説明

空気清浄システムおよび室内の空気清浄方法

【課題】本発明ではコスト、設置性が良く、ウイルス除去を効果的かつ使用条件を選ばず実施することができる空気清浄システム。
【解決手段】本発明の空気清浄システムは、微細な水粒子を生成する水粒子生成装置と、生成された水粒子を室内に供給するための送風装置と、室内に供給した水粒子を回収する回収装置と、回収した水粒子から空気の微小な汚染物質を除去する汚染物質除去装置を有する空気清浄システムであって、特に、20〜50μmの径である水粒子を室内に供給して空気の微小な汚染物質を吸着し、水粒子ごと空気中の微小な汚染物質を回収することを特徴とする空気清浄システムである。以上のような空気清浄システムによれば、コスト、設置性が良く、ウイルス除去を効果的かつ使用条件を選ばず実施することができるため、病室や一般家庭の部屋で容易に用いることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば病室やリビング等の室内空間における空気清浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病室やリビングなどの室内空間では、粒子状物質(例えば、ハウスダスト,花粉,カビ,ウイルス等)が浮遊していることがある。室内中を漂うウイルスは、空気感染や飛沫感染を引き起こし、特にSARSウイルスや新型インフルエンザウイルスなどは、非常に致死率が高いと共に爆発的な伝染の可能性を有しており、その対策は大きな社会問題となっている。
【0003】
このウイルスは、0.1μm程度と非常に小さいため、わずかな空気の流れで浮遊してしまって沈降することはない。そのため、一般の空気清浄機による部分的な空気流では、周囲の空気との間に生じる微小な空気流の乱れによって拡散してしまい、思惑通りに収集することは困難である。また、収集したとしても、一般の空気清浄機ではせいぜい数マイクロのダストを除去するフィルタを用いているためウイルスは除去できず、逆にウイルス用のHEPA等のフィルタを用いてしまうと他の粒子によってすぐに目詰まりしてしまう。
【0004】
ここで、ウイルスサイズである0.1μmの粒子と、一般のハウスダストサイズである100μmの粒子についての考察を行なう。
【0005】
図5は、ウイルスサイズの粒子とハウスダストサイズの粒子を人の顔位置で放散してから約60秒後のその粒子の挙動をシミュレートした図を示している。ここで、粒子を人の顔位置(図5(a)の領域1a)で放散するのは、ウイルスが人のくしゃみなどにより放散される場合を模擬したためである。特に、図5(a)は、ウイルスの放散開始時の状態を示している。また、図5(a)〜(c)において、部屋1には、中の人が感じない程度の微小な空気の流れが生じているものと設定している。また、部屋1内には、柱やたんすやベッド等が存在しているとして、部屋1を複雑な形状として考察している。
【0006】
図5(b)は、ウイルスサイズの粒子2bを図5(a)の領域1aに配置(放散開始)してから約60秒後の状態を示す図である。図5(b)では、部屋1の中の実線以外の細かい点は全て粒子2bであるが、図中ではその一部のみに符号を付している。図5(b)での細かい点の分布から明らかなように、ウイルスサイズの粒子2bは、微小な空気の流れにより勝手に拡散しており、沈降する粒子はほとんど無いことが判る。
【0007】
一方、図5(c)は、ハウスダストサイズの粒子2cを図5(a)の領域1aに配置してから約60秒後の状態を示す図である。図5(c)では、部屋1の中の実線以外の点は全て粒子2cであるが、図中ではその一部のみに符号を付している。図5(c)から明らかなように、ハウスダストサイズの粒子2cは、約60秒後には主に領域1b,1cを中心に床に沈降している。これら、図5(b)と図5(c)の結果より、ウイルスサイズの粒子は、一般の空気清浄機での集塵を狙うハウスダストの粒子とは挙動が大きく異なることが判る。
【0008】
上記のような特性を持つ浮遊ウイルスを除去して室内の空気を清浄化する従来の技術として、以下のようなものがある。
【0009】
まず、清浄化した空気を層状に送り込み、ウイルスを含む空気を押し出すと共に、その空気によりカーテンのようにしてウイルス粒子の進入を防ぐ。さらには、クリーンルームのように、室内もしくは建物内の空気の全体の流れをコントロールし、HEPAフィルタによって空気を清浄化する従来例1の技術がある(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0010】
