説明

穴開け埋め込み組立における工程内品質管理の方法及びシステム

【課題】工程内品質管理に要する時間を短縮する組み立て方法を提供する。
【解決手段】重ね板の組立品において、ワンサイドファスナ300が取り付けられる位置を特定するステップと、その位置で重ね板の組立品を貫通する穴524を開けるステップと、穴に指定された深さの皿穴を開けるステップと、穴及び穴の近傍における重ね板の1つ又は複数に関連するパラメータを少なくとも決定するために、較正されたプローブを操作するステップと、穴にワンサイドファスナを挿入するステップと、ワンサイドファスナの取り付けを完了するために回転トルクをワンサイドファスナに付与するステップと、ワンサイドファスナの取り付けを完了するのに必要とされる角度変位の測定結果をファスナが正しく取り付けられていることを指標する角度変位の範囲と比較するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、一般に、2つ以上の機械的なコンポーネント間で行われる連結に関しており、より詳細には、穴開け埋め込み組立における工程内品質管理の方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最も関連性のある例では、航空宇宙構造物の組立は、一般的に、ファスナの取り付けを完了して品質保証の承認を得るために、複数の「接触」工程を必要とする。これらの複数の工程は、相当のフロー時間を必要とするため、労働コストが高くなってしまう。また、組立工程を段階的に行う場合、工程ラインでは1箇所に1工程だけが通常組み入れられることになるため、一般的に、工程における作業量が相当に多くなってしまう。さらに、下記の工程について検討すれば分かるように、労働力となっている組立作業員が、繰り返しの動きにより負傷する可能性がある。
【0003】
例えば、典型的な航空宇宙組立品の製作を示すと、その製作には、穴の位置を決め穴を開ける第1工程、開けられた穴に対して皿穴を開ける第2工程、穴及び皿穴を検査する第3工程、ファスナを取り付ける第4工程、及び、その取り付けを検査及び承認する第5工程が含まれる。典型的な機体では、このようなファスナの取り付けが何千何万も行われる。上記に加えて、穴を開けるステップ及び皿穴を開けるステップが完了した後に、組立品は、穴を開けるのに伴うバリを取り除くために分解されることがある。したがって、組立品は、ファスナを取り付けるために再度組み立てられなければならない。つまり、通常の組立品は、仮組立、穴開け、分解、再組立、及び複数回の検査の工程が途中必要になるのである。
【0004】
穴のバリ取りのために構造物を分解することに労力が払われており、例えば、バリの影響を受けにくい締まりばめのファスナを使用することは、構造物を完全なものとする上で効果がある。しかしながら、航空宇宙構造物の製作において一般的なブラインドサイドファスナ及びワンサイドファスナを含むファスナの取り付けでは、品質保証担当者による手作業による検査及び検証が依然として行われている。検査のためのこのような組立品への必要なアクセスによって、製作工程で時間が取られることになる。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、構造物を組み立てる方法が提供されている。この方法は、重ね板の組立品において、ワンサイドファスナが取り付けられる位置を特定するステップと、その位置で重ね板の組立品を貫通する穴を開けるステップと、穴に指定された深さの皿穴を開けるステップと、穴及び穴の近傍における重ね板の1つ又は複数に関連するパラメータを少なくとも決定するために、較正されたプローブを操作するステップと、穴にワンサイドファスナを挿入するステップと、ワンサイドファスナの取り付けを完了するために回転トルクをワンサイドファスナに付与するステップと、ワンサイドファスナの取り付けを完了するのに必要とされる角度変位の測定結果をファスナが正しく取り付けられていることを指標する角度変位の範囲と比較するステップとを含む。
【0006】
別の態様では、ワンサイドファスナが正しく取り付けられていることを確認する方法が提供されている。この方法は、ワンサイドファスナのボルトを、ボルトを回転させるのに必要なトルクによってボルトの駆動頭部がボルトから分離するまで回転させるステップと、ボルトの回転が開始する位置から駆動頭部がボルトから分離する位置までのボルトの回転を測定するステップと、ファスナが正しく取り付けられていることを確認するために、測定された回転を予測される回転と比較するステップとを含む。
【0007】
