説明

積荷落下防止装置

【課題】 積荷の種類に応じて荷台の荷物積載容積を嵩増しすることが可能な積荷落下防止装置を提供する。
【解決手段】
それぞれの差込壁体5には、差込壁体5をアオリ板4に固定するためのフック6が取り付けられている。フック6をアオリ板4の上端部に差し込むことにより、それぞれの差込壁体5をアオリ板4よりも上方に突出した状態で配置することができる。複数の差込壁体5をアオリ板4の内側で相互に連なった状態で配置することにより、荷台2の荷物積載容積を嵩増しすることが可能な嵩上げユニット7を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用荷台に積み込まれる積荷の落下を防止する積荷落下防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平ボディ型やダンプ型のトラックやトレーラの荷台にはアオリ板が組み付けられている。アオリ板は荷台に連結される下端部を回転軸として開閉自在となっており、荷物の上げ下ろし作業の進捗状況に応じて、アオリ板の全部または一部が閉じられたり開かれたりするようになっている。このような荷台には、所定の最大積載重量を超えない範囲内において重量や大きさの異なる種々の荷物が積み込まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トラックやトレーラにより荷物を運搬する際には、所定の最大積載重量近くにまで荷物を積み込む方が運搬効率が良い。しかしながら、荷台の積荷積載容積には限界があり、比重の小さな荷物や形状が複雑で嵩張る荷物を運搬する際には、所定の最大積載重量近くにまで積み込むことが出来ないことがあり運搬効率が悪いうえ、荷物を積み込み過ぎると運搬中に荷台から積荷が落下するおそれもあり危険である。アオリ板の高さ方向の寸法を大きくして荷台の積荷積載容積を嵩増しすることは、アオリ板の開閉作業を困難なものとし荷物の上げ下ろし作業に支障を来たす点で好ましくない。
【0004】
本発明の目的は、積荷の種類に応じて荷台の荷物積載容積を嵩増しすることが可能な積荷落下防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積荷落下防止装置は、車両用荷台の前端面に垂直に固定される前壁体と、前記荷台の両側面および後端面に組み付けられ前記荷台面上からの高さが前記前壁体よりも低いアオリ板とを有する積荷落下防止装置であって、それぞれが前記アオリ板の内側で相互に連なった状態で前記アオリ板よりも上方に突出して配置され、嵩上げユニットを構成する複数の差込壁体と、それぞれの前記差込壁体に取り付けられ、前記アオリ板の上端部に差し込まれて前記差込壁体を前記アオリ板に固定するフックとを有し、前記嵩上げユニットにより前記荷台の荷物積載容積を嵩増しすることを特徴とする。
【0006】
本発明の積荷落下防止装置は、前記荷台に連結されるロープを通す貫通孔が前記差込壁体に形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明の積荷落下防止装置は、前記差込壁体の両側面を裏面側にほぼ直角に折り曲げることにより形成される折り曲げ部にボルト締結孔を形成し、前記ボルト締結孔に締結ボルトを装着し、前記嵩上げユニットを構成する前記差込壁体同士を相互に連結することを特徴とする。
【0008】
本発明の積荷落下防止装置は、所定の間隔を隔てて配置される前記差込壁体同士が相互に重なり合うように前記差込壁体の側面に沿って張り出し部を形成することを特徴とする。
【0009】
本発明の積荷落下防止装置は、前記差込壁体の側面に折り曲げ自在の切り欠き部を形成し、複数の前記差込壁体を蛇腹状に連結することを特徴とする。
【0010】
本発明の積荷落下防止装置は、車両用荷台の前端面に垂直に固定される前壁体と、前記荷台の両側面および後端面に組み付けられ前記荷台面上からの高さが前記前壁体よりも低い複数のアオリ板とを有する積荷落下防止装置であって、下端部が前記荷台の側面に垂直に固定され前記アオリ板を回転自在に支持する複数の支持柱の上端部に着脱自在に差し込まれ、垂直に延びて上下両方向に開口する開口溝が側面に形成される複数の差込支柱と、前記開口溝に差し込んだとき下端部が前記アオリ板の上端部に当接して前記アオリ板よりも上方に突出して配置され、前記差込支柱とにより嵩上げユニットを構成する複数の差込壁体とを有し、前記嵩上げユニットにより前記荷台の荷物積載容積を嵩増しすることを特徴とする。
【0011】
