説明

空気力学的イオン収束のための方法及び装置

イオンを収束させるための方法及び装置であり、イオンは、入口開口12と出口開口16とを有する空気力学的イオン収束アセンブリ14へ供給される。高速ガス導入ポート30により、供給されたイオンは収束アセンブリから出るときに収束される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:本発明は、一般に、イオン検出装置へのイオンの供給に関する。更に詳細には、本発明は、極めて多くのイオンをイオン検出装置へ導いて検出又は分析を行えるよう、フロントエンド装置を用いることにより、形成されたイオンを収束させる能力を改良するための方法及び装置を記述する。
【0002】
関連技術の説明
従来の技術は、イオンの形成を可能とするシステム及びイオンの検出と分析における改良で満ちている。しかし、イオンの検出及び分析を実施する際の困難の一つは、イオン検出又は分析装置へ大量のイオンを供給する作業である。当業者には公知である種々の理由から、イオン検出装置の適切なオリフィスにイオンを導くことは困難である。それにも拘わらず、イオン検出装置へ供給されるイオンが増せば増すほど、その結果は「敏感に」又は正確になる。こうした装置は電子増倍器、ファラデ・プレート、イオン移動度分光計及び飛行時間質量分析計を含む。一般に、本発明は、どのような装置であれ、イオンの検出及び/又は分析を実施することを必要とする任意の装置に当てはまるものと考えられる。しかし、こうした装置の全ては「イオン検出装置」という単一の記述用語内に入るものと考えられる。
【0003】
「エレクトロスプレー・イオン化」と呼ばれる重要な技術は、イオンをイオン検出装置へ供給するプロセスを改良するために開発された。例えば、エレクトロスプレー・イオン化においては、高電圧に結合された毛細管又はオリフィスの自由端へ液体試料が導かれる。一般に、毛細管の先端又はエレクトロスプレー・スプレーヤーの先端の自由端は、イオン検出装置の真空チャンバへ導くサンプリング・オリフィスを有するオリフィス・プレート又は毛細管から距離を置いている。また、オリフィス・プレートは高電圧源に結合されている。電界は帯電した液滴のスプレーを生成し、液滴は蒸発してイオンを生成する。
【0004】
エレクトロスプレー・イオン化は質量分析のための最も一般に使用されるイオン化技術の一つとして成長して来ており、その性能を改善する努力が続いている。典型的には、エレクトロスプレーの先端からイオン検出装置へのイオンの伝導度を最大にするために、エレクトロスプレーの先端はイオン検出装置のオリフィスに極めて近接していなければならない。しかし、空間電荷斥力に起因して、多くのイオンはサンプリング・オリフィスに到達しない。
【0005】
しかし、質量分析のためのエレクトロスプレー・イオン化の重要性は、この分野での業績に対するノーベル賞の授与によって強調された。エレクトロスプレー・イオン化は、高い「感度が決定的に重要である」生物分子への応用に対して、今日では最も認識されている。記憶すべきは、本明細書を通して、感度は、一層正確には、イオン検出装置へ供給され得るイオンの全数を意味する。エレクトロスプレー・イオン化は高感度であるとして知られている。しかし、本発明はこのプロセスが一層敏感になる可能性を有することを証明する。
【0006】
知られているように、エレクトロスプレー・イオン化とイオン検出装置とを用いるときの感度に対する限度は、エレクトロスプレー・イオン化源から大気−真空サンプリング・オリフィスを通って質量分析計のようなイオン検出装置の内部チャンバへ至るイオン伝達が低いことに起因する。イオン化効率は100%に近いけれども、エレクトロスプレー・イオン化源からイオン検出装置の抽出領域までの典型的なイオン伝達効率はたった0.01〜0.1パーセントにすぎない。
【0007】
イオン検出装置を取り扱う際、イオン供給のプロセスを細かく観察することが重要である。エレクトロスプレー・イオン化のプロセスにおいて、検体イオンは、大気圧において生成されて、高圧領域に配置された導電率制限開口を介して質量分析計の低圧抽出領域へ転送される。不可避の気相衝突及びクーロン斥力の結果、イオン雲が拡大され、イオンを質量分析計の抽出領域から離れさせるので、感度が低下する。クーロン効果に基づく従来のイオン光学装置は真空中でイオンを効果的に収束することができるが、高圧での気相衝突及びクーロン斥力によって生成されるイオン雲の拡大を回避する又は覆すのには概して有効でない。
【0008】
イオンの脱溶媒和とエレクトロスプレー・スプレーヤーの先端からサンプリング毛細管インレットへの伝達とを支援するために、ヘニオン等は、高速シース・フロー噴霧ガスがエレクトロスプレー・スプレーヤーの先端を通過して移動される「イオン・スプレー」装置を教示した。エレクトロスプレーされたイオンを収束させて脱溶媒和するための流量を適切にすることにより、相対的に低い流量と比べて、ほぼ30パーセント増加されたイオン信号強度が取得された。しかしながら、噴霧器により支援される装置のない従来のエレクトロスプレー・イオン化源と比較してのイオン信号の改善について、何の指示も与えられなかった。
【0009】
コベイ等によって教示される従来技術は、加熱されたガス・フローが、噴霧器により支援されるエレクトロスプレー・イオン化源の流れ軸に対して或る角度で導かれ、質量分析計のサンプリング・オリフィスの上流の領域で液滴の流れを横切るエレクトロスプレー・イオン化源を教示している。横切るガスは、乱流状で液滴の流れと混合され、液滴におけるイオンを脱溶媒和してサンプリング・オリフィスの方へ移動させるのを支援するように流れる。流れ横切り型の装置は10倍以上の感度の増加を提供し、結果としての質量分析におけるバックグランドを大幅に低減したと言われている。しかし、エレクトロスプレーの安定性のためには、2つの流れとそれらの間の角度とを慎重に制御することが必要である。つまり、良い性能を得て維持することは困難である。
【0010】
スミス等によって教示される従来技術は、サンプリング毛細管インレットと質量分析計の内部のスキマーとの間の質量分析計の第1真空段階において所謂「イオン・ファネル」を設計することにより、エレクトロスプレー・イオン化の感度を改善した。このイオン・ファネルは徐々に内径が小さくなる一連の円筒形リング電極からなる。この一連の電極に高周波(RF)電界と直流(DC)電界とを印加することにより、イオン雲は一層有効に収束され、クーロン力によって駆動されるイオン雲の拡大は10−4の圧力の下で9トールまで低減される。こうして、イオンは一層有効に捕捉され、収束され、サンプリング・オリフィスからスキマーへ平行イオン・ビームとして伝達される。従来のエレクトロスプレー・イオン化源と比較して、イオン信号強度が一桁以上増加したことが報告されている。
【0011】
