説明

空気吹出口部材取付部構造

【課題】主に、緊急時に、空気吹出口部材本体を奥側へ移動させて荷重をうまく吸収させ得るようにする。
【解決手段】空気ダクト5の出側端部6に形成された接続用拡管部18に対して、筒状の空気吹出口部材本体14の奥側の挿入用端部19を挿入配置可能とすると共に、空気吹出口部材本体14の挿入用端部19よりも手前側の側面14aに、接続用拡管部18よりも外方へ張出す張出部49が形成された空気吹出口部材取付部構造であって、空気吹出口部材本体14の奥側の側面14aと、張出部49の奥側部分49aとの間に、緊急時に空気吹出口部材本体14に作用する奥向きの荷重入力によって、空気吹出口部材本体14が接続用拡管部18および空気ダクト5を変形しつつその内側へ進入するのを補助可能な、緊急時進入補助構造部71を設けるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気吹出口部材取付部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設けられている。このインストルメントパネルには、通常、空調装置の空気吹出部が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような空気吹出部1は、例えば、図6に示すようなものとされている。
【0004】
即ち、インストルメントパネル2には、空気吹出部1を構成するための開口部3が形成されている。この開口部3に対し、手前側から奥側へ向けて樹脂製の空気吹出口部材4が挿入配置されている(空気吹出口部材4については、図7も併せて参照のこと)。そして、この空気吹出口部材4は、インストルメントパネル2に対して係止固定されると共に、インストルメントパネル2の内部に配設された樹脂製の空気ダクト5の出側端部6に対して接続されている。
【0005】
上記した空気吹出口部材4は、手前側の端部に空気吹出口11を有し、奥側の端部に空気取入口12を有し、内部に両者をつなぐ空気通路13を有して、直線的に延びる筒状の空気吹出口部材本体14を主に備えている。空気吹出口部材本体14は、軸線方向15(長手方向、この場合には車両前後方向)に対してほぼ均一断面で且つほぼ均一肉厚の筒状体とされている。よって、空気通路13も、均一断面の直線的なものとされている。この場合、空気吹出口部材本体14は、上下左右の側面を有する角筒状とされているが、円形状の側面を有する円筒状やその他の断面形状を有していても良い。
【0006】
この空気吹出口部材本体14の手前側の端部の外周には、インストルメントパネル2の開口部3に対して係止固定するためのフランジ部17などが形成されている。なお、このフランジ部17やその周辺部分には、インストルメントパネル2に対して係止するための図示しない係止爪部などが適宜設けられている。
【0007】
また、空気吹出口部材本体14の奥側の端部は、空気ダクト5の出側端部6に形成された接続用拡管部18へ挿入配置可能な挿入用端部19とされている。また、空気吹出口部材本体14の奥側の端部の外周には、空気ダクト5の接続用拡管部18の内周との間をシール可能なシール部21が全周に亘って取付けられている。このシール部21は、両者間に形成される周方向の隙間22よりも若干厚肉とされて、この隙間22に圧縮状態で介装可能なウレタンシール23などとされている。
【0008】
そして、空気吹出口部材本体14内部に形成された空気通路13の手前側の部分には、風向調整機構25としての横ルーバ26や縦ルーバ27が設けられている。これらの横ルーバ26や縦ルーバ27は、それぞれが平行に配設された複数枚のルーバ羽根28,29によって構成されている。各ルーバ羽根28,29は、その両端部を、空気吹出口部材本体14の側面に軸部31,32を介して回動可能に軸支されている。
【0009】
また、空気吹出口部材本体14内部に形成された空気通路13の軸線方向15の中間部には、空気通路13を開閉するためのシャッター部33が設けられている。この場合、シャッター部33は、羽根形状をした一枚物のシャッターバルブ34によって構成されている。このシャッターバルブ34は、その両端部の中央部を、空気吹出口部材本体14の側面の幅中央部に回動中心軸部35を介して回動可能に軸支されている。なお、シャッター部33については、これに限るものではない。
【0010】
そして、空気吹出口部材本体14の手前側の外側部には、シャッター部33を空気吹出口部材本体14の手前端側から操作可能なシャッター操作部36が設けられている。この場合、シャッター操作部36は、空気吹出口部材本体14の手前側のフランジ部17に対して、その中心位置を回動自在に軸支された、ほぼ円板状のシャットダイヤル37とされている。
