説明

積層音響防止パネル

積層音響建築パネルは、接着剤層(16)によって共に接着される一対のプラスターボード基板(10,13)を含み、パネルは、動的ヤング率0.1〜5GPa及び減衰損失係数5〜30%(η=0.05〜0.3)を有し、基板(10,13)の塗布面領域に対する接着剤(16)の比率は80〜250g/mである。積層パネルは、構造が比較的軟質であり、したがって、ノック又は衝撃ノイズにより生ずる音波は、意外にも、既知のパネルよりかなり少ない接着剤(16)の使用で緩和される。軟質基板(10,13)及びより少ない接着剤(16)の使用は、パネルの重量を減らす。さらに、より少ない接着剤(16)の使用は、コストを削減し、そして製造を簡便にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響防止特性(acoustical soundproofing properties)を改善した積層建築パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
壁、天井、床等のために、二以上の基板層を共に積層することにより音響建築パネルを形成することが周知である。一度、そのような建築パネルがWO2008/124672に開示され、それは、例えば石膏でできた一対のプラスターボード基板層をアクリル接着剤で共に接着したものからなる。
【0003】
たいていの音響建築パネルは、典型的には、それ自身が良好な重み付け音響透過損失(R)値を有する基板層を用いて重み付け音響透過損失(R)を増大させることによって、全体の音響透過率を改善しようとする。基板層は、重み付け音響透過損失(R)値を改善する厚層の接着剤で共に接着される。この公知の理由のために、音響建築パネルは、構造が重く、高価かつ製造し難くなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
われわれは、今般、上記問題を解消する積層音響建築パネルを発明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、第一基板層、第一層に接着剤層によって接着される第二基板層を含み、0.1〜5GPaの動的ヤング率及び5〜30%(η=0.05〜0.3)の減衰損失係数(damping loss factor)を有する積層音響建築パネルであって、該基板の塗布面領域に対する該接着剤の比率が80〜250g/mであることを特徴とする、前記積層音響建築パネルが提供される。
【0006】
上記特徴を有する積層パネルは、構造が比較的軟質であり、したがって、ノック又は衝撃ノイズにより生ずる音が、意外にも、公知のパネルよりもかなり少ない接着剤を用いても減衰する。軟質基板の使用とより少ない接着剤は、パネルの重量を顕著に削減する。さらに、接着剤の使用は、コストを顕著に削減し、そして、製造をより簡易にする。
【0007】
好ましくは、前記基板層は、石膏(すなわち、プラスターボード)、石膏繊維又は石膏セメントでできたシートを含む。
【0008】
厚味及び/又は材料の異なるシートを使用できるが、前記基板シートは、好ましくは同一材料で形成され、そして、好ましくは同じ厚味を有する。少なくとも一の基板シートは、共に積層された層を含んでもよい。そのような基板シートの一つが、欧州特許出願EP1688553に開示され、汎用の石膏プラスターボードと比べて高められた音響遮断特性を提供する。
【0009】
好ましくは、各基板層は、6〜25mmの厚味を有する。
【0010】
好ましくは、接着剤の動的ヤング率(20℃)は、100Hzにおいて0.1〜50MPa及び/又は1000Hzにおいて0.5MPa〜100MPaであり、そして、損失係数は、少なくとも50%(η>0.5)である。別法として、接着剤の動的ヤング率(20℃)は、100Hzにおいて0.1〜0.5MPa及び/又は1000Hzにおいて0.5MPa〜100MPaであり、そして、損失係数が少なくとも50%(η>0.5)である。
【0011】
われわれは、ノック又は衝撃ノイズにより生じる音波の大きな減衰は、最低のヤング率及び最高の損失係数を有する極めて薄層(250g/m以下)の接着剤で基板層を共に接着する場合に達成されることを見出した。
【0012】
好ましくは、接着剤は、タイル又は紙接着剤のようなアクリル系接着剤を含み、好ましくは、100%(η=1.0)の損失係数を有する。
【0013】
別法として、接着剤は、ホットメルト接着剤を含んでもよい。
【0014】
好ましくは、基板の塗布面領域に対する接着剤の比率は、100〜150g/mである。別法として、基板の塗布面領域に対する接着剤の比率は、180〜100g/mである。
【0015】