本発明の積荷落下防止装置は、前記差込壁体の両側面をほぼ直角に折り曲げて折り曲げ部を形成するとともに前記折り曲げ部を下端部側から所定長切り欠き、前記開口溝に前記差込壁体を差し込んだとき前記折り曲げ部が前記アオリ板の上端部に当接し前記差込壁体の下端部が前記開口溝の下側開口部から突出して前記アオリ板と重なり合うことを特徴とする。
【0012】
本発明の積荷落下防止装置は、車両用荷台の前端面に垂直に固定される前壁体と、前記荷台の両側面および後端面に組み付けられ前記荷台面上からの高さ寸法が前記前壁体よりも小さい複数のアオリ板とを有する積荷落下防止装置であって、下端部が前記荷台の側面に垂直に固定され前記アオリ板を回転自在に支持する複数の支持柱の上端部に着脱自在に差し込まれ、垂直に延びて下端部に円弧状の軸受部が設けられる開口溝が側面に形成される複数の差込支柱と、両側面に回転軸が突出して設けられ、前記差込支柱の前記開口溝に前記回転軸の一方を差し込み、他の前記差込支柱の前記開口溝に他方の前記回転軸を差し込み前記回転軸のそれぞれを前記軸受部に支持させることによって前記アオリ板よりも上方に突出した状態で回転自在に配置され、前記差込支柱とにより嵩上げユニットを構成する複数の差込壁体とを有し、前記嵩上げユニットにより前記荷台の荷物積載容積を嵩増しすることを特徴とする。
【0013】
本発明の積荷落下防止装置は、前記開口溝に突出して前記開口溝に差し込まれた前記回転軸の脱落を防止する往復動ロッドを出没自在に前記差込支柱に設けることを特徴とする。
【0014】
本発明の積荷落下防止装置は、前記開口溝の差込口を前記差込支柱の裏面側に形成し、前記差込口を開閉する蓋部材と、前記蓋部材を閉じた状態で保持する保持部材とを前記差込支柱に設けることを特徴とする。
【0015】
本発明の積荷落下防止装置は、前記荷台の床下に垂直に配置される複数の柱部材と、前記柱部材に上下方向に所定の間隔で固定され前記差込壁体を水平に支持する複数の梁部材とを備える収納庫を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、それぞれがアオリ板の内側で相互に連なった状態でアオリ板よりも上方に突出して配置される複数の差込壁体により構成される嵩上げユニットによって、荷台の積荷積載容積を嵩増しすることができる。差込壁体をアルミ形材や軽量かつ剛性の高い樹脂材料(例えば、ポリプロピレン製の気泡ボード)で形成することにより、作業負担が軽減されるとともに長期間繰り返して使用することができる。嵩上げユニットを構成する差込壁体を同一の仕様とすることによって、荷台に対する取り付け位置に拘束されず差込壁体の取り付け作業を迅速に行うことができる。
【0017】
フックをアオリ板の上端部に差し込む形式の差込壁体によれば、既存のトレーラなどの車両用荷台を改造することなく嵩上げユニットを構成することができる。荷台に連結されるロープを差込壁体に形成された貫通孔に挿通させるとともに端部を荷台に縛り付けることによって、走行中の振動などによって差込壁体が脱落しないようにすることができる。
【0018】
側面に沿って張り出し部が形成される差込壁体によれば、異なる長さの荷台に対しても差込壁体同士を相互に重ね合わせて配置することができ、差込壁体同士の隙間から積荷が落下するおそれがない。
【0019】
切り欠き部を介して相互に蛇腹状に連結される差込壁体によれば、差込壁体同士を相互に連結させる作業が不要であり、アオリ板に差し込まれた差込壁体を撤去する際には効率よく折り畳んでコンパクトに収納することができ、差込壁体同士の隙間から積荷が落下するおそれがない。
【0020】
本発明によれば、差込支柱の側面に形成される開口溝に差込壁体を差し込むことによって嵩上げユニットを構成することもできる。この差込壁体の両側面をほぼ直角に折り曲げて折り曲げ部を形成するとともに、その折り曲げ部を下端部側から所定長切り欠いておき、開口溝に差込壁体を差し込んだとき差込壁体の下側がアオリ板と重なり合うようにすることでアオリ板と差込壁体の間の隙間から積荷が落下するのを未然に防止することができる。
【0021】
両側面に回転軸が設けられた差込壁体によれば、垂直に延びて下端部に軸受部が設けられる開口溝に回転軸を差し込むことによって嵩上げユニットを構成することもできる。これにより、荷台後部に傾斜台を設置して後方から積荷を下ろしたりバケットローダを用いて荷台側面から積荷を下ろしたりする際に積荷の重量が差込壁体に作用しても、差込壁体は反れ曲がることなく回転して積荷を落下させるので、差込壁体の破損や脱落を未然に防止することができる。開口溝は垂直に延びて設けられており、差し込まれた回転軸が脱落しにくい構造となっている。
【0022】