【0011】
更に、空気吹出口部材本体14の外側面には、空気吹出口部材本体14の軸線方向15に沿ってシャッター操作機構38が配設されている。このシャッター操作機構38は、シャッター操作部36とシャッター部33との間を、空気吹出口部材本体14の外側面を通して機構的に連結するものである。そのために、このシャッター操作機構38は、例えば、シャッターバルブ34の一方の回動中心軸部35に一端部を面直状態で取付けられた小リンクアーム41と、この小リンクアーム41の他端部とシャットダイヤル37の外周部との間を連結して、ほぼ上記軸線方向15へ延びる連結アーム42とを有するリンク機構部39とされている。この場合、小リンクアーム41は、空気吹出口部材本体14の外側面に沿って(斜め奥側へ)延びるものなどとされている。リンク機構部39は、シャッター操作部36と同じ側面に設けられている。この場合には、シャッター操作部36とリンク機構部39とは、空気吹出口部材本体14の下側の側面に設けられている。
【0012】
更に、空気吹出口部材本体14の外側面には、リンク機構部39の周囲を取囲むようにリンクガード部44が設けられている。このリンクガード部44は、奥壁部45と両側壁部46とを有する3面囲い状のものとされている。奥壁部45は、小リンクアーム41とシール部21との間の位置に、軸線方向15と直交する方向へ向けて延設されている。より詳しくは、奥壁部45は、接続状態で、空気ダクト5の出側端部6に形成された接続用拡管部18と緩衝しないようにするための余裕代47を有して、空気吹出口部材本体14の挿入用端部19よりも手前側に設けられている。また、両側壁部46は、小リンクアーム41およびシール部21の両側部で且つ、奥壁部45の両端部とフランジ部17との間の位置に、軸線方向15へ向けて延設されている。リンクガード部44は、リンク機構部39の動きを阻害しない最小限の範囲を取囲むように構成されている。リンクガード部44は、空気吹出口部材本体14の側面から段差48を有して立上がる張出部49とされている。この張出部49は、リンク機構部39や、シール部21や、接続用拡管部18よりも高くなる(空気吹出口部材本体14の側面から外方へ張出す)ように、その高さ寸法(張出量)を設定されている。なお、リンクガード部44は、空気吹出口部材本体14とは別体に形成して後付けするものとしても良いが、この場合には、空気吹出口部材本体14の外側面から面直に立上がるように一体に立設形成された保護リブ51などとされている。この保護リブ51は、均一肉厚のものとされている。
【0013】
一方、空気ダクト5は、空気ダクト本体53と、この空気ダクト本体53の出側端部6を拡管して成る、上記した接続用拡管部18とを有している。空気ダクト本体53(の少なくとも出側端部6)は、空気吹出口部材本体14(の少なくとも挿入用端部19)とほぼ等しい断面形状およびほぼ等しい口径を有している。空気ダクト本体53は、少なくとも出側端部6を、空気吹出口部材本体14の挿入用端部19と周方向の向きおよび軸線をほぼ合わせた状態で、インストルメントパネル2の開口部3と対向するように予め配置されている。
【0014】
また、接続用拡管部18は、奥側から手前側へ向けて口径を拡大するように傾斜する傾斜部55と、傾斜部55の手前側に設けられて、空気ダクト本体53および空気吹出口部材本体14の外周に対し、軸線方向15にほぼ平行で一回り口径が大きくなり、周方向にほぼ均一の隙間22を有し得るようにほぼ同心状に形成された平行部56と、平行部56の手前側に設けられて、平行部56よりも手前側へ向かって拡がるようにすることにより、空気吹出口部材本体14の平行部56への挿入を容易化可能なガイド用拡張部57とを有している。平行部56は、その内周面を、上記シール部21(ウレタンシール23)の外周面よりも若干小口径とすることにより、上記したようにシール部21(ウレタンシール23)を、圧縮状態で介在させ得るように設定している。
【0015】
更に、空気ダクト5は、軸線方向15に対しては、接続用拡管部18と空気吹出口部材本体14の挿入用端部19とが重複し、空気ダクト本体53と挿入用端部19とが重複しない間隔を有して配置されている。
【0016】
なお、上記空気吹出部1がベンチレータ61である場合には、空気吹出口部材4はベンチレータグリル62に相当し、空気ダクト5はベンチレータダクト63に相当する。
【0017】
このような構成によれば、インストルメントパネル2に形成された開口部3に対して、樹脂製の空気吹出口部材4を手前側から奥側へ向けて挿入することにより、空気吹出口部材4を、インストルメントパネル2に対して係止固定させると共に、空気吹出口部材4を、インストルメントパネル2の内部に配設された樹脂製の空気ダクト5の出側端部6に接続させるようにする。
