説明

積層構造体と多層記録媒体の製造方法、及び積層構造体と多層記録媒体

【課題】記録層と中間基材層が多層化された均一な薄膜を有する積層構造体、及び積層構造体からなる多層記録媒体と、それらの生産性の高い製造方法を提供する。
【解決手段】剥離処理が施された基材フィルムの剥離処理面上に、中間基材層(ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂)と、記録層(例えば、特定の光に反応する感光性材料と透明樹脂との混合物)とをこの順(又は逆順)に連続形成してシート材料[1]を得;前記一枚の[1]の記録層上か又は中間基材層上に、別の[1]の中間基材層か又は記録層を、[1]の基材フィルムを剥離し記録層と中間基材層を交互に積層する交互積層体形成工程と、形成された交互積層体を加熱して一体積層構造とするラミネート処理工程と、を少なくとも1組以上繰り返して積層構造体、及び積層構造体からなる多層記録媒体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体、及び積層構造体からなる多層記録媒体と、それら製造方法に関する。さらに詳しくは、剥離処理が施された基材フィルムの剥離処理面上に記録層と中間基材層とを二層構成で担持したシート材料、及び必要により中間基材層を一層構成で担持したシート材料を用いて、記録層と中間基材層とを交互に積層、加熱により一体積層構造とされた膜厚が薄膜で均一性の優れた積層構造体、及び積層構造体からなる多層記録媒体と、それらの生産性の良好な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクに対する高記録密度化及び大容量化の要求は、ますます強くなっている。光ディスクにおける面内の記録密度を向上させるためには、光ピックアップに用いられる対物レンズの開口数NAを大きくすると共に、使用する光の波長を短くして、対物レンズによって集光される光のスポット径を小径化することが有効である。 しかし、最近ではブルーレイディスクに見られるように、開口数NAや光の波長が共に限界に近づいてきている。 そこで、この現状を大きく打破するために、光ディスク面と直交する深さ方向の記録密度を向上させる技術として多層3次元メモリが提案されている。
例えば、特許文献1には、少なくとも2個の記録画面及びガイド面を有する光記録媒体に情報を書き込み、書き込んだ情報を読み取り及び/又は消去する方法とその装置が提案されている。本従来技術の記録媒体の構成では、複数の記録層に対して1つのトラック層を設ける多層記録媒体構成が記載されている。
【0003】
多層3次元メモリの製造方法として従来行われているスピンコート法は、多層化時に膜厚不均一が積算されること、あるいは乾燥工程が多数回となるため量産性が低いこと等の問題がある。
上記スピンコート法における問題に対応する方法として、特許文献2では、感光材料を含む光記録層と、エネルギー硬化型粘接着剤層とを積層した光記録媒体用粘接着シートを用いて、層全体の厚み精度を向上すると共に押し跡が付きにくい多層記録媒体を得る手法が提案されている。すなわち、記録層をエネルギー硬化型粘接着シートで貼り合わせた光記録用多層構造体とすることにより、スピンコート法では得ることができない膜厚均一性、及び生産性を得ている。また、粘接着層を熱やエネルギー線で硬化させることにより押し圧に対する強度を得ている。しかし、上記手法における粘接着剤は、ガラス転移点温度が常温よりも低いため、膜の変形が生じやすく、また特に膜厚が薄い場合は強度が弱くなり易いという問題がある。
【0004】
前記多層3次元メモリでは記録密度が向上する一方、多層記録・再生持に層間でデータのクロストークが発生する問題がある。この問題に対処するため、特許文献3では、光記録機能を有する高分子層(A)とスペーサ高分子層(B)とを交互に積層した高分子積層体からなる多層記録媒体により、層間クロストークを低減して深さ方向の記録密度を増大させる手法が提案されている。
上記提案における多層積層体は、複雑な工程を踏んで形成される。すなわち、(A)層と(B)層の少なくとも2層からなる基礎積層体を形成し、続いて分割工程で基礎積層体を界面と交差する方向に分割し、さらに積層工程において前記分割積層体を加熱状態で積層処理して多層積層体とされている。基礎積層体の各層の厚さは50μm〜25mmが好ましいとされている。
【0005】
【特許文献1】特許第3110532号公報
【特許文献2】特開2005−259192号公報
【特許文献3】特開2000−67464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献2に記載の多層記録媒体は、感光材料を含む光記録層と、エネルギー硬化型粘接着剤層とを積層した光記録媒体用粘接着シート(剥離フィルム上に塗工したシート状記録層を、剥離フィルム上に塗工したシート状粘着剤層に貼り合せて記録層と粘着層の2層積層シートとする)を作製する工程と、この光記録媒体用粘接着シートから剥離フィルムを剥がして前記2層積層シートを順次貼合せる工程により製造される。
従って、上記方法では記録層が薄い場合、特に記録層が1μm未満である場合、薄層化による膜強度不足が原因となって、剥離フィルムを剥がす際に記録層が破損し、その一部が剥離フィルム上に残留するという不具合が生じる。また前記方法では、剥離フィルム上にシート状記録層を塗工して作製する時と、剥離フィルム上にシート状粘着剤層を塗工して作製する時との合計2回の塗工巻取り工程を行う必要があり、量産性において十分とはいえない。
また、前記特許文献3に記載の高分子積層体は、厚さがそれぞれ50μm以上の高分子層(A)とスペーサ高分子層(B)を設けた基礎積層体を用いて、これを分割工程や積層工程を経て多層積層体とする複雑な工程により製造されており、膜厚の均一性の確保や制御性、あるいは量産性などに難点がある。