また、別な従来技術として、高機能化した市販の空気清浄機のようにイオンを発生させて室内に送り込み、そのイオンによってウイルスを非活性化もしくは死滅させることで空気の清浄化を計る従来例2の技術がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0011】
さらに、高機能化した市販の空気清浄機の中には、20μm程度以下の帯電や殺菌成分を含んだ微小な水滴を生成してこれを噴霧し、ウイルスがこの水滴につくことで殺菌や非活性化を図る従来例3の技術がある(例えば、特許文献4,5参照。)。
【0012】
また、その他の従来技術として、ウイルスの収集は行わないが、オゾンを室内に充満させることや紫外線を当てることでウイルス死滅する従来例4の技術もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭55−118754号公報
【特許文献2】特開2001−108269号公報
【特許文献3】特開2002−319470号公報
【特許文献4】特開2003−79714号公報
【特許文献5】特開2007−32974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前述の従来例1では、設備の費用も高く、その設置も容易ではないため、手術室など局所的で固定された環境条件で使用する場合は効果的であるが、病室や一般家庭で用いることはコスト,設置性等の問題がある。また、HEPAフィルタを用いる場合、上記の一般の空気清浄機で述べたように、ある程度の清浄空間での使用でないとフィルタがすぐに目詰まりしてしまうことがある。
【0015】
また、前述の従来例2では、コストや設置性に関しては問題ないが、イオンによる殺菌の原理が完全に明確にされているわけではない。また、室内にイオンを送り込んでも室内に拡散し、さらにはイオンの寿命についても長くても数秒程度である。そのため、ウイルスの非活性や死滅に足る十分量のイオンをウイルスに接触させることは難しく、効果はあるとしても、その効果の程度に関しては完全に保証されるものではない。
【0016】
また、前述の従来例3では、水滴径が小さいため、イオンと同様にわずかな気流等によって水滴が拡散してしまう。また、ウイルスをこの水滴に付着させて確実に収集することも難しい。さらに、数μmオーダーの微小な水滴であれば、環境条件にもよるが数秒〜コンマ秒程度で蒸発してしまうため、水滴としての効果も限定的なものとなってしまう。
【0017】
ここで、従来例3の数μmオーダーの粒子サイズの水粒子の挙動のシミュレートを、図6を用いて考察する。図6は、従来例3で使用される最大クラスの10μmの粒子3を放散してから約90秒後のシミュレート結果を示すものである。図6では、部屋1の中の実線以外の細かい点は全て粒子2であるが、図中ではその一部のみに符号を付している。図6を見ると、部屋1中に細かい点(粒子2)が広く分散していることが分かり、このサイズであっても90秒後には依然と空中を漂い拡散していることが判り、従来例3では、気流に対して制御が難しいことが判る。
【0018】
さらに、従来例4では、オゾンも紫外線も人体には有害であり、その使用環境や使用条件が非常に限定されてしまう。
【0019】
そこで、本発明では、ウイルス除去を効果的かつ使用条件を選ばず実施することができ、その結果として病室や一般家庭の部屋等で容易に用いることができる空気清浄システムおよび室内の空気清浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための本発明の空気清浄システムは、粒子径20〜50μmの水粒子を発生させる水粒子発生装置と、前記水粒子を室内に供給するための送風装置と、前記室内に供給された水粒子を回収する水粒子回収装置と、前記回収した水粒子から微小物質を除去する微小物質除去装置と、を備えることを特徴とする。
【0021】
