説明

空燃比センサの制御装置

【課題】内燃機関の運転中に空燃比センサの使用を中止した場合に、フューエルカットの実行・停止による空燃比センサの素子割れを極力抑制することのできる空燃比センサの制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関10の運転中に空燃比センサ12の異常によって使用を中止した場合に、内燃機関10のフューエルカットが実行されたときには、ヒータ13への通電量を所定の第1通電量K1まで所定増量ΔKuで徐々に増加させる。また、内燃機関10の運転中に空燃比センサ12の異常によって使用を中止した場合に、内燃機関10のフューエルカットが実行されないときには、ヒータ13への通電量を前記第1通電量よりも小さい所定の第2通電量K2まで所定減量ΔKdで徐々に減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の空燃比センサの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の空燃比センサを介して内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を計測し、その出力から空燃比を算出して空燃比フィードバック制御を行っている。上記の空燃比フィードバック制御を行うためには、空燃比センサを活性化させる必要があることから、空燃比センサのセンサ素子加熱用のヒータが装備されている。
【0003】
センサ素子のヒータは、使用時に空燃比センサを活性化するために設けられていることから、空燃比センサを使用しない場合にはヒータへの通電も停止するようにしている。しかし、例えば内燃機関の運転停止と同時にセンサ素子のヒータへの通電を停止すると、高温の排気の流通も停止することから、空燃比センサの温度が急激に低下することとなる。その結果、空燃比センサの素子に割れが生じるおそれがある。
【0004】
このため、特許文献1に示されるように、内燃機関の運転停止後に、所定期間ヒータへの通電を行うことで、内燃機関の運転停止に伴う空燃比センサの素子温度の急激な低下を抑えるようにしている。
【特許文献1】特開平4−359142
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空燃比センサを使用しなくなる場合としては、内燃機関の運転停止時のみならず、内燃機関の運転中に空燃比センサに異常が生じた場合等がある。このような場合も、空燃比センサを活性化する必要がなくなることから、センサ素子のヒータへの通電が停止される。ここで、内燃機関の運転時には高温の排気が流通していることから、空燃比センサの温度は低下しにくい状態にある。ところが、内燃機関の運転時にあっても高温の排気の流通が停止した場合には、空燃比センサの素子温度が急激に変化して、空燃比センサの素子に割れが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の運転中に空燃比センサの異常等によって空燃比センサを使用しなくなった場合に、空燃比センサの素子割れを極力抑制することのできる空燃比センサの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気系に装着され、使用時にセンサ素子を活性化するためのヒータを備える空燃比センサの制御装置において、内燃機関の運転中に前記空燃比センサの使用を中止した場合に、前記内燃機関のフューエルカットが実行されたときには所定の第1通電量で前記ヒータへ通電することをその要旨とする。
【0008】
内燃機関の運転中に空燃比センサの異常等により同センサの使用が中止された場合には、センサ素子のヒータへの通電が停止される。このとき、内燃機関のフューエルカットが実行されると、燃料の燃焼が行われなくなるため高温の排気が流通しなくなり、素子温度が急激に低下してセンサ素子に割れが生じるおそれがある。
【0009】
この点、上記構成によれば、内燃機関の運転中に空燃比センサの使用を中止した場合に、内燃機関のフューエルカットが実行されたときには所定の第1通電量でヒータへ通電されるため、素子温度の急激な低下を抑制することができる。その結果、空燃比センサの異常等によって空燃比センサを使用しなくなった場合に、フューエルカットの実行による空燃比センサの素子割れを極力抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空燃比センサの制御装置において、前記内燃機関の排気温度が低いほど前記第1通電量を大きく設定することを要旨とする。
フューエルカットを行うときに、内燃機関の排気温度が低いほど、素子温度の低下の幅が大きくなるため、素子に大きな熱ストレスが加わる。
【0011】
この点、上記構成によれば、排気温度が低いほど第1通電量を大きく設定することで、排気温度の低下する程度に応じてヒータの加熱量を変化させることができる。その結果、排気温度が低い場合であっても、素子温度の低下の幅が大きくなることを抑えることができ、フューエルカットの実行による空燃比センサの素子割れを極力抑制することができる。なお、上記排気温度は、フューエルカット実行中に燃料の燃焼が行われずに内燃機関から排出された吸気の温度も含むものとする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の空燃比センサの制御装置において、前記ヒータへの通電量を前記第1通電量まで所定増量で徐々に増加させることをその要旨とする。
