説明

積載空間カバー、及び自動車

【課題】事故の際の乗員保護を改善し、かつ、製造に関して費用的効果のある積載空間カバーを提供する。
【解決手段】積載空間カバー2は後部座席のバックレスト4の後ろ側の車体両側壁に設けた積載空間側締結具に接続される。事故の際に、積荷7は走行方向10を前方に移動し、前記積荷7は、その高さに依存して、積載空間カバー2に当接する。当接した積荷7は積載空間カバー2の下側で摺動して、積載空間カバー2が長手方向軸9の周りでねじれ変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による、巻き上げ可能に可撓性シート状構造体、具体的にはスクリーンが取り付けられた、寸法安定性のあるハウジングを有する積載空間カバーに関する。本発明はまた、前記タイプの積載空間カバーが取り付けられた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車用の一般的な積載空間カバーが開示されており、その積載空間カバーは、積荷を拘束する可撓性シート状構造体と、積載空間側締結具に解除可能に保持されている、寸法安定性のあるハウジングユニットとを含む。ここで、ハウジングユニットを、シート状構造体に作用する引張荷重または曲げ荷重に応じて積載空間側締結具に確実にロック係合する固定位置に動かす手段が設けられている。しかしながら、前記手段は比較的複雑であるため、費用のかかる設計である。シート状構造体に負荷がかけられる場合、例えば事故の場合など、積載空間カバーのハウジングユニットは、積載空間側締結具に確実にロックされる固定位置まで確実に動かされる。
【0003】
特に、スポーツカーなどの比較的積載空間が小さい自動車では、事故の場合に、積載空間に積載されて運搬されている積荷が積載空間カバーを押圧し、積載空間カバーを積載空間側固着点から引裂く恐れがある。この場合、これにより、積荷だけでなく積載空間カバーも自由に動くことができるようになるため、安全ではない。特に、大きな事故の場合、積荷物が飛び回ったり積載空間カバーが振り回されたりして、さらに怪我をさせる危険をもたらし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国実用新案第20 2006 018 470U1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2006 002 781A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2006 008 222A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ本発明は、一般的な積載空間カバーに対して、第1に、事故の際の乗員保護を改善する、すなわち乗員保護を高めるが、第2に、製造に関して費用的効果がある改良実施形態を規定する課題に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明に従って独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0007】
本発明は、自動車の積載空間に、それ自体公知である積載空間カバーを固着させる一般的な概念に基づいており、事故の際に、すなわち積荷が前方に滑って移動する際に、前記積載空間カバーがその長手方向軸の周りで回転でき、かつ、積載空間側締結具から解除されないように構成してあり、しかも、積載空間カバーに設けられた締結装置は非常に単純であり、そのため費用効果的な設計となっている。第1の点は、特にスポーツカーの場合に非常に有利である。なぜならスポーツカーは通常非常に小さな積載空間を有するにすぎず、それゆえ非常に小さな積荷を運搬できるだけであるためである。そのような小さな積荷としては例えば飲料包装箱があるであろう。それゆえ、本発明による積載空間カバーが取り付けられた自動車の衝突の際に、積荷、例えば飲料包装箱が、後部座席のバックレストの方向に前方へと滑って移動し、その積荷は最初に積載空間カバーによって止められる。しかしながら、衝突の際に発生する減速が非常に大きい場合、前方へと押圧し続ける飲料包装箱によって、積載空間カバーが長手方向軸の周りで捻れて、積荷または飲料包装箱が同時に積載空間カバーの下に押し込まれる。その状態では、積載空間カバーは長手方向端側保持装置によって積載空間側締結具に固定されて接続された状態にあり、それにより、前方へと押圧している積荷を固定させる。同時に、さらに減速が行われると、積荷は後部座席のバックレストの後ろ側に当接し、この場合には三方向、すなわち具体的には積載空間カバーによって上方を、後部座席のバックレストの後ろ側によって前方を、および積載空間の床によって下方をふさがれ、その結果、本発明による積載空間カバーが取り付けられた自動車の乗員保護が著しく改善される。ここで、カバーがその長手方向軸の周りでねじれるためには力の消費が必要であり、このようにして衝突エネルギーを吸収し得る。同時に、積載空間カバーの長手方向端側にそれぞれ配置された締結装置は、非常に単純ではあるが効果的なロッキング機構を有しており、そのロッキング機構は、車両の長手方向に整列されたボルトを備えており、そのボルトはそのロック位置に予荷重され、ロック解除レバーによってスプリング力に抗してロック解除でき、ロック解除状態では、締結装置を積載空間カバーの長手方向において調整可能とし、それゆえ締結装置を積載空間側締結具から取り外すことができる。それとは対照的に、ロック状態では、前記ボルトは、締結装置を軸方向に調整する動きを阻止し、それにより締結具に積載空間カバーを固定する。それゆえ、安全性を向上する積載空間カバーは製造に関して費用的効果があり、それゆえ少なくとも中価格帯の自動車に用いることができる。
