説明

空気調和機

【課題】DC電圧の充電不足による空気調和機の停止や限流抵抗の焼損を防止する空気調和機を提供すること。
【解決手段】本発明の空気調和機は、交流電源1の電圧を直流電圧に整流する整流用ダイオードと、平滑用コンデンサ8と、平滑用コンデンサ8の初期充電時の突入電流を限流する限流抵抗2と、限流抵抗2に並列接続して短絡と開放の切り替えが可能な充電用リレー3と、充電用リレー3の短絡と開放の切り替えを制御する制御部10と、直流電圧をインバータ制御により駆動する負荷9と、交流電源の電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段11とを備え、ゼロクロス検出手段でゼロクロス点を予め設定された回数連続して検出できない場合、負荷の駆動を停止し、負荷が停止したに充電用リレーを開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突入電流抑制回路を有する空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機において、交流電源の電圧を直流電圧に整流するコンバータ装置では、起動時の平滑用コンデンサの初期充電時の大きな突入電流により、整流用ダイオード等の整流回路が破損することを防止するために、充電回路に限流抵抗と短絡と開放を切り替えることができる充電用リレーを並列接続している。図5は従来の空気調和機の電源回路の構成図である。
【0003】
そして、起動時は充電用リレーを開放することで限流抵抗を介して平滑用コンデンサを充電して整流回路が破損することを防止し、平滑用コンデンサに十分なDC電圧が充電されて突入電流による整流回路破損の恐れがなくなったら充電用リレーを短絡し、通常の運転を行うようにしていた。
【0004】
また、電源の瞬時停電や瞬時低電圧(以下、瞬停)が発生した場合は、DC電圧が平滑用コンデンサと、平滑用コンデンサに充電されたDC電圧をインバータ制御により駆動する圧縮機やファンモータ等の負荷による時定数で放電することから、DC電圧を検出し、DC電圧が所定の値まで下がると、充電用リレーを開放することで、瞬停復帰時に限流抵抗を介さずに大きな突入電流が流れることを防止していた。
【0005】
また、DC電圧の絶対値ではなく、設定された差分値を検出することにより、差分値が大きい場合に充電用リレーを開放することで、大きな突入電流が流れることを防止していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−74884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成のように、平滑されたDC電圧を用いて圧縮機やファンモータ等の負荷を駆動するインバータ式の空気調和機において、負荷が駆動している状態で充電用リレーを開放し、電源電圧が瞬停復帰した場合に、負荷の消費電力を賄うために限流抵抗に大電流が流れることとなってしまい、DC電圧の充電不足による空気調和機の停止や限流抵抗の焼損が発生してしまうという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、DC電圧の充電不足による空気調和機の停止や限流抵抗の焼損を防止する空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の空気調和機は、交流電源の電圧を直流電圧に整流する整流用ダイオードと、平滑用コンデンサと、平滑用コンデンサの初期充電時の突入電流を限流する限流抵抗と、限流抵抗に並列接続して短絡と開放の切り替えが可能な充電用リレーと、充電用リレーの短絡と開放の切り替えを制御する制御部と、直流電圧をインバータ制御により駆動する負荷と、交流電源の電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段とを備え、ゼロクロス検出手段でゼロクロス点を予め設定された回数連続し
て検出できない場合、負荷の駆動を停止し、負荷が停止した後に充電用リレーを開放することにより、充電用リレー開放時における限流抵抗を焼損させることなく、または限流抵抗を介して平滑コンデンサに充電することにより生じる充電不足による運転停止を発生させることなく、瞬停復帰時の突入電流を抑制し、さらに再起動時における冷凍サイクルの不均衡も防止することで、安定した空気調和機の起動を可能とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、DC電圧の充電不足による空気調和機の停止や限流抵抗の焼損を防止する空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における空気調和機の電源回路の構成図
【図2】同実施の形態1における制御のフロー図
【図3】本発明の実施の形態2における制御のフロー図
【図4】本発明の実施の形態3における制御のフロー図
【図5】従来の空気調和機の電源回路の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明の空気調和機は、交流電源の電圧を直流電圧に整流する整流用ダイオードと、平滑用コンデンサと、平滑用コンデンサの初期充電時の突入電流を限流する限流抵抗と、限流抵抗に並列接続して短絡と開放の切り替えが可能な充電用リレーと、充電用リレーの短絡と開放の切り替えを制御する制御部と、直流電圧をインバータ制御により駆動する負荷と、交流電源の電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段とを備え、ゼロクロス検出手段でゼロクロス点を予め設定された回数連続して検出できない場合、負荷の駆動を停止し、負荷が停止した後に充電用リレーを開放することにより、充電用リレー開放時における限流抵抗を焼損させることなく、または限流抵抗を介して平滑コンデンサに充電することにより生じる充電不足による運転停止を発生させることなく、瞬停復帰時の突入電流を抑制し、さらに再起動時における冷凍サイクルの不均衡も防止することで、安定した空気調和機の起動を可能とする。
