穴付き柱状管
【課題】管内での共鳴を抑制でき、管内での発生音を小さくできる穴付き柱状管を提供する。
【解決手段】本発明に係る穴付き柱状管1は、両方の端部に開口部10A;10Bを有した両端開口の管2と、管2の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴5と、管2の端部の開口部10A;10Bを塞ぐ蓋材11A;11Bと、吸音材12A;12Bとを備え、吸音材12A;12Bが、管2の両端開口に蓋材11A;11Bを取付けた両端閉塞管1Xの管内の両端側に設けられた構成としたことを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る穴付き柱状管1は、両方の端部に開口部10A;10Bを有した両端開口の管2と、管2の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴5と、管2の端部の開口部10A;10Bを塞ぐ蓋材11A;11Bと、吸音材12A;12Bとを備え、吸音材12A;12Bが、管2の両端開口に蓋材11A;11Bを取付けた両端閉塞管1Xの管内の両端側に設けられた構成としたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内での共鳴を抑制でき、管内での発生音を小さくできる穴付き柱状管に関する。
【背景技術】
【0002】
トラス構造を形成する部材、仮設枠組足場、架線支持部材、支持管などに用いられる両端閉塞の柱状管(パイプ)として、柱状管の周壁に管の内外に貫通する複数の穴を備えた構成の穴付き柱状管が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
上記複数の穴は、柱状管の内側にめっきを塗布するためや、雨水抜き用、ボルト通し用などに利用される。
例えば図15に示すように、従来の穴付き柱状管1Aは、管2の周壁21に管2の中心線3と直交する1つの線を中心線4とする2つの穴5;5を備える。穴5は、図16に示すように、周壁21の外面22と内面23とに貫通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−178858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の両端閉塞の穴付き柱状管1Aにおいては、図16に示すように、風Fの方向が穴5の中心線4と交差(例えば直交)する方向である場合、風Fが管2から離れる穴縁(エッジ)Aにおいて風の渦F1が放出され、この渦F1が風の流れに乗って下流側の穴縁(エッジ)Bに衝突して音を発生させるとともに、ここで発生する圧力波F2が上流の穴縁Aに伝播して次の渦F1を作るという現象が周期的に繰り返されることによって、いわゆる、フィードバック発振音(風切り音)が発生する。従来、穴付き柱状管1Aでは、2つの穴5;5の中心線4が同じであるので、上述したように、例えば、2つの穴5;5の中心線4と交差する方向の風Fが吹くと、2つの穴5;5においてそれぞれフィードバック発振音が発生する。このように発生したフィードバック発振音が、穴付き柱状管1A内に伝搬して穴付き柱状管1Aの両端で反射し、一部の周波数が共鳴することにより増大する。当該共鳴しやすい一部の周波数は、穴付き柱状管1Aの形状や管の径寸法や管の長さによって変わる。
そこで、本発明は、管内での共鳴を抑制することにより、管内での発生音を小さくできる穴付き柱状管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る穴付き柱状管は、少なくとも一端が開口された管と、管の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴と、管の一端の開口部を塞ぐ蓋材と、吸音材とを備え、吸音材が、一端の開口部に蓋材を取付けた管の管内に設けられた構成としたので、管内に伝搬した音が吸音材により吸収されて、管内での共鳴が抑制され、管内での発生音を小さくできる。
本発明に係る穴付き柱状管は、両方の端部に開口部を有した両端開口の管と、管の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴と、管の端部の開口部を塞ぐ蓋材と、吸音材とを備え、吸音材が、管の両端開口に蓋材を取付けた両端閉塞管の管内の両端側に設けられた構成としたので、管内に伝搬した音が吸音材により吸収されて、管内での共鳴が抑制され、管内での発生音を小さくできる。
また、一般的に、音が、音の伝播性状の異なる空間と空間との境界を通過する際には、音エネルギーが大幅に減衰することが知られている。よって、吸音材を蓋材の内底面より離して設置することにより、吸音材と蓋材の内底面との間に空間層を設け、吸音材と空間層との境界を設けたので、当該境界で音エネルギーが大幅に減衰され、管内での共鳴をより抑制できて、管内での発生音をより小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】穴付き柱状管の断面図(形態1)。
