説明

空気清浄機

【課題】細菌やカビの繁殖を防止し、細菌が付着した微粒子やカビの胞子が再飛散することを防止することができる空気清浄機を提供する。
【解決手段】捕集部を構成する円筒状のチャンバ1の内部に、オイルによって濡れ壁が形成されるように構成された濡れ壁塔2を接地して配設すると共に、この濡れ壁と対向する位置に放電線4を配設し、処理対象となるエアを前記濡れ壁と接触することができるようにチャンバ1内に供給すると共に、放電線4に高電圧を印加して、濡れ壁塔2との間で低温プラズマを発生させる。これにより、エア中の細菌の付着した微粒子やカビの胞子は荷電され、クーロン力によって濡れ壁を流下するオイルに捕集される。次に、捕集部において微粒子を捕集したオイルを、分離・殺菌部を構成するチャンバ20内に導入し、ヒーター22によって微粒子を捕集したオイルを加熱殺菌し、オイルに捕集された微粒子を分離・除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄機に係り、特に、オイルによる殺菌機能を持つ空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている標準的な空気清浄機においては、例えば、特許文献1に示すように、微粒子は高性能フィルタで捕集し、微量のガス成分は活性炭フィルタで捕集していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−7151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の空気清浄機においては、捕集した微粒子に付着していた芽胞菌等の細菌やカビが繁殖し、異臭を放つといった問題点があり、また、高性能フィルタが目詰まりして、細菌が付着した微粒子やカビの胞子が再飛散するといった問題点があった。そのため、空気中の細菌やカビの胞子を殺菌する機能を有する空気清浄機の開発が切望されていた。
【0005】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、細菌やカビの繁殖を防止し、細菌が付着した微粒子やカビの胞子が再飛散することを防止することができる空気清浄機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、オイルの表面近傍で低温プラズマ(コロナ放電)を発生させ、正イオンを発生させることにより、この正イオンによって、エア中の細菌の付着した微粒子やカビの胞子を荷電し、これらをクーロン力によって濡れ壁を流下するオイルに捕集させることができる空気清浄機を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の空気清浄機は、処理対象となるエア中に含まれる微粒子をオイルに捕集させる捕集部と、前記オイルに捕集された微粒子を分離すると共に、前記オイルを加熱殺菌する分離・殺菌部とを備え、前記捕集部と分離・殺菌部との間で、前記オイルが循環するように構成し、前記捕集部において、前記オイルの表面近傍で低温プラズマを発生させるように構成したことを特徴とするものである。
【0008】
上記のような構成を有する請求項1に記載の発明によれば、捕集部において、オイルの表面近傍で低温プラズマを発生させ、正イオンを発生させることにより、この正イオンによって、エア中の細菌の付着した微粒子やカビの胞子を荷電し、これらをクーロン力によって濡れ壁を流下するオイルに捕集させることができる。
【0009】
請求項2に記載の空気清浄機は、処理対象となるエア中に含まれる微粒子をオイルに捕集させる捕集部と、前記オイルに捕集された微粒子を分離すると共に、前記オイルを加熱殺菌する分離・殺菌部とを備え、前記捕集部と分離・殺菌部との間で、前記オイルが循環するように構成し、前記捕集部を構成する第1のチャンバの内部に、前記オイルによって濡れ壁が形成されるように構成された濡れ壁塔を接地して配設すると共に、前記オイルによる濡れ壁と対向する位置に放電線を配設し、前記処理対象となるエアを、前記オイルによる濡れ壁と接触することができるように該第1のチャンバ内に供給すると共に、前記放電線に高電圧を印加することにより、前記接地された濡れ壁塔との間で低温プラズマを発生させるように構成し、前記分離・殺菌部を構成する第2のチャンバ内に加熱手段を設け、前記捕集部において微粒子を捕集したオイルを前記第2のチャンバ内に導入し、前記加熱手段によって前記微粒子を捕集したオイルを加熱殺菌し、前記オイルに捕集された微粒子を分離させるように構成したことを特徴とするものである。
【0010】
