説明

積層繊維構造体

【課題】制電性が高く、湿潤状態においても強度劣化せず、かつ拭取り性能が高いスクリーン清掃用のワイパーを提供する事。
【解決手段】少なくとも第1層が、表面が開孔されたセルロース系繊維不職布からなり、孔の面積が0.05〜0.5mm/個、孔数が10〜100個/2.54cm平方(6.45cm2)、摩擦帯電圧700V未満で、第2層以降がセルロース系繊維または合成繊維等の繊維構造体からなり、積層構造体の湿潤時の引張強力が50〜300N/50mm、通気度が50〜250cc/cm/sec.であることを特徴とする積層繊維構造体、及び積層繊維構造体を用いたスクリーン印刷機用ワイパー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層繊維構造体、詳しくはセルロース系繊維不職布からなる積層繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気部品、電子部品、IC関連部品を製造する際には、プリント配線基板にクリームはんだを印刷するために、スクリーン印刷機が用いられている。しかしプリント配線基板の表面の凸凹やその他の要因により、段々とスクリーンの開口部や裏面にクリームはんだが残存してくる。残存はんだを放置したまま印刷を続けると、印刷品質が劣化してしまうため、スクリーン上に残存したクリームはんだを定期的に吸引し拭取り清掃する事が一般的であり、その清掃には、拭取りの際の接触摩擦によるスクリーンへの帯電が少ない、セルロース系繊維不職布を主原料としたワイパーが多く用いられている。
【0003】
しかし、最近の上記電気部品、電子部品、IC関連部品やクリームはんだの緻密度の向上、イソプロピルアルコールなどの溶媒を用いた湿潤条件下での拭取り清掃の増大、印刷機の作動速度アップ、コンパクト化などから、上記性能の他に、湿潤状態においても強度低下せず、かつ拭取り性能がより高いスクリーン清掃用のワイパーが望まれている。
セルロース系繊維不職布を用いた清掃用ワイパーとしては、例えば本質的に木材パルプと合成有機繊維からなる集合物からなるスパンレースド不織織物(特許文献1記載)があるが、通常直径が10〜40μm程ある粘性の大きいクリーム状ハンダ剤を拭取る際は、このような孔の開いていない種類のワイパーではハンダの吸引が出来ずにスクリーン表面に引き伸ばすだけとなる。
【0004】
またパターン化スパンレース布の製造方法(特許文献2記載)があるが、スパンレース布に単に孔を開けただけでは、多くの貫通孔が開いてしまい、また孔の大きさによっては、ワイパーからハンダや湿潤拭取り時の溶剤が通過し、印刷機を傷めてしまったり孔からハンダが脱落しスクリーンに再付着してしまう。
このため従来の方法では、制電性が高く、湿潤状態においても強度劣化せず、かつ拭取り性能が高いスクリーン清掃用のワイパーを製造するのは極めて困難であった。
【特許文献1】特公平3−73665公報
【特許文献2】特開2002−161463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、制電性が高く、湿潤状態においても強度劣化せず、かつ拭取り性能が高いスクリーン清掃用のワイパーを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、適切なる孔径と面積、通気度、厚みをもつことにより、ハンダ剤の拭き残りの無く、はんだの裏抜けのないワイパーを発明するに至った。
すなわち、上記課題を達成するために本願で特許請求される発明は以下の通りである。
(1)少なくとも第1層が、表面が開孔されたセルロース系繊維不職布からなり、孔の面積が0.05〜0.5mm/個、孔数が10〜100個/2.54cm平方(6.45cm2)、摩擦帯電圧700V未満で、第2層以降がセルロース系繊維または合成繊維等の繊維構造体からなり、積層構造体の湿潤時の引張強力が50〜300N/50mm、通気度が50〜250cc/cm/sec.であることを特徴とする積層繊維構造体。
(2)全体の厚みが0.10〜0.60mm、であることを特徴とする上記(1)記載の積層繊維構造体。
(3)前記(1)または(2)記載の積層繊維構造体を用いたスクリーン印刷機用ワイパー。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって得られるセルロース系繊維不職布からなる積層構造体は、制電性が高く、湿潤状態においても強度劣化せず、かつ拭取り性能が高いスクリーン清掃用のワイパーを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳説する。