【図2】穴付き柱状管の斜視図(形態1)。
【図3】穴付き柱状管の分解斜視図(形態1)。
【図4】穴付き柱状管の断面図(形態2)。
【図5】穴付き柱状管の断面図(形態3)。
【図6】穴付き柱状管の断面図(形態4)。
【図7】穴付き柱状管の斜視図(形態1乃至形態4)。
【図8】穴付き柱状管の実験結果を示す図(従来例)。
【図9】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態1乃至形態3)。
【図10】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態4)。
【図11】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態1乃至形態3)。
【図12】穴付き柱状管の実験結果を示す図(従来例)。
【図13】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態1乃至形態3)。
【図14】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態1乃至形態3)。
【図15】穴付き柱状管の斜視図(従来)。
【図16】フィードバック発振音の発生原理を説明した図(従来)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
形態1
図1に示すように、穴付き柱状管1は、両方の端部に開口部10A;10Bを有した断面円形状の管2と、管2の周壁21に管2の内外に貫通するように設けられた穴5と、管2の一端開口部10Aを塞ぐ蓋材11Aと、管2の他端開口部10Bを塞ぐ蓋材11Bと、蓋材11Aの内側において蓋材11Aの内底面15Aより離れて設置された吸音材12Aと、蓋材11Bの内側において蓋材11Bの内底面15Bより離れて設置された吸音材12Bと、蓋材11Aの内底面15Aと吸音材12Aとの間に形成された空間層(空気層)16Aと、蓋材11Bの内底面15Bと吸音材12Bとの間に形成された空間層16Bとを備える。吸音材12Aと蓋材11Aの内底面15Aとの間の距離X、吸音材12Bと蓋材11Bの内底面15Bとの間の距離Xは、1cm〜10cm程度とした。図2に示すように、穴5としては、管2の中心線3と直交する1つの線を中心線4とする2つの穴5;5の対を、管2の両方の端部側にそれぞれ備える。穴付き柱状管1は、鋼材、プラスチック、FRPなどの材料により形成される。
【0008】
即ち、穴付き柱状管1は、吸音材12A;12Bが、管2の両方の開口部10A;10Bに蓋材11A;11Bを取付けた両端閉塞管1Xの管2内の両端側に設けられ、吸音材12A;12Bを蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bより離して設置したことにより、吸音材12A;12Bと蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bとの間に空間層16A;16Bを設けた構成である。
【0009】
図3に示すように、蓋材11A;11Bは、一端閉塞他端開口の有底円筒形に形成される。蓋材11Aの他端開口側の外周面にはねじ部31を備える。管2の一端開口部10Aの内周面にはねじ部31とねじ結合されるねじ部32を備える。蓋材11Bの他端開口側の外周面にはねじ部33を備える。管2の他端開口部10Bの内周面にはねじ部33とねじ結合されるねじ部34を備える。
【0010】
図3に示すように、吸音材12A;12Bは、円形板状に形成される。吸音材12A;12Bの円形外周面と蓋材11A;11Bの円形内周面とが接着剤やネジなどの結合材により結合される。尚、吸音材12A;12Bが管2内に脱落しないように、管2の一端開口部10A;他端開口部10Bの内周面に吸音材12A;12Bを支持する図外の支持リブを設け、吸音材12A;12Bと支持リブとを接着剤やネジなどの結合材により結合しておくことが好ましい。
【0011】
図1に示すように、円形内周面に円形板状の吸音材12Aを取付けた蓋材11Aのねじ部31と管2の一端開口部10Aのねじ部32とをねじ結合させることによって一端開口部10Aが蓋材11Aで塞がれ、かつ、円形内周面に円形板状の吸音材12Bを取付けた蓋材11Bのねじ部33と管2の他端開口部10Bのねじ部34とをねじ結合させることによって他端開口部10Bが蓋材11Bで塞がれたことにより、蓋材11A;11Bの内側に吸音材12A;12Bを備えた両端閉塞管1Xである穴付き柱状管1が形成される。
【0012】
