説明

空腹時の血漿コレシストキニン濃度を高めるのに活性を示すポテトプロテナーゼ阻害剤II

ポテトプロテナーゼ阻害剤IIの投与による被験者におけるコレシストキニンの空腹時レベルを上昇させる方法が記載されている。処置による高度の空腹時コレシストキニンレベルによる被験者における満腹感を延長させるための方法も、また、処置に応答しやすい被験者を特定する方法とともに記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年3月8日に出願されたU.S.予備出願シリアルNo.60/660,118に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、概して、コレシストキニンの血漿レベルに関し、さらに詳細には、有効量のポテトプロテナーゼ阻害剤II(PI2)の投与による空腹時血漿コレシストキニンレベルを上昇させるための方法に関する。
【0003】
コレシストキニン(CCK)は、十分に研究された胃腸管(GI)ホルモンであり、ヒトにて、満腹感および食事摂取量調節ならびに血中グルコースコントロールに関与する(Drucker,D. J. Enhancing incretin action for the treatment of type 2 diabetes.Diabetes Care.2003(26):2929-2940;Liddle,R.A.,Gertz,B.J.,Kanayama,S.,Baccaria,,L.,Gettys,T.W.,Taylor,I.L.,Rushakoff,R.J.,Williams,V.C. and Coker,L.D. Regulation of pancreatic endocrine function by cholecystokinin:studies with MK-329,a nonpeptide cholecystokinin receptor antagonist. J. Clin.Endocrin. & Metabol.1990(70);1312-1318)。血漿CCKレベルを上昇させると、胃が空になるのを遅延させ、満腹感を誘発させ食事の摂取量を低下させる(Liddle,R,A-.,Morita,E.T.,Conrad,C.K.,Wiliams,J.A.Regulation of gastric emptying in humans by cholecystokinin.J.Clin Invest 1988(77):992-996;Gutzwiller,J.P.,Drewe,,J.,Kettrer,S.,Hilderbrand,P.,Beglinger,C.Interaction between CCK and a pre-load on reduction of food intake is mediated by CCK-A receptors in humans. Am J Phsiol Regul Integr Comp Physiol 2000(279):189-195)。植物起源のプロテナーゼ阻害剤は、循環CCKを高め、ひいては、胃の空腹を遅延させることが立証されている(Schwartz,J.G.,Guan,D.,Green.G.M.,Phillipps,W.T.Treatment with an oral propeinase inhibitor slows gastiric emptying and acutely reduces glucose and insulin levels after a liquid meal in type II diabetic patents.Diabetes Care 1994(17):255-262)。1.5グラムのポテトプロテナーゼ阻害剤II(PI2)の経口投与は、食後のCCKレベルを上昇させ、かつ、タイプII糖尿病患者の食後の高血糖症を低下させると報告されている(Schwartz et al.、1994)。1.5グラム投薬量でのポテトPI2は、また、健康な痩せた被験者にてエネルギー摂取を低下させることも立証されている(Blundell,J.E.,Hills,A.J.,Peikin ,S.R.Ryan.C.A.Oral administration of proteinase inhibitor II from potatoes reduces energy intake in man.Physiol Behav 1990(48):241-246)。
【0004】
