説明

空気紡績機

【課題】空気流量が増加しても紡績及び吸引を安定して行うことができる空気紡績機を提供する。
【解決手段】精紡機は、紡績室26と、中空ガイド軸体20と、第1空気室61と、第2空気室62と、複数の空気流通路64と、複数の旋回流発生ノズル27と、を備える。第1空気室61には、圧縮空気が供給される。空気流通路64は、第1空気室61と第2空気室62とを連通する。旋回流発生ノズル27は、第2空気室62と紡績室26とを連通する。紡績室26は断面形状が略円形に形成される。第2空気室62は、紡績室26の周囲にリング状に形成される。空気流通路64は、第2空気室62の周方向に等間隔で並べて形成される。また、複数の空気流通路64の合計断面積は、複数の旋回流発生ノズル27の合計断面積よりも大きくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気紡績機に関する。詳細には、当該空気紡績機が有する空気流噴出孔に対して圧縮空気を供給するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、断面形状が略円形に形成された紡績室に対して、複数の旋回流発生ノズル(空気流噴出孔)から当該紡績室の接線方向に向けて圧縮空気を噴出することにより、当該紡績室内に旋回空気流を発生させて繊維束に撚りを与える空気紡績機を開示する。
【特許文献1】特開2005−220483号公報
【0003】
従来の空気紡績機が備える紡績装置の模式的な平面断面図を図6に示す。紡績装置93は、図6の紙面に垂直な方向に繊維束98を挿通可能に構成された、断面形状が略円形の紡績室94を有する。この紡績室94の周囲には、断面形状がリング状の空気室95が形成されている。紡績室94と空気室95との間は、細長く形成された複数の旋回流発生ノズル(空気流噴出孔)96によって連通されている。旋回流発生ノズル96は、平面視で紡績室94の接線方向に形成されている。また、リング状の空気室95に対して、図略の圧空源から圧縮空気を供給するための圧縮空気供給パイプ97が接続されている。
【0004】
以上の構成で、圧縮空気供給パイプ97から空気室95に圧縮空気が供給されると、当該空気室95から複数の旋回流発生ノズル96に圧縮空気が分配して供給され、それぞれの旋回流発生ノズル96から紡績室94内に向かって圧縮空気が噴射される。すると、紡績室94内に、例えば図中に矢印で示すような反時計回りの旋回空気流が発生する。紡績装置93は、この旋回空気流によって当該繊維束98に撚りを与え、紡績糸を生成することができる。
【0005】
また、旋回流発生ノズル96は、図6の紙面奥に向かって傾斜して形成されている。従って、紡績室94内に旋回流発生ノズル96から圧縮空気が噴出されると、当該紡績室94内には図6の紙面奥に向かう空気流が発生する。これにより、紡績室94内が減圧され(ベルヌーイの定理)、前記繊維束98を紡績室94内に吸引して案内することができるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の構成の空気紡績機では、紡績の高速化等のために圧縮空気供給パイプからの圧縮空気の供給流量が増えるに従い、複数の旋回流発生ノズルから紡績室内に噴出される空気流の流量が不均等になることがあった。この結果、紡績室内の旋回流に乱れが生じて紡績の安定性を低下させるとともに、紡績室内が十分に減圧されないために安定した吸引が困難になっていた。
【0007】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、空気流量が増加しても紡績及び吸引を安定して行うことができる空気紡績機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の空気紡績機が提供される。即ち、この空気紡績機は、紡績室と、中空ガイド軸体と、第1空気室と、第2空気室と、複数の空気流通路と、複数の空気流噴出孔と、を備える。前記第1空気室には、圧縮空気が供給される。前記空気流通路は、前記第1空気室と前記第2空気室とを連通する。前記空気流噴出孔は、前記第2空気室と前記紡績室とを連通する。
【0010】
