説明

空気予熱器

【課題】ラジアントチューブから排出される燃焼ガスの顕熱により燃焼用空気を効率的に予熱することのできる空気予熱器を提供する。
【解決手段】ラジアントチューブ式燃焼装置のラジアントチューブ11内に先端部を閉塞されて挿入される外管14と、外管14と中心を一致させて外管14の内側に配置された内管16と、内管16に燃焼用空気13を供給する空気供給管18とを備えた空気予熱器において、金属線材20が外管14の内面に螺旋状に接触するように金属線材20をコイルバネ状に曲げ加工してなる乱流発生体19を外管14と内管16との間に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材加熱炉などの工業用加熱炉で炉内加熱装置して用いられるラジアントチューブ式燃焼装置に付設される空気予熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジアントチューブ式燃焼装置(ラジアントチューブバーナとも称される。)は、燃料ガスを燃焼用空気と共に燃焼するバーナと、このバーナで発生した燃焼ガス熱を炉内に放熱するラジアントチューブとからなり、このようなラジアントチューブ式燃焼装置には、燃焼用空気を予熱する空気予熱器がラジアントチューブの燃焼ガス排出側端部に付設されている。
【0003】
ラジアントチューブ式燃焼装置に付設される空気予熱器は、ラジアントチューブ内に先端部を閉塞されて挿入される金属製の外管と、この外管と中心を一致させて外管の内側に配置された内管と、この内管に燃焼用空気を供給する空気供給管となり、ラジアントチューブから排出される燃焼ガスの顕熱を回収して燃焼用空気を予熱する構造となっている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−15007号公報
【特許文献2】特開平7−305833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような空気予熱器では、空気供給管から内管に供給された燃焼用空気は外管と内管との間に形成された空気予熱路を層流となって流れるため、空気予熱路に流入した燃焼用空気のうち外管の内面側を流れる燃焼用空気は外管の外面側を流れる燃焼ガスと熱交換するが、内管の外面側を流れる燃焼用空気は燃焼ガスと熱交換しない。このため、燃焼ガスとの熱交換効率が低く、燃焼用空気を効率的に予熱することができないという問題があった。
【0006】
また、空気予熱器の下流側には燃料ガスを予熱する燃料予熱器が配置されている場合が多いため、空気予熱器の予熱効率が低くなると、燃焼ガスが高温のまま燃料予熱器に供給される。このため、空気予熱器から排出された燃焼ガスによって燃料ガスが過度に予熱され、カップリング反応やスーティング反応が発生してバーナの燃料ガス通路に固形物が析出するおそれもあった。
本発明は、上述した問題点に着目してなされたものであり、ラジアントチューブから排出される燃焼ガスの顕熱により燃焼用空気を効率的に予熱することのできる空気予熱器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、ラジアントチューブ式燃焼装置のラジアントチューブ内に先端部を閉塞されて挿入される外管と、該外管と中心を一致させて前記外管の内側に配置された内管と、該内管に燃焼用空気を供給する空気供給管とを備えた空気予熱器において、前記外管の内面に金属線材が螺旋状に接触するように前記金属線材をコイルバネ状に曲げ加工してなる乱流発生体を、前記外管と前記内管との間に設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の空気予熱器において、前記外管の内径と前記内管の外径との半径差に対して前記金属線材の直径を0.1〜0.3倍に設定したことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の空気予熱器において、前記乱流発生体のコイルピッチが前記金属線材の直径に対して5〜20倍となるように前記金属線材をコイルバネ状に曲げ加工したことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気予熱器において、前記金属線材の両端部を捻った状態で前記乱流発生体を前記外管と前記内管との間に組み込んだことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載の空気予熱器において、前記金属線材の両端部を摘んで前記金属線材の両端部に捻り力を加えるための摘み部を前記金属線材の両端部に設けたことを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載の空気予熱器において、前記金属線材の両端部を前記乱流発生体の内径側に折り曲げて前記摘み部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、空気供給管から内管に供給された燃焼用空気が外管と内管との間に形成された空気予熱路に流入すると、乱流発生体の乱流発生作用により乱流を発生させながら空気予熱路を流通する。従って、燃焼用空気が空気予熱路を層流となって流れる場合と比較して、燃焼ガスと燃焼用空気との熱交換効率を高めることができ、ラジアントチューブから排出される燃焼ガスの顕熱により燃焼用空気を効率的に予熱することができる。また、燃焼用空気と熱交換した燃焼ガスが空気予熱器の下流側に配置された燃料予熱器に高温のまま供給されることがないので、空気予熱器から排出された燃焼ガスによって燃料ガスが過度に予熱されることを防止することもできる。
【0011】