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、記録層と中間基材層とを交互に積層して一体積層構造とされる多層化時においても記録層と中間基材層の変形、破損や脱落(特に記録層)がなく均一な膜厚を有する積層構造体と、該積層構造体からなる多層記録媒体を提供すると共に、積層構造体及び多層記録媒体の簡便かつ製造コストを抑制した生産性の高い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔10〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0009】
〔1〕:上記課題は、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層と、特定の光に反応する感光性材料単体か若しくは該感光性材料と透明樹脂との混合物からなる記録層とを、この順か若しくは逆順に、連続して形成する工程により、二層構成の複合薄膜を担持したシート材料[1]を得て、
一枚の前記シート材料[1]の記録層上か又は中間基材層上に、別のシート材料[1]の中間基材層か又は記録層を、[1]の基材フィルムを剥離して当接配置し、前記記録層と中間基材層とを交互に積層する交互積層体形成工程と、
該交互積層体形成工程により形成された交互積層体を加熱して一体積層構造とするラミネート処理工程と、
を少なくとも1組以上繰り返すことを特徴とする積層構造体の製造方法により解決される。
【0010】
〔2〕:上記〔1〕に記載の積層構造体の製造方法において、前記交互積層体形成工程において、シート材料[1]の他に、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層を形成する工程により得られる一層構成の薄膜を担持したシート材料[2]を用いて積層構成することを特徴とする。
【0011】
〔3〕:上記〔1〕又は〔2〕に記載の積層構造体の製造方法において、前記ラミネート処理工程において、交互積層体の両側最外層上に基材フィルムを保持したまま該基材フィルムを介して加熱することを特徴とする。
【0012】
〔4〕:上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の積層構造体の製造方法において、前記ラミネート処理工程において、前記交互積層体を少なくとも2本のロール間に挟入、加熱して一体積層構造とすることを特徴とする。
【0013】
〔5〕:上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の積層構造体の製造方法において、前記感熱接着性樹脂が、全光線透過率が88%以上で、ガラス転移温度が65℃以上130℃未満のものであることを特徴とする。
【0014】
〔6〕:上記課題は、積層構造体からなる多層記録媒体の製造方法であって、該積層構造体が〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする多層記録媒体の製造方法により解決される。
【0015】
〔7〕:上記課題は、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層と、特定の光に反応する感光性材料単体か若しくは該感光性材料と透明樹脂との混合物からなる記録層とが、この順か若しくは逆順に、連続して形成される工程によって得られる二層構成の複合薄膜を担持したシート材料[1]を用いて、
一枚の前記シート材料[1]の記録層上か又は中間基材層上に、別のシート材料[1]の中間基材層か又は記録層が[1]の基材フィルムの剥離により当接配置され、前記記録層と中間基材層との交互積層により交互積層体とされる交互積層体形成工程と、該交互積層体の加熱により一体積層構造とされるラミネート処理工程と、が少なくとも1組以上繰り返されて製造されたことを特徴とする積層構造体により解決される。
【0016】
〔8〕:上記〔7〕に記載の積層構造体において、前記交互積層体形成工程において、シート材料[1]の他に、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層が形成される工程により得られる一層構成の薄膜を担持したシート材料[2]が用いられて積層構成されたことを特徴とする。
【0017】
〔9〕:上記〔7〕又は〔8〕に記載の積層構造体において、前記感熱接着性樹脂が、全光線透過率が88%以上で、ガラス転移温度が65℃以上130℃未満のものであることを特徴とする。
【0018】
〔10〕:上記課題は、積層構造体からなる多層記録媒体であって、該積層構造体が〔7〕乃至〔9〕のいずれかに記載の積層構造体であることを特徴とする多層記録媒体により解決される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の積層構造体の製造方法、及び、積層構造体からなる多層記録媒体の製造方法によれば、用いるシート材料[1](記録層と中間基材層が形成された二層構成の複合薄膜を担持したシート)が1回の塗工・巻取り工程で作製されるため、高コスト工程である塗工・巻取り工程が最小限に留められる。また、必要により用いられるシート材料[2](中間基材層が形成された一層構成の薄膜を担持したシート材料[2]も1回の塗工・巻取り工程で作製される。このため、例えば、粘着シートを中間層とする従来技術に較べて、製造コストが低く抑えられる。
特に、シート材料[1]は記録層を中間基材層上に塗工する方法で得られるため、記録層を薄層化(例えば、1μm未満)した場合でも強度の心配が無い。更に、中間層がガラス転移温度が60℃以上の感熱接着性樹脂であることから、加熱によるラミネート処理で容易に中間層と記録層を交互に複数層有する積層構造体を製造することができる。またガラス転移点温度が常温より高い値であることから、樹脂膜の強度が十分に得られ変形に対して強い。このため、積層過程において、剥離処理が施された基材フィルムから剥離する際に、樹脂膜が破れる等の問題が少なく交互積層体の形成が容易であり、積層構造体の作成時においても全体で強度を持たせることができる。
