説明

空気清浄装置および加湿機能付き空気清浄装置

【課題】酸化力の高い水微粒子を放出して、殺菌、脱臭、有害物質除去を行う装置に関し、酸化力の高い成分の発生量を増やし、安定的に作動できる空気清浄装置および加湿機能付き空気清浄装置を提供すること。
【解決手段】複数の空気の吸込口1および2と吹出口3を有する本体4と、この吸込口1および2と吹出口3を連通する風路内に、空気浄化フィルタ6と、送風手段としてのファン7と、電極に結露した水を放電によって酸化力の高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子として空気中に放出させる静電噴霧手段8とを備えた空気清浄装置であって、前記静電噴霧手段8がペルチェ素子9とペルチェ素子9の冷却面に接する電極10と放熱面に接する放熱フィン11とを有し、静電噴霧手段8の放熱フィン11を通過させる空気量を、電極10を通過させる空気量よりも多くすることにより、所期の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化力の高い水微粒子を室内に放出することで、殺菌、脱臭、有害物質除去を行う空気清浄装置および加湿機能付き空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の空気には、塵埃や花粉やタバコの煙のように、人体に不快又は有害とされる様々な物質が含まれている。近年では、住宅が高気密化されていることから、そのような有害物質が室内に滞り易い。そのため、旧来より部屋の窓を適宜開けて自然換気を行っていた。ところが、大気汚染のひどい地域や、花粉症を患っている人が居る家庭や職場では、自然換気を思いのまま行えないのが実情である。このような状況から、室内の空気を浄化する空気清浄装置が広く一般に普及してきている。
【0003】
近年の空気清浄装置は、浮遊塵埃やアレルゲンの除去、脱臭、抗菌などの各種機能が付与されている。これらを実現する手段としては、空気吸入口に各種のフィルタ類を設けてろ過あるいは吸着するといった方式と、放電によって酸化力の高いラジカルやイオンやオゾン等を空気中に放出させる方法が知られている。
【0004】
また、インフルエンザの感染防止には、室内の湿度を40〜60%に維持することが有効であると知られており、加湿の機能を兼ね備えた加湿機能付き空気清浄装置が求められている。
【0005】
従来、この種の殺菌・脱臭装置には、分割された空気流通路を有する箱体に、空気流通手段と空気流量調節手段を備え、一方の流通路にオゾン発生手段とオゾン分解手段を有し、他方の流通路は単に空気が通過するようにしたものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図6に示すように、殺菌・脱臭装置101は吸引口102及び吹出口103を設けた箱体104に、分割された空気流通路としての第一の通路105と第二の通路106とを備え、前記空気流通路に空気流を生じせしめるファン107を備えている。吸引口102には塵埃等を捕集する手段であるフィルタ108を備え、空気はフィルタ108を通過後、隔壁109によって第一の通路105と第二の通路106に分流される。第二の通路106には、空気量調節手段110が設置されており、空気量調節手段110の開閉状態により、装置全体の処理空気量および第一の通路105と第二の通路106の流量比率を調節することができる。第一の通路105には、オゾンを生成するための紫外線灯111と、オゾン分解触媒112が順次設置されている。
【0007】
空気量調節手段110が閉じている場合、処理空気の全ては、第一の通路105を通過し、オゾン分解触媒112が存在するため、圧力損失は最大の状態である。ここで、処理空気は紫外線灯111から発生したオゾンと紫外線の作用によって殺菌され、残留したオゾンはオゾン分解触媒112によって分解される。殺菌された空気はファン107によって吹出口103から排出される。
【0008】
空気量調節手段110が開いている場合、第一の通路105と第二の通路106に圧力損失の差があるため、処理空気の大部分は、第二の通路106を通過する。この場合、空気量調節手段110が閉じている場合と比べて、殺菌・脱臭効率は低下するが、装置全体の処理空気量は増加するため、室内空気の攪拌が行われる。その結果、装置近傍のみならず、容量の大きな部屋の使用にも適した殺菌・脱臭装置とすることができる。
【0009】
