説明

空気調和機の通信制御回路

【課題】室外機と室内機との間の通信線の線間容量と接続距離による信号の遅延時間によって通信データの誤検知が発生しない空気調和機の通信制御回路を提供すること。
【解決手段】本発明の空気調和機の通信制御回路は、室外機1と室内機2が同一の通信線5で接続され、通信線5の線間容量を設定する線間容量設定手段13と、通信線の配線長を設定する配線長設定手段14とを備え、設定された線間容量と配線長により設定遅延時間を設定し、設定遅延時間よりも予め設定されている限界遅延時間よりも大きい場合には、通信線による通信を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の室内機と室外機間で、同一接続線にて通信を行う空気調和機の通信制御回路の通信方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の通信制御回路として、室内機または室外機のどちらか一方から電源が供給され、電源の投入と同時に室内機と室外機の通信回路が接続され、互いに通信が行われるものであった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−039603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、室外機と室内機間の通信線が線間容量の大きなものの場合(例えば、EMC対策としてシールド線が用いられている場合)には、線間容量による信号の立ち上がり、又は、立下りの遅れにより、フォトカプラがオンしたりオフしたりする時間に遅れが発生してしまい、場合によっては室外機と室内機間の通信が正常に行われず通信データの誤受信が発生してしまうという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、室外機と室内機との間の通信線の線間容量と接続距離による信号の遅延時間によって通信データの誤検知が発生しない空気調和機の通信制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の空気調和機の通信制御回路は、室外機と室内機が同一の通信線で接続され、通信線の線間容量を設定する線間容量設定手段と、通信線の配線長を設定する配線長設定手段とを備え、設定された線間容量と配線長により設定遅延時間を設定し、設定遅延時間よりも予め設定されている限界遅延時間よりも大きい場合には、通信線による通信を遮断することにより、誤検知による誤動作を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、室外機と室内機との間の通信線の線間容量と接続距離による信号の遅延時間によって通信データの誤検知が発生しない空気調和機の通信制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における空気調和機の通信制御回路の構成図
【図2】本発明の実施の形態2における空気調和機の通信制御回路の構成図
【図3】本発明の実施の形態3における空気調和機の通信制御回路の構成図
【図4】本発明の実施の形態1から3における配管長と遅延時間との相関図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明の空気調和機の通信制御回路は、室外機と室内機が同一の通信線で接続され、通信線の線間容量を設定する線間容量設定手段と、通信線の配線長を設定する配線長設
定手段とを備え、設定された線間容量と配線長により設定遅延時間を設定し、設定遅延時間よりも予め設定されている限界遅延時間よりも大きい場合には、通信線による通信を遮断することにより、誤検知による誤動作を防ぐことができる。
【0010】
第2の発明の空気調和機の通信制御回路は、室内機を複数台備え、室内機の接続台数を設定する接続台数設定手段を有し、第1の発明にて設定された設定遅延時間を、接続台数設定手段によって設定された室内機の台数に応じて補正することにより、遅延時間の判定を精度良く行うことができる。
【0011】
第3の発明の空気調和機の通信制御回路は、特に第1または第2の発明において、通信異常であることを表示する通信異常表示手段を備え、設定遅延時間が限界遅延時間よりも大きい場合は、通信異常表示手段に通信異常であることを表示することにより、通信線の改善を促すことができる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における空気調和機の通信回路のブロック図である。図1に示すように、本発明の空気調和機は室外機1と室内機2とで構成され、室外機1と室内機2は、冷媒配管(図示せず)と、両機間で通信を行なう通信線5と、両機間に交流主回路電流を供給する2本の電源線3および電源線4とで接続されている。そして電源線3および電源線4、通信線5は、室外機1に設けられた室外端子7と室内機2に設けられた室内端子6との間に接続している。
【0014】
また、室外機1は、室外機内にあり通信制御を行う室外通信制御手段10と、室外送信手段11と、室外受信手段12と、線間容量設定手段13と、配線長設定手段14と、遅延時間算出手段15と、通信保護手段16を有しており、室内機2は、室内機内にあり通信制御を行う室内通信制御手段21と、室内送信手段22と、室内受信手段23とを有している。
【0015】
以上のように構成された空気調和機の通信制御回路について、以下、その動作・作用について説明する。
【0016】
まず、室外機1に電源投入後、室内外間の通信に使用する通信線5の線間容量と総配線長を、線間容量設定手段13と配線長設定手段14により入力する。その結果、遅延時間算出手段15により遅延時間が算出される。
【0017】
次に、図4を用いて遅延時間の算出方法について説明する。予め実測により求めた算出の基準となる特性曲線を設定しておく。この特性曲線は線間容量に応じた配線長と遅延時間との関係を表した曲線であり、本実施の形態では擬似的に直線として設定されている(例えば、図4に示す曲線1、曲線2)。
