説明

積層構造体及びその製造方法

【課題】積層構造体において高容量化を実現する。
【解決手段】本発明に係る積層構造体は、金属製の第1基材11、金属製の第2基材12、第1誘電体層21、第2誘電体層22、及び金属層3を備えている。第2基材12は、第1基材11に対向して配置されている。第1誘電体層21は、第1基材11と第2基材12との対向面の内、第1基材11の対向面11a上に形成されている。第2誘電体層21は、第1基材11と第2基材12との対向面の内、第2基材12の対向面12a上に形成されている。金属層3は、第1誘電体層21と第2誘電体層22との間に介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ回路を有した回路基板や薄膜キャパシタ等の積層構造体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願に関連する技術として、絶縁基板内に薄膜キャパシタを埋め込む技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。この技術により作製された基板は、コンデンサ内蔵基板と呼ばれ、薄膜キャパシタの高密度化が可能である。ここで、薄膜キャパシタは、電極箔と、該電極箔上に形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成された電極層とから構成されており、シート状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−103967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、コンデンサ内蔵基板の小型化や、コンデンサ内蔵基板に搭載する能動素子の高性能化に伴い、薄膜キャパシタの高容量化が望まれている。具体的には、薄膜キャパシタについて、その単位面積あたりの静電容量を増大させることが望まれている。しかしながら、従来の薄膜キャパシタは、誘電体層が1層だけ積層された単層構造を有しているに過ぎない。このため、従来の薄膜キャパシタにおいては、その高容量化に限界があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、積層構造体において高容量化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層構造体は、金属製の第1基材、金属製の第2基材、第1誘電体層、第2誘電体層、及び金属層を備えている。第2基材は、前記第1基材に対向して配置されている。第1誘電体層は、前記第1基材と第2基材との対向面の内、第1基材の対向面上に形成されている。第2誘電体層は、前記第1基材と第2基材との対向面の内、第2基材の対向面上に形成されている。金属層は、前記第1誘電体層と第2誘電体層との間に介在している。
【0007】
上記積層構造体の具体的構成において、前記金属層は、第1誘電体層の表面上に形成された第1金属薄膜と、第2誘電体層の表面上に形成された第2金属薄膜とを、互いに圧着し、又は導電性接着材によって互いに接着することにより構成されている。
【0008】
上記積層構造体において、前記第1基材と第2基材とが、第1誘電体層及び第2誘電体層の側端面側に位置する接続部を介して、互いに電気的に接続されていてもよい。
【0009】
上記積層構造体の他の具体的構成において、前記第1基材には、互いに離間して配置された第1電極部と第2電極部とが形成され、前記第1誘電体層には、該第1誘電体層を貫通した第1導電ビアが形成されている。そして、前記第1電極部と金属層とが、第1導電ビアを介して互いに電気的に接続されている。該具体的構成において、前記第2電極部と第2基材とが、第1誘電体層及び第2誘電体層の側端面側に位置する接続部を介して、互いに電気的に接続されていてもよい。
【0010】
より具体的な構成において、前記金属層には、互いに離間して配置された電極層と接続層とが形成され、前記第1誘電体層には、該第1誘電体層を貫通した第2導電ビアが更に形成され、前記第2誘電体層には、該第2誘電体層を貫通した第3導電ビアが形成されている。そして、前記第1電極部と電極層とが、前記第1導電ビアを介して互いに電気的に接続されている。又、前記第2導電ビアと第3導電ビアとが、前記接続層を介して互いに電気的に接続されており、第2導電ビアに前記第2電極部が電気的に接続される一方、第3導電ビアに第2基材が電気的に接続されている。
【0011】
本発明に係る積層構造体の製造方法は、工程(a)、工程(b)、工程(c)、及び工程(d)を有している。工程(a)では、金属製の第1基材の表面上に第1誘電体層を形成する。工程(b)では、金属製の第2基材の表面上に第2誘電体層を形成する。工程(c)では、前記第1誘電体層の表面上に第1金属薄膜を形成する。工程(d)では、前記第1誘電体層と第2誘電体層との間に前記第1金属薄膜が介在することとなる様に、第1基材と第2基材とを積層する。
【0012】
上記製造方法の具体的態様において、該製造方法は、工程(e)を更に有している。工程(e)は、前記工程(b)の後であって且つ工程(d)の前に実行される。工程(e)では、前記第2誘電体層の表面上に第2金属薄膜を形成する。そして、工程(d)では、前記第1金属薄膜と第2金属薄膜とを、互いに圧着し、又は導電性接着材によって互いに接着する。
【0013】
上記製造方法において、工程(d)では、前記第1基材と第2基材との積層に並行して、又はその後、第1誘電体層及び第2誘電体層の側端面側の位置に、第1基材と第2基材とを互いに電気的に接続させる接続部を形成してもよい。
【0014】
上記製造方法の他の具体的態様において、該製造方法は、工程(f)及び工程(g)を更に有している。工程(f)は、前記工程(a)の後であって且つ工程(d)の前に実行される。工程(f)では、前記第1基材に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される第1電極部と第2電極部とを形成する。工程(g)は、前記工程(a)の後であって且つ工程(d)の前に実行される。工程(g)では、前記第1誘電体層に対して、前記第1電極部と第1金属薄膜とを互いに電気的に接続させる導電ビアを形成する。該具体的態様において、工程(d)では、前記第1基材と第2基材との積層に並行して、又はその後、第1誘電体層及び第2誘電体層の側端面側の位置に、前記第2電極部と第2基材とを互いに電気的に接続させる接続部を形成してもよい。
【0015】