形態1による穴付き柱状管1でも、図15,図16で説明したように、風Fの方向が穴5の中心線4と交差(例えば直交)する方向である場合、風Fが管2から離れる穴縁(エッジ)Aにおいて風の渦F1が放出され、この渦F1が風の流れに乗って下流側の穴縁(エッジ)Bに衝突して音を発生させるとともに、ここで発生する圧力波F2が上流の穴縁Aに伝播して次の渦F1を作るという現象が周期的に繰り返されることによって、いわゆる、フィードバック発振音(風切り音)が発生し、その音が穴付き柱状管1内に伝搬する。
しかしながら、形態1の穴付き柱状管1は、吸音材12A;12Bを蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bより離して設置し、吸音材12A;12Bと蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bとの間に空間層16A;16Bを設けた構成としたので、穴付き柱状管1内に伝搬した音が吸音材12A;12Bで吸収されて、音圧レベルが低下するので、管内での共鳴が抑制されて、管内での発生音を小さくできる。即ち、音が蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bで反射されて吸音材12A;12Bに入る回数及び吸音材12A;12Bより出る回数が増え、音が吸音材12A;12Bに入る際及び吸音材12A;12Bより出る際に音エネルギーが熱エネルギーに変換されて、音エネルギーが減衰するので、管内での共鳴が抑制され、管内での発生音を小さくできる。また、吸音材12A;12Bを蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bより離して設置したことにより、吸音材12A;12Bと蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bとの間に空間層16A;16Bを設け、吸音材12A;12Bと空間層16A;16Bとの境界を設けたので、当該境界で音エネルギーが大幅に減衰されるため、管内での共鳴がより抑制され、管内での発生音をより小さくできる。
【0013】
形態2
図4に示すように、吸音材12Aが、管2の一端開口部10A側の内側において蓋材11Aの内底面15Aより離れて設置され、吸音材12Bが、管2の他端開口部10B側の内側において蓋材11Bの内底面15Bより離れて設置された構成の穴付き柱状管1としてもよい。
【0014】
形態3
図5に示すように、吸音材12Aが、管2の一端開口部10A側の内側及び蓋材11Aの内側に跨るように設けられてかつ蓋材11Aの内底面15Aより離れて設置され、吸音材12Bが、管2の他端開口部10B側の内側及び蓋材11Bの内側に跨るように設けられてかつ蓋材11Bの内底面15Bより離れて設置された構成の穴付き柱状管1としてもよい。
【0015】
形態4
図6に示すように、管2の両方の端面を閉塞する蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bに吸音材12A;12Bを接着して備えた構成の穴付き柱状管1としてもよい。当該構成の穴付き柱状管1であっても、発生した音のエネルギーが吸音材12A;12Bによって吸収され、音圧レベルが低下する。即ち、音が吸音材12A;12Bに入る際及び吸音材12A;12Bより出る際に音エネルギーが熱エネルギーに変換されて、音エネルギーが減衰するので、管内での共鳴を抑制でき、管内での発生音を小さくできる。
【0016】
形態1乃至形態4の構成の穴付き柱状管1の効果を実験により確認した。
実験では、焼成発泡ガラスを原料として連続気泡を有した発泡ガラス吸音板を吸音材として用いた穴付き柱状管(以下、発泡ガラスタイプという)、ポーラス板である軽石板を吸音材として用いた穴付き柱状管(以下、軽石タイプという)、吸音材を備えない穴付き柱状管(以下、未処理(従来の穴付き柱状管)という)、について、風洞実験により、発生音のフーリエ解析を行い発生音のA特性補正音圧レベルを求めた。
尚、図7(a)、図7(b)に示すように、管2の中心線3と直交する1つの線を中心線4とする2つの穴5;5を備えた穴付き柱状管1C(以下、2穴タイプという)と、管2の中心線3と直交する1つの線を中心線4とする2つの穴5;5と管2の中心線3及び中心線4と直交する1つの線を中心線とする2つの穴5;5とを備えた穴付き柱状管1D(以下、4穴タイプという)を用いた。そして、2穴タイプの穴付き柱状管1Cでは、中心線3及び中心線4と90度で交差する向きの風Fを穴付き柱状管1Cに送風し、4穴タイプの穴付き柱状管1Dでは、中心線3と直交し、かつ、中心線4;4に対してそれぞれ45度で交差する向きの風Fを穴付き柱状管1Dに送風した。風速は9m/sとした。
【0017】