【0018】
この際、空気吹出口部材4は、インストルメントパネル2の開口部3に対して、フランジ部17が係止されると共に、フランジ部17の周辺部分に設けられた図示しない係止爪部などによって係止固定される。また、空気吹出口部材4は、空気ダクト5の出側端部6に形成された接続用拡管部18(の平行部56)に対して挿入用端部19が挿入されることによって接続される。更に、挿入用端部19の外周に取付けられたウレタンシール23などのシール部21が、接続用拡管部18の平行部56の内周との隙間22に圧縮状態で介装されることにより、空気吹出口部材4と空気ダクト5との間がシールされる。
【特許文献1】特開平10−109533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記空気吹出口部材取付部構造では、以下のような問題があった。
【0020】
即ち、緊急時に、空気吹出口部材本体14に対して、奥向きの荷重が入力された場合に、張出部49であるリンクガード部44が、空気ダクト5の出側端部6に形成された接続用拡管部18と干渉して、空気吹出口部材本体14の奥側への移動を妨げることになるので、上記荷重をうまく吸収させることが難しくなっていた。
【0021】
そこで、図8に示すように、空気吹出口部材本体14のリンクガード部44と対応する外側面における挿入用端部19の位置に、リンクガード部44と高さが等しくなるように、或いは、段差48の影響がなくなるように、段差48と厚みが等しいウレタン材などの高さ調整部材65を貼付け、且つ、空気ダクト5の空気ダクト本体53および接続用拡管部18を、高さ調整部材65を含めた大きさの口径を有するものに変更し、空気吹出口部材本体14に対して、口径を大きくした空気ダクト本体53を、図6と比べて図中下方へ軸線をズラせて配置し、リンクガード部44と接続用拡管部18との干渉がなくなるようにして、緊急時に、空気吹出口部材本体14が空気ダクト本体53の内側へ進入し得るようにすることなどが検討されている。
【0022】
しかし、このようにした場合、空気吹出口部材本体14と空気ダクト本体53との間の接続部分に、両者の軸線のズレや口径の違い等によって、渦などの空気の乱れが生じるので、空気吹出部1としての基本性能が大幅に低下してしまうという問題が新たに発生する。
【0023】
また、空気ダクト本体53を口径の大きなものとすることにより、空気ダクト本体53などを設置するために必要な設置スペースが、より大きくなってしまうという問題も新たに発生する。
【0024】
更に、空気ダクト本体53の口径を大きくしたり、空気吹出口部材本体14に高さ調整部材65を貼付けたり、高さ調整部材65を貼付けた空気吹出口部材本体14を挿入できるようにインストルメントパネル2の開口部3を大きくしたりするのに、コストなどがかかってしまうという問題も新たに発生する。
【0025】
よって、このような問題が生じることのない、より有効な解決手段が求められている。
【0026】
なお、上記した以外にも、本発明に至る過程で新たな問題やその他の問題などが生じることが考えられるが、そのようなものについては、本発明の中で説明することによって、この欄での記載に代えることができるものとする。但し、必要な場合には、この欄に流用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、空気ダクトの出側端部に形成された接続用拡管部に対して、筒状の空気吹出口部材本体の奥側の挿入用端部を挿入配置可能とすると共に、前記空気吹出口部材本体の挿入用端部よりも手前側の側面に、前記接続用拡管部よりも外方へ張出す張出部が形成された空気吹出口部材取付部構造において、前記空気吹出口部材本体の奥側の側面と、前記張出部の奥側部分との間に、緊急時に空気吹出口部材本体へ入力される奥向きの荷重によって、空気吹出口部材本体が接続用拡管部および空気ダクトを変形しつつその内側へ進入するのを補助可能な、緊急時進入補助構造部を設けたことを特徴としている。
【0028】
請求項2に記載された発明は、上記において、前記緊急時進入補助構造部が、空気吹出口部材本体の奥側の側面と、前記張出部の奥側部分との間の段差をなくし得るように、両者間に設けられたスロープ部であることを特徴としている。
【0029】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記空気吹出口部材本体が、車両用インストルメントパネルに取付けられたベンチレータグリルであり、前記張出部が、前記空気吹出口部材本体の外側面に対し、軸線方向に沿って配設されたリンク機構部の周囲を取囲んで保護するリンクガード部であることを特徴としている。
【0030】