これにより、第2空気室に対して複数の空気流通路から圧縮空気を供給することができるので、複数の空気流噴出孔から紡績室に対して噴出される空気流の流量を均一化し、空気流量が増加しても紡績と吸引を安定して行うことができる。結果として、紡績室で繊維束が紡績されて生成する紡績糸の品質を好適に維持することができる。
【0011】
前記の空気紡績機においては、前記複数の空気流通路の合計断面積は、前記複数の空気流噴出孔の合計断面積よりも大きいことが好ましい。
【0012】
これにより、第2空気室内の圧力を良好に均一化し、複数の空気流噴出孔から噴出される空気流の流量を更に均等にすることができる。
【0013】
前記の空気紡績機においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第2空気室は前記紡績室の周囲にリング状に形成される。前記空気流通路は、前記第2空気室の周方向に等間隔で並べて形成される。
【0014】
これにより、第2空気室に対して圧縮空気が周方向で均等に供給されるので、第2空気室内の空気圧を良好に均一化し、複数の空気流噴出孔から噴出される空気流の流量を均等にすることができる。
【0015】
前記の空気紡績機においては、前記第1空気室は、前記第2空気室の径方向外側にリング状に形成されていることが好ましい。
【0016】
これにより、繊維束又は紡績糸の走行方向にコンパクトな装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図面を参照して発明の実施の形態を説明する。図1は本実施形態に係る精紡機1の全体的な構成を示した正面図、図2は精紡機1の縦断面図である。
【0018】
図1に示す空気紡績機としての精紡機1は、並設された多数の紡績ユニット(空気紡績ユニット)2を備えている。この精紡機1は、糸継台車3と、ブロアボックス4と、原動機ボックス5と、を備えている。前記糸継台車3は、紡績ユニット2が並べられる方向に走行可能な構成となっている。
【0019】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置7と、紡績部9と、糸送り装置11と、巻取装置12と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は精紡機1の筺体6の上部に設けられており、紡績部9は、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績するように構成されている。紡績部9から送り出された紡績糸10は糸送り装置11で送られた後、巻取装置12によって巻き取られ、パッケージ45を形成する。
【0020】
ドラフト装置7は、スライバ13を延伸して繊維束8にするためのものである。このドラフト装置7は図2に示すように、バックローラ14、サードローラ15、エプロンベルト16を装架したミドルローラ17及びフロントローラ18の4つのローラを備えている。
【0021】
筺体6の適宜位置には電動モータからなるドラフトモータ31が設置されており、前記バックローラ14とサードローラ15は、このドラフトモータ31にベルトを介して連結されている。このドラフトモータ31の駆動及び停止は、紡績ユニット2が備えるユニットコントローラ32によって制御される。なお、本実施形態の精紡機1では、ミドルローラ17やフロントローラ18を駆動するための電動モータも筺体6に設けられているが、ここでは図示を省略する。
【0022】
また糸送り装置11は、精紡機1の筺体6に支持されたデリベリローラ39と、デリベリローラ39に接触するように配置されるニップローラ40と、を備える。この構成で、紡績部9から排出された紡績糸10をデリベリローラ39とニップローラ40との間に挟んでデリベリローラ39を図示しない電動モータで回転駆動することにより、紡績糸10を巻取装置12側へ送ることができる。
【0023】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、を備えている。糸継台車3は図1に示すように、精紡機1本体の筺体6に設けられたレール41上を走行するように設けられている。ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、糸継台車3は当該紡績ユニット2まで走行し、停止する。サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動しながら、紡績部9から送出される糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動しながら、前記巻取装置12に回転自在に支持されたパッケージ45から糸端を吸引しつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。スプライサ43は、案内された糸端同士の糸継ぎを行うように構成されている。