図8は、2穴タイプ未処理の穴付き柱状管1C(以下、2穴90度未処理という)で実験した結果を示し、図9は、2穴タイプ+発泡ガラスタイプ+空気層の穴付き柱状管1C(以下、2穴90度発泡ガラス+空気層という)で実験した結果を示し、図10は、2穴タイプ+軽石タイプ(空気層なし)の穴付き柱状管1C(以下、2穴90度軽石という)で実験した結果を示し、図11は、2穴タイプ+軽石タイプ+空気層の穴付き柱状管1C(以下、2穴90度軽石+空気層という)で実験した結果を示し、図12は、4穴タイプ未処理の穴付き柱状管1D(以下、4穴45度未処理という)で実験した結果を示し、図13は、4穴タイプ+発泡ガラスタイプ+空気層の穴付き柱状管1D(以下、4穴45度発泡ガラス+空気層という)で実験した結果を示し、図14は、4穴タイプ+軽石タイプ+空気層の穴付き柱状管1D(以下、4穴45度軽石+空気層という)で実験した結果を示す。
【0018】
以下、実験により明らかとなった200Hz〜2000Hzの周波数領域でのフィードバック発振音抑制効果について図8乃至図14を参照して説明する。
【0019】
図8と図9とを見比べて、2穴90度発泡ガラス+空気層の場合、2穴90度未処理と比べて、音圧レベルが、250Hz付近で15.4dB減少し、300Hz付近で7.9dB減少し、650Hz付近で16.5dB減少し、900Hz付近で11.1dB減少し、1200Hz付近で4.4dB減少したことがわかる。
図8と図10とを見比べて、2穴90度軽石の場合、2穴90度未処理と比べて、音圧レベルが、250Hz付近で16.2dB減少し、300Hz付近で14.5dB減少し、650Hz付近で1.4dB減少し、900Hz付近で12.9dB減少し、1200Hz付近で6.3dB減少したことがわかる。
図8と図11とを見比べて、2穴90度軽石+空気層の場合、2穴90度未処理と比べて、音圧レベルが、250Hz付近で16.8dB減少し、300Hz付近で16.4dB減少し、650Hz付近で3.8dB減少し、900Hz付近で12.4dB減少し、1200Hz付近で5.3dB減少したことがわかる。
【0020】
図12と図13とを見比べて、4穴45度発泡ガラス+空気層の場合、4穴45度未処理と比べて、音圧レベルが、300Hz付近で6.3dB減少し、450Hz付近で28.6dB減少し、650Hz付近で12.9dB減少し、1200Hz付近で4.7dB減少し、1950Hz付近で6.6dB減少したことがわかる。
図12と図14とを見比べて、4穴45度軽石+空気層の場合、4穴45度未処理と比べて、音圧レベルが、300Hz付近で9.2dB減少し、450Hz付近で29.1dB減少し、650Hz付近で2.3dB減少し、1200Hz付近で6.1dB減少し、1950Hz付近で6.0dB減少したことがわかる。
【0021】
形態5
上記では、蓋材11A;11Bを備えた構成の穴付き柱状管1を説明したが、蓋材11A;11Bを備えずに、両方の端部に開口部10A;10Bを有した両端開口の管2の端部の開口部10A;10Bが吸音材12A;12Bにより塞がれた構成の穴付き柱状管としてもよい。
【0022】
形態6
形態1乃至5では、両端開口の管に吸音材を設けた柱状管を説明したが、一端が開口され、他端が閉塞された管において、一端側の管内に吸音材を設けた柱状管、あるいは、一端開口部を塞ぐように吸音材を設けた柱状管としてもよい。当該柱状管でも、管内に伝搬した音が吸音材により吸収されて、管内での共鳴が抑制され、管内での発生音を小さくできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
吸音材としては、上記で説明したもの以外のものを用いてもよく、特に、連続気泡を備えた構成のものを用いればよい。
管2の断面形状や穴5の形状は、円形以外でもよい。管2や穴5の大きさも特に限定されない。
【符号の説明】
【0024】
1 穴付き柱状管、1X 両端閉塞管、2 管、5 穴、10A;10B 開口部、
11A;11B 蓋材、12A;12B 吸音材、15A;15B 蓋材の内底面、
16A;16B 空間層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内での共鳴を抑制でき、管内での発生音を小さくできる穴付き柱状管に関する。
【背景技術】
【0002】
トラス構造を形成する部材、仮設枠組足場、架線支持部材、支持管などに用いられる両端閉塞の柱状管(パイプ)として、柱状管の周壁に管の内外に貫通する複数の穴を備えた構成の穴付き柱状管が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
上記複数の穴は、柱状管の内側にめっきを塗布するためや、雨水抜き用、ボルト通し用などに利用される。