なお、上記は、それぞれ、所要の作用効果を発揮するための必要最小限の構成であり、上記構成の詳細や、上記されていない構成については、それぞれ自由度を有しているのは勿論である。そして、上記構成の記載から読取ることが可能な事項については、特に具体的に記載されていない場合であっても、その範囲内に含まれるのは勿論である。また、上記以外の構成を追加した場合には、追加した構成による作用効果が加わることになるのは勿論である。
【発明の効果】
【0031】
請求項1の発明によれば、空気ダクトの出側端部に形成された接続用拡管部に対して、筒状の空気吹出口部材本体の奥側の挿入用端部を挿入配置可能とすると共に、前記空気吹出口部材本体の挿入用端部よりも手前側の側面に、前記接続用拡管部よりも外方へ張出す張出部が形成された空気吹出口部材取付部構造において、前記空気吹出口部材本体の奥側の側面と、前記張出部の奥側部分との間に、緊急時に空気吹出口部材本体へ入力される奥向きの荷重によって、空気吹出口部材本体が接続用拡管部および空気ダクトを変形しつつその内側へ進入するのを補助可能な、緊急時進入補助構造部を設けたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、空気吹出口部材本体の奥側の側面と、前記張出部の奥側部分との間に設けた緊急時進入補助構造部が、緊急時に空気吹出口部材本体へ入力される奥向きの荷重によって、空気吹出口部材本体が接続用拡管部および空気ダクトを変形しつつその内側へ進入するのを補助する。これにより、上記荷重をうまく吸収させることができるようになる。しかも、緊急時進入補助構造部を設けるだけなので、空気吹出部の基本性能に影響がなく、設置スペースにも変化がなく、コストなどもかからないものとすることができる。
【0032】
請求項2の発明によれば、上記において、前記緊急時進入補助構造部が、空気吹出口部材本体の奥側の側面と、前記張出部の奥側部分との間の段差をなくし得るように、両者間に設けられたスロープ部であることにより、簡単でコストのかからない構成にて、うまく機能する緊急時進入補助構造部を実現することが可能となる。
【0033】
請求項3の発明によれば、上記において、前記空気吹出口部材本体が、車両用インストルメントパネルに取付けられたベンチレータグリルであり、前記張出部が、前記空気吹出口部材本体の外側面に対し、軸線方向に沿って配設されたリンク機構部の周囲を取囲んで保護するリンクガード部であることにより、ベンチレータグリルに対して上記荷重吸収を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、主に、緊急時に、空気吹出口部材本体を奥側へ移動させて荷重をうまく吸収させ得るようにすることを目的としている。
【0035】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0036】
なお、以下の実施例は、上記した背景技術や発明が解決しようとする課題などと密接な関係があるので、必要が生じた場合には、互いに、記載を流用したり、必要な修正を伴って流用したりすることができるものとする。
【実施例】
【0037】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
【0038】
まず、構成について説明する。
【0039】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設けられている。このインストルメントパネルには、通常、空調装置の空気吹出部が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0040】
このような空気吹出部1は、例えば、図6に示すようなものとされている。
【0041】
即ち、インストルメントパネル2(車両用インストルメントパネル)には、空気吹出部1を構成するための開口部3が形成されている。この開口部3に対し、手前側から奥側へ向けて樹脂製の空気吹出口部材4が挿入配置されている(空気吹出口部材4については、図7も併せて参照のこと)。そして、この空気吹出口部材4は、インストルメントパネル2に対して係止固定されると共に、インストルメントパネル2の内部に配設された樹脂製の空気ダクト5の出側端部6に対して接続されている。
【0042】
上記した空気吹出口部材4は、手前側の端部に空気吹出口11を有し、奥側の端部に空気取入口12を有し、内部に両者をつなぐ空気通路13を有して、直線的に延びる筒状の空気吹出口部材本体14を主に備えている。空気吹出口部材本体14は、軸線方向15(長手方向、この場合には車両前後方向)に対してほぼ均一断面で且つほぼ均一肉厚の筒状体とされている。よって、空気通路13も、均一断面の直線的なものとされている。この場合、空気吹出口部材本体14は、上下左右の側面を有する角筒状とされているが、円形状の側面を有する円筒状やその他の断面形状を有していても良い。
