剤の硬化に適する所要時間経過後に、図12(ニ)に例示する如く、加熱盤J、Tによる熱圧を開放すると共に、撓み止め部材Dを、加熱盤Tの後位から加熱盤Tの前端付近まで後退させて、製造途中の積層材51の後端を支持し、次いで、図12(ホ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材51を最終移送方向へ適宜距離だけ前進させる際に、撓み止め部材Dも同期的に前進させ、併せて、挿入板Cを当初の待機位置まで後退させた後に、前記単板5e、5fを挿入板Cの上へ、また前記単板5g、5hを積層材51の上へ夫々供給し、次いで、図12(ヘ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材51を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させる際に、撓み止め部材Dも同期的に後退させ、併せて、積層材51の形状に適合させて、挿入板Cを加熱盤J、Tの間に前進させ、次いで、図13(ト)に例示する如く、撓み止め部材Dを、加熱盤Tの前端付近から加熱盤Tの後位まで前進させ、次いで、図13(チ)に例示する如く、前記各単板5e、5f、5g、5hを、適宜の加圧力を以って、加熱盤J、Tで熱圧すると共に、下側の加熱盤Tの前位には、上面と上向きの端面とに接着剤Uを塗布した単板5j、5kを、また上側の加熱盤Jの後位には、下面と下向きの端面とに接着剤Uを塗布した単板5m、5nを夫々準備し、次いで、所要時間経過後に、図13(リ)に例示する如く、加熱盤J、Tによる熱圧を開放すると共に、撓み止め部材Dを、加熱盤Tの後位から加熱盤Tの前端付近まで後退させて、製造途中の積層材52の後端を支持する。
【0042】
以下、図1〜図5に例示した実施例に準じて、同様の動作を繰り返すことにより、所望層数(図示例は六層)の積層材を連続的に製造することができるが、斯様に同じ層に積層する単板の端面を斜めに形成すると共に、いずれか片側の端面に接着剤を塗布して重ね合わせ、加熱盤による熱圧を施す様態によれば、単板の積層接着と併せて、同じ層で隣合う単板同士をスカーフ接着することができるので、積層材の品質、強度等の向上に一段と有効である。
【0043】
尚、斯様な様態を採る場合には、所要伝熱距離の相違からして、単板の板面の接着に比べて、端面の接着の方が速く成されるので、端面部分に対する予熱作用や、駄目押し作用は必ずしも必要でないことから、前記実施例に於ては、上下一対の加熱盤の形態を、端面部分に対する予熱作用と、駄目押し作用とのいずれをも施し得ない形態としたが、必要に応じては、図示は省略したが、上下一対の加熱盤の形態を、端面部分に対する予熱作用、又は駄目押し作用の少なくともいずれか一方の作用を施し得る形態に設計変更しても差支えない。
【0044】
また、前述した図1〜図15のいずれの様態を採るにせよ、挿入の適確性からして、先記図20に例示した既知の製造方法と全く同じ様態を以って、奇数層の積層材を製造するのは不適であるが、本発明に於ても、必要に応じて、奇数層の積層材を製造することは可能であり、前述した図1〜図15いずれかの様態を実施して積層材を製造する工程中に、所望の面に接着剤を塗布した単板を、積層材の上下いずれか片側のみに供給し、上下一対の加熱盤で熱圧して接着する工程を介入させれば足り、一例を挙げると、例えば後述する様態が挙げられる。
【0045】
即ち、先記図1(イ)、(ロ)の様態と同じ様態を経て、図14(ハ)に例示する如く、既存の基台60に、都合四枚の単板6a、6b、6c、6dを積層接着し、次いで、図14(ニ)に例示する如く、加熱盤A、Bによる熱圧を開放すると共に、撓み止め部材Dを、加熱盤Aの後位から加熱盤Aの前端付近まで後退させて、積層材61の後端を支持し、併せて、加熱盤Aの後位のみに、下面に接着剤Uを塗布した単板6e、6fを準備し、次いで、図14(ホ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材61を最終移送方向へ適宜距離だけ前進させる際に、撓み止め部材Dも同期的に前進させ、併せて、挿入板Cを当初の待機位置まで後退させた後に、前記単板6e、6fを積層材61の上へ供給し、次いで、図15(ヘ)に例示する如く、移送機構Wを介して、積層材61を最終移送方向と逆方向へ、適宜距離だけ後退させる際に、撓み止め部材Dも同期的に後退させ、併せて、単板を載せていない挿入板Cを加熱盤A、Bの間に前進させ、次いで、図15(ト)に例示する如く、撓み止め部材Dを、加熱盤Aの前端付近から加熱盤Aの後位まで前進させ、次いで、図15(チ)に例示する如く、前記各単板6e、6f(及び6a、6b)を、適宜の加圧力を以って、加熱盤A、Bで熱圧すると共に、加熱盤A、Bの前位と後位とに、接着剤Uを塗布した各ニ枚づつの単板6g、6hと、単板6j、6kとを夫々準備する。以下、所要時間経過後に、加熱盤A、Bによる熱圧を開放し、先記偶数層の積層材を製造する場合と同様の工程を繰り返すことにより、奇数層の積層材を容易に製造することができる。
【0046】
勿論、斯様な様態の他に、図示は省略したが、例えば上面に接着剤を塗布した単板を、積層材の下側のみに供給して、接着する様態や、或は例えば所望の面に接着剤を塗布した単板を、一連の工程中の最終段階に於て、積層材の最上層又は最下層のいずれか片側のみに供給して、接着する様態などによっても、奇数層の積層材を容易に製造することができる。