【0024】
紡績部9は、図2に示すように、2つに分割されたブロック、即ち第1ブロック91及び第2ブロック92により構成されている。繊維束8の走行方向において、第2ブロック92は第1ブロック91よりも下流側に設けられている。
【0025】
前記第2ブロック92には空気圧シリンダ80が連結されており、この空気圧シリンダ80を駆動することによって、当該第2ブロック92を第1ブロック91から遠ざかる向きに移動させることができる。これは、第1ブロック91と第2ブロック92との間に形成された後述の空気排出用空間55、旋回流発生室25及び紡績室26などに繊維等が詰まった場合、第2ブロック92を第1ブロック91から離間させて、清掃等のメンテナンス容易に行うことができるようにするためである。なお、前記空気圧シリンダ80はユニットコントローラ32によって制御されており、適宜の駆動信号によって作動させることができる。
【0026】
次に、図3から図5を参照して、紡績部9の構成について更に詳しく説明する。図3は紡績部9の縦断面図、図4は紡績時における紡績部9の様子を示す縦断面図、図5は紡績部9の模式的な平面断面図である。
【0027】
図3に示すように、第1ブロック91は、空気紡績ノズル19と、ノズル部ケーシング53と、リング部材63と、を備えている。また第2ブロック92は、中空ガイド軸体20と、軸体保持部材59と、を備えている。
【0028】
前記空気紡績ノズル19は、ニードルホルダ23と、ノズルブロック34と、を備える。この空気紡績ノズル19は、前記ノズル部ケーシング53によって支持されている。前記ニードルホルダ23には案内孔21が形成され、この案内孔21に、上流側のドラフト装置7でドラフトされた繊維束8を導入するように構成されている。また、ニードルホルダ23は、案内孔21から導入された繊維束8の流路上に配置されたニードル22を保持している。
【0029】
ニードルホルダ23より繊維束8の流路の下流側の位置において、前記ノズルブロック34にテーパ孔54が形成されている。そして、このテーパ孔54に、前記中空ガイド軸体20の先端部24が、軸線を一致させつつ挿入されている。この先端部24はテーパ状に形成され、そのテーパ角は、テーパ孔54のテーパ角とほぼ等しくなっている。中空ガイド軸体20の先端面とニードルホルダ23との間には円形の紡績室26が形成され、この紡績室26に前記ニードル22の先端が突出されている。このニードル22の先端は、中空ガイド軸体20の先端面と対向するように配置されている。
【0030】
中空ガイド軸体20の先端部24は、前記テーパ孔54との間に所定の隙間を形成するようにして配置される。これにより旋回流発生室(中空室)25が形成され、この旋回流発生室25は紡績室26に連通している。また、ノズル部ケーシング53には空気排出用空間55が形成され、この空気排出用空間55は旋回流発生室25と互いに連通している。この空気排出用空間55には、前記ブロアボックス4に配置されている図略の負圧源(吸引手段)が配管60を通じて接続されている。
【0031】
また中空ガイド軸体20は筒体56を備えており、この筒体56の一端にテーパ状の前記先端部24が形成されている。この中空ガイド軸体20の軸心部に糸通路29が形成され、糸は、この糸通路29内を通過した後、下流側の図示しない出口孔を介して送り出されるようになっている。筒体56には、その先端部24より下流側に拡径状の太径部58が形成され、この太径部58は前記空気排出用空間55に露出される。また、この太径部58が前記軸体保持部材59に挿入された状態で、当該軸体保持部材59に対して中空ガイド軸体20が固定される。
【0032】