満腹感に関連するGIホルモン類、例えば、CCKは、肥満症および糖尿病についての治療的価値を有することが示唆されている。迅速に胃が空腹になる糖尿病患者にて、胃の空腹速度を遅延させるための処置は、食後の血糖、したがって、高インスリン血糖の改善を伴う(Phillips.,W.T.Schwartz,J.G., McMahan,C.A.Reduced postprandial blood glucose levels in recently diagnosed non-insulin-dependent diabetics secondary to pharmacologically induced delayed gasrtric emptying.Dig Dis Sci 1993(38):51-58;Phillips,W.T.,Schwartz,J.G.Decelerating gastric emptying:therapeutic possibilities in 2 type diabetes.Diabet Med 1996(13):S44-48)。遺憾ながら、このようなペプチドホルモンは、それらが消化管で迅速に不活性化されうるので、経口投与することができない。
【0005】
我々は、PI2が内因性CCK放出を誘発し、食後のグルコースレベルを低下させ、経口投与することができるのを立証したので、PI2は、肥満症および糖尿病症の被験者にて、体重損失および血中グルコースコントロールについての可能な処置である。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、有効量のポテトプロテナーゼ阻害剤II(PI2)を被験者に投与することによって被験者におけるコレシストキニン(CCK)の空腹時レベルを上昇させる方法からなる。PI2は、ヒト被験者に、約1〜1500mg、好ましくは、約1〜約150mg、最も好ましくは、約5〜約50mgの量、経口投与される。食事、飲料またはその他の栄養化合物の摂取を伴うことなく、PI2単独の摂取は、CCKの空腹時のレベルを上昇させる効果を有することが見出された。好ましい実施態様にて、PI2は、カプセル形態で投与することができるかまたは食事もしくは飲料に添加することのできる粉末である。
【0007】
本発明のもう1つの態様は、PI2の投与前に被験者にて血漿CCKレベルを測定することによって、食事前のPI2の経口投与に応答してCCKの空腹時血漿レベルにおける高度の上昇を有する被験者を特定する方法である。高レベルの空腹時血漿CCKを有する人は、PI2の摂取が有益であるようである。
【0008】
本発明のさらなる態様は、食事前にPI2を摂取することにより、食事に続く満腹感を延長させるための方法である。PI2は、ヒト被験者にて、約1〜約1500mg、好ましくは、約1〜約150mg、最も好ましくは、約5〜約50mgの量、経口投与される。食事、飲料またはその他の栄養化合物の摂取を伴わないPI2単独の食前摂取は、特に、CCKの食前レベルがPI2の先の摂取により上昇させられる時、食事に続く満腹感を延長させる効果を有することを見出した。好ましい実施態様にて、PI2は、カプセル形態で投与することができるかまたは食事もしくは飲料に添加することのできる粉末である、PI2の摂取は、食事に続き、少なくとも3時間満腹感を延長することが観察された。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい実施態様の詳細な説明
ポテトプロテナーゼ阻害剤II(PI2)は、種々の方法によってポテトから抽出されている。1つのこのような方法は、U.S.特許No.6,767,566に記載されており、この特許は、参考とすることによって本明細書に組み込む。PI2は、Kemin Consumer Care,L.C.,Des Moines,Iowaから、15mgPI2/錠剤を含有させて配合させた錠剤で市販入手可能であり、登録商標名Satiseの下、販売されている。
【実施例】
【0010】
実施例1
材料および方法
材料:この研究における試験物品は、サイズ0ゼラチンカプセルに満たした。プラシーボカプセル(Lol#KCC18-83-17JUNE04AおよびKCC10-194-22MAR04A)に、微結晶質セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび二酸化珪素を含む賦形剤を入れた。PI2カプセルは、15mg(Lot#KCC18-83-17JUNE4BおよびKCC10-194-22MAR04B)または30mg(Lot#KCC18-83-17JUNE04CおよびKCC10-194-22MAR04C)PI2/カプセルおよび賦形剤を含有するポテト蛋白質抽出物を含んでいた。390kCalの朝食は、10オンスのトロピカーナーオレンジジュース;および、パン、ハム、卵およびチーズを含むGood Start R (上付き文字Rは、登録商標の略語である)Breakfast Mealの1つの配膳であった。食事の栄養含有量は、表1にて示す。
【0011】
被験者:年齢18〜55歳を有しかつBMI 19-29を有する55人の健康な女性の被験者を募った。45人の被験者で調査を完了した。被験者は、最初に、血液と;電解質、グルコース、肝機能試験および一般的な化学的性質についての尿分析によってスクリーンして全て良好な健康であることを確認した。それらの体脂肪および脂肪なし体重を、バイエレクトリカルインピーダンス分析(BIA)を使用して測定した。それらのBMI、背丈、体重および病歴もまた測定した。調査を始める前に、被験者からサインで了承を得た。