このイオン・ファネルの最近の改良は多重毛細管インレットの使用である。多重毛細管インレットとイオン・ファネルとの組み合わせにより、キム等は、従来のエレクトロスプレー・イオン化イオン光学と比較して、23倍大きいイオン伝達効率を報告した。しかし、イオン・ファネルは低圧においてのみイオン・トランスポートを改善するにすぎないのであって、多くのイオンが失われるエレクトロスプレーの先端とサンプリング・ノズルとの間での大気圧条件には適用できない。
【0012】
今日まで、スプレーと質量分析計のサンプリング・オリフィスとの間の高圧でのイオン信号を改善する有効な方法を報告したユーザーは殆どいない。或るユーザー群はイオンを質量分析計に収束させるようにエレクトロスプレー・イオン化スプレーヤーの下流側にリング電極を配置した。他のユーザー群は、エレクトロスプレー・イオン化のために、加熱されたガラス毛細管インターフェースの内壁に大気圧での収束リングを採用した。更に別のユーザー群は、脱溶媒和を助けるための加熱されたシリカ毛細管の同様の設計を報告し、その中でエンド・プレートと円筒形レンズとについて言及した。これらのレンズはスプレーヤーと加熱された毛細管のインレット・オリフィスとから実質的に離れたところに配置された。これらのユーザーによると、リング電極は有効であった。しかし、イオン信号強度をどれだけ改良したかに関しては何にも言及されていない。最後に、他のユーザー群は、高電圧源に結合され且つスプレーヤーよりも低い電位でエレクトロスプレーの先端の近くに配置された長方形のステンレス・スチール製リング電極の使用を記述している。報告によると、このレンズはイオン信号強度を2倍増大させ、信号相対標準偏差(RSD)を2倍低減した。他の進歩は、多数の帯電イオンの形成、最適な性能のためのスプレーヤーの位置決めの重要性の低下、及び、イオン・ファネル及び流れ横切り型装置と比較しての使用の容易さを含む。
【0013】
エレクトロスプレー・イオン・ビームをサンプリング・オリフィスに収束させることの代替は、エレクトロスプレーの先端をできるだけサンプリング・ノズルに近づけて配置し、スプレーの大部分を真空領域に入れることである。「テーラー・コーン」の安定性と微細なエレクトロスプレー液滴の生成のためには、小さな穴のエレクトロスプレー・イオン化先端からの低流量が望ましい。この組み合わせはマイクロスプレー源と特にナノスプレー源とを用いることで達成された。応答の改善は、スプレーされた液滴は既に十分小さいので気相のイオンを直接生成することができるということによって説明される。低ピコモルまでの検体濃度は質量分析計検出のためのシース・フロー又は流体支援なしに容易にスプレーされ得る。
【0014】
このため、マイクロスプレー源及びナノスプレー源は質量分析計のサンプリング・オリフィスに極めて近接してエレクトロスプレーの先端とともに操作される。しかし、近さは、高電圧スプレーヤーとエレクトロスプレー・イオン化スプレーヤーの先端に印加される電圧に依存するノズル・カウンタ電極との間の放電閾値によって制限される。こうした制限を克服するために、別のユーザー群は、検体溶液が低圧で真空チャンバ内にエレクトロスプレーされる低圧エレクトロスプレー装置を報告した。不都合なことに、不完全な脱溶媒和は、増加された試料導入の改善を大幅に相殺した。また、エレクトロスプレー装置を超低圧領域に配置すると、或るユーザー群は、真空チャンバと加熱された移送ラインとの壁面で検体と微細液滴がかなり喪失され、感度がかなり低下したことを報告した。
【0015】
一般に信じられているように、エレクトロスプレー・イオン化技術は、修正がエレクトロスプレー・イオン化源の大気圧領域でのイオン伝達に小さな利得しか生じない点にまで到達している。したがって、必要なことは、イオン供給の最新技術によって潜在的に利用可能ではあるが未だ活用されていない高感度を利用する新たなアプローチである。
【0016】
発明の概要
本発明の目的は、イオンをイオン検出装置のサンプリング・オリフィスに供給して、イオン検出装置のサンプリング・オリフィスに供給されるイオンの全数を増すことにより感度を改善する改良された方法及び装置を提供することである。
【0017】
好ましい実施の形態においては、本発明は、空気力学的イオン収束システムを用いてイオンを収束させてイオン検出装置へ供給するための方法及び装置であり、空気力学的イオン収束システムは、イオンの脱溶媒和の拡散と増加を低減することにより、収束型高速ガス・フローを用いてイオン噴流を収束させるものであり、イオン検出装置へのイオンの収束と供給を支援するために空気力学的イオン収束システムの少なくとも一部に電圧が印加される。
【0018】
本発明の第1の特徴においては、空気力学的イオン収束装置に電圧勾配が作られ、イオンの収束及び伝導が支援される。
本発明の第2の特徴においては、非発散型ガス・フローによって、イオンのエレクトロスプレー噴流の拡大が低減される。
【0019】
本発明の第3の特徴においては、収束型ガス・フローによって、イオンのエレクトロスプレー噴流の拡大が低減される。
本発明の第4の特徴においては、同軸状ガス・フローによって、イオンのエレクトロスプレー噴流の拡大が低減される。
【0020】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴、利点及び代替の特徴は、添付の図面と組み合わせて以下の詳細な説明を考慮することで当業者には明らかになるであろう。
発明の詳細な説明
ここで図面を参照すると、図面には本発明の種々の素子に数字による指示が与えられており、当業者が本発明を製造し使用することができるよう、図面を参照して本発明を検討する。理解されるように、以下の記述は本発明の原理の単なる説明であり、請求項を狭めるものとして解してはならない。
【0021】
図1は、イオンを収束してイオン検出装置へ供給するための、本発明によって教示される方法及び装置の概観として提供される。システムの改良はイオン検出装置へ供給され得るイオン数の実質的な増加をもたらす。
【0022】
図1は本発明の斜視図である。空気力学的イオン収束装置10は入口開口12、本体14及び出口開口16を有するものとして図示されている。電源18が電圧を印加するものとして示されている。エレクトロスプレーの先端8は入口開口12に一部が挿入されているものとして図示されている。飛行時間質量分析計のようなイオン検出装置20は、イオン検出装置20の真空チャンバ24と空気力学的イオン収束装置10へ向かってイオン検出装置20から外側へ延びる毛細管インレット26との間の接合部にサンプリング・オリフィス22を有するものとして図示されている。本明細書ではエレクトロスプレーの先端についても検討する。エレクトロスプレーの先端8は空気力学的イオン収束装置10の入口開口12へ又はその近くへ「スプレー」されるイオンを生成する。
【0023】
