説明

空気調和温水機器システム

【課題】室内ユニットと温水ユニットを備え、温水ユニットの能力を向上できる空気調和温水機器システムを提供する。
【解決手段】室外ユニット100は、冷媒と空気との間で熱交換が行われる室外熱交換器105と、室外熱交換器105と接続され冷媒を圧縮する圧縮機101とを有する。室内ユニット200は室外熱交換器105および圧縮機101と直列に接続され、冷媒と空気との間で熱交換が行われる室内熱交換器201を有する。温水ユニット300は室内熱交換器201と並列に接続され、冷媒と湯水との間で熱交換が行われる水−冷媒熱交換器311を有する。制御部は、室外ユニット100、室内ユニット200及び温水ユニット300を制御して室内ユニット200の暖房能力および温水ユニット300が前記湯水に与える加熱能力を制御し、加熱能力が所定値よりも低いときに、室内ユニット200の暖房能力を低下させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和温水機器システムに関し、特に室内ユニットの暖房能力および温水ユニットの加熱能力の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には空気調和機と床暖房とが一つの室外ユニットを共用するシステムが開示されている。かかる特許文献1における課題は、空気調和機の室内ユニットから吹き出される風が居住者に当たることにより居住者が感じるドラフト感や、室内ユニットのファンの送風音により、ドラフト感がなく静かであるという床暖房のメリットが損なわれることである。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の技術では、室内の温度が所定の温度に達した以降に、室内ユニットの風量を下げる制御が行われる。
【0004】
なお、本願に関連する技術として特許文献2,3が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−55445号公報
【特許文献2】特開2000−46401号公報
【特許文献3】特開2006−38358号公報
【特許文献4】特開2005−16881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、室温がある程度上昇した時点で室内機の風量を落とす制御をすれば、室内の空調負荷が大きい場合に室温が所望の割合で上昇せず、床暖房側に能力が室内機からシフトできずに床温が上がりにくい。
【0007】
他方、室内の温度が低くても床温度が高いほうが、ユーザにとっては快適である。
【0008】
そこで、本発明は、室内ユニットと温水ユニットを備える空気調和温水機器システムにおいて、温水ユニットの能力を向上できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第1の態様は、冷媒と空気との間で熱交換が行われる室外熱交換器(105)と、前記室外熱交換器と接続され前記冷媒を圧縮する圧縮機(101)とを有する室外ユニット(100)と、前記室外熱交換器および前記圧縮機と直列に接続され前記冷媒と空気との間で熱交換が行われる室内熱交換器(201)を有する室内ユニット(200)と、前記室内熱交換器と並列に接続され、前記冷媒と湯水との間で熱交換が行われる水−冷媒熱交換器(311)を有する温水ユニット(300)と、前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記温水ユニットを制御して前記室内ユニットの暖房能力および前記温水ユニットが前記湯水に与える加熱能力を制御し、前記加熱能力が所定値よりも低いときに、前記室内ユニットの前記暖房能力を低下させる制御を行う制御部(150,250,350)とを備える。
【0010】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第2の態様は、第1の態様にかかる空気調和温水機器システムであって、前記室内ユニット(200)は前記室内熱交換器(201)へと空気を送る室内ファン(202)を備え、前記制御部(250)は前記室内ファンの回転速度を低下させて前記暖房能力を低下させる。
【0011】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第3の態様は、第1の態様にかかる空気調和温水機器システムであって、前記制御部(150,250,350)は前記室内ユニット(200)が設けられる室内の設定温度に基づいて前記室外ユニット(100)及び前記室内ユニットを制御し、前記加熱能力が前記所定値よりも低いときに、前記設定温度を低下させて前記暖房能力を低下させる。
【0012】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第4の態様は、第1から第3の何れか一つの態様にかかる空気調和温水機器システムであって、前記制御部(150,250,350)は、前記湯水の温度の時間に対する上昇割合が第2所定値よりも小さいときに、前記加熱能力が前記所定値よりも低いと判断する。