例えば、シート材料[1]とシート材料[2]を用いて、交互積層体形成工程とラミネート処理工程により記録層と中間基材層との交互の積層(貼り合わせ)を繰り返す場合においても、粘着シートを中間層とする従来技術に較べて貼り合わせ工程の回数が少なく、積層作業が改善されると共に、外部からの塵埃などのパーティクル混入による不良リスクが低減でき、品質向上が図れる。
本発明の積層構造体、及び、積層構造体からなる多層記録媒体によれば、記録層と中間基材層の変形や、記録層の破損及び脱落などがなく均一な膜厚の薄膜からなる多層の積層構造、すなわち、記録層を薄く作ることができ層数を増やして記録密度を上げる等の設計自由度を広く取ることができる。また、中間基材層に用いる透明な感熱接着性樹脂のガラス転移温度が60℃以上であるため、積層構造体全体の耐熱性を向上することができる。また、例えば、感熱接着性樹脂の全光線透過率を88%以上とすれば樹脂の曇りや散乱が小さくなり、積層数を多くすることがができる。これらにより、信頼性が高く、高記録密度化及び大容量化の要求に対応する光記録媒体に適用することができる。例えば、光照射により情報の記録及び/又は再生が可能な多層3次元メモリなどに応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
前述のように本発明における積層構造体の製造方法は、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層と、特定の光に反応する感光性材料単体か若しくは該感光性材料と透明樹脂との混合物からなる記録層とを、この順か若しくは逆順に、連続して形成する工程により、二層構成の複合薄膜を担持したシート材料[1]を得て、
一枚の前記シート材料[1]の記録層上か又は中間基材層上に、別のシート材料[1]の中間基材層か又は記録層を、[1]の基材フィルムを剥離して当接配置し、前記記録層と中間基材層とを交互に積層する交互積層体形成工程と、
該交互積層体形成工程により形成された交互積層体を加熱して一体積層構造とするラミネート処理工程と、
を少なくとも1組以上繰り返すことを特徴とするものである。
【0021】
上記交互積層体形成工程において、シート材料[1]の他に必要に応じて、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層を形成する工程により得られる一層構成の薄膜を担持したシート材料[2]を用いて積層構成することができる。
【0022】
すなわち、シート材料[1]は、剥離処理が施された基材フィルムの剥離処理表面上に、透明な樹脂で、60℃以上のガラス転移温度を有する感熱接着性樹脂からなる中間基材層を形成する工程(1)と、前記中間基材層の上に、透明な樹脂に特定の光に反応する感光性材料を混入させてなる混合物か、あるいは感光性材料自体(単体)からなる記録層を形成し、前記基材フィルムの表面上に中間基材層と前記記録層が順に積層された積層フィルムを形成する工程(2)とにより作製される(二層構成の複合薄膜を担持した形態)。
ここで、シート材料[2]は上記工程(1)と同様にして作製される(一層構成の薄膜を担持した形態)。
なお、上記中間基材層と記録層を形成する順は逆順(基材フィルム上に記録層を形成し、その上に中間基材層を形成)としても構わない。いずれにしても、前記シート材料[1]と、必要に応じてシート材料[2]を用いて積層構造体を製造する。
例えば、剥離処理が施された基材フィルム上に中間基材層と記録層がこの順に形成されているシート材料[1]を用いる場合には、例えば、シート材料[2]の中間基材層面に、シート材料[1]の基材フィルムを剥がして記録層面を重ね(当接配置し)て、記録層と中間基材層とを交互に積層する(交互積層体形成工程)。形成された交互積層体を加熱してラミネート処理し、一体積層構造(ラミネート処理工程)とする。
この交互積層体の両側最外層上に基材フィルムを保持したままとすることができる。このような形態とすれば、次の工程のラミネート処理の際に、この基材フィルムを介してを加熱し、一体積層構造とすることができ、例えば、熱ロール方式等によるラミネート処理が容易になる。また、記録層への塵埃などの付着や汚損防止、膜厚の均一性保持、生産性の向上などの点から好ましく適用できる。
前記交互積層体形成工程とラミネート処理工程とを少なくとも1組以上繰り返すことことにより目的とする積層構造体が製造される。
上記説明の構成は一例であって限定されるものではなく、別な組み合わせと手順でシート材料[1]及び必要に応じてシート材料[2]を用いて記録層と中間基材層とが交互に積層された積層構造体としても構わない。
前記積層構造体の製造方法は、積層構造体からなる多層記録媒体の製造方法に適用でき、前述の利点がそのまま反映できる。
【0023】
シート材料[1]は、後に詳述する図3に示すような塗工装置により、表面が平滑な基材フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)の片面に剥離力が軽程度の剥離処理剤(例えば、シリコーン系など)を塗工し乾燥した、いわゆる剥離処理が施された基材フィルムを用いて、中間基材層の形成と記録層の形成が連続的に連なった工程で作製される。
すなわち、アンワインダー1から剥離処理が施された基材フィルムを供給しながら、基材フィルムの剥離処理を施した面に、ガラス転移温度が60℃以上で透明性を有する感熱接着性樹脂を有機溶媒にて溶解した感熱性樹脂溶液をコーターヘッド1により流延塗工した後、ドライヤー1で乾燥し溶媒分を除去して中間基材層を形成し、連続して、中間基材層が形成された面に、例えば、感光性材料(記録材料)を溶媒にて溶解した感光性材料(記録材料)溶液(塗料)をコーターヘッド2により流延塗工し、乾燥し溶媒分を除去して記録層を形成したシート材料をワインダーで巻き取る(シート材料の巻き取りが1回)。
