説明

空気浄化システム

【課題】トリメチルシラノール等のシラノール化合物を高い除去率で除去可能な空気浄化システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る空気浄化システムは、除湿装置13、内部ケミカルフィルタ14、及び調温調湿装置15を備える。シラノール化合物を含む空気は、除湿装置13で相対湿度33%以下とされたうえで、内部ケミカルフィルタ14でろ過される。シラノール化合物は、低湿環境下で二量化されて、内部ケミカルフィルタ14によって高い除去率で除去される。調温調湿装置15は、内部ケミカルフィルタ14を通過した空気を通常の相対湿度に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光工程で露光障害等を引き起こすおそれのあるシラノール化合物を、空気中から除去することが可能なシラノール化合物除去用空気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの露光工程において、ヘキサメチルジシラザン(HDMS)のようなジシラザン化合物が、フォトレジスト密着剤として使用されることが知られている。HDMSは、例えばガスとしてウエハ表面に吹き付けられることにより、ウエハ表面の水酸基をトリメチルシラノール基に置換させることで、ウエハ表面を疎水化させて、ウエハ表面とレジスト剤との密着性を向上させている。HDMSは加水分解してトリメチルシラノール(TMS)として露光装置内にガス状で浮遊することがあるが、浮遊したTMSはレンズ等に付着して曇りの原因となり、露光障害等を引き起こすおそれがある。
【0003】
そのため、例えば特許文献1に示すように、露光装置内部では、空気が循環され、その循環経路に、活性炭等の吸着剤を有するケミカルフィルタが配置される。TMS等のガス状不純物は、ケミカルフィルタによって除去されることにより、露光装置内部は一定の清浄度に保持され、露光障害等が防止される。
【0004】
また、特許文献2には、露光装置内部の循環経路に上流側から、エアワッシャ、除湿装置、ケミカルフィルタが並べられた汚染物質除去装置が開示されている。この汚染物質除去装置では、エアワッシャが水蒸気噴霧により空気中の汚染物質を除去するとともに、ケミカルフィルタがエアワッシャで除去できなかった汚染物質を除去し、汚染物質の捕集効率を向上させている。また、除湿装置は、エアワッシャで飽和状態とされた空気から一定量の水蒸気を除去し、ケミカルフィルタの除去性能が低下しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−181968号公報
【特許文献2】特開2008−91746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、TMSは低分子量物質であり、活性炭等に吸着し難く、また吸着してもすぐに脱離するため、通常の吸着剤を有するケミカルフィルタでは、効率的に除去することが難しい。そのため、従来、TMSを必要量除去するために、ケミカルフィルタを厚くし若しくは多層にしたり、活性炭等の吸着剤を多量に使用したりする必要があった。
【0007】
一方、特許文献2における汚染物質除去装置は、エアワッシャとケミカルフィルタにより、TMSの捕集効率が上がると考えられるが、エアワッシャが設けられるため、装置自体が大掛かりなものになる。また除湿装置では、エアワッシャによって飽和水蒸気量となった空気が、通常の湿度或いは通常より高い湿度(例えば、90%)に戻されているのみであり、TMS等のシラノール化合物を効率的に除去するために積極的に除湿が行われているわけではない。すなわち、汚染物質除去装置は、シラノール化合物を簡単な構成で高い除去率により除去できる構成にはなっていない。
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、TMS等のシラノール化合物を、簡単な構成で高い除去率により除去することが可能なシラノール化合物除去用空気浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空気浄化システムは、シラノール化合物を含む空気を減湿して相対湿度33%以下とする減湿手段と、減湿手段で減湿された空気をろ過して、シラノール化合物を除去するケミカルフィルタとを備えることを特徴とする。
【0010】
空気浄化システムは、ケミカルフィルタでろ過された空気を加湿する加湿手段を備えることが好ましく、例えば加湿手段によって減湿された空気を通常の湿度に戻すことが可能である。上記相対湿度は低いほうがシラノール化合物の除去率が高められ、例えば20%以下とされたほうが良い。