【0012】
【表1】

処方:これは、ランダムプラシーボコントロールされた二重盲目試験であった。Iowa State UniversityのHuman Research Institutional Review Board(IRB)は、リサーチプロトコルを是認した。各被験者は、1週間のウオッシュアウト間隔で合計3回の臨検スケジュールとした。一晩空腹時に到達したら、各被験者から12mlの血液を採取した。被験者は、プラシーボ、15mgまたは30mg PI2のようにランダムに定められた処置カプセルを食べた。60分後、標準化させた390Kcalの朝食をあてがい、被験者は、満腹となるまで食べ、ただし、食事の開始後15分間以内とした。食事を平らげなかったいずれの被験者も、別の食事の等カロリー量を与え、確実に、完全な390Kcal摂取とした。その他の食事/飲料は、1リットルのボトルに入れた水以外は、臨検の間に与えなかった。血液試料を各被検者から採取し;食事試料前は、時間0とし、ついで、続いて、30、60、90、120および180分とした。検査の間に生ずるいずれの悪体験も報告した。
【0013】
測定:CCKの食前および食後の濃度を食後3時間まで評価した。血液試料は、全て、予めコードおよび標識したLavendar Vacutainer EDTAチューブに取り出した。プロテアーゼ阻害剤アプロチニン(Fisher Scientific,NJ)を血液の最終濃度0.6TIU/mlに加えた。各試料は、緩やかに混合し、直ちに氷の上に置いた。収集後1時間以内に、試料は、3000gで15分間遠心分離した。血漿を収集し、その後のバイオマーカー測定のために-80℃で貯蔵した。血漿CCKは、EURIA CCKキット(ALPCO Diagnostic,NH)を使用して、放射免疫検定法によって決定した。放射活性は、Packard Cobra II自動ガンマカウンター(Perkin Elmer,CA)で測定した。ここで発現されるCCK濃度は、血漿中の生物活性CCK-8および等価体のレベルを表す。
【0014】
データの解析:全ての統計学的解析のために、SASソフトウエアversion 8.0(SAS Institute Inc.Cary,NC)を使用した。時間を横切る食後の血漿CCKデータは、被験者に対して、配列のグループ間の因子(各被験者により累積して体験される3つの処置についての6つの異なる順序);周期(1,2および3)のグループ内因子および処置(プラシーボ、15mgまたは30mgPI2)のグループ内の因子を含む分散をクロスオーバー解析を使用して分析した。CCKについての経時的曲線下の面積(AUC)を、食後、90分後、120分後および180分後に、配列のグループ間因子ならびに期間および処置のグループ内因子を含むモデルを使用して評価した。また、同分析は、ピーク時の処置効果(Tmax)、ピーク濃度(Cmax)およびT0での食前濃度を評価するために使用した。キャリーオーバー効果の不在(すなわち、前処理の続く処理に及ぼす影響の不在)を仮定した。統計学的有意さは、α=0.1にて設定した。結果は、特に断らない限り、最小二乗平均(LSMEAN)±平均の標準偏差(SEMs)として示す。
【0015】
結果
検査を終えた45人の被験者についての平均年齢は、28.1±9.1歳であり、平均体重は、66.6±11.9kgであり、BMIは、23.9±3.9kg/m2であった。平均脂肪なし体重は、48.4±5.9kgであり、脂肪のパーセンテージは、26.5±6.7%であった。平均空腹時のCCKレベルは、0.45±0.87pMであった。結局、390Kcalの標準食の消費に応答して、食後90分以内に増加し、ついで、120〜180分で減少した血漿CCKを示す、時間の食後の血漿CCKに及ぼす有意な主要効果(p>0.01)が存在した。
【0016】
食後0、30、60、90、120および180分でのCCKの食後濃度に及ぼすPI2処置の効果および曲線下の積分したCCK面積(AUC)のベースラインからの変化を調べた。T0での食前CCKレベルに及ぼすPI2効果の投与応答を、それぞれ、0.45、0.50および0.65pMのCCKレベルで、プラシーボ、15mgおよび30mgPI2投与について観測した。30mgPI2とプラシーボ処置との間の差は、対をなす比較(p=0.0825)で有意に達した。この観察は、T-60でのCCKレベルを横切る処置の相互作用プロットによって確認された(図1)。PI2単独の摂取は、基底の血漿CCK濃度を60分でより高いレベルまで上昇させうることを示す。さらに、PI2効果の投与応答は、T-60でより高いベースラインCCKを示す被験者にて十分に定義されていることが多く、CCKレベルにおける比較的より大きな増加は、食前T0によって達成される。