【0013】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第5の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる空気調和温水機器システムであって、前記制御部(150,250,350)は前記水−冷媒熱交換器(311)へと前記冷媒を供給し始めてから所定期間が経過した後の前記湯水の前記温度が第3所定値よりも小さいときに、前記加熱能力が前記所定値よりも低いと判断する。
【0014】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第6の態様は、第1から第3の何れか一つの態様にかかる空気調和温水機器システムであって、前記制御部(150,250,350)は、前記水−冷媒熱交換器(311)における前記冷媒の凝縮温度が第4所定値よりも小さいときに、前記加熱能力が前記所定値よりも低いと判断する。
【0015】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる空気調和温水機器システムであって、前記制御部(150,250,350)は前記加熱能力が前記所定値よりも小さいかどうかを複数の時点で判断し、その各々の時点で肯定的な判断がなされれば、その都度、前記暖房能力を低下させる制御を行う。
【0016】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第8の態様は、第1乃至第7のいずれか一つの態様にかかる空気調和温水機器システムであって、前記室内ユニット(200)は複数あって、前記複数の前記室内ユニットの少なくとも一つに優先が割り当てられ、前記複数の前記室内ユニットのうち、前記優先が割り当てられなかった室内機の少なくとも一つに非優先が割り当てられ、前記制御部(150,250,350)は、前記加熱能力が前記所定値よりも低いときに、前記非優先が割り当てられた前記室内ユニットの前記暖房能力を低下させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第1の態様によれば、同じ能力を出すための凝縮温度が室内熱交換器よりも水−冷媒熱交換器の方が低いので室内ユニット側で大きな暖房能力が出やすいところ、温水ユニットの加熱能力が低いときに室内ユニットの暖房能力を低減させるので、これに応じて温水ユニットの加熱能力が増大して湯水の温度の上昇を早めることができる。換言すれば、温水ユニットの加熱能力を増大させるのに室外ユニットの能力を増大させる必要が無い。しかも、室内熱交換器と水−冷媒熱交換器が並列接続される従来の冷媒回路を採用しているので、製造コストも抑制できる。
【0018】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第2の態様によれば、室内ファンの回転速度を低下させることで室内ユニットの暖房能力を低下させているので、制御が簡単である。
【0019】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第3の態様によれば、設定温度を低下させることで室内ユニットの暖房能力を低下させているので、制御が簡単である。
【0020】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第4の態様によれば、温水ユニットの出力(温水の温度)に基づいているので、より直接に必要な能力を与えることができる。
【0021】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第5の態様によれば、一定時間経過後の温度の値に基づいて制御されるので、上昇割合を算出する処理が不要であり、処理が簡単である。
【0022】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第6の態様によれば、請求項4と比較して、上昇割合を算出する必要がなく処理が容易である。
【0023】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第7の態様によれば、より細かく調整を行うことができる。
【0024】
本発明にかかる空気調和温水機器システムの第8の態様によれば、優先される室内ユニットの暖房能力を維持しつつも、温水ユニットの加熱能力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】空気調和温水機器システムの概念的な構成の一例である。
【図2】空気調和温水機器システムの概念的な構成の一例である。
【図3】制御部の概念的な構成の一例である。
【図4】温水の時間に対する変化の一例を示す図である。