また、従来の加湿装置として、イオン風を誘起するイオン風誘起手段と、吸水性を有する加湿エレメントと、該加湿エレメントに水を供給する水供給部と、ファンによる送風装置とを備え、送風装置の吐出側流路中且つイオン風流路近傍に加湿エレメントが配設されているものが知られている。(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
図7に示すように、従来の加湿装置は、吸い込み口201を備えた本体202の後部側にはフィルタ203が配設されており、フィルタ203の後方側には送風用の遠心型のファン204とこのファン204を駆動するためのモータ205とが配設されている。そしてファン204の上方側には加湿用エレメント206と図示しない水タンクとが配設されており、ファン204による風は加湿用エレメント206を通って本体202の上面に開口する吹き出し口207より外部に吐出される。
【0011】
吸い込み口201とフィルタ203との間の空間208の下方には、イオン風誘起手段209が設置されている。イオン風誘起手段209は、放電線と対極板とを配した放電極ブロックとして構成されたもので、放電線への電圧の印加により、イオンとイオン風と呼ばれる気流が発生する。イオン風は、上記吸い込み口201の下方に位置する第二の吸い込み口210から空間208を上方に抜け、吹き出し口207から外部に吐出される。また、空間208の上方には、イオン化針と対極板とからなるマイナスイオン供給部211が設けられている。イオン化針の先端付近で空気が電離されてマイナスイオンが発生し、イオン風が導かれて、マイナスイオンを添加した浄化空気が吹き出し口207から室内に吐出される。
【0012】
水タンクから加湿用エレメント206に水が供給され、ファン204とモータ205を作動させれば、吸い込み口201からフィルタ203を通った空気が加湿用エレメント206を通って吹き出し口207から加湿された空気が室内に吐出される。このとき、加湿用エレメント206からの水分の気化量は多く、湿度が非常に低い場合の運転モードとして好適なものとなっている。
【0013】
イオン風誘起手段209を作動させた時には、第二の吸い込み口210から、吹き出し口207へと抜けるイオン風が流れる。このとき、送風音が小さく、気化量は少ないが加湿もなされることから、夜間の室内の運転モードとして好適なものとなる。マイナスイオン供給部211も作動させておくことで、マイナスイオンを室内へ供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平1−221166号公報
【特許文献2】特許第3731336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記、従来の殺菌・脱臭装置では、空気の排出量を増加させ、装置を設置した室内空気の攪拌を促進させるという効果を得ることができるものの、ラジカルやイオンなど酸化力の高い成分の発生量を増加させることはできず、殺菌、脱臭、有害物質除去の効果を高めるために酸化力の高い成分の発生量を増加させる方法が望まれていた。また、ラジカルやイオンなど酸化力の高い成分が発生する発生部の汚れを防止し、安定的に酸化力の高い成分を放出させることは困難であった。
【0016】
また、従来の加湿装置は、ファンによる送風とイオン風を使い分け、加湿エレメントで加湿を行うことにより、湿度が非常に低い場合には加湿運転を行い、夜間の運転モードとしてイオン風誘起手段を作動させて、送風音が小さく気化量は少ないが加湿もなされ、マイナスイオンを室内へ供給できる加湿機能付き空気清浄装置として利用できる。しかしながら、イオン風誘起手段や、マイナスイオン供給部を加湿してマイナスイオンや酸化力の高い成分の発生量を増やすことはできなかった。また、イオン風励起手段の汚れを防止し、安定的にマイナスイオンや酸化力の高い成分を発生させることは困難であった。
【0017】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、酸化力の高い水微粒子を放出して、殺菌、脱臭、有害物質除去を行う装置に関し、酸化力の高い成分の発生量を増やし、安定的に作動できる空気清浄装置および加湿機能付き空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的を達成するために、本発明は、複数の空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、空気を浄化するための空気浄化フィルタと、前記空気浄化フィルタに空気を送る送風手段と、電極に結露した水を放電によって酸化力の高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子として空気中に放出させる静電噴霧手段とを備えた空気清浄装置であって、前記静電噴霧手段がペルチェ素子とペルチェ素子の冷却面に接する電極と放熱面に接する放熱フィンとを有し、静電噴霧手段の放熱フィンを通過させる空気量を、電極を通過させる空気量よりも多くしたものである。