また、上記課題を解決するための本発明の空気清浄方法は、粒子径20〜50μmの水粒子を水粒子発生装置から室内に供給し、前記室内にて微小物質が吸着した水粒子を水粒子回収装置で回収し、前記回収した水粒子から微小物質を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の空気清浄システムおよび室内の空気清浄方法によれば、ウイルス除去を効果的かつ使用条件を選ばず実施することができるため、病室や一般家庭の部屋で容易に用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1の空気清浄システムの概要図
【図2】水粒子の径と特性との関係を示す図
【図3】粒子径30μmの水粒子の放散から90秒後のシミュレーション結果を示す図
【図4】実施の形態1の空気清浄方法のフローチャート
【図5】(a)粒子の放散開始時のシミュレーション結果を示す図、(b)ウイルスサイズの粒子の放散60秒後のシミュレーション結果を示す図、(c)ハウスダストサイズの粒子の放散60秒後のシミュレーション結果を示す図
【図6】粒子径10μmの水粒子の放散から90秒後のシミュレーション結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明を行う。なお、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の空気清浄システムの概要図であり、図2は、水粒子の径と特性との関係を示す図であり、図3は、図6と対応する本実施の形態1における水粒子の挙動シミュレーション結果を示す図である。
【0026】
図1(a)〜(c)で示すように、本実施の形態1の空気清浄システム11は、水粒子発生装置12と、水粒子回収装置13と、室内環境計測装置22と、人位置検知装置23と、から構成される。そして、本実施の形態1の空気清浄システム11は、特に、粒子径20〜50μmの水粒子14を室内に供給して空気中の微小なウイルス21を吸着させ、水粒子14ごと空気中の微小なウイルス21を回収することを特徴とする空気清浄システムである。
【0027】
図1(b)で示される水粒子発生装置12は、部屋1の天井付近に設けられ、少なくとも微細な水粒子14を生成する水粒子生成装置15と、生成された水粒子14を部屋(室内空間)1の室内に供給するための送風装置16と、水粒子特性制御装置17と、水粒子14の供給方向を制御するための供給方向制御装置24と、を備える。
【0028】
また、図1(c)で示される水粒子回収装置13は、部屋1の床面近傍に設けられ、室内に供給した水粒子14を回収する回収装置18と、回収した水粒子14から空気の微小な汚染物質を除去する汚染物質除去装置19と、回収用送風装置20と、を備える。
【0029】
ここで、まず、本実施の形態1において、粒子径20〜50μmの水粒子を用いる理由について、図2を用いて説明する。図2は、横軸に水粒子の径(μm)を取り、各径での特徴を示したものである。
【0030】
図2で示すように、水粒子は径により様々な特性を有する。
【0031】
まず、大きな挙動を違いが現れるサイズは粒子径5μmである。これは、日本の病院における感染症防止の基本となっている米国CDC(疾病予防センター)のガイドラインで、飛沫感染と空気感染の境となる病原体の大きさの目安である。粒子径5μm以下では、室内に空気の流れが無くとも病原体は沈降することなく空気中をさまよい、空気感染を発生させる。一方、粒子径5μm以上では、沈降してしまうため、対象となる病原体は、人から咳とともに飛び出した範囲での飛沫感染となる。インフルエンザなどのウイルスについては、人の咳により唾と一緒となって粒子径5μm以上の水粒子となり、まずは飛沫感染を引き起こす。幸いにも沈降したウイルスも、その後、水分が蒸発することで再度空気中に巻き上げられて浮遊し、今度は空気感染を引き起こす。このように、インフルエンザなどのウイルスを含む水粒子の粒子径は5μmであるが、前述の図6にて示したように、20μm以下の水粒子の場合は、実質的に人が無風と感じるレベルの微風でも巻き上げられる。
【0032】
一方、一般的に粒子径50μm以下の水粒子は、通称「ドライミスト」と呼ばれ、水粒子の径が小さいため、人の手などに接触しても濡れる感覚はないとされている。また、粒子径50μm以上の水粒子については「スプレーミスト」と呼ばれ、接触すると濡れてしまう。
【0033】
また、水粒子の粒子サイズにともなって蒸発までの時間も変化し、小さいものほど早く蒸発し、大きいものほど寿命が長い。
【0034】