【0013】
同構成によれば、ヒータへの通電量を所定の第1通電量まで所定増量で徐々に増加させるため、通電量の急増による素子温度の急上昇を抑え、センサ素子に加わる熱ストレスを好適に抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の空燃比センサの制御装置において、前記センサ素子の温度と前記内燃機関の排気温度との差が大きいほど、前記所定増量を大きく設定することをその要旨とする。
【0015】
フューエルカットを行うときに、素子温度と内燃機関の排気温度との差が大きいほど、素子温度の低下が速くなり、素子に大きな熱ストレスが加わる。
この点、上記構成によれば、素子温度と内燃機関の排気温度との差が大きいほど、所定増量を大きく設定するため、センサ素子の加熱量を速やかに大きくすることができる。その結果、素子温度と排気温度との差が大きくなることによる素子温度の急低下を抑え、熱ストレスによる素子割れを好適に抑制することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の空燃比センサの制御装置において、内燃機関の運転中に前記空燃比センサの使用を中止した場合に、前記内燃機関のフューエルカットが実行されていないときには前記第1通電量よりも小さい所定の第2通電量で前記ヒータへ通電することをその要旨とする。
【0017】
フューエルカットが停止されたときには、燃料の燃焼が再開して高温の排気が流通するため、フューエルカット実行中と同じ条件でヒータを加熱した場合には、素子温度が急激に上昇してセンサ素子に割れが生じるおそれがある。
【0018】
この点、上記構成によれば、内燃機関の運転中に空燃比センサの使用を中止した場合に、内燃機関のフューエルカットが実行されていないときには第1通電量よりも小さい所定の第2通電量でヒータへ通電されるため、素子温度の急激な上昇を抑制することができる。その結果、空燃比センサの異常等によって空燃比センサを使用しなくなった場合に、フューエルカットの停止による空燃比センサの素子割れを極力抑制することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の空燃比センサの制御装置において、前記内燃機関の排気温度が高いほど前記第2通電量を小さく設定することをその要旨とする。
フューエルカットが停止されるとき、内燃機関の排気温度が高いほど、素子温度の上昇の幅が大きくなるため、素子に大きな熱ストレスが加わる。
【0020】
この点、上記構成によれば、排気温度が高いほど所定の第2通電量を小さく設定することで、排気温度の上昇する程度に応じてヒータの加熱量を変化させることができる。その結果、排気温度が高い場合であっても、素子温度の上昇の幅が大きくなることを抑えることができ、フューエルカットの停止による空燃比センサの素子割れを極力抑制することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の空燃比センサの制御装置において、前記ヒータへの通電量を前記第2通電量まで所定減量で徐々に減少させることをその要旨とする。
【0022】
同構成によれば、ヒータへの通電量を所定の第2通電量まで所定減量で徐々に減少させるため、通電量の急減による素子温度の急下降を抑え、センサ素子に加わる熱ストレスを抑制することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の空燃比センサの制御装置において、前記センサ素子の温度と前記内燃機関の排気温度との差が大きいほど、前記所定減量を大きく設定することをその要旨とする。
【0024】
フューエルカットが停止されるときに、素子温度と内燃機関の排気温度との差が大きいほど、素子温度の上昇が速くなり、素子に大きな熱ストレスが加わる。
この点、上記構成によれば、素子温度と内燃機関の排気温度との差が大きいほど、所定減量を大きく設定するため、センサ素子の加熱量を速やかに減少させることができる。その結果、素子温度と排気温度との差が大きくなることによる素子温度の急上昇を抑え、熱ストレスによる素子割れを好適に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について、図1〜図2を参照して説明する。
図1に示されるように、内燃機関10の吸気管16に燃料噴射装置14が設けられており、内燃機関10の排気管17に排気温度センサ15と空燃比センサ12が装着されている。空燃比センサ12は、内燃機関10の排気中の酸素濃度を計測する。また、空燃比センサ12は、センサ素子20を活性化温度まで加熱するためのヒータ13を備えている。ヒータ13には、スイッチ19を介してバッテリ18から電力が供給されている。
【0026】
