空気調和機
【課題】アクティブ消音による消音効果を向上できる空気調和機を提供する。
【解決手段】吸込口4及び吹出口5を開口する本体筐体2と、吸込口4と吹出口5とを連通させる送風経路6と、送風経路6内に配されるとともに吸込口4から室内の空気を流入させて吹出口5から室内に調和空気を送出する送風機7と、送風機7と吹出口5との間の送風経路6から成る吹出通路12の壁面に配されるとともに送風機7の送風音を含む運転騒音を打ち消す音波を放射する発音部21とを備え、発音部21と吹出口5との間の吹出通路12の長さL2を発音部21を配した壁面に垂直な方向の吹出通路12の幅L1よりも長くした。
【解決手段】吸込口4及び吹出口5を開口する本体筐体2と、吸込口4と吹出口5とを連通させる送風経路6と、送風経路6内に配されるとともに吸込口4から室内の空気を流入させて吹出口5から室内に調和空気を送出する送風機7と、送風機7と吹出口5との間の送風経路6から成る吹出通路12の壁面に配されるとともに送風機7の送風音を含む運転騒音を打ち消す音波を放射する発音部21とを備え、発音部21と吹出口5との間の吹出通路12の長さL2を発音部21を配した壁面に垂直な方向の吹出通路12の幅L1よりも長くした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関し、特に運転時の騒音を低減できる空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機は特許文献1に開示されている。この空気調和機は室内機の送風経路内に送風機が配される。送風経路の一端は吹出口が開口し、送風機と吹出口との間にマイクロホン及びスピーカが設置される。そして、マイクロホンで検出した特定周波数の騒音と同じ周波数及び音圧レベルで逆位相の音波をスピーカから放射する。
【0003】
これにより、騒音に対してスピーカから放射された逆位相の音波を重ねて騒音を打ち消す能動騒音制御(以下、「アクティブ消音」という)が行われる。アクティブ消音によって空気調和機の運転時の騒音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−140897号公報
【特許文献2】特開平6−43884号公報
【特許文献3】特開2005−201565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクティブ消音を行う際に、一次元の音場(一方向に音の広がりが規制される音場)となるダクトのような閉空間を進行する騒音の音波は平面波に近くなる。このため、打ち消し用の音源(スピーカ)から放射される逆位相の音波によって騒音を打ち消し、アクティブ消音を効果的に行うことができる。
【0006】
一方、自由空間を伝播するような三次元の音場(ランダムな方向に音が広がる音場)では、音波が球面波となる。このため、逆位相の音波により騒音が打ち消される領域と、同位相となる音波によって騒音レベルが増加する領域とが生じる。これにより、アクティブ消音を十分行うことができない。
【0007】
上記構成の空気調和機によると、送風機の下流に配されるスピーカと吹出口とが接近しているため、スピーカから放射される音波が球面波の状態で吹出口に伝えられて室内に放出される。これにより、三次元の音場でアクティブ消音を行う場合と同様に、騒音が逆にうるさく感じられる領域が室内に生じ、消音効果を十分得ることができない問題があった。
【0008】
本発明は、アクティブ消音による消音効果を向上できる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、吸込口及び吹出口を開口する本体筐体と、前記吸込口と前記吹出口とを連通させる送風経路と、前記送風経路内に配されるとともに前記吸込口から室内の空気を流入させて前記吹出口から室内に調和空気を送出する送風機と、前記送風機と前記吹出口との間の前記送風経路から成る吹出通路の壁面に配されるとともに前記送風機の送風音を含む運転騒音を打ち消す音波を放射する発音部とを備え、前記発音部と前記吹出口との間の前記吹出通路の長さが前記発音部を配した壁面に垂直な方向の前記吹出通路の幅よりも長いことを特徴としている。
【0010】
この構成によると、送風機等の運転騒音の音波は発音部から放射された逆位相の音波と重なる。この時、発音部と吹出口との間の吹出通路の長さが発音部を配した壁面に垂直な方向の吹出通路の幅よりも長いので、発音部の下流側で吹出通路が一次元の音場に近づけられたダクト状に形成される。これにより、運転騒音の音波が発音部から放射された平面波の音波と重なって打ち消される。
【0011】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記送風機と前記発音部との間の運転騒音を検知する参照用検音部を備え、前記参照用検音部により検知された運転騒音の音波と概ね逆位相の音波を前記発音部から放射することを特徴としている。この構成によると、送風機の駆動により発生した運転騒音を参照用検音部で検知し、運転騒音を打ち消す波形の音波が発音部から放射される。この時、参照用検音部が発音部の上流に配され、参照用検音部による発音部から放射された音波の検知が防止される。
【0012】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記発音部と前記吹出口との間の運転騒音を検知する補正用検音部を備え、前記補正用検音部により検知された運転騒音のレベルが所定の範囲内に収まるように前記発音部から放射される音波を補正することを特徴としている。この構成によると、運転騒音と発音部から放射した音波が重ねられた後の騒音レベルが補正用検音部により検知される。そして、補正用検音部の検知結果をフィードバックして発音部から音波が放出される。
【0013】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近いことを特徴としている。この構成によると、吹出通路をアスペクト比がより1に近い区画に分割し、各区画は運転騒音が更に拡散しにくくなるため一次元の音場により近づけられる。
【0014】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部を設けたことを特徴としている。この構成によると、吹出通路の複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ設けた発音部から音波が放射される。発音部を全区画に設けてもよく、全区画を複数の区画から成るグループに分けて各グループに対して一の発音部を設けてもよい。
【0015】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近く形成され、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部及び前記参照用検音部を設けたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近く形成され、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部、前記参照用検音部及び前記補正用検音部を設けたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記区画の対向する壁面の間隔が85mm以下であることを特徴としている。この構成によると、アクティブ消音の効果を容易に得られる2000Hzよりも低周波数域で、各区画の幅が音波の半波長よりも小さくなる。これにより、低周波数域の音波が発音部に垂直な平面波に近い状態で各区画を進行し、各区画が一次元の音場により近づけられる。
【0018】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記区画が前記発音部の下流側で更に分割壁により分割されることを特徴としている。この構成によると、分割壁により分割された複数の通路に対して一の発音部が配され、各通路が一次元の音場により近づけられる。これにより、発音部を削減することができる。
【0019】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出口の風向を可変するルーバーにより前記分割壁を形成したことを特徴としている。
【0020】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路が上流に対して下流の流路面積を拡大した拡幅部を有することを特徴としている。この構成によると、拡幅部の流路抵抗が小さくなり、気流の運動エネルギーが効率良く静圧に変換される。これにより、運動エネルギーから変換された静圧によって、送風機による静圧上昇の一部が賄われる。尚、拡幅部を吹出通路全体に形成してもよい。
【0021】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記拡幅部と前記吹出口との間の前記吹出通路の流路面積を一定にしたことを特徴としている。この構成によると、拡幅部の下流で流路面積が一定となるため一次元の音場が形成されやすくなり、気流の運動エネルギーを十分に静圧に変換した後でアクティブ消音が良好に行われる。
【0022】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路の所定区間の流路面積を一定にしたことを特徴としている。この構成によると、流路面積が一定の区間で一次元の音場が形成されやすくなり、アクティブ消音が良好に行われる。
【0023】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記本体筐体が室内の壁面に設置されるとともに前記送風経路内に熱交換器を備え、前記熱交換器と熱交換された調和空気を前記吹出口から送出することを特徴としている。この構成によると、空気調和機の本体筐体が室内の壁面に設置される。送風機の駆動によって熱交換器と熱交換した調和空気を吹出口から送出して暖房運転や冷房運転が行われる。
【0024】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出口を上面に開口して前記本体筐体が床面に設置されるとともに、前記送風経路内に塵埃を捕集する集塵部を備え、前記集塵部により塵埃を除去された調和空気を前記吹出口から送出することを特徴としている。この構成によると、空気調和機の本体筐体が床面に設置される。吸込口から本体筐体に取り込まれた室内の空気の塵埃を除去した調和空気が上面の吹出口から送出され、室内の空気清浄が行われる。
【0025】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出口を開閉する可動のパネルを備え、開いた前記パネルによって前記吹出通路が延長されることを特徴としている。この構成によると、空気調和機の停止時は本体筐体の吹出口がパネルにより閉じられる。空気調和機の駆動時にパネルが開かれ、パネルによって吹出通路を延長してより一次元の音場に近づけることができる。
【0026】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記本体筐体の前後方向の一面に前記吸込口を開口するとともに、前記吹出口の気流の吹出方向を鉛直上方に対して前記吸込口の形成面の方向に傾斜し、鉛直上方に対する傾斜角度を35゜以下にしたことを特徴としている。
【0027】
この構成によると、鉛直に対して傾斜した吹出通路を流通する調和空気が吹出口から吸込口に対向する室内の一側壁の方向に送出される。該側壁に到達した調和空気は吸込口へのショートカットが防止され、円滑に上昇する。そして、調和空気が室内の天井面及び他の側壁面に沿って流通して室内を循環する。
【0028】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出口の中央位置とから対向する最寄りの室内の側壁までの距離をD、前記吹出口の中央位置と室内の天井面との距離をHとし、100mm<D<600mmの範囲の時に前記傾斜角度をtan-1(D/H)よりも大きくしたことを特徴としている。
【0029】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記本体筐体の前後方向の一面に前記吸込口を開口するとともに、前記送風経路を流通する気流にイオンを含有させるイオン発生装置を備え、前記吹出口の気流の送出方向が鉛直上方に対して前記吸込口の形成面側に傾斜することを特徴としている。この構成によると、イオンを含む調和空気が吹出口から傾斜して送出される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の空気調和機によると、発音部と吹出口との間の吹出通路の長さが発音部を配した壁面に垂直な方向の吹出通路の幅よりも長いので、発音部の下流側で吹出通路が一次元の音場に近づけられたダクト状に形成される。従って、室内に放射される運転騒音が確実に低減され、空気調和機の消音効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【図2】本発明の第1実施形態の空気調和機の吹出通路を示す上面断面図
【図3】本発明の第1実施形態の空気調和機の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図
【図4】本発明の第1実施形態の空気調和機の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の第1実施形態の空気調和機の運転騒音制御の音波の状態を示す側面断面図
【図6】第1比較例の空気調和機の運転騒音制御の音波の状態を示す側面断面図
【図7】本発明の第1実施形態の空気調和機の運転騒音制御による騒音レベルを示す図
【図8】第1比較例の空気調和機の運転騒音制御による騒音レベルを示す図
【図9】本発明の第1実施形態の空気調和機の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図10】本発明の第2実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【図11】本発明の第2実施形態の空気調和機の吹出通路を示す上面断面図
【図12】本発明の第2実施形態の空気調和機の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図
【図13】本発明の第2実施形態の空気調和機の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図14】本発明の第2実施形態の空気調和機の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図15】本発明の第3実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【図16】本発明の第3実施形態の空気調和機の吹出通路を示す上面断面図
【図17】本発明の第3実施形態の空気調和機の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図
【図18】本発明の第3実施形態の空気調和機の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図19】本発明の第3実施形態の空気調和機の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図20】本発明の第4実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【図21】本発明の第4実施形態の空気調和機の送風経路を示す正面断面図
【図22】本発明の第4実施形態の空気調和機の運転騒音制御の音波の状態を示す側面断面図
【図23】第2比較例の空気調和機の運転騒音制御の音波の状態を示す側面断面図
【図24】本発明の第4実施形態の空気調和機の運転騒音制御による騒音レベルを示す図
【図25】第2比較例の空気調和機の運転騒音制御による騒音レベルを示す図
【図26】本発明の第5実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の空気調和機を示す側面断面図である。空気調和機1は室内の壁面に設置され、屋外に設置された室外機に接続される室内機を構成する。
【0033】
空気調和機1は室内の側壁W1に取り付けられる本体筐体2を備え、本体筐体2の前面及び上面を形成するフロントパネル3が着脱自在に設けられる。本体筐体2は側面後部に設けられた爪部(不図示)を側壁W1の天井面Sに近い高さに取り付けられた取付板(不図示)に係合して支持される。
【0034】
本体筐体2の上面にはフロントパネル3に設けた吸込口4が開口し、本体筐体2の前面下部にはフロントパネル3の下方に吹出口5が開口する。吹出口5は本体筐体2の幅方向に延びる略矩形に形成され、前方下方に臨んで設けられる。