上記記録層を形成する際に、感光性材料と透明樹脂との混合物からなる溶液を流延させながら塗工してもよい。
また、前記シート材料[2]は、上記において記録層の形成を行わない以外は同様にして連続的な工程で作製される(シート材料の巻き取りが1回)。
すなわち、上記製造方法において用いるシート材料[1]は、1回の塗工巻取り工程で中間基材層と記録層からなる二層構成の複合薄膜(2層積層シート)を製造することができるために低コストであり、例えば、記録層を中間基材層上に塗工する場合には、記録層を1μm未満に薄層化した場合においても膜強度の問題は無く、剥離フィルムを剥がす際に記録層が破損したり剥離フィルム上に残留するなどの不具合が生じない。
また、中間基材層が感熱接着性樹脂であることから、加熱積層することで容易に中間層と記録層をそれぞれ複数層有する積層構造体を製造することができる。またガラス転移点温度が常温より高い値であるため、樹脂の膜強度が十分に得られ、変形に対して強くすることができる。このため剥離処理が施された基材フィルムからの剥離時に膜が破れる等の問題が少なく、製造作業が容易であり積層構造の作成時においても全体で強度を持たせることができる。
上記のように本発明のシート材料[1]の記録層は薄く形成できるため、積層構造体の層数を増やすことができる。これによって、多層記録媒体の記録密度を上げる等の設計自由度を広く取ることができる。また、中間基材層のガラス転移温度が60℃以上であるため耐熱性の良好な積層構造体とされる。さらに、透明な感熱接着性樹脂(例えば、全光線透過率が88%以上)を用いるため、中間基材層の曇りや散乱が小さく、積層構造体の積層数を多くすることができる。
従って、本発明の製造方法により、積層構造体、及び積層構造体からなる多層記録媒体が容易に得られる。
【0024】
すなわち、本発明の積層構造体は、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層と、特定の光に反応する感光性材料単体か若しくは該感光性材料と透明樹脂との混合物からなる記録層とが、この順か若しくは逆順に、連続して形成される工程によって得られる二層構成の複合薄膜を担持したシート材料[1]を用いて、
一枚の前記シート材料[1]の記録層上か又は中間基材層上に、別のシート材料[1]の中間基材層か又は記録層が[1]の基材フィルムの剥離により当接配置され、前記記録層と中間基材層との交互積層により交互積層体とされる交互積層体形成工程と、該交互積層体の加熱により一体積層構造とされるラミネート処理工程と、が少なくとも1組以上繰り返されて製造されたことを特徴とするものである。
また、本発明の多層記録媒体は積層構造体からなるものであり、記録層と中間基材層との交互の積層数は2以上であるものが好ましい。例えば、光照射により情報の記録及び/又は再生が可能に構成されれば光記録媒体として適用できる。
【0025】
以下、図を参照しながら更に詳細に本発明を説明する。
先ず、シート材料について代表的な構成例を挙げて説明する。
図1は前記シート材料[2]の構成を示す断面図である。すなわち、シート材料[2]は、剥離処理が施された基材フィルム1の該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層2を形成する工程により得られる一層構成の薄膜を担持している。
また、図2は前記シート材料[1]の構成例を示す断面図である。すなわち、シート材料[1]は、剥離処理が施された基材フィルム1の該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層2と、該中間基材層2上に、特定の光に反応する感光性材料単体か若しくは該感光性材料と透明樹脂との混合物からなる記録層3が形成された二層構成の複合薄膜を担持している。
【0026】
上記基材フィルムとしては、フレキシブル性を有し、好ましくは耐熱性の良好な樹脂からなるプラスチックフィルムが用いられる。このようなフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等からなる厚さが10〜200μmの単層または複合フィルムが挙げられる。
【0027】
また、上記感熱接着性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、結晶性ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、AS、ABS、アイオノマー、AAS、ACS)、ポリメチルメタクリレート(アクリル)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−ポリテトラフルオロエチレン共重合体、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート(Uポリマー)、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルファィド、ポリオキシベンゾイル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、その他液晶ポリエステルなどから選択される透明な樹脂が用いられる。
【0028】
透明な樹脂(膜)における透明性の指標として、ヘイズ(曇度)あるいは全光線透過率がよく用いられる。ここで全光線透過率とは、使用波長の光に関して、その樹脂からなる単層に外部から入射する一定の光量に対し、層の境界での反射・散乱と層中の吸収・散乱により光量が減衰した分を除いた、その層の透過光量の割合である。このため、空気と層の両表面の反射分(約8%程度)を除くと通常92%付近が上限となる。これ以下の値でできるだけ層中の吸収・散乱が少ない物が望ましく、光学素子としては3〜4%程度以下にするのがよい。このことから、本発明においては、全光線透過率が88%以上であることが望ましい。特に、全光線透過率が88%以上であれば、中間基材層樹脂の曇りや散乱が小さく、積層構造体(または、積層構造体からなる多層記録媒体)の積層数を多くすることができる。