開口溝に突出させることが可能な往復動ロッドを差込支柱に設け、開口溝に回転軸を差し込んだ後、往復動ロッドを突出させることにより、差し込まれた回転軸の脱落を防止することができる。また、開口溝の差込口を開閉する蓋部材を差込支柱に設け、開口溝に回転軸を差し込んだ後、所定の保持部材を用いて蓋部材を閉じた状態で保持することにより、開口溝に差し込まれた回転軸の脱落を防止することもできる。
【0023】
本発明によれば、荷台の床下に複数の差込壁体や差込支柱を水平に収納しておくことができる収納庫を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は第1の実施の形態である差込壁体を装着した汎用トレーラの概略構成を示す側面図であり、図2は図1の背面図である。汎用トレーラ1は、図示しないエンジンを搭載するトラクタにより牽引される方式の運送車両であり、積荷の落下を防止するための壁体が荷台2の前端面、後端面および両側面のそれぞれに設けられている。図示される場合にあっては、荷台2の前端面にはシート受台が設けられる前壁体3が垂直に固定されており、荷台2の両側面および後端面には荷台2を取り囲むようにアオリ板4が組み付けられている。アオリ板4は荷台面上からの高さが前壁体3よりも低く、荷台2に連結される下端部を回転軸として開閉自在となっており、荷物の上げ下ろし作業の進捗状況に応じて、アオリ板4の全部または一部が閉じられたり開かれたりするようになっている。なお、アオリ板4に代えて、荷台2に対して垂直かつ開閉不能に固定される板状の壁体を組み付けるようにしても良い。
【0026】
図3(A)は第1の実施の形態である差込壁体の概略構成を示す斜視図であり、図3(B)は図3(A)に示される差込壁体を裏面側から示す斜視図であり、図4は図1に示されるX−X線に沿う方向の一部省略断面図である。
【0027】
アオリ板4の内側には複数の差込壁体5が配置される。差込壁体5は、ポリプロピレン(PP)製の気泡ボードを加工して形成される長方形状の部材であって、荷台2の外側を向いて配置される差込壁体5の表面には所定の間隔を設けて2つのフック6がリベット締めなどの方法により水平に取り付けられている。フック6の先端部は下向きに折り曲げられており、これらのフック6をアオリ板4の上端部に差し込み、アオリ板4に対して差込壁体5を固定することによって、アオリ板4の上端部4aから突出する差込壁体5の高さ分だけ両側面側および後端面側の壁体の高さを高くすることができる。なお、差込壁体5は、ポリプロピレン製の気泡ボードに限られることなく、軽量で剛性に優れた他の樹脂材料や複合材料、アルミ形材などにより形成することもできる。
【0028】
このような差込壁体5をアオリ板4の内側で相互に連なった状態で複数配置することにより嵩上げユニット7を構成することができる。この嵩上げユニット7によって荷物が収容される荷台2の荷物積載容積の嵩増しをすることができ、例えば、ごみ固形燃料(RDF)のような比重の小さな荷物であっても所定の最大積載重量近くにまで積み込むことができるようになり運搬効率を改善することができる。差込壁体5には、差込壁体5を運搬したりアオリ板4に差し込んだりする際の持ち手部分となる把持孔8が形成されており、作業性の向上が図られている。なお、前壁体3に対して差込壁体5を差し込み、前端面側の壁体の高さを高くすることもできる。
【0029】
差込壁体5には貫通孔9が形成されており、図1および図2に示されるように、荷台2に連結されるロープ10を貫通孔9に通すことにより、アオリ板4に固定される差込壁体5を荷台2に対して縛り付けることができる。これにより、走行中の振動などによる差込壁体5の脱落を未然に防止することができる。なお、図1に示されるように一部のアオリ板4に対してロープ10を縛り付けるのではなく、全てのアオリ板4に対してロープ10を縛り付けても良い。また、差込壁体5はアオリ板4の内側に配置されているので、ごみ固形燃料のような粒状物を荷台2に直接積み込んだ場合には、積荷の重量が差込壁体5に作用して差込壁体5がアオリ板4の内面に押し付けられ差込壁体5が更に外れにくくなるという効果が得られる。
【0030】
図5は図3に示される差込壁体を相互に連結する手段を示す平面図である。
【0031】
差込壁体5は、その両側面と上端部が裏面側にほぼ直角に折り曲げられることにより剛性が高められている。差込壁体5の両側面に形成される折り曲げ部5aには複数のボルト締結孔11が形成されており、図5に示されるように、ボルト締結孔11に締結ボルト11aを装着することによって嵩上げユニット7を構成する差込壁体5同士を相互に連結することができ、差込壁体5同士の隙間から荷物が落下するのを防止することができる。
【0032】
図6は図3に示される差込壁体の変形例を示す斜視図である。アオリ板4の内側に突起物などの干渉物が配置されているときには、図6に示されるように、干渉物との接触を避けるために差込壁体5の一部を切り欠いた後、アオリ板4に対して差込壁体5を配置するようにする。