【0035】
本体筐体2の内部には吸込口4と吹出口5とを連通させる送風経路6が設けられる。送風経路6内には空気を送出するファン7(送風機)が配される。ファン7の駆動によって吸込口4から室内の空気が送風経路6に流入し、吹出口5から送出される。ファン7としてクロスフローファン(横流ファン)が好適に用いられるが、他の種類の送風機を用いてもよい。
【0036】
送風経路6内の吸込口4とファン7との間には室内熱交換器9が配される。室内熱交換機9は室外機に配した冷凍サイクルを運転する圧縮機(不図示)に接続され、送風経路6を流通する空気と熱交換を行う。
【0037】
吸込口4と室内熱交換器9との間には送風経路6に流入する空気内の塵埃を捕集するエアフィルタ8が配される。フロントパネル3とエアフィルタ8との間にはエアフィルタ8に蓄積した塵埃を除去するためのエアフィルタ清掃装置(不図示)が設けられている。また、エアフィルタ8と室内熱交換器9との間には、電気集塵装置(不図示)が設けられている。
【0038】
送風経路6にはファン7と吹出口5との間にダクト状の吹出通路12が形成される。吹出通路12は上下面が上壁12a及び下壁12bにより形成され、左右面がファン7を軸支する側壁12c(図2参照)により形成される。また、上壁12a及び下壁12bは前方が下方に傾斜し、吹出通路12は傾斜して気流を前方下方に案内する。
【0039】
また、上壁12aと下壁12bとは上流側に対して下流側が漸次上下方向に離れるように配される。これにより、吹出通路12は上流側に対して下流側の流路面積を拡大した拡幅部を形成し、流路抵抗が小さくなるため気流の運動エネルギーが効率良く静圧に変換される。従って、運動エネルギーから変換された静圧によってファン7による静圧上昇の一部が賄われ、ファン7の消費電力を削減することができる。
【0040】
吹出通路12内の吹出口5近傍には縦ルーバー19及び横ルーバー20が配される。縦ルーバー19は左右方向に複数並設され、上壁12a及び下壁12bに軸支して回動自在になっている。これにより、吹出口5から送出される気流の左右方向の風向を可変する。横ルーバー20は上下方向に複数並設され、吹出通路12の側壁12c(図2参照)に軸支して回動自在になっている。これにより、吹出口5から送出される気流の上下方向の風向を可変する。
【0041】
吹出通路12の上壁12aにはスピーカ21(発音部)が吹出通路12に臨んで設けられる。スピーカ21から放射される音波によって後述するアクティブ消音による運転騒音制御が行われる。尚、スピーカ21を下壁12bに設けてもよい。スピーカ21として省スペースな平板型スピーカが好適に用いられるが、円筒型等の他の種類のスピーカを用いてもよい。また、送風方向に指向性を有するスピーカを用いてもよい。
【0042】
図2は吹出通路12の上面断面図を示している。吹出通路12は仕切板14により気流に沿って左右方向に複数の区画15に分割されている。これにより、左右方向に延びた吹出通路12の断面のアスペクト比よりも各区画15の断面のアスペクト比が1に近くなっている。スピーカ21は各区画15にそれぞれ配される。また、各区画15の下流端は縦ルーバー19によって更に複数の流路18に分割されている。
【0043】
各区画15の左右方向に対向する壁面(仕切板14)間の幅W及び上下方向に対向する壁面(上壁12a及び下壁12b)間の幅L1(図5参照)は85mm以下に形成される。これにより、各区画15の対向する壁面の間隔は約2000Hzよりも低周波数域の音波の半波長以下になっている。
【0044】
図3は空気調和機1の構成を示すブロック図である。同図において、空気調和機1の運転騒音の制御系統のみを示し、その他の冷凍サイクルの制御系統等を省略している。
【0045】
制御部30はマイクロコンピュータ等により構成され、運転モード検知部301、風向変更手段駆動部302、ファン回転数設定部303、ファン駆動部304、ファン回転数検知部305、ファン回転数比較部306、打ち消し音記憶部307、打ち消し音選択部308及びスピーカ駆動部309を有している。
【0046】
運転モード検知部301はリモートコントローラ(以下、「リモコン」という)16からの信号の入力を受け付け、空気調和機1の運転モード(例えば、冷房運転、暖房運転、各運転の風量・風向等)を検知する。風向変更手段駆動部302は運転モードに応じて縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変する。
【0047】
ファン回転数設定部303は運転モードに応じてファン7の回転数を設定する。ファン駆動部304はファン回転数設定部303で設定された回転数でファン7のファンモータ17を駆動する。ファン回転数検知部305はファンモータ17の出力に基づいてファン7の回転数を検知する。ファン回転数比較部306はファン回転数検知部305で検知されたファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数とを比較する。
【0048】
打ち消し音記憶部307は運転モードに応じて予め設定された複数種類の音波信号を記憶する。打ち消し音選択部308は打ち消し音記憶部307に記憶された音波信号から運転モードに対応した音波信号を選択する。スピーカ駆動部309は打ち消し音選択部308で選択された音波信号をスピーカ21に出力する。これにより、スピーカ21から所定の音波が放射され、アクティブ消音が行われる。
【0049】
同図に破線で示すように、スピーカ駆動部309は運転モード検知部301及びファン回転数検知部305からも直接信号が入力される。そして、予め設定された運転モード以外の場合やファン7の回転数が予め設定された回転数以下の場合に、スピーカ21から音波を放射しないように制御される。これにより、必要以上にアクティブ消音が実行されず、比較的騒音を不快に感じる場合にのみアクティブ消音が実行される。従って、効率良く、また効果的にアクティブ消音を行うことができる。
【0050】
図4は空気調和機1のアクティブ消音による運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。ステップS1では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS2では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0051】
例えば、リモコン16により冷房運転の開始が指示されると運転モード検知部301で検知され、ファン駆動部304によりファン7が駆動される。また、圧縮機の駆動により冷凍サイクルが運転され、室内熱交換器9が冷凍サイクルの低温部に配される。吸込口4から送風経路6に流入した室内の空気はフィルター8や電気集塵装置(不図示)により塵埃が除去される。塵埃を除去された空気は室内熱交換器9と熱交換して冷却される。室内熱交換器9と熱交換した調和空気は吹出口5からリモコン16により指示された風向で室内に送出される。これにより、室内が冷房される。
【0052】
リモコン16により暖房運転の開始が指示されると運転モード検知部301で検知され、ファン駆動部304によりファン7が駆動される。また、圧縮機の駆動により冷凍サイクルが運転され、室内熱交換器9が冷凍サイクルの高温部に配される。吸込口4から送風経路6に流入した室内の空気はフィルター8や電気集塵装置(不図示)により塵埃が除去される。塵埃を除去された空気は室内熱交換器9と熱交換して昇温される。室内熱交換器9と熱交換した調和空気は吹出口5からリモコン16により指示された風向で室内に送出される。これにより、室内が暖房される。
【0053】
ステップS3では打ち消し音記憶部307に予め記憶された音波が運転モードに応じて打ち消し音選択部308により選択される。この時、ファン7の回転により生じる送風音を含む運転騒音が運転モードに応じて予め取得されており、運転モードに応じた運転騒音と概ね同じ周波数及び音圧レベルで概ね逆位相の音波が選択される。
【0054】
ステップS4では打ち消し音選択部308で選択された音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消され、アクティブ消音による運転騒音制御が行われる。
【0055】
図5は空気調和機1のアクティブ消音による音波の状態を示している。また、図6は第1比較例の空気調和機1’のアクティブ消音による音波の状態を示している。第1比較例の空気調和機1’はスピーカ21と吹出口5とが接近し、吹出通路12が本実施形態よりも短くなっている。その他の部分は本実施形態と同様である。尚、これらの図において、縦ルーバー19及び横ルーバー20(いずれも図1参照)を省略している。
【0056】
図5、図6において、スピーカ21の設置位置の上壁12aに垂直な方向の吹出通路12の幅をL1とし、スピーカ21の設置位置から吹出口5までの吹出通路12の長さをL2としている。この時、スピーカ21を中心とする半径がL1の空間C1は球面波で音が伝搬する空間となる。
【0057】
第1比較例の空気調和機1’では吹出口5近傍の閉空間(スピーカ21を中心とする半径L2の空間C2のうち、吹出通路12の上面、下面及び左右側面で囲まれた部分)が空間C1と同等あるいはそれよりも小さくなっている(C1≒C2)。このため、スピーカ21から放射される音波が平面波になりにくく、吹出通路12が球面波のまま自由空間を伝播するような三次元の音場になる。従って、十分な消音効果を得ることができない。
【0058】
これに対して、本実施形態の空気調和機1では長さL2が幅L1よりも長く、空間C2が送風方向に空間C1よりも延びて形成される。これにより、吹出口5近傍の閉空間において吹出通路12が一次元の音場に近づけられ、スピーカ21から放射される音波を平面波として伝搬させることができる。従って、十分な消音効果を得ることができる。
【0059】
この時、気流の流路の断面のアスペクト比が1に近い方が一次元の音場をより形成し易くなる。吹出通路12は仕切板14で区画15に分割されるため、各区画15の断面のアスペクト比が1に近づけられる。従って、各区画15を一次元の音場により近づけることができ、消音効果がより向上する。
【0060】
また、アクティブ消音は波長の長い低周波数域で位相ずれが生じにくいため消音効果を容易に得ることができる。本実施形態の空気調和機1は区画15の上下方向の幅L1及び左右方向の幅W(図2参照)が85mm以下であるため、2000Hzよりも低周波数域で音波の半波長よりも小さくなる。これにより、低周波数域の音波がスピーカ21の設置面に垂直な平面波に近い状態で各区画15を進行する。従って、各区画15を一次元の音場に更に近づけることができ、消音効果がより向上する。
【0061】
加えて、各区画15がスピーカ21の下流側で更に縦ルーバー19から成る分割壁により流路18に分割されるので、流路18を一次元の音場により近づけることができる。
【0062】
図7は本実施形態の空気調和機1の運転騒音制御による騒音の低減効果を示す図である。また、図8は前述の図6に示す第1比較例の空気調和機1’の運転騒音制御による騒音の低減効果を示す図である。これらの図において、縦軸は音圧レベル(単位:dB)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示している。また、図中、「ANC ON」はアクティブ消音の実行時を示し、「ANC OFF」はアクティブ消音の停止時を示している。
【0063】
本実施形態の空気調和機1では測定周波数範囲(0〜5000Hz)において音圧レベルが大幅に低下している。これに対して、第1比較例の空気調和機1’では測定周波数範囲(0〜5000Hz)において音圧レベルに殆ど変化がない。従って、吹出通路12をダクト状に形成することにより、消音効果を向上させることができる。
【0064】
図9は本実施形態の空気調和機1の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。上記と同様に、ステップS11では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS12では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0065】
ステップS13ではファン回転数検知部305によりファン7の回転数が検知される。ステップS14ではファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数と運転モードに応じてファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数が比較される。ステップS15ではステップS14で比較したファン7のの回転数の差が予め設定された範囲内であるか否かが判断される。
【0066】
ファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲内の場合はステップS16に移行する。ステップS16では運転モードに応じて打ち消し音選択部308で選択された音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射され、アクティブ消音が行われる。
【0067】
ステップS15の判断でファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲を超えている場合はステップS13に戻り、ステップS13〜S15が繰り返し行われる。そして、回転数の差が設定範囲内になるとステップS16に移行して音波が放射される。
【0068】
これにより、吹出通路12を流通する気流が比較的安定した定常状態の騒音を対象にしてアクティブ消音が行われる。従って、アクティブ消音の消音効果が得られ易くなる。
【0069】
本実施形態によると、スピーカ21(発音部)と吹出口5との間の吹出通路12の長さL2がスピーカ21を配した上壁12aに垂直な方向の吹出通路12の幅L1よりも長いので、スピーカ21の下流側で吹出通路12が一次元の音場に近づけられたダクト状に形成される。従って、室内に放射される運転騒音が確実に低減され、空気調和機1の消音効果を向上させることができる。
【0070】
また、空気調和機1の運転騒音を低減できるため、使用者に不快感を与えることなく空気調和機1の風量を増加させることもできる。これにより、冷凍サイクルの効率を向上することができるため、省エネルギー性にも大きく貢献することができる。
【0071】
また、吹出通路12の断面のアスペクト比よりも各区画15の断面のアスペクト比が1に近いので、各区画15を一次元の音場により近づけることができる。従って、消音効果をより向上することができる。
【0072】
また、複数の区画15に対応してそれぞれスピーカ21を設けたので、各区画15を流通する気流に対してそれぞれアクティブ消音を行うことができる。従って、消音効果をより向上することができる。尚、スピーカ21を全ての区画15に設けてもよく、全区画15を複数の区画15から成るグループに分けて各グループに対して一のスピーカ21を設けてもよい。
【0073】
また、区画15の対向する壁面の間隔が85mm以下であるので、2000Hzよりも低周波数域で音波の半波長よりも小さくなる。これにより、低周波数域の音波がスピーカ21の設置面に垂直な平面波に近い状態で各区画15を進行する。従って、各区画15を一次元の音場に更に近づけることができ、消音効果をより向上することができる。
【0074】
また、各区画15がスピーカ21の下流側で更に縦ルーバー19から成る分割壁により分割されるので、縦ルーバー19間に形成される流路18を一次元の音場により近づけることができる。また、各区画15に設けたスピーカ21によって分割壁で分割した複数の流路18に対してアクティブ消音を行うことができるため、スピーカ21を削減することができる。尚、回動しない固定の分割壁によって各区画15を複数の流路18に分割してもよい。
【0075】
また、吹出通路12が上流側に対して下流側の流路面積を拡大した拡幅部を形成するので、流路抵抗が小さくなるため気流の運動エネルギーが効率良く静圧に変換される。従って、運動エネルギーから変換された静圧によってファン7による静圧上昇の一部が賄われ、ファン7の消費電力を削減することができる。
【0076】
尚、吹出通路12の一部に拡幅部を設け、拡幅部と吹出口5との間の吹出通路12の流路面積を一定にしてもよい。これにより、流路面積が一定の区間で一次元の音場が形成されやすくなり、気流の運動エネルギーを十分に静圧に変換した後でアクティブ消音を良好に行うことができる。また、吹出通路12の一部の所定区間の流路面積を一定にしてもよい。
【0077】
<第2実施形態>
次に、図10は第2実施形態の空気調和機1を示す側面断面図である。また、図11は空気調和機1の吹出通路12の平面図を示している。説明の便宜上、前述の図1〜図9に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態に加え、参照用マイク22が設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0078】