エレクトロスプレーの先端8は本発明の装置の素子とは考えられないが重要なものである。これは、イオンの噴流を生成して空気力学的イオン収束装置10へ供給するからである。他のイオン源としては大気圧化学イオン化(APCI)及び光イオン化がある。これらは単に例示であり、限定要因とみなしてはならない。
【0024】
まず、イオン検出装置20のサンプリング・オリフィス22は毛細管インレット26を有する必要はないことに注意すべきである。サンプリング・オリフィス22は、イオンをイオン検出装置20へ導くのを支援するよう、整形された壁を周囲に有する構成とされてよい。したがって、毛細管インレット26の存在は限定要因と考えられるべきでなく、一つの可能な実施形態の単なる例示にすぎない。
【0025】
本発明の重要な特徴は、エレクトロスプレーの先端又は他のイオン源からのイオン噴流を入口開口12の近傍に収束させるように空気力学的イオン収束装置10へのガス・フローを使用する能力に関係する。本発明の他の重要な特徴は、空気力学的イオン収束装置10に電圧を印加してイオン噴流を収束させるのに用いられる、装置10の長さの部分に沿う電圧勾配を生成する能力である。
【0026】
図2は、空気力学的イオン収束装置10の一つの可能な構成の内部構造の断面斜視図として提供される。特筆すべき特徴は、入口開口12、出口開口16、窒素ガス供給インレット30、環状チャンバ32、環状ギャップ34、誘発される入力大気流ライン36、及び結果としての出力エアフロー・ライン38を含む。これらの特徴は、ガス・フローの故でのみ改善された性能を提供する空気力学的イオン収束装置の構成を示している。
【0027】
エレクトロスプレー・イオン化はイオン検出のための最も一般的に使用されているイオン化技術の一つに成長したということを考慮することは有意義である。典型的には、エレクトロスプレーの先端からイオン検出装置へのイオンの伝導を最大にするために、エレクトロスプレーの先端はイオン検出装置のサンプリング・オリフィスに極めて近接していなければならない。しかし、空間電荷斥力のために、多くのイオンはサンプリング・オリフィスに到達しない。図2に示す空気力学的イオン収束装置はベンチュリ効果とコアンダ効果とに少なくとも基づく装置である。イオン検出装置のフロント・エンドとして、本発明は供給されるイオンの数を改良する。こうして、イオン検出の感度が改善されると考えられる。
【0028】
例えば、質量分析計を用いて、レセルピン溶液を監視すると、空気力学的イオン収束装置なしで毛細管インレットの前方1mmのところにエレクトロスプレーの先端を正常位置に置いたときと比べて、エレクトロスプレーの先端と毛細管インレットとの間に14mmの分離距離を置いた場合には5倍以上のイオン強度が測定された。空気力学的イオン収束装置に電圧を印加してエレクトロスプレーされたイオンの収束を支援すると、ほぼ18倍のイオン強度が得られた。さらに、方法検出限度の34倍の改善が観測された。
【0029】
図2の空気力学的イオン収束装置10はベンチュリ効果及びコアンダ効果の原理に基づいてはいるが、動作するのに本発明はこれらの原理のいずれかを使うことを必要としないことを説明しなければならない。イオンを所望の軌道で引いてイオン検出装置へ供給する機能を実施するために作られるガス・フローは、他の手段を用いても生成することができる。
【0030】
例えば、イオンを空気力学的イオン収束装置10へ引くよう出口開口16において吸引を生成する装置を考える。それについて更に述べると、空気力学的イオン収束装置10の入口開口12への緩やかに発散するガス・フローも所望の機能を実施することができる。これは、エレクトロスプレーの先端を高速で通過しているガスの流れはイオン噴流の発散を低減するのに十分だからである。この移動するガスはイオン噴流を長く且つ希薄なイオン噴流の方へ引く。これは、ガス・フローが緩やかに発散している場合にさえ妥当する。理解のための重要な点は、ガスの流れによってイオン噴流は希薄な噴流へ引かれ、その結果、空間電荷とそれに続くイオン噴流の拡大とが低減されることである。
【0031】
軌道の性質については特に言及してこなかったが、軌道が線形でなくても、こうした軌道の一つの有用な目的は、スプレー液滴をイオン噴流から分離することである。したがって、軌道は線形のものに限定されると考えられるべきではない。非線形の軌道の利点も存在するからである。
【0032】
図3は、所望のガス・フローが生成されることが理由となる、空気力学的イオン収束装置10の改善された動作態様を説明するために提供される。不活性窒素ガスを用いて、空気力学的イオン収束装置への及びそれを通る所望のガス・フローを生成する。所望のガス・フローは、空気力学的イオン収束装置10の入口開口12でのエレクトロスプレー・イオン噴流の閉じ込めを生じる任意の流れである。エレクトロスプレー・イオンの閉じ込め量を増すと、イオン検出装置へ供給できる又は供給されるイオンの数を増やすことができる。
【0033】
窒素ガスを用いたが、ヘリウム、アルゴン、空気を含む他のガスを用いてもよい。重要なのは、ガスによって実施される機能と、一層多くのイオンが最終的にイオン検出装置へ到達するようイオン噴流を所望の軌道に載せるガス・フローを生成することである。
【0034】
本発明の源実施の形態においては、エレクトロスプレー・イオン噴流の一層の閉じ込めを生じる所望のガス・フローは、空気力学的イオン収束装置10の形状及び該装置を流れるガスの性質によって生成される。例えば、環状ギャップ34を通して導入されている窒素ガスに対するコアンダ効果は、ガスが空気力学的イオン収束装置10の内面の形状に対して相対的に同一平面にとどまり、したがって一般には装置10の内面の形状に従うように流れの方向を急に変えたときに証明される。このガスの特徴は図3の窒素ガスの流線40によって示される。窒素ガス・フローにより、入口開口12でのエレクトロスプレー・イオン噴流は、ガスによって成形され且つ決定される軌道に沿うよう集中される。
【0035】
例えば、この実施の形態においては、エレクトロスプレー・イオン噴流は、軌道42によって示す、窒素ガス・フローの中央又は中心点に沿って移動する傾向がある。この実施の形態においては、軌道42は一般に入口開口12及び出口開口16と同軸状であると考えられる。これは、空気力学的イオン収束装置10が対称性を持ち、窒素ガスの流れによって導入されるガス・フローが装置10を通るように生じるからである。
【0036】
例えば、イオン噴流は、窒素ガス・フロー故に入口開口12において空気力学的イオン収束装置10へ引かれている空気の収束のために規制される。さらに、窒素ガス・フローはイオン噴流が平面構造で出力されるようイオン噴流を規制するためにも使用される。本発明のこの特徴は空気力学的イオン収束装置10の形状によって決定可能である。
【0037】