ECU11(電子制御装置)は、燃料噴射制御等、内燃機関10における種々の制御を統括して実行するものであり、演算装置、駆動回路の他、各種制御の演算結果やその演算に用いられる関数マップ等を記憶する記憶装置等を備えている。ECU11は、空燃比センサ12の出力に基づき空燃比を算出して空燃比フィードバック制御を行っている。また、ECU11は、バッテリ18とスイッチ19とを備える電子回路を介してヒータ13への通電量を制御し、空燃比センサ12のセンサ素子20の温度が目標温度、例えば750〜800℃になるようにフィードバック制御している。
【0027】
次に、本実施形態にかかる空燃比センサの制御の処理手順について、図2のフローチャートを参照して説明する。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、ECU11により所定の周期をもって繰り返し実行される。
【0028】
ステップ100(図にはS100と記す。以下同様)では、空燃比センサ12の異常があるか否かを判断する。具体的には、空燃比センサ12に断線異常などが生じており、同空燃比センサ12を使用できない状態か否かを判断する。空燃比センサ12の異常がないとき、本発明にかかる空燃比センサの制御を行わず、本処理を一旦終了する。空燃比センサ12に異常があるとき、異常信号がECU11に転送され、ステップ200に進む。ステップ200では、フューエルカットが行われているか否かを判断する。
【0029】
フューエルカットが行われている場合、ヒータ13への通電量が所定の第1通電量K1になるように制御する。ここで、ヒータ13の通電量は、単位時間に占める通電時間の割合(Duty)により制御される。まず、ステップ300に進み、ヒータ13への通電量が所定の第1通電量K1よりも小さいか否かを判断する。ここで、第1通電量K1は、フューエルカット実行中でもセンサ素子20の急激な温度低下を抑制することのできる値、例えば80%に設定される。ヒータ13への通電量が第1通電量K1より小さいときには(ステップ300:YES)、ヒータ13への通電量を所定増量ΔKuで増加させてヒータ13へ通電する(ステップ400)。一方、ヒータ13への通電量が第1通電量K1に達したときには(ステップ300:NO)、ヒータ13への通電量を変化させず、第1通電量K1でヒータ13へ通電する。
【0030】
また、フューエルカットが行われていない場合(ステップ200:NO)、ヒータ13への通電量が上記第1通電量K1よりも小さい所定の第2通電量K2になるように制御する。まず、ステップ500に進み、ヒータ13への通電量が所定の第2通電量K2よりも大きいか否かを判断する。ここで、フューエルカット実行中と同じ条件でヒータ13を加熱した場合には、センサ素子20の温度が急激に上昇してセンサ素子20に割れが生じるおそれがある。このため、第2通電量K2は、燃料の燃焼が再開されて高温の排気が流通するときにセンサ素子20の温度が急上昇することを抑制することのできる値、例えば20%に設定される。ヒータ13への通電量が第2通電量K2より大きいときには(ステップ500:YES)、ヒータ13への通電量を所定減量ΔKdで減少させてヒータ13へ通電する(ステップ600)。一方、ヒータ13への通電量が所定の第2通電量K2に達したときには(ステップ500:NO)、ヒータ13への通電量を変化させず、ヒータ13へ通電する。
【0031】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)内燃機関10の運転中に空燃比センサ12の異常等によって同センサの使用を中止した場合に、内燃機関10のフューエルカットが実行されたときには所定の第1通電量K1でヒータ13へ通電される。したがって、燃料の燃焼が行われなくなり高温の排気が流通しなくなった場合でも、センサ素子20の温度の急激な低下を抑制することができる。その結果、空燃比センサ12の異常等によって同空燃比センサ12を使用しなくなった場合に、フューエルカットの実行による空燃比センサ12の素子割れを極力抑制することができる。
【0032】
(2)ヒータ13への通電量を所定の第1通電量K1まで徐々に増加させるため、通電量の急増によるセンサ素子20の温度の急上昇を抑え、センサ素子20に加わる熱ストレスを抑制することができる。
【0033】
(3)内燃機関10の運転中に空燃比センサ12の使用を中止した場合に、内燃機関10のフューエルカットが実行されていないときには所定の第1通電量K1よりも小さい所定の第2通電量K2でヒータ13へ通電される。したがって、燃料の燃焼が再開して高温の排気が流通するときにフューエルカット実行中と同じ条件でヒータ13を加熱することによるセンサ素子20の温度の急激な向上を抑制することができる。その結果、空燃比センサ12の異常等によって空燃比センサ12を使用しなくなった場合に、フューエルカットの停止による空燃比センサ12の素子割れを極力抑制することができる。
【0034】