【0033】
図7(A)は第2の実施の形態である差込壁体の概略構成を正面側から示す斜視図であり、図7(B)は(A)に示される差込壁体同士の連結部分を示す平面図であり、図8は第3の実施の形態である差込壁体の概略構成を示す斜視図である。なお、図7および図8において、図3に示される部材と共通する部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0034】
図7に示される場合にあっては、差込壁体12の両側面に沿って張り出し部12aが形成されており、差込壁体12同士を所定の間隔を隔ててアオリ板4の上端部に差し込んだ場合でも、相互に隣り合って配置される差込壁体12同士が張り出し部12aを介して相互に重なり合うようになっている。このような張り出し部12aが形成された差込壁体12は、異なる長さの荷台に対しても差込壁体12同士の隙間から積荷が落下しないように配置することができ汎用性が高い。
【0035】
図8に示される場合にあっては、アオリ板4の内側で相互に連なった状態で配置される差込壁体13のそれぞれの側面に折り曲げ自在の切り欠き部13aを形成することにより、複数の差込壁体13が蛇腹状に連結されている。したがって、差込壁体13同士を相互に連結させる作業が不要であり、差込壁体13同士の隙間から積荷が落下するおそれがなく、アオリ板4に差し込まれた差込壁体13を撤去する際には矢印で示される方向に効率よく折り畳んでコンパクトに収納することができる。
【0036】
図9は第4の実施の形態である差込壁体を装着した汎用トレーラの概略構成を示す側面図であり、図10は図9の背面図であり、図11は第4の実施の形態である差込壁体とその差込壁体を支持するための差込支柱の概略構成を表面側から示す斜視図であり、図12は図9に示されるY−Y線に沿う方向の一部省略断面図である。なお、図9〜図12において、図1〜図4に示される部材と共通する部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
荷台2両側面の後端部2a、および荷台2両側面の前端部2bと後端部2aとの間にはアオリ板4を回転自在に支持する複数の支持柱14が荷台2に対して垂直に固定されている。支持柱14は閉じられた状態のアオリ板4とほぼ同じ高さであり、支持柱14の外表面にはアオリ板4を閉じた状態で保持する保持金具15が取り付けられている。
【0038】
これらの支持柱14の上端部には差込支柱16が着脱自在に差し込まれるようになっている。図示される場合にあっては、差込支柱16の下側には挿入部材17が下端部から突出した状態で固定されており、支持柱14の上端部にはその挿入部材17が嵌め込まれる筒状の支持部18が設けられており、支持部18に挿入部材17を嵌め込むことにより、それぞれの支持柱14に対して差込支柱16を垂直に固定することができるようになっている。
【0039】
これらの差込支柱16の側面には垂直に延びて上下両方向に開口する開口溝19が形成されている。本実施の形態においては、支持柱14に挿入された差込支柱16の開口溝19の上側開口部19aが差込壁体20の差込口となっており、開口溝19に差込壁体20を差し込んだとき、差込壁体20の下端部がアオリ板4の上端部に当接してアオリ板4よりも上方に突出して配置されるようになっている。このようにして、それぞれが支持柱14に取り付けられる複数の差込支柱16と両側面が開口溝19に差し込まれる差込壁体20とは、それぞれがアオリ板4の上部で相互に連なった状態で交互に配置されることにより嵩上げユニット21が構成されており、この嵩上げユニット21によって荷台2の荷物積載容積を嵩増しすることができる。なお、荷台2の荷物積載容積を嵩増しする必要がないときは差込壁体20とともに差込支柱16も取り外される。
【0040】
図11および図12に示されるように、差込壁体20は、その両側面を表面側にほぼ直角に折り曲げることにより折り曲げ部20aが形成されており、その折り曲げ部20aは下端部側から所定長だけ切り欠かれている。また、差込支柱16を支持柱14に差し込んだとき開口溝19の下側開口部がアオリ板4の内側に開口するように、つまり開口溝19がアオリ板4よりも内側に張り出すように開口溝19が形成されている。これにより、開口溝19に差込壁体20を差し込んだとき、折り曲げ部20aがアオリ板4の上端部に当接するとともに差込支柱16の下端部が開口溝19の下側開口部から突出してアオリ板4の裏面に重なり合うように配置されるので、アオリ板4と差込壁体20の隙間から荷物が落下するのを防止することができる(図12参照)。