一般的な空気清浄機では、水粒子を発生させるものもあるが、主に拡散効果を見込んだものであり、部屋の隅々までいきわたらせることを目的としている。そのため、水粒子の粒子径は20μm以下となっている。また、早期に蒸発させることで湿度を向上させ、向上した湿度によってウイルスの非活性化に貢献するものもある。
【0035】
本実施の形態1では、ドライミスト(水粒子径0.1〜50μm)の性質を有しながらも勝手に拡散することなく、気流にて制御しやすくて、回収までの十分な寿命を有するサイズとして、粒子径20〜50μmの水粒子を選定している。さらに、粒子サイズを有る程度大きくすることで、ウイルス等の微小な粒子を吸着しやすくなることも判っている。なお、本実施の形態1において、粒子径20μm以上としたのは、一般的な部屋のサイズにて、水粒子が蒸発することなく、充分な距離だけ気流に沿って移動可能とするためである。
【0036】
図3は、本実施の形態1で選定した範囲内の粒子径30μmの水粒子を、人の顔位置で放散した場合の挙動を示す図である。なお、図3は、粒子サイズが異なること以外は、図6と同様の配置や構成を有する場合でのシミュレート結果である。図3では、部屋1の中の実線以外の点は全て水粒子14であるが、図中ではその一部のみに符号を付している。図3より明らかなように、水粒子14は、約90秒後には主に領域1b,1cを中心に、ほとんどの粒子が拡散することなく沈降しており、気流に素直に従いその挙動を制御しやすいことが判る。
【0037】
また、本実施の形態1では、汚染物質をウイルス21だとしているため、部屋1にいる人25に対して、市販の空気清浄機のように水粒子を振りまくことは非効率的であると言える。逆に、ウイルス21の発信源であり、かつウイルス21を吸い込んで感染を引き起こす口を有する顔位置に、水粒子を集中させることが、ウイルス21の感染防止や回収には効果的であると言える。従って、部屋1に人位置検知装置23を搭載し、検出した人25の位置(検出可能であれば人25の顔位置)を目掛けて、人位置検知装置23での検知結果に基づいて水粒子14を噴霧できるように、供給方向制御装置24にて水粒子14の噴霧方向を調整できることが望ましい。
【0038】
また、ウイルス21付きの水粒子14bを効率的に回収するために、水粒子回収装置13は、その回収口に向けて旋回吸込み流を発生させるような回収用送風装置20があることが望ましい。さらに、水粒子回収装置13で回収し損ねて部屋1の床に付着したウイルスを、移動型掃除装置26にて拭き掃除を行なって、ウイルス21を回収させることで、さらに効果的にウイルス除去が可能である。
【0039】
また、水粒子の特性はその径だけでなく、使用環境の湿度,温度,水粒子の温度などにより変化する。これらは、特に、蒸発までの時間への影響は大きい。従って、目標とする粒子径20〜50μmの水粒子を生成しても、環境によってはウイルスを吸着するところに到達する前に蒸発が進み、粒子径が20μmより小さくなって拡散して回収が難しくなる可能性や、最悪、途中でその水粒子が蒸発してしまう可能性がある。そこで、部屋1の室内の温度,湿度,風向などの室内環境を計測する室内環境計測装置22を設置し、これによって得られた計測値に基づいて水粒子の粒子径や温度、それを送る風量や風向などを制御する水粒子特性制御装置17を具備していることが望ましい。
【0040】
その他、水粒子14の特性を制御する上で、水ではなく微小な氷の粒子を用いて供給してもよく、その場合、微小な氷の表面の凹凸を増やすことで表面積を大きくし、ウイルス21の吸着性を向上させることもできる。
【0041】
さらに、付加部(図示せず)を用いて水粒子14にイオンやラジカル等の電荷を持たせることで、ウイルス21の吸着性を向上させることも可能である。また、さらには、適宜添加物を加えることで、吸着性や水粒子14の特性を好ましく変化させることも可能である。
【0042】
以上の本実施の形態1での空気清浄システム11のフローについて、図4を用いて説明する。
【0043】
図4において、まず、人位置検知装置23で、部屋1の中の人25の検知を行なう。この時の検知方法としては、部屋1の中に人が存在しているか否かを赤外線や超音波によって検知する方法や、人25が咳などをした際の音による音センサによって検知する方法などがある。具体的な検知方法としては、検知速度や検知精度などを考慮して適宜選択されることが好ましい。(ステップS1)。