理想的には、イオン検出装置20から延びる毛細管インレット26への入口は、軌道42に閉じ込められたイオンを利用できるよう、軌道42に沿って配置される。実験結果によると、イオン検出装置20へ供給され得るイオンの濃度はほぼ100倍に増した。
【0038】
空気力学的イオン収束装置10の入口開口12へ入る所望のガス・フローが収束型ガス・フローとして特徴付けられることを観察することは、本発明の重要な特徴である。この所望の特徴は、一層広くは、単なる非発散型ガス・フローとしても分類され得る。前述のとおり、緩やかに発散するガス・フローでさえ、適切に導かれたならば、イオン噴流に対して所望の効果を与えることができる。この所望のガス・フローを記述するのに用いることができる他の用語は同軸状ガス・フローである。
【0039】
具体的には、空気力学的イオン収束装置10の出口開口16へ流れる高速窒素ガスによって圧力低下が生じ、空気力学的イオン収束装置10の入口開口12へ入る一層大きな大気の流れが誘発される。正味の効果は、空気力学的イオン収束装置10が、小さな体積の圧縮された窒素ガスからのエネルギを用いて、体積が大きく、速度が速く且つ圧力の低い出力ガス・フロー38を生成することである。出力ガス・フロー38の体積は供給フローの100倍にもなる、すなわち、毎分400〜600Lであり得る。しかし、記憶すべきは、これらの体積はここに図示された特定の空気力学的イオン収束装置に対して特有であるにすぎず、異なる構成の空気力学的イオン収束装置に対しては異なるものであり、したがって限定要因と見なしてはならないということである。
【0040】
空気力学的イオン収束装置10への所望のガス・フローを生成することによって軌道42に沿うイオン噴流の濃度を増すことができるばかりでなく、本発明の他の特徴の適用によりイオン噴流の濃度は更に増加され得る。具体的には、電圧勾配と、その結果としての空気力学的イオン収束装置10内での電界線とは、入口開口12におけるエレクトロスプレー・イオン噴流の濃度を高めるために用いることができる。かくて、本発明の好ましい実施の形態は、空気力学的イオン収束装置10の少なくとも一部分に沿う電圧勾配を生成することができる空気力学的イオン収束装置10である。
【0041】
増大された電圧勾配は、ここでは、どのような実際の電圧が印加されようとも、装置を通る所望の軌道へ向けてイオンを動かす電圧勾配として定義されることに注意すべきである。
【0042】
かくて、本発明は、空気力学的イオン収束装置10の少なくとも一部に電位を印加するための手段を備える。図4は、電圧を印加することができる空気力学的イオン収束装置10の一つの実施の形態の概略断面図として提供される。この図において、入口開口12は、少なくとも僅かに導電性であるように修正された部分50内に配置されるとして図示されている。導電性は、部分50への電位の印加を可能とする、炭素のような導電材料の導入によって可能にされる。
【0043】
電圧勾配は種々の方法で空気力学的イオン収束装置10内に生成することができ、多くの方法が本発明に適切であることを理解すべきである。例えば、使用される材料の導電率は電圧勾配を得るために変えることができる。更に、空気力学的イオン収束装置10の長さの部分に沿って、個別のセグメント又はリングを配置することができる。また、導電インクや他の種類の電極トレースを種々の間隔で配置してもよい。本発明にとって重要なのは、材料の抵抗率及び/又は材料の断面積の変化における段階的変化を作ることによって電圧勾配を形成することができることである。こうして、全部のこうした方法は本発明の範囲内に入るものと考えられる。
【0044】
空気力学的イオン収束装置10の僅かに導電性である部分として用いるのに適した材料は沢山存在する。これらの材料には、ポリエチールイミド及びポリアミドイミドが含まれる。これらの材料は比較的高抵抗であるが、電圧勾配を生成する電圧の印加を可能とするに足る導電率を有する。電圧勾配はその特性を予測するためにソフトウェアでモデル化することができるが、これは所望の電圧勾配を得るためには必要でない。一般に、電圧勾配は、空気力学的イオン収束装置10へ導入されているエレクトロスプレー・イオン噴流を一層収束させるように機能する。
【0045】
電源18は部分50に電位を与えるために用いられる。空気力学的イオン収束装置10に与えられる電位の大きさは、実験によって容易に決定される。したがって、所望のように本発明を実施する有効性を証明する実験結果に注目することは有用である。本発明のエレクトロスプレー・イオン噴流収束という特徴を試験するために、イオン信号増強が研究された。
【0046】
一連のレセルピン濃度について、(1)空気力学的イオン収束装置10がない場合、(2)空気力学的イオン収束装置10を用い且つ電圧(1.9〜2.0kV)を印加するがベンチュリ誘発ガス・フローがない場合、(3)空気力学的イオン収束装置10及びベンチュリ誘発ガス・フローを用いるが電圧を印加しない場合、(4)空気力学的イオン収束装置10、ベンチュリ誘発ガス・フロー及び電圧印加を用いる場合という条件の下で分析した。統計的な考慮のために、各測定について10個の決定がなされた。毛細管インターフェースは75度まで加熱された。
【0047】
これらの実験においては、自家製の毛細管インレットが付いたJAGUAR(登録商標)飛行時間質量分析計を用いて、本発明のイオン収束を試験した。アルミニウム空気増幅器をステンレススチールから加工し、エレクトロスプレーの先端と質量分析計の毛細管インレットとの間に配置した。2つの高圧電源を接続し、エレクトロスプレーの先端を2.8〜4.0kVに、空気力学的イオン収束装置10を0.0〜3.0kVに、毛細管インレット26を300Vに、スキマーを65Vにそれぞれ設定した。空気力学的イオン収束装置10は入口開口12に電圧が印加されているときを除いて接地された。種々のレセルピン溶液が毎分1.5μLの注入速度で導入された。
【0048】
図5A〜図5Dは質量スペクトルの例を示しており、図5Aは空気力学的イオン収束装置がない場合、図5Bは空気力学的イオン収束装置を用い電圧を印加するが収束型ガス・フローがない場合、図5Cは空気力学的イオン収束装置と収束型ガス・フローを用いるが電圧を印加しない場合、図5Dは空気力学的イオン収束装置と収束型ガス・フローを用い且つ電圧を印加する場合の例を示している。
【0049】
これらの実験は、エレクトロスプレーの先端を軸方向に空気力学的イオン収束装置10の入口開口12の6mmだけ内側に位置させ、毛細管インレット26を空気力学的イオン収束装置10の出口開口16の22.5mmだけ内側に位置させて(すなわち、エレクトロスプレーの先端を軸方向に毛細管インレット26から14mm離して)実施された。
【0050】