リング部材63は、繊維束8の走行方向と直交する平面による断面形状がリング状に形成されるとともに、ノズル部ケーシング53に対して嵌合可能に構成されている。また、このリング部材63には、当該リング部材63の内周側と外周側とを接続するように、半径方向に細長い複数の孔(空気流通路64)が穿設されている。具体的には、図5に示すように、8つの空気流通路64がリング部材63の周方向に等間隔で形成されている。8つの空気流通路64は、何れも流路断面積及び長さが同一となるように形成されている。
【0033】
また、前記リング部材63をノズル部ケーシング53に嵌合させると、図3及び図5に示すように、リング部材63とノズル部ケーシング53との間にリング状の第1空気室61が、ノズルブロック34とリング部材63との間にリング状の第2空気室62が、それぞれ形成されるように構成されている。また、ノズル部ケーシング53には、図略の圧空源に接続された圧縮空気供給パイプ65が接続されている。これにより、前記圧空源から前記第1空気室61に対して圧縮空気を供給できるようになっている。
【0034】
ノズルブロック34には、紡績室26と第2空気室62とを連通する複数の旋回流発生ノズル(空気流噴出孔)27が形成される。これら旋回流発生ノズル27は、ノズルブロック34に穿設された細長い孔として構成されている。この旋回流発生ノズル27は、図3に示すように長手方向が糸送り下流側に若干傾斜して設けられるとともに、図5に示すように円形の紡績室26の接線方向に形成される。
【0035】
この旋回流発生ノズル27は、前記圧空源から供給された圧縮空気を紡績室26に噴射し、例えば平面視反時計回りの旋回流(図4及び図5参照)を紡績室26に発生させる。この旋回流は、前記旋回流発生室25に沿って螺旋状に下流側に流れた後、ノズル部ケーシング53に形成された空気排出用空間55から排出される。また、この下流側に向かう空気流の流れによって紡績室26内は減圧され、案内孔21に吸引流が発生する。
【0036】
以上のように構成された紡績部9について、紡績室26、第1空気室61及び第2空気室62の配置に着目してまとめると、以下のようになっている。即ち、円形の紡績室26の周囲にリング状の第2空気室62が形成され、当該紡績室26と第2空気室62とは複数の旋回流発生ノズル27によって連通されている。また、前記第2空気室62の周囲にはリング状の第1空気室61が形成され、当該第1空気室61と第2空気室62とは複数の空気流通路64によって連通されている。
【0037】
この構成で、前記圧空源から圧縮空気供給パイプ65を介して第1空気室61に圧縮空気を供給すると、第1空気室61に供給された圧縮空気は、前記複数の空気流通路64を介して第2空気室62に供給される。そして、第2空気室62から複数の旋回流発生ノズル27によって、紡績室26に圧縮空気が噴出されるようになっている。
【0038】
以下、上記のように2つの空気室を介して紡績室に圧縮空気を供給する構成の効果について説明する。
【0039】
即ち、従来の空気紡績機においては、図6に示すように空気室95を1つのみ有し、この空気室95に対して1つの圧縮空気供給パイプ97から圧縮空気を供給していた。しかしながら、この構成では、空気室95内において、圧縮空気供給パイプ97の接続箇所に近い位置と遠い位置との間で圧力差が生じてしまう。結果として、複数の旋回流発生ノズル96から噴射される空気流の流量にバラツキが生じ、特に圧縮空気の供給流量が大きいときに前記バラツキが大きくなって旋回流と吸引流が不安定になってしまっていた。
【0040】
この点、本実施形態では図5に示すように、第1空気室61に圧縮空気をいったん供給し、この第1空気室61からオリフィス(流量調整部)としての複数の空気流通路64を介して第2空気室62に圧縮空気を供給している。従って、リング状の第1空気室61において空気を周方向にある程度分配した上で(周方向の圧力差をある程度緩和した上で)、第2空気室62に圧縮空気を供給することができる。特に本実施形態では、複数の空気流通路64は、リング状の第2空気室62の周方向に等間隔で並べて形成されている。これにより、第2空気室62に対して円周方向で均等に圧縮空気が供給されるので、第2空気室62内の空気圧の偏りをなくし、結果として、旋回流発生ノズル27から噴出される圧縮空気の流量を均一化することができる。
【0041】