【0043】
この空気吹出口部材本体14の手前側の端部の外周には、インストルメントパネル2の開口部3に対して係止固定するためのフランジ部17などが形成されている。なお、このフランジ部17やその周辺部分には、インストルメントパネル2に対して係止するための図示しない係止爪部などが適宜設けられている。
【0044】
また、空気吹出口部材本体14の奥側の端部は、空気ダクト5の出側端部6に形成された接続用拡管部18へ挿入配置可能な挿入用端部19とされている。また、空気吹出口部材本体14の奥側の端部の外周には、空気ダクト5の接続用拡管部18の内周との間をシール可能なシール部21が全周に亘って取付けられている。このシール部21は、両者間に形成される周方向の隙間22よりも若干厚肉とされて、この隙間22に圧縮状態で介装可能なウレタンシール23などとされている。
【0045】
そして、空気吹出口部材本体14内部に形成された空気通路13の手前側の部分には、風向調整機構25としての横ルーバ26や縦ルーバ27が設けられている。これらの横ルーバ26や縦ルーバ27は、それぞれが平行に配設された複数枚のルーバ羽根28,29によって構成されている。各ルーバ羽根28,29は、その両端部を、空気吹出口部材本体14の側面に軸部31,32を介して回動可能に軸支されている。
【0046】
また、空気吹出口部材本体14内部に形成された空気通路13の軸線方向15の中間部には、空気通路13を開閉するためのシャッター部33が設けられている。この場合、シャッター部33は、羽根形状をした一枚物のシャッターバルブ34によって構成されている。このシャッターバルブ34は、その両端部の中央部を、空気吹出口部材本体14の側面の幅中央部に回動中心軸部35を介して回動可能に軸支されている。なお、シャッター部33については、これに限るものではない。
【0047】
そして、空気吹出口部材本体14の手前側の外側部には、シャッター部33を空気吹出口部材本体14の手前端側から操作可能なシャッター操作部36が設けられている。この場合、シャッター操作部36は、空気吹出口部材本体14の手前側のフランジ部17に対して、その中心位置を回動自在に軸支された、ほぼ円板状のシャットダイヤル37とされている。
【0048】
更に、空気吹出口部材本体14の外側面には、空気吹出口部材本体14の軸線方向15に沿ってシャッター操作機構38が配設されている。このシャッター操作機構38は、シャッター操作部36とシャッター部33との間を、空気吹出口部材本体14の外側面を通して機構的に連結するものである。そのために、このシャッター操作機構38は、例えば、シャッターバルブ34の一方の回動中心軸部35に一端部を面直状態で取付けられた小リンクアーム41と、この小リンクアーム41の他端部とシャットダイヤル37の外周部との間を連結して、ほぼ上記軸線方向15へ延びる連結アーム42とを有するリンク機構部39とされている。この場合、小リンクアーム41は、空気吹出口部材本体14の外側面に沿って(斜め奥側へ)延びるものなどとされている。リンク機構部39は、シャッター操作部36と同じ側面に設けられている。この場合には、シャッター操作部36とリンク機構部39とは、空気吹出口部材本体14の下側の側面に設けられている。
【0049】
更に、空気吹出口部材本体14の外側面には、リンク機構部39の周囲を取囲むようにリンクガード部44が設けられている。このリンクガード部44は、奥壁部45と両側壁部46とを有する3面囲い状のものとされている。奥壁部45は、小リンクアーム41とシール部21との間の位置に、軸線方向15と直交する方向へ向けて延設されている。より詳しくは、奥壁部45は、接続状態で、空気ダクト5の出側端部6に形成された接続用拡管部18と緩衝しないようにするための余裕代47を有して、空気吹出口部材本体14の挿入用端部19よりも手前側に設けられている。また、両側壁部46は、小リンクアーム41およびシール部21の両側部で且つ、奥壁部45の両端部とフランジ部17との間の位置に、軸線方向15へ向けて延設されている。リンクガード部44は、リンク機構部39の動きを阻害しない最小限の範囲を取囲むように構成されている。リンクガード部44は、空気吹出口部材本体14の側面から段差48を有して立上がる張出部49とされている。この張出部49は、リンク機構部39や、シール部21や、接続用拡管部18よりも高くなる(空気吹出口部材本体14の側面から外方へ張出す)ように、その高さ寸法(張出量)を設定されている。なお、リンクガード部44は、空気吹出口部材本体14とは別体に形成して後付けするものとしても良いが、この場合には、空気吹出口部材本体14の外側面から面直に立上がるように一体に立設形成された保護リブ51などとされている。この保護リブ51は、均一肉厚のものとされている。
