説明

空気栓用の給排気具

【課題】ポンプがなくても空気袋30への空気の出入を確実かつ短時間で行うことができ、さらには、給排気口21の大きさが変わっても空気の空気袋30への出入を行うことのできる給排気具10を、簡単な構造によって提供すること。
【解決手段】空気栓20の給排気口21内に差し込まれる第2差込部12と、この第2差込部12より大径の第2差込部12と、第2差込部12の先端に一体化した弁開放部13と、第2差込部12の外端に一体化されて、空気の注入または排出を行う操作部14と、この操作部14、第2差込部12及び第2差込部12内に形成されて、外部と空気袋30内とを連通させる連通孔15とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮き輪のような空気袋に設けられている空気栓に差し込まれて、空気袋に対する給排気に使用される給排気具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浮き輪、枕、あるいはベッド用のマット等として使用されている空気袋は、軟質な合成樹脂シートによって空気室を有する袋状に形成されているもので、この空気室内に空気を注入して使用状態にし、空気室内から空気を排出して小さく折り畳むことのできる便利なものあるが、このような空気袋には、空気の注入や排出を行うための空気栓が取り付けられている。
【0003】
このような空気栓については、出願人も特許文献1において提案しているが、他にも特許文献2に示されたようなタイプのものがある。そして、最近では、図2に示すようなものが大量生産されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3564545号掲載公報
【特許文献2】特開2001−163295号公報、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2に示した空気栓20は、特許文献1にて提案しているものの一部、すなわち、図5中の符号21で示した、空気袋30を形成するための軟質な合成樹脂シートより上の部分を示しているものであり、図6に示した特許文献2のものに対して、内部に自動閉止弁(以下、本願では弁部22という)を有している点で優れたものである。
【0006】
換言すると、最近一般的に採用されている空気栓20は、図2に示したように、空気袋30を形成するための軟質な合成樹脂シートに熱や高周波によって溶着されるものであり、合成樹脂シートと同様な合成樹脂により一体成形されるものである。勿論、この空気栓20は、合成樹脂シートに形成した開口部の中心に給排気口21が来るようにしながら、開口部周辺に取付部24にて溶着されるものである。
【0007】
また、この空気栓20は、図2に示したように、その給排気口21を「有底筒状」のものに成形されるのであるが、下部に入れた切り込み21aによって、「有底筒状」の「有底部分」を弁部22とするものである。この弁部22は、図2中の仮想線にて示したように、何か(例えば、エアポンプに付いているエアホースの先端)によって空気袋30内側に開かれたときに、当該弁部22が形成してある給排気口21からの空気の出入を可能にするものである。一方、筒状の給排気口21の上端には栓部23が一体的に形成してあり、この栓部23の先端は、当該給排気口21を閉じる際に差し込まれて、所謂「栓」となるものである。
【0008】
ところで、このような弁部22を有する空気栓20は、合成樹脂によって非常に簡単に製造できるし、弁部22も、給排気口21に単に切り込み21aを入れることによって形成でき、しかも取付部24によって空気袋30側に簡単に取り付けることができるから、非常に便利でかつ安価に提供できるのであるが、弁部22を開いて空気袋30内の空気を抜くには少し不便がある。
【0009】
弁部22を開くには、上記のエアホースの先端部のみを給排気口21内に差し込むか、当該弁部22の周囲を空気袋30や取付部24を指で掴んで絞る必要があるが、空気袋30が着色されているものである場合は勿論、透明材料によって形成されている場合でも、中にある弁部22の様子、つまり完全に開いたか否かが見えにくいことが多い。それより何より、空気袋30内に空気を入れる時には、ポンプの力が利用できるから、弁部22の開き方が少なくても支障はないが、空気袋30内の空気を抜くときには、空気袋30内の圧力しか利用できないため、空気の出が悪く、完全に空気を抜くには相当な時間を要することがある。
【0010】
さらに、このような弁部22を有する空気栓20は、上記のような簡単な構造であるが故に、給排気口21の大きさにグローバルスタンダードがある訳ではなく、空気袋30の製造者が適宜寸法を決定して製造しているのが実情である。このため、当該空気袋30内への空気の出入を行おうとすると、当該空気袋30専用のエアポンプとそのホースが必要となって、空気袋30全体のコスト高を招くことになる。
【0011】