さらに別の態様では、加工装置と、その加工装置に通信可能に接続された回転角度センサとを有するファスナ挿入システムが提供されている。システムは、ワンサイドファスナのボルトを、ボルトを回転させるのに必要なトルクによってボルトの駆動頭部がボルトから分離するまで回転させるように操作可能となっている。加工装置は、システムによるボルトの回転の測定結果を受信し、駆動頭部がボルトから分離したときの回転角度を特定し、駆動頭部がボルトから分離したときの回転角度をファスナに関連する既知の値と比較するようにプログラムされている。
【0008】
検討された特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態で個別に実現することができ、あるいは、さらに別の実施形態では組み合わせられてもよく、それら実施形態のさらなる詳細は、以下の記載及び図面を参照することで理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】航空機の生産及び修理の方法論の流れ図である。
【図2】航空機のブロック図である。
【図3】組立品の穴に挿通されるワンサイドファスナの図である。
【図4】図3のボルトの図であり、駆動頭部は、球状部が組立品の底面においてナット部に形成され、駆動頭部がボルトの残余部から離脱するまで回転されている。
【図5】組立品の前板と後板とが互いに位置合わせされた状態において、穴開け位置に位置する数値制御穴開け埋め込みシステムを示す概略図である。
【図6】組立品を貫通する穴を開ける図5の数値制御穴開け埋め込みシステムを示す概略図である。
【図7】較正されたプローブを用いて、組立品における穴の直径、重ね板の厚さ、皿穴深さなどをチェックする図5の数値制御穴開け埋め込みシステムを示す概略図である。
【図8】ファスナを穴内に挿入するのに利用される穴開け埋め込みシステムのファスナ供給ヘッドを示す図である。
【図9】穴開け埋め込みシステムが、回転防止フランジが組立品の前面に接触するまで穴内にファスナを挿入するのを示す図である。
【図10】穴開け埋め込みシステムが、ボルトを回転させるとともにボルトの駆動頭部を破断させることにより、組立品の裏側において球状部を形成するようにファスナを操作するのを示す図である。
【図11】記載の実施形態を利用して構造物を組み立てる方法を示す流れ図である。
【図12】ファスナの取り付けにおけるトルク−角度をプロットした図である。
【図13】トルクセンサ及び回転角度センサを含むデータ処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
記載の実施形態は、ワンサイドファスナを用いた片側からの穴開け埋め込み工程を対象としている。本明細書でさらに記載されるように、穴が重ね板の組立品を貫通するように開けられ、皿穴が開けられ、皿穴、穴直径、及び重ね板の組立品の厚さから測定結果が得られる。正確なグリップ長さのファスナが、厚さの測定結果に基づいて選択され、1回のステップで完全に取り付けられる。ファスナの駆動頭部は、最終的な取り付けに向けて回転されるとき、最後には、トルクの付与によってボルトから取り除かれる。このトルクは、監視され、試験及び/又は事前のファスナの取り付けで採られたトルクデータと相関され、ファスナの取り付けが正しく行われたかどうかが判定される。したがって、ファスナに関連する取り付け後の検査が必要ないのである。
【0011】
実施形態では、駆動頭部がボルトの残余部から破断するまでに駆動頭部に与えられた回転量が測定される。適切なファスナの取り付けにおいては、範囲内に収まる特定の回転量が予測される。測定される回転は、例えば角度によって測定され、ファスナの取り付けが正しく行われたかどうかを判定するために、例えば試験及び/又は事前のファスナの取り付けで採られた予測の回転範囲と比較される。
【0012】
より具体的には、図面を参照することで、本発明の開示の実施形態が、図1に示される航空機の製造及び保守の方法100、並びに、図2に示される航空機200と照らして記載され得る。生産前においては、航空機の製造及び保守の方法100には、航空機200の仕様及び設計102、並びに、資材調達104が含まれる。
【0013】
生産中においては、コンポーネント及びサブアセンブリの製造106、並びに、航空機200のシステムインテグレーション108が行われる。その後、航空機200は、運航112させるために、認可及び納品110が行われることになる。客先において運航されている間、航空機200には、定期的な整備及び保守114(変更、再構成、改修などもまた含まれる)が予定される。
【0014】