(4)ヒータ13への通電量を所定の第2通電量K2まで徐々に増加させるため、通電量の急減によるセンサ素子20の温度の急下降を抑え、センサ素子20に加わる熱ストレスを抑制することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、図3のフローチャートを参照して説明する。このフローチャートに示される一連の処理は、ECU11により所定の周期をもって繰り返し実行される。なお、本実施形態においても、空燃比センサの制御装置の構成は第1の実施形態(図1)と同様である。第2の実施形態は、第1の実施形態において、更に所定の第1通電量K1及び所定の第2通電量K2を可変設定する手段と、所定増量ΔKu及び所定減量ΔKdを可変設定する手段とを備えている。以下、これらの相違点を中心に説明する。
【0036】
図3に示されるように、空燃比センサ12の異常があって、フューエルカットを行う場合、ステップ210に進む。ステップ210では、内燃機関10の排気管17に設けられた排気温度センサ15により排気温度Teを検出し、排気温度Teが低いほど第1通電量K1を増大させる。ここで、排気温度Teが低いほど第1通電量K1を増大させるのは、フューエルカットを行うときに、内燃機関10の排気温度が低いほど、センサ素子20の温度の低下の幅が大きくなり、素子に大きな熱ストレスが加わるためである。
【0037】
そして、ステップ300に進み、ヒータ13への通電量が第1通電量K1よりも小さいか否かを判断する。ヒータ13への通電量が第1通電量K1よりも小さいときには(ステップ300:YES)、ステップ310に進む。ステップ310では、検出されたセンサ素子温度Tsと排気温度Teとの温度差が大きいほど、所定増量ΔKuを大きく設定し(ステップ310)、その所定増量ΔKuでヒータ13への通電量を増加させてヒータ13へ通電する(ステップ400)。一方、ヒータ13への通電量が所定の第1通電量K1に達したときには(ステップ300:NO)、ヒータ13への通電量を変化せず、第1通電量K1でヒータ13へ通電する。
【0038】
また、フューエルカットが行われていない場合(ステップ200:NO)、ステップ490に進む。ステップ490では、排気温度センサ15が排気温度Teを検出し、排気温度Teが高いほど所定の第2通電量K2を小さく設定する。ここで、排気温度Teが高いほど所定の第2通電量K2を減少させるのは、フューエルカットが停止されるとき、内燃機関の排気温度が高いほど、素子温度の上昇の幅が大きくなり、素子に大きな熱ストレスが加わるためである。
【0039】
そして、ステップ500に進み、ヒータ13への通電量が所定の第2通電量K2よりも大きいか否かを判断する。ヒータ13への通電量が所定の第2通電量K2よりも大きいときには(ステップ500:YES)、ステップ510に進む。ステップ510では、検出された排気温度Teとセンサ素子温度Tsとの温度差が大きいほど、所定減量ΔKdを大きく設定し(ステップ510)、その所定減量ΔKdでヒータ13への通電量を減少させてヒータ13へ通電する(ステップ600)。一方、ヒータ13への通電量が所定の第2通電量K2に達したときには(ステップ500:NO)、ヒータ13への通電量を変化せず、第2通電量K2でヒータ13へ通電する。
【0040】
以上説明した本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(4)に加えて以下の効果が得られるようになる。
(1)空燃比センサ12の異常があって、フューエルカットが行なわれているときに、排気温度Teが低いほど所定の第1通電量K1を大きく設定することで、排気温度Teの低下する程度に応じてヒータの加熱量を変化させることができる。その結果、排気温度Teが低い場合であっても、センサ素子温度Tsの低下の幅が大きくなることを抑えることができ、フューエルカットの実行による空燃比センサ12の素子割れを極力抑制することができる。なお、上記排気温度は、フューエルカット実行中に燃料の燃焼が行われずに内燃機関10から排出された吸気の温度も含むものとする。
【0041】
(2)空燃比センサ12の異常があって、フューエルカットが行なわれていないときに、排気温度Teが高いほど所定の第2通電量K2を小さく設定することで、排気温度Teの上昇する程度に応じてヒータの加熱量を変化させることができる。その結果、排気温度Teが高い場合であっても、センサ素子温度Tsの上昇の幅が大きくなることを抑えることができ、フューエルカットの停止による空燃比センサ12の素子割れを極力抑制することができる。
【0042】
(3)ヒータ13への通電量を第1通電量K1になるように制御するときに、センサ素子温度Tsと内燃機関10の排気温度Teとの差が大きいほど、所定増量ΔKuを大きく設定するため、センサ素子の加熱量を速やかに大きくすることができる。その結果、センサ素子温度Tsと排気温度Teとの差が大きくなることによるセンサ素子温度Tsの急低下を抑え、熱ストレスによる素子割れを好適に抑制することができる。
【0043】
(4)ヒータ13への通電量を第2通電量K2になるように制御するときに、センサ素子温度Tsと内燃機関10の排気温度Teとの差が大きいほど、所定減量ΔKdを大きく設定するため、センサ素子の加熱量を速やかに減少させることができる。その結果、センサ素子温度Tsと排気温度Teとの差が大きくなることによるセンサ素子温度Tsの急上昇を抑え、熱ストレスによる素子割れを好適に抑制することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・図4に示されるように、第1の実施形態において、フューエルカットを行われているとき、直ちに所定の第1通電量K1でヒータ13の通電するようにしてもよい(ステップ410)。一方、フューエルカットを行われていないときには、直ちに所定の第2通電量K2でヒータ13へ通電するようにしてもよい(ステップ610)。
