説明

空気および水を使用して合成ガスを製造するための電気化学的セル

本発明は、ナトリウム電導電気化学的セル(10)を使用した、大気中の空気から得られる二酸化炭素と水とから合成ガスを合成する方法に関する。合成ガスは固体酸化物燃料セル又は固体酸化物電気化学的セル内で、二酸化炭素と水蒸気との共電解質により合成される。製造された合成ガスは、後加工され、輸送や他の使用に好適なように最終的に液体燃料に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2005年8月25日出願の米国仮特許出願60/711252号(の米国特許庁に提出した仮出願に基づく優先権を主張した出願であり、本発明に参照として引用される。本発明は、容易に入手できる前駆体から合成ガスを製造する方法に関し、詳しくはその合成ガスは空気と水から製造される。
【背景技術】
【0002】
ガソリンやディーゼル(一般消費物品)、JP−8やF−76や他の燃料(軍事用物品)などの燃料は、エンドユーザーへの輸送・配送のためのインフラ整備を確立するために広範囲な分野において利点を有し、使用されている。そして、インフラの存在によって、液体燃料を使用する自動車から軍用機までの技術発展を可能とする。しかしながら、インフラによってまかなわれる地域内において、このような液体燃料システムに頼ることが疑問視されるようになってきている。
【0003】
ある利用分野においては、このような液体燃料製品の利用に頼り続けることは、得策ではない。そのような利用分野としては、標準的な供給システムや供給源から離れた場所の発展途上地域や軍事活動地域における工業・商業利用が含まれる。広大な海軍派遣団の軍事後方支援などの分野において、液体燃料製品の安定した十分な供給の保証は非常に重要であり且つ非常に難しい。オール電化の船や飛行機が計画されているものの、これらの実施基盤への歩みは遅く、実現化されるのはかなり先であると予測される。液体燃料からの移行は、飛行機のようなより小さい装置と比較して航空母艦のようなより大きな装置においては原子力の採用がより単純でありすぐに採用可能であることは明らかである。
【0004】
したがって、近い将来までは液体燃料システムに頼り続けるであろう。そのため、電気およびどこでも共通に得ることが出来る原料を使用した液体燃料の発生のための新しい方法およびシステムを供給することにより、その現場で使用でき、長い供給チェーンの臨界地区を減らすことが出来るという利点がある。
【0005】
上記の方法およびシステムを本発明により提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、燃料製品または他の製品のための合成ガスの製造方法およびシステムに関する。本発明の製造方法およびシステムは、共通に入手できる資源を原料とし、電気を使用し、製品としての合成ガスを供給するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、合成ガスを製造するための電気化学的セルに関する。本発明の1実施態様として、電気化学的セルは、電気化学的に活性なアノードを有するアノード室を有する。アノードにおいて水を分解して酸素イオンと水素イオンが発生する。酸素は捕捉されてアノード室から除去されることが好ましい。供給される炭酸ナトリウム源は、水素イオンと反応し、分解して二酸化炭素、水およびナトリウムイオンを生じる。二酸化炭素は捕捉され、除去されることが好ましい。
【0008】
本発明の1実施態様として、アノード室は水素イオンを透過させるセパレーターによって分離された中間室を形成する。水素イオンを透過させるセパレーターはミクロポーラスセパレーター、陽イオン交換膜、メッシュ又は篩である。アノード室は必ずしもセパレーターによって分離されている必要はないが、セパレーターによって酸素および二酸化炭素を捕捉・除去しやすくなる。そして、後の酸素から二酸化炭素を分離する工程を省略することが出来る。
【0009】
本発明の1実施態様として、電気化学的セルは、電気化学的に活性なカソードを有するカソード室を有し、カソード室はNaイオンを透過することが出来る膜によってアノード室または中間室から隔離されている。Naイオンを透過する膜は、好ましくはナトリウム超イオン導電体セラミック材料から成る膜、陽イオン交換膜、またはその他の同様の膜から成る。
【0010】
カソード室内で水は還元され、水素と水酸基イオンが生じる。水酸基イオンはナトリウムイオンと結合して水酸化ナトリウムを形成する。水素ガスは捕捉され、カソード室から除去される。
【0011】
本発明のシステム及び方法では、二酸化炭素と水素とから一酸化炭素と付加水素とから成る合成ガスを得る反応を容易にする手段を有する。このような手段としては、二酸化炭素と水素との混合物に露出させた触媒が挙げられる。触媒としては、水性ガスシフト反応触媒、フィッシャー・トロプシュ触媒などが挙げられる。二酸化炭素と水素との混合物は、均一ガス相の等量反応を達成するために加熱されてもよい。二酸化炭素と水素とから合成ガスを得る反応を容易にする手段は、混合ガスを構成する水素と一緒に、一酸化炭素を形成するための二酸化炭素の発生のための酸素イオン伝導電解質セルであってもよい。
【0012】
上記の実施態様では、炭酸ナトリウムがカソード室から除去され、二酸化炭素源と反応して炭酸ナトリウムを形成し、アノード質で分解された炭酸ナトリウムの再補給として使用されることが好ましい。二酸化炭素源としては、特に限定されないが、空気から得られる二酸化炭素、燃焼ガスから得られる二酸化炭素、好気性分解から得られる二酸化炭素が挙げられる。
【0013】
電気化学的セルは、2極板によって分離された複数の電気化学的セル積層体であってもよい。セル積層体を使用することにより、合成ガスの大量生産を可能とする。