また、空気浄化フィルタを通過した空気のみを、静電噴霧手段の電極を通過させるものである。これにより所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電極に結露した水を放電によって酸化力の高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子として空気中に放出させる静電噴霧手段が、ペルチェ素子とペルチェ素子の冷却面に接する電極と放熱面に接する放熱フィンとを有し、静電噴霧手段の放熱フィンを通過させる空気量を、電極を通過させる空気量よりも多くしたことにより、放熱フィンにより多くの空気が流通するため、ペルチェ素子の熱交換量を増やして電極側のペルチェ素子の冷却温度を下げることができる。
【0020】
これによって電極に結露する水の量を増やすことができ、多く結露した水を利用して、静電噴霧手段から発生する酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子を増やし、臭い成分の除去、アレルゲン、ウイルス等の不活化やカビ、細菌等の殺菌に対して高い性能を発揮できるという効果を得ることができる。
【0021】
また、従来に比べて絶対湿度が低い乾燥した室内環境で結露する水を確保することができるため、より広い温湿度範囲で空気清浄装置を運転することができる。
【0022】
また、空気浄化フィルタを通過した空気のみを、静電噴霧手段の電極を通過させることにより、ラジカルやイオンなど酸化力の高い成分が発生する電極の汚れを防止し、安定的に酸化力の高い成分を放出させるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1の空気清浄装置を示す概略断面図
【図2】同空気清浄装置を示す概略斜視図
【図3】同空気清浄装置の静電噴霧手段を示す説明図
【図4】本発明の実施の形態2の加湿機能付き空気清浄装置を示す概略断面図
【図5】同加湿機能付き空気清浄装置を示す概略断面図
【図6】従来の殺菌・脱臭装置の一例を示す概略断面図
【図7】従来の加湿装置の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の空気清浄装置および加湿機能付き空気清浄装置は、吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、空気を浄化するための空気浄化フィルタと、前記空気浄化フィルタに空気を送る送風手段と、電極に結露した水を放電によって酸化力の高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子として空気中に放出させる静電噴霧手段とを備えた空気清浄装置であって、前記静電噴霧手段がペルチェ素子とペルチェ素子の冷却面に接する電極と放熱面に接する放熱フィンとを有し、静電噴霧手段の放熱フィンを通過させる空気量を、電極を通過させる空気量よりも多くすることを特徴としたものである。
【0025】
放熱フィンにより多くの空気を流通させることにより、ペルチェ素子の熱交換量を増やして電極側のペルチェ素子の冷却温度を下げることができるため、電極に結露する水の量を増やすことができる。より多く結露した水を利用して、静電噴霧手段から酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子を増やし、臭い成分の除去、アレルゲン、ウイルス等の不活化やカビ、細菌等の殺菌に対して高い性能が発揮される。また、従来よりも絶対湿度が低い乾燥した室内環境でも、結露する水を確保することができるため、より広い温湿度範囲で空気清浄装置を運転することができる。
【0026】
また、吸込口を複数備え、空気浄化フィルタより下流側に、少なくとも一つの吸込口を備えたことを特徴としたものである。空気浄化フィルタは圧力損失が高いため、空気浄化フィルタの下流側に吸込口を備えることにより、空気浄化フィルタの下流側の吸込口から導入される空気量が増え、装置から排出される空気量を増加させることができる。これにより、空気清浄装置が設置された室内の遠方まで酸化力の高い成分を供給できる空気清浄装置を提供することができる。
【0027】