【0041】
図13は第5の実施の形態である差込壁体とその差込壁体を支持するための差込支柱の概略構成を示す斜視図であり、図14は図13に示される差込壁体を装着した汎用トレーラの後部を一部省略して示す概略構成図であり、図15は図14の背面図である。なお、図14および図15においては、差込壁体22およびアオリ板4の開閉状態が破線により示されており、その開閉方向が矢印により示されている。また、図13〜図15において、図9〜図11に示される部材と共通する部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
支持柱23は荷台2に対して垂直に固定されアオリ板4を回転自在に支持するようになっている。この支持柱23の上端部には、垂直に延びて上方に開口するとともに下端部に円弧状の軸受部24aが設けられる開口溝24が両側面に形成された差込支柱25が着脱自在に差し込まれるようになっている。開口溝24の上側開口部24bは差込壁体22の差込口となっている。差込壁体22の両側面には開口溝24に差し込まれる回転軸26が突出して設けられており、一方の差込支柱25の開口溝24に回転軸26の一方を差し込み他方の差込支柱25の開口溝24に他方の回転軸26を差し込み、回転軸26のそれぞれを軸受部24aに支持させることによって、差込壁体22をアオリ板4よりも上方に突出した状態で回転自在に配置することができる。
【0043】
差込支柱27は、荷台2側面の後端部2aに固定される支持柱28に着脱自在に差し込まれるもので、一方の側面には垂直に延びて上方に開口するとともに下端部に円弧状の軸受部が設けられる開口溝29aが形成されている。また、差込支柱27の裏面側には上方に開口するとともに下端部に円弧状の軸受部29bが設けられる開口溝29cが形成されており、上側開口部29dが差込壁体22の差込口となっている。一方の回転軸26を開口溝29cに差し込み、他方の回転軸26を荷台2の反対側面に配置される差込支柱の案内溝に差し込むことによって、その差込壁体22を開閉自在に支持することができる。開口溝24,29a、および開口溝29cの一部は垂直に延びて設けられており、差し込まれた回転軸26が脱落しにくい構造となっている。
【0044】
このような差込支柱25,27と差込壁体22とは、それぞれが支持柱23,28およびアオリ板4の上部で相互に連なった状態で交互に配置されることにより嵩上げユニット30が構成されており、この嵩上げユニット30により荷台2の荷物積載容積を嵩増しすることができる。差込壁体22を回転自在に支持することによって、荷台2後部に傾斜台を設置して後方から積荷を下ろしたりバケットローダを用いて荷台2側面から積荷を下ろしたりする際に積荷の重量が差込壁体22に作用しても、差込壁体22は反れ曲がることなく回転して積荷を落下させるので、差込壁体22の破損や脱落を未然に防止することができる。
【0045】
図示される場合にあっては、それぞれの差込壁体22の下端部には、アオリ板4を閉じたときアオリ板4の裏面側に当接する板状のストッパ31が差込壁体22の下端部に沿って取り付けられている。これにより、差込壁体22の下端部とアオリ板4の上端部の間の隙間から積荷が落下することがない。
【0046】
図16は他の実施の形態である差込支柱を示す概略構成図であり、(A)は上面図、(B)は裏面図、(C)は左側面図であり、図17は図16に示される差込支柱を支持柱に取り付けた状態を荷台の内側から示す説明図である。
【0047】
図16に示される差込支柱32は、それぞれがアオリ板4の間に配置され下端部が荷台2の両側面に垂直に固定される支持柱23に着脱自在に取り付けられるものであって、その両側面には差込口33aが裏面側、つまり差込支柱32が支持柱23に差し込まれた状態のときアオリ板4の内側に向けて開口する開口溝33が形成されており、荷台2面上に乗り込んだ作業員が差込支柱32の裏面側から開口溝33に回転軸26を差し込むことによって、差込壁体22のそれぞれを回転自在に支持することができる。
【0048】
差込支柱32の裏面には、開口溝33の差込口33aを開閉する蓋部材34がヒンジ35を介して開閉自在に取り付けられており、回転軸26を開口溝33に差し込んだ後、蓋部材34を閉じて差込口33aを塞ぐことによって、回転軸26の脱落を防止することができるようになっている。さらに、蓋部材34の表面には先端部が上向きに折り曲げられた保持フック36が固定されており、差込支柱32の裏面には基端部が差込支柱32にピン結合され差込支柱32の裏面に沿って回転する保持部材37が取り付けられており、蓋部材34を閉じた後、保持部材37を時計回りに回転させ保持フック36に引っ掛けることにより、蓋部材34を閉じた状態で保持することができる。