【0011】
ケミカルフィルタは、例えば多数の吸着剤が固着されたフィルタ基材で構成される。シラノール化合物は通常、トリメチルシラノールである。また、本発明に係る空気浄化システムは例えば、露光装置内部の空気を浄化するために使用される。
【0012】
本発明に係る露光装置は、露光本体部を収納するチャンバと、チャンバ内部から排出した空気を循環させて再びチャンバ内部に供給させる空気循環路と、空気循環路内部に上流側から順に配置される減湿手段及びケミカルフィルタとを備え、減湿手段で相対湿度がチャンバ内部より低くなるように減湿された空気が、ケミカルフィルタでろ過されること特徴とする。
【0013】
露光装置においても、減湿手段で相対湿度33%以下に減湿された空気がケミカルフィルタでろ過されたほうが良い。また露光装置は、空気循環路においてケミカルフィルタの下流側に配置される加湿手段をさらに備えていたほうが良く、この場合、減湿された空気は、加湿されたうえでチャンバ内に供給される。チャンバ内部には例えば、ジシラザン化合物を含むフォトレジスト密着剤で疎水処理されたウエハが配置される。
【0014】
本発明に係る空気浄化方法は、シラノール化合物を含む空気を浄化する空気浄化方法であって、相対湿度33%以下に減湿した上記空気を、ケミカルフィルタでろ過して、シラノール化合物を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、シラノール化合物を含む空気は、減湿されることによりシラノール化合物が相当量二量化されたうえで、ケミカルフィルタによってろ過される。シラノール化合物の二量体は、ケミカルフィルタに吸着されやすく、また吸着された後脱離しにくいから、ケミカルフィルタにおけるシラノール化合物の除去率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の空気浄化システムが適用される露光装置を示す概略図である。
【図2】ケミカルフィルタを示す拡大図である。
【図3】通気実験1における実施例1の通気試験装置を示す模式図である。
【図4】通気実験1における実施例2の通気試験装置を示す模式図である。
【図5】通気試験1の結果を示すグラフである。
【図6】通気実験2における通気試験装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気浄化システムが適用された露光装置を示す概略図である。図1に示すように、露光装置10は、外部チャンバ11内部に、内部チャンバ12と空気循環路30とが設けられた構造となっており、内部チャンバ12の内部には露光本体部20が配置される。
【0018】
空気循環路30は、内部チャンバ12内部の空気を循環させるための通路である。空気循環路30の内部には、空気浄化システムを構成する除湿装置13、内部ケミカルフィルタ14、及び調温調湿装置15が、後述する一定経路Sに沿って上流側からこの順に並べられる。
【0019】
露光本体部20は、照明光学系21、レクチル22、投影光学系23、及びウエハステージ24を備え、ウエハステージ24上には、ウエハWが載置させられている。ウエハWは、下記一般式(1)で示されるジシラザン化合物を含むフォトレジスト密着剤によって表面が疎水化された後、フォトレジスト剤が塗布されたものである。
【0020】
SiNHSiR ・・・・(1)
式(1)において、Rはメチル、エチル等の炭素数1〜3のアルキル基であるが、Rのうち一部は水素原子、又はふっ素原子、塩素原子等のハロゲン原子であっても良い。当該ジシラザン化合物としては、上記式(1)においてRが全てメチルであるヘキサメチルジシラザン(HDMS)が一般的に使用される。
【0021】
照明光学系21は、リレーレンズ系、コンデンサーレンズ等を含み、外部チャンバ11の外部に設けられた光源26から出射されたレーザー光を、レクチル22に入射させる。レクチル22は所定のマスクパターンを有するフォトマスクであって、そのマスクパターンは投影光学系23を介して、ウエハステージ24上に配置されるウエハWに結像され、ウエハWに対して露光処理が行われる。
【0022】