【図5】制御部の概念的な構成の他の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<空気調和温水機器システム>
図1に例示するように、空気調和温水機器システムは室外ユニット100と少なくとも一つの室内ユニット200と少なくとも一つ以上の温水ユニット300とを備えている。
【0027】
図1の例示では、2つの室内ユニット200と1つの温水ユニット300とが設けられている。一つの室内ユニット200と室外ユニット100とは液冷媒配管411およびガス冷媒配管421を介して相互に接続されている。他の一つの室内ユニット200と室外ユニット100とは液冷媒配管412およびガス冷媒配管422を介して相互に接続されている。室外ユニット100と各室内ユニット200とは互いに連動して動作して、各室内ユニット200が設けられる室内の空気(例えば空気の対流、温度または湿度)を調整することができる。
【0028】
温水ユニット300と室外ユニット100とは液冷媒配管413およびガス冷媒配管423を介して相互に接続されている。室外ユニット100と温水ユニット300とは互いに連動して動作して湯水(水を含む)を温める。ここでは温水ユニット300は例えば床暖房に用いられる。図1の例示では、温められた湯水は温水配管43を介して床暖房パネル320に供給されて室内の床を暖める。
【0029】
かかる空気調和温水機器システムでは、空気調和機(室外ユニット100と室内ユニット200の一組)と温水機器(室外ユニット100と温水ユニット300の一組)とが一つの室外ユニット100を共用しているので、システムの規模およびコストを低減することができる。
【0030】
図2を参照して、空気調和温水機器システムのより詳細な構成の一例について説明する。各室内ユニット200は室内熱交換器201と室内ファン202とを備えている。一つの室内ユニット200に属する室内熱交換器201の両端にはそれぞれ液冷媒配管411とガス冷媒配管421とが接続されている。他の一つの室内ユニット200に属する室内熱交換器201の両端にはそれぞれ液冷媒配管412とガス冷媒配管422とが接続されている。これらの室内熱交換器201に冷媒が流れると冷媒と空気との間で熱交換が行われる。例えばガス冷媒配管を流れる気体状態の冷媒は、室内熱交換器201において空気へと放熱することにより液体状態へと変わって、その後、液冷媒配管を流れる。これにより空気へと放熱し、暖房運転が行われる。このとき室内熱交換器201は凝縮器として機能する。冷媒が逆に流れる場合には冷媒が室内熱交換器201において空気から熱を吸収し、冷房運転が行われる。このとき室内熱交換器201は蒸発器として機能する。
【0031】
室内ファン202は室内熱交換器201へと空気を送るとともに、熱交換された空気を室内へと吹き出させる。これにより暖かい空気又は冷たい空気が室内に供給される。なお冷媒が室内熱交換器201を流れていないときにも室内ファン202を回転させることによって、単に室内の空気を循環することもできる。
【0032】
温水ユニット300は水−冷媒熱交換器311と循環ポンプ313とを備えている。
【0033】
水−冷媒熱交換器311の両端にはそれぞれ液冷媒配管413及びガス冷媒配管423が接続される。また水−冷媒熱交換器311には温水配管43も接続されている。水−冷媒熱交換器311において、冷媒と湯水(水も含む)との間で熱交換が行われる。より詳細には、気体状態の冷媒がガス冷媒配管423から水−冷媒熱交換器311へ流入される。水−冷媒熱交換器311において冷媒は温水配管43から流入される湯水へと放熱する。つまり水−冷媒熱交換器311は凝縮器として機能する。そして、当該放熱によって冷媒は液体状態に変わって液冷媒配管413を流れる。かかる放熱によって湯水が温められる。
【0034】
温められた湯水は例えばタンク312へと供給される。タンク312は例えば膨張タンクであって、温水配管43において設けられ、温度上昇に起因する湯水の体積膨張を吸収する。循環ポンプ313は例えばタンク312の出口側で温水配管43に設けられて、湯水を循環させる。また図2の例示では温水配管43に往きヘッダ314と戻りヘッダ316が設けられている。往きヘッダ314は温水配管43を複数の温水配管に分岐するための部品である。図2の例示では往きヘッダ314は循環ポンプ313の出力側に設けられて、一つの温水配管を4つの温水配管に分岐している。かかる4つの温水配管の各々には熱動弁315が設けられている。熱動弁315はそれぞれ温水配管の開閉を制御する。
【0035】