上記のような構成を有する請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明をより具体的に規定したものであって、捕集部を構成する第1のチャンバ内において、オイルによって濡れ壁が形成されるように構成された濡れ壁塔を接地して配設すると共に、前記オイルによる濡れ壁と対向する位置に放電線を配設し、オイルの表面近傍で低温プラズマを発生させ、正イオンを発生させることにより、この正イオンによって、エア中の細菌の付着した微粒子やカビの胞子を荷電し、これらをクーロン力によって濡れ壁を流下するオイルに捕集させることができる。
【0011】
また、分離・殺菌部を構成する第2のチャンバ内に加熱手段を設け、前記捕集部において微粒子を捕集したオイルを第2のチャンバ内に導入し、加熱手段によってオイルを加熱することにより細菌等を殺菌し、オイルに捕集された微粒子を分離することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空気清浄機において、前記放電線に銀によるコーティングが施されていることを特徴とするものである。
上記のような構成を有する請求項3に記載の発明によれば、銀が持つオゾンを分解する触媒作用により、低温プラズマ発生時に発生するオゾン濃度を低減することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の空気清浄機において、前記第1のチャンバの内部に配設する濡れ壁塔を複数個とし、それぞれの濡れ壁塔の内部に放電線を設置したことを特徴とするものである。
上記のような構成を有する請求項4に記載の発明によれば、第1のチャンバの内部に複数個の濡れ壁塔を設置することにより、多量のエアを効率良く処理することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の空気清浄機において、前記オイルが、シリコーンオイル又は変性シリコーンオイルであることを特徴とするものである。
上記のような構成を有する請求項5に記載の発明によれば、オイルが劣化しないため半永久的に使用できるので経済性に優れている。また、これらのオイルは化学的に非常に安定な物質であるため、触れた場合でも健康被害がなく安全性にも優れている。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至請求項5のいずれか一に記載の空気清浄機において、前記放電線に印加する高電圧が、交流高電圧であることを特徴とするものである。
上記のような構成を有する請求項6に記載の発明によれば、濡れ壁塔の直径が小さくても、放電線と接地された濡れ壁塔内壁との間でスパーク放電に至る危険性が低いので、捕集部をよりコンパクトにすることができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項2乃至請求項6のいずれか一に記載の空気清浄機において、前記第1のチャンバ内に処理対象となるエアを供給する場合に、該チャンバ内を加圧状態にすることを特徴とするものである。
上記のような構成を有する請求項7に記載の発明によれば、処理対象となるエア中に含まれる不水溶性の微量ガスのオイルへの吸着を促進することができる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項2乃至請求項7のいずれか一に記載の空気清浄機において、前記第2のチャンバ内に前記微粒子を捕集したオイルを供給する場合に、該チャンバ内を減圧状態にすることを特徴とするものである。
上記のような構成を有する請求項8に記載の発明によれば、第2のチャンバ内が減圧状態とされているため、該チャンバ内においてエア中の不水溶性の微量ガスの分圧が低くなる。その結果、オイル表面に吸着されていた不水溶性の微量ガスのオイルからの放出を促進することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、細菌やカビの繁殖を防止し、細菌が付着した微粒子やカビの胞子が再飛散することを防止することができる空気清浄機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るオイルによる殺菌機能を持つ空気清浄機の構成を示す図である。
【図2】捕集後オイルを加熱処理する効果について検証した結果を示す図である。
【図3】本発明に係るオイルによる殺菌機能を持つ空気清浄機の他の実施例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るオイルによる殺菌機能を持つ空気清浄機(以下、本空気清浄機という)の具体的な実施の形態を、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0021】