空気循環路30内部等には不図示のファンが設けられ、外部チャンバ11内部の空気は、そのファンによって、一定経路Sに沿って循環させられる。具体的には、空気循環路30の空気は、内部供給口16を介して内部チャンバ12内部に供給され、内部チャンバ12内部を循環して、内部排出口17を介して空気循環路30に排出される。内部排出口17から排出された空気は、空気循環路30内部において、除湿装置13、内部ケミカルフィルタ14及び調温調湿装置15をこの順に通って再び、内部供給口16を介して、内部チャンバ12内部に供給される。また、内部チャンバ12内部の空気は、一部が局部排出口18を介して外部に排気されるとともに、外部の空気は、外部供給口19を介して空気循環路30内部に供給される。
【0023】
調温調湿装置15は、内部供給口16の上流に配置されており、空気循環路30から内部チャンバ12内部に供給される空気は、調温調湿装置15によって、一定湿度(例えば、相対湿度45〜55%程度)、一定温度に調整される。また、外部供給口19の上流には、外部ケミカルフィルタ25が配置され、外部からの空気は、外部ケミカルフィルタ25によって、ガス状汚染物質が除去されたうえで、空気循環路30に供給される。なお、本実施形態では、外部からの空気は例えば、内部ケミカルフィルタ14の下流側で、かつ調温調湿装置15の上流側に供給される。
【0024】
内部ケミカルフィルタ14は、図2に示すように、フィルタ基材50に、無数の吸着剤51が公知のバインダによって固着されたものである。内部ケミカルフィルタ14は、後述するシラノール化合物やジシロキサン化合物等を含む空気中の汚染物質を除去し、空気をろ過するためのものである。
【0025】
フィルタ基材50は、マット形状を呈し、ポリウレタンフォーム等の発泡体やから構成される三次元網状骨格構造を有するものであるが、発泡体の代わりに有機繊維や無機繊維から構成される繊維状基材、ハニカム構造体、又はプリーツ構造体が使用されても良い。吸着剤51は、破砕状、粉末状、粒子状等の多孔質体から成る。多孔質体としては、活性炭、シリカ、ゼオライト、アルミナ、多孔質ガラス等のガス状有機物を物理的吸着により吸着可能なものが挙げられるが、これらのうち活性炭が好ましい。活性炭は、シラノール化合物やジシロキサン化合物を吸着しやすいからである。
【0026】
外部ケミカルフィルタ25は、内部ケミカルフィルタ14と同様の構成を有するケミカルフィルタであっても良いが、異なる構成であっても良い。また、ケミカルフィルタ14、25は、フィルタ基材に吸着剤が固着されたものでなくても良く、例えば容器、カラム等の内部に吸着剤が充填されたものであっても良い。
【0027】
除湿装置13は、通過する空気を除湿する装置であって、例えば内部に吸湿剤が充填されたカラム、上記したフィルタ基材と同様の基材に吸湿剤が固着されたもの、又は公知のドライヤ装置等が使用される。
【0028】
上記したように、ウエハWは、ジシラザン化合物を含むフォトレジスト密着剤によって、疎水化処理が施され、また、チャンバ12内部は、一定の相対湿度に保たれる。そのため、内部チャンバ12内部には、ジシラザン化合物の加水分解反応(反応式(2)’参照)によって生成される、一般式(2)のシラノール化合物が浮遊しており、内部排出口17から排出された空気には、シラノール化合物が含まれる。
SiNHSiR +2HO → 2RSiOH + NH・・・・(2)’
【0029】
SiOH ・・・・(2)
シラノール化合物は、式(2)に示すように、SiOH基を1つだけ有するものである。式(2)において、Rはメチル、エチル等の炭素数1〜3のアルキル基であるが、Rのうち一部は水素原子、又はふっ素原子、塩素原子等のハロゲン原子であっても良い。当該シラノール化合物は、一般的には、HDMSの分解物であって、式(2)においてRが全てメチルとなるトリメチルシラノール(TMS)である。
【0030】
内部排出口17から排出されたシラノール化合物を含む空気は、空気循環路30内部において、まず除湿装置13を通過する。シラノール化合物を含む空気は、除湿装置13を通過することにより除湿され、その相対湿度が、少なくとも内部チャンバ12内部の相対湿度より低くされて内部ケミカルフィルタ14に送られる。
【0031】
シラノール化合物は、露光装置10内部の通常の湿度雰囲気下(例えば、相対湿度50%前後)では、二量化しにくい。しかし、シラノール化合物は、化学安定性が低く、相対湿度がある程度低い環境下では、下記式(3)に示すように脱水縮合することにより二量化され、二量体であるジシロキサン化合物に変化しやすくなる。そのため、空気中に含まれるシラノール化合物は、その空気が除湿装置13で除湿されることにより、相当量ジシロキサン化合物に変化する。
2RSiOH → RSiOSiR + HO ・・・(3)
式(3)において、ジシロキサン化合物(RSiOSiR)は一般的に、TMSの二量体であるヘキサメチルジシロキサンである。
【0032】
