説明

空気調和装置

【課題】多重安全を施して空気調和装置の安全性を向上させることを目的とする。
【解決手段】圧縮機11より吐出される高温高圧冷媒の温度を監視する温度検出装置14の信号を制御部4に入力し、制御部4の動作環境がエアコンON信号あるいは能力変更信号であるにもかかわらず温度検出装置14の信号が変化してない場合、圧縮機11の運転を停止させる構成としてある。これにより、圧縮機11の故障を二つの異なった事象より検出可能となり、多重安全制御が可能な空気調和装置を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用等に用いられる空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばハイブリット車用に使用される電動の圧縮機を備えた自動車用の空気調和装置は、圧縮機を駆動制御するインバータ回路の温度、及びモータに流れる電流値により圧縮機の制御を行うようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は特許文献1に示された従来の自動車用空気調和装置の運転制御を示すもので、あらかじめ想定される運転状態よりモータの回転数と電流値のマップを作成しておき、このマップより現在の運転状態を推定し、その推定結果に基づき圧縮機を運転制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−248730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の自動車用空気調和装置ではインバータ回路の温度が異常に上昇したり、モータに流れる電流値が所定範囲外になると異常として圧縮機の運転を停止することができ、安全性が向上する。しかしながら、例えば、前記温度検出素子がインバータ回路の異常温度上昇を検出してもインバータ回路に当該インバータ回路の温度上昇やモータ電流では検知できない何らかの不具合が生じてモータの回転数が変わらないような場合、そのまま運転を継続して圧縮機の故障を招いたり、装置全体に不安全事象を招く等の課題を有していた。
【0006】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、多重安全を施して空気調和装置の安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するために、圧縮機と圧縮機より吐出された高温高圧冷媒を凝縮させる凝縮器と凝縮器より吐出された冷媒をレシーバにより液化し、膨張弁によって膨張させた冷媒を蒸発器により蒸発させることにより空調を行う車両空調システムであって、圧縮機から吐出される高温冷媒の温度を監視可能な温度検出装置を備え、前記圧縮機にON信号あるいは能力変更信号があるにもかかわらず、前記温度検出装置の出力に変化がない場合に強制的に圧縮機をOFFする制御部を備えた構成としてある。
【0008】
これによって、圧縮機を駆動するモータ・インバータ回路等の駆動部の異常検知では検知できない異常も検出して圧縮機を停止させる多重安全制御の空気調和装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は圧縮機を運転した結果として現れる吐出温度の変化を監視することにより多重安全を構成することができ、空気調和装置の安全性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1における自動車用空気調和装置の構成図
【図2】同実施形態1における制御を示すフローチャート
【図3】同実施形態2における自動車用空気調和装置の構成図
【図4】従来の自動車用空調装置の制御を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、圧縮機と圧縮機より吐出された高温高圧冷媒を凝縮させる凝縮器と凝縮器より吐出された冷媒をレシーバにより液化し、膨張弁によって膨張させた冷媒を蒸発器により蒸発させることにより空調を行う車両空調システムであって、圧縮機から吐出される高温冷媒の温度を監視可能な温度検出装置を備え、前記圧縮機にON信号あるいは能力変更信号があるにもかかわらず、前記温度検出装置の出力に変化がない場合に強制的に圧縮機をOFFする制御部を備えた構成としてあり、圧縮機を駆動するモータ・インバータ回路等の駆動部の異常検知では検知できない異常も検出して圧縮機を停止させ、安全性を大きく向上させることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明における圧縮機がモータ及びモータの回転数を制御するインバータ回路を備え、制御部は前記インバータ回路の温度が所定値より上昇すると異常として圧縮機の運転をOFF状態にする構成としてあり、従来と同様に圧縮機を駆動するモータ・インバータ回路等の駆動部の異常検知に加え、圧縮機が運転された結果として現れる吐出温度の変化を監視することにより、二つ以上の異常有無を検知することが可能となり、更に安全性が向上する。
【0013】
第3の発明は、上記第1の発明において、圧縮機はモータ及びモータの回転数を制御するインバータ回路を備え、制御部はモータに流れる電流値が所定値以上になると異常として圧縮機の運転をOFF状態にする構成としてあり、第2の発明と同様、安全性が向上する。
【0014】
第4の発明は、上記各発明において、制御部はモータ及びインバータにより駆動される電動式圧縮機の指令回転数が変化している場合であって、前記電動式圧縮機から吐出される高温冷媒の温度検出装置の出力信号に変化がない場合に圧縮機の運転をOFF状態にする構成としてあり、安全性が向上する。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における自動車用空気調和装置の全体の構成を示している。この空気調和装置は、圧縮機11、凝縮器21、レシーバ22、膨張弁23、蒸発器24をループ状に接続して構成してあり、制御部4によって制御される。前記凝縮器21は圧縮機11により吐出された高温冷媒を凝縮用送風機(図示せず)により大気と熱交換して凝縮する熱交換器であり、凝縮器21により凝縮された冷媒はレシーバ22に流出され、ここで気液を分離して液冷媒を蓄える。膨張弁23はレシーバ22によって流入された冷媒を減圧する弁であり、減圧後に蒸発器24に冷媒を流入させ、車室内の空気と熱交換することにより車内の空気調和を行っている。
【0017】