航空機の製造及び保守の方法100の各工程は、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実施又は実行されてもよい。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、いくつかの航空機製造者及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、例えば、限定はされないが、いくつかのベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、また、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などであってもよい。
【0015】
図2に示すように、航空機の製造及び保守の方法100によって生産された航空機200は、複数のシステム204及び内装206を備えた機体202を有し得る。システム204の例は、1つ又は複数の推進システム208、電気システム210、油圧システム212、及び環境システム214を有している。この例には、いくつかの他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例が示されているが、本発明の開示の本質は、自動車産業などの他の産業にも適用可能である。
【0016】
本明細書で実施された装置及び方法は、航空機の製造及び保守の方法100のうちの1つ又は複数の段階において採用することができる。例えば、限定されることはないが、コンポーネント及びサブアセンブリの製造106に相当するコンポーネント及びサブアセンブリは、航空機200の運航中において生産されたコンポーネント及びサブアセンブリと同様の方法で組み立てられ、あるいは製造されてもよい。
【0017】
また、装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせの1つ又は複数は、コンポーネント及びサブアセンブリの製造106及びシステムインテグレーション108の最中に、例えば、限定されることはないが、実質的に組立を早めたり、航空機200のコストを下げたりすることで利用されてもよい。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせの1つ又は複数は、例えば、限定されることはないが、整備及び保守114は、部品が互いに接続されているかどうか、及び/又は、互いに一体となっているかどうかを判定するために、システムインテグレーション108及び/又は整備及び保守114の最中に用いられてもよいといった、航空機200が運航中において利用されてもよい。
【0018】
異なる利点を有する実施形態の記載は、解説及び説明の目的で提供されており、開示された態様の実施形態に包括され、あるいは、限定されるようには意図されていない。多くの変更及び変形が通常の当業者には明らかとなろう。さらに、異なる利点を有する実施形態は、他の利点を有する実施形態と比較して、異なる利点を提供することができる。選択された1つ又は複数の実施形態は、実施形態の本質及び実際の適用を最もよく説明するために、並びに、通常の当業者以外の者が、検討される特定の使用に適合する、様々な変更が施された様々な実施形態の開示を理解できるように選択されて記載されている。
【0019】
図3は、前板312及び後板314から構成され、切断された状態で示された組立品310に挿入されたワンサイドファスナ300の図である。後板314は裏側316を有し、前板312は表側318を有している。ファスナ300は、ナット部320及び心部ボルト322を有している。心部ボルト322は、ナット部320及び破壊可能な駆動頭部324を貫通して延びる下方部(図3では示されていない)を有している。ナット部320の一部は、回転防止凹みパターン332が形成された回転防止フランジ330とされている。ナット部320はまた、心部ボルト322のねじ部(図3では示されていない)と係合するねじロック部334を有している。ファスナ300は、既製品の構成で示されている。組立品310を貫通する穴を開ける工程が完了すると、ファスナ300は、図に示すように、回転防止フランジ330が前板312の前側318に隣接するまで穴に挿入される。
【0020】
ファスナ300は、エンドエフェクタモジュールを用いて組立品310に挿入される。エンドエフェクタモジュールの駆動部は、駆動頭部324と係合して心部ボルト322の回転を開始させたときである取り付けの最終状態において、回転防止凹みパターン332と係合してナット部320の回転を防ぐ1つ又は複数の突出具を備えている。
【0021】
ここで図4を参照すると、心部ボルト322が回転されると、ねじロック部334は、心部ボルト322のねじ部340を上方へと移動させ、球状部350がナット部320の最も弱い部分に形成される。なお、球状部350は、後板314の裏側316に隣接して実質的に形成される。理解されるように、この形成において、球状部350は、前板312及び後板314を一体に保持するように、心部ボルト322及び回転防止フランジとともに、従来のナットと同じ方法で実質的に機能する。