また本実施形態では、複数の空気流通路64の流路断面積の合計は、複数の旋回流発生ノズル27の流路断面積の合計よりも大きくなるように構成されている。これにより、空気が旋回流発生ノズル27に導入される際に流量が絞られる形となるので、その上流側に位置する第2空気室62内の空気圧をより均等にすることができる。この結果、旋回流発生ノズル27から噴出される圧縮空気の流量を一層均一化することができる。
【0042】
次に、以上のように構成された紡績部9によって繊維束8を紡績する様子について説明する。
【0043】
まず、紡績部9内に繊維束が導入されていない状態(図3の状態)で、図略の圧空源から圧縮空気を供給し、旋回流発生ノズル27によって紡績室26内に圧縮空気を噴射する。これにより、紡績室26内に旋回空気流が発生するとともに、図3の図面下向きに流れる空気流が発生する。すると、ベルヌーイの定理によって紡績室26内が減圧され、案内孔21に吸引流が発生する。この状態でドラフト装置7から繊維束8を紡績部9側へ送ると、当該繊維束8が案内孔21から吸引され、紡績室26内に案内される。紡績室26内に導入された繊維束8は、糸通路29を通過して最終的に図略の出口孔から紡績部9の外部に送り出される。
【0044】
紡績部9の前記出口孔から出た糸端は、糸継台車3が備えるサクションパイプ44によって捕捉され、スプライサ43においてパッケージ45側の糸端と糸継ぎされる。これにより、繊維束8ないし紡績糸10は、フロントローラ18から案内孔21、紡績室26及び糸通路29を通じて糸送り装置11に至る連続状態となる。この状態で、糸送り装置11により下流側への送り力が付与されることにより、糸に張力が付与されて紡績部9から次々に紡績糸10が引き出されていく。
【0045】
ドラフト装置7のフロントローラ18から下流側へ送られた繊維束8は、図4に示すように案内孔21から紡績室26に入って、旋回流発生ノズル27による旋回流の作用を受ける。これにより、繊維束8のうちの芯繊維となる長繊維に対して残りの短繊維の一端が分離されて開繊され、短繊維は旋回流発生室25内で振り回され、加撚される。なお、この撚りはフロントローラ18側へ伝播しようとするが、その伝播はニードル22によって阻止されるので、フロントローラ18から送り出される繊維束8が上記の撚りによって撚り込まれることがない。このように、ニードル22は撚り伝播防止手段をなしている。
【0046】
上記のように加撚された繊維は、大部分が巻付き繊維となる実撚り状の糸に順次生成され、紡績糸10となって糸通路29を通過し、図示しない出口孔から下流側へ送り出される。そして、図1に示す糸送り装置11を経て巻取装置12に紡績糸10が巻き取られることにより、最終的にパッケージ45が形成される。なお、上記の短繊維の開繊及び加撚時に切れるなどして紡績糸10に撚り込まれなかった繊維は、旋回流発生ノズル27で生起された旋回流によって旋回流発生室25から空気排出用空間55へ送られ、負圧源の吸引によって、配管60を経由して排出される。
【0047】
以上で説明したように、本実施形態の精紡機1は、紡績室26と、中空ガイド軸体20と、第1空気室61と、第2空気室62と、複数の空気流通路64と、複数の旋回流発生ノズル27と、を備える。第1空気室61には、圧縮空気が供給される。複数の空気流通路64のそれぞれは、第1空気室61と第2空気室62とを連通する。複数の旋回流発生ノズル27のそれぞれは、第2空気室62と紡績室26とを連通する。
【0048】
これにより、第2空気室62に対して複数の空気流通路64から圧縮空気を供給することができるので、複数の旋回流発生ノズル27から紡績室26に対して噴出される空気流の流量を均一化し、空気流量が増加しても紡績と吸引を安定して行うことができる。結果として、紡績室26で繊維束8が紡績されて生成する紡績糸10の品質を好適に維持することができる。
【0049】
また、本実施形態の精紡機1においては、複数の空気流通路64の合計断面積は、複数の旋回流発生ノズル27の合計断面積よりも大きくなるように構成されている。
【0050】
これにより、第2空気室62内の圧力を良好に均一化し、複数の旋回流発生ノズル27から噴出される空気流の流量を更に均等にすることができる。
【0051】
また、本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、紡績室26は断面形状が略円形に形成される。第2空気室62は、紡績室26の周囲にリング状に形成される。空気流通路64は、第2空気室62の周方向に等間隔で並べて形成される。