図2の例示では4つの温水配管のうち2つの温水配管がそれぞれ2つの床暖房パネル320を通る。このとき湯水が床へと放熱して床を暖める。残りの2つの温水配管についてはその接続先が図示されていないが、例えばパネルラジエータなどの機器に用いられてもよい。そして、これらの4つの温水配管が戻りヘッダ316へと接続される。戻りヘッダ316は複数の温水配管を一つの温水配管に合流させるための部品である。図2の例示では床を通った2つの温水配管とそれ以外の2つの温水配管が戻りヘッダ316によって1本の温水配管43に合流される。そして例えば床暖房パネル320やパネルラジエータなどで冷やされた湯水が再び水−冷媒熱交換器311へと供給されて暖められる。
【0036】
なお、図2の例示では、戻りヘッダ316と水−冷媒熱交換器311との間で水抜き栓317が設けられている。これにより、古くなった湯水を排出することができる。また新しい湯水は例えばタンク312に供給口を設け、かかる供給口からタンク312を経由して温水配管43へと供給されてもよい。
【0037】
室外ユニット100は室内ユニット200及び温水ユニット300の熱源として機能する。室外ユニット100は圧縮機101と四方弁104と室外熱交換器105と室外ファン106と複数の膨張弁107とを備えている。
【0038】
圧縮機101と四方弁104とはガス冷媒配管42に設けられる。圧縮機101は吸入口から吸入される低圧の冷媒を圧縮し、圧縮された高圧の冷媒を吐出口から吐出する。なお図2の例示では、圧縮機101の吸入口側にはアキュムレータ102が設けられる。アキュムレータ102は余剰な冷媒を蓄えることができる。また図2の例示では圧縮機101の吐出側にはマフラ103が設けられている。マフラ103は冷媒の流れに生じる脈動を抑制することができる。マフラ103の出力側およびアキュムレータ102の入力側には四方弁104が設けられる。四方弁104は、圧縮機101の吐出口をガス冷媒配管421〜423に接続し、その吸入口を室外熱交換器105にそれぞれ接続した第1状態(図2の状態)と、その吐出口を室外熱交換器105に接続し、その吸入口をガス冷媒配管421〜423に接続した第2状態とを切り替える。なおガス冷媒配管421〜423はガス冷媒配管42に合流しており、このガス冷媒配管42が四方弁104に接続される。
【0039】
室外熱交換器105の両端にはそれぞれガス冷媒配管42と液冷媒配管41が接続される。室外熱交換器105の内部において冷媒と空気と間で熱交換が行われる。例えばガス冷媒配管42を流れる気体状態の冷媒が室外熱交換器105において空気へと放熱することにより液体状態へと変わって、その後、液冷媒配管41を流れる。このとき室外熱交換器105は凝縮器として機能する。一方、冷媒が逆に流れる場合には、室外熱交換器105において冷媒が空気から吸熱する。このとき室外熱交換器105は蒸発器として機能する。なお液冷媒配管41は液冷媒配管411〜413に分岐する。
【0040】
膨張弁107はそれぞれ液冷媒配管411〜413に設けられている。膨張弁107は冷媒を例えば絞り膨張させる。また図2の例示では、液冷媒配管411〜413の各々にフィルタ108が設けられている。フィルタ108は例えば冷媒中に含まれる氷を除去することができる。
【0041】
図2の例示では液冷媒配管411〜413の各々に液閉鎖弁109が設けられ、ガス冷媒配管421〜423の各々にガス閉鎖弁110が設けられている。液閉鎖弁109およびガス閉鎖弁110はそれぞれ配管の開閉を制御する。例えば一つの室内ユニット200を動作させない場合は、液冷媒配管411に設けられる液閉鎖弁109およびガス冷媒配管421に設けられるガス閉鎖弁110を閉じる制御が実行されるとよい。
【0042】
本空気調和温水機器システムにおいて、室内熱交換器201の一つと圧縮機101と室外熱交換器105の接続態様について着目すると、これらは互いに直列に接続される。一方、水−冷媒熱交換器311と圧縮機101と室外熱交換器105の接続態様について着目すると、これらは互いに直列に接続される。また室内熱交換器201の一つと水−冷媒熱交換器311との接続態様について着目すると、これらは互いに並列に接続されている。このような構造は従来から用いられており、本実施の形態にかかる空気調和温水機器システムを実現するために専用の部材を要しない。よって製造コストの増大を抑制できる。
【0043】
次に、本空気調和温水機器システムにおいて、各室内ユニット200において暖房運転を行い温水ユニット300において床暖房運転を行う場合の冷媒の流れについて説明する。四方弁104は第1状態(図2の状態)を採用する。圧縮機101は冷媒を圧縮して、圧縮後の冷媒を室内熱交換器201及び水−冷媒熱交換器311へと供給する。冷媒は室内熱交換器201及び水−冷媒熱交換器311において放熱して液体状態の冷媒へと変わる。その後、冷媒が膨張弁107によって絞り膨張されて室外熱交換器105へと流れ、室外熱交換器105において熱を吸収して気体状態の冷媒に変わる。この気体状態の冷媒が再び圧縮機101で圧縮され、上述した経路を循環する。
【0044】