請求項2の発明によれば、外管の内径と内管の外径との半径差に対して金属線材の直径が0.1倍未満の場合や0.3倍より大きい場合と比較して、燃焼ガスと燃焼用空気との熱交換効率を高めることができる。従って、ラジアントチューブから排出される燃焼ガスの顕熱により燃焼用空気をより効率的に予熱することができる。
請求項3の発明によれば、金属線材からなる乱流発生体のコイルピッチが金属線材の直径に対して5倍未満の場合や20倍より大きい場合と比較して、燃焼ガスと燃焼用空気との熱交換効率を高めることができる。従って、ラジアントチューブから排出される燃焼ガスの顕熱により燃焼用空気をより効率的に予熱することができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、乱流発生体の外径を外管の内径より小さくした状態で外管と内管との間に乱流発生体を組み込むことができ、従って、乱流発生体がコイルバネ状に曲げ加工された金属線材から形成されていても外管と内管との間に乱流発生体を容易に組み込むことができる。
請求項5の発明によれば、外管と内管との間に乱流発生体を組み込む際にペンチなどの摘み工具を用いて金属線材の両端部に捻り力を加えることができ、外管と内管との間に乱流発生体をより容易に組み込むことができる。
請求項6の発明によれば、金属線材の両端部に金属片を溶接接合して摘み部を形成した場合と比較して、高温環境下での使用が長期にわたっても摘み部が金属線材の両端部から脱落することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気予熱器の構造を示す図である。
【図2】図1に示す乱流発生体の一例を示す図である。
【図3】図1に示す外管の内径と内管の外径との半径差に対する金属線材の直径比と空気予熱器の熱回収増加割合との関係を示す図である。
【図4】図1に示す乱流発生体のコイルピッチ比と空気予熱器の熱回収増加割合との関係を調査した結果を示す図である。
【図5】図1に示す乱流発生体の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る空気予熱器について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気予熱器の構造を示す図である。図1に示される空気予熱器10はラジアントチューブ式燃焼装置のラジアントチューブ11から排出される燃焼ガス12の顕熱を回収して燃焼用空気13を予熱するものであって、外管14、内管16、空気供給管18及び乱流発生体19を備えている。
【0015】
外管14は、その先端部がドーム状の外管先端部閉塞部材15により閉塞されている。また、外管14は熱伝導性の良好な金属からなり、ラジアントチューブ11の燃焼ガス排出側端部からラジアントチューブ11内に挿入されている。
内管16は外管14との間に空気予熱路17を形成するものであって、外管14と中心を一致させて外管14の内側に配置されている。
【0016】
空気供給管18は内管16に燃焼用空気13を供給するものであって、この空気供給管18から内管16に供給された燃焼用空気13は、内管16の内側を流通した後、外管14の先端側でUターンし、外管14と内管16との間に形成された空気予熱路17に流入するようになっている。そして、空気予熱路17を流通した後、ラジアントチューブ式燃焼装置のバーナ(図示)に供給されるようになっている。
【0017】
乱流発生体19は空気予熱路17を流通する燃焼用空気13に乱流を発生させるためのものであって、外管14と内管16との間に設けられている。また、乱流発生体19は1本の金属線材20からなり、この金属線材20が外管14の内面に螺旋状に接触するように金属線材20をコイルバネ状に曲げ加工して形成されている。
乱流発生体19の金属線材20は、その直径が外管14の内径と内管16の外径との半径差((d−d)/2)に対して0.1〜0.3倍、好ましくは0.1〜0.25倍に設定されている。また、金属線材20は乱流発生体19のコイルピッチが金属線材20の直径に対して5〜20倍、好ましくは7〜15倍となるようにコイルバネ状に曲げ加工され、乱流発生体19はコイルバネ状に曲げ加工された金属線材20の両端部を捻った状態で外管14と内管16との間に組み込まれている。
【0018】
図2は図1に示す乱流発生体の一例を示す図であり、図2に示される乱流発生体19は、金属線材20の両端部に摘み部21a,21bを有している。これらの摘み部21a,21bはペンチなどの摘み工具で金属線材20の両端部を摘んで金属線材20の両端部に捻り力を加えるためのものであって、板状の金属片を金属線材20の両端部に溶接接合して形成されている。
【0019】
上記のように構成される空気予熱器10では、空気供給管18から内管16に供給された燃焼用空気13が外管14と内管16との間に形成された空気予熱路17に流入すると、乱流発生体19の乱流発生作用によりスパイラル状の乱流を発生させながら空気予熱路17を流通する。従って、燃焼用空気13が空気予熱路17を層流となって流れる場合と比較して、燃焼ガス12と燃焼用空気13との熱交換効率を高めることができ、ラジアントチューブ11から排出される燃焼ガス12の顕熱により燃焼用空気13を効率的に予熱することができる。
【0020】
また、燃焼用空気13と熱交換した燃焼ガス12が空気予熱器10の下流側に配置された燃料予熱器に高温のまま供給されることがないので、空気予熱器10から排出された燃焼ガス12によって燃料ガスが過度に予熱されることを防止することもできる。
さらに、金属線材20の両端部に捻った状態で乱流発生体19を外管14と内管16との間に組み込むことで、乱流発生体19の外径を外管14の内径より小さくした状態で外管14と内管16との間に乱流発生体19を組み込むことができる。従って、乱流発生体19がコイルバネ状に曲げ加工された金属線材20から形成されていても外管14と内管16との間に乱流発生体19を容易に組み込むことができる。