(1)構成
本空気清浄機は、図1に示したように、大別して、細菌が付着した微粒子やカビの胞子等を捕集する微粒子捕集部(以下、捕集部という)と、捕集した微粒子等の固体を分離すると共に、細菌等を殺菌する固液分離部及び加熱殺菌部から構成されている。以下、各部について詳述する。
【0022】
(微粒子捕集部)
前記捕集部においては、円筒状のチャンバ1の内部に、円筒状の濡れ壁塔2が該チャンバ1と二重円筒を構成するように配置され、この濡れ壁塔2がドーナツ形状の上部支持部材3a及び下部支持部材3bによって、前記チャンバ1の上面及び下面との間に所定の間隔をあけて該チャンバ1に固定されている。なお、この濡れ壁塔2はステンレスから構成され、接地されている。
【0023】
また、前記チャンバ1の中央部には、低温プラズマ発生用の放電線4が上下方向に張られ、絶縁体5によって該チャンバ1の上面及び下面に固定されている。また、この放電線4には正の高圧電源6が接続されている。なお、低温プラズマ発生時に発生するオゾン濃度を低減するために、前記放電線4の表面には、銀によるコーティングが施されている。銀はオゾンを分解する触媒作用を持つからである。
【0024】
また、前記チャンバ1の下部(前記下部支持部材3bの下側)には、処理対象となるエアを該チャンバ1内に導入するための処理対象エア供給口7が設けられ、この処理対象エア供給口7には処理対象エア供給配管8が接続されている。そして、処理対象エア供給配管8に配設された加圧用ファン9によって、チャンバ1内を所定の加圧状態にできるように構成されている。
【0025】
一方、前記チャンバ1の上部(前記上部支持部材3aの上側)には、処理後の清浄エアを再度室内等へ戻すための処理後エア排出口10が設けられ、この処理後エア排出口10には処理後エア供給配管11が接続されている。
【0026】
また、前記チャンバ1の上部側壁には、エア中に含まれる細菌が付着した微粒子やカビの胞子等を捕集するオイル(以下、捕集用オイルという)を該チャンバ1内に供給するオイル供給口12が配設されている。なお、このオイル供給口12を介して供給されたオイルは、前記チャンバ1、濡れ壁塔2及び上部支持部材3aによって構成される空間に貯留され、濡れ壁塔2の上端に達した後、濡れ壁塔2の内壁に沿って流下するように構成されている。これにより濡れ壁塔2の内壁に濡れ壁が形成される。なお、図1においては、オイルの流れを点線の矢印、エアの流れを実線の矢印で示した。
【0027】
また、前記チャンバ1の底面には、該チャンバ1の下部に貯留された細菌が付着した微粒子やカビの胞子を捕集したオイル(以下、捕集後オイルという)を、後述する固液分離部及び加熱殺菌部へ送るための第1のオイル排出口13が設けられ、さらに、この第1のオイル排出口13には第1のオイル循環用配管14が接続されている。
【0028】
(固液分離部及び加熱殺菌部)
前記固液分離部及び加熱殺菌部においては、図1に示すように、減圧容器である固液分離用チャンバ20の上部に、前記第1のオイル循環用配管14を介して、捕集後オイルを該チャンバ20内に供給する捕集後オイル供給口21が設けられている。
【0029】
また、前記固液分離用チャンバ20内にはヒーター22が配設され、チャンバ20内に導入された捕集後オイルを所定の温度に加熱することにより、オイルに捕集された細菌やカビの胞子を死滅させ、オイルを殺菌することができるように構成されている。好気性の一般細菌は常温オイル中でも死滅するが、嫌気性菌、芽胞菌やカビの胞子等は常温オイル中では死滅しないため、加熱殺菌するように構成したものである。なお、ヒーター22による加熱温度は、50〜121℃、加熱時間は15〜30分が好ましい。
【0030】
また、前記固液分離用チャンバ20の下側部には、第2のオイル排出口23が設けられ、この第2のオイル排出口23には第2のオイル循環用配管24が接続されている。これにより、固液分離用チャンバ20内で殺菌処理がなされたオイルを、再度捕集部へ供給することができるように構成されている。
【0031】
さらに、前記固液分離用チャンバ20の底部には第3のオイル排出口25が設けられ、この第3のオイル排出口25には、開閉バルブ26を備えたオイル排出用配管27が接続されている。これにより、固液分離用チャンバ20内で殺菌処理がなされたオイルの内、底部に沈殿した固形物を含むオイルを適宜チャンバ20から外部に廃棄できるように構成されている。
【0032】