また、空気浄化フィルタより下流側の吸込口にはシャッターを備えたことを特徴としたものである。シャッターの開閉によって、装置に導入される空気の全量を空気浄化フィルタに通して清浄な空気を得るか、空気の一部だけを通して空気の排出量を増加させるかを選択することができる。これにより、室内空気の汚れが多い場合には、空気の全量を空気浄化フィルタに通して素早く室内空気を清浄化することができる。室内空気の汚れが少ない場合には、空気の排出量を増加させて、装置が設置された室内空気の遠方まで酸化力の高い成分を供給できる。
【0028】
また、空気浄化フィルタより下流側の吸込口を本体の両側面に備えたことを特徴としたものである。本体の正面側に加えて、両側面からも空気を装置内に取り込むことができ、さらに空気の排出量を増加させることができる。また、装置を中心として室内全体から空気を吸込む流れを作り出すことができ、効率的に室内空気の清浄化ができる。
【0029】
また、空気浄化フィルタを通過した空気のみを、静電噴霧手段の電極側を通過させることを特徴としたものである。これにより、ラジカルやイオンなど酸化力の高い成分が発生する電極の汚れを防止し、安定的に酸化力の高い成分を放出させることができる。
【0030】
また、静電噴霧手段を送風手段の下流側に配置したことを特徴としたものである。静電噴霧手段から発生した酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子が送風手段と衝突して消失することがなく、吹出口から風にのせて室内に拡散され、室内の壁やカーテン等に付着している臭い成分の除去、さらに室内に浮遊または付着しているアレルゲン、ウイルス等の不活化やカビ、細菌等の殺菌に対して高い性能が発揮される。
【0031】
また、静電噴霧手段を吹出口の近傍に配置したことを特徴としたものである。静電噴霧手段と吹出口の距離を短くすることによって、酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子の消失を最小限にとどめ、吹出口からより多くの微細な水粒子を室内に放出できる。
【0032】
また、放熱フィンの上方に吹出口を設けたことを特徴としたものである。放熱フィンで暖められた空気は上昇気流を起すため、上方に開口した吹出口を設けることによって暖められた空気を装置外へ放出し、効率的に放熱できるという効果を有する。
【0033】
また、吹出口に風向案内板を備えたことを特徴としたものである。風向案内板の角度を調整することによって、酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子を含む空気を任意の方向に向けて吹き出すことができる。
【0034】
また、吹出口の風向案内板により、吹出口を開閉可能であることを特徴としたものである。装置停止時などに、風向案内板を閉じることにより、本体内部や静電噴霧手段への汚れ付着を防止することができる。
【0035】
また、吸入口から吸い込まれた空気浄化フィルタを通過しない空気と空気浄化フィルタを通過した空気が混合され、放熱フィンを通過することを特徴としたものである。放熱フィンにさらに多くの空気を流通させることにより、ペルチェ素子の熱交換量を増やして電極側のペルチェ素子の冷却温度を下げることができるため、電極に結露する水の量を増やすことができる。より多く結露した水を利用して、静電噴霧手段から酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子を増やし、臭い成分の除去、アレルゲン、ウイルス等の不活化やカビ、細菌等の殺菌に対して高い性能が発揮される。
【0036】
また、複数の空気の吸込口から吸い込まれた空気の流量を調節する空気流量調節手段を備えたことを特徴としたものである。吸込口から吸い込まれる空気の汚染状態に応じて、空気浄化フィルタを通過する空気量と通過しない空気量を調節することができる。これにより、室内空気の汚れが多い場合には、空気浄化フィルタに通す空気量を増やして素早く室内空気を清浄化することができる。室内空気の汚れが少ない場合には空気浄化フィルタを通さない空気量を増やして空気の排出量を増加させ、装置が設置された室内空気の遠方まで酸化力の高い成分を供給できる。
【0037】
また、静電噴霧手段の上流側に加湿手段を備えたことを特徴としたものである。室内空気が乾燥している場合でも、静電噴霧手段に加湿された空気を供給することができ、効率よく電極に結露水を集めることができる。
【0038】
また、加湿された空気を静電噴霧手段の電極側に供給することを特徴としたものである。室内空気が乾燥している場合でも、静電噴霧電極に加湿された空気を供給することができ、効率よく電極に結露水を集めることができる。
【0039】