例えば図15に示すように、従来の穴付き柱状管1Aは、管2の周壁21に管2の中心線3と直交する1つの線を中心線4とする2つの穴5;5を備える。穴5は、図16に示すように、周壁21の外面22と内面23とに貫通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−178858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の両端閉塞の穴付き柱状管1Aにおいては、図16に示すように、風Fの方向が穴5の中心線4と交差(例えば直交)する方向である場合、風Fが管2から離れる穴縁(エッジ)Aにおいて風の渦F1が放出され、この渦F1が風の流れに乗って下流側の穴縁(エッジ)Bに衝突して音を発生させるとともに、ここで発生する圧力波F2が上流の穴縁Aに伝播して次の渦F1を作るという現象が周期的に繰り返されることによって、いわゆる、フィードバック発振音(風切り音)が発生する。従来、穴付き柱状管1Aでは、2つの穴5;5の中心線4が同じであるので、上述したように、例えば、2つの穴5;5の中心線4と交差する方向の風Fが吹くと、2つの穴5;5においてそれぞれフィードバック発振音が発生する。このように発生したフィードバック発振音が、穴付き柱状管1A内に伝搬して穴付き柱状管1Aの両端で反射し、一部の周波数が共鳴することにより増大する。当該共鳴しやすい一部の周波数は、穴付き柱状管1Aの形状や管の径寸法や管の長さによって変わる。
そこで、本発明は、管内での共鳴を抑制することにより、管内での発生音を小さくできる穴付き柱状管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る穴付き柱状管は、少なくとも一端が開口された管と、管の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴と、管の一端の開口部を塞ぐ蓋材と、吸音材とを備え、吸音材が、一端の開口部に蓋材を取付けた管の管内に設けられた構成としたので、管内に伝搬した音が吸音材により吸収されて、管内での共鳴が抑制され、管内での発生音を小さくできる。
本発明に係る穴付き柱状管は、両方の端部に開口部を有した両端開口の管と、管の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴と、管の端部の開口部を塞ぐ蓋材と、吸音材とを備え、吸音材が、管の両端開口に蓋材を取付けた両端閉塞管の管内の両端側に設けられた構成としたので、管内に伝搬した音が吸音材により吸収されて、管内での共鳴が抑制され、管内での発生音を小さくできる。
また、一般的に、音が、音の伝播性状の異なる空間と空間との境界を通過する際には、音エネルギーが大幅に減衰することが知られている。よって、吸音材を蓋材の内底面より離して設置することにより、吸音材と蓋材の内底面との間に空間層を設け、吸音材と空間層との境界を設けたので、当該境界で音エネルギーが大幅に減衰され、管内での共鳴をより抑制できて、管内での発生音をより小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】穴付き柱状管の断面図(形態1)。
【図2】穴付き柱状管の斜視図(形態1)。
【図3】穴付き柱状管の分解斜視図(形態1)。
【図4】穴付き柱状管の断面図(形態2)。
【図5】穴付き柱状管の断面図(形態3)。
【図6】穴付き柱状管の断面図(形態4)。
【図7】穴付き柱状管の斜視図(形態1乃至形態4)。
【図8】穴付き柱状管の実験結果を示す図(従来例)。
【図9】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態1乃至形態3)。
【図10】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態4)。
【図11】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態1乃至形態3)。
【図12】穴付き柱状管の実験結果を示す図(従来例)。
【図13】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態1乃至形態3)。
【図14】穴付き柱状管の実験結果を示す図(形態1乃至形態3)。
【図15】穴付き柱状管の斜視図(従来)。
【図16】フィードバック発振音の発生原理を説明した図(従来)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
形態1
