説明

空気清浄システム、フィルタユニット、及びフィルタ交換方法

【課題】 空気流路を形成するダクトにフィルタユニットを接続して構成される空気清浄システムにおいて、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し時に、使用済みフィルタから細菌類が生きている状態で飛散するのを防止する。
【解決手段】 空気調和システム1は、空気流路を形成するダクト11、13、16、17、18と、空気流路内に空気を流す送風機15、20と、ダクト11、13、16、17、18に接続されたフィルタユニット19とを備えている。フィルタユニット19は、空気中に含まれる塵埃や細菌類を捕捉するフィルタ92を有している。フィルタユニット19には、フィルタ92の取り外し時にフィルタ92から細菌類が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理に使用する生菌飛散防止処理用手段をフィルタユニット19内又はダクト16、17、18内に挿入するための挿入部91aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄システム、フィルタユニット、及びフィルタ交換方法、特に、空気流路を形成するダクトにフィルタユニットを接続して構成される空気清浄システム、このような空気清浄システムに使用されるフィルタユニット、及び、そのフィルタ交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物内に空気流路を形成するダクトを通じて室内の空気清浄を行う空気清浄システムが用いられている。このような空気清浄システムは、主として、室外空気の室内への給気、室内空気の室外への排気や室内空気の循環を行うためのダクトと、ダクトに接続されたフィルタユニットと、送風手段としての送風ファンとを備えている。そして、この空気清浄システムを構成するフィルタユニットには、室内の清浄度合いに応じて、HEPA、高性能や中性能フィルタが設けられており、このフィルタは、定期的に、又は、フィルタの集塵性能が低下した場合に、使用済みフィルタとして取り外されて、新しいフィルタと交換された後に、廃棄される。
【0003】
そして、このような空気清浄システムを医療施設等の建物内に使用する場合には、フィルタに塵埃とともに細菌類も捕捉されることになる。このため、フィルタ交換作業時には、使用済みフィルタを取り外して、滅菌処理を行った後に、廃棄処理するのが通常である(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、使用済みフィルタの取り外し時には、使用済みフィルタに捕捉された細菌類が生きている状態で飛散して、フィルタ交換作業者が細菌類を含んだ塵埃を吸入したり、医療施設内の空気中に飛散させてしまうおそれがある。別途、加熱空気によりフィルタに捕捉された細菌類を死滅させることによってフィルタ交換作業を不要にする方法(例えば、特許文献1及び2参照)も提案されているが、細菌類を死滅させるための手段を予め設けておく必要があるため、空気清浄システム全体としてコストアップが生じてしまうことになり望ましくない。
【特許文献1】特開2002−11083号公報
【特許文献2】特開平5−322219号公報
【特許文献3】特開平8−233310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、空気流路を形成するダクトにフィルタユニットを接続して構成される空気清浄システムにおいて、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し時に、使用済みフィルタから細菌類が生きている状態で飛散するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明にかかる空気清浄システムは、空気流路を形成するダクトと、空気流路内に空気を流す送風手段と、ダクトに接続されたフィルタユニットとを備えている。フィルタユニットは、空気中に含まれる塵埃や細菌類を捕捉するフィルタを有している。フィルタユニット又はダクトには、フィルタの取り外し時にフィルタから細菌類が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理に使用する生菌飛散防止処理用手段をフィルタユニット内又はダクト内に挿入するための挿入部が設けられている。
【0006】
この空気清浄システムでは、生菌飛散防止処理用手段をフィルタユニット内又はダクト内に挿入するための挿入部が設けられているため、フィルタ交換時において、使用済みフィルタを取り外す前に、滅菌処理やフィルタのコーティング処理等の生菌飛散防止処理を行うことができる。これにより、この空気清浄システムでは、フィルタ交換作業時のフィルタ取り外し時に、細菌類が生きている状態で飛散するのを確実に防止できるため、フィルタ交換作業者がフィルタ取り外し時に細菌類を含んだ塵埃を吸入したり、細菌類の飛散による院内感染を防止することができる。
【0007】
第2の発明にかかる空気清浄システムは、第1の発明にかかる空気清浄システムにおいて、挿入部は開口である。
この空気清浄システムでは、挿入部が開口であるため、生菌飛散防止処理用手段として使用可能な加熱機器、電磁波照射器、オゾン等の活性種を生成する放電器等をフィルタユニット内又はダクト内に設置したり、生菌飛散防止処理の作業者が液体殺菌剤の散布、固体殺菌剤の散布、バイオ抗体の散布やコーティング剤の塗布等を行うためにフィルタユニット内又はダクト内にアクセスすることができる。
【0008】
第3の発明にかかる空気清浄システムは、第1又は第2の発明にかかる空気清浄システムにおいて、生菌飛散防止処理用手段を挿入部から挿入した状態において、送風手段によりフィルタに空気を流す運転を行うことが可能である。
生菌飛散防止処理用手段として、熱風によりフィルタを加熱する加熱機器、オゾン等の活性種を生成する放電器、殺菌剤やバイオ抗体の散布等を使用する場合には、熱風、活性種、殺菌剤やバイオ抗体をフィルタに確実に到達させなければ、十分な滅菌効果を発揮することができない。しかし、この空気清浄システムでは、生菌飛散防止処理用手段を挿入部から挿入した状態において、送風手段によりフィルタに空気を流す運転を行うことが可能であるため、熱風によりフィルタを加熱する加熱機器、オゾン等の活性種を生成する放電器、殺菌剤やバイオ抗体の散布等を使用する場合であっても、熱風、活性種、殺菌剤やバイオ抗体をフィルタに確実に到達させることができる。これにより、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し前に、確実に滅菌処理を行うことができる。
【0009】