本発明におけるセルロース系繊維とは、麻、綿等の天然セルロース繊維、キュプラ、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン(特に平均重合度500〜600が好ましい。)等の再生セルロース繊維、リヨセル、(繊維学会誌(繊維と工業)Vol.48,No.11(1992)P.584〜P.591に記載されているコートルズ社の商品名テンセルが相当)等の精製セルロース繊維などであるが、好ましくは、繊維内の不純物が少ない再生セルロース繊維、精製セルロース繊維であり、更に好ましくは脱落繊維の発生しにくい再生セルロース連続長繊維である。
【0009】
本発明のセルロース系繊維不職布は、主としてセルロース系繊維からなる。セルロース系繊維100%であってもよく、本発明記載の摩擦帯電圧を満たす範囲で例えば、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維を混用しても良い。この場合に繊維構造体におけるセルロース系繊維の含有量は30重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上である。また不職布の組織、単糸デニール等は特に限定されない。
【0010】
本発明のセルロース系繊維不職布の構造は特に限定されないが、少なくともスクリーンと接触する表面において、セルロース繊維が面積率50%以上で存在することが好ましい。ここでいう面積率とは表面に存在するセルロース系繊維の面積比率であり、例えば合成繊維と複合されている場合、セルロース系繊維が染色され、合成繊維が染色されない染料で構造体を染色し、表面積に対する染色部分の面積を画像解析等することによって求めることができる。両側表面のセルロース系繊維面積率が50%未満であると、特にワイパーを乾燥状態で使用する際に、上記構成要件を満たす帯電防止性能を得にくい。
【0011】
セルロース系繊維不職布の製造方法は特に限定されない。例えば、湿式法、乾式法、抄紙法で作られたものでもよく、これらが複合されたものでもよい。
本発明のセルロース系繊維不職布の製造方法について一例を紹介する。本発明の好ましい態様は再生セルロース連続長繊維不織布であるが、例えば旭化成せんい株式会社製のキュプラ不織布「ベンリーゼ(登録商標)」がこれに相当する。
【0012】
キュプラ不織布の製造方法は、異物を除去し、重合度を調整したコットンリンターを銅アンモニウム溶液に溶解させた原液を細孔(原液吐出孔)を有した紡糸口金(紡口)から押し出し、水と共に漏斗内を落下させ、脱アンモニアさせることにより原液を凝固させつつ、延伸を行い、ネット上へ振り落としウエブ形成させる。この際、ネットを進行させながら進行方向と垂直方向へ振動させることにより、ネットへ振り落とされる繊維はSinカーブを描くことになる。紡糸時の延伸は100〜500倍が可能であり、紡糸漏斗の形状と、その中を流下させる紡糸水量を変えることにより、延伸倍率の調整が任意に可能である。延伸倍率を変えることにより、単繊度や不織布の強度を変えることが可能である。また、紡糸水量や温度を変化させることに原液内に微量残留する低分子量セルロース、いわゆるヘミセルロースをコントロールすることも可能である。また、ネットの進行速度、振動幅を制御することにより、繊維配列方向を制御し、不織布としての強度や伸度等をコントロールすることが可能である。
【0013】
紡糸漏斗の形状としては、矩形型が好ましく、流下させる紡糸漏斗の長さは100〜400mm、流下出口のスリット幅は2〜5mmが好ましい。本発明に用いる紡口の原液吐出孔の直径は0.1〜0.5mmが好ましく、形状は丸型が好ましい。また、不織布の均一性を確保する意味から、ウエブを積層して不織布化することが好ましく、その積層枚数は3〜10枚が好ましい。積層後のウエブを例えば特許第787914号公報、特許第877579号公報に記載の方法により、ウエブ状態でセルロースを再生させたり、精練したりした後、高圧水流により繊維交絡させ不織布を製造する。この際に意匠性を付与するために不織布に穴や凹凸をつけたりすることが高圧水流の条件や不織布の下及び/又は上に配置されるネットの柄によって可能となる。得られた不織布は乾燥、巻き取り品として得ることができる。紡糸から巻き取りまでが一連の工程で成されるため繊維が切断されずに連続的に繋がっているので連続長繊維不織布という。
【0014】
本発明のセルロース系繊維不職布の目付は、構成要件の摩擦帯電圧を満たすという点では8〜150g/mである事が好ましく、より好ましくは10〜120g/mである。