【0008】
本発明による解決法の1つの有利な改良形態によれば、ロッキング機構は少なくとも以下の構成部品:エンドプレート、コイルバネ、ブラケット、ロッキングボルト、ロック解除レバー、板バネおよびベースホルダを有する。それゆえ、最良の場合には、締結装置全体を7つの個別の構成部品のみで構成でき、その結果、締結装置を全体的に少数の部品数で間に合わせられるため、その製造の際に個々の構成部品にかかる保管費および物流費は好都合となり得る。本発明による締結装置を形成する上述の構成部品の組み立ても同様に簡単にできるため、費用効果的に実現でき、また、締結装置の組み立てを予め供給業者によって行ない、この締結装置を、積載空間カバー製造用に予めプリアセンブリした状態で配送できるようにすることも考えられる。当然のことながら、積載空間カバーの組み立てを供給業者に外注できるように、供給業者によって積載空間カバー全体が完成部品として提供されることも考えられる。
【0009】
本発明の別の重要な特徴および利点は、従属請求項、図面および図面に基づく、関連する図面の説明から明らかとなる。
【0010】
上述のおよび以下説明する特徴は、それぞれ特定の組み合わせにおいてのみでなく、本発明の範囲を逸脱せずに、他の組み合わせまたは個別にも用いることができることは自明である。
【0011】
本発明の好ましい例示的な実施形態を図面に示し、以下の説明において詳細に説明する。同一または類似または機能的に同一の構成部品には同一の符号を付す。
【0012】
図面はそれぞれ概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a】本発明による積載空間カバーを有する自動車の積載空間の詳細を示す図である。
【図1b】図1aに示す図と同様な図であるが、積荷が衝突によって移動された状態を示す図である。
【図2】本発明による積載空間カバーの、締結装置の側方領域を示す図である。
【図3a】締結装置のロッキング機構を示す図である。
【図3b】締結装置のロッキング機構を示す図である。
【図4】本発明によるロッキング機構を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1aおよび図1bによれば、自動車(図示せず)の積載空間1は、本発明による積載空間カバー2を有する。ここでは積載空間カバー2をバックレスト4の後ろ側3から少し離して示すものの、積載空間カバー2が(後部座席の)バックレスト4の後ろ側3に直接隣接することもあると考えられる。積載空間カバー2は通常、長手方向端側に配置された締結装置6(図2〜4参照)を備えた寸法安定性のあるハウジング5を有し、その締結装置6によって前記積載空間カバー2を積載空間側締結具に接続する。積載空間1を覆うために、積載空間カバー2は通常、展張可能な可撓性シート状構造体8、具体的には積荷保全ネットを有し、それにより、積載空間1、具体的にはそこに収納されている積荷7を覆うことができる。
【0015】
ここで本発明による積載空間カバー2を、図1bに示すような衝突の際に、前記積載空間カバー2がまず確実に積載空間側締結具に保持され、次に長手方向軸9の周りでエネルギーを吸収するねじれ運動を行うことができるように設計する。それゆえ、図1bを考慮に入れて、事故の際に、積荷7は後部座席のバックレスト4の後ろ側3の方へと走行方向10を前方に移動され、前記積荷7は、その高さに依存して、積載空間カバー2の下側で摺動しかつ積載空間カバー2がねじれる。ここで、積載空間カバー2のねじれは変形力により、そのためエネルギーの吸収を伴って発生する。ここで、積荷7の移動運動の終点を、積荷7が積載空間カバー2、後部座席のバックレスト4の後ろ側3および積載空間の床11の間に押し込まれた箇所と定義する。それにより積荷7は三方をふさがれるため、もはや積載空間1を、特に後部座席のバックレスト4の頭部側端を越えて乗員室へと制御不能での摺動を起こすことはできない。同時に、本発明による積載空間カバー2は、変形、特にその長手方向軸9の周りのねじれ運動にも関わらず前記積載空間カバー2を積載空間側締結具に安全に保持し、かつそれにより同様に、積載空間2または走行方向10の前方に位置する乗員室において、制御されずに振り回されることはないという効果を有する。
【0016】
しかしながら、ここで、本発明による積載空間カバー2の設計によって乗員の安全性が高まることは、本発明の第1の重要な点にすぎず、第2の重要な点は、締結装置6が非常に単純な設計にある点である。積載空間1から締結装置6を解除するために、対応するロック解除レバー12(図3および図4参照)を作動させた後に、積載空間カバー2の長手方向の両端側に配置される締結装置6の少なくとも1つを積載空間カバー2の長手方向13において調整することが可能である。ここで、図3a、図3bおよび図4によれば、ロック解除レバー12は、予荷重されかつバネ荷重されたボルト14と相互作用する。ここで、ボルト14は、具体的にはコイルバネ15によってそのロック位置へと予荷重され、そのロック位置において、方向13における締結装置6の長手方向の動きを阻止し、ボルト14がそのロック状態にあるとき、積載空間カバー2が自動車の積載空間1から取り外されないようにする。