参照用マイク22(参照用検音部)は吹出通路12に臨んで上壁12aに取り付けられ、ファン7とスピーカ21との間に配される。また、参照用マイク22は各区画15にそれぞれ配される。参照用マイク22によってファン7の送風音を含む運転騒音の音波が検知される。この時、スピーカ21から放射される音波まで検知しないように、参照用マイク22がスピーカ21の上流側に配置される。尚、スピーカ21や参照用マイク22を下壁12bに設けてもよい。
【0079】
図12は空気調和機1の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図である。制御部30には第1実施形態の打ち消し音選択部308(図3参照)及び打ち消し音記憶部307(図3参照)が省かれ、位相反転部310及び参照用騒音レベル判定部311が設けられる。
【0080】
位相反転部310は参照用マイク22により検知された運転騒音の音波の位相を反転して概ね逆位相の音波を形成する。参照用騒音レベル判定部311は参照用マイク22により検知された運転騒音の音圧(騒音レベル)を所定の基準値と比較して結果を出力する。
【0081】
同図に破線で示すように、スピーカ駆動部309は運転モード検知部301、送風機回転数検知部305及び参照用騒音レベル判定部311からも直接信号が入力される。そして、予め設定された運転モード以外の場合、ファン7の回転数が予め設定された回転数以下の場合、参照用マイク22により検知された運転騒音が予め設定された騒音レベル以下の場合に、スピーカ21から音波を放射しないように制御される。これにより、必要以上にアクティブ消音が実行されず、比較的騒音を不快に感じる場合にのみアクティブ消音が実行される。従って、効率良く、また効果的にアクティブ消音を行うことができる。
【0082】
図13は空気調和機1のアクティブ消音による運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。ステップS31では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS32では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0083】
ステップS33ではファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。ステップS34では参照用マイク22で検知された音波の位相を位相反転部310により反転する。ステップS35ではこの逆位相の音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消され、アクティブ消音による運転騒音制御が行われる。
【0084】
図14は本実施形態の空気調和機1の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。上記と同様に、ステップS41では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS42では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0085】
ステップS43ではファン回転数検知部305によりファン7の回転数が検知される。ステップS44ではファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数と運転モードに応じてファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数が比較される。ステップS45ではステップS44で比較したファン7の回転数の差が予め設定された範囲内であるか否かが判断される。
【0086】
ファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲内の場合はステップS46に移行する。ステップS46ではファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。ステップS47では参照用マイク22で検知された音波の位相を位相反転部310により反転する。ステップS48ではこの逆位相の音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。
【0087】
ステップS45の判断でファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲を超えている場合はステップS43に戻り、ステップS43〜S45が繰り返し行われる。そして、回転数の差が設定範囲内になるとステップS46に移行して音波が放射される。
【0088】
これにより、吹出通路12を流通する気流が比較的安定した定常状態の騒音を対象にしてアクティブ消音が行われる。従って、アクティブ消音の消音効果が得られ易くなる。
【0089】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、ファン7とスピーカ21との間の音波を検知する参照用マイク22(参照用検音部)を設け、参照用マイク22検知された運転騒音の音波と概ね逆位相の音波をスピーカ21から放射する。これにより、ファン7の駆動によって実際に発生している騒音を検知してこれに対して打ち消すような波形の音を放射させることができる。従って、アクティブ消音の消音効果の精度を高めることができる。
【0090】
また、複数の区画15に対応してそれぞれスピーカ21及び参照用マイク22を設けたので、各区画15を流通する気流に対してそれぞれ高精度にアクティブ消音を行うことができる。尚、スピーカ21及び参照用マイク22を全ての区画15に設けてもよく、全区画15を複数の区画15から成るグループに分けて各グループに対して一のスピーカ21及び参照用マイク22を設けてもよい。
【0091】
<第3実施形態>
次に、図15は第3実施形態の空気調和機1を示す側面断面図である。また、図16は空気調和機1の吹出通路12の平面図を示している。説明の便宜上、前述の図10〜図14に示す第2実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第2実施形態に加え、補正用マイク23が設けられる。その他の部分は第2実施形態と同様である。
【0092】
補正用マイク23(補正用検音部)は吹出通路12に臨んで上壁12aに取り付けられ、スピーカ21と吹出口5との間に配される。また、補正用マイク23は各区画15にそれぞれ配される。補正用マイク23によってファン7の送風音を含む運転騒音とスピーカ21から放射した音波とが重ねられた後の騒音レベルが検知される。この時、ファン7の送風音の音波まで検知しないように、補正用マイク23がスピーカ21の下流側に配置される。尚、スピーカ21、参照用マイク22または補正用マイク23を下壁12bに設けてもよい。
【0093】
図17は空気調和機1の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図である。制御部30には第2実施形態に加え、補正用騒音レベル判定部312及び音波補正部313が設けられる。補正用騒音レベル判定部312は補正用マイク23により検知された音の音圧(騒音レベル)を所定の基準値と比較して結果を出力する。音波補正部313は位相反転部310により反転された逆位相の音波信号を補正する。
【0094】
補正用マイク23により検知された音波から補正用騒音レベル判定部312により騒音レベルが所定の基準値より大きいと判定されると、音波補正部313で検知音波に対応する補正信号が導出される。そして、位相反転部310により反転された逆位相の音波信号を音波補正部313により得られた補正信号によって補正する。
【0095】
図18は空気調和機1のアクティブ消音による運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。ステップS51では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS52では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0096】
ステップS53ではファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。ステップS54では参照用マイク22で検知された音波の位相を位相反転部310により反転する。ステップS55ではこの逆位相の音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消される。
【0097】
ステップS56では補正用マイク23により打ち消し後の音波が検知される。ステップS57では補正用騒音レベル判定部312によって補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値以下か否かが判断される。補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値以下の場合は処理を終了する。
【0098】
補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値よりも大きい場合はステップS58に移行する。ステップS58では音波補正部313によって補正信号が導出される。そして、ステップS55に戻り、ステップS55〜S58が繰り返し行われる。これにより、補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の範囲(基準値)内に収まるようにスピーカ21から放射される音波が補正される。
【0099】
図19は本実施形態の空気調和機1の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。上記と同様に、ステップS61では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS62では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0100】
ステップS63ではファン回転数検知部305によりファン7の回転数が検知される。ステップS64ではファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数と運転モードに応じてファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数が比較される。ステップS65ではステップS64で比較したファン7の回転数の差が予め設定された範囲内であるか否かが判断される。
【0101】
ファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲内の場合はステップS66に移行する。
【0102】
ステップS65の判断でファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲を超えている場合はステップS63に戻り、ステップS63〜S65が繰り返し行われる。そして、回転数の差が設定範囲内になるとステップS66に移行する。これにより、吹出通路12を流通する気流が比較的安定した定常状態の騒音を対象にしてアクティブ消音が行われる。
【0103】
ステップS66ではファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。ステップS67では参照用マイク22で検知された音波の位相を位相反転部310により反転する。ステップS68ではこの逆位相の音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消される。
【0104】
ステップS69では打ち消し後の音波が補正用マイク23により検知される。ステップS70では補正用騒音レベル判定部312によって補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値以下か否かが判断される。補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値以下の場合は処理を終了する。
【0105】
補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値よりも大きい場合はステップS71に移行する。ステップS71では音波補正部313によって補正信号が導出される。そして、ステップS68に戻り、ステップS68〜S71が繰り返し行われる。
【0106】
本実施形態によると、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、スピーカ21と吹出口5との間の運転騒音を検知する補正用マイク23(補正用検音部)を設け、補正用マイク23により検知された運転騒音のレベルが所定の範囲内に収まるようにスピーカ21から放射される音波を補正する。これにより、打ち消し後の騒音レベルのフィードバック制御によってアクティブ消音の精度をより高めることができる。
【0107】
また、複数の区画15に対応してそれぞれスピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23を設けたので、各区画15を流通する気流に対してそれぞれ高精度にアクティブ消音を行うことができる。尚、スピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23を全ての区画15に設けてもよく、全区画15を複数の区画15から成るグループに分けて各グループに対して一のスピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23を設けてもよい。
【0108】
<第4実施形態>
次に、図20は第4実施形態の空気調和機を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図15〜図19に示す第3実施形態と同様の部分については同一の符号を付している。本実施形態の空気調和機40は冷凍サイクルを運転する構成が省かれ、室内の空気に含まれる塵埃を捕集する空気清浄機能を有している。
【0109】
空気調和機40は床面F上に設置される本体筐体2を備えている。本体筐体2の前面には吸込口4が開口し、上面には吹出口5が開口する。吹出口5は本体筐体2の幅方向に延びる略矩形に形成され、上方に臨んで設けられる。また、本体筐体2の上面には吹出口5を開閉する回動可能のパネル6が吹出口5の前後に設けられる。
【0110】
本体筐体2の内部には吸込口4と吹出口5とを連通させる送風経路6が設けられる。送風経路6内には空気を送出するファン7(送風機)が配される。ファン7の駆動によって吸込口4から室内の空気が送風経路6に流入し、吹出口5から送出される。ファン7はシロッコファン(遠心ファン)から成り、ハウジング42内にファンモータ7aにより回転駆動される羽根車7bが配される。ファン7として他の種類の送風機を用いてもよい。
【0111】
吸込口4とファン7との間には送風経路6に流入する空気内の塵埃を捕集するエアフィルタ8(集塵部)が配される。エアフィルタ8はHEPAフィルタ等により形成される。
【0112】
送風経路6にはハウジング42によってファン7と吹出口5との間に鉛直に延びたダクト状の吹出通路12が形成される。吹出通路12は前後面が前壁12d及び後壁12eにより形成され、左右面が側壁12f(図21参照)により形成される。
【0113】
吹出通路12の前壁12dにはスピーカ21(発音部)、参照用マイク22(参照用検音部)及び補正用マイク23(補正用検音部)が吹出通路12に臨んで設けられる。スピーカ21から放射される音波によってアクティブ消音による運転騒音制御が行われる。スピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23を後壁12eに設けてもよい。
【0114】
スピーカ21として省スペースな平板型スピーカが好適に用いられるが、円筒型等の他の種類のスピーカを用いてもよい。また、送風方向に指向性を有するスピーカを用いてもよい。
【0115】
参照用マイク22はファン7とスピーカ21との間に配され、ファン7の送風音を含む運転騒音の音波を検知する。この時、スピーカ21から放射される音波まで検知しないように、参照用マイク22がスピーカ21の上流側に配置される。補正用マイク23はスピーカ21と吹出口5との間に配され、運転騒音とスピーカ21から放射した音波が重ねられた後の騒音レベルを検知する。この時、ファン7の送風音の音波まで検知しないように、補正用マイク23がスピーカ21の下流側に配置される。
【0116】
また、吹出通路12の前壁12dには吹出通路12にイオンを放出するイオン発生装置43が配される。
【0117】