本発明の積層繊維構造体において少なくとも第1層に存在するセルロース系繊維不職布は、表面が開孔されており、孔の面積は、0.05〜0.5mm/個であり、好ましくは0.06〜0.4mm/個、更に好ましくは0.09〜0.25mm/個である。また、その孔数は、10〜100個/2.54cm平方(6.45cm2)であり、好ましくは20〜50個/2.54cm平方(6.45cm2)、更に好ましくは30〜40個/2.54cm平方(6.45cm2)である。
【0015】
孔の面積や数が上記範囲よりも大きくなると、前述のとおりハンダや溶剤などが機器内部に入り込んでしまう恐れがある。逆に面積や数が上記範囲よりも小さくなると、構造物内部にハンダを取り込むに至らず、結果ハンダの拭き残りを生じてしまう。
孔の開け方は上記範囲を満たすものであればその方法は特に限定されるものではないが、脱落繊維の発生が少ないと言う点ではウォータージェットなどの高圧液体流による方法が好ましい。具体的には、ステンレス、リン青銅等で作られたメッシュ状のネット上に不織布を置き、上から高圧液体流処理することによって数がネットのメッシュと同程度の孔を開孔させることができる。孔の面積は、ネットの開孔率、高圧液体流処理条件等によって調節でき、セルロース系繊維不職布を支持するネットは、本発明の不職布の孔面積を得る為には開孔率25〜45%のものであることが好ましく、より好ましくは30〜43%のものである。
【0016】
また、本発明のセルロース系繊維不職布は、孔の他に凹部、凹凸等で形成されたパターン等の表面修飾されているものであれば、クリームはんだ拭き取り性能の点でより好ましい。凹部、メッシュパターンの形状は上記構成要件を満たす範囲内で、用法等で適宜選択すればよい。このような表面修飾は、上記ウォータージェットなどの高圧液体流で処理する方法で、ネットの交絡点部の上にある不織布の繊維が高圧液体流で周囲に押しやられることにより、好適に得ることができる。また、例えば金属ロールの表面に凹凸パターンを作成し、金属ロールとゴムロールの間に圧力をかけながら不織布を通して凹凸形状をつけるいわゆるエンボス等の手法でも好適に得ることができる。
【0017】
本発明における摩擦帯電圧とは、JIS−1094法における摩擦帯電圧をいい、本発明の積層繊維構造体の場合は700V未満であるが、50〜500Vである事が好ましく、更に好ましくは、50〜300Vである。700V以上の摩擦帯電圧の場合には、拭取時にハンダが電荷を帯びてしまい、スクリーンに吸着してしまい、結果拭取り不良を起こしてしまう場合がある。表面におけるセルロースの存在量が多いほど、摩擦耐電圧を抑えることができ、好ましい。
本発明において、第2層以降に用いる合成繊維等の繊維構造体は、セルロース系繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等の繊維であり、特にポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンが好ましく、更に好ましくはポリエステルである。
繊維構造体の形態は、織編物、不織布、ワタなどのいずれの形態でも良いが、好ましくは編物及び不織布であり、より好ましくは長繊維不織布である。
繊維の組織、単糸デニール等は、積層後に本発明の構成要件を満たすものであれば、特に限定されない。
【0018】
本発明の積層構造体の積層方法は、親水性あるいは疎水性溶媒へ溶出するようなバインダーを用いない、ウォータージェットなどの高圧流体による複合やエンボス等による圧着が好ましい。またウォータージェットによる複合の際には、複合後にハンダの裏抜けを防止する点で積層後に貫通孔が開いていない事が好ましい。
本発明の積層構造体の積層数は、積層後に本発明の構成要件を満たすものであれば2枚以上であればその枚数は特に限定されないが、好ましくは2〜8枚、更に好ましくは2〜5枚である。
また本発明の構成要件を満たす目的で、積層後にマングル処理などの厚み調整の手法は適宜用いる事が出来る。
本発明の積層構造体は、拭取り時にクリームはんだが裏抜けしないよう、積層体全体の厚みは0.10〜0.60mmであることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.50mmであり、更に好ましくは0.25〜0.40mmである。0.25mmよりも薄くなると、ハンダや溶剤の裏抜けが起こってしまい、逆に0.40mmよりも厚くなると、通気性の低下からハンダの積層構造体への取り込み不良が起こってしまう可能性がある。
