説明

空気循環を備えたトイレ用シート

【課題】
空気の抽気装置を備えた便器(1)に備えられたシートにおいて、CMVによってトイレ空間における理想的な空気の抽気をさせる。
【解決手段】
空気の抽気装置を備えた便器(1)に設けられるようになされたシートであって、便器(1)上に密閉して適用されるようになり、前部に空気吸入口(6)および後部に空気排出口(7)を備えるリング状部(4)と、開放位置で洗浄が不用意に起動しないように設定され、閉鎖位置で前部空気吸入口(6)を密閉するカバー(11)とからなり、前記排出口(7)は、管(8、9、10)によって、空気の抽気装置(14、15)に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器のレベルで直接臭気を吸入する、空気循環を備えたトイレ用シートの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トイレなどの大多数の衛生器具の場合、換気調節機械装置、すなわちCMV(Controlled Mechanical Ventilation system)を、トイレ空間のある高さに配しており、また場合によっては天井に配置することもあり、これによって、便器を使用した場合発生する臭気が、否応なく使用者の鼻をつくような事態が発生するなどの問題があった。
【0003】
この改善策として、放たれる臭気を緩和し、抑制する目的で、過去既に、空気循環を備えたトイレのモデルが多数、提案されている。便器レベルでの空気の抽気(排気、脱気)は、家屋に備えられたCMVによって、あるいはこの目的のために特に使用される電動機によって行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の空気循環を備えたトイレ用シートは、必ずしも完全に満足のいくものとは限らず、さらに、本願発明者らが知る限り、工業的に生産されてはいないのが現状である。さらに、CMVの場合、一般に、空気の抽気は、持続的に行われており、部屋や家または公共アパートの一般的な換気装置に支障をもたらす惧れがあるといった問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、空気の抽気装置を備えた便器(1)に設けられるためのシートであって、該シートは、便器(1)上に密閉して当てがわれ、前部空気吸入口(6)と、空気の抽気装置(8、9、10、14、15)に接続される後部空気排出口(7)とを備えてなる便座(4)と、閉鎖位置の場合、前部空気吸入口(6)を密閉するカバー(11)とから構成されることを特徴とする空気循環を備えたトイレ用シートである。
請求項2の発明は、前記便座は、便器(1)に対応した形状を有し、便器(1)上に密閉して置かれる2つの側面部(5)が下面に設けられたリング状の便座(4)から構成されるものとし、カバー(11)は、便座(4)上に配置されるとともに、便座(4)の2つの側面部(5)間に存する前側空間(6)を被覆する下側延出部(12)を含むことを特徴とする請求項1に記載の空気循環を備えたトイレ用シートである。
請求項3の発明は、カバー(11)には、前記カバーが開放位置にある場合、洗浄が不用意に起動しないように配された把手(13)から構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気循環を備えたトイレ用シートである。
請求項4の発明は、前部空気吸入口(6)から取り入れられる空気の取り入れ量は、後部排出口(7)を介して抽気される空気の量より少ないことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一に記載の空気循環を備えたトイレ用シートである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、CMVによってトイレの悪臭を自動的かつ持続的に外部に排出することができる。
請求項2の発明とすることにより、空気取り入れ口を密閉することができ、CMVによる空気の抽気を有効に行うことができる。。
請求項3の発明とすることにより、把手が設けられていることにより、洗浄が不用意に起動するのを防ぎ、さらに、衛生的にカバーを取り扱うことができる。
請求項4の発明とすることにより、カバーを開けた状態であっても低圧(負圧)で便器を保持することが可能となり、カバーを閉じた状態においては、いっそう低圧で保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図4において、で図示されるトイレは、水洗浄タンク2を載置する便器1からなり、該水洗浄タンク2は、その上部に起動ボタン3を備えている。本発明によれば、前記トイレには、シートが備えられており、該シートは、便器1に対応した形状で、下面に、便器の上端に密閉して置かれる2つの側面部5が設けられるリング状部(便座)4と、前部空気吸入口6および後部空気排出口7とから構成されている。前記リング状部4は、標準的に、ナット16に2本のネジ棒を螺装して便器に固定されている。