そこで、本発明者等は、上述したような空気栓20に対して簡単に取り付けることができて、空気の空気袋30への注入も、また空気袋30からの排出も短時間で簡単に行えるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0012】
すなわち、本発明の目的とするところは、ポンプがなくても空気袋30への空気の出入を確実かつ短時間で行うことができ、さらには、給排気口21の大きさが変わっても空気の空気袋30への出入を行うことのできる給排気具10を、簡単な構造によって提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「空気袋30の空気栓20に差し込まれて、空気袋30に対する給気または排気を行うための給排気具10であって、
空気栓20の給排気口21内に差し込まれる第2差込部12と、この第2差込部12より大径の第2差込部12と、第2差込部12の先端に一体化した弁開放部13と、第2差込部12の外端に一体化されて、空気の注入または排出を行う操作部14と、この操作部14、第2差込部12及び第2差込部12内に形成されて、外部と空気袋30内とを連通させる連通孔15とを備えたことを特徴とする給排気具10」
である。
【0014】
すなわち、この給排気具10は、空気袋30に溶着してある空気栓20の給排気口21に差し込んで使用され、空気袋30内への空気の出入を、エアポンプに代わって行うものである。この給排気具10は、先端の弁開放部13を空気栓20の給排気口21に差し込んで、図1に示すように、この弁開放部13が空気栓20の弁部22を押し開くようにする。この場合、空気栓20の給排気口21に対して第1差込部11または第2差込部12が固くなるまで操作部14を持って回転させながら、当該給排気具10を強く挿入する。
【0015】
この給排気具10は、空気栓20の給排気口21内に差し込まれる第1差込部11と、この第1差込部11より大径の第2差込部12との2種類の差込部を有しているから、空気栓20の給排気口21の内径が異なったとしても、ほぼ全ての空気栓20に対応できる。空気栓20は、軟質な空気袋30に溶着する必要性から軟質な合成樹脂によって形成してあるから、給排気口21の内径が第1差込部11の外径より小さい場合には、この第1差込部11を強く差し込めば、給排気口21の弾力性によって給排気口21の内壁に第1差込部11の外周が密着して空気の漏れを防ぐ。これに対して、給排気口21の内径が第1差込部11の外径より大きい場合には、給排気口21内に第2差込部12を差し込めば、両者が強き密着して空気の漏れを防止する。
【0016】
換言すれば、当該給排気具10を使用して空気の出入を行うにあたって、空気栓20の給排気口21に対して、給排気具10の連通孔15以外から空気が漏れないようにする必要があるが、当該給排気具10では、使用対象の空気栓20自体が軟質で、ある程度の自由度をもったものであることと、第1差込部11または第2差込部12を選択的に使用できるようにしてあることによって、給排気口21の寸法が異なった場合でも、空気漏れを十分達成できるものとなっているのである。
【0017】
さて、給排気具10の差込みが完了すれば、図1に示すように、弁開放部13が空気栓20の弁部22を押し開くことになる。この弁部22の開放状態は、給排気具10を抜かない限り維持される。そして、空気袋30内は、給排気具10の中心に形成してあった連通孔15と、弁部22が開放されたことによって、外部と連通することになるのである。
【0018】
ここで、この給排気具10によって空気袋30内への空気の注入を行う場合には、使用者が操作部14を口に銜えて息を空気袋30内に吹き込むのである。この際、空気栓20の弁部22は開放されているし、給排気具10の連通孔15は空気袋30内と外部とを連通させているのであるから、操作部14(の連通孔15)から吹き込まれた空気は、弁部22のない従来型の空気袋30と同様に簡単に空気袋30内に入ることになる。このとき、給排気具10は、その第1差込部11または第2差込部12によって空気栓20の給排気口21に対して密着しているから、空気袋30内への空気注入以外の空気漏れが発生しないことは言うまでもない。
【0019】
一方、空気が満たされた空気袋30から空気を抜くには、上述したように、給排気具10をその弁開放部13から先に空気栓20の給排気口21内に差し込めばよい。そうすれば、給排気具10の弁開放部13によって空気栓20側の弁部22の開放がなされて、給排気具10の連通孔15は、空気袋30内と外部とを連通させるから、空気袋30内の圧力が高い場合は勿論、空気袋30の外側を押さえて空気袋30内の圧力を高くすることによって、弁部22の状態を意識するまでもなく、空気袋30内の空気は短時間内に抜かれることになる。
【0020】
従って、この請求項1に係る給排気具10は、ポンプがなくても空気袋30への空気の出入を確実かつ短時間で行え、給排気口21の大きさが変わっても空気の空気袋30への出入を行うことのできるものとなっているのである。