上記製造方法の内、工程(e)が実行される態様について、より具体的には、該製造方法は、工程(h)、工程(i)、工程(j)、工程(k)、及び工程(l)を更に有している。工程(h)は、前記工程(a)の後であって且つ工程(d)の前に実行される。工程(h)では、前記第1基材に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される第1電極部と第2電極部とを形成する。工程(i)は、前記工程(c)の後であって且つ工程(d)の前に実行される。工程(i)では、前記第1金属薄膜に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される電極用金属膜と接続用金属膜とを形成する。工程(j)は、前記工程(a)の後であって且つ工程(d)の前に実行される。工程(j)では、前記第1誘電体層に対して、前記第1電極部と第1金属薄膜の電極用金属膜とを互いに電気的に接続させる第1導電ビアと、前記第2電極部と第1金属薄膜の接続用金属膜とを互いに電気的に接続させる第2電ビアとを形成する。工程(k)は、前記工程(e)の後であって且つ工程(d)の前に実行される。工程(k)では、前記第2金属薄膜に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される電極用金属膜と接続用金属膜とを形成する。ここで、第2金属薄膜の電極用金属膜は、工程(d)にて第1金属薄膜の電極用金属膜と重なり合い、第2金属薄膜の接続用金属膜は、工程(d)にて第1金属薄膜の接続用金属膜と重なり合うこととなる。工程(l)は、前記工程(b)の後であって且つ工程(d)の前に実行される。工程(l)では、前記第2誘電体層に対して、前記第2基材と第2金属薄膜の接続用金属膜とを互いに電気的に接続させる第3導電ビアを形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る積層構造体及びその製造方法によれば、積層構造体の高容量化を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る薄膜キャパシタを示した平面図である。
【図2】図1に示されるA−A線に沿う断面図である。
【図3】第1実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法について、その流れを示したフローチャートである。
【図4】該製造方法にて実行される第1構成部作製工程の内、成膜工程の説明に用いられる断面図である。
【図5】該製造方法にて実行される第1構成部作製工程の内、第1パターニング工程の説明に用いられる断面図である。
【図6】該製造方法にて実行される第1構成部作製工程の内、金属薄膜形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図7】該製造方法にて実行される第1構成部作製工程の内、第2パターニング工程の説明に用いられる断面図である。
【図8】該製造方法にて実行される第2構成部作製工程の内、成膜工程の説明に用いられる断面図である。
【図9】該製造方法にて実行される第2構成部作製工程の内、金属薄膜形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図10】該製造方法にて実行される積層工程の説明に用いられる断面図である。
【図11】第1実施形態の薄膜キャパシタを用いて作製されたコンデンサ内蔵基板を示した断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る薄膜キャパシタを示した平面図である。
【図13】図2に示されるB−B線に沿う断面図である。
【図14】第2実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法について、その流れを示したフローチャートである。
【図15】該製造方法にて実行される第1構成部作製工程の内、第1パターニング工程の説明に用いられる断面図である。
【図16】該製造方法にて実行される第1構成部作製工程の内、金属薄膜形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図17】該製造方法にて実行される第1構成部作製工程の内、第2パターニング工程の説明に用いられる断面図である。
【図18】該製造方法にて実行される第1構成部作製工程の内、第3パターニング工程の説明に用いられる断面図である。
【図19】該製造方法にて実行される第2構成部作製工程の内、第1パターニング工程の説明に用いられる断面図である。
【図20】該製造方法にて実行される第2構成部作製工程の内、金属薄膜形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図21】該製造方法にて実行される第2構成部作製工程の内、第2パターニング工程の説明に用いられる断面図である。
【図22】該製造方法にて実行される積層工程の説明に用いられる断面図である。
【図23】第2実施形態の薄膜キャパシタを用いて作製されたコンデンサ内蔵基板を示した断面図である。
【図24】上記薄膜キャパシタの変形例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係る薄膜キャパシタを示した平面図である。図2は、図1に示されるA−A線に沿う断面図である。図2に示す様に、薄膜キャパシタは、第1電極箔11、第2電極箔12、第1誘電体層21、第2誘電体層22、金属層3、保護膜41、及び補強部42を備えている。
【0019】
第1電極箔11及び第2電極箔12は、互いに対向して配置されている。ここで、第1電極箔11及び第2電極箔12は何れも、金属製の基材である。第1電極箔11及び第2電極箔12を構成する金属材料にはそれぞれ、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)等、箔を形成することが可能であって、且つ薄膜キャパシタの電極となり得る物質が用いられる。尚、第1電極箔11及び第2電極箔12を構成する金属材料には、同種の物質が用いられてもよいし、異種の物質が用いられてもよい。
【0020】
第1誘電体層21は、第1電極箔11と第2電極箔12との対向面の内、第1電極箔11の対向面11a上に形成されている。第2誘電体層22は、第1電極箔11と第2電極箔12との対向面の内、第2電極箔12の対向面12a上に形成されている。ここで、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の形成にはそれぞれ、ゾル‐ゲル法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法、蒸着法、粉末噴射コーティング法等、周知の種々の成膜法が用いられる。尚、粉末噴射コーティング法は、気体の流れを利用して、粉末をターゲット(第1電極箔11や第2電極箔12)の表面に噴き付け、これにより該ターゲットの表面上に粉末を堆積させて薄膜を形成する方法である。粉末噴射コーティング法には、PJD(Powder Jet Deposition)法やAD(Aerosol Deposition)法の方法が存在する。
【0021】