【0022】
球状部350が適切に形成されると、駆動頭部324が、組立品310の前面318と実質的に面一となるように構成された心部ボルト322の残余部360から分離する特定のトルク範囲に達するまでに、心部ボルトの回転は徐々に困難になっていく。
【0023】
ここで図5〜11を参照すると、組立品310を組み立てる工程がさらに記載されている。上記のように、ファスナ300(図5には示されていない)は、前板312と後板314を着設するために利用される。数値制御埋め込みシステム510が利用され、数値制御埋め込みシステム510は、例えば、少なくとも一部がエンドエフェクタ520に配置された視覚システムを用いて穴開け位置を突き止め、組立品310に形成される基準穴などの基準点を特定する。実施形態では、穴開け埋め込みシステムは、前板312及び後板314を押し合わせるように作動し、基準点に対して参照される穴開け位置に移動するようにプログラムされている。
【0024】
図6に示すように、穴開け埋め込みシステム510は、ドリルビット522を内蔵するエンドエフェクタモジュール520を前板312及び後板314に向かって延ばし、それらの板を貫通する穴524の穴開けを開始する。どのタイプのファスナが利用されるかに依存するが、穴開け埋め込みシステム510は、ファスナ300の取り付けが完了した際に、ファスナ300及び前板318が面一となるように、(図に示すような)皿穴を設けるように作動されてもよい。
【0025】
図7は、穴開け埋め込みシステム510のドリルビット522が、穴524から除かれ、較正されたプローブ552に交換されている状態を示す。較正されたプローブ552及び穴開け埋め込みシステム510は、自動化されており、穴の直径、重ね板の厚さ、皿穴深さ、前板312及び後板314の間の隙間などをチェックするように操作される。
【0026】
穴開け埋め込みシステム510は、組立品310及び組立品310を貫通して延びる穴524が仕様に合っていることを確認すると、ファスナ供給ヘッド560を利用して、図8に示すように、ファスナ300を穴524に挿入する。一実施形態において、穴開け埋め込みシステム510は、ファスナ300が利用される組立品310に対して正確なグリップ長さとなるように、上記の厚さの測定結果に基づいて、ファスナ300を選択する。ある実施形態では、穴開け埋め込みシステム510は、ファスナ300の長さを確認し、及び/又は、ファスナ300が適切な大きさ及び長さのねじ部を備えていることを確認する。
【0027】
図9は、穴開け埋め込みシステム510がファスナ300を穴524に挿入する状態を示している。ファスナ300は、回転防止フランジ330が組立品310の前面318に接触し、ナット部320が遠位側から延び出すまで挿入される。ファスナ供給ヘッド560はまた、駆動部として機能し、上記及び図10に示されるように、駆動部が駆動頭部324と係合して心部ボルト322の回転が開始してから球状部350が形成されて駆動頭部324が破断するまでの取り付けの最終状態において、回転防止フランジ330と係合してナット部320の回転を防ぐ。
【0028】
図11は、組立品310などの構造物を組み立てる上記の方法を示す流れ図600である。この方法は、重ね板の組立品において、ワンサイドファスナ(例えばファスナ300)が取り付けられる位置を特定するステップ602と、その位置で重ね板の組立品を貫通する穴を開けるステップ604と、穴524に指定された深さの皿穴を開けるステップ606と、穴の近傍における重ね板の厚さを少なくとも決定するために、較正されたプローブ552を操作するステップ608と、穴にワンサイドファスナを挿入するステップ610と、ワンサイドファスナの取り付けを完了するためにトルクをワンサイドファスナに付与するステップ612と、ワンサイドファスナの取り付けを完了するのに必要とされるトルクの測定結果を、ファスナが正しく取り付けられていることを確認するために、監視されたトルク−角度曲線(トルク範囲曲線と言う場合がある)と比較するステップ614とを含む。
【0029】
追加で又は代替で、この方法は、ファスナが正しく取り付けられているのを確認するために、ワンサイドファスナ300の取り付けにおいて、駆動頭部324を心部ボルト322から破断するのに必要とされる角度変位の測定結果を、ファスナが正しく取り付けられていることを指標する角度変位の範囲と比較するステップを含んでいてもよい。
【0030】
実施形態では、重ね板の組立品において位置を特定するステップ602は、重ね板の組立品に基準を突き止め、ワンサイドファスナを取り付けるための位置を基準の位置に対して特定することを含む。さらに、ワンサイドファスナ300を穴524に挿入することは、重ね板の組立品310の決定された厚さに基づくグリップ長さを有するワンサイドファスナ300を選択することを含む。