一方、前記固液分離用チャンバ20の上側部には空気供給口28が配設され、チャンバ20内に外部から空気が供給されるように構成されている。また、チャンバ20の上部には空気排出口29が配設され、ファン30により、チャンバ20内の空気を室外へ排気することができるように構成されている。
【0033】
なお、このファン30によって、チャンバ20内は減圧状態とされているため、濡れ壁塔2でオイルに吸収された不水溶性の微量ガス(VOC等)もオイルから放出され、放出された微量ガスは、前記空気排出口29から室外へ排気されるように構成されている。
【0034】
また、前記第2のオイル循環用配管24には、上流側から、ポンプ31及びオイルフィルタ32が順次配設され、このオイルフィルタ32によってオイル中に浮遊している微細な粒子を除去した後、前記捕集部のオイル供給口12を介して、再度、処理後のオイルをチャンバ1内に戻すように構成されている。
【0035】
(オイル)
オイルとしては、揮発しにくいシリコーンオイルや高真空ポンプオイル(アルキルジフェニールエーテル)等の変性シリコーンオイルが用いられる。これらのオイルは、加圧するとエア中に含まれる不水溶性の微量ガス(VOC等)を吸着し、減圧するとこれらを放出する機能を有し、化学反応を伴わず、搬送媒体としてしか機能しないため、オイルの劣化がなく、半永久的に使用できるので非常に経済的である。また、オイルは、無臭で、毒性がないので触れた場合でも健康被害がなく、安全性にも優れている。
【0036】
(低温プラズマ)
捕集部で発生する低温プラズマは、イオン風によりオイル表面を撹拌すると同時にオイル内部も撹拌するので、気液(エアとオイル)接触効率が向上し、細菌が付着した微粒子やカビの胞子を捕集するだけでなく、エア中の不水溶性の微量ガスの吸着効率が大幅に向上する。
【0037】
(2)加熱による殺菌効果の検証
本実施例において、捕集後オイルを加熱処理する効果について検証したところ、以下のような結果が得られた。なお、ブドウ球菌等の好気性菌はオイル中で死滅するが、嫌気性菌は死滅しないため、嫌気性菌について検証した。
【0038】
すなわち、冷凍保存していた大腸菌(嫌気性菌)を解凍し、遠心分離にて上清を除去した後、脱気した滅菌水とシリコーンオイル(10cSt)でそれぞれ希釈し、25℃と70℃のウォーターバスでそれぞれ0.5時間振とうした。振とう後、各検体をそれぞれ10の6乗まで希釈し、LB培地に塗布し、インキュベータ内(37℃)で24時間培養し、生菌数を算出したところ、図2に示すような結果が得られた。
【0039】
図2から明らかなように、シリコーンオイルで希釈し、70℃に加熱した場合には、生菌数は“0”であった(実線D)。このことから、常温オイル中では死滅しない嫌気性菌も、70℃程度に加熱することにより死滅することが分かった。また、25℃のウォーターバスで0.5時間振とうした場合、脱気した滅菌水で希釈した検体(点線A)より、シリコーンオイルで希釈した検体(実線B)の方が、生菌数は少なかった。このことから、常温(25℃)でも大腸菌はオイル中では増殖しにくいことが分かった。
【0040】
(3)作用
上記のような構成を有する本空気清浄機は、以下のように作用する。
【0041】
(捕集部における作用)
捕集部においては、図1に示すように、まず、前記第2のオイル循環用配管24及びオイル供給口12を介して、チャンバ1の側壁と濡れ壁塔2の間にオイルを供給する。そして、このオイルが濡れ壁塔2の上端まで達した後、濡れ壁塔2の内側に溢れ出し、濡れ壁塔2の内壁に沿って流下することにより、濡れ壁塔2の内壁に濡れ壁を形成する。
【0042】
続いて、加圧用ファン9を作動させることによりチャンバ1内を所定の加圧状態にすると共に、処理対象エア供給配管8及び処理対象エア供給口7を介して、処理対象エアをチャンバ1内に供給する。チャンバ1内に供給された処理対象エアは、濡れ壁塔2の内面を流下するオイルと対向するようにチャンバ内を上昇する。これと同時に、濡れ壁塔2の中央に張られた放電線4に、高圧電源6により正極性の直流高電圧を印加すると、接地された濡れ壁との間で低温プラズマ(コロナ放電)が発生し、正イオンが発生する。この正イオンにより、エア中の細菌の付着した微粒子やカビの胞子が荷電され、これらはクーロン力によって濡れ壁を流下するオイルに捕集される。
【0043】
なお、本実施例においては、処理対象エアを加圧用ファン9によりチャンバ1内に加圧供給しているため、エア中の不水溶性の微量ガスのオイルへの吸着を促進することができる。
【0044】
このようにして細菌が付着した微粒子やカビの胞子が除去されて清浄化されたエアは、チャンバ1の上面に設けられた処理後エア排出口10及び処理後エア供給配管11を介して、再度室内等へ戻される。一方、細菌が付着した微粒子やカビの胞子を捕集したオイルは、チャンバ1の底面に設けられた第1のオイル排出口13及び第1のオイル循環用配管14を介して、固液分離用チャンバ20に搬送される。