第1誘電体層21及び第2誘電体層22を構成する誘電体材料にはそれぞれ、チタン酸バリウム(BaTiO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PbLaZrTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タンタル(Ta2O5)等を主成分とする種々の誘電体材料を用いることが出来る。尚、誘電体材料には、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の誘電特性、絶縁特性、及び強度等の物性を向上させるべく、種々の添加物が含まれていてもよい。
【0022】
金属層3は、第1誘電体層21と第2誘電体層22との間に介在している。金属層3は、第1誘電体層21の表面上に形成された第1金属薄膜31と、第2誘電体層22の表面上に形成された第2金属薄膜32とを、導電性接着材33によって互いに接着することにより構成されている。ここで、第1金属薄膜31及び第2金属薄膜32の形成にはそれぞれ、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法等の手法が用いられる。又、第1金属薄膜31及び第2金属薄膜32を構成する金属材料にはそれぞれ、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)等、薄膜を形成することが可能であって、且つ薄膜キャパシタの電極となり得る物質が用いられる。尚、金属層3は、第1金属薄膜31と第2金属薄膜32とを互いに圧着することにより構成されていてもよい。
【0023】
図1及び図2に示す様に、第1電極箔11には、互いに離間して配置された第1電極部111と第2電極部112とが形成されている。具体的には、第1電極部111は、第1電極箔11の4箇所に形成されている(図1参照)。第2電極部112は、4つの第1電極部111〜111をそれぞれ包囲すると共に、各第1電極部111から離間して形成されている。
【0024】
第2電極部112と第2電極箔12とは、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の側端面21a,22a側に位置する接続部6を介して、互いに電気的に接続されている。具体的には、接続部6は、第1電極箔11の側端部110と第2電極箔12の側端部120とを、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の側端面21a,22a側の位置にて互いに電気的に接続することにより構成されている。ここで、第1電極箔11の側端部110は、第2電極部112に含まれている。本実施形態においては、第1電極箔11の側端部110と第2電極箔12の側端部120とは、これらの間に導電性接着材61を介在させることにより、互いに電気的に接続されている。尚、第1電極箔11の側端部110と第2電極箔12の側端部120とは、これらの外周面に導電性接着材を塗布することにより、互いに電気的に接続されていてもよい。
【0025】
図2に示す様に、第1誘電体層21には、該第1誘電体層21をその表面から裏面まで貫通した導電ビア5が形成されている。具体的には、導電ビア5は、4つの第1電極部111〜111に1つずつ対応させて、第1誘電体層21の4箇所に形成されている。そして、第1電極部111〜111と第1金属薄膜31とが、各第1電極部111に対応する導電ビア5を介して、互いに電気的に接続されている。
【0026】
ここで、各第1電極部111と第2電極部112とは、互いに離間して配置されている。従って、各第1電極部111が、これに対応する導電ビア5に電気的に接続される一方で、第2電極部112は、導電ビア5〜5から電気的に絶縁されている。
【0027】
保護膜41は、耐湿性と電気絶縁性の両方の特性を有している。保護膜41を構成する保護材料には、例えば樹脂材が用いられる。保護膜41は、第1電極部111〜111と第2電極部112との間の間隙を埋めている。従って、第1誘電体層21は、第1電極部111〜111と第2電極部112との間の間隙を通じて外気に晒されることがない。よって、第1誘電体層21による吸湿が防止され、その結果、薄膜キャパシタにおいて高い耐湿性が実現されることになる。尚、図2に示す様に接続部6の内側に間隙Sが形成される場合には、該間隙Sに樹脂材等の保護材料を充填してもよい。
【0028】
補強部42は、第1電極箔11及び第2電極箔12の側端部110,120の外周面を被覆している。これにより、第1金属薄膜31と第2金属薄膜32との接着強度、並びに第1電極箔11と第2電極箔12との接続強度が補強されている。補強部42を構成する補強材料には、例えば樹脂材が用いられる。
【0029】
次に、第1実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法について説明する。ここで、図3は、該製造方法の流れを示したフローチャートである。図3に示す様に、該製造方法では、第1構成部作製工程(A)、第2構成部作製工程(B)、及び積層工程(C)が実行される。第1構成部作製工程(A)と第2構成部作製工程(B)とでは、第1実施形態の薄膜キャパシタを構成する第1構成部101と第2構成部102(図10(a)参照)とがそれぞれ作製される。第1構成部作製工程(A)では、成膜工程(A1)、第1パターニング工程(A2)、金属薄膜形成工程(A3)、及び第2パターニング工程(A4)が順に実行される。第2構成部作製工程(B)では、成膜工程(B1)、及び金属薄膜形成工程(B2)が順に実行される。積層工程(C)は、第1構成部作製工程(A)及び第2構成部作製工程(B)の両工程の後に実行される。
【0030】
図4は、成膜工程(A1)の説明に用いられる断面図である。図4に示す様に、成膜工程(A1)では、ゾル‐ゲル法、MOCVD法、スパッタリング法、蒸着法、粉末噴射コーティング法等、周知の種々の成膜法を用いて、第1電極箔11の表面(対向面11aとなる面)上に第1誘電体層21を形成する。尚、成膜工程(A1)では、第1電極箔11の表面上に、第1誘電体層21となる成膜層を形成した後、該成膜層に対して熱処理を施すことにより、第1誘電体層21を形成してもよい。又、第1構成部作製工程(A)では、後述する第2パターニング工程(A4)にて第1電極箔11に対してエッチング処理が施される。従って、第1電極箔11を構成する材料には、エッチング処理が施し易い物質、例えば銅(Cu)を用いることが好ましい。
【0031】
図5は、第1パターニング工程(A2)の説明に用いられる断面図である。図5に示す様に、第1パターニング工程(A2)では、第1誘電体層21に対してレーザ加工等の加工を施すことにより、該第1誘電体層21の所定箇所に、第1誘電体層21をその表面から裏面まで貫通する貫通孔7を形成する。ここで、所定箇所は、導電ビア5を形成せんとする4箇所に設定されている。
【0032】