第4の発明にかかる空気清浄システムは、第3の発明にかかる空気清浄システムにおいて、送風手段は、風量を可変することが可能な送風ファンである。
この空気清浄システムでは、送風手段が風量を可変することが可能な送風ファンであるため、生菌飛散防止処理用手段として、熱風によりフィルタを加熱する加熱機器、オゾン等の活性種を生成する放電器、殺菌剤やバイオ抗体の散布等を使用する場合には、生菌飛散防止処理作業時に、フィルタを通過する空気の流速を抑える制御を行うことによって、フィルタ付近における、熱風、活性種、殺菌剤やバイオ抗体の滞留時間を長くすることができる。これにより、フィルタの滅菌効果を高めることができる。
【0010】
第5の発明にかかる空気清浄システムは、第2の発明にかかる空気清浄システムにおいて、フィルタは、光半導体を含んでいる。
この空気清浄システムでは、光半導体がフィルタの基材に担持、塗布、練り込み等により含まれているフィルタを備えているため、生菌飛散防止処理時に、挿入部から光源を挿入してフィルタを照射することによって、フィルタに捕捉された細菌類を死滅させることができる。これにより、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し前に、確実に滅菌処理を行うことができる。ここで、「光半導体」とは、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化タングステンや酸化鉄等に代表される金属酸化物、C60等のフラーレンに代表される炭素系の光半導体、遷移金属からなるナイトライド、オキシナイトライド、光半導体能を有するアパタイト等である。
【0011】
第6の発明にかかる空気清浄システムは、第5の発明にかかる空気清浄システムにおいて、光半導体は、光半導体能を有するアパタイトである。
フィルタの基材としては、通常、ガラス繊維、バインダとして樹脂を含む有機材料や不織布等の樹脂からなるものがよく用いられる。ところが、光半導体は樹脂を腐食する性質を有するため、樹脂を含むフィルタ基材に光半導体を担持、塗布、練り込み等により含まれるようにすると、フィルタ基材を腐食してしまうおそれがある。しかし、この空気清浄システムでは、光半導体が光半導体能を有するアパタイトを含むフィルタを備えており、光半導体能を有するアパタイトは樹脂を腐食しない性質を有するため、フィルタの基材に担持、塗布、練り込み等により含まれるようにする際に好適である。また、アパタイトは、細菌類との親和性が良好であるため、滅菌効果を高めるのにも寄与することができる。尚、「光半導体能を有するアパタイト」とは、例えば、カルシウムイオンをチタンイオンでイオン交換して光半導体能を持たせたカルシウムヒドロキシアパタイト等をいう。
【0012】
第7の発明にかかる空気清浄システムは、第1の発明にかかる空気清浄システムにおいて、挿入部はノズルである。
この空気清浄システムでは、挿入部がノズルであるため、生菌飛散防止処理用手段としてガス殺菌剤の散布を使用する際に、このノズルを通じて、フィルタユニット内又はダクト内にガス殺菌剤を流入させることができる。これにより、ガス殺菌剤がフィルタユニット又はダクトの外側の空間に漏れるのを防ぐことができるため、滅菌効果を高めることができる。
【0013】
第8の発明にかかる空気清浄システムは、第7の発明にかかる空気清浄システムにおいて、挿入部を含むフィルタの上流側からフィルタの下流側までの間の空間を遮断することが可能な開閉機構をさらに備えている。
この空気清浄システムでは、挿入部を含むフィルタの上流側からフィルタの下流側までの間の空間を遮断することが可能な開閉機構をさらに備えているため、生菌飛散防止処理用手段としてガス殺菌剤の散布を使用する際に、フィルタ付近の空間のみを他の空気流路と縁切りすることができる。これにより、ガス殺菌剤が空気流路を通じて建物内の他の空間に漏れるのを防ぐことができるため、滅菌効果を高めることができる。
【0014】
第9の発明にかかるフィルタユニットは、ダクトに接続されて空気清浄システムを構成するフィルタユニットであって、ダクトに接続されるユニットケーシングと、ユニットケーシングに支持されており空気中に含まれる塵埃や細菌類を捕捉するフィルタとを備えている。ユニットケーシングには、フィルタの取り外し時にフィルタから細菌が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理に使用する生菌飛散防止処理用手段を内部に挿入するための挿入部が設けられている。
【0015】
このフィルタユニットでは、生菌飛散防止処理用手段をユニットケーシング内に挿入するための挿入部が設けられているため、フィルタ交換時において、使用済みフィルタを取り外す前に、滅菌処理やフィルタのコーティング処理等の生菌飛散防止処理を行うことができる。これにより、このフィルタユニットでは、フィルタ交換作業時のフィルタ取り外し時に、細菌類が生きている状態で飛散するのを確実に防止できるため、フィルタ交換作業者がフィルタ取り外し時に細菌類を含んだ塵埃を吸入したり、細菌類の飛散による院内感染を防止することができる。
【0016】
第10の発明にかかるフィルタユニットは、第9の発明にかかるフィルタユニットにおいて、挿入部は開口である。
このフィルタユニットでは、挿入部が開口であるため、生菌飛散防止処理用手段として使用可能な加熱機器、電磁波照射器、オゾン等の活性種を生成する放電器等をフィルタユニット内に設置したり、生菌飛散防止処理の作業者が液体殺菌剤の散布、固体殺菌剤の散布、バイオ抗体の散布やコーティング剤の塗布等を行うためにフィルタユニット内にアクセスすることができる。
【0017】
第11の発明にかかるフィルタユニットは、第10の発明にかかるフィルタユニットにおいて、フィルタは、光半導体を含んでいる。
このフィルタユニットでは、光半導体がフィルタの基材に担持、塗布、練り込み等により含まれているフィルタを備えているため、生菌飛散防止処理時に、挿入部から光源を挿入してフィルタを照射することによって、フィルタに捕捉された細菌類を死滅させることができる。これにより、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し前に、確実に滅菌処理を行うことができる。ここで、「光半導体」とは、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化タングステンや酸化鉄等に代表される金属酸化物、C60等のフラーレンに代表される炭素系の光半導体、遷移金属からなるナイトライド、オキシナイトライド、光半導体能を有するアパタイト等である。
【0018】
第12の発明にかかるフィルタユニットは、第11の発明にかかるフィルタユニットにおいて、光半導体は、光半導体能を有するアパタイトである。