除湿装置13で除湿されケミカルフィルタ14に送られる空気の相対湿度は、低いほうがシラノール化合物を二量化させる割合が高くなるが、実用性等も考慮すると、二量化の増加率が顕著に高められる33%以下が好ましい。また、より高い割合でTMSを二量化する必要がある場合には、例えば相対湿度を20%以下とすれば良い。
【0033】
二量体であるジシロキサン化合物は、シラノール化合物よりも分子量が大きいため、シラノール化合物よりも、内部ケミカルフィルタ14の吸着剤51によって吸着されやすく、さらに、一旦吸着剤51に吸着されると、吸着剤51から離脱しにくくなる。また、吸着剤51に吸着されたシラノール化合物は、二量化されてないものも、低湿度の空気がフィルタ14に流され続けることにより、積極的に二量化されることになる。このように、空気を除湿した後、その空気を内部ケミカルフィルタ14によってろ過すると、空気中に含まれるシラノール化合物は、積極的に二量化され、内部ケミカルフィルタ14によって高い除去率で除去されることになる。そして、除去率が高まると、性能劣化したフィルタ14でも、シラノール化合物を必要量除去できるので、結果としてフィルタ14の使用期間を長くすることができ、また厚みが薄くても十分にシラノール化合物を除去できる。
【0034】
内部ケミカルフィルタ14の下流側には、上記したように調温調湿装置15が配置される。したがって、除湿装置13によって相対湿度が低下させられた循環空気は、調温調湿装置15で加湿されて相対湿度が再び上昇させられた上で、内部チャンバ12内部に供給される。そのため、内部チャンバ12内部の相対湿度は上記したように一定湿度に維持することが可能になる。
【0035】
なお、本実施形態では、除湿装置13で除湿される代わりに、外部から空気循環路30に低湿度の空気が供給されることにより空気が減湿され、その減湿空気が内部ケミカルフィルタ14に供給されても良い。同様に、循環空気への加湿は、調温調湿装置15で行われる代わりに、外部供給口19を介して外部から高湿度の空気が供給されることにより行われても良い。
【実施例】
【0036】
本発明について、以下実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の構成に限定されるわけではない。
【0037】
[通気試験1]
実施例1〜5、比較例1において、TMSを含む空気を所定の相対湿度で、通気試験装置内部に通気させ、TMSのヘキサメチルジシロキサン(以下、“D2”と略する)への変化率を確認した。
【0038】
[実施例1]
実施例1の通気試験装置40では、図3に示すように、上流側から窒素ガスボンベ41、流量計42、及びTMS発生源43を順に接続し、TMS発生源43の下流側に内部に6層のケミカルフィルタ44A〜44Fを重ねて配置したカラム44を接続した。通気試験装置40は、窒素ガスボンベ41以外を恒温恒湿槽47内に配置し、装置40内部を通気する温度が23℃となるようにした。また、恒温恒湿槽47は、光による影響を避けるために遮光した。恒温恒湿槽47としてはエスペック株式会社製のPR-1KTを使用した。
【0039】
TMS発生源43は、上部が開口し内部に液体のTMSが入れられた内部容器45を、通気経路の一部を成す外部容器46の内部に配置して構成されたものであった。ケミカルフィルタ44A〜44Fは、ウレタンフォームに、活性炭を固着して構成されるギガソーブL(商品名、ニッタ株式会社製)を、直径19mm、高さ20mmの円柱状に切り出したものであった。
【0040】
窒素ガスボンベ41は、相対湿度0%、窒素純度99.999%の窒素ガスを供給し、流量計42で測定される流量が5.1リットル/分(カラム44における面風速0.3m/秒)となるように、装置40の通気経路に窒素ガスを通気させた。TMS発生源43は、装置40内部を通気する空気に、気化されたTMSを一定割合で含有させた。TMSは一部がD2に二量化し、カラム44内部のケミカルフィルタはそれらTMS及びD2を捕集した。カラム44は、空気中に含まれるTMS及びD2を実質的に全て捕集できるように、上記のように多層(6層)のケミカルフィルタ44A〜44Fを有していた。窒素ガスの通気は72時間継続して行った。
【0041】
[実施例2]
実施例2の通気試験装置50では、図4に示すように、上流側からガス成分除去用カラム51、除湿カラム52、53、湿度計54、TMS発生源43を順に接続し、TMS発生源43の下流側に、カラム44を接続した。カラム44の下流側には、さらに、バルブ57、流量計42、ポンプ55をこの順に接続した。流量計42、TMS発生源43、カラム44としては実施例1と同様のものを使用するとともに、装置50の全体は、実施例1と同様の条件下の恒温恒湿槽47内部に配置した。