【0050】
一方、空気ダクト5は、空気ダクト本体53と、この空気ダクト本体53の出側端部6を拡管して成る、上記した接続用拡管部18とを有している。空気ダクト本体53(の少なくとも出側端部6)は、空気吹出口部材本体14(の少なくとも挿入用端部19)とほぼ等しい断面形状およびほぼ等しい口径を有している。空気ダクト本体53は、少なくとも出側端部6を、空気吹出口部材本体14の挿入用端部19と周方向の向きおよび軸線A,Bをほぼ合わせた状態で(図3参照)、インストルメントパネル2の開口部3と対向するように予め配置されている。
【0051】
また、接続用拡管部18は、奥側から手前側へ向けて口径を拡大するように傾斜する傾斜部55と、傾斜部55の手前側に設けられて、空気ダクト本体53および空気吹出口部材本体14の外周に対し、軸線方向15にほぼ平行で一回り口径が大きくなり、周方向にほぼ均一の隙間22を有し得るようにほぼ同心状に形成された平行部56と、平行部56の手前側に設けられて、平行部56よりも手前側へ向かって拡がるようにすることにより、空気吹出口部材本体14の平行部56への挿入を容易化可能なガイド用拡張部57とを有している。平行部56は、その内周面を、上記シール部21(ウレタンシール23)の外周面よりも若干小口径とすることにより、上記したようにシール部21(ウレタンシール23)を、圧縮状態で介在させ得るように設定している。
【0052】
更に、空気ダクト5は、軸線方向15に対しては、接続用拡管部18と空気吹出口部材本体14の挿入用端部19とが重複し、空気ダクト本体53と挿入用端部19とが重複しない間隔を有して配置されている。
【0053】
なお、上記空気吹出部1がベンチレータ61である場合には、空気吹出口部材4はベンチレータグリル62に相当し、空気ダクト5はベンチレータダクト63に相当する。
【0054】
以上が、以下の各実施例においても共通な構成である。なお、以上の構成は、上記した従来例のものとほぼ同様である。
【0055】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにする。
【0056】
(1)空気吹出口部材本体14の奥側の側面14aと、張出部49の奥側部分49aとの間に、緊急時に空気吹出口部材本体14へ入力される奥向きの荷重F(図3参照)によって、空気吹出口部材本体14が接続用拡管部18および空気ダクト5を変形しつつその内側へ進入するのを補助可能な、緊急時進入補助構造部71を設けるようにする。
【0057】
ここで、緊急時進入補助構造部71は、少なくとも、空気吹出口部材本体14の奥側の側面14aにおける、張出部49の部分周辺に設けられるようにする。この場合には、緊急時進入補助構造部71は、空気吹出口部材本体14における、空気吹出口部材本体14の張出部49が設けられている側面14aに対して設けられる。また緊急時進入補助構造部71は、緊急時の荷重入力によって作動するが、通常時の軽い荷重入力によっては作動しない程度のものとする。
【0058】
(2)緊急時進入補助構造部71を、空気吹出口部材本体14の奥側の側面14aと、張出部49の奥側部分49aとの間の段差48をなくし得るように、両者間に設けられたスロープ部74とする。
【0059】
ここで、スロープ部74は、奥側へ進むに従い空気吹出口部材本体14の側面14aに向かう傾斜を有するものとされる。このスロープ部74は、接続用拡管部18および空気ダクト5(空気ダクト本体53、ベンチレータダクト63)の軸線Aを、空気吹出口部材本体14の軸線Bに対し、張出部49の張出方向(図3中下方)へズラし得るものとされる。そして、このスロープ部74の傾斜の形状によって、緊急時の荷重F吸収モードを設定し得るように構成する(荷重F吸収モード設定用傾斜形状部)。例えば、短時間に急激に荷重Fを吸収させるようにする場合には、スロープ部74の傾斜の形状を、可能な範囲で急傾斜などとする。反対に、時間をかけて荷重Fを緩やかに吸収させるようにする場合には、スロープ部74の傾斜の形状を、可能な範囲で緩傾斜などとする。また、荷重Fを均一に吸収させるようにする場合には、スロープ部74の傾斜の形状を直線的なものとする。反対に、荷重Fを均一でないように吸収させるようにする場合には、スロープ部74の傾斜の形状を可能な範囲で曲線的なものとする。または、スロープ部74を軸線方向15に領域分割してこれらを組合せて設けるようにすることなども可能である。或いは、スロープ部74の傾斜の形状は、発生する反力を考慮して設定することも可能である。