空気力学的イオン収束装置10において所望の大気流と電圧印加とを用いたとき、イオン信号強度の最大の増加が観察された。空気力学的イオン収束装置10を用い、収束型ガス・フローなしではあるが電圧を印加する場合には、イオン信号強度は空気力学的イオン収束装置を用いない場合に比べて50パーセント以上増加した。空気力学的イオン収束装置10を通るガス・フローを用いるが電圧を印加しない場合には、5倍の増加(増幅係数)が得られた。ベンチュリ誘発ガス・フローを用いる空気力学的イオン収束装置10に1.9〜20.kVの電圧を印加すると、イオン信号強度の18倍の増加が得られた。
【0051】
上記のようにエレクトロスプレーの先端と毛細管インレット26との最適な位置を見出すために、測定されたイオン強度が最大になるまで、エレクトロスプレーの先端と空気力学的イオン収束装置10と毛細管インレット26との位置を軸方向に修正した。これは、エレクトロスプレーの先端を入口開口の内側12mmから入口開口の外側20mmまで1mmの増分で移動させ、各増分毎にエレクトロスプレーの先端と空気力学的イオン収束装置10とを軸方向に一緒に移動させて、毛細管インレット26が出口開口16の25.5mm内側から出口開口の8.5mm外側まで軸方向に位置させることによって達成された。エレクトロスプレーの先端が空気力学的イオン収束装置10の入口開口の内側6mmに軸方向に位置し、毛細管インレット26が出口開口16の22.5mm内側に軸方向に位置するとき、イオン強度がピーク値に達することが見出された。
【0052】
これらの2つの実験の結果は図6Aと図6Bとに示されている。図6Aは、ノズルが空気力学的イオン収束装置10の出口開口16の22.5mm内側に軸方向に固定されたときの、エレクトロスプレーの先端と毛細管インレット26との間の距離の関数としての基本ピーク強度を示している。図6Bは、ノズルが空気力学的イオン収束装置10の入口開口12の6mm内側に軸方向に固定されたときの、エレクトロスプレーの先端と毛細管インレット26との間の距離の関数としての基本ピーク強度を示している。
【0053】
また、大きなイオン信号強度を維持するためには、エレクトロスプレーの先端と毛細管インレット26との位置は比較的広い範囲でよいことが見出された。エレクトロスプレーの先端と毛細管インレット26との間の距離が20mmであっても、イオン強度は、図6Cに示す、空気力学的イオン収束装置10なしでエレクトロスプレーの先端をサンプリング・オリフィス22の1mm前方に配置したときよりも大きかった。
【0054】
エレクトロスプレーの先端又は毛細管インレットの最適位置からの軸外距離とイオン強度との間の関係を評価するため、エレクトロスプレーの先端と毛細管インレットとのうちの一方を最適位置に軸方向に固定し、他方を軸外に移動させた。エレクトロスプレーの先端を±2mmだけ軸外に移動させ、毛細管インレットを軸方向に固定したとき、図7Aに示すようにイオン強度は40パーセント減少した。毛細管インレットを±2mmだけ軸外に移動させ、エレクトロスプレーの先端を軸方向に固定したとき、図7Bに示すようにイオン強度は19パーセント減少した。エレクトロスプレーの先端又は毛細管インレットを±1mmだけ軸外に移動させたとき、イオン信号強度の低下は極めて僅かしか観察されなかった。
【0055】
最後に、図8に示すように、基本ピーク強度が、空気力学的イオン収束装置10を最適な位置に配置した状態で、濃度に対してプロットされている。線形回帰後に、信号対雑音比の3倍に対応する濃度に基づいて方法検出限度を計算した。方法検出限度の34倍の改善が得られた。検体イオン強度の増強に加えて、空気力学的イオン収束装置10はバックグランド化学雑音をも抑圧する。
【0056】
イオン信号強度の利得は、空気力学的イオン収束装置10がエレクトロスプレーを安定化し且つイオンのイオン検出装置20への伝導を改善することができる能力の結果である。脱溶媒和を改善し、放電の可能性を低減するために、エレクトロスプレーの先端を従来のエレクトロスプレーの場合よりもサンプリング・オリフィス22から離して配置することができる。空気力学的イオン収束装置10の別の利点は、エレクトロスプレーを毛細管インレット26へ真っ直ぐに向かう軸方向に沿って位置させることができることである。イオンを中性体から分離し且つ脱溶媒和を改善するためにエレクトロスプレーの先端を毛細管インレット26に関して軸外に位置させる複雑な装置は不要である。
【0057】
理解させるように、上記の装置は本発明の原理の適用の単なる例示にすぎない。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び代替の装置を工夫することができよう。添付の特許請求の範囲はこうした修正及び装置をも含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の原理にしたがって作られた第1の実施の形態の素子の斜視図である。
【図2】本発明の空気力学的イオン収束装置の概略断面図である。
【図3】イオン検出装置へ供給するためにイオンを収束させるイオン軌道を生成するのに用いられる所望のエア・フローを示す、空気力学的イオン収束装置の断面図である。
【図4】電圧勾配を生成するために電位の印加を可能にするよう修正された部分に関して一層詳細に示す、図3の空気力学的イオン収束装置の断面図である。
【図5A】空気力学的イオン収束装置なしで得られた質量スペクトルである。
【図5B】収束型ガス・フローがないが電圧が印加された空気力学的イオン収束装置により得られた質量スペクトルである。
【図5C】収束型ガス・フローがあるが電圧が印加されていない空気力学的イオン収束装置により得られた質量スペクトルである。
【図5D】収束型ガス・フローがあり電圧が印加された空気力学的イオン収束装置により得られた質量スペクトルである。
【図6A】エレクトロスプレーの先端と毛細管インレットとの間の距離の関数として基本ピーク強度を示すグラフである。
【図6B】エレクトロスプレーの先端と毛細管インレットとの間の距離の関数として基本ピーク強度を示すグラフである。
【図6C】空気力学的イオン収束装置がない場合の、エレクトロスプレーの先端と毛細管インレットとの間の距離の関数として基本ピーク強度を示すグラフである。
【図7A】エレクトロスプレーの先端が軸から±2mmだけ移動され、毛細管インレットが軸方向に固定されている場合のイオン強度のグラフである。
【図7B】毛細管インレットが軸から±2mmだけ移動され、エレクトロスプレーの先端が軸方向に固定されている場合のイオン強度のグラフである。
【図8】空気力学的イオン収束装置が最適な位置にあるときの、濃度に対して基本ピーク強度をプロットしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン検出器へのイオンの供給を改善するための空気力学的イオン収束装置であって、
入口開口と、
出口開口と、
前記入口開口の受け取り口と前記出口開口の供給口との間に配置された少なくとも1つのガス供給開口と、