【0042】
ガス成分除去用カラム51は、直径50mm、長さ6cmであって、その内部に、ギガコールA(商品名、ニッタ株式会社製)を直径50mm、高さ2cmに切断したもの、ギガコールC(商品名、ニッタ株式会社製)を直径50mm、高さ4cmに切断したものが上流側からこの順に充填されていた。また、除湿カラム52は、直径50mm、長さ16cmのカラムであって、内部にシリカゲル(関東化学株式会社製、シリカゲル青、中粒)が充填されていた。除湿カラム53は、直径25mm、長さ10cmのカラムであって、内部に塩化カルシウム(乾燥用)(関東化学株式会社製)が充填されていた。湿度計54としては、SYINYEI製のVIEWMEMORY THR-VMを使用した。
【0043】
実施例2では、ポンプ55で恒温恒湿槽47内部の空気を吸気し、バルブ57で流量を調整して、流量計42で測定される流量が5.1リットル/分(カラム44における面風速0.3m/秒)となるように、装置50の通気経路に空気を通気させた。通気空気は、ガス成分除去用カラム51で空気中のガス成分が除去されるとともに、除湿カラム52、53で除湿され、湿度計54で測定される相対湿度が13%になった。本実施例2でも実施例1と同様に、TMS発生源43は、気化されたTMSを通気空気中に一定割合で含有させ、ケミカルフィルタ44A〜44Fは、その通気空気中のTMS及び二量化されたD2を捕集した。実施例2でも実施例1と同様に、通気は72時間継続して行った。
【0044】
[実施例3]
恒温恒湿槽47内部の湿度を調整し、湿度計54で測定される相対湿度が20%となるようにした以外は、実施例2と同様に実施した。
【0045】
[実施例4]
除湿カラム52、53を省略するとともに、恒温恒湿槽47内部の湿度を調整し、湿度計54で測定される相対湿度が25%となるようにした以外は、実施例2と同様に実施した。
【0046】
[実施例5]
除湿カラム52、53を省略するとともに、恒温恒湿槽47内部の湿度を調整し、湿度計54で測定される相対湿度が33%となるようにした以外は、実施例2と同様に実施した。
【0047】
[比較例1]
除湿カラム52、53を省略するとともに、恒温恒湿槽47内部の湿度を調整し、湿度計54で測定される相対湿度が44%となるようにした以外は、実施例2と同様に実施した。
【0048】
各実施例1〜5、比較例1において72時間の通気終了後、ケミカルフィルタ44A〜44Fそれぞれを20mlのアセトン中に入れて、各フィルタに吸着されたガス状有機物を超音波振動により2時間かけて抽出し、GC−FIDによって、フィルタ44A〜44Fそれぞれに吸着されたTMSとD2の量を測定した。表1、2には、カラム44における全フィルタ44A〜44FのTMS、D2の合計吸着量及び合計吸着量を100重量%としたときのTMS、D2それぞれの吸着量を重量%で示す。また、図5には、そのD2重量%と相対湿度との関係をグラフで示す。
【0049】
なお、GC−FIDの測定条件は、以下のとおりである。
GC−FID:島津製作所社製、GC−2010
カラム:Inert Cap 1MS 内径0.25mm 長さ60m
カラム温度:40℃で5分間維持した後、10℃/分で280℃まで昇温。その後、280℃で21分ホールド。
キャリアガス:He カラム流量:1.16ml/分
注入量:1.0μl 測定時間:50分
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1、2、図5から明らかなように、相対湿度が低いほど、TMSはD2に変化しやすく、特に相対湿度33%以下とすることにより、D2への変化率を顕著に高めることができた。さらに、実施例2、3に示すように、相対湿度20%、13%以下としていくと、D2への変化率が約70%以上、約90%以上となり、D2への変化率をより一層高くすることができた。
【0053】
[通気試験2]
通気試験2の通気試験装置では、図6に示すように通気試験1と同様に、内部に6層のケミカルフィルタ83A〜83Fを重ねて配置したカラム80を用意した。ただし、本試験では、最も上流側のケミカルフィルタ83Aは、約450g/mのTMSを付着させて、TMS発生源として使用した。カラム80のエア排出口82側には、エアの流量を調整するバルブ84と、カラム80に通気されるエアの流量を計測する流量計85と、カラム80に空気を通気させるためのポンプ86を接続した。
【0054】