図21は図20のA矢視図であり、吹出通路12の内部を示している。吹出通路12の両側壁12fは上流側に対して下流側が漸次左右方向に離れるように配される。これにより、吹出通路12は上流側に対して下流側の流路面積を拡大した拡幅部を形成し、流路抵抗が小さくなるため気流の運動エネルギーが効率良く静圧に変換される。従って、運動エネルギーから変換された静圧によってファン7による静圧上昇の一部が賄われ、ファン7の消費電力を削減することができる。
【0118】
吹出通路12は仕切板14により気流に沿って左右方向に複数の区画15に分割されている。これにより、左右方向に延びた吹出通路12の断面のアスペクト比よりも各区画15の断面のアスペクト比が1に近くなっている。尚、スピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23は各区画15にそれぞれ配される。
【0119】
各区画15の左右方向に対向する壁面(仕切板14)間の幅W及び前後方向に対向する壁面(前壁12d及び後壁12e)間の幅L1(図22参照)は85mm以下に形成される。これにより、各区画15の対向する壁面の間隔は約2000Hzよりも低周波数域の音波の半波長以下になっている。
【0120】
尚、空気調和機40の運転騒音制御系統の構成は前述の図17に示す第3実施形態のブロック図と同様に構成される。
【0121】
上記構成の空気調和機40において、ファン7が駆動されると室内の空気が吸込口4から送風経路6に流入する。送風経路6に流入した空気はエアフィルタ8により塵埃が除去される。また、イオン発生装置43の駆動によって送風経路6を流通する空気にイオンが含まれる。そして、塵埃を除去されたイオンを含む調和空気が吹出口5から室内に送出される。これにより、室内の空気清浄が行われるとともに、イオンによって室内の微生物やウィルス等を除菌することができる。
【0122】
この時、第3実施形態と同様に、ファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。そして、参照用マイク22で検知された音波の位相を反転し、この逆位相の音波がスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消される。
【0123】
また、補正用マイク23により打ち消し後の音波が検知される。補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値よりも大きい場合は補正信号を導出する。そして、補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の範囲(基準値)内に収まるようにスピーカ21から放射される音波が補正される。
【0124】
図22は空気調和機40のアクティブ消音による音波の状態を示している。また、図23は第2比較例の空気調和機40’のアクティブ消音による音波の状態を示している。第2比較例の空気調和機40’はスピーカ21と吹出口5とが接近し、吹出通路12が本実施形態よりも短くなっている。その他の部分は本実施形態と同様である。
【0125】
図22、図23において、スピーカ21の設置位置の前壁12dに垂直な方向の吹出通路12の幅をL1とし、スピーカ21の設置位置から吹出口5までの吹出通路12の長さをL2としている。この時、スピーカ21を中心とする半径がL1の空間C1は球面波で音が伝搬する空間となる。
【0126】
第2比較例の空気調和機40’では吹出口5近傍の閉空間(スピーカ21を中心とする半径L2の空間C2のうち、吹出通路12の前面、後面及び左右面で囲まれた部分)が空間C1と同等あるいはそれよりも小さくなっている(C1≒C2)。このため、スピーカ21から放射される音波が平面波になりにくく、吹出通路12が球面波のまま自由空間を伝播するような三次元の音場になる。従って、十分な消音効果を得ることができない。
【0127】
これに対して、本実施形態の空気調和機40では長さL2が幅L1よりも長く、空間C2が送風方向に空間C1よりも延びて形成される。これにより、吹出口5近傍の閉空間において吹出通路12が一次元の音場に近づけられ、スピーカ21から放射される音波を平面波として伝搬させることができる。従って、十分な消音効果を得ることができる。
【0128】
この時、開かれたパネル41により前壁12d及び後壁12eを延長して吹出通路12が延長される。これにより、スピーカ21の下流の吹出通路12を実質的により長くすることができる。従って、吹出通路12をより一次元の音場に近づけることができる。
【0129】
また、気流の流路の断面のアスペクト比が1に近い方が一次元の音場をより形成し易くなる。吹出通路12は仕切板14で区画15に分割されるため、各区画15の断面のアスペクト比が1に近づけられる。従って、各区画15を一次元の音場により近づけることができ、消音効果がより向上する。
【0130】
また、アクティブ消音は波長の長い低周波数域で位相ずれが生じにくいため消音効果を容易に得ることができる。本実施形態の空気調和機1は区画15の前後方向の幅L1及び左右方向の幅W(図21参照)が85mm以下であるため、2000Hzよりも低周波数域で音波の半波長よりも小さくなる。これにより、低周波数域の音波がスピーカ21の設置面に垂直な平面波に近い状態で各区画15を進行する。従って、各区画15を一次元の音場に更に近づけることができ、消音効果がより向上する。
【0131】
図24は本実施形態の空気調和機40の運転騒音制御による騒音の低減効果を示す図である。また、図25は前述の図23に示す第2比較例の空気調和機40’の運転騒音制御による騒音の低減効果を示す図である。これらの図において、縦軸は音圧レベル(単位:dB)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示している。また、図中、「ANC ON」はアクティブ消音の実行時を示し、「ANC OFF」はアクティブ消音の停止時を示している。
【0132】
本実施形態の空気調和機40では測定周波数範囲(0〜5000Hz)において音圧レベルが大幅に低下している。これに対して、第2比較例の空気調和機40’では測定周波数範囲(0〜5000Hz)において音圧レベルにほとんど変化ない。従って、吹出通路12をダクト状に形成することにより、消音効果を向上させることができる。
【0133】
本実施形態によると、第3実施形態と同様に、スピーカ21(発音部)と吹出口5との間の吹出通路12の長さL2がスピーカ21を配した前壁12dに垂直な方向の吹出通路12の幅L1よりも長いので、スピーカ21の下流側で吹出通路12が一次元の音場に近づけられたダクト状に形成される。従って、室内に放射される運転騒音が確実に低減され、空気調和機40の消音効果を向上させることができる。
【0134】
また、空気調和機40の運転騒音を低減できるため、使用者に不快感を与えることなく空気調和機40の風量を増加させることもできる。これにより、空気中に存在する塵埃等を素早く除去することができるため、快適性向上にも大きく貢献することができる。
【0135】
また、ファン7とスピーカ21との間の音波を検知する参照用マイク22(参照用検音部)を設け、参照用マイク22検知された運転騒音の音波と逆位相の音波をスピーカ21から放射する。これにより、ファン7の駆動によって実際に発生している騒音を検知してこれに対して打ち消すような波形の音を放射させることができる。従って、アクティブ消音の消音効果の精度を高めることができる。
【0136】
また、スピーカ21と吹出口5との間の運転騒音を検知する補正用マイク23(補正用検音部)を設け、補正用マイク23により検知された運転騒音のレベルが所定の範囲内に収まるようにスピーカ21から放射される音波を補正する。これにより、打ち消し後の騒音レベルのフィードバック制御によってアクティブ消音の精度をより高めることができる。
【0137】
また、吹出口5を開閉する可動のパネルによって吹出通路12が延長されるので、実質的にスピーカ21の下流の吹出通路12をより長くすることができる。従って、吹出通路12をより一次元の音場に近づけることができる。
【0138】
本実施形態において、第2実施形態と同様に、補正用マイク23を省いてもよい。また、第1実施形態と同様に、参照用マイク22及び補正用マイクを省いてもよい。
【0139】
<第5実施形態>
次に、図26は第5実施形態の空気調和機40の側面断面図を示している。説明の便宜上、前述の第4実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は、吹出通路12が傾斜して形成されている。その他の部分は第4実施形態と同様である。
【0140】
吹出通路12は鉛直上方に対して吸込口4が形成される前面の方向に傾斜している。吹出通路12の前後方向の中心線の鉛直上方に対する傾斜角度θは35゜以下になっている。これにより、除塵されるとともにイオンを含む調和空気が吹出口5から送出され、吸込口4に対向する側壁W1に到達した際に円滑に上昇して吸込口4へのショートカットが防止される。そして、イオンを含む調和空気が室内の天井面S及び他の側壁面に沿って流通して室内を循環する。
【0141】
これにより、吹出口5から送出される気流の横方向への広がりが抑制され、気流の到達距離を長くすることができる。このため、室内の壁面に沿う気流及び空気調和機40から遠い位置の気流の風速が増加して空気環境の改善効果を高めることができ、広範囲の室内空気を効果的に清浄化することができる。また、少ない風量で所望の空気環境の改善効果を得ることができ、無駄に送出される空気を削減できるとともに騒音を低減することができる。加えて、吹出口5から放射される騒音が直接使用者の居住領域へ伝播されないので、より低騒音化することができる。
【0142】
また、壁面に設けられた窓や隙間等によって室内の気密性が低い場合に、室内の壁面に沿う気流の風速の増加によって陽圧効果が得られるため室外から室内へ侵入する粉塵の量を低減することができる。
【0143】
この時、吹出通路12が傾斜して吹出口5から送出される気流を壁面W1に到達させるので、吹出口5近傍で気流が急激に曲げる必要がない。このため、吹出通路12の圧力損失を低減して消費電力を削減できるとともに騒音をより低減することができる。
【0144】
また、吹出口5の中央位置から吸込口4に対向する最寄りの室内の側壁W1までの距離をD、吹出口5の中央位置と室内の天井面Sとの距離をHとし、100mm<D<600mmの範囲の時に傾斜角度θをtan-1(D/H)よりも大きくなるように吹出通路12が形成される。これにより、吹出口5から送出される調和空気を確実に側壁W1に到達させることができる。
【0145】
本実施形態によると、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。また、吹出通路12の鉛直上方に対する傾斜角度θを35゜以下にしたので、吸込口4に対向する側壁W1に到達した気流を側壁W1、天井面S及び他の側壁に沿って流通させることができる。従って、少ない風量で室内を清浄するとともに低騒音化を図ることができる。また、吹出通路12の圧力損失を低減して消費電力を削減することができる。
【0146】
また、100mm<D<600mmの範囲の時に傾斜角度θをtan-1(D/H)よりも大きくしたので、吹出口5から送出される調和空気を確実に側壁W1に到達させることができる。
【0147】
本実施形態において、吸込口4を室内の中央部(使用者の居住領域)に向けて配置してもよい。この時、イオンを含む調和空気の送出方向が鉛直上方に対して吸込口4の形成面側に傾斜するので、イオンを含む気流を居住領域へ素早く放出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明は、室内の壁面や床面に設置される空気調和機に利用することができる。
【符号の説明】
【0149】
1、40 空気調和機
2 本体筐体
3 フロントパネル
4 吸込口
5 吹出口
6 送風経路
7 ファン(送風機)
8 エアフィルタ
9 室内熱交換器
12 吹出通路
14 仕切板
15 区画
19 縦ルーバー(分割壁)
20 横ルーバー
21 スピーカ(発音部)
22 参照用マイク(参照用検音部)
23 補正用マイク(補正用検音部)
30 制御部
41 パネル
43 イオン発生装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関し、特に運転時の騒音を低減できる空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機は特許文献1に開示されている。この空気調和機は室内機の送風経路内に送風機が配される。送風経路の一端は吹出口が開口し、送風機と吹出口との間にマイクロホン及びスピーカが設置される。そして、マイクロホンで検出した特定周波数の騒音と同じ周波数及び音圧レベルで逆位相の音波をスピーカから放射する。
【0003】
これにより、騒音に対してスピーカから放射された逆位相の音波を重ねて騒音を打ち消す能動騒音制御(以下、「アクティブ消音」という)が行われる。アクティブ消音によって空気調和機の運転時の騒音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−140897号公報
【特許文献2】特開平6−43884号公報
【特許文献3】特開2005−201565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクティブ消音を行う際に、一次元の音場(一方向に音の広がりが規制される音場)となるダクトのような閉空間を進行する騒音の音波は平面波に近くなる。このため、打ち消し用の音源(スピーカ)から放射される逆位相の音波によって騒音を打ち消し、アクティブ消音を効果的に行うことができる。
【0006】
一方、自由空間を伝播するような三次元の音場(ランダムな方向に音が広がる音場)では、音波が球面波となる。このため、逆位相の音波により騒音が打ち消される領域と、同位相となる音波によって騒音レベルが増加する領域とが生じる。これにより、アクティブ消音を十分行うことができない。
【0007】
上記構成の空気調和機によると、送風機の下流に配されるスピーカと吹出口とが接近しているため、スピーカから放射される音波が球面波の状態で吹出口に伝えられて室内に放出される。これにより、三次元の音場でアクティブ消音を行う場合と同様に、騒音が逆にうるさく感じられる領域が室内に生じ、消音効果を十分得ることができない問題があった。
【0008】
本発明は、アクティブ消音による消音効果を向上できる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、吸込口及び吹出口を開口する本体筐体と、前記吸込口と前記吹出口とを連通させる送風経路と、前記送風経路内に配されるとともに前記吸込口から室内の空気を流入させて前記吹出口から室内に調和空気を送出する送風機と、前記送風機と前記吹出口との間の前記送風経路から成る吹出通路の壁面に配されるとともに前記送風機の送風音を含む運転騒音を打ち消す音波を放射する発音部とを備え、前記発音部と前記吹出口との間の前記吹出通路の長さが前記発音部を配した壁面に垂直な方向の前記吹出通路の幅よりも長いことを特徴としている。
【0010】
この構成によると、送風機等の運転騒音の音波は発音部から放射された逆位相の音波と重なる。この時、発音部と吹出口との間の吹出通路の長さが発音部を配した壁面に垂直な方向の吹出通路の幅よりも長いので、発音部の下流側で吹出通路が一次元の音場に近づけられたダクト状に形成される。これにより、運転騒音の音波が発音部から放射された平面波の音波と重なって打ち消される。
【0011】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記送風機と前記発音部との間の運転騒音を検知する参照用検音部を備え、前記参照用検音部により検知された運転騒音の音波と概ね逆位相の音波を前記発音部から放射することを特徴としている。この構成によると、送風機の駆動により発生した運転騒音を参照用検音部で検知し、運転騒音を打ち消す波形の音波が発音部から放射される。この時、参照用検音部が発音部の上流に配され、参照用検音部による発音部から放射された音波の検知が防止される。
【0012】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記発音部と前記吹出口との間の運転騒音を検知する補正用検音部を備え、前記補正用検音部により検知された運転騒音のレベルが所定の範囲内に収まるように前記発音部から放射される音波を補正することを特徴としている。この構成によると、運転騒音と発音部から放射した音波が重ねられた後の騒音レベルが補正用検音部により検知される。そして、補正用検音部の検知結果をフィードバックして発音部から音波が放出される。