【0013】
第2の発明の空気調和機は、特に第1の発明において、予め設定されているゼロクロス点の検出回数は、負荷の運転状況に応じて変更することにより、負荷の運転状況が小さいときには予め設定するゼロクロス点の検出回数を多く設定し、負荷の運転状況が大きいときには予め設定するゼロクロス点の検出回数を少なく設定することで、負荷の運転状況が小さいときにはできるだけ運転を継続することができ、負荷の運転状況が大きいときには早く運転を停止することができる。例えば、圧縮機の低回転時には連続回数を多く設定し、圧縮機の高回転時には連続回数を少なく設定する。なお、負荷の運転状況が小さい時と大きい時との判断は、負荷の種別に応じて異なるため、一義的に決定できるものではないが、予め判断の基準となる閾値よりも大きいか小さいかによって判断する。
【0014】
第3の発明の空気調和機は、特に第1または第2の発明において、ゼロクロス点を予め設定された回数連続して検出できない場合、負荷の駆動を停止し、負荷が停止した後に充電用リレーを開放し、さらにその後、ゼロクロス点を予め設定された回数連続して検出した場合、充電用リレーを短絡し、その後、負荷の駆動を開始することにより、充電用リレー開放時における限流抵抗を焼損させることなく、または限流抵抗を介して平滑コンデンサに充電することにより生じる充電不足による運転停止を発生させることなく、瞬停復帰時の突入電流を抑制することが可能となる。
【0015】
第4の発明の空気調和機は、特に第1または第2の発明において、ゼロクロス点を予め設定された回数連続して検出できない場合、負荷の駆動を停止し、負荷が停止した後に充
電用リレーを開放し、さらにその後、負荷の駆動を停止してから所定時間が経過し、かつ、ゼロクロス点の検出を予め設定された回数連続して検出した場合、充電用リレーを短絡し、その後、負荷の駆動を開始することにより、充電用リレー開放時における限流抵抗を焼損させることなく、または限流抵抗を介して平滑コンデンサに充電することにより生じる充電不足による運転停止を発生させることなく、瞬停復帰時の突入電流を抑制し、さらに再起動時における冷凍サイクルの不均衡も防止することで、安定した空気調和機の起動を可能とする。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における空気調和機の電源回路の構成図である。
【0018】
図1において、交流電源1の電圧を整流用ダイオード4〜7によって直流電圧に整流し、平滑用コンデンサ8によって前記直流電圧を平滑する。
【0019】
そして、平滑された直流電圧(以下、DC電圧)をインバータ制御することにより、圧縮機やファンモータ等の負荷9を駆動する。
【0020】
また、平滑用コンデンサ8の初期充電時の突入電流を限流するために、限流抵抗2と、限流抵抗2に並列接続する短絡および開放の切り替えが可能な充電用リレー3を充電回路に接続し、起動時は充電用リレー3を開放することで限流抵抗2を介して平滑用コンデンサ8を充電して整流回路が破損することを防止する。
【0021】
また、平滑用コンデンサ8に十分なDC電圧が充電されて、突入電流による整流回路破損の恐れがなくなったら、充電用リレー3を短絡し、通常の運転を行う。また、様々な制御を行う制御部10を有する。
【0022】
また、交流電源1から供給される交流電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段11を設け、制御部10でゼロクロス検出手段11で検出したゼロクロス点の回数が予め設定された回数を連続して検出することができなかった場合は、DC電圧の降下が予測されるため、圧縮機やファンモータ等の負荷9を停止し、負荷が停止した後で充電用のリレーを開放する構成としている。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態1における瞬停時の突入電流を抑制する制御のフロー図である。
【0024】
まず、ゼロクロス検出手段11でゼロクロス点を検出し(S21)、ゼロクロス点の検出回数が、予め設定された回数を連続して検出することができたかどうか判定(S22)する。なお、予め設定された回数は、圧縮機の回転数に応じて可変とし、低回転時には多く設定し、高回転時には少なく設定する。
【0025】
そして、ゼロクロス点の検出回数が予め設定された回数以上に連続して検出した場合は、圧縮機やファンモータ等の負荷が駆動中かどうかを判定し(S23)、駆動中でないと判定された場合には充電用リレー3を開放(S25)し、駆動中であると判定された場合には、圧縮機やファンモータ等の負荷を停止(S24)し、負荷が停止した後で充電用リレー3を開放(S25)する。
【0026】
このことにより、瞬停発生時に負荷9が駆動している状態で平滑用コンデンサ8への充
電電流抑制のため充電用リレー3を開放し、交流電源1が瞬停復帰した場合に、負荷9が消費する電力を賄うための大電流が限流抵抗2に流れることを防ぎ、限流抵抗2を焼損させることを防止することが可能となる。
【0027】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における瞬停時の突入電流を抑制する制御のフロー図である。なお、本実施の形態2における電源回路の構成および制御フローの一部は、実施の形態1と同じであるので、実施の形態1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