【0029】
また、前記透明な感熱接着性樹脂のガラス転移温度は、60℃以上であることが好ましく、60℃〜200℃程度であることがより好ましい。さらに好ましくはガラス転移温度が65℃以上130℃未満の範囲である樹脂が好適に用いられる。
感熱接着性樹脂における熱可塑性の発現温度が低過ぎると、積層構造体(または、積層構造体からなる多層記録媒体)の使用環境において中間基材層が熱変形を受け易く実用性を欠くことになり、一方、熱可塑性の発現温度が高過ぎると、感熱接着性樹脂が接着性を発現するまでに基材フィルムが加熱変形してしまうという不具合がある。
【0030】
すなわち、ガラス転移温度を60℃以上とするのは、常温(〜50℃程度)よりやや高ければ感熱接着性樹脂の形状が安定で変形しにくく、中間基材層として必要な強度が十分に得られるためである。また、ガラス転移点温度の上限は現状で使える材料の範囲から事実上200℃程度以下であり、実際には65℃以上130℃未満の透明樹脂が種類も多く記録層や基材フィルムの耐熱性との兼ね合いから好適に使用される。例えば、ガラス転移温度を65℃以上130℃未満程度とすれば、積層構造体(または、積層構造体からなる多層記録媒体)のラミネート処理工程の加熱温度を抑えることができ、耐熱性の観点から選択できる記録層や基材フィルムの範囲を広く取ることができる。基材フィルムとしては、具体的には、ポリエチレン系、ポリプロピレン系などのオレフィン系樹脂や、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられる。
【0031】
上記ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを用いることができる。アクリル系樹脂としては、一般的に知られているアクリルの樹脂を用いることができる。例えば、アクリル酸エステル、スチレン-アクリル酸エステル、アクリル酸のアルキルエステル類等の重合体、あるいは共重合体が挙げられる。ポリウレタン系樹脂としては、ポリウレタン共重合体樹脂が使用される。ウレタン共重合体樹脂としては、これらのポリウレタンを主体とした、ポリウレタンとエチレン性不飽和単量体との共重合体であって、このエチレン性不飽和単量体にはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン等のα-オレフィン;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸またはそのエステル;メタクリル酸またはそのエステル;マレイン酸またはそのエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;ラウリルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル;無水マレイン酸;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン;その他ポリウレタンと共重合可能な単量体などが挙げられ、これらは単独または2種以上の組み合わせで用いられる。
【0032】
ポリエステル系樹脂を用いる場合、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、好ましくはポリエステル系樹脂(感熱接着性樹脂)を溶媒に溶解した溶液を用いて、厚さを1.5〜30μm程度、好ましくは3〜15μm程度の厚さとなるように流延させながら塗工した後、乾燥して溶剤の除去を行い、透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層を形成する。
【0033】
前述のように、感熱接着性樹脂からなる中間基材層上に、感光性材料と透明樹脂(バインダー樹脂)を混ぜて溶媒に溶解させた溶液を流延させながら塗工した後、溶媒を乾燥させて、感光性材料と透明樹脂との混合物からなる記録層を形成するが、この際使用するバインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。
なおここでは、感光性材料をバインダー樹脂と混合した溶液を用いる方法を示したが、感光性材料単体のみで膜を形成できる場合には、透明樹脂(バインダー樹脂)と混合せず感光性材料自身を溶剤に溶解させた溶液を用いてもよい。
【0034】
前記特定の光に反応する感光性材料としては、スピロピラン、ジアリ−ルエテン、フルギド、ローダミンなどの様な特定の光を吸収する色素、又は、ローダミンBのような蛍光を発する色素と塩化銀の様な消光剤との混合体、又は、酸化チタン等の酸化物やビスマスアンチモン等の狭バンドギャップ半導体のように光照射により電子を発生する材料と、銀イオン等の様に還元されると金属ナノ粒子となりプラズモン共鳴により吸収スペクトルが変化する材料との混合体、等が挙げられる。
【0035】
本発明においてシート材料[1]の中間基材層の形成と記録層の形成を連続的に連なった工程で行う塗工装置の概略構成を図3に示す。
図3において、第1のアンワインダー(アンワインダー1)(31)から剥離処理が施された基材フィルムが供給され、その剥離処理面上に第1のコーターヘッド(コーターヘッド1)(32)で、中間基材層を形成するための透明な感熱接着性樹脂を溶媒に溶解させた溶液を、流延させながら所定の塗膜厚さとなるように塗工する。コーターヘッド1(32)による塗工方法としては、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、及びパイプドクター法などの公知の方法を用いることができる。
【0036】