【0031】
較正されたプローブ552を用いた検証に関しては、プローブ552は、本明細書に記載されるように、穴524の直径を確認し、穴開けされた穴524に係る皿穴の深さを確認し、並びに、穴524の近傍で組立品310の厚さを計測するように操作可能である。他の検証工程には、トルク及び回転角度の測定結果に基づいて、ファスナの面一性及び突出性、及び/又は、取り付けられたファスナに係るファスナ球状部の直径を確認することが含まれてもよい。
【0032】
本明細書に記載されるように、実施形態は、ファスナ300にトルクを付与することで、ナット部320がボルト322をそれ以上引き付けることができなくなるように球状部が組立品の裏側316に対して引き付けられることでボルト322を回転させるのに必要なトルクが増加するために、破壊可能な駆動頭部324がボルト322の残余部から破断するまでファスナ300のボルト322を回転させることで、ファスナ300の取り付けを完了するように操作されるファスナ300を対照としている。
【0033】
実施形態はまた、ワンサイドファスナが正しく取り付けられていることを確認する方法を導く。この方法は、ワンサイドファスナ300のボルト322を、ボルト322を回転させるのに必要なトルクによってボルト322の駆動頭部324がボルト322から分離するまで回転させるステップと、駆動頭部324がボルト322から分離したときのトルクの測定結果を受信するステップと、ファスナ300が正しく取り付けられていることを確認するために、トルク測定値をファスナ300に関するトルク−角度曲線又はトルク範囲と比較するステップとを含む。ワンサイドファスナのボルトを回転させることで、ボルト322に係る一体のナット部320に、重ね板の組立品の裏側において球状部350が形成させられる。さらに、ボルト322の回転が開始する位置から駆動頭部324がボルト322から分離する位置までのボルト322の回転を測定することができ、例えば、角度で測定された回転を、ファスナ300が正しく取り付けられていることをさらに確認するために、予測される回転と比較することができる。このような回転の測定結果もまた、ファスナが正しく取り付けられているのを確認することの代替と考えることができる。
【0034】
図12は、10個のファスナ300の取り付けに関するトルクと角度とのプロット700である。9個のファスナ300において示されるように、約2250°の回転(6個は回転の完了を若干越えている)において、トルク値は急激に増加し、球状部350が形成され、ボルト322が回転するのが困難になったことを示しており、本明細書に記載されるように、駆動頭部324がボルト322から分離することになる。回転及び/又はトルクを監視することで、ファスナの取り付けが正しく行われていることを判定することができるトルク範囲などの試験データ又は事前の取り付けデータと比較される。しかしながら、10個目のファスナに関しては、プロット710では、1000°未満の回転の後にトルクが増加したことが示されている。これは、取り付けが正しくなかったことを示している可能性があり、例えば、球状部350の不適切な形成、不適当な又は不良のファスナ300の選択、あるいは、開けられた穴に問題があったことを示している。
【0035】
図13は、上記の穴開け埋め込みシステム510に内蔵されるデータ処理システムの概略図である。示した例では、データ処理システム800が通信ファブリック802を備えており、その通信ファブリック802によって、プロセッサ装置804、メモリ806、固定記憶域808、通信装置810、入出力装置812、及び表示部814の間での通信が提供される。データ処理システム800は、本明細書に記載される実施形態の説明から理解されるように、駆動頭部324を破断させるのに必要なトルクの検知、及び、駆動頭部324が破断する前のボルト322の回転する数の記録に使用するために操作可能に設けられたトルクセンサ830及び回転角度センサ840を備えてもよい。トルクセンサ830及び回転角度センサ840は、図に示すように、通信装置810を介して通信することができ、また、他の実施形態においては、プロセッサ装置804と直接通信してもよい。データ処理システム800は、記載された実施形態で利用されるデータ処理システムの一実施形態でしかないことは理解されたい。トルクセンサ830及び回転角度センサ840からセンサのデータを受信することができるデータ処理システムの他の構造及び構成は公知となっている。
【0036】