なおここでは、室内ユニット200もしくは、温水ユニット300が暖房運転する際には、他の室内ユニット200は冷房運転及び除湿運転を行わない。室内ユニット200が冷房運転或いは除湿運転を行う場合には、四方弁104は第1状態に切り替えられ、停止中の他の室内ユニット及び温水ユニットに対応する膨張弁107は閉じられて、冷媒の流れを遮断する。
【0045】
さて、互いに異なる室外ユニットに接続された室内ユニット200および温水ユニット300を仮定する。室内ユニット200が発揮する暖房能力と温水ユニット300が発揮する加熱能力(湯水に与える加熱能力)とを互いに同一にしようとすれば、室内熱交換器201における冷媒の凝縮温度を、水−冷媒熱交換器311における冷媒の凝縮温度よりも低く制御する必要がある。かかる制御は例えば室内熱交換器201へと供給する冷媒の圧力を水−冷媒熱交換器311へと供給する冷媒の圧力よりも低くすることで実現される。このとき室内熱交換器201における冷媒の凝縮温度は例えば摂氏40℃程度であり、水−冷媒熱交換器311は例えば摂氏50度程度である。かかる凝縮温度の相違は例えば次の理由による。即ち冷媒と水との熱交換は冷媒と空気との間の熱交換に比べて効率が低く、しかも熱交換後の空気が直接に室内に供給されて暖房運転が行われるのに対し、熱交換後の湯水が床パネルで再度熱交換されて床暖房運転が行われる。さらに床パネルにおける湯水の熱交換は効率がそれほど高くない。
【0046】
しかしながら、一つの室外ユニット100を共用する本空気調和温水機器システムにおいては、室内熱交換器201および水−冷媒熱交換器311における冷媒の凝縮温度はほぼ等しい。よって、室内ユニット200が発揮する暖房能力は温水ユニット300が発揮する加熱能力に比べて高くなりやすい。よって、空気調和温水機器システムにおいて例えば室内ユニット200と温水ユニット300との運転を同時に開始すると、室内ユニット200において出力される加熱能力が大きく、温水の温度が上がりにくい。床暖房は空気調和機よりも居住者にとって暖房快適性に優れているので、優先的に床暖房を行うことが望ましい。この点に鑑みて本空気調和温水ユニットは以下で例示する制御部によって後述する制御を実行する。
【0047】
<制御部>
室外ユニット100、室内ユニット200および温水ユニット300はそれぞれ制御部を備えており、これらの制御部が相互に通信する。図3は通信に関する各制御部の接続関係を例示している。例えば制御部150は室外ユニット100に設けられ、各制御部250は各室内ユニット200に設けられ、制御部350は温水ユニット300に設けられる。制御部150,250,350はそれぞれ通信部151,251,351を有している。これらは有線または無線によって相互に通信可能に接続されている。図2の例示では、制御部150,250,350はディジーチェーンによって互いに接続されている。これにより新たな室内ユニット又は温水ユニットを設けられる場合に新たな制御部の接続を容易にできる。
【0048】
制御部150は室外ユニット100に設けられた各駆動要素(圧縮機101、四方弁104、室外ファン106、膨張弁107及び閉鎖弁109,110)を制御する。制御部250は室内ユニット200に設けられた駆動要素(室内ファン202)を制御する。制御部350は温水ユニット300に設けられた各駆動要素(循環ポンプ313、熱動弁315)を制御する。
【0049】
また例えば制御部250,350にはそれぞれリモートコントローラ260,360が接続される。リモートコントローラ260には、例えば運転開始/停止の切り替え、冷房/暖房/除湿/送風の切り替え、室内温度の設定を入力する入力部などが設けられる。リモートコントローラ360には例えば運転開始/停止の切り替え、温水温度(床暖房温度)の高低の設定を入力する入力部などが設けられる。
【0050】
これらの入力部はユーザによって操作される。そして、この入力部の操作によって当該操作に応じた情報が制御部250,350に送信される。制御部250,350はこれを制御部150に送信する。制御部150は受け取った情報に基づいて室外ユニット100の各構成要素を制御するとともに室内ユニット200及び温水ユニット300に制御信号を送信する。制御部250は制御信号に応じて室内ファン202を制御し、制御部350は制御信号に応じて温水ユニット300の各構成要素を制御する。このような制御によって上述した空調運転及び床暖房運転が実行される。
【0051】
制御部150は温水ユニットの加熱能力をモニタすることができる。図2の例示では、温水ユニット300には温水配管43を流れる湯水の温度を測定する戻り水温センサー318が設けられている。より詳細な一例として、戻り水温センサー318は床暖房パネル320よりも冷媒の下流側で温水配管43に設けられて、温水配管43を流れる湯水の温度を測定している。温水ユニットが発揮する加熱能力と、湯水の温度の時間に対する上昇割合との間には正の相関関係があるので、湯水の温度に基づいて温水ユニットの加熱能力を把握することができる。
【0052】