【0014】
電気化学的セルを使用した方法は、1/2HO→1/4O+H+eの反応に従ってアノード室内で水を分解することによって合成ガスを製造する工程およびアノード室から酸素を除去する工程を含む。NaCOとHイオンは、H+1/2NaCO→1/2CO+1/2HO+Naの反応に従ってアノード室で反応する。この反応は、アノード室内で且つアノードから距離を置いた場所で行われる。上記方法は、二酸化炭素ガ発生し、Naイオンをアノード室からカソード室に移送する場所の近傍においてアノード室から二酸化炭素を除去する工程を含む。水は、カソード室内でNa+HO+e→NaOH+1/2Hの反応に従って分解される。発生した水素はカソード室内からを除去される。捕捉された二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素と水素とから成る合成ガスを形成する。発生したNaOHはカソード室内から除去され、二酸化炭素と反応させてNaCOを形成し、水素イオンと反応して消費されたNaCOの再補給のために、アノード室に移送される。
【0015】
本発明の他の実施態様は、合成ガスの製造における二酸化炭素と水蒸気との共電解質のための電気化学的装置である。この電気化学的装置は、酸素イオン電導膜、酸素イオン電導膜に接するカソード及び酸素イオン電導膜のカソード反対側面に接するアノードから成る。カソードは、水蒸気を水素イオンと酸素イオンとに還元できる電気化学的活性を有する。アノードは、酸素イオンを再結合して酸素を形成する電気化学的活性を有する。
【0016】
原料水蒸気および二酸化炭素をHO+2e→H+O2−及びCO+2e→CO+O2−の反応を生じる状態のカソードに接触させる。一酸化炭素と水素とから成る合成ガスがカソードにおいて捕捉・回収され、酸素イオンが酸素イオン電導膜を介してアノードに移送されて再結合して酸素を形成して捕捉・回収される。
【0017】
カソードは好ましくは酸化ニッケルと他の酸化物との混合物から成る。1実施態様において、カソードは、第1の金属酸化物と、酸化ニッケルの固溶体と、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化銅およびこれらの混合物から成る群より選択される第2の金属酸化物とから成る。第2の金属酸化物の含有量は、好ましくは酸化ニッケルの量の1〜50モル倍である。1実施態様において、第1の金属酸化物が、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたジルコニアから成る。1実施態様において、第1の金属酸化物が、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたセリアから成る。1実施態様において、第1の金属酸化物が、ストロンチウム、マグネシウム、鉄およびコバルトから選択される1種以上の元素でドープされたランタン−ガリウム酸化物から成る。カソードは、好ましくはPr、Co、Ce、Eu、他の希土類元素およびこれらの混合物から成る群より選択される触媒を表面に分散させた構成を有する。
【0018】
アノードは、好ましくはペロブスカイト及びアノード酸化物の混合物から成る。1実施態様において、アノードは、ペロブスカイト及びアノード酸化物の混合物から成り、ペロブスカイトが(Pr1−xLaz−yBO3−δの式で表され、式中AはSr、Ca又はそれらの混合物を表し、BはMn、Co、Fe又はそれらの混合物である遷移金属を表し、x、y、zはそれぞれ0≦x≦1.0、0≦y≦0.5、0.8≦z≦1.1であり、δは酸素非化学量論的値であり、アノード酸化物が、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたジルコニアと、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム及び酸化ジルコニウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたセリアとから成る群より選択される。好ましい態様はペロブスカイトがPr0.8Sr0.2MnO3−δの式で表される。アノードは、好ましくはPr,Co、Ce、Eu、他の希土類元素、Sr,Ca及びこれらの混合物から成る群より選択される触媒を表面に分散させて成る。
【0019】
原料二酸化炭素(二酸化炭素源)は、好ましくは空気から得られる二酸化炭素、燃焼ガスから得られる二酸化炭素または好気性分解から得られる二酸化炭素である。
【0020】
本発明の他の効果および要旨は、以下の図面および詳細な説明の記載により明らかになるであろう。これら及び他の要旨および効果は、以下の図面、記載、特許請求の範囲からより詳細に明らかになり、また、以下に示す発明を実践することによりわかるであろう。
【発明の効果】
【0021】
本発明の燃料製品または他の製品のための合成ガスの製造方法およびシステムは、共通に入手できる資源を原料とし、電気を使用し、製品としての合成ガスを供給することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の上述の要旨、他の要旨および効果について、上記の本発明の要約を、以下の具体的な実施態様を参照して更に詳しく説明するが、これらは図面における例示であると考えるべきである。本発明はこれらの図面に記載の実施態様に限定されるものではなく、これらの図面を介して更に種々の具体的実施態様が記載され、説明されると考えるべきである。
【0023】