また、空気を加湿するための加湿手段が加湿フィルタであり、前記加湿フィルタを配置するための貯水トレイと、前記加湿フィルタに水を供給するための水供給手段とを備えたことを特徴としたものである。加湿手段として、超音波方式や加熱蒸発方式による加湿を行うと過剰加湿となり、電極や周囲壁に過剰な水滴が付着して電極の放電が不安定になりやすい。それに対し、気化式の加湿手段を用いると、加湿フィルタからの自然蒸発を利用しているため、過剰加湿を回避して適度で安定的な加湿を行うことができる。
【0040】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0041】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1の構成を示す。
【0042】
本発明の実施形態1の空気清浄装置は、図1および図2に示すように、複数の空気の吸込口としての吸込口1および副吸込口2と、吹出口3を有する本体4と、この吸込口1と吹出口3を連通する乾燥風路5内に、空気を浄化するための空気浄化フィルタ6と、前記空気浄化フィルタ6に空気を送る送風手段としてのファン7と、電極に結露した水を放電によって酸化力の高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子として空気中に放出させる静電噴霧手段8とを備えている。静電噴霧手段8は、ペルチェ素子9とペルチェ素子の冷却面に接する電極10と放熱面に接する放熱フィン11とを有している。吸込口1は、本体4の前面に所定の距離を有し設けた略縦長四角平板形状の前面化粧板12を上下前後に移動させることにより、開口面積を変化可能なものである。空気清浄手段は、ガラス繊維製の集塵ろ材を蛇腹状に折って成形した縦長箱形状の空気浄化フィルタ6であり、吸込口1と吹出口3を連通する乾燥風路5の内部に設けられている。送風手段としてのファン7の下流部であって、吹出口3の近傍には、静電噴霧手段8が設けられており、放熱フィン11の上部は吹出口3として開口されている。吹出口3の開口部には、軸を支点として開閉自在に設けられた風向案内板13を備えており、任意の角度に吹出し方向を変えることができる。なお、図1の破線は、風向案内板13の移動可能な軌跡を示している。
【0043】
空気浄化フィルタ6は、空気中のよごれやほこりや化学物質を除去する機能を満たせるあらゆるものが利用でき、ガラス繊維以外に、PP樹脂製の静電ろ材や不織布やPP樹脂ネットなどを用いてもよい。また、活性炭などの脱臭剤と一体に成形したもの、あるいは複数の素材を重ねたものを用いてもよい。
【0044】
このような構成における空気清浄装置の動作について説明する。
【0045】
送風手段としてのファン7を動かすことにより、吸込口1および副吸込口2から本体4内に空気が吸い込まれる。ここで吸込口1を通過した空気は、空気浄化フィルタ6とファン7と静電噴霧手段8を通過して吹出口3から排出される。副吸込口2を通過した空気は、ファン7と静電噴霧手段8を通過して吹出口3から排出される。
【0046】
図3に示すように、静電噴霧手段8は、ペルチェ素子9とペルチェ素子9の冷却面に接する電極10と放熱面に接する放熱フィン11とを有している。ペルチェ素子9は、本体4の一部を構成する樹脂板に固定されており、電極10と放熱フィン11は、それぞれ風路に接している。放熱フィン11は、樹脂板から突出した凹凸形状となっており、本体4に吸い込まれた空気に効率的に放熱できるようになっている。電極10は、細長柱状の噴霧電極14と、所定距離を隔てて対向する位置に備えたリング状の対向電極15からなり、両者の間には高電圧が印加されている。例えば、対向電極15を接地して0Vとし、噴霧電極14を冷却して結露水を付着させた状態で、−6kVの電圧を高電圧印加部から加えることによって、噴霧電極14から酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子放出することができる。
【0047】
静電噴霧手段8の放熱フィン11により多くの空気を流通させることにより、ペルチェ素子の熱交換量を増やして電極側のペルチェ素子の冷却温度を下げることができ、噴霧電極14に結露する水の量を増やすことができる。より多く結露した水を利用して、静電噴霧手段から酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子を増やし、臭い成分の除去、アレルゲン、ウイルス等の不活化やカビ、細菌等の殺菌に対して高い性能が発揮される。また、絶対湿度が低い環境でも結露する水を確保することができるため、より広い温湿度範囲で装置を運転することができる。なお、結露水の放電には、水の結露量に応じて最適な値があるため、放電電流を検知して制御部に信号を送り、制御部から適切なタイミングで高電圧印加部に電圧を印加することによって、安定的に酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子を発生させることができる。