図6は、金属薄膜形成工程(A3)の説明に用いられる断面図である。図6に示す様に、金属薄膜形成工程(A3)では、第1誘電体層21の表面上に第1金属薄膜31を形成する。ここで、第1金属薄膜31の形成には、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法等の手法が用いられる。従って、第1金属薄膜31の形成に伴い、該形成に用いられる金属材料の一部によって貫通孔7〜7が充填され、或いは、第1金属薄膜31の一部が貫通孔7〜7の内面にも形成される。これにより、第1誘電体層21に導電ビア5〜5が形成され、該導電ビア5〜5によって、第1金属薄膜31と第1電極箔11とが互いに電気的に接続される。
【0033】
図7(a)〜図7(c)は、第2パターニング工程(A4)の説明に用いられる断面図である。第2パターニング工程(A4)では、図7(a)に示す様に、第1電極箔11の裏面(対向面11aとなる面とは反対側の面)上にレジスト膜8を形成することにより、第1電極箔11に対してマスキング処理を施す。このとき、第1電極箔11の裏面の内、第1電極部111〜111を形成せんとする領域P1と、第2電極部112を形成せんとする領域P2とを、レジスト膜8によって被覆し、それ以外の領域上にはレジスト膜8を形成しない。
【0034】
次に、図7(b)に示す様に、第1電極箔11に対してレジスト膜8側からエッチング処理を施す。これにより、第1電極箔11の内、レジスト膜8によって覆われている部分を残置させると共に、それ以外の部分を除去する。斯くして、第1電極箔11には、第1電極部111〜111と第2電極部112とが形成されることになる。その後、図7(c)に示す様に、第1電極箔11の裏面からレジスト膜8を除去する。これにより、第1構成部101が完成する。
【0035】
図8は、成膜工程(B1)の説明に用いられる断面図である。図8に示す様に、成膜工程(B1)では、ゾル‐ゲル法、MOCVD法、スパッタリング法、蒸着法、粉末噴射コーティング法等、周知の種々の成膜法を用いて、第2電極箔12の表面(対向面12aとなる面)上に第2誘電体層22を形成する。尚、成膜工程(B1)では、第2電極箔12の表面上に、第2誘電体層22となる成膜層を形成した後、該成膜層に対して熱処理を施すことにより、第2誘電体層22を形成してもよい。成膜層の熱処理時には、第2電極箔12も熱に晒されることになる。よって、成膜工程(B1)にて熱処理を実行する場合には、第2電極箔12を構成する金属材料に、融点が高い物質、例えばニッケル(Ni)を用いることが好ましい。これにより、熱処理温度を高くして、第2誘電体層22の誘電特性を向上させることが可能となる。
【0036】
図9は、金属薄膜形成工程(B2)の説明に用いられる断面図である。図9に示す様に、金属薄膜形成工程(B2)では、第2誘電体層22の表面上に第2金属薄膜32を形成する。ここで、第2金属薄膜32の形成には、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法等の手法が用いられる。これにより、第2構成部102が完成する。
【0037】
図10(a)及び図10(b)は、積層工程(C)の説明に用いられる断面図である。図10(a)及び図10(b)に示す様に、積層工程(C)では、第1構成部101と第2構成部102とを積層する。具体的には、第1電極箔11と第2電極箔12とを、第1金属薄膜31と第2金属薄膜32とが互いに対向することとなる姿勢で、積層する。このとき、第1金属薄膜31と第2金属薄膜32とを、導電性接着材33によって互いに接着する。これにより、第1金属薄膜31と第2金属薄膜32とが、互いに電気的に接続されると共に、第1誘電体層21と第2誘電体層22との間に介在することになる。斯くして、第1誘電体層21と第2誘電体層22との間に金属層3が形成されることになる。尚、積層工程(C)では、導電性接着材33を用いずに、第1金属薄膜31と第2金属薄膜32とを互いに圧着してもよい。
【0038】
積層工程(C)では、第1電極箔11と第2電極箔12との積層に並行して、又はその後、第1電極箔11の側端部110と第2電極箔12の側端部120とを、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の側端面21a,22a側の位置にて互いに電気的に接続する。本実施形態においては、第1電極箔11の側端部110と第2電極箔12の側端部120とを、これらの間に導電性接着材61を介在させることにより、互いに電気的に接続させている。斯くして、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の側端面21a,22a側の位置に接続部6が形成され、該接続部6を介して、第2電極部112と第2電極箔12とが電気的に接続されることになる。尚、第1電極箔11の側端部110と第2電極箔12の側端部120とを、これらの外周面に導電性接着材を塗布することにより、互いに電気的に接続させてもよい。
【0039】
積層工程(C)の後、第1電極部111〜111と第2電極部112との間の間隙に保護材料を充填する。保護材料には、樹脂材等、耐湿性と電気絶縁性の両方の特性を有した物質が用いられる。斯くして、図1及び図2に示す様に保護膜41〜41が形成され、第1誘電体層21の露出面が、保護膜41〜41によって覆われることになる。尚、積層工程(C)の後、図10(b)に示す様に接続部6の内側に間隙Sが形成される場合には、第1電極箔11の側端部110と第2電極箔12の側端部120とを接続する前に、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の側端部にそれぞれ、樹脂材等の保護材料を塗布してもよい。これにより、間隙Sが保護材料によって充填され、その結果、側端部110,120が保護材料によって被覆されることになる。
【0040】
積層工程(C)の後、更に、第1電極箔11及び第2電極箔12の側端部110,120の外周面に補強材料を塗布する。補強材料には、例えば樹脂材が用いられる。斯くして、図1及び図2に示す様に補強部42が形成され、該補強部42によって側端部110,120の外周面が被覆されることになる。これにより、図1及び図2に示す薄膜キャパシタが完成することになる。
【0041】
第1実施形態に係る薄膜キャパシタは、金属層3を介して第1誘電体層21と第2誘電体層22とが積層された多層構造を有している。従って、第1実施形態の薄膜キャパシタによれば、単層構造の薄膜キャパシタに比べて単位面積あたりの静電容量が増大する。よって、薄膜キャパシタの高容量化が実現されている。
【0042】
第1実施形態の薄膜キャパシタにおいては、金属層3が、第1金属薄膜31と第2金属薄膜32とを導電性接着材33によって互いに接着することにより構成されている。ここで、第1金属薄膜31及び第2金属薄膜32の形成にはそれぞれ、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法等の手法が用いられている。従って、第1金属薄膜31及び第2金属薄膜32の厚さ寸法は、第1電極箔11や第2電極箔12の厚さ寸法に比べて著しく小さい。よって、金属層3の厚さ寸法が小さく、その結果、薄膜キャパシタの多層化に伴う厚さ寸法の増大が抑えられている。