【0045】
なお、放電線4の表面には銀コーティングが施されているため、銀が持つオゾンを分解する触媒作用により、低温プラズマ発生時に発生するオゾン濃度を低減することができる。また、放電線4に正の高電圧を印加する理由は、一般に正極性のコロナ放電に伴うオゾン発生量は、負極性のコロナ放電の場合の1/10だからである。
【0046】
(固液分離部及び加熱殺菌部における作用)
上記のようにして捕集部において細菌が付着した微粒子やカビの胞子を捕集したオイルは、チャンバ1から固液分離用チャンバ20に供給され、ここで、ヒーター22によって所定の温度に加熱され、殺菌処理がなされる。このようにして固液分離用チャンバ20内において殺菌処理がなされたオイルの内、チャンバ20の底部に沈殿した固形物を含むオイルは、第3のオイル排出口25及びオイル排出用配管27を介して、適宜チャンバ20から外部に廃棄される。
【0047】
一方、前記第3のオイル排出口25から外部に廃棄されなかった殺菌処理がなされたオイルは、第2のオイル排出口23及び第2のオイル循環用配管24を介して、再度捕集部へ送られる。なお、この場合、第2のオイル循環用配管24に設けられたオイルフィルタ32によって、オイル中に浮遊している微細な粒子が除去され、その後、前記捕集部のオイル供給口12を介して、チャンバ1内に再度供給される。
【0048】
なお、チャンバ20内はファン30によって減圧状態とされているため、エア中の不水溶性の微量ガスの分圧が低くなる。このように微量ガスの分圧が低くなると、オイル表面に吸着されていた不水溶性の微量ガスはオイルから放出され、放出された微量ガスは、前記空気排出口29から室外へ排気される。
【0049】
(4)効果
上述したように、本空気清浄機によれば、オイルの表面近傍で低温プラズマ(コロナ放電)を発生させて正イオンを発生させ、この正イオンにより、エア中の細菌の付着した微粒子やカビの胞子を荷電させることにより、クーロン力によって、濡れ壁を流下するオイルに細菌の付着した微粒子やカビの胞子を捕集させることができる。
【0050】
また、本空気清浄機で用いられるシリコーンオイルは、オイル周囲の気圧(全圧)が高いとエア中の不水溶性の微量ガスを吸着し、低いと放出するという作用を有しているため、化学反応を伴わず、不水溶性の微量ガスの搬送媒体としても機能する。また、オイルの表面近傍で低温プラズマ(コロナ放電)を発生させることにより、イオン風によりオイル表面を撹拌すると同時にオイル内部も撹拌して気液接触効率を向上させて、不水溶性の微量ガスのオイルへの吸着をさらに促進することができる。
【0051】
また、オイルとして不活性なシリコーンオイル、アルキルジフェニールエーテルを用いているので、オイルが劣化しないため半永久的に使用できるので経済性にも優れている。その上、不活性なシリコーンオイル、アルキルジフェニールエーテルは化学的に非常に安定な物質であるため、触れた場合でも健康被害がなく安全性にも優れている。
【0052】
(5)他の実施例
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、具体的な各部材の形状、あるいは取付け位置及び方法は適宜変更可能である。例えば、図1に示した空気清浄機では、円筒状の濡れ壁塔を用いたが、濡れ壁塔の形状はこれに限定されず、平板状でも良い。
【0053】
また、図1に示した空気清浄機では、低温プラズマを発生させるために、正極性の直流高圧電源(H.V.)を用いているが、交流高圧電源を用いることもできる。直流高電圧を印加した場合は、濡れ壁塔の直径が大きくないと、低い電圧で、放電線と接地された濡れ壁塔内壁との間でスパーク放電に至る危険性が高いが、交流高電圧を印加した場合は、濡れ壁塔の直径が小さくても、スパーク放電に至る危険性が低いので、捕集部をよりコンパクトにすることができるという利点がある。
【0054】
また、図1に示した空気清浄機では、チャンバ1内に設置される濡れ壁塔(円筒状)は1つであるが、該チャンバ内に複数個の濡れ壁塔(円筒状)を設置しても良い。すなわち、図3に示すように、チャンバ1内の上部及び下部に、ステンレス製の上部支持部材40a及び下部支持部材40bが設置され、複数個の濡れ壁塔41が前記支持部材40a、40bを貫通して配設されている。また、各濡れ壁塔41内には低温プラズマ発生用の放電線42が上下方向に張られ、正の高圧電源6に接続されている。なお、前記下部支持部材40bは接地されている。その他の構成は図1と同様であるので説明は省略する。
【0055】