中間基材層となる透明な感熱接着性樹脂の溶液が塗布された基材フィルムは、第1の乾燥炉(ドライヤー1)(33)に導入されて塗布膜中の溶媒が完全に蒸発・乾燥される。乾燥時の温度、時間、ガス雰囲気などの乾燥条件は、感熱接着性樹脂の種類や溶媒などにより好ましい条件を設定調整し、任意に決められる複数の操作条件によって乾燥表面の乾燥度や膜応力の最適化を行なう。
【0037】
次に、中間基材層が形成された基材フィルムは、第2のコーターヘッド(コーターヘッド2)(34)により、例えば、特定の光に反応する感光性材料(例えば、特定の光に反応する色素)と透明な樹脂(バインダー樹脂)を混ぜて溶媒に溶解させた溶液を、流延させながら所定の膜厚になるように塗工する。コーターヘッド2(34)による塗工方法としては、前記コーターヘッド1(32)の場合に挙げた公知の方法を用いることができる。
次いで、感光性材料とバインダー樹脂を混ぜた溶液を塗布された基材フィルムは、第2の乾燥炉(ドライヤー2)(35)に導入されて塗布膜中の溶媒が完全に蒸発・乾燥される。乾燥時の温度、時間、ガス雰囲気などの乾燥条件は、感光性材料、バインダー樹脂の種類や溶媒などにより好ましい条件を設定調整し、任意に決められる複数の操作条件によって乾燥表面の乾燥度や膜応力の最適化を行なう。
【0038】
図2に示すシート材料[1]の断面図は、図3における第2の乾燥炉(ドライヤー2)を出たところでの、基材フィルム上に中間基材層と記録層が順次形成された二層構成の複合薄膜を担持したシート材料の構成形態を示すものである。
図2に示す構成形態の二層構成の複合薄膜を担持したシート材料(積層フィルム)を、ワインダー(36)で巻き取って、積層フィムルのロール体としてもよいし、あるいは、ワインダーで巻き取る際に、第2のアンワインダー(アンワインダー2)(37)から剥離処理の施された保護フィルムを供給して、例えば、中間基材層と記録層が順に積層された積層フィルムの記録層の上に保護フィルムを積層して、保護フィルム付きの積層フィムルのロール体としてもよい。
ここで、前記積層フィルムは、第1のコーターヘッド(コーターヘッド1)(32)にて感光性材料を混ぜたバインダー樹脂を溶解させた溶媒溶液を塗工して記録層を形成し、第2のコーターヘッド(コーターヘッド2)(34)にて透明な感熱接着性樹脂を溶解させた溶媒溶液を塗工して中間基材層を形成し、基材フィルムの表面上に記録層と中間基材層が順に積層された構成としてもよい。
【0039】
図4は、剥離処理が施された基材フィルム1の剥離処理面上に中間基材層2、記録層3、保護フィルム4が順次積層されたシート材料(積層フィルム)の概略断面図を示したものである。つまり、図2に示す構成のシート材料[1]の記録層表面に剥離可能に保護フィルムが設けられている。
保護フィルムを設けることにより、例えば、汚染や、物理的なストレスなど外部からの影響に対して記録層を保護することができる。
なお、前記保護フィルムとしは、前期記録層の保護に寄与でき、機能や取扱いに弊害を及ぼすものでなければ特に制約はなく、例えば、前記基材フィルムで例示したのと同様の材料から選択することも可能である。
【0040】
本発明の前記ラミネート処理工程では、交互積層体の両側最外層上に基材フィルムを保持したまま該基材フィルムを介してを加熱することができる。この加熱の際、例えば、少なくとも2本のロール間に挟入、加熱して一体積層構造とする加熱ロール方式を用いることができる。つまり、上下最外層の基材フィルムの表面に、加熱した円筒または円柱状のローラーを押し当て、中間基材層の感熱接着性樹脂が可塑化して接着性が発現する温度までローラーを加熱した状態で加圧して積層構造体とする。
図5は、本発明における積層構造体の製造方法の一例を説明するための概略図である。
図5の製造方法では、前記図1に示す基材フィルムに中間基材層を形成したシート材料[2]と、前記図2に示す基材フィルムに中間基材層と記録層が順に積層されたシート材料[1]とを記録層面と中間基材層面とが重なるように当接配置して交互積層体とし、これを2本のロール間に挟入、加熱して貼り合せ(加熱ラミネート処理)、記録層が中間基材層に挟まれた状態で一体積層構造とされる。
【0041】
図5に示す積層構造体は、記録層が1層のみの例を示しているが、例えば、図5の積層構造体に、図2に示すシート材料[1]を上記と同様に繰り返しラミネート処理して貼り合せることにより、中間基材層と記録層とが交互に複数積層された、多層の記録層を有する交互積層体(交互積層フィルム)からなる積層構造体(又は多層記録媒体)を製造することができる。図6の概略図に、5層の記録層と6層の中間基材層とが交互に積層された積層構造体(又は多層記録媒体)の構成例を示す。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例により制約を受けるものではない。
(実施例1)
図7に示す製造フロー図に沿って、以下の手順で積層構造体からなる多層記録媒体を作製した。
[多層記録媒体の製造方法]
先ず;
(a):表面が平滑な基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート:東レ S10)の片面に剥離力が軽程度の剥離処理剤(シリコーン系:信越シリコーン KS-778)を塗工し乾燥してできた基材フィルム〔ベース〕(1)の作製。
(b):表面が平滑な基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート:東レ S10)の片面に剥離力が重程度の剥離処理剤(シリコーン系など)を塗工し乾燥してできた基材フィルム〔ベース〕(2)の作製。
次に;
(c):〔ベース〕(1)の剥離処理を施した面に、中間基材層形成に使用するガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂(ポリエステル系樹脂)を有機溶媒(トルエン)に溶解して溶液とし、この溶液を用いて、流延塗工の後、乾燥して溶媒分を除去し、〔ベース〕(3)を形成。この〔ベース〕(3)の形成に連続して下記(e)の工程が行われる。