【0043】
図11は、第1実施形態の薄膜キャパシタを用いて作製されたコンデンサ内蔵基板を示した断面図である。図11に示す様に、絶縁基板9は、2つの絶縁基材91,92を積層して構成されている。そして、薄膜キャパシタは、2つの絶縁基材91,92の間に挟み込まれている。ここで、第1実施形態の薄膜キャパシタにおいては、図2に示す様に、薄膜キャパシタの電極(陽極又は陰極)の内、金属層3によって構成される電極が、導電ビア5〜5及び第1電極部111〜111によって第1誘電体層21上に引き出されている。又、第2電極箔12によって構成される電極が、接続部6を介して第2電極部112に電気的に接続されている。従って、コンデンサ内蔵基板に回路を構築する場合において、図11に示す様に、導電ビア93〜93を用いて、薄膜キャパシタに対して片側(第1電極箔11側)から配線することが可能となる。従って、コンデンサ内蔵基板を作製する過程において、回路の構築が容易となる。
【0044】
図12は、本発明の第2実施形態に係る薄膜キャパシタを示した平面図である。図13は、図12に示されるB−B線に沿う断面図である。図13に示す様に、薄膜キャパシタは、第1電極箔11、第2電極箔12、第1誘電体層21、第2誘電体層22、金属層3、第1保護膜43、及び第2保護膜44を備えている。以下、第2実施形態の薄膜キャパシタの構成の内、第1実施形態の薄膜キャパシタの構成と相違している部分について説明する。尚、第1実施形態の薄膜キャパシタの構成と同じ部分については、説明を省略する。
【0045】
図13に示す様に、金属層3には、互いに離間して配置された電極層34と接続層35とが形成されている。具体的には、第1金属薄膜31に、互いに離間して配置された電極用金属膜311と接続用金属膜312とが形成されている。又、第2金属薄膜32には、互いに離間して配置された電極用金属膜321と接続用金属膜322とが形成されている。そして、導電性接着材33によって電極用金属膜311,321を互いに接着することにより、電極層34が構成されている。又、導電性接着材33によって接続用金属膜312,322を互いに接着することにより、接続層35が構成されている。
【0046】
本実施形態においては、電極用金属膜311は、第2電極部112と広い範囲に亘って対向している。接続用金属膜312は、第1金属薄膜31の複数箇所に設けられる一方で、各接続用金属膜312は、第2電極部112と狭い範囲で対向しているに過ぎない。又、電極用金属膜321は、電極用金属膜311と重なり合う一方で、接続用金属膜312とは重なっていない。接続用金属膜322は、接続用金属膜312と重なり合う一方で、電極用金属膜311とは重なっていない。
【0047】
図13に示す様に、第1誘電体層21には、該第1誘電体層21をその表面から裏面まで貫通した第1導電ビア51と第2導電ビア52とが形成されている。具体的には、第1導電ビア51は、4つの第1電極部111〜111に1つずつ対応させて、第1誘電体層21の4箇所に形成されている。そして、第1電極部111〜111と第1金属薄膜31の電極用金属膜311とが、各第1電極部111に対応する第1導電ビア51を介して、互いに電気的に接続されている。一方、第2導電ビア52は、第1金属薄膜31の接続用金属膜312〜312に1つずつ対応させて、第1誘電体層21の内、第1導電ビア51〜51の形成箇所とは異なる複数箇所に形成されている。そして、第2電極部112と第1金属薄膜31の接続用金属膜312〜312とが、各接続用金属膜312に対応する第2導電ビア52を介して、互いに電気的に接続されている。
【0048】
ここで、各第1電極部111と第2電極部112とは、互いに離間して配置されている。従って、各第1電極部111は、これに対応する第1導電ビア51に電気的に接続される一方で、第2導電ビア52〜52からは電気的に絶縁されている。第2電極部112は、第2導電ビア52〜52に電気的に接続される一方で、第1導電ビア51〜51からは電気的に絶縁されている。又、電極用金属膜311と各接続用金属膜312とは、互いに離間して配置されている。従って、電極用金属膜311は、第1導電ビア51〜51に電気的に接続される一方で、第2導電ビア52〜52からは電気的に絶縁されている。各接続用金属膜312は、これに対応する第2導電ビア52に電気的に接続される一方で、第1導電ビア51〜51からは電気的に絶縁されている。
【0049】
第2誘電体層22には、該第2誘電体層22をその表面から裏面まで貫通した第3導電ビア53が形成されている。第3導電ビア53は、第2金属薄膜32の接続用金属膜322〜322に1つずつ対応させて、第2誘電体層22の複数箇所に形成されている。そして、第2電極箔12と第2金属薄膜32の接続用金属膜322〜322とが、各接続用金属膜322に対応する第3導電ビア53を介して、互いに電気的に接続されている。
【0050】
ここで、電極用金属膜321と各接続用金属膜322とは、互いに離間して配置されている。従って、各接続用金属膜322が、これに対応する第3導電ビア53に電気的に接続される一方で、電極用金属膜321は、第3導電ビア53〜53から電気的に絶縁されている。
【0051】
斯くして、第2実施形態の薄膜キャパシタにおいては、第1電極部111〜111と電極層34とが、第1導電ビア51〜51を介して互いに電気的に接続されている。又、各第2導電ビア52と、これに対応する第3導電ビア53とが、接続層35を介して互いに電気的に接続されている。そして、第2導電ビア52〜52には第2電極部112が電気的に接続される一方、第3導電ビア53〜53には第2電極箔12が電気的に接続されている。尚、図13に示す様に、第2実施形態の薄膜キャパシタには、接続部6(図2参照)は設けられていない。
【0052】
第1保護膜43及び第2保護膜44は何れも、耐湿性と電気絶縁性の両方の特性を有している。第1保護膜43及び第2保護膜44を構成する保護材料には、例えば樹脂材が用いられる。図13に示す様に、第1保護膜43は、第1電極部111〜111と第2電極部112との間の間隙を埋めている。又、第2保護膜44は、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の側端部を、全周に亘って覆っている。従って、第1誘電体層21は、第1電極部111〜111と第2電極部112との間の間隙を通じて外気に晒されることがない。これに加えて、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の側端部が、外気に晒されることがない。よって、第1誘電体層21及び第2誘電体層22による吸湿が防止され、その結果、薄膜キャパシタにおいて高い耐湿性が実現されることになる。