フィルタの基材としては、通常、ガラス繊維、バインダとして樹脂を含む有機材料や不織布等の樹脂からなるものがよく用いられる。ところが、光半導体は樹脂を腐食する性質を有するため、樹脂を含むフィルタ基材に光半導体を担持、塗布、練り込み等により含まれるようにすると、フィルタ基材を腐食してしまうおそれがある。しかし、このフィルタユニットでは、光半導体が光半導体能を有するアパタイトを含むフィルタを備えており、光半導体能を有するアパタイトは樹脂を腐食しない性質を有するため、フィルタの基材に担持、塗布、練り込み等により含まれるようにする際に好適である。また、アパタイトは、細菌類との親和性が良好であるため、滅菌効果を高めるのにも寄与することができる。尚、「光半導体能を有するアパタイト」とは、例えば、カルシウムイオンをチタンイオンでイオン交換して光半導体能を持たせたカルシウムヒドロキシアパタイト等をいう。
【0019】
第13の発明にかかるフィルタユニットは、第9の発明にかかるフィルタユニットにおいて、挿入部はノズルである。
このフィルタユニットでは、挿入部がノズルであるため、生菌飛散防止処理用手段としてガス殺菌剤の散布を使用する際に、このノズルを通じて、フィルタユニット内にガス殺菌剤を流入させることができる。これにより、ガス殺菌剤がフィルタユニットの外側の空間に漏れるのを防ぐことができるため、滅菌効果を高めることができる。
【0020】
第14の発明にかかるフィルタユニットは、第13の発明にかかるフィルタユニットにおいて、挿入部を含むフィルタの上流側からフィルタの下流側までの間の空間を遮断することが可能な開閉機構をさらに備えている。
このフィルタユニットでは、挿入部を含むフィルタの上流側からフィルタの下流側までの間の空間を遮断することが可能な開閉機構をさらに備えているため、生菌飛散防止処理用手段としてガス殺菌剤の散布を使用する際に、フィルタ付近の空間のみを他の空気流路と縁切りすることができる。これにより、ガス殺菌剤が空気流路を通じて建物内の他の空間に漏れるのを防ぐことができるため、滅菌効果を高めることができる。
【0021】
第15の発明にかかるフィルタ交換方法は、空気流路を形成するダクトと、空気流路内に空気を流す送風手段と、空気中に含まれる塵埃や細菌類を捕捉するフィルタを有しておりダクトに接続されたフィルタユニットとを備えた空気清浄システムにおいて、フィルタを交換するフィルタ交換方法であって、以下の手順によって行われる。まず、フィルタユニット又はダクトに設けられた挿入部から、生菌飛散防止処理用手段をフィルタユニット内又はダクト内に挿入する。次に、生菌飛散防止処理用手段を使用して、フィルタから細菌類が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理を行う。次に、フィルタを取り外した後に、新しいフィルタと交換する。
【0022】
このフィルタ交換方法では、フィルタ交換時において、使用済みフィルタを取り外す前に、滅菌処理やフィルタのコーティング処理等の生菌飛散防止処理を行うようにしている。これにより、このフィルタ交換方法では、フィルタ交換作業時のフィルタ取り外し時に、細菌類が生きている状態で飛散するのを確実に防止できるため、フィルタ交換作業者がフィルタ取り外し時に細菌類を含んだ塵埃を吸入したり、細菌類の飛散による院内感染を防止することができる。
【0023】
第16の発明にかかるフィルタ交換方法は、第15の発明にかかるフィルタ交換方法であって、生菌飛散防止処理時に、生菌飛散防止処理用手段を挿入部に挿入した状態において、送風手段により前記フィルタに空気を流す運転を行う。
生菌飛散防止処理用手段として、熱風によりフィルタを加熱する加熱機器、オゾン等の活性種を生成する放電器、殺菌剤やバイオ抗体の散布等を使用する場合には、熱風、活性種、殺菌剤やバイオ抗体をフィルタに確実に到達させなければ、十分な滅菌効果を発揮することができない。しかし、このフィルタ交換方法では、生菌飛散防止処理時に、生菌飛散防止処理用手段を挿入部から挿入した状態において、送風手段によりフィルタに空気を流す運転を行っているため、熱風によりフィルタを加熱する加熱機器、オゾン等の活性種を生成する放電器、殺菌剤やバイオ抗体の散布等を使用する場合であっても、熱風、活性種、殺菌剤やバイオ抗体をフィルタに確実に到達させることができる。これにより、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し前に、確実に滅菌処理を行うことができる。
【0024】
第17の発明にかかるフィルタ交換方法は、第16の発明にかかるフィルタ交換方法であって、生菌飛散防止処理時に、送風手段によってフィルタに流される空気の風量を制御する。
このフィルタ交換方法では、生菌飛散防止処理作業時に、送風手段によって、フィルタを通過する空気の流速を抑える制御を行っているため、生菌飛散防止処理用手段として、熱風によりフィルタを加熱する加熱機器、オゾン等の活性種を生成する放電器、殺菌剤やバイオ抗体の散布等を使用する場合に、フィルタ付近における、熱風、活性種、殺菌剤やバイオ抗体の滞留時間を長くすることができる。これにより、フィルタの滅菌効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
第1の発明では、生菌飛散防止処理用手段をフィルタユニット内又はダクト内に挿入するための挿入部が設けられているため、フィルタ交換作業時のフィルタ取り外し時に、細菌類が生きている状態で飛散するのを確実に防止できるため、フィルタ交換作業者がフィルタ取り外し時に細菌類を含んだ塵埃を吸入したり、細菌類の飛散による院内感染を防止することができる。
【0026】
第2の発明では、挿入部が開口であるため、生菌飛散防止処理用手段として使用可能な加熱機器、電磁波照射器、オゾン等の活性種を生成する放電器等をフィルタユニット内又はダクト内に設置したり、生菌飛散防止処理の作業者が液体殺菌剤の散布、固体殺菌剤の散布、バイオ抗体の散布やコーティング剤の塗布等を行うためにフィルタユニット内又はダクト内にアクセスすることができる。
【0027】
第3の発明では、生菌飛散防止処理用手段を挿入部から挿入した状態において、送風手段によりフィルタに空気を流す運転を行うことが可能であるため、熱風によりフィルタを加熱する加熱機器、オゾン等の活性種を生成する放電器、殺菌剤やバイオ抗体の散布等を使用する場合であっても、熱風、活性種、殺菌剤やバイオ抗体をフィルタに確実に到達させることができて、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し前に、確実に滅菌処理を行うことができる。
【0028】
第4の発明では、送風手段が風量を可変することが可能な送風ファンであるため、生菌飛散防止処理作業時に、フィルタを通過する空気の流速を抑える制御を行って、フィルタ付近における熱風、活性種、固体殺菌剤やバイオ抗体の滞留時間を長くすることができて、滅菌効果を高めることができる。
