説明

空圧緩衝器

【課題】経済的不利および大型化を招かずに減衰特性の変更を可能とする空圧緩衝器を提供することである。
【解決手段】本発明の課題解決手段における空圧緩衝器は、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内に二つの圧力室R1,R2を隔成するピストン2と、シリンダ1外で二つの圧力室R1,R2を連通する通路3と、通路3の途中に設けられて伸側ポート4aと圧側ポート4bとを備えた仕切部材4と、仕切部材4に積層されて伸側ポート4aを開閉する伸側リーフバルブ5と、仕切部材4に積層されて圧側ポート4bを開閉する圧側リーフバルブ6と、伸側ポート4aを閉塞する方向へ伸側リーフバルブ5を附勢する伸側附勢部材7と、圧側ポート4bを閉塞する方向へ圧側リーフバルブ6を附勢する圧側附勢部材8と、伸側附勢部材7の附勢力を外部から調節する伸側調節手段9と、圧側附勢部材8の附勢力を外部から調節する圧側調節手段10とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空圧緩衝器としては、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されたピストンと、シリンダにピストンを介して移動自在に挿通されるロッドとを備えて、作動流体を気体としたものが知られている。
【0003】
この空圧緩衝器では、ピストンに設けた伸側ポートと圧側ポートにそれぞれ減衰バルブを配しており、この減衰バルブで伸圧両側の減衰力を発揮するようにしている。なお、この空圧緩衝器では、特に、車両の車体と車軸との間といった振動入力が頻繁に行われる箇所にも適用可能とするため、ロッド外周とシール部材との摺動部を潤滑するようにしている。そのため、当該空圧緩衝器は、長期間に亘る継続使用によってピストン側室へ落下した潤滑油を、上方配置される貯油室へ循環させる通路を備えており、当該通路は通過流体に抵抗を与えるようになっており、空圧緩衝器の圧縮行程時には、当該通路も減衰力発生要素にもなっている。(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−349138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の空圧緩衝器は、一度、気体が空圧緩衝器へ封入されると、ピストンに設けた減衰バルブのチューニングを行うことができず、減衰特性(空圧緩衝器のピストン速度に対する発生減衰力の性質)を外部から調節することができない。
【0005】
これを外部から減衰特性を調節可能とする場合には、ピストンに設けた減衰バルブを外部から調節するようにするしかなく、ロッドを中空にしなければならず、加工コストが嵩むことになるほか、少なからずロッドの強度低下を招くことになるから強度確保のためロッドが大径化し、結果的に空圧緩衝器が大型化してしまう危惧がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、経済的不利および大型化を招かずに減衰特性の変更を可能とする空圧緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の課題解決手段における空圧緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内に二つの圧力室を隔成するピストンとを備えた空圧緩衝器において、シリンダ外で二つの圧力室を連通する通路と、通路の途中に設けられて伸側ポートと圧側ポートとを備えた仕切部材と、仕切部材に積層されて伸側ポートを開閉する伸側リーフバルブと、仕切部材に積層されて圧側ポートを開閉する圧側リーフバルブと、伸側ポートを閉塞する方向へ伸側リーフバルブを附勢する伸側附勢部材と、圧側ポートを閉塞する方向へ圧側リーフバルブを附勢する圧側附勢部材と、伸側附勢部材の附勢力を外部から調節する伸側調節手段と、圧側附勢部材の附勢力を外部から調節する圧側調節手段とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空圧緩衝器によれば、シリンダ外で二つの圧力室を連通する通路の途中に伸側ポートと圧側ポートとを備えた仕切部材を設けて、仕切部材に積層されて伸側ポートを開閉する伸側リーフバルブと、仕切部材に積層されて圧側ポートを開閉する圧側リーフバルブと、伸側ポートを閉塞する方向へ伸側リーフバルブを附勢する伸側附勢部材と、圧側ポートを閉塞する方向へ圧側リーフバルブを附勢する圧側附勢部材と、伸側附勢部材の附勢力を外部から調節する伸側調節手段と、圧側附勢部材の附勢力を外部から調節する圧側調節手段とを設けたので、コスト高となるような加工、たとえば、ピストンロッドを中空にしなければならないような加工を行わずとも、減衰特性を外部から調節することができ、低コストで減衰特性調節を行えるようになり、経済的に有利となるとともに、ピストンロッドの強度低下を招くこともなく、空圧緩衝器が大型化してしまう危惧もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態における空圧緩衝器の概略縦断面図である。図2は、一実施の形態の空圧緩衝器の減衰特性調節部における拡大縦断面図である。図3は、一実施の形態の一変形例における空圧緩衝器の減衰特性調節部の拡大縦断面図である。図4は、一実施の形態の他の変形例における空圧緩衝器の減衰特性調節部の拡大縦断面図である。
【0010】
一実施の形態における空圧緩衝器Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内に二つの圧力室R1,R2を隔成するピストン2と、シリンダ1外で二つの圧力室R1,R2を連通する通路3と、通路3の途中に設けられて伸側ポート4aと圧側ポート4bとを備えた仕切部材4と、仕切部材4に積層されて伸側ポート4aを開閉する伸側リーフバルブ5と、仕切部材4に積層されて圧側ポート4bを開閉する圧側リーフバルブ6と、伸側ポート4aを閉塞する方向へ伸側リーフバルブ5を附勢する伸側附勢部材7と、圧側ポート4bを閉塞する方向へ圧側リーフバルブ6を附勢する圧側附勢部材8と、伸側附勢部材7の附勢力を外部から調節する伸側調節手段9と、圧側附勢部材8の附勢力を外部から調節する圧側調節手段10とを備えて構成されている。
【0011】
以下、詳細に説明すると、シリンダ1は、筒状に形成され、その内部には、ピストン2が摺動自在に挿入されている。ピストン2は、シリンダ1内を図1中上方側の圧力室R1と下方の圧力室R2に区画しており、ピストン2の図1中上端には、ピストンロッド11が連結されている。
【0012】
また、シリンダ1の図1中上端は、環状のヘッド部材12が嵌合されており、ヘッド部材12は、内周に固定されるベアリング13を介してピストンロッド11を摺動自在に軸支している。さらに、シリンダ1の下端には、筒状のバルブハウジング14が嵌合されており、バルブハウジング14の内部には仕切部材4をはじめとした減衰特性調節部が収容されている。
【0013】
そして、この空圧緩衝器Dの場合、シリンダ1を覆う外筒15を備えており、当該外筒15の下端は、シリンダ1の下端に嵌合するバルブハウジング14の外周に溶接等によって結合されている。また、シリンダ1の上端に嵌合するヘッド部材12は、外筒15内に収容され、その図1中上方に積層されてピストンロッド11の外周と外筒15との間をシールするシール部材16とともに外筒15の上端開口端を加締めることによって外筒15に固定されている。このように構成することで、シリンダ1はヘッド部材12およびバルブハウジング14に挟持されて外筒15に径方向および軸方向に位置決められた状態で固定される。
【0014】
バルブハウジング14は、図1および図2に示すように、筒状とされて、その外周には、図2中上端側にシリンダ1内に嵌合する小径の小径部14aと、外筒15に嵌合する小径部14aより大径の嵌合部14bと、図2中下端側の大径部14cとを備え、内周には、図2中上端側の大内径部14dと、下端側の小内径部14eとを備え、小内径部14eの下端側には螺子部14fが形成されている。