空気排出口7は、サイホン作用を回避すべく空気排出口7と連続して、リング状部4と洗浄タンク2との間に配置された空気ボックス8によって、かつ9、10などのダクトによって、家屋に備えられる機械換気(CMV)に接続されている。垂直ダクト10は、タンクに供給するためのタップと反対側に位置しており、該ダクト10は一般的な通気孔装置15に置かれた分岐継手14に接続されている。なお、該二次分岐継手14の直径は、家またはアパート全体に被害を及ぼすこととなる装置の逆流を回避するために、当該空間のメイン換気装置より、かなり小径となっている。
【0008】
家屋にCMVがない場合、このCMVの目的のために排出口に接続される独自の電動機を特に設けることができる。さらに、空気吸入口6は、便器1内を低圧(負圧)とするために、後部に位置する空気排出口7の空気量より少ない空気量が確保されるように設定されている。
また、シートは、特に後部が直線状になっており、これにより後部の開口量を少なくできるように設定されており、これにより、サイホン作用を受けやすい後部排出口7側近くでの空気吸い込みを制限する役目をするように設定されている。
【0009】
本発明によるシートは、カバー11によって完成されるものであるが、該カバー11は、リング状部4上に配置され、図3に示すように、カバー11をリング状部4上に下ろした場合に空気吸入口6を密閉するための下側延出部12が、該カバー11前部に設けられている。また、図4に示されるように、カバーを開放した場合、該カバー11は、その上面に、洗浄の起動ボタン3に触れないように配慮された把手13が設けられている。
従って、トイレの使用中に、CMVによる低圧の影響下で、前部空気吸入口6と後部空気排出口7との間で、空気の循環が自然に確立されることとなる。これによって、従来のように、悪臭をトイレ空間を横切った、ある高さで解消する必要性がなくなり、CMVによって、便器レベルで、悪臭を自動的かつ持続的に、外部に排出することとなる。
【0010】
さらに、使用後は、まず、洗浄の起動ボタン3を押せるように、カバー11をリング状部4上に下ろすこととなるが、これにより、空気吸入口6がカバー11の下側延出部12によって密閉されることとなり、実際にトイレが密閉される。この手順によって、洗浄作動中に、大量の水を急激に流すことによって便器から放たれる悪臭のあるガスが、家屋内に放出されることが回避されることとなる。
なお、一旦カバーが下ろされると、空気吸入口6は、カバーの下側延出部12によって封止されることとなり、その結果、トイレは、密閉されたも同然となる。
ここで、更に注目すべきことは、トイレが使用されておらず、カバー11が適切に閉じられた状態では、便器1は、空気吸入の不足により非常にわずかな空気のみを吸引することとなり、その結果、CMVが、非常に有効に、空間からの空気吸入を高めることが可能となるとともに、家または公共アパートの換気システムに支障を来すようなことが回避できることである。
【0011】
叙述の如く構成された本形態において、空気の抽気装置を備えた空間の大多数の便器上に設けられるように意図されるシートであり、前部空気吸入口と、空気の抽気装置に接続される後部空気排出口とを備えるとともに、便器上に密閉してあてがわれてなるシートと、閉鎖位置の場合、前部空気吸入口を密閉するカバーとからなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の特有の実施形態では、シートは、便器1に対応した形状のリング状部4によって形成され、その下面には、便器1上に密閉して置かれる2つの側面部が設けられて構成される一方、カバー11は、リング状部4上に配されるとともに、シートの2つの側面部間に存する前部空間を被覆する下側段部から構成されている。
従って、トイレを使用する場合、カバー11を上げると、吸入口と排出口の間を便器1を通って空気の循環が開始し、持続的に悪臭の排出が可能となる。使用後、また予めカバー11を閉めた状態では、便器1は、事実上、密閉されることとなり、密閉された状態で便器内にかなりの量の水を流すことにより、洗浄の起動中に、トイレ空間へ悪臭のガスが放出されることが回避できる。便器のレベルで空気取り入れ口を密閉すると、CMVがトイレ空間の空気を吸引することが妨げられることなく、有効に行うことができる。なお、前記カバー11には、該カバー11が開放位置にある場合、洗浄が不用意に起動しないように配された把手13が設けられていることが好ましい。
従って、洗浄の起動中、悪臭のあるガスの放出は回避される。更に、把手13の存在により、より衛生的にカバーを取り扱うことができる。
また、前部空気吸入口6を介しての空気の吸入量は、後部排出口7を介して抽気される空気量より少ないことが好ましく、これにより、使用している間、便器1を低圧で保持することが可能となり、カバー11を閉じた後には一層低圧で保持することができる。