【0019】
クリームはんだの拭取りは上述のとおりバキュームを併用する場合が多いため積層構造体の通気度は、JIS−L1096法におけるフラジール型通気度試験機において、50〜250cc/cm/sec.である必要がある。好ましくは100〜230cc/cm/sec.であり、より好ましくは150〜220cm/sec.である。50cc/cm/sec.未満になると、ハンダの吸引不足に陥る可能性が高く、結果拭取り不良を起こしてしまう。逆に250cc/cm/sec.になると、ハンダや溶剤が積層構造体を突き抜け機器中に入り込む可能性が高くなり、結果機器の破損を招くことになる。
【0020】
本発明の積層繊構造体において、上記通気度にするためには、例えば高圧水流による構造体に孔を開ける際の水圧を0.5〜5.0MPaにすることによって好適に得られる。
更に、クリームはんだの拭取りは上述のとおり、イソプロピルアルコールなどの溶媒を用いた湿潤条件下で行われる事も多く、積層構造体の湿潤時の引張強力は、JIS−L1096法における引張強伸度測定で用いる引張強伸度測定装置による引張強力が、50〜300N/50mmであり、好ましくは80〜200N/50mmである。50N/50mm未満になると、拭取り中に積層構造体が破れてしまう可能性が高い。逆に300N/50mm以上の引張強力は、本発明においては必要がない。本発明の積層繊構造体において、上記湿潤時引張強力は、積層させる不職布の素材、形状及び目付を適宜選択することで、好ましい性能を付与できる。例えばポリエステル連続長繊維不職布(エルタス(登録商標)、旭化成せんい(株)社製)を用いる場合には、ポリエステル連続長繊維不職布の目付は15〜70g/mのものを用いること等によって好適に得られる。
【0021】
本発明におけるワイパーの形態は特に限定されず、適宜用途に応じて使いやすい形状を選択することができる。例えば、ワイパーを広げた場合の形状が正方形や長方形等の多角形、円形や楕円形等でも問題なく使用でき、用途によって適宜選択すればよい。
また、使用形態についても特に限定されず、用途によって適宜選択すればよい。例えば、目付が高い場合には平版の形状でもよいし、目付が低い場合には折ってあってもかまわない。また、折って使用する場合には、その折り方も適宜選択することができる。
本発明のワイパーは、例えば長尺の巻形状、すなわちロール状でもよい。ロール状のワイパーは特に全自動スクリーン印刷機や連続的に拭き取る場合に好適に用いられる。巻長さや幅等は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択されてよい。
【0022】
また本発明のワイパーにおいて、本発明の目的を損なわない限りワイパーに更に追加的に付与することが出来る各種の機能付加を任意に行う事が出来る。
本発明のクリーンルーム用ワイパーのサイズは特に限定されず、使用用途、使用目的に応じて適宜選択できる。例えば、平版の場合には7.62〜30.48cm(3〜12インチ)角のものが一般的に用いられる。折り品の場合には上述のようなサイズのものが一般的に用いられており、ロール形状の場合には、幅が5〜100cm、巻長さ3〜50m程度のものが一般的である。
【0023】
本発明のワイパーの包装形態、包装材料等は特に限定されず、用途に応じて適宜選択されてよい。例えば、折りあがった製品を袋に入れ、その袋数個をダンボール箱に入れる等、使用用途に合わせて適宜選択すればよい。包装材料については、目的の性能を阻害するような材質でなければ、特に限定されるものではないが、帯電防止性能を有する袋を用いる事がより好ましい。静電気は物と物とが摩擦することで発生するため、静電気を低下させるためにはワイパー取り出し時の袋との摩擦も考慮することがより望まれる。この場合、袋の材質が表面抵抗率で10〜1010Ω/cm程度であるものを用いることが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また例中の処理物の評価は、下記のようにして行った。
(1)孔面積・孔数
得られた積層繊維構造体を、ビデオマイクロスコープ(VHX−500、キーエンス社製)を用いて観察、得られた孔の画像から2.54cm平方(6.45cm2)当たりの孔数を測定。また孔面積は、各孔を楕円と見立て、楕円の長軸の半径をa、短軸の半径をbとして、楕円の面積公式(下記式1)にて測定した。
孔面積=πab (1)
(2)摩擦帯電圧
得られた積層繊維構造体を、JIS−1094準拠の摩擦帯電圧測定方法に従い、温度20℃、相対湿度40%RHの条件下、ロータリー・スタティック・テスターにより測定した。