【0015】
また、バルブハウジング14は、大内径部14dとシリンダ1と外筒15との間の隙間に臨む小径部14aと嵌合部14bの間の段部14gとを連通する孔14hを備えている。
【0016】
さらに、ヘッド部材12は、圧力室R1に臨む図1中下端からシリンダ1と外筒15との間の隙間に臨む段部12aとを連通する流路12bを備えている。したがって、圧力室R1と圧力室R2とは、上記したバルブハウジング14における内部、孔14h、シリンダ1と外筒15との間の隙間、ヘッド部材12の流路12bを介して連通されており、これらで圧力室R1と圧力室R2とをシリンダ1外で連通する通路3を形成している。なお、ヘッド部材12とシール部材16との間に潤滑油溜まりとしての空間を設けておき、シール部材16とピストンロッド11との摺動部を潤滑するようにしてもよく、その際、圧力室R1と圧力室R2と潤滑油が充填される当該空間を介して連通させて、背景技術欄で説明した従来緩衝器のように潤滑油を圧力室R1と圧力室R2とを循環させるようにしてもよい。
【0017】
つづいて、バルブハウジング14の大内径部14d内には、当該バルブハウジング14の螺子部14fに螺合される軸部材17に固定された仕切部材4が挿入されている。詳しくは、仕切部材4は、大内径部14d内にあって孔14hより圧力室R2側に配置されており、この仕切部材4によってバルブハウジング14内は圧力室R1側と圧力室R2側に仕切られている。そして、仕切部材4の外周に装着されたシールリング4cが大内径部14dの内周に密着して仕切部材4の外周を介して気体が流通することが無いようになっている。
【0018】
また、軸部材17は、筒状とされており、図2中下方の大径の基端部17aと、基端部17aより小径の中間部17bと、図2中上方側であって中間部より小径に設定される小径部17cとを備えて構成され、基端部17aの下端外周にはバルブハウジング14の小内径部14eに設けた螺子部14fに螺合する螺子部17dが設けられ、小径部17cの上端外周にも螺子部17eが設けられるとともに、基端部17aの内周にも螺子部17fが設けられている。
【0019】
そして、軸部材17の小径部17cには、図2中下から順に、筒状のスペーサ18、圧側リーフバルブ6、仕切部材4、伸側リーフバルブ5、筒状のスペーサ19が組みつけられ、これらの小径部17cに組み付けられた部材は、中間部17bと小径部17cとの境の段部と螺子部17eに螺着されるナット20とによって挟持されて軸部材17の小径部17cに固定される。
【0020】
伸側リーフバルブ5は、この場合、複数枚の環状のリーフを積層して構成した積層リーフバルブとして構成され、仕切部材4の図1中上端に積層されて伸側ポート4aの出口端を開閉するようになっており、圧力室R1から通路3を介して圧力室R2へ向かう気体の流れに抵抗を与えるとともに、圧力室R2から圧力室R1へ向かう気体の流れに対しては伸側ポート4aを閉じて逆止弁としても機能するようになっている。
【0021】
他方、圧側リーフバルブ7も複数枚の環状のリーフを積層して構成した積層リーフバルブとして構成され、仕切部材4の図1中下端に積層されて圧側ポート4bの出口端を開閉するようになっており、圧力室R2から通路3を介して圧力室R1へ向かう気体の流れに抵抗を与えるとともに、圧力室R1から圧力室R2へ向かう気体の流れに対しては圧側ポート4bを閉じて逆止弁としても機能するようになっている。
【0022】
また、スペーサ18の外周には環状であって圧側リーフバルブ6の外周側に当接するバネ受21が摺動自在に装着され、スペーサ19の外周にも同じく環状であって伸側リーフバルブ5の外周側に当接するバネ受22が摺動自在に装着されている。
【0023】
また、軸部材17の中間部17bの外周にはワッシャ状の圧側受部材23が軸方向へ移動自在に装着されており、圧側受部材23と上記バネ受21との間には、圧側附勢部材8としてのコイルバネが介装されている。