【0044】
次に、ステップS1で部屋1の中の人25が検知された場合は、水粒子発生装置12から人25に向けて、粒子径20〜50μmの水粒子14を発生させる。そして、発生した水粒子14は、送風装置16にて部屋1の室内の必要な箇所(人25付近)に供給される。(ステップS2)。
【0045】
ここで、ステップS2で発生させる水粒子の条件を前述のように制御するために、室内環境計測装置22で、部屋1内の温度や湿度,風向,風量などの環境情報を計測する。そして、それらの計測結果に基づいて、ステップS2で発生させる水粒子の条件(水粒子の粒子径,温度,送風量,送風速度の少なくとも1つ)を適宜制御する。(ステップS3)。
【0046】
次に、ステップS2で発生させた水粒子14が、人25付近においてウイルス21などを付着した水粒子14bを水粒子回収装置13で回収する。具体的には、水粒子回収装置13の回収口に向けて旋回吸込み流を発生させることで、水粒子14bを回収する。そして、回収した水粒子14bから汚染物質除去装置19にて微小物質(本実施の形態1ではウイルス21)を除去する。(ステップS4)。
【0047】
ここで、ステップS4で回収し損ねて部屋1の床に付着した水粒子14bがある場合は、自律移動式の掃除機である移動型掃除装置26が、部屋1の中を動き回りながら回収することが好ましい。(ステップS5)。
【0048】
ここで、個々の装置の実現方法に関して、詳しく説明する。
【0049】
まず、水粒子発生装置12の水粒子生成装置15に用いる微小な水粒子の生成方法には、水を衝突破砕させる方式(方式1)、圧力をかけて微小な穴のあいたノズルから噴出す方式(方式2)、超音波方式(方式3)、遠心力を用いた方式(方式4)、ペルチェ素子等で空気中の水分から粒子を生成する方式(方式5)などを用いることができる。しかしながら、(方式1)と(方式2)は高圧の水もしくは空気が必要であり、生成するための装置の騒音や装置も大きくなり、水粒子のばらつきも大きく調整が難しく、本実施の形態1の空気清浄システムの意図に沿うのは容易ではない。また、(方式4)も水粒子径のばらつきが大きく、騒音も大きく、粒子径が大きいため本実施の形態1の空気清浄システムには向かない。また、(方式5)については音も静かで水の供給が不要であるという利点があるが、現状の技術レベルでは水粒子径が小さいものしかできないため、本実施の形態1の空気清浄システムにはまだ使えないと思われる。従って、音も小さく、水粒子の粒子径も手ごろであり、比較的制御も容易な(方式3)の超音波方式が、現状においては、本実施形態1の空気清浄システムに最も適していると考えられる。
【0050】
また、水粒子回収装置13の汚染物質除去装置19については、オーソドックスにフィルタを使用することも可能であるが、そのフィルタに水粒子が残るため、それがカビの原因になる可能性がある。そこで、水粒子の特性を最大限に活かし、電磁波により電子レンジの要領で回収した水粒子に熱エネルギーを与え、水粒子を蒸発させることでウイルスを煮沸消毒する方法がある。これによると、水粒子は消失するため、内部にカビ等が発生することもなく、十分に殺菌も行うことができる。
【0051】
ここで、図1では、本実施の形態1の空気清浄システム全体を、大きく水分子の供給ユニットと、回収ユニットの2つのユニットに分離して図示しているが、分離したシステムとしても良いし、市販の空気清浄機のように一つのユニットに合体させた形態でもよい。いずれにせよ、従来例1,2のような大規模なシステムや建物の構造解析や改造が必要となるようなことはなく、通常の空気清浄機並みのコスト、設置性にて部屋に設置することができる。
【0052】
本実施の形態1での説明では、もっとも効果的な微小な汚染物質としてウイルス21を挙げたが、ウイルス同様に微小な粒子を原因とする臭いにも効果が期待できる。その際は、前述の水粒子14に臭いの吸着剤を添加することが好ましい。また、氷の粒子を供給する場合にはその粒子に無数の凹凸や穴を開けることで効果的な消臭を行うことができる。
【0053】
また、汚染物質については、もちろん従来の空気清浄機にて対象としている花粉,ハウスダスト,細菌等を対象としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の空気清浄システムおよび室内の空気清浄方法によれば、効果的に室内に浮遊するウイルス等の汚染物質を低コストかつ確実に収集し、空気を清浄化できる。従って、一般家庭,病院や公共施設などの室内での利用が期待できる。