【0048】
静電噴霧手段8の放熱フィン11により多くの空気を流通させるための方法としては、電極10が設置された風路の断面積を、放熱フィン11が設置された風路の断面積よりも小さくする方法が挙げられる。電極10が設置された風路の入口に、樹脂網等の圧力損失を増やすものを設置してもよい。
【0049】
空気浄化フィルタより下流側の吸込口である副吸込口2は複数設けてもよく、例えば本体4の両側面や背面に備えていてもよい。
【0050】
副吸込口2にはシャッターを設けてもよい。シャッターを設けることによって、副吸込口2の開閉を行い、本体内部への空気の吸込と遮断を行うことができる。シャッターの開口度合いを変動させて、複数の空気の吸込口から吸い込まれた空気の流量を調節する空気流量調節手段として利用してもよい。
【0051】
吹出口3の開口部に、軸を支点として開閉自在に設けられた風向案内板13を備えた場合、任意の角度に吹出し方向を変えることができる。また、装置の運転を停止する際に、風向案内板13を閉じることによって、停止時に吹出口からのほこりや化学物質が進入し、静電噴霧手段や加湿フィルタに汚れが付着することを防止することができる。
【0052】
(実施の形態2)
実施の形態2において、実施の形態1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0053】
図4および図5に示すように、本発明の実施形態2の加湿機能付き空気清浄装置は、複数の空気の吸込口としての吸込口1および副吸込口2と、吹出口3を有する本体4と、この吸込口1と吹出口3を連通する乾燥風路5と加湿風路16の途中に、空気を浄化するための空気浄化フィルタ6と、空気を加湿するための加湿手段としての加湿フィルタ17と、前記空気浄化フィルタ6と前記加湿フィルタ17に空気を送る送風手段としてのファン7と、電極に結露した水を放電によって酸化力の高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子として空気中に放出させる静電噴霧手段8とを備えている。加湿フィルタ17は、水を保持するための貯水トレイ18の上に設置され、図示しない水供給手段としての水タンクから水を供給され湿潤した状態となっている。加湿フィルタ17は吸水性の材料から構成され、貯水トレイ18から加湿フィルタ17上に十分な水量が吸い上げられ、吸い上げられた水が加湿フィルタ17を通過する空気と接触することによって加湿が行われる。
【0054】
加湿フィルタに使用する吸水性の材料としては、公定水分率が0.4%以上の繊維を利用した不織布・織布、セラミック、紙、吸水加工を施した樹脂板などを利用することができる。合成繊維ではポリエステル、アクリル、ナイロン、ビニロン、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート、トリアセテート、プロミックスなどが挙げられる。天然繊維としては、絹、毛、綿、麻などが挙げられる。繊維は、表面を紫外線レーザー照射やスパッタエッチング処理して、繊維のアブレーションもしくはエッチングして凹凸を形成させたものを用いてもよい。また、繊維表面にシリカゲルや樹脂などの粒子を担持してもよい。
【0055】
加湿フィルタが糸を編みこんだ保水性の編地である場合、吸水性と耐久性を兼ね備えた加湿フィルタとすることができる。編地からなる加湿フィルタは、水洗いして付着した汚れを洗浄することができ、加湿性能低下させることなく長期間性能を持続させることができる。
【0056】
なお、加湿手段としては、加湿フィルタを用いる気化式のほか、超音波方式や加熱蒸発方式や2流体ノズル噴霧方式や水破砕方式を用いてもよい。加湿手段として、超音波方式や加熱蒸発方式などによる加湿を行うと過剰加湿となり、電極や周囲壁に過剰な水滴が付着して電極の放電が不安定になりやすいため、気化式の加湿手段を用いることが好ましい。気化式の場合、加湿フィルタからの自然蒸発を利用しているため、過剰加湿を回避して適度で安定的な加湿を行うことができる。
【0057】
加湿フィルタ17の上部には、加湿した空気を送る加湿風路16と加湿しない空気を送る乾燥風路5を分割する隔壁19を備え、前記隔壁19から延長された加湿風路16と乾燥風路5を通過する空気の混合量を調節するダンパ20を備えている。図4はダンパ20を閉じた状態であり、図5はダンパ20を開いた状態であり、破線はダンパ20の移動可能な軌跡を示している。