また、以下に記載する本発明の具体的な好ましい態様は図面を参照することにより、種々の具体的態様が与えられると考えられるべきである。そして、図面に一般的に記載した本発明の構成要素は、種々の異なる構成に変更したり設計したりすることも出来る。従って、以下の、図1〜6に示す本発明の燃料用または他の用途の合成ガス製造のための方法、システムの実施態様における詳細な説明は、本発明を限定するものではなく、本発明の代表例を記載したと理解すべきである。
【0024】
本発明の製造方法の第1の実施態様において、COとHとの混合物から成る「Syngas」として知られている合成ガスの製造方法を説明する。この製造方法10は、図1に模式的に示している。製造方法10は2室電気化学的セル12を使用する。電気化学的セル12はアノード室14とカソード室16を有する。ナトリウム電導膜18は、アノード室14とカソード室16とを分離する。好適なナトリウム電導膜としては、NaSICON(ナトリウム超イオン電導)セラミック膜ならびに当業者に公知の他のセラミック膜、陽イオン交換膜などが挙げられる。
【0025】
アノード室14は電気化学的活性なアノード20と原料の水を有し、以下の式(1)の反応に従って水を分解する。
【0026】
1/2HO→1/4O+H+e (1)
【0027】
製造方法10において、炭酸ナトリウム(NaCO)は、電気化学的セル12のアノード室14内で以下の式(2)の反応に従って二酸化炭素(CO)を生成する。
【0028】
+1/2NaCO→1/2CO+1/2HO+Na (2)
【0029】
二酸化炭素は捕捉され、アノード室14から除去される。炭酸ナトリウム源はアノード14に十分に接近した場所で供給され、炭酸ナトリウムは水素イオン(H)と溶液中で反応する。炭酸ナトリウムは又、アノード14で発生する酸素および炭酸ナトリウムの分解で生じる二酸化炭素の分離・除去を容易にするため、アノードから十分な距離を置くことが好ましい。炭酸ナトリウムはセル12に直接供給されてもよく、以下の式(3)に従う水酸化ナトリウムと二酸化炭素との反応によって得られるものを代りに使用してもよい。
【0030】
NaOH+1/2CO→1/2NaCO+1/2HO (3)
【0031】
二酸化炭素の供給源としては、これに限るものではないが、大気中の空気、燃焼ガス、好気性ガス等が挙げられる。好気性ガスとしては、廃棄物を含む種々の有機物の分解により天然に得られるガスを含む。
【0032】
カソード室16は、電気化学的活性なカソード22と原料の水を有し、以下の式(4)の反応に従って水が還元される。
【0033】
Na+HO+e→NaOH+1/2H (4)
【0034】
水素は捕捉され、カソード室から除去される。水酸化ナトリウム(NaOH)は、図2のNaOH流24に示すように、カソード室から任意に捕捉・除去される。上述のように水酸化ナトリウムは二酸化炭素源26と反応させて炭酸ナトリウムとして図2に示すように炭酸ナトリウム源28としてアノード室にリサイクルさせてもよい。
【0035】
2室セル12に電位差を負荷させることにより、水と炭酸ナトリウムは分解し、酸素流30と水素流34とを形成する。カソード22における水の還元は、水酸基イオンと水素ガス流34とを発生する。ナトリウムイオンは、セル12のアノード室14側から膜18を介してカソード側(カソード室16)へ移送され、反応式(4)に示すように水の還元によって生じた水酸基イオンと反応して水酸化ナトリウム水溶液を形成する。
【0036】
電気化学的セルを作動中、酸素と二酸化炭素はガス流30、32又はそれらが混合された合成ガス36として図2に示すように捕捉される。二酸化炭素セパレーター38における二酸化炭素の分離としては、当業者公知の種々の方法が採用できる。そのような方法としては、これに限定されないが、活性炭またはモレキュラーシーブズを使用してカソード14から除去されたガスから炭酸ガスを吸収する方法が挙げられる。このような方法としては、継続使用する前に、ガスが十分吸着した層をガス流の外に循環させてガスを除去するように循環できる多層吸収床を使用する方法である。他の方法としては、酸素と二酸化炭素とを選択的に透過できる高分子膜を使用して分離する方法や、洗浄機内のアミン溶液などの二酸化炭素吸収流体中にガス流36を存在させる方法などが挙げられる。酸素はイットリウム安定ジルコニア(YSZ)等の酸素電導膜に二酸化炭素と酸素との混合ガスを透過させて酸素を抽出することにより、酸素を二酸化炭素から分離する。酸素を二酸化炭素から分離する他の方法として、当業者に公知で本発明の要旨の範囲内の方法が採用できる。
【0037】
電気化学的セル12の実施態様のカソード室16は、水とカソード物質である水酸化ナトリウムとを有する。カソード室16において、水はナトリウムイオンの存在により還元されて水素ガス34を放出し、水酸化ナトリウムが形成される。すなわち、電気化学的セル12内では、以下に示す化学反応が行われる。
【0038】
アノードにおいては、HO→1/2O+2H+2e、2H+NaCO→CO+HO+2Na、従って、アノード全体として、NaCO(aq)→CO+1/2O+2Na+2eとなる。
【0039】
カソードにおいては、2Na+2HO+2e→2NaOH+Hとなる。
【0040】
全体としては、NaCO+2HO→2NaOH+CO+H+1/2Oとなる。
【0041】
アノード室14からの二酸化炭素流32とカソード室16からの水素流34とは合わせられ、更に反応させて二酸化炭素を一酸化炭素に変換し、合成ガス40が形成される。二酸化炭素と水素とは反応して合成ガス混合物40(CO+H)が形成される。合成ガスは以下の1つ又はそれ以上の式に従って二酸化炭素と水素とから得られる。
【0042】
CO+2e→CO+O2− (5)
【0043】
CO+H→CO+HO (6)
【0044】