【0017】
CCKの食後経時曲線は、図2に示す。食後のCCKレベルは、プラシーボよりPI2処置にて明らかに高く、この効果は、15mg投与でさらに顕著であった。個々の対比分析により、15mgのPI2が、60および120分で(それぞれ、p=0.0159およびp=0.0933)、プラシーボより有意に高いCCK上昇を誘発することが明らかとなった。15mgのPI2は、これら2つの時点でプラシーボに関して、平均CCKレベルを、それぞれ、33.6%および20.3%上昇させた。60分後、CCKのレベルは、15mg、30mgおよびプラシーボ処置に対して、それぞれ、3.28±2.9、2.74±2.0および2.40±1.7pM(平均±SD)であった。食後の期間にわたる食前T0からのCCKレベルの変化もまた3つの処置のうちで比較した。PI2の主要な処置効果は、15mgのPI2(2.10pM)、続く、30mg(1.78pM)およびプラシーボ(1.75pM)で見出されるCCKの最高上昇で有意(p=0.0116)であった。
【0018】
図3にて示すように、15mgのPI2の経口投与は、16.9%、17.2%および19.4%を生じ、0〜90分、0〜120分および0〜180分で、それぞれ、食後のCCK AUCが増大する。T-60およびT0間の平均CCKレベルがモデルにおける共分散として含まれる時、0〜180分での食後のCCK AUCは、プラシーボ(p=0.0905)より15mgのPI2で有意に高かった。これは、PI2のCCK放出に及ぼす効果が食前1時間で観測される平均血漿CCKレベルによって影響されうるという発見を支持する。処置効果とT-60での空腹時CCKレベルとの間には、相互作用が見られた。データに従えば、PI2処置は、増大する空腹時のCCKレベルとしてのプラシーボに関して著しく高いAUC値を生じた。これは、15mgのPI2処置で最も顕著であった。かくして、被験者は、彼等が処置前に比較的高い空腹時CCKレベルを有する時PI2処置に対してよりよく応答した。
【0019】
CCKがそのピークレベル(Tmax)に到達する平均時間は、プラシーボ、15mgおよび30mg処置について、それぞれ、93.7±41.2分、91.0±38.6分および84.3±40.1分(平均±SD)であり、PI2が投与依存風に食事誘発CCKの早期ピークを促進しうることを示した。CCKのピーク濃度(Cmax)は、プラシーボ、15mgおよび30mg処置について、それぞれ、3.5±2.1、4.1±2.9および3.8±2.3pM(平均±SD)であった。
【0020】
統計学的解析の考察
本章は、本明細書に記載した研究についてのCCK値の詳細な解析を提供する。本研究は、3つの処置(活性15mg、活性30mgおよびプラシーボ)を生じさせうる6つの論理的な配列の1つにランダムに課される被験者で3期間のクロスオーバーデザインを使用した。配列、期間および処置の主要な効果を含む分散のクロスオーバー解析(ANOVA)を使用して、解析を行った。典型的には、所定の期間内の単一時間に収集した被験者の値を、このモデルを使用して、評価した。1つの例にて、各期間内の多数の時点を横切る被験者の値を解析した。この場合、時間相互作用による時間および処置の主要な効果をモデルに加えた。キャリーオーバー効果の不在は、活性な処置および期間間の適当なウオッシュアウト時間間隔の使用が期待される効果の短い持続を示した全てのクロスオーバーANOVAモデルについて仮定した。それは、本明細書に記載する解析の焦点を形成する処置を含む処置効果およびいずれかの相互作用である。最後に、非構成共分散マトリックスを、各期間内に各被験者についての単一時点を評価するモデルについて仮定した。各期間内に各被験者についての反復測定を解析する時に、化合物の対称性を仮定した。
【0021】
1. 試験食直前のCCKの解析
ゼロ分(試験食直前)で測定したCCKについてのANOVA結果、モデル評価した平均(最小2乗平均またはLS平均)および有意なレベルを有するLS平均間の全ての対をなす対比は、ANOVA表から誘導される誤差を使用して計算した。処置相互作用による共分散(CCKT-60)の存在(p=0.0070)および活性30mgとプラシーボ群(活性30mg=0.65pM 、プラシーボ=0.44pM、差=0.2088、p=0.0825)との間の有意な対比が見出された。境界対比から、-60分処置を受容した後の平均CCKがプラシーボ群におけるよりも活性30mgにてより高いレベルへ上昇したことが明らかである。この観察は、処置相互作用による統計学的に有意な共分散(CCKT-60)の性質をプロットする時に支持される。図1は、共分散の値を横切る各処置のモデル予想平均値(LS平均値)に沿って共分散の値を横切る各処置にて解析されるデータの散乱プロットを含む。この図から、処置相互作用による共分散(CCKT-60)の性質を理解することができる。投与応答結果(活性30mg>活性15mg>プラシーボ)は、ベースラインCCK(すなわち、CCKT-60)の高レベルの次第な増加を示す被験者に優って次第に現れる。