上記同様に;
(d):〔ベース〕(2)の剥離処理を施した面に、中間基材層形成に使用するガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂(ポリエステル系樹脂)を有機溶媒(トルエン)に溶解して溶液とし、この溶液を用いて流延塗工した後、乾燥して溶媒分を除去し、〔ベース〕(4)を形成。なお、〔ベース〕(4)は前記シート材料[2]に相当するものである。
上記(c)の〔ベース〕(3)の形成に連続して;
(e):〔ベース〕(3)の中間基材層が形成されている面に、特定の光に反応する感光性材料(ローダミンB)と透明樹脂(アクリル酸エステル)との混合物を溶媒(フッ素置換アルコール)に溶解して塗料とし、この塗料を用いて流延塗工した後、乾燥して溶媒分を除去し、〔ベース〕(5)を形成。なお、〔ベース〕(5)は前記シート材料[1]に相当するものである。
次に;
(f):〔ベース〕(5)の中間基材層上に形成されている記録層が施されている面と、〔ベース〕(4)の中間基材層が施されている面同士を当接配置して、記録層と中間基材層とを交互に積層(交互積層体形成工程)し、この交互積層体を100℃で加熱(ラミネート処理工程)して貼合せ〔ベース〕(6)を形成。
次に;
(g):〔ベース〕(6)の一方の最外層側(〔ベース〕(5)が用いられた側)に保持されている剥離処理が施された基材フィルムを剥がし、その剥がされた面(中間基材層面)と、前記〔ベース〕(5)の中間基材層上に形成されている記録層が施されている面同士を当接配置して、記録層と中間基材層とを交互に積層(交互積層体形成工程)し、この交互積層体を100℃で加熱(ラミネート処理工程)して貼合せ〔ベース〕(7)を形成。
次に;
(h):〔ベース〕(7)の一方の最外層側(〔ベース〕(5)が用いられた側)に保持されている剥離処理が施された基材フィルムを剥がし、その剥がされた面(中間基材層面)と、前記〔ベース〕(5)の中間基材層上に形成されている記録層が施されている面同士を当接配置して、記録層と中間基材層とを交互に積層(交互積層体形成工程)し、この交互積層体を100℃で加熱(ラミネート処理工程)して貼合せ〔ベース〕(8)を形成。
次に;
(h):〔ベース〕(8)の一方の最外層側(〔ベース〕(5)が用いられた側)に保持されている剥離処理が施された基材フィルムを剥がし、その剥がされた面(中間基材層面)と、前記〔ベース〕(5)の中間基材層上に形成されている記録層が施されている面同士を当接配置して、記録層と中間基材層とを交互に積層(交互積層体形成工程)し、この交互積層体を100℃で加熱(ラミネート処理工程)して貼合せ〔ベース〕(9)を形成。
最後に;
(i):〔ベース〕(9)の一方の最外層側(〔ベース〕(5)が用いられた側)に保持されている剥離処理が施された基材フィルムを剥がし、その剥がされた面(中間基材層面)と、前記〔ベース〕(5)の中間基材層上に形成されている記録層が施されている面同士を当接配置して、記録層と中間基材層とを交互に積層(交互積層体形成工程)し、この交互積層体を100℃で加熱(ラミネート処理工程)して貼合せ〔ベース〕(10)を形成。
上記交互積層体形成工程と、加熱によるラミネート処理工程との繰り返しにより、記録層と中間基材層が交互に積層された記録層が5層である積層構造体からなる多層記録媒体が得られた。
【0043】
下記表1に上記本発明のシート材料の作製における塗工・巻取り工程の回数、及び、積層構造体からなる多層記録媒体の交互積層体形成工程と加熱によるラミネート処理工程(貼り合せ工程)の回数を従来技術(粘着シートを中間層とする場合)と比較して示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、本発明の製造方法では、〔ベース〕(4)(一層構成の薄膜を担持したシート材料[2])における中間基材層単層の塗工・巻取り工程の回数が1回であり、〔ベース〕(5)(二層構成の複合薄膜を担持したシート材料[1])における中間層と記録層の2層積層の塗工・巻取り工程の回数も1回である。従ってシート材料の塗工・巻取り工程の回数の合計は2回である。
一方、従来技術である粘着シートを中間層とする場合には、中間層塗工・巻取り工程の回数が1回、中間層(積層用)塗工・巻取り工程の回数が1回、塗工・巻取り工程の回数が1回、記録層塗工・巻取り工程の回数が1回であり、合計3回の塗工・巻取り工程を必要とする。
また、貼り合せ工程の回数について見ると、本発明では、単層中間層(〔ベース〕(4))と第1の2層積層シート(〔ベース〕(5))貼合せ(1回目)、この上に順次、第2の2層積層シート(〔ベース〕(5))貼合せ(2回目)、第3の2層積層シート(〔ベース〕(5))貼合せ(3回目)、第4の2層積層シート(〔ベース〕(5))貼合せ(4回目)、第5の2層積層シート(〔ベース〕(5))貼合せ(5回目)の合計5回である。
一方、従来技術である粘着シートを中間層とする場合は、中間層と記録層の2層積層シートを作成するための貼合せ(1回目)、単層中間層と第1の2層積層シート貼合せ(2回目)、第2の2層積層シート貼合せ(3回目)、第3の2層積層シート貼合せ(4回目)、第4の2層積層シート貼合せ(5回目)、第5の2層積層シート貼合せ(6回目)の合計6回である。
すなわち、高コスト工程である塗工・巻取り工程の回数は、本発明の製造方法では2回であり、粘着シートを中間層とする従来技術の3回と較べて少なく、製造コストを低く抑えることができた。更に、貼り合せ工程の回数においても、本発明の方が、粘着シートを中間層とする従来技術よりも少ないことから、積層作業がより容易になると共に、外部からのパーティクル混入による不良リスクも低い。
【0046】