【0049】
図18は他の実施の形態である差込支柱を示す概略構成図であり、(A)は上面図、(B)は裏面図、(C)は左側面図である。
【0050】
図18に示される差込支柱38は、荷台2の後端部2aに垂直に固定される支持柱28(図14参照)に着脱自在に差し込まれるものである。この差込支柱38には、荷台2の後端面側に配置される差込壁体22の回転軸26が差し込まれる開口溝39と、荷台2の側面側に配置される差込壁体22の回転軸26が差し込まれる開口溝40とが形成されている。図示される場合においては、開口溝39の差込口は上向きに開口し上側から回転軸26を差し込むようになっており、開口溝40の差込口は差込支柱38の裏面側に開口し裏面側から回転軸26を差し込むようになっている。なお、図18および図19に示される場合にあっては、図16に示される蓋部材34、保持フック36および保持部材37と同一の部材が設けられており、開口溝40に差し込まれた回転軸26は、蓋部材34を閉じることで脱落しないようになっている。
【0051】
図19は図18に示されるストッパを拡大して示す斜視図である。
【0052】
差込支柱38の裏面には、開口溝39に突出して開口溝39に差し込まれた回転軸26の脱落を防止するストッパ41が設けられている。ストッパ41は、差込支柱38の裏面側に固定されるベース板42と、ベース板42に固定され一端部が封止された支持筒43と、支持筒43の開口端部から往復動自在に挿入され出没自在の往復動ロッド44とを有している。支持筒43には、その円周方向に沿って形成された入側溝45と、その入側溝45よりも開口端部側で円周方向に沿って形成された出側溝46と、入側溝45と出側溝46とを連通させる連通溝47とにより構成されるH形状の案内溝が設けられている。往復動ロッド44には案内溝に沿って移動する操作ピン48の一端部が固定されており、操作ピン48を連通溝47に沿って移動させることで往復動ロッド44を支持筒43の開口端部から出没させることができ、操作ピン48を入側溝45または出側溝46に移動させることによって突出状態または没入状態を維持することができるようになっている。
【0053】
これにより、図18(B)に示されるように、回転軸26を開口溝39に差し込んだ後、操作ピン48を出側溝46に移動させることによって往復動ロッド44を開口溝39に突出させた状態で保持することができ、開口溝39の差込口側を往復動ロッド44により閉じることによって、回転軸26の脱落を防止することができる。
【0054】
上記いずれの実施の形態においても、荷台2に積み込まれる荷物の比重が大きく荷台2の容積を嵩増しする必要がない場合には、嵩上げユニットを構成する複数の差込壁体や複数の差込支柱のそれぞれはアオリ板4や支持柱14,23,28から取り外される。取り外された差込壁体や差込支柱は、重ね合わせて荷台2の隅にラッシングベルトにより縛っておくなどして収納したり、荷台2の床下に収納庫49を設けて収納したりすることができる。
【0055】
図20は差込壁体を収容するための収納枠体の概略構成を示す斜視図であり、図21は一実施の形態である収納枠体を荷台の床下に取り付けた状態を示す拡大正面図である。
【0056】
図20に示されるように、収納庫49は、荷台2の床下に垂直に配置される複数の柱部材51と、柱部材51に上下方向に所定の間隔で固定される複数の梁部材52とを備え相互に対向して配置される一対の収納枠体50を備えている。一対の収納枠体50の間には複数本の連結部材50aが掛け渡されており、それぞれの収納枠体50に対して、差込壁体22の両端部が梁部材52のそれぞれに水平に接触するように差込壁体22を差し込むことにより、複数の差込壁体22を相互に接触させることなく水平に収納することができるようになっている。
【0057】
一対の収納枠体50の間および収納枠体50の外面のそれぞれにはアルミ製の外板53が取り付けられており、荷台2の床下に配置した状態では、図21に示されるように、外方に向けて開口する箱形の収納庫49が形成されるようになっている。荷台2に対して収納庫49を固定するために、収納枠体50に固定される外板53には複数本の柱部材54が固定されている。このような収納庫49には、底面の外板53上に載置することによって、複数の差込支柱32を収納することもできる。また、この収納庫49の開口部には、図9に示されるように、開閉自在の収納扉55を取り付けることができ(図9参照)、収納庫49内に収納される差込壁体22や差込支柱32の落下を防止することができるようになっている。