【0021】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の給排気具10について、
「操作部14の端部外周に係止部16を形成したこと」
である。
【0022】
すなわち、この請求項2の給排気具10では、図1、図3及び図4に示すように、操作部14の端部外周に係止部16を形成したものであるが、この係止部16は、これが形成してある操作部14の先端部を銜えて空気を注入する際の、唇の引っ掛かり部分となるため、空気の注入作業時において操作部14が口から抜けにくく、注入作業を容易かつ確実に行えるようにするのである。
【0023】
勿論、この係止部16は、図1等に示すように、操作部14の外径より大きく形成するのが自然であるから、当該給排気具10の空気栓20に対する挿入時にこの係止部16を摘むことによって、挿入操作及び回転操作を容易にするものでもある。また、この給排気具10は、後述する実施形態におけるように、全体が小さく、かつ第1差込部11や第2差込部12、そして操作部14が薄いものであって、全体の剛性は小さくなりがちであるが、操作部14の端部外周に係止部16を形成することによって、剛性の確保ができることになる。
【0024】
従って、この請求項2に係る給排気具10は、請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、全体の剛性が高くなっているとともに、空気の注入操作が容易に行えるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明した通り、本発明においては、
「空気袋30の空気栓20に差し込まれて、空気袋30に対する給気または排気を行うための給排気具10であって、
空気栓20の給排気口21内に差し込まれる第2差込部12と、この第2差込部12より大径の第2差込部12と、第2差込部12の先端に一体化した弁開放部13と、第2差込部12の外端に一体化されて、空気の注入または排出を行う操作部14と、この操作部14、第2差込部12及び第2差込部12内に形成されて、外部と空気袋30内とを連通させる連通孔15とを備えたこと」
に構成上の特徴があり、これにより、ポンプがなくても空気袋30への空気の出入を確実かつ短時間で行うことができ、給排気口21の大きさが変わっても空気の空気袋30への出入を行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る給排気具10を使用して、空気袋30内への空気の出入を行っている様子を示す部分拡大図である。
【図2】同給排気具10の使用対象である空気栓20の拡大断面図である。
【図3】同給排気具10を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は平面図である。
【図4】同給排気具10を示すもので、(a)は図3の(c)中の1−1線に沿ってみた縦断面図、(b)は図3の(c)中の2−2線に沿ってみた縦断面図である。
【図5】特許文献1の技術を示す部分拡大断面図である。
【図6】特許文献2の技術を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態に係る給排気具10について説明すると、図1には、本実施形態に係る給排気具10を空気袋30に溶着してある空気栓20に挿入して、この給排気具10を使用して空気袋30に対する空気の出入を行おうとしている状態が示してある。
【0028】
ここで、給排気具10の使用対象である空気栓20について先に説明すると、この空気栓20は、その全体を空気袋30を形成しているのと同様な軟質な合成樹脂によって一体成形したものである。この空気栓20は、図2に示したように、「有底筒状」の給排気口21を中心とするもので、この給排気口21内に、本発明に係る給排気具10の第1差込部11または第2差込部12が、弁開放部13を最内部となるようにして挿入されることになる。
【0029】
「有底筒状」の給排気口21は、そのままでは空気の出入ができないものであるが、底の直上に位置する部分に、底面と略平行な切り込み21aが形成してあり、この切り込み21aによって、当該給排気口21の底の部分が弁部22となるのである。この弁部22は、給排気口21の内部に挿入された、例えば給排気具10の弁開放部13によって、図1中の実線または図2中の仮想線にて示したように、給排気口21から引き離されることになるものであり、給排気具10の弁開放部13等が引き抜かれれば当該空気栓20を構成している合成樹脂の軟質性によって元に戻って、給排気口21を「有底筒状」のものにするのである。
【0030】
弁部22が、図1中の実線または図2中の仮想線にて示したような状態となれば、この給排気口21の上下は連通することになる。つまり、この給排気口21を介して、当該空気栓20は空気の出入が行えるものとなるのである。
【0031】