このような合成ガス40は、二酸化炭素と水を相当量含む。従って、二酸化炭素と水素との反応を容易にして合成ガスを形成する手段が必要となる。そのような手段としては、図2に示すように二酸化炭素と水素との混合ガスに触媒を露出させた触媒反応器42が好ましい。触媒としては、シフト触媒、リバースシフト触媒としても知られる水性ガスシフト触媒が挙げられる。触媒はフィッシャー・トロプシュ触媒から成っていてもよい。均一ガス相の等量反応を容易にするために二酸化炭素と水素との混合物を加熱してもよい。他の二酸化炭素と水素との反応により合成ガスを形成するのを容易にする手段としては、酸素イオン電導電解質セル44から成り、二酸化炭素の電解質を発生させ、一酸化炭素と酸素との形成を容易にする。一酸化炭素は水素と共に捕捉され、合成ガスを形成する。
【0045】
図3は、酸素イオン電導電解質セルの模式図を示す。セル44は酸素イオン電導膜46を有する。酸素イオン電導を容易にするものとしては種々使用でき、例えば(これに限定されないが)、イットリウム安定ジルコニア(YSZ)が挙げられる。一酸化炭素製造用二酸化炭素解質のための電気化学的装置は、カソード48に接する二酸化炭素源を有する。カソード48は酸素イオン電導膜のカソード側面に接しており、上記式(5)に従った二酸化炭素を還元して一酸化炭素と酸素イオンとを形成する電気化学的活性を有する。一酸化炭素はカソードにおいて捕捉・回収される。酸素イオンは酸素イオン電導膜を介してアノード50に移送される。アノード50は、酸素イオン電導膜42のカソード反対側面に接しており、以下の式(7)に示すように酸素イオンを再結合して酸素分子にする電気化学的活性を有する。
【0046】
2−→1/2O+2e (7)
【0047】
カソード48とアノード50は、酸素イオン電導膜46のカソード側表面、カソード48、酸素イオン電導膜アノード側表面46、アノード50において、二酸化炭素、酸素および他のガス状物質が反応し製造されるような拡散を可能とする十分な浸透性を有するべきである。酸素イオン電導電解質セル44に電位差を負荷することにより、二酸化炭素は一酸化炭素と酸素に還元される。そして、一酸化炭素流52と酸素流54とを形成する。カソード48における二酸化炭素の還元は酸素イオンと一酸化炭素流52とを発生させる。酸素イオンは膜46を介してカソード48からアノード50に移送され、上記式(7)に従って再結合して酸素となる。
【0048】
カソード48及びアノード50に使用される材料および構成は、以下の図6に示すカソード及びアノードに関連しており、同じ又は類似である。
【0049】
更に、公知の適当な製造方法を利用して、合成ガス混合物40から液体炭化水素燃料を製造する。そのような合成ガス40を液体燃料に変換する公知の製造方法としては、合成ガス40を鉄またはコバルト触媒の存在下で反応させ、液体炭化水素燃料を製造するフィッシャー・トロプシュ法が挙げられる。フィッシャー・トロプシュ法の変形法を含む他の好適な製造方法としては、当業者に公知の本発明で使用できる方法が採用できる。ここで液体炭化水素燃料とは、メタン、エタン、プロパン、ブタンのような常温常圧で気体であるが加圧下または低温下で液化するような低級炭化水素も含む。代表的なフィッシャー・トロプシュ法による生成物は、すべて燃料として価値のある炭化水素鎖長の広い分布を有する。
【0050】
本発明の製造方法およびシステムは、通常容易に入手できる材料を使用した電気化学的セル12の補充面も可能にする。図2と関連するが、カソード室16で発生するNaOHは、NaOH流24によってリサイクルされ、大気中の二酸化炭素などと自然反応させて(加熱により反応促進)、炭酸ナトリウムを生成する。再発生した炭酸ナトリウム又は他の炭酸ナトリウム流28は、アノード室14内で消費した炭酸ナトリウムの代りとして再補充される。この製造方法を速めるための種々の公知の方法が採用できる。一方カソード室16において、水56を添加することによって補充される。炭酸ナトリウム再発生工程を行わずに炭酸ナトリウムを直接供給してもよい。したがって、本発明の製造方法のこの実施態様において必要なものは、電力と二酸化炭素源または大気中の空気から得られる二酸化炭素と水であり、これだけで合成ガスを発生できる。
【0051】
本発明の他の実施態様では、セルが3室電気化学的セル60である。図4に示すセル60はセル12と似ているが、アノード室14がHイオンを透過できるセパレーター62を有する点が異なる。好適なセパレーターとしては、ミクロポーラスセパレーター、陽イオン交換膜、メッシュ、篩などが挙げられる。この実施態様においてセパレーター62は、セパレーター62とナトリウム電導膜18との間の中間室64を形成する。炭酸ナトリウムは上記式(2)に従って、中間室で分解される。3室電気化学的セルは、生成ガス、酸素、二酸化炭素および水素の捕捉・分離・除去を容易にする。酸素から二酸化炭素を分離する工程を必要としない。更に、3室電気化学的セルを複数用意し、2極板で分離しながら積層または連結することにより、合成ガス製造に使用する二酸化炭素と水素の量を大きくすることに効果がある。
【0052】
本発明の他の実施態様として、合成ガス40は二酸化炭素と水蒸気の共電解質によって製造される。図5は、この製造方法の流れ図を示す。この製造方法100において、二酸化炭素流102は上述の二酸化炭素源から供給される。二酸化炭素源は上述のガスセパレーターを有し、大気中の空気から二酸化炭素を分離する。製造方法100は、更に水蒸気流106を有し、水蒸気源108より供給される。二酸化炭素流102と水蒸気流106は固体酸化物電解質セル(SOEC)110に送られる。電力120と必要な熱がセル110に供給され、以下の式(5)、(8)及び(7)で示す反応を生じさせる。
【0053】
CO+2e→CO+O2− (5)
【0054】
O+2e→H+O2− (8)
【0055】
2−→1/2O+2e (7)