【0058】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、差込支柱16,25,27,32,38をポリプロピレン製の気泡ボードなどの樹脂材料や複合材料、アルミ形材などにより形成しても良い。図16および図17に示される差込支柱32の回転軸26の脱落防止手段としては、図19に示されるストッパ41を用いるようにしても良い。本発明は汎用トレーラに限られず、平ボディ型やダンプ型のトラックにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施の形態である差込壁体を装着した汎用トレーラの概略構成を示す側面図である。
【図2】図1の背面図である。
【図3】(A)は第1の実施の形態である差込壁体の概略構成を示す斜視図であり、(B)は(A)に示される差込壁体を裏面側から示す斜視図である。
【図4】図1に示されるX−X線に沿う方向の一部省略断面図である。
【図5】図3に示される差込壁体を相互に連結する手段を示す平面図である。
【図6】図3に示される差込壁体の変形例を示す斜視図である。
【図7】(A)は第2の実施の形態である差込壁体の概略構成を正面側から示す斜視図であり、(B)は(A)に示される差込壁体同士の連結部分を示す平面図である。
【図8】第3の実施の形態である差込壁体の概略構成を示す斜視図である。
【図9】第4の実施の形態である差込壁体を装着した汎用トレーラの概略構成を示す側面図である。
【図10】図9の背面図である。
【図11】第4の実施の形態である差込壁体とその差込壁体を支持するための差込支柱の概略構成を裏面側から示す斜視図である。
【図12】図9に示されるY−Y線に沿う方向の一部省略断面図である。
【図13】第5の実施の形態である差込壁体とその差込壁体を支持するための差込支柱の概略構成を示す斜視図である。
【図14】図13に示される差込壁体を装着した汎用トレーラの後部を一部省略して示す概略構成図である。
【図15】図14の背面図である。
【図16】他の実施の形態である差込支柱を示す概略構成図であり、(A)は上面図、(B)は裏面図、(C)は左側面図である。
【図17】図16に示される差込支柱を支持柱に取り付けた状態を荷台の内側から示す説明図である。
【図18】他の実施の形態である差込支柱を示す概略構成図であり、(A)は上面図、(B)は裏面図、(C)は左側面図である。
【図19】図18に示されるストッパを拡大して示す斜視図である。
【図20】差込壁体を収容するための収納枠体の概略構成を示す斜視図である。
【図21】一実施の形態である収納枠体を荷台の床下に取り付けた状態を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 汎用トレーラ
2 荷台
2a 後端部
2b 前端部
3 前壁体
4 アオリ板
4a 上端部
5 差込壁体
5a 折り曲げ部
6 フック
7 嵩上げユニット
8 把持孔
9 貫通孔
10 ロープ
11 ボルト締結孔
11a 締結ボルト
12 差込壁体
12a 張り出し部
13 差込壁体
13a 切り欠き部
14 支持柱
15 保持金具
16 差込支柱
17 挿入部材
18 支持部
19 開口溝
19a 上側開口部
20 差込壁体
20a 折り曲げ部
21 嵩上げユニット
22 差込壁体
23 支持柱
24 開口溝
24a 軸受部
24b 上側開口部
25 差込支柱
26 回転軸
27 差込支柱
28 支持柱
29a 開口溝
29b 軸受部
29c 開口溝
29d 上側開口部
30 嵩上げユニット
31 ストッパ
32 差込支柱
33 開口溝
33a 差込口
34 蓋部材
35 ヒンジ
36 保持フック
37 保持部材
38 差込支柱
39,40 開口溝
41 ストッパ
42 ベース板
43 支持筒
44 往復動ロッド
45 入側溝
46 出側溝
47 連通溝
48 操作ピン
49 収納庫
50 収納枠体
50a 連結部材
51 柱部材
52 梁部材
53 外板
54 柱部材
55 収納扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用荷台の前端面に垂直に固定される前壁体と、前記荷台の両側面および後端面に組み付けられ前記荷台面上からの高さが前記前壁体よりも低いアオリ板とを有する積荷落下防止装置であって、
それぞれが前記アオリ板の内側で相互に連なった状態で前記アオリ板よりも上方に突出して配置され、嵩上げユニットを構成する複数の差込壁体と、
それぞれの前記差込壁体に取り付けられ、前記アオリ板の上端部に差し込まれて前記差込壁体を前記アオリ板に固定するフックとを有し、