【0052】
これにより、第2空気室62に対して圧縮空気が周方向で均等に供給されるので、第2空気室62内の空気圧を良好に均一化し、複数の旋回流発生ノズル27から噴出される空気流の流量を均等にすることができる。
【0053】
また、本実施形態の精紡機においては、第1空気室61は、第2空気室62の径方向外側にリング状に形成されている。
【0054】
これにより、繊維束又は紡績糸の走行方向にコンパクトな装置を構成することができる。
【0055】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0056】
旋回流発生ノズル27及び空気流通路64が形成される数は、上記実施形態に限らず、適宜の数形成することができる。
【0057】
第1空気室と第2空気室とを連通する空気流通路は、必ずしも等間隔に形成されている必要はなく、複数形成されていれば良い。ただし、第2空気室に対して均等に圧縮空気を供給するという観点からは、上記実施形態のように当該第2空気室の周方向に等間隔で空気流通路を形成するのが好ましい。
【0058】
また、第2空気室の周囲に第1空気室を形成する構成に代えて、例えば、第2空気室に対して糸走行方向下流側(図3の図面下側)に第1空気室を形成し、第1空気室と第2空気室を糸走行方向と平行に形成された複数の空気流通路によって連通しても良い。ただし、紡績部を糸走行方向にコンパクトに構成するとともに、圧縮空気供給パイプから旋回流発生ノズルに至るまでの空気流の流れをスムーズにするという観点からは、第2空気室の周囲に第1空気室を配置することが好ましい。
【0059】
なお、上記の実施形態ではリング部材63は周方向で位置決めされていない。このため、空気流通路64と旋回流発生ノズル27との位置関係は図5に示した位置関係に限定されない。ただし、リング部材63を周方向で固定する場合には、図5に示すように、空気流通路64の開口端と旋回流発生ノズル27の開口端とが向かい合わないようにするのが好ましい。これによれば、空気流通路64からの空気流が旋回流発生ノズル27に直接流れ込まないので、旋回流発生ノズル27から噴出される圧縮空気の流量をより均等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示した正面図。
【図2】精紡機の縦断面図。
【図3】紡績部の縦断正面図。
【図4】紡績時における紡績部の様子を示す縦断正面図。
【図5】紡績部の模式的な平面断面図。
【図6】従来の空気紡績機が備える紡績部の模式的な平面断面図。
【符号の説明】
【0061】
1 精紡機(空気紡績機)
9 紡績部
20 中空ガイド軸体
26 紡績室
27 旋回流発生ノズル(空気流噴出孔)
61 第1空気室
62 第2空気室
64 空気流通路
65 圧縮空気供給パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績室と、
中空ガイド軸体と、
圧縮空気が供給される第1空気室と、
第2空気室と、
前記第1空気室と前記第2空気室とを連通する複数の空気流通路と、
前記第2空気室と前記紡績室とを連通する複数の空気流噴出孔と、
を備えることを特徴とする空気紡績機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気紡績機であって、
前記複数の空気流通路の合計断面積は、前記複数の空気流噴出孔の合計断面積よりも大きいことを特徴とする空気紡績機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気紡績機であって、
前記第2空気室は前記紡績室の周囲にリング状に形成され、
前記空気流通路は、前記第2空気室の周方向に等間隔で並べて形成されていることを特徴とする空気紡績機。
【請求項4】
請求項3に記載の空気紡績機であって、
前記第1空気室は、前記第2空気室の径方向外側にリング状に形成されていることを特徴とする空気紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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