【0053】
次に、第2実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法について説明する。ここで、図14は、該製造方法の流れを示したフローチャートである。図14に示す様に、該製造方法では、第1構成部作製工程(D)、第2構成部作製工程(E)、及び積層工程(F)が実行される。第1構成部作製工程(D)と第2構成部作製工程(E)とでは、第2実施形態の薄膜キャパシタを構成する第1構成部103と第2構成部104(図22(a)参照)とがそれぞれ作製される。第1構成部作製工程(D)では、成膜工程(D1)、第1パターニング工程(D2)、金属薄膜形成工程(D3)、第2パターニング工程(D4)、及び第3パターニング工程(D5)が順に実行される。第2構成部作製工程(E)では、成膜工程(E1)、第1パターニング工程(E2)、金属薄膜形成工程(E3)、及び第2パターニング工程(E4)が順に実行される。積層工程(F)は、第1構成部作製工程(D)及び第2構成部作製工程(E)の両工程の後に実行される。尚、成膜工程(D1)及び成膜工程(E1)はそれぞれ、第1実施形態の成膜工程(A1)(図4参照)及び成膜工程(B1)(図8参照)と同じであるので、説明を省略する。
【0054】
図15は、第1パターニング工程(D2)の説明に用いられる断面図である。図15に示す様に、第1パターニング工程(D2)では、第1誘電体層21に対してレーザ加工等の加工を施すことにより、該第1誘電体層21の所定箇所に、第1誘電体層21をその表面から裏面まで貫通する第1貫通孔71と第2貫通孔72とを形成する。ここで、所定箇所は、第1導電ビア51を形成せんとする4箇所と、第2導電ビア52を形成せんとする複数箇所とに設定されている。
【0055】
図16は、金属薄膜形成工程(D3)の説明に用いられる断面図である。図16に示す様に、金属薄膜形成工程(D3)では、第1誘電体層21の表面上に第1金属薄膜31を形成する。ここで、第1金属薄膜31の形成には、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法等の手法が用いられる。従って、第1金属薄膜31の形成に伴い、該形成に用いられる金属材料の一部によって第1貫通孔71〜71及び第2貫通孔72〜72が充填され、或いは、第1金属薄膜31の一部が第1貫通孔71〜71及び第2貫通孔72〜72の内面にも形成される。これにより、第1誘電体層21に第1導電ビア51〜51及び第2導電ビア52〜52が形成され、該第1導電ビア51〜51及び第2導電ビア52〜52によって、第1金属薄膜31と第1電極箔11とが互いに電気的に接続される。
【0056】
図17(a)〜図17(c)は、第2パターニング工程(D4)の説明に用いられる断面図である。第2パターニング工程(D4)では、図17(a)に示す様に、第1金属薄膜31の表面上にレジスト膜81を形成することにより、第1金属薄膜31に対してマスキング処理を施す。このとき、第1金属薄膜31の表面の内、電極用金属膜311を形成せんとする領域P3と、接続用金属膜312〜312を形成せんとする領域P4とを、レジスト膜81によって被覆し、それ以外の領域上にはレジスト膜81を形成しない。
【0057】
次に、図17(b)に示す様に、第1金属薄膜31に対してレジスト膜81側からエッチング処理を施す。これにより、第1金属薄膜31の内、レジスト膜81によって覆われている部分を残置させると共に、それ以外の部分を除去する。斯くして、第1金属薄膜31には、電極用金属膜311と接続用金属膜312〜312とが形成されることになる。その後、図17(c)に示す様に、第1金属薄膜31の表面からレジスト膜81を除去する。
【0058】
尚、上記第2パターニング工程(D4)を実行することに代えて、金属薄膜形成工程(D3)において次の態様を採用してもよい。即ち、第1誘電体層21の表面の内、電極用金属膜311を形成せんとする領域と、接続用金属膜312〜312を形成せんとする領域とに、第1金属薄膜31を選択的に形成し、これにより電極用金属膜311と接続用金属膜312〜312とを形成してもよい。この態様によれば、上記第2パターニング工程(D4)が不要となる。
【0059】
図18(a)〜図18(c)は、第3パターニング工程(D5)の説明に用いられる断面図である。第3パターニング工程(D5)では、図18(a)に示す様に、第1電極箔11の裏面(対向面11aとなる面とは反対側の面)上にレジスト膜82を形成することにより、第1電極箔11に対してマスキング処理を施す。このとき、第1電極箔11の裏面の内、第1電極部111〜111を形成せんとする領域P5と、第2電極部112を形成せんとする領域P6とを、レジスト膜82によって被覆し、それ以外の領域上にはレジスト膜82を形成しない。
【0060】
次に、図18(b)に示す様に、第1電極箔11に対してレジスト膜82側からエッチング処理を施す。これにより、第1電極箔11の内、レジスト膜82によって覆われている部分を残置させると共に、それ以外の部分を除去する。斯くして、第1電極箔11には、第1電極部111〜111と第2電極部112とが形成されることになる。その後、図18(c)に示す様に、第1電極箔11の裏面からレジスト膜82を除去する。これにより、第1構成部103が完成する。
【0061】
図19は、第1パターニング工程(E2)の説明に用いられる断面図である。図19に示す様に、第1パターニング工程(E2)では、第2誘電体層22に対してレーザ加工等の加工を施すことにより、該第2誘電体層22の所定箇所に、第1誘電体層21をその表面から裏面まで貫通する第3貫通孔73を形成する。ここで、所定箇所は、第3導電ビア53を形成せんとする複数箇所に設定されている。
【0062】
図20は、金属薄膜形成工程(E3)の説明に用いられる断面図である。図20に示す様に、金属薄膜形成工程(E3)では、第2誘電体層22の表面上に第2金属薄膜32を形成する。ここで、第2金属薄膜32の形成には、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法等の手法が用いられる。従って、第2金属薄膜32の形成に伴い、該形成に用いられる金属材料の一部によって第3貫通孔73〜73が充填され、或いは、第2金属薄膜32の一部が第3貫通孔73〜73の内面にも形成される。これにより、第2誘電体層22に第3導電ビア53〜53が形成され、該第3導電ビア53〜53によって、第2金属薄膜32と第2電極箔12とが互いに電気的に接続される。
【0063】
図21(a)〜図21(c)は、第2パターニング工程(E4)の説明に用いられる断面図である。第2パターニング工程(E4)では、図21(a)に示す様に、第2金属薄膜32の表面上にレジスト膜83を形成することにより、第2金属薄膜32に対してマスキング処理を施す。このとき、第2金属薄膜32の表面の内、電極用金属膜321を形成せんとする領域P7と、接続用金属膜322〜322を形成せんとする領域P8とを、レジスト膜83によって被覆し、それ以外の領域上にはレジスト膜83を形成しない。