本発明の実施態様を、例示のみによる添付の図面を参照することにより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従う積層音響防音建築パネルの斜視図である。
【図2】a)公知のプラスターボード、b)本発明に従う第一実施態様の積層音響防音建築パネル、c)本発明に従う第二実施態様の積層音響防音建築パネル、で得られたテスト結果の音響減衰対周波数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、壁ボード、床パネルや天井パネルとして使用するための積層音響防音建築パネルが示される。このパネルは、プラスターボードでできた第一基板シート10を含み、これは、紙でできた内側及び外側ライニングシート11、12の間に配置された石膏プラスター(硫酸カルシウム半水塩)で形成された芯(core)を有する。
【0018】
パネルは、また、プラスターボードでできた第二基板シート13を含み、これは、紙でできた内側及び外側ライニングシート14、15の間に配置された石膏プラスターで形成された芯を有する。第一及び第二基板シート10、13は、アクリル系接着剤でできた層により面対面を合わせて(face−to−face registration)接着される。
【0019】
層16は、第二基板シート14の内面上に連続層の接着剤を80〜250g/m、好ましくは100〜150g/mの量で塗布することにより形成される。次いで、第一基板シート10を接着剤層16の上に当て、その後、基板シート10、13を接着剤が充分に硬化するまで共に押圧する。
【0020】
本明細書のパネル成分の損失係数及びヤング率値は、ISO 16940基準に基づく機械インピーダンス法(MIM)で測定及び計算し、ここではテストピースの中心に連続する微妙な振動(subtle vibration)を適用する。
【0021】
厚味が6〜25mmの基板シート10、13についての動的ヤング率値は、500Hzにおいて1〜8GPaであり、一般に、約3GPa+/−1GPaである。各ピークから求められた損失係数は、5%(η=0.05)未満である。
【0022】
ポリマーの動的ヤング率は周波数及び温度に依存することが当業者に周知である。データは、DMTAシステム(Dynamical Mechanical Thermo Analysis)、例えばMetravib粘性分析計(Viscoanalyser)で測定することができる。したがって、接着剤層16についての20℃のヤング率用の代表値は、与えられた周波数で以下である。
【0023】
【数1】

【0024】
接着剤層16の最小損失係数は、最小50%(η>0.5)である。
【0025】
したがって、全パネルについての合計ヤング率は、0.1〜5GPaであり、各ピークで求められる等価(equivalent)損失係数は、層16に使用した接着剤の特徴に応じて、一般に、5%〜30%(0.05<η<0.3)の間であり、好ましく約20%(η=0.2)である。
【0026】
全く薄層の減衰材料(250g/m以下)を用いた最も驚くべき結果は、最も軟質のヤング率及び最高損失係数の場合に得られる。
【0027】
図2を参照すると、以下のパーティションから得られるテスト結果の音響減衰対周波数のグラフを示す。
【0028】
A)48mm離隔したスタッド上に設置された汎用のプラスターボード
B)48mm離隔したスタッド上に設置され、そして、汎用プラスターボードでできた基板シート10、13を有する本発明に従う積層音響防音建築パネル
C)48mm離隔したスタッド上に設置され、そして、欧州特許出願EP1688553に開示される種類の音響壁ボードでできた基板シート10、13を有する本発明に従う積層音響防音建築パネル
【0029】
第一に、汎用プラスターボードで形成したパーティションの音響減衰特性は、100Hzから増大し、約1600〜4000Hzの間で臨界周波数(critical frequency)に向かって約10dBだけ減衰の顕著な降下(透過損失)が存在することがわかる。臨界周波数とは、空気内の音の波長がパーティション内のたわみ変形波長(flexural bending wavelength)と等しくなる周波数である。
【0030】
第二に、汎用のプラスターボードでできた基板シート10、13を有する本発明に従う積層音響防音建築パネルで形成したパーティションの音響減衰特性は、全周波数域にわたって改善されることがわかる。さらに、約1600〜4000Hz間の臨界周波数に向かう減衰の降下が少ないことがわかる。
【0031】
したがって、音響壁ボードでできた基板シート10、13を有する本発明に従う積層音響防音建築パネルで形成したパーティションの音響減衰特性は、全周波数域にわたってなお一層改善され、そして、約1600〜4000Hz間の臨界周波数に向かう減衰の降下がなお一層少ないことがわかる。
【0032】