前記少なくとも1つのガス供給開口の周囲に配置されたチャンバと、
前記少なくとも1つのガス供給開口を通り、前記出口開口の内面に沿ってガスの供給を可能にする、前記チャンバへのガス・インレットと、
を具備し、前記ガス・インレットを介して前記出口開口へ供給されたガスにより、前記入口開口で受け取られたイオンを、前記出口開口から出されるガスによって決定される軌道に沿って収束させる空気力学的イオン収束装置。
【請求項2】
前記入口開口が、受け取り端の方が開口が大きく、供給端の方が開口が小さくなるよう狭められた円錐台の形状を有する、請求項1に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項3】
前記入口開口が円筒形である、請求項1に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項4】
前記出口開口が前記入口開口に関して同軸状に配置される、請求項1に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項5】
前記出口開口が、受け取り端の方が開口が小さく、供給端の方が開口が大きくなる円錐台の形状を有する、請求項1に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項6】
前記出口開口が円筒形である、請求項1に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのガス供給開口の周囲に配置された前記チャンバが環状であり、前記少なくとも1つのガス供給開口を通って前記出口開口から出る円滑で等価されたガス・フローを生成するのを支援する、請求項1に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのガス供給開口が環状のギャップを有する、請求項7に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項9】
前記入口開口が、電圧が印加されるよう且つ長さに沿って電圧勾配が生じるよう、少なくとも部分的に導電性である材料から構成される、請求項1に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項10】
戦記入口開口が、少なくとも部分的に導電性である材料から構成され、前記入口開口の内面の導電度が、電圧が印加されたときに前記入口開口の長さに沿って電圧勾配を生成するよう長さに沿って変化する、請求項1に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項11】
イオン検出器へのイオンの供給を改善する方法であって、
(1)入口開口に入る非発散型ガス・フローを生成する空気力学的イオン収束装置を設け、イオンが所望の軌道に沿って収束されるように前記空気力学的イオン収束装置から排出されるイオンを収束するステップと、
(2)イオンが前記所望の軌道に沿って収束されるように前記空気力学的イオン収束装置にイオンを供給するステップと、
を備える方法。
【請求項12】
前記入口開口において収束型ガス・フローを生成するステップを更に備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記入口開口において同軸状のガス・フローを生成するステップを更に備える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
(1)ガス・フローが前記空気力学的イオン収束装置に注入されるよう、環状のガス・インレットを設けるステップと、
(2)ガスを流動させるとき出口開口の内面に沿ってガスが移動するように、前記ガス・フローがコアンダ効果を受けるようにするステップと、
を更に備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記空気力学的イオン収束装置から排出されるイオンの濃度分布に前記ガス・フローが影響することができるようにするステップを更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記空気力学的イオン収束装置の前記入口開口に電圧勾配を生成するステップを更に備え、
前記電圧勾配が前記空気力学的イオン収束装置の長さに沿って増大し、電位が前記入口開口の受け取り端で最も低く、前記入口開口の供給端で最も高い、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記空気力学的イオン収束装置に電圧を印加して、前記空気力学的イオン収束装置の前記入口開口を通って所望の軌道に沿って前記入口開口に供給されるイオンを収束させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記入口開口を、受け取り端での開口の方が大きく、供給端での開口の方が小さい円錐台の形状に作成し、電位を前記受け取り端から前記供給端へと増大させるステップを更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記入口開口の構成に用いられる材料の導電度を変え、電圧が前記入口開口の少なくとも一部分に印加されたときに前記入口開口の長さに沿って変化させるステップを更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記受け取り端から前記供給端へ向かって、前記入口開口の構成の際に用いられる材料の導電度を減少させるステップを更に備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
入口開口の少なくとも一部分に沿って電圧を印加して、前記空気力学的イオン収束装置によって受け取られてイオン検出器へ供給されるイオンの空間電荷斥力の効果に対抗するステップを更に備える、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
更に、
(1)入口開口の長さに沿って電圧を印加して、結果として生じる電圧勾配のために前記空気力学的イオン収束装置へ入るよう所望の軌道に沿ってイオンを収束させるステップと、
(2)イオン検出装置へ供給されるイオンの数を増すステップと、
を更に備える、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
(1)入口開口を設けるステップと、
(2)前記入口開口に関して出口開口を同軸状にするステップと、
(3)前記入口開口の供給端と前記出口開口の受け取り端との間に環状ギャップを設けるステップと、
(4)前記環状ギャップの周囲にチャンバを配置するステップと、
(5)前記環状ギャップを通り且つ前記出口開口の内面に沿ってガスを供給できるようにする、前記チャンバへのガス・インレットを設けるステップと、