【0024】
また、この圧側受部材23の内径は、軸部材17の基端部17aの外径より小径とされており、圧側受部材23は基端部17aの図2中上端によって軸部材17に対してそれ以上の下方への移動が規制されている。
【0025】
さらに、この圧側受部材23の外径は、バルブハウジング14の小内径部14eの内径より大径とされ、軸部材17がバルブハウジング14からシリンダ外方へ抜け出る方向へ移動する場合、圧側受部材23が小内径部14eの図2中上端に衝合してシリンダ外方への移動が規制されるようになっている。
【0026】
したがって、軸部材17を回動させて送り螺子機構の要領でバルブハウジング14に対して軸部材17をシリンダ外方となる図2中下方へ移動させると、圧側受部材23が小内径部14eの上端に衝合している場合、軸部材17の下方への移動に追随せずに取り残されてバネ受21との距離が縮まって圧側附勢部材8を圧縮して、圧側附勢部材8の圧側リーフバルブ6を附勢する附勢力を大きくすることができる。また、反対に軸部材17をバルブハウジング14に対してシリンダ内方へ移動させると、圧側受部材23と小内径部14eの上端とが衝合している範囲で、圧側受部材23は軸部材17の移動に追随しないので、圧側受部材23とバネ受21との距離が伸びて、圧側附勢部材8の圧側リーフバルブ6を附勢する附勢力を小さくすることができる。
【0027】
つまり、この実施の形態の場合、圧側調節手段10は、バルブハウジング14に対してシリンダ外方側への移動を規制される圧側受部材23と、仕切部材4を保持する軸部材17とで構成されている。
【0028】
そして、この圧側調節手段10の場合、軸部材17がバルブハウジング14に対して図2中上方へ移動して、圧側受部材23がバルブハウジング14の小内径部14eの上端から離れると、圧側附勢部材8はそれ以上伸長しなくなるようになっているので、圧側附勢部材8の附勢力の下限を設定することができ、圧側附勢部材8が圧側リーフバルブ6を附勢できずに遊んでしまう心配が無い。なお、この実施の形態の場合、圧側受部材23を上記の如く、バルブハウジング14の小内径部14eの上端に衝合するワッシャとしているので、上記の如く圧側附勢部材8の附勢力の下限を設定できるが、その必要が無い場合には、圧側附勢部材をバルブハウジング14の小内径部14eを圧側受部材として、小内径部14eの上端で圧側附勢部材8の下端を直接支持するようにしてもよい。
【0029】
なお、バネ受21は、省略すること可能であるが、当該バネ受21を設けることで、圧側附勢部材8に伸縮によって端部が周方向に回転するコイルバネを採用しても、圧側リーフバルブ6を傷めることがない。
【0030】
つづいて、軸部材17内には、ロッド24が挿通されており、このロッド24は、大径の基端24aと、基端24aから立ち上がる小径な軸部24bとを備えており、基端24aの外周に設けた螺子部24cを軸部材17の基端部17aの内周に設けた螺子部17fに螺合している。
【0031】
さらに、このロッド24の軸部24bの図2中上端となる先端は、軸部材17の上端から突出する長さに設定されており、当該先端には環状の伸側受部材25が回転自在に装着されている。また、この伸側受部材25とスペーサ19の外周に装着したバネ受22との間には、伸側附勢部材7としてのコイルバネが介装されている。
【0032】
そして、軸部材17に対してロッド24を回動させると、送り螺子機構の要領でロッド24を軸部材17に対して軸方向へと進退させることができるようになっているので、このロッド24の軸部材17に対する進退によって、伸側受部材25とバネ受22との距離を変更することができ、これにより圧側調節手段10と同様に、伸側附勢部材7の伸側リーフバルブ5を附勢する附勢力を調節することができるようになっている。
【0033】