【0013】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近いことを特徴としている。この構成によると、吹出通路をアスペクト比がより1に近い区画に分割し、各区画は運転騒音が更に拡散しにくくなるため一次元の音場により近づけられる。
【0014】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部を設けたことを特徴としている。この構成によると、吹出通路の複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ設けた発音部から音波が放射される。発音部を全区画に設けてもよく、全区画を複数の区画から成るグループに分けて各グループに対して一の発音部を設けてもよい。
【0015】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近く形成され、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部及び前記参照用検音部を設けたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近く形成され、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部、前記参照用検音部及び前記補正用検音部を設けたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記区画の対向する壁面の間隔が85mm以下であることを特徴としている。この構成によると、アクティブ消音の効果を容易に得られる2000Hzよりも低周波数域で、各区画の幅が音波の半波長よりも小さくなる。これにより、低周波数域の音波が発音部に垂直な平面波に近い状態で各区画を進行し、各区画が一次元の音場により近づけられる。
【0018】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記区画が前記発音部の下流側で更に分割壁により分割されることを特徴としている。この構成によると、分割壁により分割された複数の通路に対して一の発音部が配され、各通路が一次元の音場により近づけられる。これにより、発音部を削減することができる。
【0019】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出口の風向を可変するルーバーにより前記分割壁を形成したことを特徴としている。
【0020】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路が上流に対して下流の流路面積を拡大した拡幅部を有することを特徴としている。この構成によると、拡幅部の流路抵抗が小さくなり、気流の運動エネルギーが効率良く静圧に変換される。これにより、運動エネルギーから変換された静圧によって、送風機による静圧上昇の一部が賄われる。尚、拡幅部を吹出通路全体に形成してもよい。
【0021】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記拡幅部と前記吹出口との間の前記吹出通路の流路面積を一定にしたことを特徴としている。この構成によると、拡幅部の下流で流路面積が一定となるため一次元の音場が形成されやすくなり、気流の運動エネルギーを十分に静圧に変換した後でアクティブ消音が良好に行われる。
【0022】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出通路の所定区間の流路面積を一定にしたことを特徴としている。この構成によると、流路面積が一定の区間で一次元の音場が形成されやすくなり、アクティブ消音が良好に行われる。
【0023】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記本体筐体が室内の壁面に設置されるとともに前記送風経路内に熱交換器を備え、前記熱交換器と熱交換された調和空気を前記吹出口から送出することを特徴としている。この構成によると、空気調和機の本体筐体が室内の壁面に設置される。送風機の駆動によって熱交換器と熱交換した調和空気を吹出口から送出して暖房運転や冷房運転が行われる。
【0024】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出口を上面に開口して前記本体筐体が床面に設置されるとともに、前記送風経路内に塵埃を捕集する集塵部を備え、前記集塵部により塵埃を除去された調和空気を前記吹出口から送出することを特徴としている。この構成によると、空気調和機の本体筐体が床面に設置される。吸込口から本体筐体に取り込まれた室内の空気の塵埃を除去した調和空気が上面の吹出口から送出され、室内の空気清浄が行われる。
【0025】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出口を開閉する可動のパネルを備え、開いた前記パネルによって前記吹出通路が延長されることを特徴としている。この構成によると、空気調和機の停止時は本体筐体の吹出口がパネルにより閉じられる。空気調和機の駆動時にパネルが開かれ、パネルによって吹出通路を延長してより一次元の音場に近づけることができる。
【0026】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記本体筐体の前後方向の一面に前記吸込口を開口するとともに、前記吹出口の気流の吹出方向を鉛直上方に対して前記吸込口の形成面の方向に傾斜し、鉛直上方に対する傾斜角度を35゜以下にしたことを特徴としている。
【0027】
この構成によると、鉛直に対して傾斜した吹出通路を流通する調和空気が吹出口から吸込口に対向する室内の一側壁の方向に送出される。該側壁に到達した調和空気は吸込口へのショートカットが防止され、円滑に上昇する。そして、調和空気が室内の天井面及び他の側壁面に沿って流通して室内を循環する。
【0028】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記吹出口の中央位置とから対向する最寄りの室内の側壁までの距離をD、前記吹出口の中央位置と室内の天井面との距離をHとし、100mm<D<600mmの範囲の時に前記傾斜角度をtan-1(D/H)よりも大きくしたことを特徴としている。
【0029】
また、本発明は上記構成の空気調和機において、前記本体筐体の前後方向の一面に前記吸込口を開口するとともに、前記送風経路を流通する気流にイオンを含有させるイオン発生装置を備え、前記吹出口の気流の送出方向が鉛直上方に対して前記吸込口の形成面側に傾斜することを特徴としている。この構成によると、イオンを含む調和空気が吹出口から傾斜して送出される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の空気調和機によると、発音部と吹出口との間の吹出通路の長さが発音部を配した壁面に垂直な方向の吹出通路の幅よりも長いので、発音部の下流側で吹出通路が一次元の音場に近づけられたダクト状に形成される。従って、室内に放射される運転騒音が確実に低減され、空気調和機の消音効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【図2】本発明の第1実施形態の空気調和機の吹出通路を示す上面断面図
【図3】本発明の第1実施形態の空気調和機の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図
【図4】本発明の第1実施形態の空気調和機の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の第1実施形態の空気調和機の運転騒音制御の音波の状態を示す側面断面図
【図6】第1比較例の空気調和機の運転騒音制御の音波の状態を示す側面断面図
【図7】本発明の第1実施形態の空気調和機の運転騒音制御による騒音レベルを示す図
【図8】第1比較例の空気調和機の運転騒音制御による騒音レベルを示す図
【図9】本発明の第1実施形態の空気調和機の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図10】本発明の第2実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【図11】本発明の第2実施形態の空気調和機の吹出通路を示す上面断面図
【図12】本発明の第2実施形態の空気調和機の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図
【図13】本発明の第2実施形態の空気調和機の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図14】本発明の第2実施形態の空気調和機の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図15】本発明の第3実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【図16】本発明の第3実施形態の空気調和機の吹出通路を示す上面断面図
【図17】本発明の第3実施形態の空気調和機の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図
【図18】本発明の第3実施形態の空気調和機の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図19】本発明の第3実施形態の空気調和機の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャート
【図20】本発明の第4実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【図21】本発明の第4実施形態の空気調和機の送風経路を示す正面断面図
【図22】本発明の第4実施形態の空気調和機の運転騒音制御の音波の状態を示す側面断面図
【図23】第2比較例の空気調和機の運転騒音制御の音波の状態を示す側面断面図
【図24】本発明の第4実施形態の空気調和機の運転騒音制御による騒音レベルを示す図
【図25】第2比較例の空気調和機の運転騒音制御による騒音レベルを示す図
【図26】本発明の第5実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の空気調和機を示す側面断面図である。空気調和機1は室内の壁面に設置され、屋外に設置された室外機に接続される室内機を構成する。
【0033】
空気調和機1は室内の側壁W1に取り付けられる本体筐体2を備え、本体筐体2の前面及び上面を形成するフロントパネル3が着脱自在に設けられる。本体筐体2は側面後部に設けられた爪部(不図示)を側壁W1の天井面Sに近い高さに取り付けられた取付板(不図示)に係合して支持される。
【0034】
本体筐体2の上面にはフロントパネル3に設けた吸込口4が開口し、本体筐体2の前面下部にはフロントパネル3の下方に吹出口5が開口する。吹出口5は本体筐体2の幅方向に延びる略矩形に形成され、前方下方に臨んで設けられる。
【0035】
本体筐体2の内部には吸込口4と吹出口5とを連通させる送風経路6が設けられる。送風経路6内には空気を送出するファン7(送風機)が配される。ファン7の駆動によって吸込口4から室内の空気が送風経路6に流入し、吹出口5から送出される。ファン7としてクロスフローファン(横流ファン)が好適に用いられるが、他の種類の送風機を用いてもよい。
【0036】
送風経路6内の吸込口4とファン7との間には室内熱交換器9が配される。室内熱交換機9は室外機に配した冷凍サイクルを運転する圧縮機(不図示)に接続され、送風経路6を流通する空気と熱交換を行う。
【0037】
吸込口4と室内熱交換器9との間には送風経路6に流入する空気内の塵埃を捕集するエアフィルタ8が配される。フロントパネル3とエアフィルタ8との間にはエアフィルタ8に蓄積した塵埃を除去するためのエアフィルタ清掃装置(不図示)が設けられている。また、エアフィルタ8と室内熱交換器9との間には、電気集塵装置(不図示)が設けられている。
【0038】
送風経路6にはファン7と吹出口5との間にダクト状の吹出通路12が形成される。吹出通路12は上下面が上壁12a及び下壁12bにより形成され、左右面がファン7を軸支する側壁12c(図2参照)により形成される。また、上壁12a及び下壁12bは前方が下方に傾斜し、吹出通路12は傾斜して気流を前方下方に案内する。
【0039】
また、上壁12aと下壁12bとは上流側に対して下流側が漸次上下方向に離れるように配される。これにより、吹出通路12は上流側に対して下流側の流路面積を拡大した拡幅部を形成し、流路抵抗が小さくなるため気流の運動エネルギーが効率良く静圧に変換される。従って、運動エネルギーから変換された静圧によってファン7による静圧上昇の一部が賄われ、ファン7の消費電力を削減することができる。
【0040】
吹出通路12内の吹出口5近傍には縦ルーバー19及び横ルーバー20が配される。縦ルーバー19は左右方向に複数並設され、上壁12a及び下壁12bに軸支して回動自在になっている。これにより、吹出口5から送出される気流の左右方向の風向を可変する。横ルーバー20は上下方向に複数並設され、吹出通路12の側壁12c(図2参照)に軸支して回動自在になっている。これにより、吹出口5から送出される気流の上下方向の風向を可変する。
【0041】
吹出通路12の上壁12aにはスピーカ21(発音部)が吹出通路12に臨んで設けられる。スピーカ21から放射される音波によって後述するアクティブ消音による運転騒音制御が行われる。尚、スピーカ21を下壁12bに設けてもよい。スピーカ21として省スペースな平板型スピーカが好適に用いられるが、円筒型等の他の種類のスピーカを用いてもよい。また、送風方向に指向性を有するスピーカを用いてもよい。
【0042】
図2は吹出通路12の上面断面図を示している。吹出通路12は仕切板14により気流に沿って左右方向に複数の区画15に分割されている。これにより、左右方向に延びた吹出通路12の断面のアスペクト比よりも各区画15の断面のアスペクト比が1に近くなっている。スピーカ21は各区画15にそれぞれ配される。また、各区画15の下流端は縦ルーバー19によって更に複数の流路18に分割されている。
【0043】
各区画15の左右方向に対向する壁面(仕切板14)間の幅W及び上下方向に対向する壁面(上壁12a及び下壁12b)間の幅L1(図5参照)は85mm以下に形成される。これにより、各区画15の対向する壁面の間隔は約2000Hzよりも低周波数域の音波の半波長以下になっている。
【0044】
図3は空気調和機1の構成を示すブロック図である。同図において、空気調和機1の運転騒音の制御系統のみを示し、その他の冷凍サイクルの制御系統等を省略している。
【0045】
制御部30はマイクロコンピュータ等により構成され、運転モード検知部301、風向変更手段駆動部302、ファン回転数設定部303、ファン駆動部304、ファン回転数検知部305、ファン回転数比較部306、打ち消し音記憶部307、打ち消し音選択部308及びスピーカ駆動部309を有している。
【0046】
運転モード検知部301はリモートコントローラ(以下、「リモコン」という)16からの信号の入力を受け付け、空気調和機1の運転モード(例えば、冷房運転、暖房運転、各運転の風量・風向等)を検知する。風向変更手段駆動部302は運転モードに応じて縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変する。
【0047】
ファン回転数設定部303は運転モードに応じてファン7の回転数を設定する。ファン駆動部304はファン回転数設定部303で設定された回転数でファン7のファンモータ17を駆動する。ファン回転数検知部305はファンモータ17の出力に基づいてファン7の回転数を検知する。ファン回転数比較部306はファン回転数検知部305で検知されたファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数とを比較する。
【0048】
打ち消し音記憶部307は運転モードに応じて予め設定された複数種類の音波信号を記憶する。打ち消し音選択部308は打ち消し音記憶部307に記憶された音波信号から運転モードに対応した音波信号を選択する。スピーカ駆動部309は打ち消し音選択部308で選択された音波信号をスピーカ21に出力する。これにより、スピーカ21から所定の音波が放射され、アクティブ消音が行われる。
【0049】
同図に破線で示すように、スピーカ駆動部309は運転モード検知部301及びファン回転数検知部305からも直接信号が入力される。そして、予め設定された運転モード以外の場合やファン7の回転数が予め設定された回転数以下の場合に、スピーカ21から音波を放射しないように制御される。これにより、必要以上にアクティブ消音が実行されず、比較的騒音を不快に感じる場合にのみアクティブ消音が実行される。従って、効率良く、また効果的にアクティブ消音を行うことができる。
【0050】