を更に備え、前記ガス・インレットを通って前記出口開口へ供給されたガスにより、前記出口開口へ供給されたイオンを前記出口開口において所望の軌道に沿って収束させる、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
イオン検出器へのイオンの供給を改善する方法であって、
(1)入口開口を有する空気力学的イオン収束装置を設けるステップであって、前記入口開口の長さに沿って減少する電圧を前記入口開口に印加するステップと、
(2)イオンが所望の軌道に沿って収束されるよう、前記空気力学的イオン収束装置へイオンを供給するステップと、
を備える方法。
【請求項25】
電圧勾配を生成して、前記入口開口の長さ方向の軸に沿って前記入口開口へ供給されるイオンを収束させるステップを更に備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記入口開口を、受け取り端の方が開口が大きく、供給端の方が開口が小さいように狭まる円錐台の形状に作成し、電圧勾配を前記受け取り端から前記供給端へ増大させるステップを更に備える、請求項24に記載の方法
【請求項27】
前記入口開口の構成に用いられる材料の導電度を変化させて、導電度が変えられた前記入口開口の長さに沿って電圧勾配を生成するステップを更に備える、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記受け取り端から前記供給端へ向かって、前記入口開口の構成に用いられる材料の導電度を増大させるステップを更に備える、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記入口開口の長さに沿って電圧を印加して、前記空気力学的イオン収束装置によって受け取られてイオン検出器へ供給されるイオンの空間電荷斥力を克服するステップを更に備える、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記入口開口の長さに沿って電圧を印加して、イオン検出器へ供給されるイオンの数を増大させるステップを更に備える、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記入口開口が前記空気力学的イオン収束装置への非発散型大気流を生成するように前記空気力学的イオン収束装置を修正して、イオン検出器へ供給されるイオンの数が増すように前記空気力学的イオン収束装置から排出されるイオンを収束させるステップを更に備える、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記入口開口が前記空気力学的イオン収束装置への収束型大気流を生成するように前記空気力学的イオン収束装置を修正して、イオン検出器へ供給されるイオンの数が増すように前記空気力学的イオン収束装置から排出されるイオンを収束させるステップを更に備える、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記入口開口が前記空気力学的イオン収束装置への同軸状大気流を生成するように前記空気力学的イオン収束装置を修正して、イオン検出器へ供給されるイオンの数が増すように前記空気力学的イオン収束装置から排出されるイオンを収束させるステップを更に備える、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
(1)ガスが前記空気力学的イオン収束装置に注入されるよう、環状のガス・インレットを設けるステップと、
(2)ガスを流動させるときガスが前記環状ギャップの縁の周囲を通り、次いで出口開口の内面に沿って移動するように、前記ガスがコアンダ効果を受けるようにするステップと、
を備える、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
ガスが大気流を生成することができるステップを更に備え、前記空気力学的イオン収束装置へ注入されたイオンが前記入口開口へ引かれる大気流によって決定される軌道に沿って収束させられる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
イオン検出器へのイオンの供給を改善するための空気力学的イオン収束装置であって、
入口開口と、
出口開口と、
前記入口開口と前記出口開口との間で軌道に沿ってイオンを導くための手段と、
を具備し、イオンが前記軌道に沿って収束されて、前記イオン検出器へのイオンの供給を可能にする空気力学的イオン収束装置。
【請求項37】
前記出口開口に隣接する軌道に沿ってイオンを導くための手段を更に備える、請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項38】
イオンを導くための前記手段が、前記空気力学的イオン収束装置へガスを供給するための手段を更に備え、
前記入口開口を通って大気流を引くことにより、ガスが前記空気力学的イオン収束装置内でイオンが従う軌道を決定する、
請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項39】
イオンを導くための前記手段が、前記空気力学的イオン収束装置へガスを供給するための手段を更に備え、
前記空気力学的イオン収束装置への所望の大気流を生成することによりイオンが従う軌道をガスが決定する、
請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項40】
ガスを供給するための前記手段が、前記入口開口への非発散型ガス・フローを生成して、イオンに対する所望の軌道を生成するための手段を更に備える、請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項41】
ガスを供給するための前記手段が、前記入口開口への収束型ガス・フローを生成して、イオンに対する所望の軌道を生成するための手段を更に備える、請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項42】
ガスを供給するための前記手段が、前記入口開口への同軸状ガス・フローを生成して、イオンに対する所望の軌道を生成するための手段を更に備える、請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項43】
ガスを供給するための前記手段が、前記入口開口と前記出口開口との間に配置されてガスの流れを前記空気力学的イオン収束装置へ均等に導く環状ギャップを更に備える、請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項44】
ガスを供給するための前記手段が、ガスの流れを均等に導くよう複数の開口を更に備える、請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項45】