【符号の説明】
【0055】
1 部屋
2、3 粒子
11 空気清浄システム
12 水粒子発生装置
13 水粒子回収装置
14 水粒子
15 水粒子生成装置
16 送風装置
17 水粒子特性制御装置
18 回収装置
19 汚染物質除去装置
20 回収用送風装置
21 ウイルス
22 室内環境計測装置
23 人位置検知装置
24 供給方向制御装置
25 人
26 移動型掃除装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径20〜50μmの水粒子を発生させる水粒子発生装置と、
前記水粒子を室内に供給するための送風装置と、
前記室内に供給された水粒子を回収する水粒子回収装置と、
前記回収した水粒子から微小物質を除去する微小物質除去装置と、を備えること
を特徴とする空気清浄システム。
【請求項2】
前記室内の人位置を検出する人位置検知装置を更に備え、
前記水粒子発生装置は、前記人位置検知装置の検知結果に基づいて前記室内への水粒子の供給量および供給方向を制御する供給方向制御装置を具備すること
を特徴とする請求項1に記載の空気清浄システム。
【請求項3】
前記微小物質がウイルスであること
を特徴とする請求項1または2に記載の空気清浄システム。
【請求項4】
前記室内の温度,湿度,風向,風量の少なくとも1つを計測する室内環境計測装置を更に備え、
前記水粒子発生装置は、前記室内環境計測装置の計測結果に基づいて水粒子の粒子径,温度,送風量,送風速度の少なくとも1つを制御する水粒子特性制御装置を具備すること
を特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項5】
前記室内の床面の拭き掃除を行う移動型掃除装置を更に備えること
を特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項6】
前記微小物質除去装置は、装置内部に電磁波を発生させ、前記回収した水粒子に熱エネルギーを与えることで前記水粒子に付着した微小物質の処理を行う除去部を具備すること
を特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項7】
前記水粒子発生装置は、装置内部にて生成したイオンやラジカルを水粒子に付加する付加部を具備し、イオンやラジカルが付加された水粒子を発生させる装置であること
を特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項8】
前記水粒子発生装置は、装置内部にて生成されて氷化した水粒子を発生させる装置であること
を特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項9】
前記水粒子発生装置は、装置内部にて生成されて各種添加物が添加された水粒子を発生させる装置であること
を特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の空気清浄システム。
【請求項10】
粒子径20〜50μmの水粒子を水粒子発生装置から室内に供給し、
前記室内にて微小物質が吸着した水粒子を水粒子回収装置で回収し、
前記回収した水粒子から微小物質を除去すること
を特徴とする室内の空気清浄方法。
【請求項11】
前記室内の人を検知し、検知した人の位置に向けて前記水粒子発生装置から水粒子を供給すること
を特徴とする請求項10に記載の室内の空気清浄方法。
【請求項12】
前記室内の温度,湿度,風向,風量の少なくとも1つを計測し、その計測結果に基づいて前記水粒子発生装置から供給する水粒子の特性を変化させること
を特徴とする請求項10または11に記載の室内の空気清浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−135325(P2012−135325A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109183(P2009−109183)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】