前記嵩上げユニットにより前記荷台の荷物積載容積を嵩増しすることを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の積荷落下防止装置において、前記荷台に連結されるロープを通す貫通孔が前記差込壁体に形成されることを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の積荷落下防止装置において、前記差込壁体の両側面を裏面側にほぼ直角に折り曲げることにより形成される折り曲げ部にボルト締結孔を形成し、前記ボルト締結孔に締結ボルトを装着し、前記嵩上げユニットを構成する前記差込壁体同士を相互に連結することを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の積荷落下防止装置において、所定の間隔を隔てて配置される前記差込壁体同士が相互に重なり合うように前記差込壁体の側面に沿って張り出し部を形成することを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の積荷落下防止装置において、前記差込壁体の側面に折り曲げ自在の切り欠き部を形成し、複数の前記差込壁体を蛇腹状に連結することを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項6】
車両用荷台の前端面に垂直に固定される前壁体と、前記荷台の両側面および後端面に組み付けられ前記荷台面上からの高さが前記前壁体よりも低い複数のアオリ板とを有する積荷落下防止装置であって、
下端部が前記荷台の側面に垂直に固定され前記アオリ板を回転自在に支持する複数の支持柱の上端部に着脱自在に差し込まれ、垂直に延びて上下両方向に開口する開口溝が側面に形成される複数の差込支柱と、
前記開口溝に差し込んだとき下端部が前記アオリ板の上端部に当接して前記アオリ板よりも上方に突出して配置され、前記差込支柱とにより嵩上げユニットを構成する複数の差込壁体とを有し、
前記嵩上げユニットにより前記荷台の荷物積載容積を嵩増しすることを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項7】
請求項6記載の積荷落下防止装置において、前記差込壁体の両側面をほぼ直角に折り曲げて折り曲げ部を形成するとともに前記折り曲げ部を下端部側から所定長切り欠き、前記開口溝に前記差込壁体を差し込んだとき前記折り曲げ部が前記アオリ板の上端部に当接し前記差込壁体の下端部が前記開口溝の下側開口部から突出して前記アオリ板と重なり合うことを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項8】
車両用荷台の前端面に垂直に固定される前壁体と、前記荷台の両側面および後端面に組み付けられ前記荷台面上からの高さ寸法が前記前壁体よりも小さい複数のアオリ板とを有する積荷落下防止装置であって、
下端部が前記荷台の側面に垂直に固定され前記アオリ板を回転自在に支持する複数の支持柱の上端部に着脱自在に差し込まれ、垂直に延びて下端部に円弧状の軸受部が設けられる開口溝が側面に形成される複数の差込支柱と、
両側面に回転軸が突出して設けられ、前記差込支柱の前記開口溝に前記回転軸の一方を差し込み、他の前記差込支柱の前記開口溝に他方の前記回転軸を差し込み前記回転軸のそれぞれを前記軸受部に支持させることによって前記アオリ板よりも上方に突出した状態で回転自在に配置され、前記差込支柱とにより嵩上げユニットを構成する複数の差込壁体とを有し、
前記嵩上げユニットにより前記荷台の荷物積載容積を嵩増しすることを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項9】
請求項8記載の積荷落下防止装置において、前記開口溝に突出して前記開口溝に差し込まれた前記回転軸の脱落を防止する往復動ロッドを出没自在に前記差込支柱に設けることを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項10】
請求項8記載の積荷落下防止装置において、前記開口溝の差込口を前記差込支柱の裏面側に形成し、前記差込口を開閉する蓋部材と、前記蓋部材を閉じた状態で保持する保持部材とを前記差込支柱に設けることを特徴とする積荷落下防止装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の積荷落下防止装置において、前記荷台の床下に垂直に配置される複数の柱部材と、前記柱部材に上下方向に所定の間隔で固定され前記差込壁体を水平に支持する複数の梁部材とを備える収納庫を有することを特徴とする積荷落下防止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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