つまり、この実施の形態の場合、伸側調節手段9は、軸部材17内に挿通されるとともに基端24aが軸部材17に内周に螺合されるロッド24と、ロッド24の先端に保持される伸側受部材25とで構成されている。なお、伸側受部材25が軸部材に周方向に回転自在とされており、コイルバネを採用する伸側附勢部材7が伸縮による端部の回転を許容するので、伸側附勢部材7の附勢力を調整する際に伸側受部材25の移動が滑らかとなるとともに、バネ受22の省略しても伸側リーフバルブ5を傷めることがない。
【0034】
また、この実施の形態の場合、スペーサ18で圧側リーフバルブ6の内周を固定し、スペーサ19で伸側リーフバルブ5の内周を固定しているが、圧側リーフバルブ6および伸側リーフバルブ5の内周を固定せずに仕切部材4からリフトすることができるようにしておき、それぞれ伸側附勢部材7および圧側附勢部材8で圧側リーフバルブ6および伸側リーフバルブ5の内周を仕切部材4側へ向けて附勢する構成を採用してもよい。この場合、圧側リーフバルブ6および伸側リーフバルブ5の内周がリフト可能なため、特に、空圧緩衝器Dが高速で伸縮する際の減衰力を頭打ちにするような減衰特性を発揮することができる。
【0035】
なお、バルブハウジング14と軸部材17との間には、シールリング26が介装され、軸部材17とロッド24との間にもシールリング27が介装されており、バルブハウジング14、軸部材17、ロッド24、仕切部材4およびこれらに組み付けられる上記各部材で構成される減衰力調節部から気体が漏洩することが無いようになっている。
【0036】
なお、この実施の形態においては、バルブハウジング14に対する軸部材17の進退および軸部材17に対するロッド24の進退に際して送り螺子機構を採用しているので、流路面積を微細に調節することが可能であってシリンダ内圧の作用で軸部材17やロッド24が進退せしめられてしまうという不具合も無い点で有利であるが、他の機構を用いて軸部材17やロッド24を進退させてもよい。
【0037】
このように構成された空圧緩衝器Dは、ピストン2が図1中上方へ移動して伸長する際には、気体が圧縮される圧力室R1から通路3を介して膨張する圧力室R2へ移動する。そして、この気体の流れに、伸側リーフバルブ5で抵抗を与えて、この空圧緩衝器Dは伸側減衰力を発生する。
【0038】
そして、この空圧緩衝器Dにあっては、ロッド24を外部操作で回動させて軸部材17に対して軸方向に進退させ、伸側リーフバルブ5を附勢する伸側附勢部材7の附勢力を調節することができ、当該調節によって伸側の減衰特性を外部から変更することが可能である。
【0039】
他方、ピストン2が図1中下方へ移動して収縮する際には、気体が圧縮される圧力室R2から通路3を介して膨張する圧力室R1へ移動する。そして、この気体の流れに、圧側リーフバルブ6で抵抗を与えて、この空圧緩衝器Dは圧側減衰力を発生する。
【0040】
また、空圧緩衝器Dが収縮する場合にあっても、軸部材17を外部操作で回動させてバルブハウジング14に対して軸方向に進退させ、圧側リーフバルブ6を附勢する圧側附勢部材8の附勢力を調節することができ、当該調節によって圧側の減衰特性を外部から変更することが可能である。
【0041】
したがって、この空圧緩衝器Dによれば、シリンダ1外で二つの圧力室R1,R2を連通する通路3の途中に、伸側ポート4aと圧側ポート4bとを備えた仕切部材4を設け、仕切部材4に積層されて伸側ポート4aを開閉する伸側リーフバルブ5と、仕切部材4に積層されて圧側ポート4bを開閉する圧側リーフバルブ6と、伸側ポート4aを閉塞する方向へ伸側リーフバルブ5を附勢する伸側附勢部材7と、圧側ポート4bを閉塞する方向へ圧側リーフバルブ6を附勢する圧側附勢部材8と、伸側附勢部材7の附勢力を外部から調節する伸側調節手段9と、圧側附勢部材8の附勢力を外部から調節する圧側調節手段10とを備えて、シリンダ1外にて伸圧両側の減衰特性の調節を行うようになっているので、コスト高となるような加工、たとえば、ピストンロッド11を中空にしなければならないような加工が不要であるから、低コストで減衰特性調節を行えるようになり、経済的に有利となるとともに、ピストンロッド11の強度低下を招くこともなく、空圧緩衝器Dが大型化してしまう危惧もない。