そして、温水ユニット300の加熱能力が所定値を下回るときに、制御部150は室内ユニット200の暖房能力を低下させる。なお加熱能力が所定値と一致する場合は、分岐のいずれを採用してもよい。つまりこの場合は暖房能力を低下させてもよく、低下させなくてもよい。この点は、比較値(上述の例では加熱能力)と所定値との大小関係に基づいて行う他の制御についても同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
【0053】
以下、より詳細な一例について説明する。戻り水温センサー318が検出した検出温度は制御部350に出力される。制御部350は検出温度を制御部150に送信する。制御部150は例えば図4を参照して、時刻t2における温水の温度T1と、時刻t3における温水の温度T2とを用いて、時刻t2,t3の間における温水の温度の上昇割合(=(T2−T1)/(t3−t2))を算出する。なお図4は温水ユニット300の能力が高い場合および低い場合の、温水の温度の時間に対する変化を表している。図4の例示では、十分な能力が発揮されたときの温度の変化が破線で表されている。また図4の例示では時刻t1において温水ユニット300が運転を開始し、時刻t1以降において温水の温度が時間の経過と共に上昇する。図4の例示から理解できるように、温水ユニット300が発揮する加熱能力が不足していれば、温水の温度が目標値T*に至るまでの時間が長い。
【0054】
さて制御部150は、算出した上昇割合が基準値を下回るとき(換言すれば温水ユニット300の加熱能力が所定値を下回るとき)には、例えば次の方法により、少なくとも一つの室内ユニット200の暖房能力を低下させる。制御部150は室内ユニット200の暖房能力を低下させる制御信号を制御部250に送信する。当該制御信号を受け取った制御部250は例えば室内ファン202の回転速度を低下させる。これにより、室内ユニット200の暖房能力を低下させることができる。これに伴って、温水ユニット300の加熱能力が増大する。この理由を簡単に言えば次のとおりとなる。室外ユニット100の能力は室内ユニット200および温水ユニット300の能力の和であるところ、室外ユニット100の能力はほとんど変わらないからである。よって室内ユニット200の能力低下に伴って温水ユニット300の能力が増大する。即ち水−冷媒熱交換器311の出口側の温水の温度の上昇割合が増大する。
【0055】
以上のように、共通の室外ユニット100に接続された室内ユニット200および温水ユニット300においては、温水ユニット300に比して室内ユニット200の能力が大きくなりやすいところ、本空気調和温水機器システムによれば温水ユニット300の能力を優先して増大させることができる。換言すれば、温水ユニット300の加熱能力を増大させるのに室外ユニット100の能力を増大させる必要が無い。
【0056】
また室内ファンの回転速度を低下させることで室内ユニットの暖房能力を低下させれば簡単な制御で室内ユニットの暖房能力を低下することができる。
【0057】
また湯水の温度の上昇割合に基づいて加熱能力をモニタすれば、加熱能力は温水ユニット300の出力(温水の温度)に基づいているので、高い精度でモニタすることができると共により直接に必要な加熱能力を実現することができる。
【0058】
なお、温水ユニット300の加熱能力が所定値を下回るかどうかの判断は制御部150によって行われる必要はなく、制御部250または制御部350によって行われても良い。この点は後述する他の態様にも適用可能であるため繰り返しの説明を避ける。
【0059】
<室内ユニット200の能力を低減させる制御>
制御部150は、温水ユニット300の加熱能力が所定値を下回るときに、室内ユニット200についての設定温度を低下させてもよい。室内ユニット200には例えば室温を検出する室温センサー203が設けられており、例えば制御部150,250は検出された室温が設定温度に近づくように室外ユニット100及び室内ユニット200を制御している。そして上述したように設定温度を低下させると、室内へと与えられる熱量が低下するので、室内ユニット200の暖房能力を低下させることができる。かかる設定温度の低下は例えば室内ファン202の回転速度及び/又は例えば室内ユニット201に繋がる液冷媒配管に設けられた膨張弁107を制御することで実現できる。かかる室内ユニット200の能力の低下に伴って温水ユニット300の能力が増大する。かかる制御に拠れば、設定温度を低下させることで室内ユニットの暖房能力を低下させているので、制御が簡単である。
【0060】
<温水ユニット300の能力のモニタ>
例えば制御部150は、温水ユニット300の加熱能力が所定値を下回ることを次のように判定しても良い。即ち、図4を参照して、温水ユニット300の運転を開始する時刻t1から所定期間が経過した後の時刻t4において、温水の温度が基準値Trefを下回ることを以って温水ユニット300の加熱能力が所定値を下回ると判定する。これによれば、温水の温度の上昇割合を算出する必要がないので処理が容易である。