【0064】
次に、図21(b)に示す様に、第2金属薄膜32に対してレジスト膜83側からエッチング処理を施す。これにより、第2金属薄膜32の内、レジスト膜83によって覆われている部分を残置させると共に、それ以外の部分を除去する。斯くして、第2金属薄膜32には、電極用金属膜321と接続用金属膜322〜322とが形成されることになる。その後、図21(c)に示す様に、第2金属薄膜32の表面からレジスト膜83を除去する。これにより、第2構成部104が完成する。
【0065】
尚、上記第2パターニング工程(E4)を実行することに代えて、金属薄膜形成工程(E3)において次の態様を採用してもよい。即ち、第2誘電体層22の表面の内、電極用金属膜321を形成せんとする領域と、接続用金属膜322〜322を形成せんとする領域とに、第2金属薄膜32を選択的に形成し、これにより電極用金属膜321と接続用金属膜322〜322とを形成してもよい。この態様によれば、上記第2パターニング工程(E4)が不要となる。
【0066】
図22(a)及び図22(b)は、積層工程(F)の説明に用いられる断面図である。図22(a)及び図22(b)に示す様に、積層工程(F)では、第1構成部103と第2構成部104とを積層する。具体的には、第1電極箔11と第2電極箔12とを、第1金属薄膜31と第2金属薄膜32とが互いに対向することとなる姿勢で、積層する。このとき、電極用金属膜311,321を互いに重ね合わせると共に、これらを導電性接着材33によって互いに接着する。又、各接続用金属膜312とこれに対応する接続用金属膜322とを互いに重ね合わせると共に、これらを導電性接着材33によって互いに接着する。これにより、第1誘電体層21と第2誘電体層22との間に金属層3が形成され、該金属層3には、電極層34と接続層35〜35が形成されることになる。尚、積層工程(F)では、導電性接着材33を用いずに、第1金属薄膜31と第2金属薄膜32とを互いに圧着してもよい。
【0067】
積層工程(F)の後、第1電極部111〜111と第2電極部112との間の間隙に保護材料を充填する。又、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の側端部を、全周に亘って保護材料によって被覆する。これらの保護材料には、樹脂材等、耐湿性と電気絶縁性の両方の特性を有した物質が用いられる。斯くして、図12及び図13に示す様に第1保護膜43〜43及び第2保護膜44が形成され、第1誘電体層21及び第2誘電体層22の露出面全体が、第1保護膜43〜43及び第2保護膜44によって覆われることになる。これにより、図12及び図13に示す薄膜キャパシタが完成することになる。
【0068】
第2実施形態に係る薄膜キャパシタによれば、第1実施形態の薄膜キャパシタと同様、薄膜キャパシタの高容量化が実現される。又、薄膜キャパシタの多層化に伴う厚さ寸法の増大が抑えられる。
【0069】
ここで、第2実施形態の薄膜キャパシタにおいては、第1電極箔11及び第2電極箔12の内、第1実施形態の薄膜キャパシタでは接続部6として用いられていた部分にも、第1誘電体層21及び第2誘電体層22をそれぞれ形成することが出来る。従って、第2実施形態の薄膜キャパシタは、第1実施形態の薄膜キャパシタに比べて、高容量化を実現し易い。尚、第1実施形態の薄膜キャパシタは、第2実施形態の薄膜キャパシタに比べて、製造が容易である。
【0070】
図23は、第2実施形態の薄膜キャパシタを用いて作製されたコンデンサ内蔵基板を示した断面図である。図23に示す様に、絶縁基板9は、2つの絶縁基材91,92を積層して構成されている。そして、薄膜キャパシタは、2つの絶縁基材91,92の間に挟み込まれている。ここで、第2実施形態の薄膜キャパシタにおいては、図13に示す様に、薄膜キャパシタの電極(陽極又は陰極)の内、電極層34によって構成される電極が、第1導電ビア51〜51及び第1電極部111〜111によって第1誘電体層21上に引き出されている。又、第2電極箔12によって構成される電極が、第3導電ビア53〜53、接続層35、及び第2導電ビア52〜52を順に介して、第2電極部112に電気的に接続されている。従って、コンデンサ内蔵基板に回路を構築する場合において、図23に示す様に、導電ビア93〜93を用いて、薄膜キャパシタに対して片側(第1電極箔11側)から配線することが可能となる。従って、コンデンサ内蔵基板を作製する過程において、回路の構築が容易となる。
【0071】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、第1実施形態の薄膜キャパシタは、第1金属薄膜31又は第2金属薄膜32が形成されていない構成に変形されてもよい。又、第1実施形態の薄膜キャパシタは、第1金属薄膜31及び第2金属薄膜32の何れもが形成されていない構成に変形されてもよい。この構成においては、第1誘電体層21と第2誘電体層22とが導電性接着材33によって互い接着され、該導電性接着材33によって金属層3が形成されることになる。
【0072】
第1実施形態の薄膜キャパシタは、図24に示す様に、接続部6が設けられていない構成に変形されてもよい。この構成の薄膜キャパシタを用いてコンデンサ内蔵基板を作製する場合、第1電極部111〜111及び第2電極部112に加えて、第2電極箔12にも配線が施されることになる。又、第1実施形態の薄膜キャパシタは、導電ビア5〜5が設けられていない構成に変形されてもよい。更に、第1実施形態の薄膜キャパシタは、導電ビア5〜5が設けられておらず、且つ第1電極箔11に第1電極部111〜111と第2電極部112とが形成されていない構成に変形されてもよい。更に又、第1実施形態の薄膜キャパシタは、第1電極箔11や第2電極箔12とは別の部材を接続部6として用いた構成に変形されてもよい。
【0073】
第1実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法において、第2パターニング工程(A4)は、成膜工程(A1)の後であって且つ金属薄膜形成工程(A3)の前に実行されてもよい。第2実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法において、第3パターニング工程(D5)は、成膜工程(D1)の後であって且つ第2パターニング工程(D4)の前に実行されてもよい。製造方法の工程順は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0074】
上述した薄膜キャパシタ及びその製造方法において、第1電極箔11及び第2電極箔12に代えて、種々の金属製の基材を採用することが出来る。又、上述した薄膜キャパシタ及びその製造方法の各種構成は、コンデンサ回路を有した回路基板等、種々の積層構造体に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0075】