ガスを供給するための前記手段が、ガスを前記入口開口へ供給してガスの流れを均等に導くための手段を更に備える、請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項46】
電圧勾配生成手段を更に備え、
前記空気力学的イオン収束装置へ供給されるイオンを前記電圧勾配生成手段によって収束して、前記イオン検出器へ供給され得るイオンの濃度を増大させる、
請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項47】
前記電圧勾配生成手段が、少なくとも部分的に導電性である材料を用いて前記入口開口の少なくとも一部分を構成し、前記入口開口に電圧を印加して前記入口開口の長さに沿って電圧勾配を生成する、請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項48】
前記電圧勾配生成手段が、少なくとも部分的に導電性である材料を用いて前記入口開口の少なくとも一部分を構成し、前記入口開口の導電度を前記入口開口の長さに沿って変えて、前記入口開口に電圧が印加されたときに前記入口開口の長さに沿って電圧勾配を生成する、請求項36に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項49】
イオン検出器へのイオンの供給を改善するための空気力学的イオン収束装置であって、
前記空気力学的イオン収束装置へ入る非発散型大気流を生成して、該大気流によって決定される所望の軌道に沿ってイオンを収束させるための手段を備える空気力学的イオン収束装置。
【請求項50】
電圧勾配生成手段を更に備え、
前記空気力学的イオン収束装置へ供給されるイオンを前記電圧勾配生成手段によって収束して、イオン検出器へ供給されるイオンの濃度を増す、
請求項49に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項51】
(1)イオンを受け取る入口開口手段と、
(2)イオンをイオン検出器へ供給する出口開口手段と、
(3)前記空気力学的イオン収束装置へガスを供給するガス供給手段と、
(4)ガスの流れを前記空気力学的イオン収束装置へ均等に導くチャンバ手段と、
(5)前記チャンバ手段へガスを供給するガス・インレットと、
を更に備え、
前記入口開口手段へ供給されるイオンを、前記出口開口と同軸状の軌道に沿って収束させる、請求項50に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項52】
前記入口開口手段が、受け取り端の方が開口が大きく、供給端の方が開口が小さいよう狭められた円錐台の形状を有する、請求項51に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項53】
イオン検出器へのイオンの供給を改善するための空気力学的イオン収束装置であって、
電圧勾配生成手段を備え、
前記空気力学的イオン収束装置へ供給されるイオンを前記電圧勾配生成手段によって収束させて、前記イオン検出器へ供給されるイオンの濃度を増す、
空気力学的イオン収束装置。
【請求項54】
前記空気力学的イオン収束装置へ入る非発散型大気流を生成するための手段を更に備え、該大気流によって決定される所望の軌道に沿ってイオンを収束させる、請求項53に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項55】
(1)イオンを受け取る入口開口手段と、
(2)イオンをイオン検出器へ供給する出口開口手段と、
(3)前記空気力学的イオン収束装置へガスを供給するガス供給手段と、
(4)ガスの流れを前記空気力学的イオン収束装置へ均等に導くチャンバ手段と、
(5)前記チャンバ手段へガスを供給するガス・インレットと、
を更に備え、
前記入口開口手段へ供給されるイオンを、前記出口開口と同軸状の軌道に沿って収束させる、請求項54に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項56】
少なくとも部分的に導電性である材料から構成され、電圧を印加することができ、それによって長さに沿って電圧勾配を生成する、請求項55に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項57】
前記入口開口が少なくとも部分的に導電性である、請求項56に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項58】
前記出口開口が少なくとも部分的に導電性である、請求項56に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項59】
前記電圧勾配生成手段が、前記空気力学的イオン収束装置内に複数の個別の且つ導電性のセグメントを備え、
前記複数のセグメントのそれぞれに印加される電圧を制御することによって電圧勾配を生成する、
請求項53に記載の空気力学的イオン収束装置。
【請求項60】
イオン検出器へのイオンの供給を改善するための空気力学的イオン収束装置であって、
入口開口と、
出口開口と、
前記出口開口からガスを引き、前記入口開口と前記出口開口との間で軌道に沿ってイオンを導くためのポンプ手段と、
を具備し、イオンを前記軌道に沿って収束させて前記イオン検出器へのイオンの供給を可能にする空気力学的イオン収束装置。
【請求項61】
イオン検出器へのイオンの供給を改善するための空気力学的イオン収束装置であって、
入口開口と、
出口開口と、
前記空気力学的イオン収束装置へ入る発散型大気流を生成して、前記大気流によって決定される所望の軌道に沿ってイオンを収束させるための手段と、
を具備する空気力学的イオン収束装置。
【請求項62】
イオン検出器へのイオンの供給を改善するための空気力学的イオン収束装置であって、
電圧勾配生成手段を備え、
前記空気力学的イオン収束装置へ供給されるイオンを前記電圧勾配生成手段によって収束させて、前記イオン検出器へ供給されるイオンの濃度を増す、
空気力学的イオン収束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−510905(P2006−510905A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562263(P2004−562263)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/040409
【国際公開番号】WO2004/057638
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【Fターム(参考)】