このような構成を有する空気清浄機においては、チャンバ1内に複数個の濡れ壁塔41を設置することにより、多量のエアを効率良く処理することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…チャンバ
2…濡れ壁塔
3a…上部支持部材
3b…下部支持部材
4…放電線
5…絶縁体
6…高圧電源
7…処理対象エア供給口
8…処理対象エア供給配管
9…加圧用ファン
10…処理後エア排出口
11…処理後エア供給配管
12…オイル供給口
13…第1のオイル排出口
14…第1のオイル循環用配管
20…固液分離用チャンバ
21…捕集後オイル供給口
22…ヒーター
23…第2のオイル排出口
24…第2のオイル循環用配管
25…第3のオイル排出口
26…開閉バルブ
27…オイル排出用配管
28…空気供給口
29…空気排出口
30…ファン
31…ポンプ
32…オイルフィルタ
40a…上部支持部材
40b…下部支持部材
41…濡れ壁塔
42…放電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象となるエア中に含まれる微粒子をオイルに捕集させる捕集部と、前記オイルに捕集された微粒子を分離すると共に、前記オイルを加熱殺菌する分離・殺菌部とを備え、
前記捕集部と分離・殺菌部との間で、前記オイルが循環するように構成し、
前記捕集部において、前記オイルの表面近傍で低温プラズマを発生させるように構成したことを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
処理対象となるエア中に含まれる微粒子をオイルに捕集させる捕集部と、前記オイルに捕集された微粒子を分離すると共に、前記オイルを加熱殺菌する分離・殺菌部とを備え、
前記捕集部と分離・殺菌部との間で、前記オイルが循環するように構成し、
前記捕集部を構成する第1のチャンバの内部に、前記オイルによって濡れ壁が形成されるように構成された濡れ壁塔を接地して配設すると共に、前記オイルによる濡れ壁と対向する位置に放電線を配設し、
前記処理対象となるエアを、前記オイルによる濡れ壁と接触することができるように該第1のチャンバ内に供給すると共に、前記放電線に高電圧を印加することにより、前記接地された濡れ壁塔との間で低温プラズマを発生させるように構成し、
前記分離・殺菌部を構成する第2のチャンバ内に加熱手段を設け、
前記捕集部において微粒子を捕集したオイルを前記第2のチャンバ内に導入し、前記加熱手段によって前記微粒子を捕集したオイルを加熱殺菌し、前記オイルに捕集された微粒子を分離させるように構成したことを特徴とする空気清浄機。
【請求項3】
前記放電線に銀によるコーティングが施されていることを特徴とする請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記第1のチャンバの内部に配設する濡れ壁塔を複数個とし、それぞれの濡れ壁塔の内部に放電線を設置したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記オイルが、シリコーンオイル又は変性シリコーンオイルであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記放電線に印加する高電圧が、交流高電圧であることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一に記載の空気清浄機。
【請求項7】
前記第1のチャンバ内に処理対象となるエアを供給する場合に、該チャンバ内を加圧状態にすることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか一に記載の空気清浄機。
【請求項8】
前記第2のチャンバ内に前記微粒子を捕集したオイルを供給する場合に、該チャンバ内を減圧状態にすることを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか一に記載の空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−269259(P2010−269259A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123887(P2009−123887)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000236160)株式会社テクノ菱和 (50)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】