第5の発明では、フィルタが光半導体を含んでいるため、生菌飛散防止処理時に、挿入部から光源を挿入してフィルタを照射することによって、フィルタに捕捉された細菌類を死滅させることができて、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し前に、確実に滅菌処理を行うことができる。
【0029】
第6の発明では、光半導体が光半導体能を有するアパタイトを含むフィルタを備えており、光半導体能を有するアパタイトは樹脂を腐食しない性質を有するため、フィルタの基材に担持、塗布、練り込み等により含まれるようにする際に好適である。
第7の発明では、挿入部がノズルであるため、生菌飛散防止処理用手段としてガス殺菌剤の散布を使用する際に、ガス殺菌剤がフィルタユニット又はダクトの外側の空間に漏れるのを防ぎつつ、このノズルを通じて、フィルタユニット内又はダクト内にガス殺菌剤を流入させることができるようになり、滅菌効果を高めることができる。
【0030】
第8の発明では、挿入部を含むフィルタの上流側からフィルタの下流側までの間の空間を遮断することが可能な開閉機構をさらに備えているため、生菌飛散防止処理用手段としてガス殺菌剤の散布を使用する際に、フィルタ付近の空間のみを他の空気流路と縁切りして、ガス殺菌剤が空気流路を通じて建物内の他の空間に漏れるのを防ぐことができるようになり、滅菌効果を高めることができる。
【0031】
第9の発明では、生菌飛散防止処理用手段をフィルタユニット内に挿入するための挿入部が設けられているため、フィルタ交換作業時のフィルタ取り外し時に、細菌類が生きている状態で飛散するのを確実に防止できるため、フィルタ交換作業者がフィルタ取り外し時に細菌類を含んだ塵埃を吸入したり、細菌類の飛散による院内感染を防止することができる。
【0032】
第10の発明では、挿入部が開口であるため、生菌飛散防止処理用手段として使用可能な加熱機器、電磁波照射器、オゾン等の活性種を生成する放電器等をフィルタユニット内に設置したり、生菌飛散防止処理の作業者が液体殺菌剤の散布、固体殺菌剤の散布、バイオ抗体の散布やコーティング剤の塗布等を行うためにフィルタユニット内にアクセスすることができる。
【0033】
第11の発明では、フィルタが光半導体を含んでいるため、生菌飛散防止処理時に、挿入部から光源を挿入してフィルタを照射することによって、フィルタに捕捉された細菌類を死滅させることができて、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し前に、確実に滅菌処理を行うことができる。
第12の発明では、光半導体が光半導体能を有するアパタイトを含むフィルタを備えており、光半導体能を有するアパタイトは樹脂を腐食しない性質を有するため、フィルタの基材に担持、塗布、練り込み等により含まれるようにする際に好適である。
【0034】
第13の発明では、挿入部がノズルであるため、生菌飛散防止処理用手段としてガス殺菌剤の散布を使用する際に、ガス殺菌剤がフィルタユニットの外側の空間に漏れるのを防ぎつつ、このノズルを通じて、フィルタユニット内にガス殺菌剤を流入させることができるようになり、滅菌効果を高めることができる。
第14の発明では、挿入部を含むフィルタの上流側からフィルタの下流側までの間の空間を遮断することが可能な開閉機構をさらに備えているため、生菌飛散防止処理用手段としてガス殺菌剤の散布を使用する際に、フィルタ付近の空間のみを他の空気流路と縁切りして、ガス殺菌剤が空気流路を通じて建物内の他の空間に漏れるのを防ぐことができるようになり、滅菌効果を高めることができる。
【0035】
第15の発明にかかるフィルタ交換方法では、フィルタ交換作業時のフィルタ取り外し時に、細菌類が生きている状態で飛散するのを確実に防止できるため、フィルタ交換作業者がフィルタ取り外し時に細菌類を含んだ塵埃を吸入したり、細菌類の飛散による院内感染を防止することができる。
第16の発明にかかるフィルタ交換方法では、生菌飛散防止処理時に、生菌飛散防止処理用手段を挿入部から挿入した状態において、送風手段によりフィルタに空気を流す運転を行っているため、熱風によりフィルタを加熱する加熱機器、オゾン等の活性種を生成する放電器、固体殺菌剤の散布やバイオ抗体の散布等を使用する場合であっても、熱風、活性種、固体殺菌剤やバイオ抗体をフィルタに確実に到達させることができるようになり、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し前に、確実に滅菌処理を行うことができる。
【0036】
第17の発明にかかるフィルタ交換方法では、生菌飛散防止処理作業時に、送風手段によって、フィルタを通過する空気の流速を抑える制御を行って、フィルタ付近における熱風、活性種、固体殺菌剤やバイオ抗体の滞留時間を長くすることができるため、滅菌効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面に基づいて、本発明にかかる空気清浄システム、フィルタユニット、及びフィルタ交換方法の実施形態について説明する。
(1)空気調和システムの構成
図1に、本発明の一実施形態にかかる空気清浄システムが採用された空気調和システム1の概略のシステム構成図を示す。本実施形態の空気調和システム1は、室内の浮遊粉塵濃度を0.15mg/m3以下に保持する仕様の医療施設等の建物内に設置される空気調和システムである。
【0038】
空気調和システム1は、主として、外気導入ダクト11と、外気導入ダンパ12と、第1ダクト13と、ダクト式空調ユニット14と、送風機15、20と、第2ダクト16と、第3ダクト17と、排気ダクト18と、フィルタユニット19とを備えている。
<外気導入ダクト>
外気導入ダクト11は、屋外に通じており、屋外から室内へ室外空気OA(図1参照)を導入するために設けられている。なお、この外気導入ダクト11の一端は、屋外に面しており、プレフィルタ11aが設けられている。このプレフィルタ11aは、比較的大きな塵埃を捕捉するためのフィルタである。また、この外気導入ダクト11の他端には、第1ダクト13及び第3ダクト17が接続されている。また、外気導入ダクト11、第1ダクト13及び第3ダクト17の接続位置には、外気導入ダンパ12が設けられている。
【0039】
<外気導入ダンパ>
外気導入ダンパ12は、外気導入ダクト11と第1ダクト13との接続位置に設けられている。外気導入ダンパ12は、第1状態と第2状態とに切り換えが可能になっている。具体的には、第1状態(図1の実線の状態)においては室外空気OAの導入が遮断され、第2状態(図1の点線の状態)においては室外空気OAの導入が行われるように切り換え可能になっている。
【0040】
<第1ダクト>