【0045】
・図5に示されるように、図4に記載の処理手順において、フューエルカットを行われているとき、ステップ210に進んで、排気温度Teが低いほど所定の第1通電量K1を大きく設定する。そして、この第1通電量K1でヒータ13へ通電してもよい。一方、フューエルカットを行われていないとき、ステップ490に進んで、排気温度Teが高いほど所定の第2通電量K2を小さく設定する。そして、この第2通電量K2でヒータ13へ通電してもよい。
【0046】
・第2の実施形態において、フューエルカットを行われているとき、ステップ210(排気温度Teが低いほど所定の第1通電量K1を増大させる)を行わず、ステップ300(通電量が所定の第1通電量K1より小さいか否かを判断する)に進んでもよい。一方、フューエルカットを行われていないとき、ステップ490(排気温度Teが高いほど所定の第2通電量K2を減少させる)を行わず、ステップ500(通電量が所定の第2通電量K2より大きいか否かを判断する)に進んでもよい。
・第2の実施形態において、フューエルカットを行われているとき、ステップ310(センサ素子温度Tsと排気温度Teとの温度差が大きいほど、所定通電量増量ΔKuを大きく設定する)を行わず、ステップ400に進んでもよい。一方、フューエルカットを行われていないとき、ステップ510(排気温度Teとセンサ素子温度Tsとの温度差が大きいほど、所定通電量減量ΔKdを大きく設定する)を行わず、ステップ600に進んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる空燃比センサの制御装置のブロック図。
【図2】第1の実施形態での空燃比センサ制御を示すフローチャート。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかる空燃比センサ制御を示すフローチャート。
【図4】本発明の空燃比センサ制御について変更例を示すフローチャート。
【図5】本発明の空燃比センサ制御について他の変更例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0048】
10…内燃機関、11…ECU、12…空燃比センサ、13…ヒータ、14…燃料噴射装置、15…排気温度センサ、16…吸気管、17…排気管、18…バッテリ、19…スイッチ、20…センサ素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系に装着され、使用時にセンサ素子を活性化するためのヒータを備える空燃比センサの制御装置において、
内燃機関の運転中に前記空燃比センサの使用を中止した場合に、前記内燃機関のフューエルカットが実行されたときには所定の第1通電量で前記ヒータへ通電する
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空燃比センサの制御装置において、
前記内燃機関の排気温度が低いほど前記第1通電量を大きく設定する
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の空燃比センサの制御装置において、
前記ヒータへの通電量を前記第1通電量まで所定増量で徐々に増加させる
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の空燃比センサの制御装置において、
前記センサ素子の温度と前記内燃機関の排気温度との差が大きいほど、前記所定増量を大きく設定する
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の空燃比センサの制御装置において、
内燃機関の運転中に前記空燃比センサの使用を中止した場合に、前記内燃機関のフューエルカットが実行されていないときには前記第1通電量よりも小さい所定の第2通電量で前記ヒータへ通電する
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の空燃比センサの制御装置において、
前記内燃機関の排気温度が高いほど前記第2通電量を小さく設定する
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の空燃比センサの制御装置において、
前記ヒータへの通電量を前記第2通電量まで所定減量で徐々に減少させる
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の空燃比センサの制御装置において、
前記センサ素子の温度と前記内燃機関の排気温度との差が大きいほど、前記所定減量を大きく設定する
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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