【0058】
ダンパ20を閉じた場合、吸込口1から本体内部に導入された空気の一部は、空気浄化フィルタ6で粉塵やほこりや化学物質が除去され、加湿フィルタ17を通過して加湿された空気となり、加湿風路16を経てファン7を通過した後、静電噴霧手段8を構成する電極10の周囲を通過し、風向案内板13に沿って吹出口3から室内に排出される。ここで、電極10には、空気浄化フィルタ6を通過した空気のみが供給されるため、ラジカルやイオンなど酸化力の高い成分が発生する電極10に汚れが付着することがなく、安定的に酸化力の高い成分を放出させることができる。また、静電噴霧手段8の上流側に加湿手段としての加湿フィルタ17を備えたことにより、室内空気が乾燥している場合でも、静電噴霧手段8の電極10に加湿された空気を供給することができ、効率よく電極10の噴霧電極14に結露水を集めることができる。同時に、吸込口1から本体内部に導入された残りの空気は、空気浄化フィルタ6で粉塵やほこりや化学物質が除去され、乾燥風路5を経てファン7を通過した後、静電噴霧手段8を構成する放熱フィン11の周囲を通過し、風向案内板13に沿って吹出口3から室内に排出される。さらに、副吸込口2にシャッターを設け、前記シャッターを開いた場合、本体内部への空気が導入される。副吸込口2から本体内部に導入された空気は、乾燥風路5を経てファン7を通過した後、静電噴霧手段8を構成する放熱フィン11の周囲を通過し、風向案内板13に沿って吹出口3から室内に排出される。放熱フィン11の周囲には、吸込口1と副吸込口2から導入された空気が混合されて通過するため、副吸込口2のシャッターを閉じている場合にくらべて通過風量が大きくなる。このような構成にすることにより、静電噴霧手段8の放熱フィン11を通過させる空気量を、電極10を通過させる空気量よりも多くすることが容易となる。放熱フィンにより多くの空気を流通させることにより、ペルチェ素子の熱交換量を増やして電極側のペルチェ素子の冷却温度を下げることができるため、電極に結露する水の量を増やすことができる。より多く結露した水を利用して、静電霧化装置から酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子を増やし、臭い成分の除去、アレルゲン、ウイルス等の不活化やカビ、細菌等の殺菌に対して高い性能が発揮される。また、従来よりも絶対湿度が低い環境でも結露する水を確保することができるため、より広い温湿度範囲で装置を運転することができる。
【0059】
ダンパ20を開き、さらに副吸込口2も開いた場合、放熱フィン11の周囲には、吸込口1から導入され空気浄化フィルタ6を通過した空気と、吸込口1から導入され空気浄化フィルタ6と加湿フィルタ17を通過した空気と、副吸込口2から導入された空気とが混合されて通過するため、さらに通過風量を大きくすることができる。
【0060】
また、副吸込口2を閉じた上でダンパ20の開閉度を調整することにより、放熱フィン11の周囲を通過する空気量と電極10の周囲を通過する空気量の割合を調節することができ、吸込空気の温湿度にあわせた運転が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明にかかる加湿機能付き空気清浄装置は、静電噴霧手段の放熱フィンを通過させる空気量を、電極を通過させる空気量よりも多くしたことにより、静電噴霧手段から発生する酸化力が高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子を増やすことができる。また、従来に比べて絶対湿度が低い環境で結露する水を確保することができるため、より広い温湿度範囲で装置を運転することができる。また、空気浄化フィルタを通過した空気のみを、静電噴霧手段の電極を通過させることにより、ラジカルやイオンなど酸化力の高い成分が発生する発生部の汚れを防止し、安定的に酸化力の高い成分を放出させるという効果を得ることができる。これらの作用により、酸化力の高い水微粒子を室内に放出して殺菌・脱臭・有害物質除去を行うことができ、空気清浄装置、加湿機能付き空気清浄装置、空気調和装置、冷風扇などに有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 吸込口
2 副吸込口
3 吹出口
4 本体
5 乾燥風路
6 空気浄化フィルタ
7 ファン
8 静電噴霧手段
9 ペルチェ素子
10 電極
11 放熱フィン
12 前面化粧板
13 風向案内板
14 噴霧電極
15 対向電極
16 加湿風路
17 加湿フィルタ