第1ダクト13は、その一端が外気導入ダクト11及び第3ダクト17に接続されており、他端が送風機15の吸入側に接続されている。これにより、第1ダクト13には、外気導入ダクト11を通じて屋外から導入された室外空気OA、第3ダクト17を通じて室内から導出された室内空気RA1(図1参照)、又は、室外空気OAと室内空気RA1との混合空気からなる循環空気CA1(図1参照)が流れることになる。
【0041】
<ダクト式空調ユニット>
ダクト式空調ユニット14は、第1ダクト13に接続されており、主として、循環空気CA1と熱交換を行う熱交換器(図示せず)を有している。この熱交換器は、屋外等に設置された熱源ユニット(図示せず)と冷媒配管を介して接続されている。このダクト式空調ユニット14では、第1ダクト13を流れる循環空気CA1が空気調和されて空調空気CA2として送風機15に吸入されることになる。
【0042】
<送風機>
送風機15は、ダクト式空調ユニット14において空気調和された空調空気CA2(図1参照)を昇圧するために設けられており、本実施形態において、風量を可変することが可能である。具体的には、送風機15の羽根車(図示せず)を回転駆動するモータとしてDCモータを備えていたり、開度調節が可能な吸入ダンパ(図示せず)を備える等により、風量を可変できるようになっている。送風機15において昇圧された空気は、第2ダクト16を通じて供給空気SAとして室内に供給されることになる。尚、この送風機15は、ダクト式空調ユニット14に内蔵されていてもよい。
【0043】
<第2ダクト>
第2ダクト16は、一端が送風機15の吐出側に接続されており、他端が室内の給気口16aに接続されている。第2ダクト16では、送風機15において昇圧された供給空気SAが室内に向かって流れることになる。
<第3ダクト>
第3ダクト17は、その一端が第1ダクト13に接続されており、他端が室内の排気口17aに接続されている。第3ダクト17では、室内の空調のためにダクト式空調ユニット14に送られる室内空気RA1が流れることになる。
【0044】
<排気ダクト>
排気ダクト18は、その一端が室内の排気口18aに接続されており、他端が送風機20を介して屋外に通じている。この排気ダクト18では、室内に吹き出された供給空気SAの一部が排出空気EA(図1参照)として排気される。
<送風機>
送風機20は、排気ダクト18から排気される排出空気EA(図1参照)を昇圧するために設けられており、本実施形態において、送風機15と同様、風量を可変することが可能である。
【0045】
<フィルタユニット>
フィルタユニット19は、第2ダクト16、第3ダクト17及び排気ダクト18の各空気流路の途中に挿入されるように設けられている。図2に、本実施形態のフィルタユニット19の概略の断面図を示す。このフィルタユニット19は、主として、各ダクト16、17、18に接続されるユニットケーシング91と、ユニットケーシング91に支持されており空気中に含まれる塵埃や細菌を捕捉するフィルタ92とを備えている。
【0046】
フィルタ92は、上述のように、室内の浮遊粉塵濃度を0.15mg/m3以下の空気を清浄することが可能なフィルタであって、本実施形態において、HEPAフィルタからなるフィルタ基材と光触媒アパタイトとを有している。ここで、「HEPA」フィルタとは、High Efficiency Particulate Air Filter(高性能微粒子フィルタ)の略語であって、0.3ミクロン以上のものなら粉塵・花粉・細菌を問わず、あらゆる種類の微粒子を99.97%以上除去する性能を持つフィルタの総称である(世界規格=NASA規格)。また、本明細書では、HEPAフィルタは、ULPAフィルタを含む。ここにいう「ULPA」フィルタとは、Ultra low penetration airの略語であって、0.1ミクロン以上のものなら粉塵・花粉・細菌を問わず、あらゆる種類の微粒子を99.995%以上除去する性能を持つフィルタの総称である。光触媒アパタイトは、カルシウムヒドロキシアパタイトの一部のカルシウム原子をチタン原子に置換した物質からなり、フィルタ基材に担持、塗布、練り込み等により設けられている。光触媒アパタイトは、細菌類に対して高い吸着能を示すとともに、光半導体能を示すため、光源等から適切な波長域の光をフィルタ92に照射することによって、光触媒アパタイトが光半導体能を発揮して、フィルタ92に捕捉された細菌類を死滅させることが可能である。尚、室内の浮遊粉塵濃度等の要求仕様が本実施形態における仕様と異なる場合には、HEPAフィルタに代えて、中性能フィルタや高性能フィルタ等を使用してもよい。
【0047】
ユニットケーシング91には、後述のフィルタ交換作業におけるフィルタ92の取り外し時に、フィルタ92から細菌が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理に使用する生菌飛散防止処理用手段を内部に挿入するための挿入部91aが設けられている。より具体的には、本実施形態のフィルタユニット19においては、フィルタ92が光半導体能を有するアパタイト(以下、光触媒アパタイトとする)を含んでいるため、光触媒アパタイトの光半導体能を発揮させるための光源93を、生菌飛散防止処理用手段として、ユニットケーシング91内に挿入することが可能な開口からなる挿入部91aが設けられている。この挿入部91aは、空気調和システム1の運転時に、開口を閉鎖しておくことが可能である。これにより、フィルタ92の取り外し前に、細菌類が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理として、挿入部91aから光源を挿入して、フィルタ92に捕捉された細菌類を死滅させる滅菌処理を行うことが可能になっている。ここで、挿入部91aは、図2及び図3に示されるように、フィルタ92の上流側の位置及び下流側の位置のいずれに設けられていてもよいが、本実施形態においては、光源からの光を効率的よくフィルタ92に照射することができるように、フィルタ92の上流側の位置に設けられることが望ましい。尚、挿入部91aは、本実施形態のように、ユニットケーシング91に設けてもよいし、フィルタユニット19に接続された第2ダクト16、第3ダクト17及び排気ダクト18に設けてもよい。
【0048】
(2)使用済みフィルタの交換方法
次に、フィルタユニット19の使用済みのフィルタ92の交換方法について説明する。
使用済みフィルタの交換方法は、次の手順によって行われる。
まず、フィルタ交換作業者が、フィルタユニット19(又は、ダクト16、17、18)の挿入部91aから、生菌飛散防止処理用手段としての光源93をユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)内に挿入する。
【0049】