【0018】
本実施の形態では基準となる曲線を2つ用意しておき(線間容量が50nFと100nF)、入力された線間容量から予め用意されている2つの曲線を使った比例計算にて曲線3を導き出している。
【0019】
例えば、線間容量設定手段13により線間容量が150nFと設定され、配線長設定手段14により配線長が800mと入力されたとする。この場合には、「50nFと100nFとの線間容量差50nF:50nFと100nFとの遅延時間差2.5μs=50n
Fと150nFとの線間容量差100nF=50nFと150nFとの遅延時間差X」という関係式を用いることでX=5μsとなる。
【0020】
すなわち、線間容量50nFと配管長800mから導き出される遅延時間13μsにX=5μsを加えた18μsが設定遅延時間となる。
【0021】
そして、この算出された設定遅延時間が、予め定められた限界遅延時間よりも大きいかどうかを判断し、規定時間以上、すなわち、限界遅延時間(図4では20.5μs)よりも大きい場合には、通信保護手段16をオープンにすることで通信回路を遮断し、以後の通信を行なわない。
【0022】
以上により、通信データの誤検知により誤動作を回避することができる。
【0023】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における空気調和機の通信回路のブロック図である。なお、実施の形態1と異なる箇所は、室内機の接続台数設定手段17を設けたことであり、それ以外の箇所については同じであるため、実施の形態1と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0024】
まず、線間容量と総配線長と共に、通信線に接続される機器の接続台数を接続台数設定手段17により入力する。そして、実施の形態1と同じように図4に示す関係式で設定された設定遅延時間を、接続台数設定手段17で設定された接続台数に応じて補正する。
【0025】
本実施の形態では、接続台数に応じた調整代を予め設定しておく。例えば、予め接続台数が8台の場合には10%遅延時間を大とするように設定しておく。その結果、実施の形態1と同様に、線間容量150nFと配管長800mから導き出された遅延時間18μsに、さらに10%大きくし、18μs×1.1=19.8μsとする。
【0026】
よって、実施の形態1と同様、設定遅延時間が限界遅延時間以上であれば、通信保護手段16により通信回路を遮断することで、以後の通信を行わないようにして、通信データの誤検知による誤動作を回避するものである。
【0027】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における空気調和機の通信回路のブロック図である。なお、実施の形態1と異なる箇所は、通信異常表示手段18を設けたことであり、それ以外の箇所については同じであるため、実施の形態1と同じ符号を付してその説明を省略する。また、図3には接続台数設定手段17を設けていないが、図3にさらに接続台数設定手段17を設けてもよいことは言うまでもない。
【0028】
そして実施の形態1および実施の形態2に示したとおり、設定遅延時間を算出し、設定遅延時間と限界遅延時間とを比較するが、設定遅延時間が限界遅延時間よりも大きい場合には、通信異常表示手段18で通信異常である旨を報知する。このように構成することで、サービスマン等に通信線の改善を促すことができる。
【0029】
なお、通信異常表示手段18は異常が分かるように構成されてあればよく、例えば液晶表示画面としてもよいし、単純にLEDが点灯もしくは点滅するのみでもよい。また、表示手段としているが、音声や音等で報知するような報知手段であっても問題は無い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の通信制御回路は、通信線による通信遅延時間を算出して、通信ができないと判
断した場合には、通信制御回路を切断し、通信異常を表示して通信接続の改善を促し、さらに、通信時間を調整することにより、通信異常による誤動作を回避するものである。
【符号の説明】
【0031】
1 室外機
2 室内機
10 室外通信制御手段
11 室外送信手段
12 室外受信手段
13 線間容量設定手段
14 配線長設定手段
15 遅延時間算出手段
16 通信保護手段
21 室内通信制御手段
22 室内送信手段
23 室内受信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と室内機が同一の通信線で接続され、前記通信線の線間容量を設定する線間容量設定手段と、前記通信線の配線長を設定する配線長設定手段とを備え、設定された線間容量と配線長により設定遅延時間を設定し、前記設定遅延時間よりも予め設定されている限界遅延時間よりも大きい場合には、前記通信線による通信を遮断することを特徴とする空気調和機の通信制御回路。
【請求項2】
室内機を複数台備え、前記室内機の接続台数を設定する接続台数設定手段を有し、請求項1にて設定された設定遅延時間を、前記接続台数設定手段によって設定された室内機の台数に応じて補正することを特徴とする空気調和機の通信制御回路。
【請求項3】
通信異常であることを表示する通信異常表示手段を備え、前記設定遅延時間が限界遅延時間よりも大きい場合は、前記通信異常表示手段に通信異常であることを表示することを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機の通信制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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