図4は空気調和機1のアクティブ消音による運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。ステップS1では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS2では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0051】
例えば、リモコン16により冷房運転の開始が指示されると運転モード検知部301で検知され、ファン駆動部304によりファン7が駆動される。また、圧縮機の駆動により冷凍サイクルが運転され、室内熱交換器9が冷凍サイクルの低温部に配される。吸込口4から送風経路6に流入した室内の空気はフィルター8や電気集塵装置(不図示)により塵埃が除去される。塵埃を除去された空気は室内熱交換器9と熱交換して冷却される。室内熱交換器9と熱交換した調和空気は吹出口5からリモコン16により指示された風向で室内に送出される。これにより、室内が冷房される。
【0052】
リモコン16により暖房運転の開始が指示されると運転モード検知部301で検知され、ファン駆動部304によりファン7が駆動される。また、圧縮機の駆動により冷凍サイクルが運転され、室内熱交換器9が冷凍サイクルの高温部に配される。吸込口4から送風経路6に流入した室内の空気はフィルター8や電気集塵装置(不図示)により塵埃が除去される。塵埃を除去された空気は室内熱交換器9と熱交換して昇温される。室内熱交換器9と熱交換した調和空気は吹出口5からリモコン16により指示された風向で室内に送出される。これにより、室内が暖房される。
【0053】
ステップS3では打ち消し音記憶部307に予め記憶された音波が運転モードに応じて打ち消し音選択部308により選択される。この時、ファン7の回転により生じる送風音を含む運転騒音が運転モードに応じて予め取得されており、運転モードに応じた運転騒音と概ね同じ周波数及び音圧レベルで概ね逆位相の音波が選択される。
【0054】
ステップS4では打ち消し音選択部308で選択された音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消され、アクティブ消音による運転騒音制御が行われる。
【0055】
図5は空気調和機1のアクティブ消音による音波の状態を示している。また、図6は第1比較例の空気調和機1’のアクティブ消音による音波の状態を示している。第1比較例の空気調和機1’はスピーカ21と吹出口5とが接近し、吹出通路12が本実施形態よりも短くなっている。その他の部分は本実施形態と同様である。尚、これらの図において、縦ルーバー19及び横ルーバー20(いずれも図1参照)を省略している。
【0056】
図5、図6において、スピーカ21の設置位置の上壁12aに垂直な方向の吹出通路12の幅をL1とし、スピーカ21の設置位置から吹出口5までの吹出通路12の長さをL2としている。この時、スピーカ21を中心とする半径がL1の空間C1は球面波で音が伝搬する空間となる。
【0057】
第1比較例の空気調和機1’では吹出口5近傍の閉空間(スピーカ21を中心とする半径L2の空間C2のうち、吹出通路12の上面、下面及び左右側面で囲まれた部分)が空間C1と同等あるいはそれよりも小さくなっている(C1≒C2)。このため、スピーカ21から放射される音波が平面波になりにくく、吹出通路12が球面波のまま自由空間を伝播するような三次元の音場になる。従って、十分な消音効果を得ることができない。
【0058】
これに対して、本実施形態の空気調和機1では長さL2が幅L1よりも長く、空間C2が送風方向に空間C1よりも延びて形成される。これにより、吹出口5近傍の閉空間において吹出通路12が一次元の音場に近づけられ、スピーカ21から放射される音波を平面波として伝搬させることができる。従って、十分な消音効果を得ることができる。
【0059】
この時、気流の流路の断面のアスペクト比が1に近い方が一次元の音場をより形成し易くなる。吹出通路12は仕切板14で区画15に分割されるため、各区画15の断面のアスペクト比が1に近づけられる。従って、各区画15を一次元の音場により近づけることができ、消音効果がより向上する。
【0060】
また、アクティブ消音は波長の長い低周波数域で位相ずれが生じにくいため消音効果を容易に得ることができる。本実施形態の空気調和機1は区画15の上下方向の幅L1及び左右方向の幅W(図2参照)が85mm以下であるため、2000Hzよりも低周波数域で音波の半波長よりも小さくなる。これにより、低周波数域の音波がスピーカ21の設置面に垂直な平面波に近い状態で各区画15を進行する。従って、各区画15を一次元の音場に更に近づけることができ、消音効果がより向上する。
【0061】
加えて、各区画15がスピーカ21の下流側で更に縦ルーバー19から成る分割壁により流路18に分割されるので、流路18を一次元の音場により近づけることができる。
【0062】
図7は本実施形態の空気調和機1の運転騒音制御による騒音の低減効果を示す図である。また、図8は前述の図6に示す第1比較例の空気調和機1’の運転騒音制御による騒音の低減効果を示す図である。これらの図において、縦軸は音圧レベル(単位:dB)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示している。また、図中、「ANC ON」はアクティブ消音の実行時を示し、「ANC OFF」はアクティブ消音の停止時を示している。
【0063】
本実施形態の空気調和機1では測定周波数範囲(0〜5000Hz)において音圧レベルが大幅に低下している。これに対して、第1比較例の空気調和機1’では測定周波数範囲(0〜5000Hz)において音圧レベルに殆ど変化がない。従って、吹出通路12をダクト状に形成することにより、消音効果を向上させることができる。
【0064】
図9は本実施形態の空気調和機1の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。上記と同様に、ステップS11では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS12では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0065】
ステップS13ではファン回転数検知部305によりファン7の回転数が検知される。ステップS14ではファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数と運転モードに応じてファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数が比較される。ステップS15ではステップS14で比較したファン7のの回転数の差が予め設定された範囲内であるか否かが判断される。
【0066】
ファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲内の場合はステップS16に移行する。ステップS16では運転モードに応じて打ち消し音選択部308で選択された音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射され、アクティブ消音が行われる。
【0067】
ステップS15の判断でファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲を超えている場合はステップS13に戻り、ステップS13〜S15が繰り返し行われる。そして、回転数の差が設定範囲内になるとステップS16に移行して音波が放射される。
【0068】
これにより、吹出通路12を流通する気流が比較的安定した定常状態の騒音を対象にしてアクティブ消音が行われる。従って、アクティブ消音の消音効果が得られ易くなる。
【0069】
本実施形態によると、スピーカ21(発音部)と吹出口5との間の吹出通路12の長さL2がスピーカ21を配した上壁12aに垂直な方向の吹出通路12の幅L1よりも長いので、スピーカ21の下流側で吹出通路12が一次元の音場に近づけられたダクト状に形成される。従って、室内に放射される運転騒音が確実に低減され、空気調和機1の消音効果を向上させることができる。
【0070】
また、空気調和機1の運転騒音を低減できるため、使用者に不快感を与えることなく空気調和機1の風量を増加させることもできる。これにより、冷凍サイクルの効率を向上することができるため、省エネルギー性にも大きく貢献することができる。
【0071】
また、吹出通路12の断面のアスペクト比よりも各区画15の断面のアスペクト比が1に近いので、各区画15を一次元の音場により近づけることができる。従って、消音効果をより向上することができる。
【0072】
また、複数の区画15に対応してそれぞれスピーカ21を設けたので、各区画15を流通する気流に対してそれぞれアクティブ消音を行うことができる。従って、消音効果をより向上することができる。尚、スピーカ21を全ての区画15に設けてもよく、全区画15を複数の区画15から成るグループに分けて各グループに対して一のスピーカ21を設けてもよい。
【0073】
また、区画15の対向する壁面の間隔が85mm以下であるので、2000Hzよりも低周波数域で音波の半波長よりも小さくなる。これにより、低周波数域の音波がスピーカ21の設置面に垂直な平面波に近い状態で各区画15を進行する。従って、各区画15を一次元の音場に更に近づけることができ、消音効果をより向上することができる。
【0074】
また、各区画15がスピーカ21の下流側で更に縦ルーバー19から成る分割壁により分割されるので、縦ルーバー19間に形成される流路18を一次元の音場により近づけることができる。また、各区画15に設けたスピーカ21によって分割壁で分割した複数の流路18に対してアクティブ消音を行うことができるため、スピーカ21を削減することができる。尚、回動しない固定の分割壁によって各区画15を複数の流路18に分割してもよい。
【0075】
また、吹出通路12が上流側に対して下流側の流路面積を拡大した拡幅部を形成するので、流路抵抗が小さくなるため気流の運動エネルギーが効率良く静圧に変換される。従って、運動エネルギーから変換された静圧によってファン7による静圧上昇の一部が賄われ、ファン7の消費電力を削減することができる。
【0076】
尚、吹出通路12の一部に拡幅部を設け、拡幅部と吹出口5との間の吹出通路12の流路面積を一定にしてもよい。これにより、流路面積が一定の区間で一次元の音場が形成されやすくなり、気流の運動エネルギーを十分に静圧に変換した後でアクティブ消音を良好に行うことができる。また、吹出通路12の一部の所定区間の流路面積を一定にしてもよい。
【0077】
<第2実施形態>
次に、図10は第2実施形態の空気調和機1を示す側面断面図である。また、図11は空気調和機1の吹出通路12の平面図を示している。説明の便宜上、前述の図1〜図9に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態に加え、参照用マイク22が設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0078】
参照用マイク22(参照用検音部)は吹出通路12に臨んで上壁12aに取り付けられ、ファン7とスピーカ21との間に配される。また、参照用マイク22は各区画15にそれぞれ配される。参照用マイク22によってファン7の送風音を含む運転騒音の音波が検知される。この時、スピーカ21から放射される音波まで検知しないように、参照用マイク22がスピーカ21の上流側に配置される。尚、スピーカ21や参照用マイク22を下壁12bに設けてもよい。
【0079】
図12は空気調和機1の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図である。制御部30には第1実施形態の打ち消し音選択部308(図3参照)及び打ち消し音記憶部307(図3参照)が省かれ、位相反転部310及び参照用騒音レベル判定部311が設けられる。
【0080】
位相反転部310は参照用マイク22により検知された運転騒音の音波の位相を反転して概ね逆位相の音波を形成する。参照用騒音レベル判定部311は参照用マイク22により検知された運転騒音の音圧(騒音レベル)を所定の基準値と比較して結果を出力する。
【0081】
同図に破線で示すように、スピーカ駆動部309は運転モード検知部301、送風機回転数検知部305及び参照用騒音レベル判定部311からも直接信号が入力される。そして、予め設定された運転モード以外の場合、ファン7の回転数が予め設定された回転数以下の場合、参照用マイク22により検知された運転騒音が予め設定された騒音レベル以下の場合に、スピーカ21から音波を放射しないように制御される。これにより、必要以上にアクティブ消音が実行されず、比較的騒音を不快に感じる場合にのみアクティブ消音が実行される。従って、効率良く、また効果的にアクティブ消音を行うことができる。
【0082】
図13は空気調和機1のアクティブ消音による運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。ステップS31では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS32では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0083】
ステップS33ではファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。ステップS34では参照用マイク22で検知された音波の位相を位相反転部310により反転する。ステップS35ではこの逆位相の音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消され、アクティブ消音による運転騒音制御が行われる。
【0084】
図14は本実施形態の空気調和機1の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。上記と同様に、ステップS41では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS42では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0085】
ステップS43ではファン回転数検知部305によりファン7の回転数が検知される。ステップS44ではファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数と運転モードに応じてファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数が比較される。ステップS45ではステップS44で比較したファン7の回転数の差が予め設定された範囲内であるか否かが判断される。
【0086】
ファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲内の場合はステップS46に移行する。ステップS46ではファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。ステップS47では参照用マイク22で検知された音波の位相を位相反転部310により反転する。ステップS48ではこの逆位相の音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。
【0087】
ステップS45の判断でファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲を超えている場合はステップS43に戻り、ステップS43〜S45が繰り返し行われる。そして、回転数の差が設定範囲内になるとステップS46に移行して音波が放射される。
【0088】
これにより、吹出通路12を流通する気流が比較的安定した定常状態の騒音を対象にしてアクティブ消音が行われる。従って、アクティブ消音の消音効果が得られ易くなる。
【0089】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、ファン7とスピーカ21との間の音波を検知する参照用マイク22(参照用検音部)を設け、参照用マイク22検知された運転騒音の音波と概ね逆位相の音波をスピーカ21から放射する。これにより、ファン7の駆動によって実際に発生している騒音を検知してこれに対して打ち消すような波形の音を放射させることができる。従って、アクティブ消音の消音効果の精度を高めることができる。
【0090】
また、複数の区画15に対応してそれぞれスピーカ21及び参照用マイク22を設けたので、各区画15を流通する気流に対してそれぞれ高精度にアクティブ消音を行うことができる。尚、スピーカ21及び参照用マイク22を全ての区画15に設けてもよく、全区画15を複数の区画15から成るグループに分けて各グループに対して一のスピーカ21及び参照用マイク22を設けてもよい。