前記圧縮機11はこれと一体に組み込んだモータ12によって駆動され、このモータ12は前記圧縮機11に組み込んだインバータ回路13によって制御される。前記モータ12の回転数は、外気の状態を検出する第一の温度検出装置1及び車室内の温度状態を検出する第二の温度検出装置2、及び車室内への熱負荷状態を検出するための日射センサー3等の車内外の環境状態を検出する各装置からの出力に基づき前記制御部4が前記インバー
タ回路13に指示を出し、指定回転数になるように制御する。
【0018】
一般的に前記第一の温度検出装置1は、前記凝縮器21の前面に配置されており、前述のとおり制御部4に電気的に接続されている。また、前記第二の温度検出装置は車室内の前面グリル近傍、前記日射センサー3はインパネのフロントガラス近傍に設置されており、それぞれ前記制御部4と電気的に接続されている。
【0019】
また、この実施の形態の前記圧縮機11には当該圧縮機11より吐出された高温冷媒の温度を検出する第三の温度検出装置14が設けてあり、この第三の温度検出装置14は制御部4に接続され、後述するように異常を検出するようになっている。
【0020】
以上の構成による自動車用空気調和装置の動作を図2を用いて説明する。ステップ100にてエアコンSWがON状態であることを制御部4が判断した後に、インバータ回路13に信号を出力し、圧縮機11の回転をスタートし、車室内を快適な状態に近づけるための制御をスタートする。
【0021】
ここで、ステップ110にて圧縮機11に設置された第三の温度検出装置14の信号が変化しているかを判定することにより、圧縮機11が正常に回転しているかの判定を行う。一般に運転直後の圧縮機11から吐出される高温冷媒の温度は上昇傾向を示すため、圧縮機に運転信号が発せられた後、ステップ110の判定結果により仮に温度検出装置14からの出力に変化がない場合には、ステップ120として回転異常と判断し、圧縮機11の運転を強制的に停止させる。また、運転が所定時間経過している場合などは前記圧縮機に能力変更信号が制御部4から出力されているのにもかかわらずステップ110の判定結果により温度検出装置14からの出力に変化がないとなった場合にも、ステップ120で回転異常と判断し、圧縮機11の運転を強制的に停止させる。
【0022】
更にこの実施の形態ではインバータ回路13はモータ12に流れる電流値を自ら監視しており、制御部4からの指令でモータ12を回転させるに当たり、ステップ200にてモータに流れる電流値Aの大小の判定を行っている。一般に圧縮機11が回転不能になっている場合にはモータ12に過負荷がかかり、モータ12に流れる電流値がA0以上となる。よってステップ200にて電流値AがA0以上になった時に圧縮機11の回転異常を検知し、自らその回転を停止させることを行っている。
【0023】
以上のようにこの実施の形態では、制御部4に温度検出装置14の信号を入力し、制御部4の動作環境がエアコンON信号あるいは能力変更信号であるにもかかわらず温度検出装置14の信号が変化してない場合、または、インバータ回路13内にてモータ12に流れる電流値がA0以上の場合の、どちらか一方が発生時に圧縮機11の運転を停止させることが可能となり、圧縮機11の故障という事象を二つの異なった事象より検出する多重安全制御が可能な自動車用空気調査装置を提供することが可能となる。
【0024】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2を示す空気調和装置の構成図である。この実施の形態では、圧縮機11はエンジン30を駆動源として、プーリ及びベルトからなる動力伝達手段により電磁クラッチ11aを介して駆動される。電磁クラッチ11aはベルトにより駆動されるプーリ(図示せず)と圧縮機11の駆動軸に連結されるアマチュア(図示せず)およびマグネットコイル(図示せず)により構成されている。前記マグネットコイルは制御部(制御部4)に電気的に接続され、制御部4からの通電信号によりマグネットコイルに通電されることによって前記アマチュアがプーリに吸引されエンジン30の出力が圧縮機11に伝達され作動する。その他の構成は先の実施の形態1と同様であり、その動作は図2のステップ100、110、120の流れと同様、第三の温度検出装置14の出力状態よ
り圧縮機11の異常発生有無を判断でき、圧縮機11の故障検知が可能となる。
【0025】
なお、上記各実施の形態では単一の冷凍サイクルを例にして説明したが、四方弁を組み込んで冷媒の向きを変え冷房及び暖房ができるようにしたものであっても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように本発明は、圧縮機を運転した結果として現れる吐出温度の変化を監視することにより多重安全を構成して安全性を向上させることができ、自動車用空気調和装置はもとより室内用の空気調和装置としても有益なものである。
【符号の説明】
【0027】
4 制御部
11 圧縮機
12 モータ
13 インバータ回路
14 温度検出装置
21 凝縮器
22 レシーバ
23 膨張弁
24 蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と圧縮機より吐出された高温高圧冷媒を凝縮させる凝縮器と凝縮器より吐出された冷媒をレシーバにより液化し、膨張弁によって膨張させた冷媒を蒸発器により蒸発させることにより空調を行う車両空調システムであって、圧縮機から吐出される高温冷媒の温度を監視可能な温度検出装置を備え、前記圧縮機にON信号あるいは能力変更信号があるにもかかわらず、前記温度検出装置の出力に変化がない場合に強制的に圧縮機をOFFする制御部を供えた空気調和装置。
【請求項2】
圧縮機はモータ及びモータの回転数を制御するインバータ回路を備え、制御部は前記インバータ回路の温度が所定値より上昇すると異常として圧縮機の運転をOFF状態にする請求項1記載の空気調和装置。
【請求項3】
圧縮機はモータ及びモータの回転数を制御するインバータ回路を備え、制御部はモータに流れる電流値が所定値以上になると異常として圧縮機の運転をOFF状態にする請求項1記載の空気調和装置。
【請求項4】
制御部は、モータ及びインバータにより駆動される電動式圧縮機の指令回転数が変化している場合であって、前記電動式圧縮機から吐出される高温冷媒の温度検出装置の出力信号に変化がない場合に圧縮機の運転をOFF状態にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−26277(P2012−26277A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162501(P2010−162501)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】