次に、光源によって適切な波長域の光でフィルタ92を照射して、フィルタ92に捕捉された細菌類を死滅させて滅菌することにより、フィルタ92から細菌類が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理を行う。
その後、使用済みのフィルタ92を取り外して、新しいフィルタと交換し、使用済みのフィルタ92を袋詰め等して廃棄する。
【0050】
(3)空気調和システムの特徴
本実施形態の空気清浄システムの一例としての空気調和システム1(フィルタユニット19、フィルタ交換方法を含む)には、以下のような特徴がある。
(A)
本実施形態の空気調和システム1では、生菌飛散防止処理用手段(本実施形態では、光源93)をユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)内に挿入するための挿入部91a(本実施形態では、開口)が設けられているため、フィルタ交換時において、使用済みのフィルタ92を取り外す前に、生菌飛散防止処理(本実施形態では、フィルタ92を光源93で照射し、フィルタ92に含まれる光触媒アパタイトの光半導体能を発揮させることによる滅菌処理)を行うことができる。これにより、この空気調和システム1では、フィルタ交換作業時のフィルタ取り外し時に、細菌類が生きている状態で飛散するのを確実に防止できるため、フィルタ交換作業者がフィルタ取り外し時に細菌類を含んだ塵埃を吸入したり、細菌類の飛散による院内感染を防止することができる。しかも、この挿入部91aが、図2に示されるように、フィルタ92の上流側の位置に設けられている場合には、多くの細菌類が捕捉されているフィルタ92の上流側の面から効率的よく生菌飛散防止処理を行うことができる。一方、挿入部91aが、図3に示されるように、フィルタ92の下流側の位置に設けられている場合には、比較的清浄なフィルタ92の下流側の面から衛生的に生菌飛散防止処理を行うことができる。
【0051】
(B)
また、本実施形態のフィルタユニット19のフィルタ92のHEPAフィルタがバインダとして樹脂を含む有機材料や不織布等の樹脂からなるものであっても、フィルタ基材に光半導体を直接的に担持、塗布、練り込み等により含まれるようにするのではなく、光半導体能を有するアパタイトとして担持、塗布、練り込み等により含まれるようにしているため、フィルタ基材を腐食することもなく、また、アパタイトは、細菌類との親和性が良好であるため、滅菌効果を高めるのにも寄与することができる。
【0052】
(4)変形例1
上述の空気調和システム1においては、フィルタユニット19を構成するフィルタ92として、HEPAフィルタに光半導体能を有するアパタイトを担持、塗布、練り込み等により含まれるようにしたものを採用するとともに、ユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)に開口からなる挿入部91aを設けて生菌飛散防止処理用手段としての光源93を挿入できるようにしているが、フィルタ92としてはHEPAフィルタのみを使用し、かつ、ユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)に開口からなる挿入部91aを設けるとともに、生菌飛散防止処理用手段として活性種を生成する放電器94を挿入できるようにすることで、フィルタ92の取り外し前に、この活性種によってフィルタ92に捕捉された細菌類を死滅させる処理ができるようにしてもよい。ここで、放電器94としては、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカル等を生成するグロー放電器、バリア放電器、又はストリーマ放電器等が使用可能である。
【0053】
本変形例の空気調和システム1においても、生菌飛散防止処理用手段(本実施形態では、放電器94)をユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)内に挿入するための挿入部91a(本実施形態では、開口)が設けられているため、フィルタ交換時において、使用済みのフィルタ92を取り外す前に、生菌飛散防止処理(本実施形態では、放電器94において活性種を生成し、この活性種によるフィルタ92の滅菌処理)を行うことができる。尚、本変形例においては、挿入部91aがフィルタ92の上流側の位置や下流側の位置のどちらに設けられていても、基本的には同様な効果が得られるが、フィルタ92に活性種を効率よく供給することを優先する場合には、挿入部91aをフィルタ92の上流側の位置に設けることが望ましい。
【0054】
また、本変形例の空気調和システム1のように、生菌飛散防止処理用手段として活性種を生成する放電器94を使用する場合には、生菌飛散防止処理用手段としての放電器94を挿入部91aから挿入した状態において、送風手段としての送風機15、20によりフィルタ92に空気を流す運転を行って、放電器94で生成する活性種をフィルタ92に確実に到達させるようにすることが望ましい。さらに、本変形例では、風量を可変可能な送風機15、20を使用しているため、放電器94を使用した生菌飛散防止処理作業時に、フィルタ92を通過する空気の流速を抑える制御を行うことによって、フィルタ92付近における活性種の滞留時間を長くして、フィルタ92の滅菌効果を高めることがより望ましい。
【0055】
(5)変形例2
変形例1の空気調和システム1においては、生菌飛散防止処理用手段として放電器94を採用しているが、フィルタ92を加熱してフィルタ92に捕捉された細菌類を死滅させることが可能な加熱機器95を挿入部91aから挿入できるようにしてもよい。ここで、加熱機器95としては、乾熱法により加熱する場合には、フィルタ92を直接加熱する電気ヒータやフィルタ92に熱風を送ることによってフィルタ92を加熱する熱交換器を使用することが可能である。また、湿熱法により加熱する場合には、電気ヒータや熱交換器とともに加湿器を併用したり、高周波加熱器やスチーム発生器等を使用することが可能である。そして、乾熱法により加熱する場合には、フィルタ92を、160℃から170℃まで加熱して120分保持する、170℃から180℃まで加熱して60分保持する、又は、180℃から190℃まで加熱して30分保持するという殺菌条件が採用される。また、湿熱法により加熱する場合には、フィルタ92を、115℃から118℃まで加熱して30分保持する、121℃から124℃まで加熱して15〜20分保持する、又は、126℃から129℃まで加熱して10分保持するという殺菌条件が採用される。尚、本変形例においては、挿入部91aがフィルタ92の上流側の位置や下流側の位置のどちらに設けられていても、同様な効果が得られる。
【0056】