【0013】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、図5〜8に示す第二の実施の形態のようにすることもできる。本実施の形態は、タンクが一体化されたトイレシステム、即ち、水洗浄タンク2が外から見えないように壁に組込まれたトイレシステムに本発明を適用したものであり、洗浄起動ボタン3だけが、この目的のために壁に設けられた開口を介して見えるように構成されている。この場合、把手13は、カバーから延出して配されており、一般に、衛生状態の向上の役割を果たすとともに、起動ボタン3に不用意に触れたりすることを防ぐ役目をもしている。
もちろん、本発明は、これらの実施の形態の実施例に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更を本発明に適用することができる。
【0014】
さらに本発明は、特に、大多数の既存のトイレに容易に採用することができる。粘着ビーズの形態で、2つの側面部5を単に加えることにより、かつ後部に、既存のCMVまたは新たに取り付けられた換気装置に空気取り入れ口を接続することにより、既存トイレを再活用することさえ可能となる。また、言うまでもなく、下側延出部12および把手13を付け加えることで、カバーを変更することも適切である。
【0015】
本発明に特に適応したトイレの可能性も想定することができる。即ち、最終的には、装置全体が外側から全く見えないように構成することである。このため、空気の取り入れ口を、陶器製の便器にうまく一体化させることができるように構成することであり、たとえば、空気の取り入れ口をタンクの後側になるように通して、あるいは便器と一体化できるのであればタンクの側方に通して、垂直の後部ダクト10に連通することが考えられ、この場合、該ダクト10自体をトイレ空間のライニングの後ろに隠れるようにすれば、外側から装置全体を全く見えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるシートを備えた便器の斜視図である。
【図2】シートのカバーを取り除いた状態を示す便器の平面図である。
【図3】カバーを閉じた状態を示す便器の側面図である。
【図4】カバーを開いた状態を示す便器の側面図である。
【図5】第二の実施の形態におけるシートを備えた便器の斜視図である。
【図6】第二の実施の形態におけるシートのカバーを一部切り欠いた状態を示す便器の平面図である。
【図7】第二の実施の形態におけるカバーを閉じた状態を示す便器の側面図である。
【図8】第二の実施の形態におけるカバーを開いた状態を示す便器の側面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 便器
4 リング状部
6 前部空気吸入口
7 空気排出口
8 空気ボックス
9 ダクト
10 ダクト
11 カバー
13 把手
14 分岐継手
15 通気孔装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の抽気装置を備えた便器(1)に設けられるためのシートであって、
該シートは、便器(1)上に密閉して当てがわれ、前部空気吸入口(6)と、空気の抽気装置(8、9、10、14、15)に接続される後部空気排出口(7)とを備えてなる便座(4)と、閉鎖位置の場合、前部空気吸入口(6)を密閉するカバー(11)とから構成されることを特徴とする空気循環を備えたトイレ用シート。
【請求項2】
前記便座は、便器(1)に対応した形状を有し、便器(1)上に密閉して置かれる2つの側面部(5)が下面に設けられたリング状の便座(4)から構成されるものとし、
カバー(11)は、便座(4)上に配置されるとともに、便座(4)の2つの側面部(5)間に存する前側空間(6)を被覆する下側延出部(12)を含むことを特徴とする請求項1に記載の空気循環を備えたトイレ用シート。
【請求項3】
カバー(11)には、前記カバーが開放位置にある場合、洗浄が不用意に起動しないように配された把手(13)から構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気循環を備えたトイレ用シート。
【請求項4】
前部空気吸入口(6)から取り入れられる空気の取り入れ量は、後部排出口(7)を介して抽気される空気の量より少ないことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一に記載の空気循環を備えたトイレ用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−216023(P2007−216023A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33267(P2007−33267)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(507048927)
【氏名又は名称原語表記】GALLIZIA Alain−Dominique
【Fターム(参考)】