【0091】
<第3実施形態>
次に、図15は第3実施形態の空気調和機1を示す側面断面図である。また、図16は空気調和機1の吹出通路12の平面図を示している。説明の便宜上、前述の図10〜図14に示す第2実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第2実施形態に加え、補正用マイク23が設けられる。その他の部分は第2実施形態と同様である。
【0092】
補正用マイク23(補正用検音部)は吹出通路12に臨んで上壁12aに取り付けられ、スピーカ21と吹出口5との間に配される。また、補正用マイク23は各区画15にそれぞれ配される。補正用マイク23によってファン7の送風音を含む運転騒音とスピーカ21から放射した音波とが重ねられた後の騒音レベルが検知される。この時、ファン7の送風音の音波まで検知しないように、補正用マイク23がスピーカ21の下流側に配置される。尚、スピーカ21、参照用マイク22または補正用マイク23を下壁12bに設けてもよい。
【0093】
図17は空気調和機1の運転騒音制御系統の構成を示すブロック図である。制御部30には第2実施形態に加え、補正用騒音レベル判定部312及び音波補正部313が設けられる。補正用騒音レベル判定部312は補正用マイク23により検知された音の音圧(騒音レベル)を所定の基準値と比較して結果を出力する。音波補正部313は位相反転部310により反転された逆位相の音波信号を補正する。
【0094】
補正用マイク23により検知された音波から補正用騒音レベル判定部312により騒音レベルが所定の基準値より大きいと判定されると、音波補正部313で検知音波に対応する補正信号が導出される。そして、位相反転部310により反転された逆位相の音波信号を音波補正部313により得られた補正信号によって補正する。
【0095】
図18は空気調和機1のアクティブ消音による運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。ステップS51では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS52では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0096】
ステップS53ではファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。ステップS54では参照用マイク22で検知された音波の位相を位相反転部310により反転する。ステップS55ではこの逆位相の音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消される。
【0097】
ステップS56では補正用マイク23により打ち消し後の音波が検知される。ステップS57では補正用騒音レベル判定部312によって補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値以下か否かが判断される。補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値以下の場合は処理を終了する。
【0098】
補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値よりも大きい場合はステップS58に移行する。ステップS58では音波補正部313によって補正信号が導出される。そして、ステップS55に戻り、ステップS55〜S58が繰り返し行われる。これにより、補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の範囲(基準値)内に収まるようにスピーカ21から放射される音波が補正される。
【0099】
図19は本実施形態の空気調和機1の他の運転騒音制御の動作を示すフローチャートである。上記と同様に、ステップS61では運転モード検知部301によりリモコン16からの入力による運転モードが検知される。ステップS62では運転モードに応じて風向変更手段駆動部302によって縦ルーバー19及び横ルーバー20の向きを可変し、風向が制御される。
【0100】
ステップS63ではファン回転数検知部305によりファン7の回転数が検知される。ステップS64ではファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数と運転モードに応じてファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数が比較される。ステップS65ではステップS64で比較したファン7の回転数の差が予め設定された範囲内であるか否かが判断される。
【0101】
ファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲内の場合はステップS66に移行する。
【0102】
ステップS65の判断でファン回転数検知部305で検知したファン7の回転数とファン回転数設定部303で設定されたファン7の回転数の差が予め設定された範囲を超えている場合はステップS63に戻り、ステップS63〜S65が繰り返し行われる。そして、回転数の差が設定範囲内になるとステップS66に移行する。これにより、吹出通路12を流通する気流が比較的安定した定常状態の騒音を対象にしてアクティブ消音が行われる。
【0103】
ステップS66ではファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。ステップS67では参照用マイク22で検知された音波の位相を位相反転部310により反転する。ステップS68ではこの逆位相の音波がスピーカ駆動部309によってスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消される。
【0104】
ステップS69では打ち消し後の音波が補正用マイク23により検知される。ステップS70では補正用騒音レベル判定部312によって補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値以下か否かが判断される。補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値以下の場合は処理を終了する。
【0105】
補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値よりも大きい場合はステップS71に移行する。ステップS71では音波補正部313によって補正信号が導出される。そして、ステップS68に戻り、ステップS68〜S71が繰り返し行われる。
【0106】
本実施形態によると、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、スピーカ21と吹出口5との間の運転騒音を検知する補正用マイク23(補正用検音部)を設け、補正用マイク23により検知された運転騒音のレベルが所定の範囲内に収まるようにスピーカ21から放射される音波を補正する。これにより、打ち消し後の騒音レベルのフィードバック制御によってアクティブ消音の精度をより高めることができる。
【0107】
また、複数の区画15に対応してそれぞれスピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23を設けたので、各区画15を流通する気流に対してそれぞれ高精度にアクティブ消音を行うことができる。尚、スピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23を全ての区画15に設けてもよく、全区画15を複数の区画15から成るグループに分けて各グループに対して一のスピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23を設けてもよい。
【0108】
<第4実施形態>
次に、図20は第4実施形態の空気調和機を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図15〜図19に示す第3実施形態と同様の部分については同一の符号を付している。本実施形態の空気調和機40は冷凍サイクルを運転する構成が省かれ、室内の空気に含まれる塵埃を捕集する空気清浄機能を有している。
【0109】
空気調和機40は床面F上に設置される本体筐体2を備えている。本体筐体2の前面には吸込口4が開口し、上面には吹出口5が開口する。吹出口5は本体筐体2の幅方向に延びる略矩形に形成され、上方に臨んで設けられる。また、本体筐体2の上面には吹出口5を開閉する回動可能のパネル6が吹出口5の前後に設けられる。
【0110】
本体筐体2の内部には吸込口4と吹出口5とを連通させる送風経路6が設けられる。送風経路6内には空気を送出するファン7(送風機)が配される。ファン7の駆動によって吸込口4から室内の空気が送風経路6に流入し、吹出口5から送出される。ファン7はシロッコファン(遠心ファン)から成り、ハウジング42内にファンモータ7aにより回転駆動される羽根車7bが配される。ファン7として他の種類の送風機を用いてもよい。
【0111】
吸込口4とファン7との間には送風経路6に流入する空気内の塵埃を捕集するエアフィルタ8(集塵部)が配される。エアフィルタ8はHEPAフィルタ等により形成される。
【0112】
送風経路6にはハウジング42によってファン7と吹出口5との間に鉛直に延びたダクト状の吹出通路12が形成される。吹出通路12は前後面が前壁12d及び後壁12eにより形成され、左右面が側壁12f(図21参照)により形成される。
【0113】
吹出通路12の前壁12dにはスピーカ21(発音部)、参照用マイク22(参照用検音部)及び補正用マイク23(補正用検音部)が吹出通路12に臨んで設けられる。スピーカ21から放射される音波によってアクティブ消音による運転騒音制御が行われる。スピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23を後壁12eに設けてもよい。
【0114】
スピーカ21として省スペースな平板型スピーカが好適に用いられるが、円筒型等の他の種類のスピーカを用いてもよい。また、送風方向に指向性を有するスピーカを用いてもよい。
【0115】
参照用マイク22はファン7とスピーカ21との間に配され、ファン7の送風音を含む運転騒音の音波を検知する。この時、スピーカ21から放射される音波まで検知しないように、参照用マイク22がスピーカ21の上流側に配置される。補正用マイク23はスピーカ21と吹出口5との間に配され、運転騒音とスピーカ21から放射した音波が重ねられた後の騒音レベルを検知する。この時、ファン7の送風音の音波まで検知しないように、補正用マイク23がスピーカ21の下流側に配置される。
【0116】
また、吹出通路12の前壁12dには吹出通路12にイオンを放出するイオン発生装置43が配される。
【0117】
図21は図20のA矢視図であり、吹出通路12の内部を示している。吹出通路12の両側壁12fは上流側に対して下流側が漸次左右方向に離れるように配される。これにより、吹出通路12は上流側に対して下流側の流路面積を拡大した拡幅部を形成し、流路抵抗が小さくなるため気流の運動エネルギーが効率良く静圧に変換される。従って、運動エネルギーから変換された静圧によってファン7による静圧上昇の一部が賄われ、ファン7の消費電力を削減することができる。
【0118】
吹出通路12は仕切板14により気流に沿って左右方向に複数の区画15に分割されている。これにより、左右方向に延びた吹出通路12の断面のアスペクト比よりも各区画15の断面のアスペクト比が1に近くなっている。尚、スピーカ21、参照用マイク22及び補正用マイク23は各区画15にそれぞれ配される。
【0119】
各区画15の左右方向に対向する壁面(仕切板14)間の幅W及び前後方向に対向する壁面(前壁12d及び後壁12e)間の幅L1(図22参照)は85mm以下に形成される。これにより、各区画15の対向する壁面の間隔は約2000Hzよりも低周波数域の音波の半波長以下になっている。
【0120】
尚、空気調和機40の運転騒音制御系統の構成は前述の図17に示す第3実施形態のブロック図と同様に構成される。
【0121】
上記構成の空気調和機40において、ファン7が駆動されると室内の空気が吸込口4から送風経路6に流入する。送風経路6に流入した空気はエアフィルタ8により塵埃が除去される。また、イオン発生装置43の駆動によって送風経路6を流通する空気にイオンが含まれる。そして、塵埃を除去されたイオンを含む調和空気が吹出口5から室内に送出される。これにより、室内の空気清浄が行われるとともに、イオンによって室内の微生物やウィルス等を除菌することができる。
【0122】
この時、第3実施形態と同様に、ファン7の駆動により発生する運転騒音の音波を参照用マイク22により検知する。そして、参照用マイク22で検知された音波の位相を反転し、この逆位相の音波がスピーカ21から放射される。これにより、運転騒音の音波がスピーカ21から放射された音波と重なって打ち消される。
【0123】
また、補正用マイク23により打ち消し後の音波が検知される。補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の基準値よりも大きい場合は補正信号を導出する。そして、補正用マイク23で検知した騒音レベルが所定の範囲(基準値)内に収まるようにスピーカ21から放射される音波が補正される。
【0124】
図22は空気調和機40のアクティブ消音による音波の状態を示している。また、図23は第2比較例の空気調和機40’のアクティブ消音による音波の状態を示している。第2比較例の空気調和機40’はスピーカ21と吹出口5とが接近し、吹出通路12が本実施形態よりも短くなっている。その他の部分は本実施形態と同様である。
【0125】
図22、図23において、スピーカ21の設置位置の前壁12dに垂直な方向の吹出通路12の幅をL1とし、スピーカ21の設置位置から吹出口5までの吹出通路12の長さをL2としている。この時、スピーカ21を中心とする半径がL1の空間C1は球面波で音が伝搬する空間となる。
【0126】
第2比較例の空気調和機40’では吹出口5近傍の閉空間(スピーカ21を中心とする半径L2の空間C2のうち、吹出通路12の前面、後面及び左右面で囲まれた部分)が空間C1と同等あるいはそれよりも小さくなっている(C1≒C2)。このため、スピーカ21から放射される音波が平面波になりにくく、吹出通路12が球面波のまま自由空間を伝播するような三次元の音場になる。従って、十分な消音効果を得ることができない。
【0127】
これに対して、本実施形態の空気調和機40では長さL2が幅L1よりも長く、空間C2が送風方向に空間C1よりも延びて形成される。これにより、吹出口5近傍の閉空間において吹出通路12が一次元の音場に近づけられ、スピーカ21から放射される音波を平面波として伝搬させることができる。従って、十分な消音効果を得ることができる。
【0128】
この時、開かれたパネル41により前壁12d及び後壁12eを延長して吹出通路12が延長される。これにより、スピーカ21の下流の吹出通路12を実質的により長くすることができる。従って、吹出通路12をより一次元の音場に近づけることができる。
【0129】
また、気流の流路の断面のアスペクト比が1に近い方が一次元の音場をより形成し易くなる。吹出通路12は仕切板14で区画15に分割されるため、各区画15の断面のアスペクト比が1に近づけられる。従って、各区画15を一次元の音場により近づけることができ、消音効果がより向上する。
【0130】
また、アクティブ消音は波長の長い低周波数域で位相ずれが生じにくいため消音効果を容易に得ることができる。本実施形態の空気調和機1は区画15の前後方向の幅L1及び左右方向の幅W(図21参照)が85mm以下であるため、2000Hzよりも低周波数域で音波の半波長よりも小さくなる。これにより、低周波数域の音波がスピーカ21の設置面に垂直な平面波に近い状態で各区画15を進行する。従って、各区画15を一次元の音場に更に近づけることができ、消音効果がより向上する。
【0131】
図24は本実施形態の空気調和機40の運転騒音制御による騒音の低減効果を示す図である。また、図25は前述の図23に示す第2比較例の空気調和機40’の運転騒音制御による騒音の低減効果を示す図である。これらの図において、縦軸は音圧レベル(単位:dB)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示している。また、図中、「ANC ON」はアクティブ消音の実行時を示し、「ANC OFF」はアクティブ消音の停止時を示している。
【0132】
本実施形態の空気調和機40では測定周波数範囲(0〜5000Hz)において音圧レベルが大幅に低下している。これに対して、第2比較例の空気調和機40’では測定周波数範囲(0〜5000Hz)において音圧レベルにほとんど変化ない。従って、吹出通路12をダクト状に形成することにより、消音効果を向上させることができる。