【0042】
さらに、この実施の形態における空圧緩衝器Dによれば、バルブハウジング14をシリンダ1の端部に設けて、減衰特性を調節する各部材を収容するようにしているので、シリンダ1の強度低下を招くことがない。
【0043】
つづいて、一実施の形態の一変形例における空圧緩衝器D1について説明する。この変形例における空圧緩衝器D1にあっては、図3に示すように、バルブハウジング28の構成を変更したものである。この実施の形態におけるバルブハウジング28は、シリンダ1の内周に嵌合或いは螺合される筒部28aと、筒部28aの下端外周に設けた鍔28bとを備え、外筒15の端部を鍔28bで閉塞している。そして、この実施の形態の場合、圧側受部材23が衝合するのは、筒部28aの上端とされており、また、軸部材17は筒部28aの内周に螺合されている。
【0044】
そして、仕切部材4は、シリンダ1の内周に嵌合されて、仕切部材4より図3中下方側の部屋Aがシリンダ1の下端側部であって筒部28aで閉塞されない位置に穿設された孔1aを介して外筒15とシリンダ1との間の隙間で形成される通路3に連通されている。
【0045】
その他の構成は、一実施の形態の空圧緩衝器Dと同様であり、この空圧緩衝器D1にあっても、外部から伸圧両側の減衰特性を調節することが可能である。
【0046】
また、この変形例における空圧緩衝器D1にあっては、仕切部材4を直接シリンダ1に嵌合させるようにしているので、バルブハウジング28を軽量および小型化することができ、空圧緩衝器D1の重量を軽量にすることができる。
【0047】
最後に、一実施の形態の他の変形例における空圧緩衝器D2について説明する。この他の変形例における空圧緩衝器D2は、図4に示すように、バルブハウジング29の構成を変更したものである。この実施の形態におけるバルブハウジング29は、シリンダ1と外筒15の端部を閉塞するとともに、側方から開口する弁孔29aを備えており、当該弁孔29a内に仕切部材4、軸部材17、ロッド24といった減衰特性調節に必要な各部材を収容している。
【0048】
そして、弁孔29a内は、仕切部材4によって二つの部屋B,Cに仕切られ、空圧緩衝器D,D1と同様に、一方の部屋Bは、バルブハウジング29に設けた通孔29bおよびシリンダ1と外筒15との間の隙間を介して圧力室R1に連通されるとともに、他方の部屋Cは、バルブハウジング29に設けた通孔29cを介して圧力室R2に連通されている。すなわち、この弁孔29aは通路3の一部を成しており、上述の各実施の形態における空圧緩衝器D,D1における減衰特性調節部が言わば縦置型とされるならば、この他の変形例における空圧緩衝器D2では、減衰特性調節部が横置型に設定されているのである。
【0049】
したがって、この他の変形例における空圧緩衝器D2にあっても、一実施の形態の空圧緩衝器Dと同様に、外部から伸圧両側の減衰特性を調節することが可能である。
【0050】
また、この他の変形例における空圧緩衝器D2にあっては、減衰特性調節部が横置型に設定されて、空圧緩衝器D2の側方から軸部材17およびロッド24を回動操作することが可能とされているので、空圧緩衝器D2を車両の車体と車軸との間に介装したまま減衰特性を調節することができる。
【0051】
なお、上記した実施の形態では、ピストン2に圧力室R1と圧力室R2とを連通するとともに通過気体に抵抗を与える流路を設けていないが、このような流路を設けるようにしてもよい。
【0052】
さらに、上記したところでは、伸側附勢部材7および圧側附勢部材8をコイルバネとしているが、ゴムや他のバネといった弾性体をしてもよい。
【0053】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】一実施の形態における空圧緩衝器の概略縦断面図である。
【図2】一実施の形態の空圧緩衝器の減衰特性調節部における拡大縦断面図である。
【図3】一実施の形態の一変形例における空圧緩衝器の減衰特性調節部の拡大縦断面図である。
