説明

空気フィルター用洗浄剤組成物

【課題】空気清浄を目的に使用されるフィルターの洗浄、再生、再利用に際し、優れた洗浄性能を示す空気清浄用フィルター洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)アルカリ剤を25〜94質量%、(B)界面活性剤を1〜50質量%、(C)水溶性有機溶剤を4〜60質量%、(D)キレート剤を1〜50質量%含有し、前記(A)アルカリ剤として、アルカリ金属水酸化物、アミン系アルカリ性物質、炭酸塩、珪酸塩、リン酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも3種類をそれぞれ5質量%以上含む空気フィルター用洗浄剤組成物。ただし、前記(A)〜(D)の含有量は、水を除く空気フィルター用洗浄剤組成物全体を100質量%とした場合の値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気清浄を目的として使用されるフィルターの洗浄に好適な空気フィルター用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気清浄目的のフィルターは家庭用電器製品や産業用電機機器、電車用や自動車用、船舶用エンジン、各種モーターの冷却用ファンなどに幅広く使用されている。
しかし、これらのフィルターは過度に汚染してくると通気性が低下して性能低下や故障の原因となりやすかった。
【0003】
そこで、汚染の程度に応じて新品フィルターと交換したり、洗浄して再生や再利用したりする試みがなされている。
例えば特許文献1、2には、アルカリ剤、界面活性剤、水溶性有機溶剤、キレート剤を含む洗浄剤組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平8−253795号公報
【特許文献2】特開平10−265800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の洗浄剤組成物の洗浄性は、必ずしも満足するものではなかった。
その為、たわし等でフィルターをブラッシングしたり、ピンセット等でフィルターに付着した汚れを摘み取ったりするなどの手作業が必要となり、多くの作業時間と労力が費やされ負担がかかりやすかった。
また、汚れが十分に洗浄されないままフィルターを再利用したり、汚れが十分に洗浄されない為、フィルターを廃棄処分したりすることもあった。
従って、フィルターに複雑・多岐に付着した汚れを効果的に洗浄することが可能な洗浄剤組成物が望まれている。
【0005】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、空気清浄を目的に使用されるフィルターの洗浄、再生、再利用に際し、優れた洗浄性能を示す空気清浄用フィルター洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気フィルター用洗浄剤組成物は、(A)アルカリ剤を25〜94質量%、(B)界面活性剤を1〜50質量%、(C)水溶性有機溶剤を4〜60質量%、(D)キレート剤を1〜50質量%含有し、前記(A)アルカリ剤として、アルカリ金属水酸化物、アミン系アルカリ性物質、炭酸塩、珪酸塩、リン酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも3種類をそれぞれ5質量%以上含む。
ただし、前記(A)〜(D)の含有量は、水を除く空気フィルター用洗浄剤組成物全体を100質量%とした場合の値である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気フィルター用洗浄剤組成物によれば、空気清浄を目的に使用されるフィルターの洗浄、再生、再利用に際し、優れた洗浄性能を示す。
よって、本発明の空気フィルター用洗浄剤組成物にて洗浄されたフィルターは、新品のフィルターと同程度の状態で再生、再利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の空気フィルター用洗浄剤組成物(以下、「洗浄剤組成物」という場合がある。)は、(A)アルカリ剤と、(B)界面活性剤と、(C)水溶性有機溶剤と、(D)キレート剤とを含有する。
【0009】
なお、本発明における「フィルター」はその素材、形状、大きさ、用途によって限定されるものではない。例えば用途としては電車モーター用や自動車エンジン用、船舶エンジン用、家庭用電気製品用、産業用電気製品用、クリーンルーム用、発電タービン用等が挙げられる。また、形状としては丸形、角形等、円筒状などが挙げられる。さらに、材質としては紙、布、合成繊維、金属等が挙げられる。
【0010】
<(A)アルカリ剤>
本発明の洗浄剤組成物は、(A)アルカリ剤として、アルカリ金属水酸化物、アミン系アルカリ性物質、炭酸塩、珪酸塩、リン酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも3種類をそれぞれ5質量%以上含み、少なくとも4種をそれぞれ5質量%以上含むのが好ましく、5種類全てをそれぞれ5質量%以上含むのが特に好ましい。少なくとも3種類をそれぞれ5質量%以上含むことで、オイル汚れ、金属汚れ、土壌汚れ、綿埃など、様々な種類の汚れに対して十分な洗浄効果を発揮できる。
なお、ここでいう「5質量%以上」とは、水を除く洗浄剤組成物全体を100質量%とした場合の値である。
【0011】
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
アミン系アルカリ性物質としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、アンモニア水などが挙げられる。
炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
珪酸塩としては、オルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウムなどが挙げられる。
リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムなどが挙げられる。
【0012】
(A)アルカリ剤の含有量は、洗浄剤組成物100質量%中、25〜94質量%であり、45〜94質量%が好ましく、60〜94質量%がより好ましい。(A)アルカリ剤の含有量が25質量%未満では、フィルターに付着した汚れに対する洗浄性が低下しやすくなると共に、液寿命が非常に短いものになりやすくなる。一方、(A)アルカリ剤の含有量が94質量%を超えると、後述する(B)界面活性剤、(C)水溶性有機溶剤、(D)キレート剤の含有量が非常に少なくなり、十分な洗浄性が発揮されにくくなる。
なお、本発明において、(A)アルカリ剤の含有量は、水を除く洗浄剤組成物全体を100質量%とした場合の値である。以下、(B)〜(D)の含有量についても同様である。
【0013】
<(B)界面活性剤>
本発明で用いられる(B)界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から選択することが可能である。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル琉酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル琉酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩などが挙げられる。
これらのアニオン性界面活性剤における対イオンとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、またはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン塩が用いられる。
【0015】
非イオン性界面活性剤としては、以下に示すものが例示できる。ここで、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはこれらの混合付加物が用いられる。
【0016】
(1)ポリオキシアルキレン(n=3〜40)アルキルまたはアルケニル(C10〜C22)エーテル、
(2)ポリオキシアルキレン(n=3〜40)アルキルまたはアルケニル(C〜C12)フェニルエーテル、
(3)ポリオキシアルキレン(n=1〜40)アルキルまたはアルケニル(C10〜C22)アミン、
(4)ポリオキシアルキレン(n=1〜50)アルキルまたはアルケニル(C10〜C22)アミド、
(5)エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加物(プルロニック型界面活性剤)分子量500〜3000。
【0017】
上記各種非イオン性界面活性剤が用いられる。中でも、脂肪酸ジエタノールアミド、高級アルコールエトキシレートなどが好適である。
【0018】
両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン型、アルキルアミノカルボン酸型、アルキルイミダゾリン型などが挙げられる。
【0019】
(B)界面活性剤の含有量は、洗浄剤組成物100質量%中、1〜50質量%であり、5〜40質量%が好ましい。(B)界面活性剤の含有量が1質量%未満では、表面張力が低下せず、汚れやフィルター素材間への浸透力が低下し、オイル汚れの可溶化および乳化力などの効果が発揮されにくくなる。一方、(B)界面活性剤の含有量が50質量%を超えると、(A)アルカリ剤、(C)水溶性有機溶剤、(D)キレート剤の含有量が非常に少なくなり、十分な洗浄性が発揮されにくくなる。
【0020】
<(C)水溶性有機溶剤>
本発明で用いられる(C)水溶性有機溶剤としては、アルコール、多価アルコールおよびその誘導体、N―メチルピロリドン、ジメチルスルオキシドなどが挙げられる。
(C)水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
アルコール、多価アルコールおよびその誘導体としては、具体的にはエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどが挙げられる。
【0022】
(C)水溶性有機溶剤の含有量は、洗浄剤組成物100質量%中、4〜60質量%であり、10〜50質量%が好ましい。(C)水溶性有機溶剤の含有量が4質量%未満では、表面張力が低下せず、本来の水溶性有機溶剤の特性である、オイル汚れ等の有機物系の汚れに対する洗浄性が十分に発揮されにくくなる。一方、(C)水溶性有機溶剤の含有量が60質量%を超えると、(A)アルカリ剤、(B)界面活性剤、(D)キレート剤の含有量が非常に少なくなり、十分な洗浄性が発揮されにくくなる。
【0023】
<(D)キレート剤>
本発明で用いられる(D)キレート剤としては、一般的なキレート剤を用いることができるが、例えば多価カルボン酸またはその塩、リン化合物またはその塩が挙げられる。
(D)キレート剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
多価カルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸、ニトリロ3酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸等のアミノカルボン酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリマーカルボキシレートなどが挙げられる。
リン化合物としては、オルトリン酸、縮合リン酸、ジホスホン酸、トリホスホン酸などが挙げられる。
【0025】
これら多価カルボン酸、リン化合物の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩などが挙げられる。
【0026】