【0056】
以下の式(6)で示される反応もSOEC110内で生じるかもしれない。
【0057】
CO+H→CO+HO (6)
【0058】
SOECにおける全体の反応は式(9)となる。
【0059】
O+CO→H+CO+O (9)
【0060】
SOEC110内では、図3に示した上述の電解質セル44と同様に酸素イオン電導電解質セル140により供給される二酸化炭素102と水(水蒸気)106とから酸素を脱離させる。図6は、酸素イオン電導膜142を有する電解質セル140を示す。酸素イオン電導を容易にする材料としては、特にこれに限定されないが、イットリウム安定ジルコニア(YSZ)が挙げられる。カソード144は、酸素イオン電導膜142の表面に接続されており、上記式(5)に従って二酸化炭素を還元して一酸化炭素と酸素イオンとを生成する電気化学的性能および上記式(8)に従って水(水蒸気)を水素ガスと酸素イオンとに還元する電気化学的性能を有する。アノード146は、酸素イオン電導膜142のカソード側と反対側に接続しており、上記式(7)に従って酸素イオンを再結合させて酸素分子とする電気化学的性能を有する。
【0061】
カソード144及びアノード146は、酸素イオン電導膜カソード側142の表面、カソード144、酸素イオン電導膜アノード側表面142、アノード146において、二酸化炭素、水蒸気、酸素および他のガス状物質が反応し製造されるような拡散を可能とする十分な浸透性を有するべきである。
【0062】
酸素イオン電導電解質セル140に電位差を負荷することにより、二酸化炭素と水は還元されて一酸化炭素、水素および酸素となる。そして、一酸化炭素流150、水素流152および酸素流154を形成する。カソード144における二酸化炭素と水の還元により、酸素イオンおよび一酸化炭素流150並びに水素流152が発生する。酸素イオンは、膜142を介してカソード144からアノード146に移送され、上記式(7)に従って再結合して酸素を生成する。
【0063】
更に、公知の適当な製造方法を利用して、合成ガス混合物40から液体炭化水素燃料を製造する。
【0064】
二酸化炭素と水蒸気は、酸素イオン電導膜のカソード144において還元される。酸素イオンは、酸素イオン電導膜142を透過してアノード146で酸素ガスとなる。SOEC110は酸素の流出122を行う。本発明の製造方法10と同様に、製造方法100は酸素の流出122と、それとは分離された一酸化炭素と水素とから成る合成ガス流124を生じる。酸素は特別な分離を行わなくても高純度である。上述のように、公知の適当な製造方法および装置を利用して、合成ガス混合物124から液体炭化水素燃料を製造する。
【0065】
アノードはペロブスカイト及びアノード酸化物の混合物から成る。1実施態様において、ペロブスカイトとアノード酸化物との体積比(Voxide)が0≦Voxide≦70%である。ペロブスカイトは(Pr1−xLaz−yBO3−δの式で表され、式中AはSr、Ca又はそれらの混合物を表し、BはMn、Co、Fe又はそれらの混合物である遷移金属を表し、x、y、zはそれぞれ0≦x≦1.0、0≦y≦0.5、0.8≦z≦1.1であり、δは酸素非化学量論的値であり、アノード酸化物が、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたジルコニアと、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム及び酸化ジルコニウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたセリアとから成る群より選択される。1実施態様においてジルコニア及びセリアに対する酸化物のドープ量は約2〜15モル%である。
【0066】
カソードは好ましくは酸化ニッケルと他の酸化物との混合物から成る。1実施態様において、酸化ニッケルは酸化マグネシウムを有する固溶体である。カソード固溶体は、酸化ニッケルに対して約1〜25モル%の酸化マグネシウムを含有する。セルの作動中に、酸化ニッケルはニッケルに還元される。カソード酸化物としては、ジルコニア、セリア又はそれらの混合物である。カソード酸化物がジルコニアの場合、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたジルコニアであってもよい。カソード酸化物がセリアの場合、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたセリアであってもよい。
【0067】
アノード及びカソードは、触媒物質を浸透させたものであってもよい。すなわち、Pr、Co、Ce、Eu、他の希土類元素およびこれらの混合物から成る群より選択される触媒を表面に分散させた構成を有してもよい。触媒は、更にSr及びCaの1つ以上を含んでもよい。触媒は、水または有機溶媒に可溶な塩として浸透させてもよい。また、触媒は酸化物粒子として浸透させてもよい。
【0068】
水蒸気源および二酸化炭素源は、HO+2e→H+O2−、CO+2e→CO+O2−及びCO+H→CO+HOの反応が起きるような条件でカソード144に接触させ、カソードにおいて一酸化炭素と水素とから成る合成ガスを捕捉・回収し、酸素イオンは、酸素イオン電導膜を介してアノードに移送され、再結合して酸素を生成し、捕捉・回収させる。
【0069】
以上、本発明の実施態様を記載したが、本発明の要旨を大きく逸脱することなく、上記の実施態様について種々の変更が可能であることは明らかであり、それらは本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の合成ガスを発生する2室電気化学的セルの模式図