【0021】
また、図2に示すように、ペンチなどの摘み工具で金属線材20の両端部を摘んで金属線材20の両端部に捻り力を加えるための摘み部21a,21bを金属線材20の両端部に設けることで、外管14と内管16との間に乱流発生体19を組み込む際にペンチなどの摘み工具を用いて金属線材20の両端部に捻り力を加えることができ、従って、外管14と内管16との間に乱流発生体19をより容易に組み込むことができる。
【0022】
本発明者らは、外管14の内径と内管16の外径との半径差に対する金属線材20の直径比と空気予熱器10の熱回収増加割合との関係を調査した。その結果を図3に示す。
図3に示されるように、外管14の内径dと内管16の外径dとの半径差((d−d)/2)に対する金属線材20の直径比Rが0.1未満になると、空気予熱器10の熱回収増加割合が10%以下になることがわかる。また、外管14の内径dと内管16の外径dとの半径差((d−d)/2)に対する金属線材20の直径比Rが0.3より大きくなると、空気予熱器10の熱回収増加割合が10%以下になることがわかる。
【0023】
従って、上述した本実施形態のように、外管14の内径と内管16の外径との半径差に対して金属線材20の直径を0.1〜0.3倍、好ましくは0.1〜0.25倍に設定することで、金属線材20の直径が外管14の内径と内管16の外径との半径差に対して0.1未満の場合や0.3より大きい場合と比較して、ラジアントチューブ11から排出される燃焼ガス12の顕熱により燃焼用空気13をより効率的に予熱することができる。
【0024】
また、本発明者らは、金属線材20の直径に対する乱流発生体19のコイルピッチ比と空気予熱器10の熱回収増加割合との関係を調査した。その結果を図4に示す。
図4に示されるように、金属線材20の直径dに対する乱流発生体19のコイルピッチ比RCPが5未満になると、空気予熱器10の熱回収増加割合が10%以下になることがわかる。また、金属線材20の直径dに対する乱流発生体19のコイルピッチ比RCPが20より大きくなると、空気予熱器10の熱回収増加割合が10%以下になることがわかる。
【0025】
従って、上述した本実施形態のように、金属線材20からなる乱流発生体19のコイルピッチが金属線材20の直径の5〜20倍、好ましくは7〜15倍となるように金属線材20をコイルバネ状に曲げ加工することで、乱流発生体19のコイルピッチが金属線材20の直径に対して5未満の場合や20より大きい場合と比較して、ラジアントチューブ11から排出される燃焼ガス12の顕熱により燃焼用空気13をより効率的に予熱することができる。
【0026】
図5は図1に示す乱流発生体の他の例を示す図であり、図5に示される乱流発生体19が図2に示したものと異なる点は、金属線材20の両端部を乱流発生体19の内径側に折り曲げて摘み部21a,21bを形成した点である。
このように、金属線材20の両端部を乱流発生体19の内径側に折り曲げて摘み部21a,21bを形成すると、金属線材20の両端部に金属片を溶接接合して摘み部21a,21bを形成した場合と比較して、高温環境下で長期にわたって使用しても摘み部21a,21bが金属線材20の両端部から脱落することを防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
10…空気予熱器
11…ラジアントチューブ
12…燃焼ガス
13…燃焼用空気
14…外管
15…外管先端部閉塞部材
16…内管
17…空気予熱路
18…空気供給管
19…乱流発生体
20…金属線材
21a,21b…摘み部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアントチューブ式燃焼装置のラジアントチューブ内に先端部を閉塞されて挿入される外管と、該外管と中心を一致させて前記外管の内側に配置された内管と、該内管に燃焼用空気を供給する空気供給管とを備えた空気予熱器において、
前記外管の内面に金属線材が螺旋状に接触するように前記金属線材をコイルバネ状に曲げ加工してなる乱流発生体を、前記外管と前記内管との間に設けたことを特徴とする空気予熱器。
【請求項2】
請求項1に記載の空気予熱器において、前記外管の内径と前記内管の外径との半径差に対して前記金属線材の直径を0.1〜0.3倍に設定したことを特徴とする空気予熱器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気予熱器において、前記乱流発生体のコイルピッチが前記金属線材の直径に対して5〜20倍となるように前記金属線材をコイルバネ状に曲げ加工したことを特徴とする空気予熱器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気予熱器において、前記金属線材の両端部を捻った状態で前記乱流発生体を前記外管と前記内管との間に組み込んだことを特徴とする空気予熱器。
【請求項5】
請求項4に記載の空気予熱器において、前記金属線材の両端部を摘んで前記金属線材の両端部に捻り力を加えるための摘み部を前記金属線材の両端部に設けたことを特徴とする空気予熱器。
【請求項6】
請求項5に記載の空気予熱器において、前記金属線材の両端部を前記乱流発生体の内径側に折り曲げて前記摘み部を形成したことを特徴とする空気予熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−247082(P2012−247082A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117016(P2011−117016)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(592200811)株式会社ThyssenKrupp Otto (7)
【Fターム(参考)】