【0061】
また温水ユニット300の加熱能力は、温水の温度を検出することでモニタされる必要はない。例えば水−冷媒熱交換器311を流れる冷媒の凝縮温度と、温水ユニット300の加熱能力との間には正の相関関係がある。よって、温水ユニット300の加熱能力を冷媒の凝縮温度を用いてモニタしても良い。図2の例示では水−冷媒熱交換器311を流れる冷媒の中間温度を検出する水−冷熱交換温度センサー319が設けられている。かかる冷媒の中間温度は冷媒の凝縮温度とみなすことができるので、水−冷熱交換温度センサー319が検出した温度によって温水ユニット300の加熱能力をモニタすることができる。より詳細には、冷媒の凝縮温度が所定値を下回るときに、温水ユニット300の加熱能力が所定値を下回ると判断する。これによれば、湯水の温度の上昇割合を算出する必要がなく、処理が容易である。
【0062】
かかる水−冷熱交換温度センサー319は、液管温度センサー111とともに、例えば次の制御にも用いることができる。液管温度センサー111は膨張弁107と水−冷媒熱交換器311との間に設けられて液冷媒配管413を流れる冷媒の温度を検出する。検出した温度は例えば制御部150へと入力される。制御部150は水−冷熱交換温度センサー319からの凝縮温度と液管温度センサー111からの温度との差を算出して冷媒の過冷却度を求める。また制御部150には目標過冷却度が入力され、或いは他のパラメータ(例えば温水の目標温度など)から算出され、制御部150,350は過冷却度と目標過冷却度との偏差に基づいて、室外ユニット100および温水ユニット300を制御する。このような制御方法を採用する場合であれば、水−冷熱交換温度センサー319は既存の温度センサーを採用することができる。よって製造コストの増大を招かない。
【0063】
また制御部150は温水ユニット300の加熱能力が所定値よりも小さいかどうかを複数の時点で判断し、その各々の時点で肯定的な判断がなされれば、その都度、室内ユニット200の暖房能力を低下させる制御を行ってもよい。例えば図4を参照して、時刻t2を含む第1期間、第1期間とは別の、時刻t3を含む第2期間、第1及び第2の期間とは別の第3期間の各々において、温水ユニット300の加熱能力をモニタする。そして、第1ないし第3の期間の各々において加熱能力が所定値を下回るときに、室内ユニット200の暖房能力を低減させてもよい。これによって、より細かく調整を行うことができる。
【0064】
<優先/非優先の設定>
図2に例示するように複数の室内ユニット200が設けられている場合に、これらの各々に優先度を設定しても良い。例えば一の室内ユニット200に優先度として「優先」を設定し、他の一の室内ユニット200に優先度として「非優先」を設定する。かかる設定は例えばリモートコントローラ260からユーザによって設定される。例えば図5に例示するように、リモートコントローラ260には、各室内ユニット200に優先度を入力する入力部261が設けられる。そして例えばリモートコントローラ260からの優先度についての設定情報が制御部250を経由して制御部150へと送信され、制御部150は自身に属する記録媒体152に当該設定情報を記録する。なお優先度は必ずしも記録媒体152に記録される必要はなく、制御部250又は制御部350に属する記録媒体に記録されても良い。
【0065】
そして、温水ユニット300の加熱能力が所定値を下回るときに、制御部150,250は優先度として「非優先」に設定された室内ユニット200の暖房能力を低下させる。これにより、温水ユニット300の加熱能力を向上させるとともに、優先度の高い室内ユニット200の暖房能力の低下を回避することができる。換言すれば、優先される室内ユニット200の暖房能力を維持しつつも、温水ユニット300の加熱能力を向上することができる。
【0066】
なお3台以上の室内ユニット200が設けられているときには、例えばそのうち2台を「優先」に設定し、残りの1台を「非優先」に設定してもよく、或いは1台を「優先」に設定し、残りの2台を「非優先」に設定してもよい。すなわち、「優先」を割り当てる台数および「非優先」を割り当てる台数は任意である。また複数の優先度を複数台の室内ユニット200にそれぞれ割り当て、優先度の低い室内ユニット200から順次に暖房能力を低下させてもよい。そして、温水ユニット300の加熱能力が十分な値に達すれば、それよりも優先度の高い室内ユニット200の暖房能力を低下させない。これによって、比較的に優先度の高い室内ユニット200の能力低下を抑制しつつも、温水ユニット300の加熱能力を高めることができる。
【0067】
また床暖房パネル320が設けられた室内と同じ室内に設けられる室内ユニット200に対して、優先度として「優先」(或いは高い優先度)を設定してもよい。床暖房パネル320が設けられる室内は、他の室内に比べて、ユーザによって使用される頻度が高い。本制御によれば、使用頻度の高い室内に対して、比較的高い能力で暖房運転および床暖房運転を行うことができる。