【図2】本発明の電気化学的セルにおいて、NaOHのリサイクル、NaCOの再発生およびCOの捕捉・分離を示した模式図
【図3】合成ガス発生に好適な酸素イオン電導電解質セルの模式図
【図4】本発明の合成ガスを発生する3室電気化学的セルの模式図
【図5】水蒸気と二酸化炭素との共電解質から合成ガスを製造する合成ガス発生システムの模式図
【図6】合成ガス製造に好適な他の酸素イオン電導電解質セルの模式図
【符号の説明】
【0071】
10:本発明の製造方法
12:2室電気化学的セル
14:アノード室
16:カソード室
18:ナトリウム電導膜
20:アノード
22:カソード
24:NaOH流
26:二酸化炭素源
28:炭酸ナトリウム源
30:酸素流
32:二酸化炭素流
34:水素流
36:ガス流
38:二酸化炭素セパレーター
40:合成ガス
42:酸素イオン電導膜
44:酸素イオン電導電解質セル
46:酸素イオン電導膜
48:カソード
50:アノード
52:一酸化炭素流
54:酸素流
56:水
60:3室電気化学的セル
62:セパレーター
64:中間室
100:本発明の他の製造方法
102:二酸化炭素流
106:水蒸気流
108:水蒸気源
110:固体酸化物電解質セル(SOEC)
120:電力
122:酸素の流出
124:合成ガス流
140:電解質セル
142:酸素イオン電導膜
144:カソード
146:アノード
150:一酸化炭素流
152:水素流
154:酸素流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード室と、中間室と、カソード室と、二酸化炭素と水素とから一酸化炭素と水素とから成る合成ガスを得る反応を容易にする手段とから成る合成ガス発生電気化学的セルであって、アノード室は、1/2HO→1/4O+H+eで示される水の分解反応における反応原料である水を有する電気化学的に活性なアノードを有し、且つOを捕捉してアノード室から除去する機能を有し、中間室はHイオンを透過することが出来るセパレーターによってアノード室と隔離され、且つNaCO→1/2CO+1/2HO+Naで示される炭酸ナトリウムの分解反応における原料炭酸ナトリウムとHイオンとを有し、更に炭酸ガスを捕捉して中間室から除去する機能を有し、カソード室はNaイオンを透過することが出来る膜によって中間室から隔離された電気化学的に活性なカソードを有し、且つNa+HO+e→NaOH+1/2Hで示される水の分解反応における反応原料である水とNaイオンを有し、更にHと水酸化ナトリウムとを捕捉してカソード室から除去する機能を有することを特徴とする電気化学的セル。
【請求項2】
原料炭酸ナトリウムがカソード室から除去した水酸化ナトリウムと原料二酸化炭素との反応により得られる請求項1に記載の電気化学的セル。
【請求項3】
原料二酸化炭素が空気から得られる請求項2に記載の電気化学的セル。
【請求項4】
原料二酸化炭素が燃焼ガスから得られる請求項2に記載の電気化学的セル。
【請求項5】
原料二酸化炭素が好気性分解から得られる請求項2に記載の電気化学的セル。
【請求項6】
二酸化炭素と水素とから合成ガスを得る反応を容易にする手段が、二酸化炭素と水素との混合物に露出させた触媒である請求項1に記載の電気化学的セル。
【請求項7】
触媒が水性ガスシフト反応触媒である請求項6に記載の電気化学的セル。
【請求項8】
触媒がフィッシャー・トロプシュ触媒である請求項6に記載の電気化学的セル。
【請求項9】
均一ガス相の等量反応を達成するために二酸化炭素と水素との混合物を加熱する請求項6に記載の電気化学的セル。
【請求項10】
二酸化炭素と水素とから合成ガスを得る反応を容易にする手段が、更に一酸化炭素を形成するための二酸化炭素の発生のための酸素イオン伝導電解質セルを有する請求項6に記載の電気化学的セル。
【請求項11】
電気化学的セルが2極板によって分離された複数の電気化学的セル積層体である請求項1に記載の電気化学的セル。
【請求項12】
Naイオンを透過する膜がナトリウム超イオン導電体セラミック材料から成る請求項1に記載の電気化学的セル。
【請求項13】
イオンを透過させるセパレーターが、ミクロポーラスセパレーター、陽イオン交換膜、メッシュ又は篩である請求項1に記載の電気化学的セル。
【請求項14】
1/2HO→1/4O+H+eの反応に従って電気化学的に活性なアノードから成るアノード室内で水を分解する工程と、アノード室から酸素を除去する工程と、アノード室から中間室にHイオンを移送する工程と、H+1/2NaCO→1/2CO+1/2HO+Naの反応に従って中間室内でNaCOとHイオンとを反応させる工程と、中間室から二酸化炭素を除去する工程と、中間室からカソード室にNaイオンを移送する工程と、Na+HO+e→NaOH+1/2Hの反応に従って電気化学的に活性なカソードから成るカソード室内で水を分解する工程と、カソード室内から水素を除去する工程と、カソード室内からNaOHを除去する工程と、二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素と水素とから成る合成ガスを形成する工程とから成る合成ガス製造のための電気化学的方法。
【請求項15】
カソードから除去されるNaOHを原料二酸化炭素と反応させてNaCOを形成する請求項14に記載の電気化学的方法。
【請求項16】
原料二酸化炭素が空気、燃焼ガス又は好気性分解から得られる請求項15に記載の電気化学的方法。
【請求項17】
酸素イオン電導膜と、酸素イオン電導膜に接しており且つ水蒸気を水素イオンと酸素イオンとに還元できる電気化学的活性なカソードと、酸素イオン電導膜のカソード反対側面に接しており且つ酸素イオンを再結合して酸素分子に出来る電気化学的活性なアノードと、CO+2e→CO+O2−の反応を生じる状態のカソードに接触させる原料二酸化炭素とから成る一酸化炭素製造のための二酸化炭素電解質用電気化学的装置であって、一酸化炭素はカソードにおいて捕捉・回収され、酸素イオンが酸素電導膜を介してアノードへ移送しされて再結合して酸素を形成して捕捉・回収されることを特徴とする一酸化炭素製造のための二酸化炭素電解質用電気化学的装置。