積載空間カバー2を取り外すためには、ボルト14に動作可能に接続されているロック解除レバー12を、バネの予荷重に抗して調整する必要があるだけであり、その結果、締結装置6を積載空間カバー2の長手方向13において調整できるようになる。ここにおいて、ベースホルダ19は、積載空間カバー2の長手方向13に沿ってブラケット18に設けられた孔を介して積載空間カバー2側に固定され、ブラケット18は、締結装置6側に固定される。ロック解除レバー12を調整することにより、ロッキング機構20がベースホルダ19に沿って方向13に移動可能となる。これに伴い、締結装置6、つまり積載空間カバー2の長手方向端を積載空間カバー2の長手方向13において中心部に向かって移動させることができ、積載空間カバー2の長手方向13における長さを短くすることができる。
【0017】
ここで、ロック解除レバー12、ボルト14およびまたコイルバネ15が、エンドプレート16、板バネ17、ブラケット18およびベースホルダ19と共にロッキング機構20の重要な構成要素を形成する。このロッキング機構は通常、締結装置6のハウジング21に配置されている。ハウジング21および特にロック解除レバー12は双方とも、ここでは、費用対効果のあるプラスチック射出成形部品として設計し得る。これとは対照的に、ロッキング機構20の他の構成部品、すなわち具体的にはブラケット18、ベースホルダ19、エンドプレート16およびボルト14は、好ましくは金属製、具体的には鋼製であり、特に衝突の際に発生する高い力を確実に吸収または伝達できるようにしている。
【0018】
図3および図4によれば、板バネ17は、ロック解除レバー12に配置された2つの支持材22と22’との間に張られており、かつ主に、プラスチック製のロック解除レバー12を安定させる働きをする。
【0019】
概して、本発明による積載空間カバー2によって、まず特に衝突の際に乗員保護レベルを高め、次に、その乗員保護レベルを高めることは、具体的には特に締結装置6によって費用効果的に実現でき、その締結装置6を構造的に著しく簡単な設計とすることが可能となる。ここで、簡単な設計の締結装置6が、本発明による簡単な設計のロッキング機構20を含むことは自明である。
【符号の説明】
【0020】
2 積載空間カバー
5 ハウジング
6 締結装置
8 可撓性シート状構造体
9 積載空間カバーの長手方向軸
12 ロック解除レバー
14 ボルト
20 ロッキング機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き上げ可能で可撓性を有するスクリーンその他のシート状構造体(8)が取り付けられた寸法安定性のあるハウジング(5)を有する積載空間カバー(2)であって、前記積載空間カバー(2)は長手方向端側にいずれの場合も1つの締結装置(6)を備え、それにより、自動車の関連する積載空間側締結具に解除可能に保持され得る積載空間カバーにおいて、
前記締結装置(6)が、車両の長手方向に整列したボルト(14)を備えたロッキング機構(20)を有し、そのボルトはそのロック位置に予荷重され、ロック解除レバー(12)によってスプリング力に抗してロック解除でき、ロック解除状態では、前記締結装置(6)を前記積載空間カバー(2)の長手方向において調整し、それゆえ前記積載空間側締結具から前記締結装置(6)を取り外すことができるようにされている一方、ロック状態では、前記ボルト(14)は、前記締結装置(6)を軸方向に調整する動きを阻止し、それにより前記積載空間カバー(2)を前記締結具に固定すること、および衝突の際に、前記締結装置(6)をまず確実に前記積載空間側締結具に保持し、次いで前記積載空間カバー(2)がその長手方向軸(9)周りで、エネルギーを吸収するねじれ運動を行うように前記締結装置(6)が設計されることを特徴とする積載空間カバー。
【請求項2】
前記ロッキング機構(20)が少なくとも以下の構成部品、すなわちエンドプレート(16)、コイルバネ(15)、ブラケット(18)、前記ロッキングボルト(14)、前記ロック解除レバー(12)、板バネ(17)およびベースホルダ(19)を有することを特徴とする請求項1に記載の積載空間カバー。
【請求項3】
前記ロック解除レバー(12)がプラスチック製であることを特徴とする請求項1または2に記載の積載空間カバー。
【請求項4】
前記エンドプレート(16)、前記ブラケット(18)、前記ロッキングボルト(14)および前記ベースホルダ(19)が鋼その他の金属製であることを特徴とする請求項2または3に記載の積載空間カバー。
【請求項5】
前記締結装置(6)が、プラスチックで構成されたハウジング(21)を有し、そのハウジング(21)に前記ロッキング機構(20)が配置されることを特徴とする積載空間カバー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の積載空間カバー(2)を有する自動車。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−173631(P2010−173631A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−12690(P2010−12690)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】