続いて、プロセッサ装置804は、メモリ806にロードされるソフトウェアに命令を実行するように機能する。プロセッサ装置804は、特定の実施に依存して、1つ又は複数のプロセッサの組み合わせであってもよいし、あるいは、マルチプロセッサコアであってもよい。さらに、プロセッサ装置804は、1次プロセッサが2次プロセッサとともに単体のチップ上に存在する1つ又は複数の異種プロセッサシステムを用いて実施されてもよい。別の例として、プロセッサ装置804は、同じタイプのプロセッサを複数有する対称型マルチプロセッサシステムであってもよい。
【0037】
メモリ806及び固定記憶域808は、記憶装置の例である。記憶装置は、一時的及び/又は永続的かに基づいて情報を保存することができる何らかのハードウェアである。これらの例においてメモリ806は、例えば、限定されることはないが、ランダムアクセスメモリ、あるいは、他の適切な揮発性又は不揮発性の記憶装置であってもよい。固定記憶域808は、具体的な実施に応じて様々な形態を取ることができる。例えば、限定されることはないが、固定記憶域808は、1つ又は複数の機器又は装置を有してもよい。例えば、固定記憶域808は、ハードドライブ、フラッシュメモリ、書換可能光ディスク、書換可能磁気テープ、又は、それらの組み合わせであってもよい。固定記憶域808によって使用されるメディアはまた、取り外し可能であってもよい。例えば、限定されることはないが、取り外し可能なハードドライブを固定記憶域808に用いることができる。
【0038】
これらの例において通信装置810は、他のデータ処理システム又は装置との通信を提供する。これらの例では、通信装置810はネットワークインターフェースカードである。通信装置810は、物理的な通信リンク及び無線通信リンクのいずれか又は両方を用いて通信を提供してもよい。
【0039】
入出力装置812は、データ処理システム800に接続され得る他の装置とのデータの入力及び出力を可能とする。例えば、限定されることはないが、入出力装置812は、キーボード及びマウスを介して使用者の入力に対する接続を提供してもよい。さらに、入出力装置812は、出力をプリンタに送信してもよい。表示部814は、使用者に情報を表示する機構を提供する。
【0040】
オペレーティングシステム及びアプリケーション又はプログラムへの命令は、固定記憶域808にある。これらの命令は、プロセッサ装置804によって実行されるため、メモリ806にロードされてもよい。別の実施形態の処理は、メモリ806などのメモリにあるコンピュータ実行命令を用いてプロセッサ装置804によって実施されてもよい。これらの命令は、プロセッサ装置804のプロセッサによって読み取り及び実行され得るプログラムコード、コンピュータ使用可能なプログラムコード、又はコンピュータ読取り可能なプログラムコードとして参照される。別の実施形態におけるプログラムコードは、メモリ806又は固定記憶域808などの様々な物理的又は有形のコンピュータで読取可能な媒体で具体化されてもよい。
【0041】
プログラムコード816は、コンピュータで読取可能な媒体818に機能的な形態で位置し、コンピュータで読取可能な媒体818は、選択的に取り外し可能であり、プロセッサ装置804によって実行するためにデータ処理システム800にロード又は転送することができる。プログラムコード816及びコンピュータで読取可能な媒体818は、これらの例においては、コンピュータプログラム製品820を形成している。1つの例では、コンピュータで読取可能な媒体818は、例えば、固定記憶域808の一部であるハードドライブなどの記憶装置に移動するため、固定記憶域808の一部であるドライブ又は他の装置に挿入又は配置される光又は磁気ディスクなどの有形の形態であってもよい。有形の形態では、コンピュータで読取可能な媒体818はまた、データ処理システム800に接続するハードドライブ、サムドライブ、又はフラッシュメモリなどの固定記憶域の形態をとってもよい。コンピュータで読取可能な媒体818の有形の形態はまた、コンピュータ記録可能な保存メディアとされてもよい。例の中には、コンピュータで読取可能な媒体818が取り外しできないものもある。
【0042】
代わりに、プログラムコード816は、通信装置810への通信リンクを介して、及び/又は、入出力装置812への接続を介して、コンピュータで読取可能な媒体818からデータ処理システム800に移動されてもよい。通信リンク及び/又は接続は、例に示される物理的又は無線のものであってもよい。コンピュータで読取可能な媒体はまた、プログラムコードを含む通信リンク又は無線送信などの無形のメディアの形態を取ってもよい。
【0043】