【請求項18】
カソードが酸化ニッケルと他の酸化物との混合物から成る請求項17に記載の電気化学的装置。
【請求項19】
アノードがペロブスカイト(灰チタン石)と酸化物との混合物から成る請求項17に記載の電気化学的装置。
【請求項20】
カソードが第1の金属酸化物と、酸化ニッケルの固溶体と、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化銅およびこれらの混合物から成る群より選択される第2の金属酸化物とから成り、第2の金属酸化物の含有量が、酸化ニッケルの量の1〜50モル倍である請求項17に記載の電気化学的装置。
【請求項21】
第1の金属酸化物が、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたジルコニアから成る請求項20に記載の電気化学的装置。
【請求項22】
第1の金属酸化物が、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたセリアから成る請求項20に記載の電気化学的装置。
【請求項23】
第1の金属酸化物が、ストロンチウム、マグネシウム、鉄およびコバルトから選択される1種以上の元素でドープされたランタン−ガリウム酸化物から成る請求項20に記載の電気化学的装置。
【請求項24】
カソードが、Pr、Co、Ce、Eu、他の希土類元素およびこれらの混合物から成る群より選択される触媒を表面に分散させた構成を有する請求項17に記載の電気化学的装置。
【請求項25】
アノードが、ペロブスカイト及びアノード酸化物の混合物から成り、ペロブスカイトが(Pr1−xLaz−yBO3−δの式で表され、式中AはSr、Ca又はそれらの混合物を表し、BはMn、Co、Fe又はそれらの混合物である遷移金属を表し、x、y、zはそれぞれ0≦x≦1.0、0≦y≦0.5、0.8≦z≦1.1であり、δは酸素非化学量論的値であり、アノード酸化物が、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたジルコニアと、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム及び酸化ジルコニウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたセリアとから成る群より選択される請求項17に記載の電気化学的装置。
【請求項26】
アノードが、Pr,Co、Ce、Eu、他の希土類元素、Sr,Ca及びこれらの混合物から成る群より選択される触媒を表面に分散させて成る請求項17に記載の電気化学的装置。
【請求項27】
ペロブスカイトがPr0.8Sr0.2MnO3−δの式で表される請求項25に記載の電気化学的装置。
【請求項28】
原料二酸化炭素が空気、燃焼ガス又は好気性分解から得られる請求項17に記載の電気化学的装置。
【請求項29】
水素を一酸化炭素と混合することによって合成ガスを製造する請求項17に記載の電気化学的装置。
【請求項30】
酸素イオン電導膜と、酸素イオン電導膜に接しており且つ水蒸気を水素イオンと酸素イオンとに還元できる電気化学的活性なカソードと、酸素イオン電導膜のカソード反対側面に接しており且つ酸素イオンを再結合して酸素分子に出来る電気化学的活性なアノードと、HO+2e→H+O2−及びCO+2e→CO+O2−の反応を生じる状態のカソードに接触させる原料水蒸気および二酸化炭素とから成る合成ガス製造のための二酸化炭素と水蒸気との共電解質用電気化学的装置であって、一酸化炭素と水素とから成る合成ガスがカソードにおいて捕捉・回収され、酸素イオンが酸素イオン電導膜を介してアノードに移送されて再結合して酸素を形成して捕捉・回収されることを特徴とする合成ガス製造のための二酸化炭素と水蒸気との共電解質用電気化学的装置。
【請求項31】
カソードが酸化ニッケルと他の酸化物との混合物から成る請求項30に記載の電気化学的装置。
【請求項32】
アノードがペロブスカイト(灰チタン石)と酸化物との混合物から成る請求項30に記載の電気化学的装置。
【請求項33】
カソードが第1の金属酸化物と、酸化ニッケルの固溶体と、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化銅およびこれらの混合物から成る群より選択される第2の金属酸化物とから成り、第2の金属酸化物の含有量が、酸化ニッケルの量の1〜50モル倍である請求項30に記載の電気化学的装置。
【請求項34】
第1の金属酸化物が、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたジルコニアから成る請求項33に記載の電気化学的装置。
【請求項35】
第1の金属酸化物が、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたセリアから成る請求項33に記載の電気化学的装置。
【請求項36】
第1の金属酸化物が、ストロンチウム、マグネシウム、鉄およびコバルトから選択される1種以上の元素でドープされたランタン−ガリウム酸化物から成る請求項33に記載の電気化学的装置。
【請求項37】
カソードが、Pr、Co、Ce、Eu、他の希土類元素およびこれらの混合物から成る群より選択される触媒を表面に分散させた構成を有する請求項30に記載の電気化学的装置。
【請求項38】