本発明に従う積層音響防音建築パネルの利益は、接着剤の特性(すなわち、その動的ヤング率及び損失係数)並びに基板シート10、13の選択に起因し、これが高められた音響性能を導く。高められた音響性能は、部分的には、重み付け(weighted)音響透過損失(Rw)の増大、及び、ノック又は衝撃ノイズによって生ずる音の減衰の増大に起因する。これは、意外にも、既知の積層音響防音建築パネルよりかなり少ない接着剤を用いて達成される。
【0033】
別の実施態様では、基板シート10、13は、セメント壁ボードを含み、そして、500Hzにおいて5〜15GPaの間の動的ヤング率の値を有する。
【0034】
さらに別の実施態様では、基板シート10、13は、木質壁ボードを含み、そして、500Hzにおいて1〜15GPaの間の動的ヤング率の値を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板層、第一層に接着剤層によって接着される第二基板層を含み、0.1〜5GPaの動的ヤング率及び5〜30%(η=0.05〜0.3)の減衰損失係数を有する積層音響建築パネルであって、該基板の塗布面領域に対する該接着剤の比率が80〜250g/mであることを特徴とする、前記積層音響建築パネル。
【請求項2】
少なくとも一の前記基板層が、石膏又はプラスターボードでできたシートを含む、請求項1に記載の積層音響建築パネル。
【請求項3】
前記接着剤の動的ヤング率(20℃)は、100Hzにおいて0.1〜50MPa及び/又は1000Hzにおいて0.5MPa〜100MPaであり、そして、損失係数は、少なくとも50%(η>0.5)である、請求項1又は2に記載の積層音響建築パネル。
【請求項4】
前記接着剤の動的ヤング率(20℃)は、100Hzにおいて0.1〜0.5MPa及び/又は1000Hzにおいて0.5MPa〜100MPaであり、そして、損失係数が少なくとも50%(η>0.5)である、請求項1又は2に記載の積層音響建築パネル。
【請求項5】
前記接着剤は、アクリル系接着剤を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項6】
前記接着剤は、ホットメルト接着剤を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項7】
前記少なくとも一の基板層は、繊維強化石膏又は繊維強化プラスターボードでできたシートを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項8】
前記少なくとも一の基板層は、セメント壁ボードでできたシートを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項9】
前記少なくとも一の基板層は、木質壁ボードでできたシートを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項10】
前記少なくとも一の基板層は、共に積層した材料でできた層を有するシートを含む、請求項1〜9のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項11】
前記基板シートは、同一材料で形成される、請求項1〜10のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項12】
前記基板シートは、同じ厚味を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項13】
各基板層は、6〜25mmの厚味を有する、請求項1〜12のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項14】
前記基板の塗布面領域に対する前記接着剤の比率は、100〜150g/mである、請求項1〜13のいずれかに記載の積層音響建築パネル。
【請求項15】
前記基板の塗布面領域に対する前記接着剤の比率は、80〜100g/mである、請求項1〜13のいずれかに記載の積層音響建築パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−520401(P2012−520401A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553528(P2011−553528)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050425
【国際公開番号】WO2010/103322
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(508120260)ビーピービー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】