カラム80には、10.2リットル/分(面風速0.6m/秒)で、23℃に空調した空気を240時間通気させた。TMSは一部がD2に二量化されるとともに、エア通気によりケミカルフィルタ83AからTMSないしD2が脱離して、下流側に流された。
【0055】
通気終了後、通気試験1と同様に、フィルタ83A〜83Fそれぞれに吸着されたTMSとD2の量を測定した。また、通気前(0時間)のケミカルフィルタ83A〜83Fに関しても、ブランクとして同様にTMSとD2の重量を測定した。表3には、TMS及びD2それぞれに関し、各層における測定値と、全体の吸着量を100重量%としたときの各層の吸着量の比率(重量%)とを示した。
【0056】
【表3】

【0057】
表3の結果から明らかなように、TMSは、1層目のケミカルフィルタからその多くが脱離し、その脱離したTMSは3層目のケミカルフィルタに最も多く吸着された。一方、D2はその多くが1層目のケミカルフィルタに保持されたままであり、脱離したものも2層目のフィルタに最も多く吸着された。すなわち、TMSはケミカルフィルタに吸着されにくく、一旦吸着されても脱離しやすいが、その二量体(D2)は、ケミカルフィルタに吸着されやすく、一旦吸着されたものはフィルタから脱離しにくいことが理解できる。
【符号の説明】
【0058】
10 露光装置
12 内部チャンバ
13 除湿装置(減湿手段)
14 内部ケミカルフィルタ
15 調温調湿装置(加湿手段)
20 露光本体部
30 空気循環路
50 フィルタ基材
51 吸着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラノール化合物を含む空気を減湿して相対湿度33%以下とする減湿手段と、前記減湿手段で減湿された空気をろ過して、前記シラノール化合物を除去するケミカルフィルタとを備えることを特徴とする空気浄化システム。
【請求項2】
前記ケミカルフィルタでろ過された空気を加湿する加湿手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化システム。
【請求項3】
前記相対湿度は、20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化システム。
【請求項4】
前記ケミカルフィルタは、多数の吸着剤が固着されたフィルタ基材で構成されることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化システム。
【請求項5】
前記シラノール化合物は、トリメチルシラノールであることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気浄化システムによって、内部の空気が浄化されることを特徴とする露光装置。
【請求項7】
露光本体部が内部に配置されるチャンバと、前記チャンバ内部から排出した空気を循環させて再び前記チャンバ内部に供給する空気循環路と、前記空気循環路内部に上流側から順に配置される減湿手段及びケミカルフィルタとを備え、前記減湿手段で相対湿度が前記チャンバ内部より低くなるように減湿された空気が、前記ケミカルフィルタでろ過されること特徴とする露光装置。
【請求項8】
前記減湿手段で相対湿度33%以下に減湿された空気が前記ケミカルフィルタでろ過されること特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
前記空気循環路において前記ケミカルフィルタの下流側に配置される加湿手段をさらに備え、前記減湿された空気が加湿されて前記チャンバ内に供給されることを特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項10】
ジシラザン化合物を含むフォトレジスト密着剤で疎水化処理されたウエハが、前記チャンバ内部に配置されることを特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項11】
シラノール化合物を含む空気を浄化する空気浄化方法であって、相対湿度33%以下に減湿した前記空気を、ケミカルフィルタでろ過して、前記シラノール化合物を除去することを特徴とする空気浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−30163(P2012−30163A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170656(P2010−170656)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】