図1に示すように、穴付き柱状管1は、両方の端部に開口部10A;10Bを有した断面円形状の管2と、管2の周壁21に管2の内外に貫通するように設けられた穴5と、管2の一端開口部10Aを塞ぐ蓋材11Aと、管2の他端開口部10Bを塞ぐ蓋材11Bと、蓋材11Aの内側において蓋材11Aの内底面15Aより離れて設置された吸音材12Aと、蓋材11Bの内側において蓋材11Bの内底面15Bより離れて設置された吸音材12Bと、蓋材11Aの内底面15Aと吸音材12Aとの間に形成された空間層(空気層)16Aと、蓋材11Bの内底面15Bと吸音材12Bとの間に形成された空間層16Bとを備える。吸音材12Aと蓋材11Aの内底面15Aとの間の距離X、吸音材12Bと蓋材11Bの内底面15Bとの間の距離Xは、1cm〜10cm程度とした。図2に示すように、穴5としては、管2の中心線3と直交する1つの線を中心線4とする2つの穴5;5の対を、管2の両方の端部側にそれぞれ備える。穴付き柱状管1は、鋼材、プラスチック、FRPなどの材料により形成される。
【0008】
即ち、穴付き柱状管1は、吸音材12A;12Bが、管2の両方の開口部10A;10Bに蓋材11A;11Bを取付けた両端閉塞管1Xの管2内の両端側に設けられ、吸音材12A;12Bを蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bより離して設置したことにより、吸音材12A;12Bと蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bとの間に空間層16A;16Bを設けた構成である。
【0009】
図3に示すように、蓋材11A;11Bは、一端閉塞他端開口の有底円筒形に形成される。蓋材11Aの他端開口側の外周面にはねじ部31を備える。管2の一端開口部10Aの内周面にはねじ部31とねじ結合されるねじ部32を備える。蓋材11Bの他端開口側の外周面にはねじ部33を備える。管2の他端開口部10Bの内周面にはねじ部33とねじ結合されるねじ部34を備える。
【0010】
図3に示すように、吸音材12A;12Bは、円形板状に形成される。吸音材12A;12Bの円形外周面と蓋材11A;11Bの円形内周面とが接着剤やネジなどの結合材により結合される。尚、吸音材12A;12Bが管2内に脱落しないように、管2の一端開口部10A;他端開口部10Bの内周面に吸音材12A;12Bを支持する図外の支持リブを設け、吸音材12A;12Bと支持リブとを接着剤やネジなどの結合材により結合しておくことが好ましい。
【0011】
図1に示すように、円形内周面に円形板状の吸音材12Aを取付けた蓋材11Aのねじ部31と管2の一端開口部10Aのねじ部32とをねじ結合させることによって一端開口部10Aが蓋材11Aで塞がれ、かつ、円形内周面に円形板状の吸音材12Bを取付けた蓋材11Bのねじ部33と管2の他端開口部10Bのねじ部34とをねじ結合させることによって他端開口部10Bが蓋材11Bで塞がれたことにより、蓋材11A;11Bの内側に吸音材12A;12Bを備えた両端閉塞管1Xである穴付き柱状管1が形成される。
【0012】
形態1による穴付き柱状管1でも、図15,図16で説明したように、風Fの方向が穴5の中心線4と交差(例えば直交)する方向である場合、風Fが管2から離れる穴縁(エッジ)Aにおいて風の渦F1が放出され、この渦F1が風の流れに乗って下流側の穴縁(エッジ)Bに衝突して音を発生させるとともに、ここで発生する圧力波F2が上流の穴縁Aに伝播して次の渦F1を作るという現象が周期的に繰り返されることによって、いわゆる、フィードバック発振音(風切り音)が発生し、その音が穴付き柱状管1内に伝搬する。
しかしながら、形態1の穴付き柱状管1は、吸音材12A;12Bを蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bより離して設置し、吸音材12A;12Bと蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bとの間に空間層16A;16Bを設けた構成としたので、穴付き柱状管1内に伝搬した音が吸音材12A;12Bで吸収されて、音圧レベルが低下するので、管内での共鳴が抑制されて、管内での発生音を小さくできる。即ち、音が蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bで反射されて吸音材12A;12Bに入る回数及び吸音材12A;12Bより出る回数が増え、音が吸音材12A;12Bに入る際及び吸音材12A;12Bより出る際に音エネルギーが熱エネルギーに変換されて、音エネルギーが減衰するので、管内での共鳴が抑制され、管内での発生音を小さくできる。また、吸音材12A;12Bを蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bより離して設置したことにより、吸音材12A;12Bと蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bとの間に空間層16A;16Bを設け、吸音材12A;12Bと空間層16A;16Bとの境界を設けたので、当該境界で音エネルギーが大幅に減衰されるため、管内での共鳴がより抑制され、管内での発生音をより小さくできる。