18 貯水トレイ
19 隔壁
20 ダンパ
101 殺菌・脱臭装置
102 吸引口
103 吹出口
104 箱体
105 第一の通路
106 第二の通路
107 ファン
108 フィルタ
109 隔壁
110 空気量調節手段
111 紫外線灯
112 オゾン分解触媒
201 吸い込み口
202 本体
203 フィルタ
204 ファン
205 モータ
206 加湿用エレメント
207 吹き出し口
208 空間
209 イオン風誘起手段
210 第二の吸い込み口
211 マイナスイオン供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吹出口を有する本体と、前記吸込口と前記吹出口を連通する風路内に、空気を浄化するための空気浄化フィルタと、この空気浄化フィルタに空気を送る送風手段と、電極に結露した水を放電によって酸化力の高いラジカルやイオン等を含んだ微細な水粒子として空気中に放出させる静電噴霧手段とを備えた空気清浄装置であって、前記静電噴霧手段がペルチェ素子とペルチェ素子の冷却面に接する電極と放熱面に接する放熱フィンとを有し、静電噴霧手段の放熱フィンを通過させる空気量を、電極を通過させる空気量よりも多くすることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
吸込口を複数備え、空気浄化フィルタより下流側に少なくとも一つの吸込口を備えたことを特徴とする請求項1記載の空気浄化装置。
【請求項3】
空気浄化フィルタより下流側の吸込口にはシャッターを備えたことを特徴とする請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
本体の空気浄化フィルタ設置面を正面とし、前記空気浄化フィルタより下流側の吸込口を本体の両側面に備えたことを特徴とする請求項2または3記載の空気浄化装置。
【請求項5】
空気浄化フィルタを通過した空気のみを、静電噴霧手段の電極側を通過させることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項6】
静電噴霧手段を送風手段の下流側に配置したことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項7】
静電噴霧手段を吹出口の近傍に配置したことを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項8】
放熱フィンの上方に吹出口を設けたことを特徴とする請求項7記載の空気清浄装置。
【請求項9】
吹出口に風向案内板を備えたことを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項10】
吹出口の風向案内板により、前記吹出口が開閉可能であることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項11】
吸込口から吸い込まれた空気浄化フィルタを通過しない空気と前記空気浄化フィルタを通過した空気が混合され、放熱フィンを通過することを特徴とする請求項2乃至10いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項12】
複数の吸込口から吸い込まれた空気の流量を調節する空気流量調節手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至11いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項13】
静電噴霧手段の上流側に加湿手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至12記載の加湿機能付空気清浄装置。
【請求項14】
加湿された空気を静電噴霧手段の電極側に供給することを特徴とする請求項13記載の加湿機能付き空気清浄装置。
【請求項15】
空気を加湿するための加湿手段が加湿フィルタであり、前記加湿フィルタを配置するための貯水トレイと、前記加湿フィルタに水を供給するための水供給手段とを備えたことを特徴とする請求項13または14記載の加湿機能付き空気清浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−202815(P2011−202815A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67618(P2010−67618)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】