11 第1電極箔
111 第1電極部
112 第2電極部
12 第2電極箔
11a,12a 対向面
21 第1誘電体層
22 第2誘電体層
21a,22a 側端面
3 金属層
31 第1金属薄膜
311 電極用金属膜
312 接続用金属膜
32 第2金属薄膜
321 電極用金属膜
322 接続用金属膜
33 導電性接着材
34 電極層
35 接続層
5 導電ビア
51 第1導電ビア
52 第2導電ビア
53 第3導電ビア
6 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第1基材と、
前記第1基材に対向して配置された金属製の第2基材と、
前記第1基材と第2基材との対向面の内、第1基材の対向面上に形成された第1誘電体層と、
前記第1基材と第2基材との対向面の内、第2基材の対向面上に形成された第2誘電体層と、
前記第1誘電体層と第2誘電体層との間に介在した金属層と
を備える、積層構造体。
【請求項2】
前記金属層は、第1誘電体層の表面上に形成された第1金属薄膜と、第2誘電体層の表面上に形成された第2金属薄膜とを、互いに圧着し、又は導電性接着材によって互いに接着することにより構成されている、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記第1基材と第2基材とが、第1誘電体層及び第2誘電体層の側端面側に位置する接続部を介して、互いに電気的に接続されている、請求項1又は請求項2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記第1基材には、互いに離間して配置された第1電極部と第2電極部とが形成され、前記第1誘電体層には、該第1誘電体層を貫通した第1導電ビアが形成されており、前記第1電極部と金属層とが、第1導電ビアを介して互いに電気的に接続されている、請求項1又は請求項2に記載の積層構造体。
【請求項5】
前記第2電極部と第2基材とが、第1誘電体層及び第2誘電体層の側端面側に位置する接続部を介して、互いに電気的に接続されている、請求項4に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記金属層には、互いに離間して配置された電極層と接続層とが形成され、前記第1誘電体層には、該第1誘電体層を貫通した第2導電ビアが更に形成され、前記第2誘電体層には、該第2誘電体層を貫通した第3導電ビアが形成されており、
前記第1電極部と電極層とが、前記第1導電ビアを介して互いに電気的に接続され、前記第2導電ビアと第3導電ビアとが、前記接続層を介して互いに電気的に接続されており、第2導電ビアに前記第2電極部が電気的に接続される一方、第3導電ビアに第2基材が電気的に接続されている、
請求項4に記載の積層構造体。
【請求項7】
(a)金属製の第1基材の表面上に第1誘電体層を形成する工程と、
(b)金属製の第2基材の表面上に第2誘電体層を形成する工程と、
(c)前記第1誘電体層の表面上に第1金属薄膜を形成する工程と、
(d)前記第1誘電体層と第2誘電体層との間に前記第1金属薄膜が介在することとなる様に、第1基材と第2基材とを積層する工程と
を有する、積層構造体の製造方法。
【請求項8】
(e)前記工程(b)の後であって且つ工程(d)の前に、前記第2誘電体層の表面上に第2金属薄膜を形成する工程を更に有し、
前記工程(d)では、前記第1金属薄膜と第2金属薄膜とを、互いに圧着し、又は導電性接着材によって互いに接着する、
請求項7に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項9】
前記工程(d)では、前記第1基材と第2基材との積層に並行して、又はその後、第1誘電体層及び第2誘電体層の側端面側の位置に、第1基材と第2基材とを互いに電気的に接続させる接続部を形成する、請求項7又は請求項8に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項10】
(f)前記工程(a)の後であって且つ工程(d)の前に、前記第1基材に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される第1電極部と第2電極部とを形成する工程と、
(g)前記工程(a)の後であって且つ工程(d)の前に、前記第1誘電体層に対して、前記第1電極部と第1金属薄膜とを互いに電気的に接続させる導電ビアを形成する工程と
を更に有する、請求項7又は請求項8に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項11】
前記工程(d)では、前記第1基材と第2基材との積層に並行して、又はその後、第1誘電体層及び第2誘電体層の側端面側の位置に、前記第2電極部と第2基材とを互いに電気的に接続させる接続部を形成する、請求項10に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項12】
(h)前記工程(a)の後であって且つ工程(d)の前に、前記第1基材に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される第1電極部と第2電極部とを形成する工程と、
(i)前記工程(c)の後であって且つ工程(d)の前に、前記第1金属薄膜に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される電極用金属膜と接続用金属膜とを形成する工程と、
(j)前記工程(a)の後であって且つ工程(d)の前に、前記第1誘電体層に対して、前記第1電極部と第1金属薄膜の電極用金属膜とを互いに電気的に接続させる第1導電ビアと、前記第2電極部と第1金属薄膜の接続用金属膜とを互いに電気的に接続させる第2電ビアとを形成する工程と、
(k)前記工程(e)の後であって且つ工程(d)の前に、前記第2金属薄膜に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される電極用金属膜と接続用金属膜とを形成する工程であって、第2金属薄膜の電極用金属膜は、工程(d)にて第1金属薄膜の電極用金属膜と重なり合い、第2金属薄膜の接続用金属膜は、工程(d)にて第1金属薄膜の接続用金属膜と重なり合うこととなる、工程と、
(l)前記工程(b)の後であって且つ工程(d)の前に、前記第2誘電体層に対して、前記第2基材と第2金属薄膜の接続用金属膜とを互いに電気的に接続させる第3導電ビアを形成する工程と
を更に有する、請求項8に記載の積層構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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