【0013】
形態2
図4に示すように、吸音材12Aが、管2の一端開口部10A側の内側において蓋材11Aの内底面15Aより離れて設置され、吸音材12Bが、管2の他端開口部10B側の内側において蓋材11Bの内底面15Bより離れて設置された構成の穴付き柱状管1としてもよい。
【0014】
形態3
図5に示すように、吸音材12Aが、管2の一端開口部10A側の内側及び蓋材11Aの内側に跨るように設けられてかつ蓋材11Aの内底面15Aより離れて設置され、吸音材12Bが、管2の他端開口部10B側の内側及び蓋材11Bの内側に跨るように設けられてかつ蓋材11Bの内底面15Bより離れて設置された構成の穴付き柱状管1としてもよい。
【0015】
形態4
図6に示すように、管2の両方の端面を閉塞する蓋材11A;11Bの内底面15A;15Bに吸音材12A;12Bを接着して備えた構成の穴付き柱状管1としてもよい。当該構成の穴付き柱状管1であっても、発生した音のエネルギーが吸音材12A;12Bによって吸収され、音圧レベルが低下する。即ち、音が吸音材12A;12Bに入る際及び吸音材12A;12Bより出る際に音エネルギーが熱エネルギーに変換されて、音エネルギーが減衰するので、管内での共鳴を抑制でき、管内での発生音を小さくできる。
【0016】
形態1乃至形態4の構成の穴付き柱状管1の効果を実験により確認した。
実験では、焼成発泡ガラスを原料として連続気泡を有した発泡ガラス吸音板を吸音材として用いた穴付き柱状管(以下、発泡ガラスタイプという)、ポーラス板である軽石板を吸音材として用いた穴付き柱状管(以下、軽石タイプという)、吸音材を備えない穴付き柱状管(以下、未処理(従来の穴付き柱状管)という)、について、風洞実験により、発生音のフーリエ解析を行い発生音のA特性補正音圧レベルを求めた。
尚、図7(a)、図7(b)に示すように、管2の中心線3と直交する1つの線を中心線4とする2つの穴5;5を備えた穴付き柱状管1C(以下、2穴タイプという)と、管2の中心線3と直交する1つの線を中心線4とする2つの穴5;5と管2の中心線3及び中心線4と直交する1つの線を中心線とする2つの穴5;5とを備えた穴付き柱状管1D(以下、4穴タイプという)を用いた。そして、2穴タイプの穴付き柱状管1Cでは、中心線3及び中心線4と90度で交差する向きの風Fを穴付き柱状管1Cに送風し、4穴タイプの穴付き柱状管1Dでは、中心線3と直交し、かつ、中心線4;4に対してそれぞれ45度で交差する向きの風Fを穴付き柱状管1Dに送風した。風速は9m/sとした。
【0017】
図8は、2穴タイプ未処理の穴付き柱状管1C(以下、2穴90度未処理という)で実験した結果を示し、図9は、2穴タイプ+発泡ガラスタイプ+空気層の穴付き柱状管1C(以下、2穴90度発泡ガラス+空気層という)で実験した結果を示し、図10は、2穴タイプ+軽石タイプ(空気層なし)の穴付き柱状管1C(以下、2穴90度軽石という)で実験した結果を示し、図11は、2穴タイプ+軽石タイプ+空気層の穴付き柱状管1C(以下、2穴90度軽石+空気層という)で実験した結果を示し、図12は、4穴タイプ未処理の穴付き柱状管1D(以下、4穴45度未処理という)で実験した結果を示し、図13は、4穴タイプ+発泡ガラスタイプ+空気層の穴付き柱状管1D(以下、4穴45度発泡ガラス+空気層という)で実験した結果を示し、図14は、4穴タイプ+軽石タイプ+空気層の穴付き柱状管1D(以下、4穴45度軽石+空気層という)で実験した結果を示す。
【0018】
以下、実験により明らかとなった200Hz〜2000Hzの周波数領域でのフィードバック発振音抑制効果について図8乃至図14を参照して説明する。
【0019】
図8と図9とを見比べて、2穴90度発泡ガラス+空気層の場合、2穴90度未処理と比べて、音圧レベルが、250Hz付近で15.4dB減少し、300Hz付近で7.9dB減少し、650Hz付近で16.5dB減少し、900Hz付近で11.1dB減少し、1200Hz付近で4.4dB減少したことがわかる。
図8と図10とを見比べて、2穴90度軽石の場合、2穴90度未処理と比べて、音圧レベルが、250Hz付近で16.2dB減少し、300Hz付近で14.5dB減少し、650Hz付近で1.4dB減少し、900Hz付近で12.9dB減少し、1200Hz付近で6.3dB減少したことがわかる。
図8と図11とを見比べて、2穴90度軽石+空気層の場合、2穴90度未処理と比べて、音圧レベルが、250Hz付近で16.8dB減少し、300Hz付近で16.4dB減少し、650Hz付近で3.8dB減少し、900Hz付近で12.4dB減少し、1200Hz付近で5.3dB減少したことがわかる。
【0020】