例示の実施形態の中には、プログラムコード816が、データ処理システム800内で使用するために、他の装置又はデータ処理システムからネットワークを介して固定記憶域808にダウンロード可能とされているものもある。例えば、サーバデータ処理システムにあるコンピュータで読取可能な媒体に保存されたプログラムコードが、ネットワークを介してサーバからデータ処理システム800にダウンロードされてもよい。プログラムコード816を提供するデータ処理システムは、サーバコンピュータ、クライアントコンピュータ、又は、プログラムコード816を保存及び送信できる何らかの他の装置であってもよい。
【0044】
データ処理システム800について示された他の構成要素は、異なる実施形態が実施される方法に構造上の限定を与えるように意図されてはいない。異なる例示の実施形態が、データ処理システム800について例示された構成要素に加えられた、あるいは、それらに代わる構成要素を含むデータ処理システムで実施されてもよい。図13に示す他の構成要素は、示された例から異なるものとすることができる。
【0045】
一例として、データ処理システム800の記憶装置は、データを保存できる何らかのハードウェア装置である。メモリ806、固定記憶域808、及びコンピュータで読取可能な媒体818は、有形の形態の記憶装置の例である。
【0046】
別の例では、通信ファブリック802を実施するのに、バスシステムが用いられてもよく、バスシステムは、システムバス又は入力/出力バスなどの1つ又は複数のバスから構成されてもよい。当然ながら、バスシステムは、バスシステムに接続される異なる構成要素又は装置間のデータの移動を提供する何らかの適切なタイプの構造を用いて実施されればよい。また、通信装置は、モデム又はネットワークアダプタなどの、データを送受信するのに用いられる1つ又は複数の装置を備えてもよい。さらに、メモリは、例えば、限定されることはないが、メモリ806、又は、通信ファブリック802にあるインターフェース及びメモリ制御ハブなどに見られるキャッシュであってもよい。
【0047】
ここに記載した説明は、様々な実施形態を開示するために実施例を用いており、それらの実施形態は、当業者が、いずれかの装置又はシステムを製作及び使用すること、並びに、取り入られた方法を行えることを含めてそれらの実施形態を実行できるように、最良の形態を含む。発明の範囲は特許請求の範囲によって規定され、当業者の思いつく他の例を含む可能性がある。このような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構成要素を有している場合、あるいは、特許請求の範囲の文言と非実質的に異なる同等の構成要素を有している場合には、特許請求の範囲内にあると意図される。
【符号の説明】
【0048】
300 ワンサイドファスナ
310 組立品
312 前板
314 後板
316 裏側
318 表側
320 ナット部
322 心部ボルト
324 駆動頭部
330 回転防止フランジ
332 回転防止凹みパターン
334 ねじロック部
340 ねじ部
350 球状部
360 心部ボルト残余部
510 穴開け埋め込みシステム
520 エンドエフェクタモジュール
522 ドリルビット
524 穴
552 較正されたプローブ
560 ファスナ供給ヘッド
700、710 プロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を組み立てる方法であって、
重ね板の組立品において、ワンサイドファスナが取り付けられる位置を特定するステップと、
前記の位置で重ね板の組立品を貫通する穴を開けるステップと、
前記穴に指定された深さまで皿穴を開けるステップと、
前記穴及び前記穴の近傍における前記重ね板の1つ又は複数に関連するパラメータを少なくとも決定するために、較正されたプローブを操作するステップと、
前記穴に前記ワンサイドファスナを挿入するステップと、
前記ワンサイドファスナの取り付けを完了するために、回転トルクを前記ワンサイドファスナに付与するステップと、
前記ワンサイドファスナの取り付けを完了するのに必要とされる角度変位の測定結果を、前記ファスナが正しく取り付けられていることを指標する角度変位の範囲と比較するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ワンサイドファスナの取り付けを完了するのに必要とされる前記トルクの測定結果を、測定されたトルク−角度曲線と比較するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
取り付けを完了するのに必要とされる角度変位の測定結果を比較するステップが、前記ファスナが正しく取り付けられていることを確認するために、取り付けの間に、心部ボルトを破壊するのに必要とされる角度変位の量を測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
重ね板の組立品において位置を特定するステップが、
重ね板の組立品上に基準を特定するステップと、