以上の給排気口21の上端部には、栓部23が一体化してあるが、この栓部23は、図2中の仮想線にて示したように、自由に折り曲げることができて、給排気口21の上端開口部内に挿入することができるものである。つまり、この栓部23は、当該空気栓20の給排気口21に対する「栓」を構成するものであり、これを給排気口21の図示上端に差し込めば、仮に弁部22が少し開いていたとしても、当該給排気口21内の空気の出入を完全に防止するものである。
【0032】
一方、給排気口21の中央部外側には取付部24が一体的に形成してあり、この取付部24を、空気袋30に形成してある開口の周囲に熱または高周波によって溶着することにより、当該空気栓20全体を空気袋30に取り付けることを可能にするものである。また、この取付部24は、これを空気袋30側に溶着したとき、その給排気口21を空気袋30の開口の中心にて立設状態に維持することになるものでもある。
【0033】
以上のような空気栓20に対して使用される給排気具10は、合成樹脂を材料として一体成形したものであり、図1、図3及び図4に示したように、上記空気栓20の給排気口21内に差し込まれる第1差込部11と、この第1差込部11より大径の第2差込部12と、第1差込部11の先端に一体化した弁開放部13と、第2差込部12の外端に一体化されて、空気の注入または排出を行う操作部14と、この操作部14、第2差込部12及び第2差込部12内に形成されて、外部と空気袋30内とを連通させる連通孔15とを備えたものである。
【0034】
第1差込部11は、その先端(図1では図示下端)に、空気の出入のための開口を有したもので、この開口の周囲には、「逆門型」の弁開放部13が形成してある。また、この第1差込部11の上端側には、この第1差込部11より直径の大きい第2差込部12が連なっており、これらの第1差込部11及び第2差込部12内には、先端の開口に連なる連通孔15が形成してある。
【0035】
なお、これらの第1差込部11及び第2差込部12は、その外径が、図1に示した状態から、図示上方に行くに従って順次大きくなるようにしてあり、これにより、これらの第1差込部11または第2差込部12を空気栓20の給排気口21内に挿入したときの密着性が良好となるようにしてある。同様に、弁開放部13についても、先端を細くすることにより、給排気口21内への挿入がし易くなるようにしてある。
【0036】
また、第2差込部12の図示上端には、これより系の大きい操作部14が連続しており、この操作部14の上端部外周には、当該よりも更に径の大きい係止部16が形成してある。勿論、これらの操作部14及び係止部16の中心には、上述した連通孔15に連なる連通孔15が形成してある。
【0037】
本実施形態の給排気具10は、全体の長さを59.5mmとしたものであり、先端の弁開放部13の長さを6mm、第1差込部11の長さを9.5mm、第2差込部12の長さを5mm、操作部14の長さを33mm、係止部16の長さ(幅)を5mmとしたものである。係止部16の長さ(幅)を5mmとしたから、この係止部16部分を使用者が銜えたとしても、十分銜えることができて違和感のないものとなる。また、各部の肉厚を、1.0mmとしたものであり、全体を軽くしたり小さくしたりして、持ち運び易くしたものである。なお、操作部14の先端部に形成した係止部16は、全体の剛性を高めるためのものでもあり、この係止部16に紐や鎖を通す穴を形成して実施してもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 給排気具
11 第1差込部
12 第2差込部
13 弁開放部
14 操作部
15 連通孔
16 係止部
20 空気栓
21 給排気口
21a 切り込み
22 弁部
23 栓部
24 取付部
30 空気袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気袋の空気栓に差し込まれて、前記空気袋に対する給気または排気を行うための給排気具であって、
前記空気栓の給排気口内に差し込まれる第1差込部と、この第1差込部より大径の第2差込部と、前記第1差込部の先端に一体化した弁開放部と、前記第2差込部の外端に一体化されて、空気の注入または排出を行う操作部と、この操作部、前記第1差込部及び第2差込部内に形成されて、外部と前記空気袋内とを連通させる連通孔とを備えたことを特徴とする給排気具。
【請求項2】
前記操作部の端部外周に係止部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の給排気具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−241889(P2011−241889A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114078(P2010−114078)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(398063825)株式会社ヒオキ (9)
【Fターム(参考)】