【0068】
かかる優先度の設定は、例えば上述のようにユーザが入力して実現されてもよく、また例えば次のように実現されてもよい。即ち、室内ユニット200及び温水ユニット300が設けられる室内を例えば制御部150に記憶させる。例えば制御部150は室内ユニット200および温水ユニット300の識別番号(例えば通信用アドレス)と、室内を区別する番号とをそれぞれ対応させて記録する。この情報は、ユーザ(或いは作業員)が例えばリモートコントローラ360を操作して入力されるとよい。そして例えば制御部150は温水ユニット300と同じ室内に設けられる室内ユニット200に対して優先度として「優先」(或いは高い優先度)を設定する。
【符号の説明】
【0069】
100 室外ユニット
101 圧縮機
105 室外熱交換器
150,250,350 制御部
200 室内ユニット
201 室内熱交換器
202 室内ファン
300 温水ユニット
311 水−冷媒熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒と空気との間で熱交換が行われる室外熱交換器(105)と、前記室外熱交換器と接続され前記冷媒を圧縮する圧縮機(101)とを有する室外ユニット(100)と、
前記室外熱交換器および前記圧縮機と直列に接続され前記冷媒と空気との間で熱交換が行われる室内熱交換器(201)を有する室内ユニット(200)と、
前記室内熱交換器と並列に接続され、前記冷媒と湯水との間で熱交換が行われる水−冷媒熱交換器(311)を有する温水ユニット(300)と、
前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記温水ユニットを制御して前記室内ユニットの暖房能力および前記温水ユニットが前記湯水に与える加熱能力を制御し、前記加熱能力が所定値よりも低いときに、前記室内ユニットの前記暖房能力を低下させる制御を行う制御部(150,250,350)と
を備える、空気調和温水機器システム。
【請求項2】
前記室内ユニット(200)は前記室内熱交換器(201)へと空気を送る室内ファン(202)を備え、前記制御部(250)は前記室内ファンの回転速度を低下させて前記暖房能力を低下させる、請求項1に記載の空気調和温水機器システム。
【請求項3】
前記制御部(150,250,350)は前記室内ユニット(200)が設けられる室内の設定温度に基づいて前記室外ユニット(100)及び前記室内ユニットを制御し、前記加熱能力が前記所定値よりも低いときに、前記設定温度を低下させて前記暖房能力を低下させる、請求項1に記載の空気調和温水機器システム。
【請求項4】
前記制御部(150,250,350)は、前記湯水の温度の時間に対する上昇割合が第2所定値よりも小さいときに、前記加熱能力が前記所定値よりも低いと判断する、請求項1から3の何れか一つに記載の空気調和温水機器システム。
【請求項5】
前記制御部(150,250,350)は前記水−冷媒熱交換器(311)へと前記冷媒を供給し始めてから所定期間が経過した後の前記湯水の前記温度が第3所定値よりも小さいときに、前記加熱能力が前記所定値よりも低いと判断する、請求項1から3のいずれか一つに記載の空気調和温水機器システム。
【請求項6】
前記制御部(150,250,350)は、前記水−冷媒熱交換器(311)における前記冷媒の凝縮温度が第4所定値よりも小さいときに、前記加熱能力が前記所定値よりも低いと判断する、請求項1から3の何れか一つに記載の空気調和温水機器システム。
【請求項7】
前記制御部(150,250,350)は前記加熱能力が前記所定値よりも小さいかどうかを複数の時点で判断し、その各々の時点で肯定的な判断がなされれば、その都度、前記暖房能力を低下させる制御を行う、請求項1から6のいずれか一つに記載の空気調和温水機器システム。
【請求項8】
前記室内ユニット(200)は複数あって、
前記複数の前記室内ユニットの少なくとも一つに優先が割り当てられ、前記複数の前記室内ユニットのうち、前記優先が割り当てられなかった室内機の少なくとも一つに非優先が割り当てられ、
前記制御部(150,250,350)は、前記加熱能力が前記所定値よりも低いときに、前記非優先が割り当てられた前記室内ユニットの前記暖房能力を低下させる、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の空気調和温水機器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−141113(P2012−141113A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−931(P2011−931)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】