上記表1からわかるように、本発明の製造方法は、多層化においても記録層と中間基材層の変形や、記録層の破損、脱落などがなく取扱い易く、生産性が高いため、製造コストを削減することが可能であり、均一な膜厚で高密度に多層化された積層構造体、あるいは積層構造体からなる多層記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明におけるシート材料[2]の構成を示す断面図である。
【図2】本発明におけるシート材料[1]の構成例を示す断面図である。
【図3】本発明においてシート材料[1]の中間基材層の形成と記録層の形成を連続的に連なった工程で行う塗工装置の構成を示す概略図である。
【図4】本発明において剥離処理が施された基材フィルム1の剥離処理面上に中間基材層2、記録層3、保護フィルム4が順次積層されたシート材料を示す概略断面図である。
【図5】本発明における積層構造体の製造方法の一例を説明するための概略図である。
【図6】本発明において5層の記録層と6層の中間基材層とが交互に積層された積層構造体(又は多層記録媒体)の構成例を示す概略図である。
【図7】実施例において積層構造体からなる多層記録媒体を作製する際に用いた工程を示す製造フロー図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基材フィルム
2 中間基材層
3 記録層
4 保護フィルム
31 第1のアンワインダー(アンワインダー1)
32 第1のコーターヘッド(コーターヘッド1)
33 第1の乾燥炉(ドライヤー1)
34 第2のコーターヘッド(コーターヘッド2)
35 第2の乾燥炉(ドライヤー2)
36 ワインダー
37 第2のアンワインダー(アンワインダー2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層と、特定の光に反応する感光性材料単体か若しくは該感光性材料と透明樹脂との混合物からなる記録層とを、この順か若しくは逆順に、連続して形成する工程により、二層構成の複合薄膜を担持したシート材料[1]を得て、
一枚の前記シート材料[1]の記録層上か又は中間基材層上に、別のシート材料[1]の中間基材層か又は記録層を、[1]の基材フィルムを剥離して当接配置し、前記記録層と中間基材層とを交互に積層する交互積層体形成工程と、
該交互積層体形成工程により形成された交互積層体を加熱して一体積層構造とするラミネート処理工程と、
を少なくとも1組以上繰り返すことを特徴とする積層構造体の製造方法。
【請求項2】
前記交互積層体形成工程において、シート材料[1]の他に、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層を形成する工程により得られる一層構成の薄膜を担持したシート材料[2]を用いて積層構成することを特徴とする請求項1に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項3】
前記ラミネート処理工程において、交互積層体の両側最外層上に基材フィルムを保持したまま該基材フィルムを介して加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項4】
前記ラミネート処理工程において、前記交互積層体を少なくとも2本のロール間に挟入、加熱して一体積層構造とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積層構造体の製造方法。
【請求項5】
前記感熱接着性樹脂が、全光線透過率が88%以上で、ガラス転移温度が65℃以上130℃未満のものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の積層構造体の製造方法。
【請求項6】
積層構造体からなる多層記録媒体の製造方法であって、該積層構造体が請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする多層記録媒体の製造方法。
【請求項7】
剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層と、特定の光に反応する感光性材料単体か若しくは該感光性材料と透明樹脂との混合物からなる記録層とが、この順か若しくは逆順に、連続して形成される工程によって得られる二層構成の複合薄膜を担持したシート材料[1]を用いて、
一枚の前記シート材料[1]の記録層上か又は中間基材層上に、別のシート材料[1]の中間基材層か又は記録層が[1]の基材フィルムの剥離により当接配置され、前記記録層と中間基材層との交互積層により交互積層体とされる交互積層体形成工程と、該交互積層体の加熱により一体積層構造とされるラミネート処理工程と、が少なくとも1組以上繰り返されて製造されたことを特徴とする積層構造体。
【請求項8】
前記交互積層体形成工程において、シート材料[1]の他に、剥離処理が施された基材フィルムの該剥離処理面上に、ガラス転移温度が60℃以上で透明な感熱接着性樹脂からなる中間基材層が形成される工程により得られる一層構成の薄膜を担持したシート材料[2]が用いられて積層構成されたことを特徴とする請求項7に記載の積層構造体。
【請求項9】
前記感熱接着性樹脂が、全光線透過率が88%以上で、ガラス転移温度が65℃以上130℃未満のものであることを特徴とする請求項7又は8に記載の積層構造体。
【請求項10】
積層構造体からなる多層記録媒体であって、該積層構造体が請求項7乃至9のいずれかに記載の積層構造体であることを特徴とする多層記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−252328(P2009−252328A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102134(P2008−102134)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】