また、加熱機器95としてフィルタ92に熱風を送ることによってフィルタ92を加熱する熱交換器を使用する場合には、生菌飛散防止処理用手段としての加熱機器95を挿入部91aから挿入した状態において、送風手段としての送風機15、20によりフィルタ92に空気を流す運転を行って、加熱機器95において生成した熱風をフィルタ92に確実に到達させるようにすることが望ましい。さらに、本変形例では、風量を可変可能な送風機15、20を使用しているため、加熱機器95を使用した生菌飛散防止処理作業時に、フィルタ92を通過する空気の流速を抑える制御を行うことによって、フィルタ92付近における熱風の滞留時間を長くして、フィルタ92の滅菌効果を高めることがより望ましい。
【0057】
(6)変形例3
上述の空気調和システム1においては、フィルタユニット19を構成するフィルタ92として、HEPAフィルタに光半導体能を有するアパタイトを担持、塗布、練り込み等により含まれるようにしたものを採用するとともに、ユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)に開口からなる挿入部91aを設けて生菌飛散防止処理用手段としての光源93を挿入できるようにしているが、フィルタ92としてはHEPAフィルタのみを使用し、かつ、ユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)に開口からなる挿入部91aを設けるとともに、生菌飛散防止処理用手段として高エネルギーの電磁波(例えば、紫外線、γ線、電子線、X線、又は高周波等)を発生する照射器96を挿入できるようにすることで、フィルタ92の取り外し前に、この電磁波によってフィルタ92に捕捉された細菌類を死滅させる処理ができるようにしてもよい。ここで、照射器96として高周波発生器を使用する場合には、変形例2と同様に、加湿器等によりフィルタ92が保湿させることが望ましい。また、尚、本変形例においては、挿入部91aがフィルタ92の上流側の位置や下流側の位置のどちらに設けられていても、基本的には同様な効果が得られるが、フィルタ92に電磁波を減衰させることなく照射することを優先する場合には、挿入部91aをフィルタ92の上流側の位置に設けることが望ましい。
【0058】
(7)変形例4
変形例3の空気調和システム1においては、生菌飛散防止処理用手段として照射器96を採用しているが、各種殺菌剤やバイオ抗体等をフィルタ92に散布してフィルタ92に捕捉された細菌類を死滅させることが可能な殺菌剤散布器97を挿入部91aから挿入できるようにしてもよい。ここで、殺菌剤としては、ガス殺菌剤、液体殺菌剤、固体殺菌剤やバイオ抗体等がある。そして、ガス殺菌剤としては、エチレンオキサイドやホルマリン等の有機系ガス、又は、活性種を含むガスがある。液体殺菌剤としては、アルコール類やフェノール類等の有機溶剤、過酸化水素水、オゾン水、又は、水分散タイプや有機溶剤分散タイプの界面活性剤等がある。固体殺菌剤としては、ヨウ素等がある。尚、本変形例においては、挿入部91aがフィルタ92の上流側の位置や下流側の位置のどちらに設けられていても、基本的には同様な効果が得られるが、液体殺菌剤や固体殺菌剤を使用する場合には、殺菌剤の使用量を減らすことを優先する場合には、挿入部91aをフィルタ92の上流側の位置に設けることが望ましい。
【0059】
また、殺菌剤として固体殺菌剤やバイオ抗体等を散布する場合には、生菌飛散防止処理用手段としての殺菌剤散布器97を挿入部91aから挿入した状態において、送風手段としての送風機15、20によりフィルタ92に空気を流す運転を行って、殺菌剤をフィルタ92に確実に到達させるようにすることが望ましい。さらに、本変形例では、風量を可変可能な送風機15、20を使用しているため、殺菌剤散布器97を使用した生菌飛散防止処理作業時に、フィルタ92を通過する空気の流速を抑える制御を行うことによって、フィルタ92付近における殺菌剤の滞留時間を長くして、フィルタ92の滅菌効果を高めることがより望ましい。
【0060】
また、殺菌剤としてガス殺菌剤を使用する場合には、図2及び図3に示されるような開口からなる挿入部91aではなく、図4に示されるように、ユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)にノズルからなる挿入部91bを設けて、この挿入部91bを通じて、ユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)にガス殺菌剤を流入させることができる。これにより、ガス殺菌剤がユニットケーシング91(又は、ダクト16、17、18)の外側の空間に漏れるのを防ぐことができる。さらに、図4に示されるように、フィルタ92を含む挿入部91bの上流側からフィルタ92の下流側までの間の空間を遮断することが可能な開閉機構としてのダンパ98を備えるようにしてもよい。このダンパ98は、空気調和システム1の運転時には図4の点線で示される状態となり、フィルタ交換作業時には図3の実線で示される状態となるように開閉可能である。これにより、ガス殺菌剤を散布する場合に、フィルタ92付近の空間のみを他の空気流路と縁切りすることができるようになり、ガス殺菌剤がダクト16、17、18の空気流路を通じて建物内の他の空間に漏れるのを防ぐことができる。尚、図4においては、挿入部91bがフィルタ92の上流側の位置に設けられているが、図3に示される挿入部91aと同様に、フィルタ92の下流側の位置に設けられていてもよい。
【0061】
(8)変形例5
変形例4の空気調和システム1においては、生菌飛散防止処理用手段として殺菌剤散布器97等を用いた殺菌剤の散布を採用し、生菌飛散防止処理としてフィルタ92に捕捉された細菌類を死滅させる処理を行っているが、生菌飛散防止処理は、フィルタ交換作業時のフィルタ取り外し時に、細菌類が生きている状態で飛散するのを確実に防止できればよいため、フィルタ92にコーティング剤を塗布してフィルタ92に捕捉された細菌類が飛散しないようにするコーティング処理を生菌飛散防止処理用手段として採用してもよい。ここで、コーティング剤としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体(略称:EVA)等のマスキング剤、噴霧タイプ又は液状のノリ、常温で乾燥・硬化するタイプの塗料、又は、アクリル樹脂等のワックス等が使用可能である。尚、本変形例においては、挿入部91aがフィルタ92の上流側の位置や下流側の位置のどちらに設けられていても、基本的には同様な効果が得られるが、コーティング剤の使用量を減らすことを優先する場合には、挿入部91aをフィルタ92の上流側の位置に設けることが望ましい。
【0062】
(9)他の実施形態
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
(A)