図12と図13とを見比べて、4穴45度発泡ガラス+空気層の場合、4穴45度未処理と比べて、音圧レベルが、300Hz付近で6.3dB減少し、450Hz付近で28.6dB減少し、650Hz付近で12.9dB減少し、1200Hz付近で4.7dB減少し、1950Hz付近で6.6dB減少したことがわかる。
図12と図14とを見比べて、4穴45度軽石+空気層の場合、4穴45度未処理と比べて、音圧レベルが、300Hz付近で9.2dB減少し、450Hz付近で29.1dB減少し、650Hz付近で2.3dB減少し、1200Hz付近で6.1dB減少し、1950Hz付近で6.0dB減少したことがわかる。
【0021】
形態5
上記では、蓋材11A;11Bを備えた構成の穴付き柱状管1を説明したが、蓋材11A;11Bを備えずに、両方の端部に開口部10A;10Bを有した両端開口の管2の端部の開口部10A;10Bが吸音材12A;12Bにより塞がれた構成の穴付き柱状管としてもよい。
【0022】
形態6
形態1乃至5では、両端開口の管に吸音材を設けた柱状管を説明したが、一端が開口され、他端が閉塞された管において、一端側の管内に吸音材を設けた柱状管、あるいは、一端開口部を塞ぐように吸音材を設けた柱状管としてもよい。当該柱状管でも、管内に伝搬した音が吸音材により吸収されて、管内での共鳴が抑制され、管内での発生音を小さくできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
吸音材としては、上記で説明したもの以外のものを用いてもよく、特に、連続気泡を備えた構成のものを用いればよい。
管2の断面形状や穴5の形状は、円形以外でもよい。管2や穴5の大きさも特に限定されない。
【符号の説明】
【0024】
1 穴付き柱状管、1X 両端閉塞管、2 管、5 穴、10A;10B 開口部、
11A;11B 蓋材、12A;12B 吸音材、15A;15B 蓋材の内底面、
16A;16B 空間層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端が開口された管と、管の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴と、管の一端の開口部を塞ぐ蓋材と、吸音材とを備え、吸音材が、一端の開口部に蓋材を取付けた管の管内に設けられたことを特徴とする穴付き柱状管。
【請求項2】
両方の端部に開口部を有した両端開口の管と、管の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴と、管の端部の開口部を塞ぐ蓋材と、吸音材とを備え、吸音材が、管の両端開口に蓋材を取付けた両端閉塞管の両端側の管内に設けられたことを特徴とする穴付き柱状管。
【請求項3】
吸音材が蓋材の内底面より離れて設置されたことにより、吸音材と蓋材の内底面との間に空間層を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の穴付き柱状管。
【請求項1】
少なくとも一端が開口された管と、管の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴と、管の一端の開口部を塞ぐ蓋材と、吸音材とを備え、吸音材が、一端の開口部に蓋材を取付けた管の管内に設けられたことを特徴とする穴付き柱状管。
【請求項2】
両方の端部に開口部を有した両端開口の管と、管の周壁に管の内外に貫通するように設けられた穴と、管の端部の開口部を塞ぐ蓋材と、吸音材とを備え、吸音材が、管の両端開口に蓋材を取付けた両端閉塞管の両端側の管内に設けられたことを特徴とする穴付き柱状管。
【請求項3】
吸音材が蓋材の内底面より離れて設置されたことにより、吸音材と蓋材の内底面との間に空間層を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の穴付き柱状管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−209631(P2010−209631A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59129(P2009−59129)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(592177753)株式会社メイエレック (8)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(592177753)株式会社メイエレック (8)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】
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