図3において、負荷が停止した後で充電用リレーを開放(S25)した後、ゼロクロス検出手段でゼロクロス点を検出し(S26)、ゼロクロス点の検出回数が、予め設定された回数を連続して検出することができたかどうか判定(S27)し、検出できていないと判定された場合には充電用リレーを開放した状態を継続し、ゼロクロス点が検出できた判定された場合には、まず充電用リレー3を短絡(S28)し、その後で、瞬停発生前の圧縮機と室外ファンモータ等の負荷9が駆動中か判定(S23)時に、駆動中であると判定された場合には、前記負荷9を駆動する(S29)構成としている。
【0029】
このことにより、瞬停復帰後に前記充電用リレー3が開放の状態で負荷9が復帰し駆動することで負荷9が消費する電力を賄うための大電流が限流抵抗2に流れることを防ぎ、限流抵抗2を焼損させることを防止することが可能となる。
【0030】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3における瞬停時の突入電流を抑制する制御のフロー図である。なお、本実施の形態3における電源回路の構成および制御フローの一部は、実施の形態1および2と同じであるので、実施の形態1および2と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0031】
図4において、負荷が停止した後で充電用リレーを開放(S25)した後、ゼロクロス検出手段でゼロクロス点を検出し(S26)、検出したゼロクロス点が予め設定された回数を連続して検出できている、かつ負荷9が停止してから設定値以上の時間が経過しているかどうか判定(S37)し、ゼロクロス点が検出できていないと判定された場合、またはゼロクロス点は検出されているがあるが負荷停止から設定値以上の時間が経過していないと判定された場合には充電用リレーを開放した状態を継続し、ゼロクロス点が検出されている、かつ前記負荷9停止から設定値以上時間が経過していると判定された場合には、まず充電用リレー3を短絡(S28)し、その後で、瞬停発生前の圧縮機や室外ファンモータ等の負荷9が駆動中か判定(S23)時に、駆動中であると判定された場合には、前記負荷9を駆動する(S29)構成としている。
【0032】
このことにより、瞬停復帰後に前記充電用リレー3が開放の状態で負荷9が復帰し駆動することで負荷9が消費する電力を賄うための大電流が限流抵抗2に流れることを防ぎ、限流抵抗2を焼損させることを防止することが可能となるとともに、圧縮機や室外ファンモータといった負荷9が停止することによる再起動時の冷凍サイクルの不均衡も防ぎ、安定した空気調和機の起動を可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように本発明は、突入電流抑制回路を有する全ての空気調和機に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 交流電源
2 限流抵抗
3 充電用リレー
4 整流用ダイオード
5 整流用ダイオード
6 整流用ダイオード
7 整流用ダイオード
8 平滑用コンデンサ
9 負荷
10 制御部
11 ゼロクロス検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の電圧を直流電圧に整流する整流用ダイオードと、平滑用コンデンサと、前記平滑用コンデンサの初期充電時の突入電流を限流する限流抵抗と、前記限流抵抗に並列接続して短絡と開放の切り替えが可能な充電用リレーと、前記充電用リレーの短絡と開放の切り替えを制御する制御部と、直流電圧をインバータ制御により駆動する負荷と、前記交流電源の電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段とを備え、前記ゼロクロス検出手段でゼロクロス点を予め設定された回数連続して検出できない場合、前記負荷の駆動を停止し、前記負荷が停止した後に充電用リレーを開放することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
予め設定されているゼロクロス点の検出回数は、前記負荷の運転状況に応じて変更することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
ゼロクロス点を予め設定された回数連続して検出できない場合、前記負荷の駆動を停止し、前記負荷が停止した後に充電用リレーを開放し、さらにその後、ゼロクロス点を予め設定された回数連続して検出した場合、前記充電用リレーを短絡し、その後、前記負荷の駆動を開始することを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
ゼロクロス点を予め設定された回数連続して検出できない場合、前記負荷の駆動を停止し、前記負荷が停止した後に充電用リレーを開放し、さらにその後、前記負荷の駆動を停止してから所定時間が経過し、かつ、ゼロクロス点の検出を予め設定された回数連続して検出した場合、前記充電用リレーを短絡し、その後、前記負荷の駆動を開始することを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−197998(P2012−197998A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63803(P2011−63803)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】