【図4】一実施の形態の他の変形例における空圧緩衝器の減衰特性調節部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 シリンダ
2 ピストン
3 通路
4 仕切部材
4a 伸側ポート
4b 圧側ポート
4c,26,27 シールリング
5 伸側リーフバルブ
6 圧側リーフバルブ
7 伸側附勢部材
8 圧側附勢部材
9 伸側調節手段
10 圧側調節手段
11 ピストンロッド
12 ヘッド部材
12a ヘッド部材における段部
12b ヘッド部材における流路
13 ベアリング
14,28,29 バルブハウジング
14a バルブハウジングにおける小径部
14b バルブハウジングにおける嵌合部
14c バルブハウジングにおける大径部
14d バルブハウジングにおける大内径部
14e バルブハウジングにおける小内径部
14f バルブハウジングにおける螺子部
14g バルブハウジングにおける段部
14h バルブハウジングにおける孔
15 外筒
16 シール部材
17 軸部材
17a 軸部材における基端部
17b 軸部材における中間部
17c 軸部材における小径部
17d,17e,17f 軸部材における螺子部
18,19 スペーサ
20 ナット
21,22 バネ受
23 圧側受部材
24 ロッド
24a ロッドにおける基端
24b ロッドにおける軸部
24a ロッドにおける螺子部
25 伸側受部材
28a バルブハウジングにおける筒部
28b バルブハウジングにおける鍔
29a バルブハウジングにおける弁孔
29b,29c バルブハウジングにおける通孔
A,B,C 部屋
D,D1,D2 空圧緩衝器
R1,R2 圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内に二つの圧力室を隔成するピストンとを備えた空圧緩衝器において、シリンダ外で二つの圧力室を連通する通路と、通路の途中に設けられて伸側ポートと圧側ポートとを備えた仕切部材と、仕切部材に積層されて伸側ポートを開閉する伸側リーフバルブと、仕切部材に積層されて圧側ポートを開閉する圧側リーフバルブと、伸側ポートを閉塞する方向へ伸側リーフバルブを附勢する伸側附勢部材と、圧側ポートを閉塞する方向へ圧側リーフバルブを附勢する圧側附勢部材と、伸側附勢部材の附勢力を外部から調節する伸側調節手段と、圧側附勢部材の附勢力を外部から調節する圧側調節手段とを設けたことを特徴とする空圧緩衝器。
【請求項2】
シリンダの端部に設けられ内部が通路に連通される中空なバルブハウジングを設け、仕切部材は環状であってバルブハウジングの端部に螺合される筒状の軸部材に固定されるとともにバルブハウジング内を一方の圧力室側と他方の圧力室側に仕切り、伸側調節手段は、軸部材内に挿通されるとともに基端が軸部材に内周に螺合されるロッドと、ロッドの先端に保持される伸側受部材とを備えて、ロッドを外部から回動操作して軸部材に対して進退させることによって伸側リーフバルブと伸側受部材との間の距離を調節して当該伸側リーフバルブと伸側受部材との間に介装される伸側附勢部材における附勢力を調節可能とされ、圧側調節手段は、バルブハウジングに対してシリンダ外方側への移動を規制される圧側受部材を備え、軸部材を外部から回動操作してバルブハウジングに対して進退させることによって圧側リーフバルブと圧側受部材との距離を調節して当該圧側リーフバルブと圧側受部材との間に介装される圧側附勢部材における附勢力を調節可能とされてなることを特徴とする請求項1に記載の空圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−133467(P2009−133467A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312075(P2007−312075)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】