(3)積層体厚み
得られた積層繊維構造体を、JIS−L1096準拠の厚み試験にて荷重を1.96kPaとして測定した。
【0025】
(4)通気度
得られた積層繊維構造体を、JIS−L1096準拠の通気試験方法にてフラジール型試験機を用いて評価した。
(5)湿潤時の引張強力
得られた積層繊維構造体を、万能引張強伸度測定機テンシロンRTM−100(オリエンテックコーポレーション製)を用いて温度20℃、湿度65RH%の環境下で測定した。
(6)拭取り性能
得られた積層繊維構造体を、SP80V−M(パナソニックファクトリーソリューションズ社製スクリーン印刷機)を用いて、拭取り対象のステンレス(SUS304)製スクリーン(口径0.5mm、0.1mm厚)にクリームはんだ(粒径30μmのハンダボールを含有する粘度200Pa.Sのもの)を詰め、バキューム圧0.05MPa、拭取り速度50mm/min.にて乾燥下にて拭取り試験を行い、その拭取り性能を別表1のように級判定した。
【0026】
【表1】

【0027】
[実施例1]
平均目付27.5g/mの再生セルロース連続長繊維不織布(ベンリーゼ(登録商標)、旭化成せんい(株)社製)を用意した。40個/2.54cm平方(6.45cm2)の孔を持つSUS304製のメッシュ(開孔率36%)の上に、平均目付20g/mのポリエステル連続長繊維不職布(エルタス(登録商標)、旭化成せんい(株)社製)を1枚置き、その上にベンリーゼを1枚置いた。次に水圧5.0MPaにて20m/min.の速度で高圧水流処理を行い、上記2枚の不職布を交絡させた後、100℃にて乾燥させた。
得られた積層構造体の物性を別表2に示す。評価試験の結果、構造体の拭取り性は筋残り、裏抜けの全く無い極めて良好な拭取り性を持ち、且つ湿潤時の引張強力の高く、更には摩擦帯電圧も低い積層構造体を得た。
【0028】
[実施例2]
実施例1において、積層時に30個/2.54cm平方(6.45cm2)の孔を持つSUS304製のメッシュ(開孔率41%)を用いた事以外は、実施例1と同条件にて処理を行った。得られた積層構造体の物性を別表2に示す。評価試験の結果、構造体の拭取り性は筋残り、裏抜けの殆ど無い良好な拭取り性を持ち、且つ湿潤時の引張強力の高く、更には摩擦帯電圧も低い積層構造体を得た。
【0029】
[比較例1]
平均目付70g/mで積層体厚みが0.30mm、孔面積0.18mmで孔数が40個/2.54cm平方(6.45cm2)のパルプ/ポリエステル複合スパンレースワイパーを用いて評価試験を行った。評価試験の結果、拭取り性は、裏抜けはしないものの帯電によるハンダのスクリーンへの再付着から、線状に筋残りが起きてしまった。
【0030】
[比較例2]
実施例1において、積層時に120個/2.54cm平方(6.45cm2)の孔を持つSUS304製のメッシュ(開孔率20%)を用いた事以外は、実施例1と同条件にて処理を行った。得られた積層構造体の物性を別表2に示す。評価試験の結果、構造体の拭取り性は裏抜けは殆ど無いものの面状に筋残りが起きてしまった。
【0031】
[比較例3]
実施例1において、積層時に8個/2.54cm平方(6.45cm2)の孔を持つSUS304製のメッシュ(開孔率47%)を用いた事以外は、実施例1と同条件にて処理を行った。得られた積層構造体の物性を別表2に示す。評価試験の結果、構造体の拭取り性は筋残りは殆ど無いが、はんだの裏抜けが狭範囲に起こってしまい、機器に内部に入り込んでしまった。
【0032】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によって、制電性が高く、湿潤状態においても強度劣化せず、かつ拭取り性能が高いスクリーン清掃用のワイパーを提供する事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1層が、表面が開孔されたセルロース系繊維不職布からなり、孔の面積が0.05〜0.5mm/個、孔数が10〜100個/2.54cm平方(6.45cm2)、摩擦帯電圧700V未満で、第2層以降がセルロース系繊維または合成繊維等の繊維構造体からなり、積層構造体の湿潤時の引張強力が50〜300N/50mm、通気度が50〜250cc/cm/sec.であることを特徴とする積層繊維構造体。
【請求項2】
全体の厚みが0.10〜0.60mmであることを特徴とする請求項1に記載の積層繊維構造体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層繊維構造体を用いたスクリーン印刷機用ワイパー。