【0060】
(3)そして、例えば、空気吹出口部材本体14が、車両用インストルメントパネル2に取付けられたベンチレータグリル62である場合には、空気吹出口部材本体14の外側面(側面14a)に対し、軸線方向15に沿って配設されたリンク機構部39の周囲を取囲んで保護するリンクガード部44を張出部49として、このリンクガード部44に緊急時進入補助構造部71(スロープ部74)を設けるようにする。
【0061】
この場合、緊急時進入補助構造部71(スロープ部74)は、リンクガード部44の奥壁部45と、空気吹出口部材本体14の奥側の側面14aとの間に設けられた側面視三角形状の傾斜リブ76などとする。この傾斜リブ76は、リンクガード部44の奥壁部45の両側部に2個設けられているが、奥壁部45の中央部などに1個設けるようにしても、3個以上を分散形成するようにしても良い。
【0062】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0063】
インストルメントパネル2に形成された開口部3に対して、樹脂製の空気吹出口部材4を手前側から奥側へ向けて挿入することにより、空気吹出口部材4を、インストルメントパネル2に対して係止固定させると共に、空気吹出口部材4を、インストルメントパネル2の内部に配設された樹脂製の空気ダクト5の出側端部6に接続させるようにする。
【0064】
この際、空気吹出口部材4は、インストルメントパネル2の開口部3に対して、フランジ部17が係止されると共に、フランジ部17の周辺部分に設けられた図示しない係止爪部などによって係止固定される。また、空気吹出口部材4は、空気ダクト5の出側端部6に形成された接続用拡管部18(の平行部56)に対して挿入用端部19が挿入されることによって接続される。更に、挿入用端部19の外周に取付けられたウレタンシール23などのシール部21が、接続用拡管部18の平行部56の内周との隙間22に圧縮状態で介装されることにより、空気吹出口部材4と空気ダクト5との間がシールされる。
【0065】
この構成によれば、空気吹出口部材本体14と空気ダクト本体53との間の接続部分に、軸線A,Bのズレや口径の違い等がないため、渦などの空気の乱れが生じることがないので、空気吹出部1としての基本性能の低下を防止することができる。
【0066】
また、空気ダクト本体53と空気吹出口部材本体14との口径を、ほぼ等しくできるので、空気ダクト本体53の設置スペースが、大きくなることがなく、口径の違いによるコストの増加などもない。
【0067】
そして、緊急時に、空気吹出口部材本体14に対して、奥向きの荷重Fが入力された場合に、図3〜図5に順に示すように、空気吹出口部材本体14が、接続用拡管部18および空気ダクト5(空気ダクト本体53、ベンチレータダクト63)を変形しつつその内側へ進入することによって、上記荷重Fをうまく吸収させるように機能する。
【0068】
即ち、図3の荷重入力直前の状態から、図4に示すように、荷重入力によって空気吹出口部材本体14が奥側へ移動を開始すると、緊急時進入補助構造部71が接続用拡管部18に当接し、緊急時進入補助構造部71のスロープ部74によって、接続用拡管部18および空気ダクト5(空気ダクト本体53、ベンチレータダクト63)の軸線Aが、空気吹出口部材本体14の軸線Bに対し、張出部49の張出方向(図3中下方)へズラされることとなる。
【0069】
これによって、接続用拡管部18および空気ダクト5(空気ダクト本体53、ベンチレータダクト63)は、張出部49の側と、張出部49とは反対の側との変形量がほぼ均等となる状態とされる。
【0070】
そのため、図5に示すように、空気吹出口部材本体14が、接続用拡管部18および空気ダクト5(空気ダクト本体53、ベンチレータダクト63)を変形しつつその内側へ無理なく確実に進入して、好適に荷重Fを吸収することが可能となる。なお、図4、図5では、シール部21(ウレタンシール23)の記載を省略している。
【0071】
このように、この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0072】
(1)空気ダクト5の出側端部6に形成された接続用拡管部18に対して、筒状の空気吹出口部材本体14の奥側の挿入用端部19を挿入配置可能とすると共に、空気吹出口部材本体14の挿入用端部19よりも手前側の側面14aに、接続用拡管部18よりも外方へ張出す張出部49が形成された、空気吹出口部材取付部構造において、空気吹出口部材本体14の奥側の側面14aと、張出部49の奥側部分49aとの間に、緊急時に空気吹出口部材本体14へ入力される奥向きの荷重Fによって、空気吹出口部材本体14が接続用拡管部18および空気ダクト5を変形しつつその内側へ進入するのを補助可能な、緊急時進入補助構造部71を設けたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0073】