前記ワンサイドファスナを取り付けるための位置を前記基準の位置に対して特定するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記穴に前記ワンサイドファスナを挿入するステップが、前記重ね板の決定された厚さに基づくグリップ長さを有するワンサイドファスナを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
較正されたプローブを操作するステップが、前記開けられた穴の直径を確認するステップと、前記開けられた穴に係る皿穴の深さを確認するステップとの少なくとも一方をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記取り付けられたファスナに関する面一性、突出性、及びファスナ球状部の直径を検証するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ワンサイドファスナの取り付けを完了するためにトルクを前記ワンサイドファスナに付与するステップが、前記ファスナのボルトを、破壊可能な駆動頭部が前記ボルトの残余部から破断するまで回転させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ワンサイドファスナが正しく取り付けられていることを確認する方法であって、
前記ワンサイドファスナのボルトを、前記ボルトを回転させるのに必要なトルクによって前記ボルトの駆動頭部がボルトから分離するまで回転させるステップと、
前記ボルトの回転が開始する位置から前記駆動頭部が前記ボルトから分離する位置までの前記ボルトの回転を測定するステップと、
前記ファスナが正しく取り付けられていることを確認するために、前記測定された回転を予測される回転と比較するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記ワンサイドファスナのボルトを回転させるステップが、前記ボルトに関する一体のナット部に、重ね板の組立品の裏側において球状部を形成するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記駆動頭部が前記ボルトから分離したときの前記トルクの測定結果を受信するステップと、
前記トルクの測定結果を前記ファスナに関するトルク範囲曲線と比較するステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ボルトの前記駆動頭部の前記回転が角度によって測定される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
加工装置と、
前記加工装置と通信可能に接続された回転角度センサと
を備えるファスナ挿入システムであって、
ワンサイドファスナのボルトを、前記ボルトを回転させるのに必要なトルクによって前記ボルトの駆動頭部が前記ボルトから分離するまで回転させるように操作可能であり、
前記加工装置が、
前記システムによる前記ボルトの回転の測定結果を受信し、
前記駆動頭部が前記ボルトから分離したときの回転角度を特定し、
前記駆動頭部が前記ボルトから分離したときの前記回転角度を、前記ファスナに関連する既知の値と比較する
ようにプログラムされている、ファスナ挿入システム。
【請求項14】
前記加工装置と通信可能に接続されたトルクセンサをさらに備え、
前記加工装置が、
前記システムによって前記ボルトを回転させるのに利用された前記トルクの測定結果を受信し、
前記駆動頭部が前記ボルトから分離したときのトルクを特定し、
前記駆動頭部が前記ボルトから分離したときの前記トルクの測定結果を、前記ファスナに関連する既知の値と比較する
ようにプログラムされている、請求項13に記載のファスナ挿入システム。
【請求項15】
前記加工装置が、前記駆動頭部が前記ボルトから分離したときの前記トルクの測定結果及び前記回転角度を、メモリに保存されたトルク回転曲線と比較し、前記ファスナが正しく取り付けられたかどうかを判定するようにプログラムされている、請求項14に記載のファスナ挿入システム。
【請求項16】
前記トルク回転曲線が、事前のファスナの取り付けから生成されたファスナ取り付け試験データ及びトルク角度データの少なくとも一方から生成されている、請求項15に記載のファスナ挿入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−35118(P2013−35118A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−133358(P2012−133358)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】