(D)キレート剤の含有量は、洗浄剤組成物100質量%中、1〜50質量%であり、5〜40質量%が好ましい。(D)キレート剤の含有量が1質量%未満では、本来のキレート剤の特性である、洗浄に使用される用水中に含まれるCaイオンやMgイオンによる洗浄性低下が十分に防止できず(軟水効果)、汚れとして存在する金属イオン成分に対する洗浄性が発揮されにくくなる。一方、(D)キレート剤の含有量が50質量%を超えると、(A)アルカリ剤、(B)界面活性剤、(C)水溶性有機溶剤の含有量が非常に少なくなり、十分な洗浄性が発揮されにくくなる。
【0027】
<その他の成分>
本発明の洗浄剤組成物は、一般的な洗浄剤に配合されている成分(その他の成分)を本発明の効果を損なわないで範囲で配合することができる。
その他の成分としては、水、香料、染料、防腐剤、金属防食剤、殺菌剤、消泡剤、増粘剤などが挙げられる。
【0028】
なお、フィルターを洗浄する際は、上述した各成分を混合機等で混合して得られる洗浄剤組成物を水により希釈して、透明または分散系の洗浄液を調製して洗浄するのが好ましい。
希釈濃度は、0.1質量%以上が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
フィルターの洗浄方法としては、公知の洗浄方法を用いることができるが、特に超音波洗浄、スプレー洗浄、高圧水流洗浄が洗浄効率や作業性の面で好適である。
【0029】
以上説明したように、本発明の洗浄剤組成物は、特定の(A)アルカリ剤と、(B)界面活性剤と、(C)水溶性有機溶剤と、(D)キレート剤とを特定の割合で含有するので、オイル汚れ等の有機物系の汚れ、金属汚れや土壌汚れ等の無機物系の汚れ、その他綿埃など、様々な種類の汚れに対して十分な洗浄効果を発揮でき、空気清浄を目的に使用されるフィルターの洗浄、再生、再利用に際し、フィルターに強固に付着した汚れをも効果的に除去できる。
また、本発明の洗浄剤組成物は優れた洗浄性能を有する為、空気用フィルターを効率よく洗浄することができ、再生、再利用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
<空気フィルター用洗浄剤組成物の調製>
表1に示す配合量(質量%)にて、(A)アルカリ剤と、(B)界面活性剤と、(C)水溶性有機溶剤と、(D)キレート剤を混合し、空気フィルター用洗浄剤組成物を調製し、これを濃度が10質量%になるように水で希釈し、洗浄液とした。
【0032】
<評価>
超音波洗浄機に、得られた洗浄液を50L入れ、40℃に加温した。その後、空気フィルターを浸漬し、超音波洗浄を5分間行い、洗浄試験を実施した。
洗浄試験が終了した空気フィルターを水道水で十分にシャワーすすぎした。その後、空気フィルターを60℃の熱分乾燥器内に移し、約1時間乾燥した。
なお、洗浄試験に用いた空気フィルターは、4〜6ヶ月使用した室内エアコンの空気フィルターを用いた。
乾燥後の空気フィルターを目視にて観察し、以下に示す評価基準にて、空気フィルター用洗浄剤組成物の洗浄性の評価を行った。結果を表1に示す。なお「◎」と「○」を合格とする。
◎:汚れ残りが全くない(完全に洗浄されている。)。
○:汚れ残りが極少量ある(ほぼ洗浄されている。)。
△:汚れ残りが少しある。
×:汚れ残りが多量にある(殆ど洗浄されていない。)。
【0033】
[実施例2〜15]
各成分の配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして空気フィルター用洗浄剤組成物を調製し、水で希釈して洗浄液を得て、洗浄性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1〜53]
各成分の配合量を表2〜4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして空気フィルター用洗浄剤組成物を調製し、水で希釈して洗浄液を得て、洗浄性の評価を行った。結果を表2〜4に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
表1〜4中の成分および略号は下記の通りである。
脂肪酸ジエタノールアミン:非イオン性界面活性剤、川研ファインケミカル社製、「アミゾールCD」、
高級アルコールエトキシレート:非イオン性界面活性剤、三洋化成工業社製、「ナロアクティーN−95」、
EDTA・4Na:エチレンジアミン四酢酸の四ナトリウム塩。
【0040】
表1から明らかなように、実施例で得られた各空気フィルター用洗浄剤組成物は、いずれも空気フィルターの洗浄に際して、空気フィルターを擦ることなく、汚れを落とすことができた。
一方、表2〜4から明らかなように、比較例で得られた各空気フィルター用洗浄剤組成物は、いずれも実施例に比べて洗浄力が不十分であった。
【0041】
従って、空気フィルター用の洗浄剤においては、特定の成分を特定の比率で配合した本発明の空気フィルター用洗浄剤組成物の有用性が明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ剤を25〜94質量%、(B)界面活性剤を1〜50質量%、(C)水溶性有機溶剤を4〜60質量%、(D)キレート剤を1〜50質量%含有し、
前記(A)アルカリ剤として、アルカリ金属水酸化物、アミン系アルカリ性物質、炭酸塩、珪酸塩、リン酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも3種類をそれぞれ5質量%以上含む空気フィルター用洗浄剤組成物。
ただし、前記(A)〜(D)の含有量は、水を除く空気フィルター用洗浄剤組成物全体を100質量%とした場合の値である。

【公開番号】特開2009−275077(P2009−275077A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125757(P2008−125757)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(500101438)東栄化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】