上述の実施形態及びその変形例にかかる空気調和システム1においては、フィルタユニット19が、第2ダクト16、第3ダクト17及び排気ダクト18の各空気流路の途中に挿入されるように設けられているが、フィルタユニット19が、第2ダクト16の給気口16a、第3ダクト17排気口17a及び排気ダクト18の排気口18aに設けられていてもよい。
【0063】
(B)
上述の実施形態及びその変形例にかかる空気調和システムは、医療施設のみならず、クリーンルームにも適用可能である。
(C)
上述の実施形態及びその変形例にかかる空気調和システムにおいて、ユニットケーシング又はダクトに設けられる挿入部は、生菌飛散防止処理用手段を挿入のみを目的として設けたものではなく、例えば、フィルタリーク試験のために設けられているエアロゾルの投入口や濃度均一性の確認部を挿入部として兼用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明を利用すれば、空気流路を形成するダクトにフィルタユニットを接続して構成される空気清浄システムにおいて、フィルタ交換作業時の使用済みフィルタの取り外し時に、使用済みフィルタから細菌類が生きている状態で飛散するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態にかかる空気清浄システムが採用された空気調和システムの概略のシステム構成図である。
【図2】フィルタユニットの概略の断面図である(挿入部をフィルタの上流側に設けた場合)。
【図3】フィルタユニットの概略の断面図である(挿入部をフィルタの下流側に設けた場合)。
【図4】変形例4にかかるフィルタユニットの概略の断面図である(挿入部をフィルタの上流側に設けた場合)。
【符号の説明】
【0066】
1 空気調和システム(空気清浄システム)
15、20 送風機(送風手段)
16、17、18 ダクト
19 フィルタユニット
91 ユニットケーシング
91a、91b 挿入部
92 フィルタ
98 ダンパ(開閉機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流路を形成するダクト(16、17、18)と、
前記空気流路内に空気を流す送風手段(15、20)と、
空気中に含まれる塵埃や細菌類を捕捉するフィルタ(92)を有しており、前記ダクトに接続されたフィルタユニット(19)とを備え、
前記フィルタユニット又は前記ダクトには、前記フィルタの取り外し時に前記フィルタから細菌類が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理に使用する生菌飛散防止処理用手段を前記フィルタユニット内又は前記ダクト内に挿入するための挿入部(91a、91b)が設けられている、
空気清浄システム(1)。
【請求項2】
前記挿入部(91a)は、開口である、請求項1に記載の空気清浄システム(1)。
【請求項3】
前記生菌飛散防止処理用手段を前記挿入部(91a、91b)から挿入した状態において、前記送風手段(15、20)により前記フィルタ(92)に空気を流す運転を行うことが可能である、請求項1又は2に記載の空気清浄システム(1)。
【請求項4】
前記送風手段(15、20)は、風量を可変することが可能な送風ファンである、請求項3に記載の空気清浄システム(1)。
【請求項5】
前記フィルタ(92)は、光半導体を含んでいる、請求項2に記載の空気清浄システム(1)。
【請求項6】
前記光半導体は、光半導体能を有するアパタイトである、請求項5に記載の空気清浄システム(1)。
【請求項7】
前記挿入部(91b)は、ノズルである、請求項1に記載の空気清浄システム(1)。
【請求項8】
前記フィルタ(92)を含む前記挿入部(91b)の上流側から前記フィルタの下流側までの間の空間を遮断することが可能な開閉機構(98)をさらに備えている、請求項7に記載の空気清浄システム(1)。
【請求項9】
ダクト(16、17、18)に接続されて空気清浄システムを構成するフィルタユニットであって、
前記ダクトに接続されるユニットケーシング(91)と、
前記ユニットケーシングに支持されており、空気中に含まれる塵埃や細菌を捕捉するフィルタ(92)とを備え、
前記ユニットケーシングには、前記フィルタの取り外し時に前記フィルタから細菌類が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理に使用する生菌飛散防止処理用手段を内部に挿入するための挿入部(91a、91b)が設けられている、
フィルタユニット(19)。
【請求項10】
前記挿入部(91a)は、開口である、請求項9に記載のフィルタユニット(19)。
【請求項11】
前記フィルタ(92)は、光半導体を含んでいる、請求項10に記載のフィルタユニット(19)。
【請求項12】
前記光半導体は、光半導体能を有するアパタイトである、請求項11に記載のフィルタユニット(19)。
【請求項13】
前記挿入部(91b)は、ノズルである、請求項9に記載のフィルタユニット(19)。
【請求項14】
前記フィルタ(92)を含む前記挿入部(91b)の上流側から前記フィルタの下流側までの間の空間を遮断することが可能な開閉機構(98)をさらに備えている、請求項13に記載のフィルタユニット(19)。
【請求項15】
空気流路を形成するダクト(16、17、18)と、前記空気流路内に空気を流す送風手段(15、20)と、空気中に含まれる塵埃や細菌類を捕捉するフィルタ(92)を有しており前記ダクトに接続されたフィルタユニット(19)とを備えた空気清浄システム(1)において、前記フィルタを交換するフィルタ交換方法であって、
前記フィルタユニット又は前記ダクトに設けられた挿入部(91a、91b)から、生菌飛散防止処理用手段を前記フィルタユニット内又は前記ダクト内に挿入し、
前記生菌飛散防止処理用手段を使用して、前記フィルタから細菌類が生きている状態で飛散するのを防止する生菌飛散防止処理を行い、
前記フィルタを取り外した後に、新しいフィルタと交換する、
フィルタ交換方法。
【請求項16】
前記生菌飛散防止処理時に、前記生菌飛散防止処理用手段を前記挿入部(91a、91b)に挿入した状態において、前記送風手段(15、20)により前記フィルタ(92)に空気を流す運転を行う、請求項15に記載のフィルタ交換方法。
【請求項17】
前記生菌飛散防止処理時に、前記送風手段(15、20)により前記フィルタ(92)に流される空気の風量を制御する、請求項16に記載のフィルタ交換方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−14848(P2006−14848A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194303(P2004−194303)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】