アノードが、ペロブスカイト及びアノード酸化物の混合物から成り、ペロブスカイトが(Pr1−xLaz−yBO3−δの式で表され、式中AはSr、Ca又はそれらの混合物を表し、BはMn、Co、Fe又はそれらの混合物である遷移金属を表し、x、y、zはそれぞれ0≦x≦1.0、0≦y≦0.5、0.8≦z≦1.1であり、δは酸素非化学量論的値であり、アノード酸化物が、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化スカンジウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたジルコニアと、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム及び酸化ジルコニウムから成る群より選択される1種以上の酸化物をドープしたセリアとから成る群より選択される請求項30に記載の電気化学的装置。
【請求項39】
アノードが、Pr,Co、Ce、Eu、他の希土類元素、Sr,Ca及びこれらの混合物から成る群より選択される触媒を表面に分散させて成る請求項30に記載の電気化学的装置。
【請求項40】
ペロブスカイトがPr0.8Sr0.2MnO3−δの式で表される請求項38に記載の電気化学的装置。
【請求項41】
原料二酸化炭素が空気、燃焼ガス又は好気性分解から得られる請求項30に記載の電気化学的装置。
【請求項42】
アノード室と、カソード室と、二酸化炭素と水素とから一酸化炭素と水素とから成る合成ガスを得る反応を容易にする手段とから成る合成ガス製造電気化学的セルであって、アノード室は、1/2HO→1/4O+H+eで示される水の分解反応における反応原料である水と電気化学的に活性なアノードとを有し、且つOを捕捉してアノード室から除去する機能を有し、更にH+1/2NaCO→1/2CO+1/2HO+Naで示される炭酸ナトリウムとHイオンとの溶液中での反応が行われるアノードから十分な距離を置いて原料炭酸ナトリウムの供給口を有し、二酸化炭素はアノードから距離を置いた位置において捕捉・除去され、カソード室は、Naイオンを透過することが出来る膜によってアノード室から隔離された電気化学的に活性なカソードを有し、且つNa+HO+e→NaOH+1/2Hで示される水の分解反応における反応原料である水とNaイオンを有し、更にHと水酸化ナトリウムとを捕捉してカソード室から除去する機能を有することを特徴とする電気化学的セル。
【請求項43】
原料炭酸ナトリウムがカソード室から除去した水酸化ナトリウムと原料二酸化炭素との反応により得られる請求項42に記載の電気化学的セル。
【請求項44】
原料二酸化炭素が空気から得られる請求項43に記載の電気化学的セル。
【請求項45】
原料二酸化炭素が燃焼ガスから得られる請求項43に記載の電気化学的セル。
【請求項46】
原料二酸化炭素が好気性分解から得られる請求項43に記載の電気化学的セル。
【請求項47】
二酸化炭素と水素とから合成ガスを得る反応を容易にする手段が、二酸化炭素と水素との混合物に露出させた触媒である請求項42に記載の電気化学的セル。
【請求項48】
触媒が水性ガスシフト反応触媒である請求項47に記載の電気化学的セル。
【請求項49】
触媒がフィッシャー・トロプシュ触媒である請求項47に記載の電気化学的セル。
【請求項50】
均一ガス相の等量反応を達成するために二酸化炭素と水素との混合物を加熱する請求項47に記載の電気化学的セル。
【請求項51】
二酸化炭素と水素とから合成ガスを得る反応を容易にする手段が、更に一酸化炭素を形成するための二酸化炭素の発生のための酸素イオン伝導電解質セルを有する請求項6に記載の電気化学的セル。
【請求項52】
電気化学的セルが2極板によって分離された複数の電気化学的セル積層体である請求項42に記載の電気化学的セル。
【請求項53】
Naイオンを透過する膜がナトリウム超イオン導電体セラミック材料から成る請求項42に記載の電気化学的セル。
【請求項54】
1/2HO→1/4O+H+eの反応に従ってアノード室内で水を分解する工程と、アノード室から酸素を除去する工程と、アノード室内で且つアノードから距離を置いた位置でH+1/2NaCO→1/2CO+1/2HO+Naの反応に従ってNaCOとHイオンとを反応させる工程と、アノード室内において二酸化炭素の発生場所の近くで二酸化炭素を除去する工程と、アノード室からカソード室にNaイオンを移送する工程と、Na+HO+e→NaOH+1/2Hの反応に従ってカソード室内で水を分解する工程と、カソード室内から水素を除去する工程と、カソード室内からNaOHを除去する工程と、二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素と水素とから成る合成ガスを形成する工程とから成る合成製造のための電気化学的方法。
【請求項55】
カソードから除去されるNaOHを原料二酸化炭素と反応させてNaCOを形成する請求項54に記載の電気化学的方法。
【請求項56】
原料二酸化炭素が空気、燃焼ガス又は好気性分解から得られる請求項55に記載の電気化学的方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2009−506213(P2009−506213A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528246(P2008−528246)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/033640
【国際公開番号】WO2007/025280
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508011511)セラマテック・インク (29)
【Fターム(参考)】