【0047】
尚、先記各図示例は、図面の大きさの制約があることから、積層材の湾曲度合いを、誇張的に表記してあるが、実際には、単板の長さが厚さの数百倍程度はあるのが普通(例えば厚さが4mm、長さが1000mmの単板が二枚並べば、その比率は500倍)であるから、実際の積層材の湾曲度合いは、図示例に比べて著しく緩やかであり、撓み止め部材によって、積層材の後端の撓みを一定限度以内(積層材の後退に支障が生じない範囲内)に抑止している状態であれば、積層材が緩やかに湾曲していること自体が、単板を積層する際の精度について、実用的に支障となるほどの悪影響を及ぼす虞はない。
【0048】
而して、本発明の実施に用いる単板の寸法については、格別な制約はなく、薄単板から厚単板まで、各種の厚さの単板、幅狭単板から幅広単板まで、各種の幅の単板、短尺単板から長尺単板まで、各種の長さの単板など、種々の寸法の単板を対象とすることができ、また、樹種に関しても、針葉樹、広葉樹の他に、椰子類などを含めて、多様な樹種の原木から削成された単板を対象とすることができる。
【0049】
また、本発明の実施に用いる接着剤としては、従来公知の熱硬化性接着剤の内から、所望の種類を選択して用いれば差支えなく、熱圧温度、熱圧時間、押圧力等の熱圧条件は、所望の機能を有する積層材が製造できるように、接着剤の特性、単板の特性等を勘案しつつ、実験に基づいて定めれば足りる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
近時、資源ナショナリズムの勃興に伴って、杉等の国産針葉樹の活用が期待される時世の到来に至り、小さな単板から大きな積層材を簡便に製造する、本発明の実施効果は多大である。
【符号の説明】
【0051】
A、E、G、S、T、H、Ha、M、Ma、Q :下側の加熱盤
B、Ba、F、Fa、J、K、Ka、N、Na、R :上側の加熱盤
Fb、Gb、Jc、Mb、Nb、Sb、Tc :補助熱盤
C :挿入板
D、V :撓み止め部材
U :接着剤
1a、1b、1c、1d、……1n、1p、1q :単板
2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h :単板
3a、3b、3c、3d、……3h、3j、3k :単板
4a、4b、4c、4d、……4q、4r、4s :単板
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h :単板
6a、6b、6c、6d、……6h、6j、6k :単板
10、20、30、40、50、60 :既存の基台
11、21、31、41、51、61 :製造途中の積層材
12、22、32、42、52、62 :製造途中の積層材
13、23、33、43 :製造し終えた積層材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を塗布した単板の全長を熱圧するに足る寸法の加熱面を有し、而も各々が、適宜の昇降作動機構を介して、昇降自在に備えられた、上下一対の加熱盤の間に、所望の面のみに接着剤を塗布して成る単板の少数枚を、所望の層毎に適宜距離だけ階段状にずらして供給すると共に、少なくとも接着剤を塗布して重ねた直後の単板については、加熱盤による熱圧作用が全面的に及ぶ位置に位置させて、熱圧して接着するように、積層と接着を順々に繰り返して、所望積層数の積層材を連続的に製造するに際し、製造途中の積層材を、一旦最終移送方向へ前進させて、前記加熱盤の間から加熱盤の後位まで移送すると共に、下面に接着剤を塗布して成る単板の少数枚を、前記加熱盤の後位に於て、製造途中の積層材の上へ供給し、次いで、積層材を最終移送方向と逆方向へ後退させて、接着剤を塗布して重ねた直後の単板を、加熱盤に合致する位置へ移送し、熱圧して接着する積層材の製造方法であって、製造途中の積層材の後端近辺に当接して、該後端の撓みを一定限度以内に抑止する撓み止め部材を、前記加熱盤の後位から加熱盤の前端付近まで進退自在に備え、少なくとも積層材を後退させる際には、前記撓み止め部材を積層材と同期的に後退させることにより、積層材の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ後退させるようにしたことを特徴とする積層材の製造方法。
【請求項2】
加熱盤による熱圧を開放して、製造途中の積層材を、最終移送方向へ前進させるのに先立って、撓み止め部材を、予め加熱盤の前端付近まで後退させると共に、積層材を前進させる際に、撓み止め部材を同期的に前進させることにより、積層材の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ前進させるようにして成る請求項1記載の積層材の製造方法。
【請求項3】
製造し終えた積層材を、最終移送方向へ前進させる前に、撓み止め部材を、予め加熱盤の前端付近まで後退させると共に、積層材を前進させる際に、撓み止め部材を同期的に前進させることにより、積層材の後端の撓みを一定限度以内に抑止しつつ前進させるようにして成る請求項1又は請求項2記載の積層材の製造方法。
【請求項4】
遊転自在なロール状の撓み止め部材を用いて成る請求項1又は請求項2又は請求項3記載の積層材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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