【0133】
本実施形態によると、第3実施形態と同様に、スピーカ21(発音部)と吹出口5との間の吹出通路12の長さL2がスピーカ21を配した前壁12dに垂直な方向の吹出通路12の幅L1よりも長いので、スピーカ21の下流側で吹出通路12が一次元の音場に近づけられたダクト状に形成される。従って、室内に放射される運転騒音が確実に低減され、空気調和機40の消音効果を向上させることができる。
【0134】
また、空気調和機40の運転騒音を低減できるため、使用者に不快感を与えることなく空気調和機40の風量を増加させることもできる。これにより、空気中に存在する塵埃等を素早く除去することができるため、快適性向上にも大きく貢献することができる。
【0135】
また、ファン7とスピーカ21との間の音波を検知する参照用マイク22(参照用検音部)を設け、参照用マイク22検知された運転騒音の音波と逆位相の音波をスピーカ21から放射する。これにより、ファン7の駆動によって実際に発生している騒音を検知してこれに対して打ち消すような波形の音を放射させることができる。従って、アクティブ消音の消音効果の精度を高めることができる。
【0136】
また、スピーカ21と吹出口5との間の運転騒音を検知する補正用マイク23(補正用検音部)を設け、補正用マイク23により検知された運転騒音のレベルが所定の範囲内に収まるようにスピーカ21から放射される音波を補正する。これにより、打ち消し後の騒音レベルのフィードバック制御によってアクティブ消音の精度をより高めることができる。
【0137】
また、吹出口5を開閉する可動のパネルによって吹出通路12が延長されるので、実質的にスピーカ21の下流の吹出通路12をより長くすることができる。従って、吹出通路12をより一次元の音場に近づけることができる。
【0138】
本実施形態において、第2実施形態と同様に、補正用マイク23を省いてもよい。また、第1実施形態と同様に、参照用マイク22及び補正用マイクを省いてもよい。
【0139】
<第5実施形態>
次に、図26は第5実施形態の空気調和機40の側面断面図を示している。説明の便宜上、前述の第4実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は、吹出通路12が傾斜して形成されている。その他の部分は第4実施形態と同様である。
【0140】
吹出通路12は鉛直上方に対して吸込口4が形成される前面の方向に傾斜している。吹出通路12の前後方向の中心線の鉛直上方に対する傾斜角度θは35゜以下になっている。これにより、除塵されるとともにイオンを含む調和空気が吹出口5から送出され、吸込口4に対向する側壁W1に到達した際に円滑に上昇して吸込口4へのショートカットが防止される。そして、イオンを含む調和空気が室内の天井面S及び他の側壁面に沿って流通して室内を循環する。
【0141】
これにより、吹出口5から送出される気流の横方向への広がりが抑制され、気流の到達距離を長くすることができる。このため、室内の壁面に沿う気流及び空気調和機40から遠い位置の気流の風速が増加して空気環境の改善効果を高めることができ、広範囲の室内空気を効果的に清浄化することができる。また、少ない風量で所望の空気環境の改善効果を得ることができ、無駄に送出される空気を削減できるとともに騒音を低減することができる。加えて、吹出口5から放射される騒音が直接使用者の居住領域へ伝播されないので、より低騒音化することができる。
【0142】
また、壁面に設けられた窓や隙間等によって室内の気密性が低い場合に、室内の壁面に沿う気流の風速の増加によって陽圧効果が得られるため室外から室内へ侵入する粉塵の量を低減することができる。
【0143】
この時、吹出通路12が傾斜して吹出口5から送出される気流を壁面W1に到達させるので、吹出口5近傍で気流が急激に曲げる必要がない。このため、吹出通路12の圧力損失を低減して消費電力を削減できるとともに騒音をより低減することができる。
【0144】
また、吹出口5の中央位置から吸込口4に対向する最寄りの室内の側壁W1までの距離をD、吹出口5の中央位置と室内の天井面Sとの距離をHとし、100mm<D<600mmの範囲の時に傾斜角度θをtan-1(D/H)よりも大きくなるように吹出通路12が形成される。これにより、吹出口5から送出される調和空気を確実に側壁W1に到達させることができる。
【0145】
本実施形態によると、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。また、吹出通路12の鉛直上方に対する傾斜角度θを35゜以下にしたので、吸込口4に対向する側壁W1に到達した気流を側壁W1、天井面S及び他の側壁に沿って流通させることができる。従って、少ない風量で室内を清浄するとともに低騒音化を図ることができる。また、吹出通路12の圧力損失を低減して消費電力を削減することができる。
【0146】
また、100mm<D<600mmの範囲の時に傾斜角度θをtan-1(D/H)よりも大きくしたので、吹出口5から送出される調和空気を確実に側壁W1に到達させることができる。
【0147】
本実施形態において、吸込口4を室内の中央部(使用者の居住領域)に向けて配置してもよい。この時、イオンを含む調和空気の送出方向が鉛直上方に対して吸込口4の形成面側に傾斜するので、イオンを含む気流を居住領域へ素早く放出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明は、室内の壁面や床面に設置される空気調和機に利用することができる。
【符号の説明】
【0149】
1、40 空気調和機
2 本体筐体
3 フロントパネル
4 吸込口
5 吹出口
6 送風経路
7 ファン(送風機)
8 エアフィルタ
9 室内熱交換器
12 吹出通路
14 仕切板
15 区画
19 縦ルーバー(分割壁)
20 横ルーバー
21 スピーカ(発音部)
22 参照用マイク(参照用検音部)
23 補正用マイク(補正用検音部)
30 制御部
41 パネル
43 イオン発生装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口及び吹出口を開口する本体筐体と、前記吸込口と前記吹出口とを連通させる送風経路と、前記送風経路内に配されるとともに前記吸込口から室内の空気を流入させて前記吹出口から室内に調和空気を送出する送風機と、前記送風機と前記吹出口との間の前記送風経路から成る吹出通路の壁面に配されるとともに前記送風機の送風音を含む運転騒音を打ち消す音波を放射する発音部とを備え、前記発音部と前記吹出口との間の前記吹出通路の長さが前記発音部を配した壁面に垂直な方向の前記吹出通路の幅よりも長いことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記送風機と前記発音部との間の運転騒音を検知する参照用検音部を備え、前記参照用検音部により検知された運転騒音の音波と概ね逆位相の音波を前記発音部から放射することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記発音部と前記吹出口との間の運転騒音を検知する補正用検音部を備え、前記補正用検音部により検知された運転騒音のレベルが所定の範囲内に収まるように前記発音部から放射される音波を補正することを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近いことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項5】
前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近く形成され、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部及び前記参照用検音部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近く形成され、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部、前記参照用検音部及び前記補正用検音部を設けたことを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記区画の対向する壁面の間隔が85mm以下であることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項9】
前記区画が前記発音部の下流側で更に分割壁により分割されることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項10】
前記吹出口の風向を可変するルーバーにより前記分割壁を形成したことを特徴とする請求項9に記載の空気調和機。
【請求項11】
前記吹出通路が上流に対して下流の流路面積を拡大した拡幅部を有することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項12】
前記拡幅部と前記吹出口との間の前記吹出通路の流路面積を一定にしたことを特徴とする請求項11に記載の空気調和機。
【請求項13】
前記吹出通路の所定区間の流路面積を一定にしたことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項14】
前記本体筐体が室内の壁面に設置されるとともに前記送風経路内に熱交換器を備え、前記熱交換器と熱交換された調和空気を前記吹出口から送出することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項15】
前記吹出口を上面に開口して前記本体筐体が床面に設置されるとともに、前記送風経路内に塵埃を捕集する集塵部を備え、前記集塵部により塵埃を除去された調和空気を前記吹出口から送出することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項16】
前記吹出口を開閉する可動のパネルを備え、開いた前記パネルによって前記吹出通路が延長されることを特徴とする請求項15に記載の空気調和機。
【請求項17】
前記本体筐体の前後方向の一面に前記吸込口を開口するとともに、前記吹出口の気流の吹出方向を鉛直上方に対して前記吸込口の形成面の方向に傾斜し、鉛直上方に対する傾斜角度を35゜以下にしたことを特徴とする請求項15または請求項16に記載の空気調和機。
【請求項18】
前記吹出口の中央位置から対向する最寄りの室内の側壁までの距離をD、前記吹出口の中央位置と室内の天井面との距離をHとし、100mm<D<600mmの範囲の時に前記傾斜角度をtan-1(D/H)よりも大きくしたことを特徴とする請求項17に記載の空気調和機。
【請求項19】
前記本体筐体の前後方向の一面に前記吸込口を開口するとともに、前記送風経路を流通する気流にイオンを含有させるイオン発生装置を備え、前記吹出口の気流の送出方向が鉛直上方に対して前記吸込口の形成面側に傾斜することを特徴とする請求項15または請求項16に記載の空気調和機。
【請求項1】
吸込口及び吹出口を開口する本体筐体と、前記吸込口と前記吹出口とを連通させる送風経路と、前記送風経路内に配されるとともに前記吸込口から室内の空気を流入させて前記吹出口から室内に調和空気を送出する送風機と、前記送風機と前記吹出口との間の前記送風経路から成る吹出通路の壁面に配されるとともに前記送風機の送風音を含む運転騒音を打ち消す音波を放射する発音部とを備え、前記発音部と前記吹出口との間の前記吹出通路の長さが前記発音部を配した壁面に垂直な方向の前記吹出通路の幅よりも長いことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記送風機と前記発音部との間の運転騒音を検知する参照用検音部を備え、前記参照用検音部により検知された運転騒音の音波と概ね逆位相の音波を前記発音部から放射することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記発音部と前記吹出口との間の運転騒音を検知する補正用検音部を備え、前記補正用検音部により検知された運転騒音のレベルが所定の範囲内に収まるように前記発音部から放射される音波を補正することを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近いことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項5】
前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近く形成され、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部及び前記参照用検音部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記吹出通路の断面が一方向に延びて形成されるとともに気流に沿って分割された複数の区画を有し、前記吹出通路の断面のアスペクト比よりも前記区画の断面のアスペクト比が1に近く形成され、前記複数の区画の一部または全てに対応してそれぞれ前記発音部、前記参照用検音部及び前記補正用検音部を設けたことを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記区画の対向する壁面の間隔が85mm以下であることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項9】
前記区画が前記発音部の下流側で更に分割壁により分割されることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項10】
前記吹出口の風向を可変するルーバーにより前記分割壁を形成したことを特徴とする請求項9に記載の空気調和機。
【請求項11】
前記吹出通路が上流に対して下流の流路面積を拡大した拡幅部を有することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項12】
前記拡幅部と前記吹出口との間の前記吹出通路の流路面積を一定にしたことを特徴とする請求項11に記載の空気調和機。
【請求項13】
前記吹出通路の所定区間の流路面積を一定にしたことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項14】
前記本体筐体が室内の壁面に設置されるとともに前記送風経路内に熱交換器を備え、前記熱交換器と熱交換された調和空気を前記吹出口から送出することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項15】
前記吹出口を上面に開口して前記本体筐体が床面に設置されるとともに、前記送風経路内に塵埃を捕集する集塵部を備え、前記集塵部により塵埃を除去された調和空気を前記吹出口から送出することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項16】
前記吹出口を開閉する可動のパネルを備え、開いた前記パネルによって前記吹出通路が延長されることを特徴とする請求項15に記載の空気調和機。
【請求項17】
前記本体筐体の前後方向の一面に前記吸込口を開口するとともに、前記吹出口の気流の吹出方向を鉛直上方に対して前記吸込口の形成面の方向に傾斜し、鉛直上方に対する傾斜角度を35゜以下にしたことを特徴とする請求項15または請求項16に記載の空気調和機。
【請求項18】
前記吹出口の中央位置から対向する最寄りの室内の側壁までの距離をD、前記吹出口の中央位置と室内の天井面との距離をHとし、100mm<D<600mmの範囲の時に前記傾斜角度をtan-1(D/H)よりも大きくしたことを特徴とする請求項17に記載の空気調和機。
【請求項19】
前記本体筐体の前後方向の一面に前記吸込口を開口するとともに、前記送風経路を流通する気流にイオンを含有させるイオン発生装置を備え、前記吹出口の気流の送出方向が鉛直上方に対して前記吸込口の形成面側に傾斜することを特徴とする請求項15または請求項16に記載の空気調和機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
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【図16】
【図17】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−189282(P2012−189282A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54623(P2011−54623)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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