即ち、空気吹出口部材本体14の奥側の側面14aと、張出部49の奥側部分49aとの間に設けた緊急時進入補助構造部71が、緊急時に空気吹出口部材本体14へ入力される奥向きの荷重Fによって、空気吹出口部材本体14が接続用拡管部18および空気ダクト5を変形しつつその内側へ進入するのを補助する。これにより、上記荷重Fをうまく吸収させることができるようになる。しかも、緊急時進入補助構造部71を設けるだけなので、空気吹出部1の基本性能に影響がなく、設置スペースにも変化がなく、コストなどもかからないものとすることができる。
【0074】
(2)上記において、緊急時進入補助構造部71が、空気吹出口部材本体14の奥側の側面14aと、張出部49の奥側部分49aとの間の段差48をなくし得るように、両者間に設けられたスロープ部74であることにより、簡単でコストのかからない構成にて、うまく機能する緊急時進入補助構造部71を実現することが可能となる。
【0075】
(3)上記において、空気吹出口部材本体14が、車両用インストルメントパネル2に取付けられたベンチレータグリル62であり、張出部49が、空気吹出口部材本体14の外側面(側面14a)に対し、軸線方向15に沿って配設されたリンク機構部39の周囲を取囲んで保護するリンクガード部44であることにより、ベンチレータグリル62に対して上記荷重F吸収を実現することができる。
【0076】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲までを含むという意味で用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施例にかかる空気吹出口部材取付部構造の断面図である。
【図2】図1の空気吹出口部材本体を底面側から見た斜視図である。
【図3】図1の部分拡大した作動図である。
【図4】図3に続く作動図である。
【図5】図4に続く作動図である。
【図6】従来例にかかる空気吹出口部材取付部構造の断面図である。
【図7】図6の空気吹出口部材本体を底面側から見た斜視図である。
【図8】空気ダクトを拡径した場合の図6と同様の空気吹出口部材取付部構造の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
2 車両用インストルメントパネル
5 空気ダクト
6 出側端部
14 空気吹出口部材本体
14a 側面
15 軸線方向
18 接続用拡管部
19 挿入用端部
39 リンク機構部
44 リンクガード部
48 段差
49 張出部
49a 奥側部分
62 ベンチレータグリル
71 緊急時進入補助構造部
74 スロープ部
A 軸線
B 軸線
F 荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気ダクトの出側端部に形成された接続用拡管部に対して、筒状の空気吹出口部材本体の奥側の挿入用端部を挿入配置可能とすると共に、
前記空気吹出口部材本体の挿入用端部よりも手前側の側面に、前記接続用拡管部よりも外方へ張出す張出部が形成された空気吹出口部材取付部構造において、
前記空気吹出口部材本体の奥側の側面と、前記張出部の奥側部分との間に、緊急時に空気吹出口部材本体へ入力される奥向きの荷重によって、空気吹出口部材本体が接続用拡管部および空気ダクトを変形しつつその内側へ進入するのを補助可能な、緊急時進入補助構造部を設けたことを特徴とする空気吹出口部材取付部構造。
【請求項2】
前記緊急時進入補助構造部が、空気吹出口部材本体の奥側の側面と、前記張出部の奥側部分との間の段差をなくし得るように、両者間に設けられたスロープ部であることを特徴とする請求項1記載の空気吹出口部材取付部構造。
【請求項3】
前記空気吹出口部材本体が、車両用インストルメントパネルに取付けられたベンチレータグリルであり、
前記張出部が、前記空気吹出口部材本体の外側面に対し、軸線方向に沿って配設されたリンク機構部の周囲を取囲んで保護するリンクガード部であることを特徴とする請求項1または2記載の空気吹出口部材取付部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−184507(P2009−184507A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26595(P2008−26595)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】