【0022】
2. 食後CCKパラメータの解析
食後のCCKパラメータについて、AUC0-90、AUC0-120およびAUC0-180についての処置(処置によるCCKT-60)相互作用による共分散は、有意であった。これら相互作用についての有意レベルは、それぞれ、p=0.0069、p=0.0065およびp=0.0034である。AUC0-90、AUC0-120およびAUC0-180について、これら3つの処置群についての基礎となるAUC値およびLS平均値は、共分散(CCKT-60)の値を横切る。これらの図は、活性15mg群が、共分散値に優って、プラシーボ群よりもより高いAUCを次第に示す。同様の結果パターンは、プラシーボに関する30mg群について観測されるが、その効果は、より顕著ではない。処置相互作用による共分散は、CCK増加の前処理ベースラインレベルとして、CCK(90、120および180分にわたりAUCにより測定した)の存在もまたプラシーボに関して活性15mg群にて増加し;CCK増加の前処理ベースラインレベルとして、CCK(90、120および180分にわたりAUCにより測定した)の存在がプラシーボに関して活性30mg群にて減少が少ないことを示唆する共分散として適している時に観測される。
【0023】
3. ベースラインとしてのCCKT-60、CCKT0およびCCKAVGに関する繰り返し測定分析CCK変換スコア
試験食後30分、60分、90分、120分および180分に測定したCCK測定値からCCKT-60、CCKT0およびCCKAVGからなるベースラインを差し引くことによって計算される変換スコアについて処置を変換スコア(CCK変換スコア)で比較する3つの分析(CCK変換スコア)を行った。
【0024】
処置の主要な効果は、CCKT0変換スコアについて統計学的に有意であった(活性15mg=2.09pM、活性30mg=1.71pMおよびプラシーボ=1.72pM,p=0.0116)。同様に、CCKAVG変換スコアについて、処置の主要な効果は、統計学的に有意であり(p=0.0280)、活性15mg群(2.0966pM)で最も高い平均CCKAVGが認められ、続いて、活性30mg群(1.7852pM)であり、プラシーボ群(1.7474pM)であった。
【0025】
考察
PI2摂取が満腹感を誘発し、ヒトの食事の摂取量を減ずるという多くの証拠が示されている(Blundell,et al.,1990;Vasseli,J.R.,Greenfield,D.,Schwarz,L.,Heymsfield,S.B.Consumption of a pre-meal drink containing Protease inhibitor from potatoes decreases hunger and increases fullness in overweight subjects following in a meal(Abstract).Presented at the North American Association for the Study of Obesity(NAASO) Annual Meeting 1999;Owyang,C. Discovery of a Cholecystokinin-Releeasing Peptide: Biochemical Characterization and Physiological Implications.Ch.J.Physiology 1999(42):113-120)。1つの提案される機構は、PI2が想定されるCCK放出因子の分解を阻害し、続いて、内因性のCCK放出を高める機構である(Liddle,R.A.Regulation of cholecystokinin secretion in humans.Gastroenterology 2000(35):181-187;Owyang;Herzig K.H.,Scoen,I.,Tatemoto,K.,Ohe,Y.,Li,Y.,Foelsch,U.R.,Owyang,C.Diazepam binding inhibitor is a potent cholecystokinin-releasing peptide in the intestine.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1996(93):7927-7932)。この仮説と一致して、比較的高い投薬量でのPI2は、ヒトにて食後のCCKレベルを上昇させることを立証した。液体食と与えた1.5g投薬量のPI2は、タイプII糖尿病被験者で食後15分で循環CCKレベルを上昇させると報告されているが積分した食後AUCに影響を与えなかった(Schwartz,et al.,1994).Peikin et al.は、1gのPI2の食前摂取が500Kcalの食事を与えた健康な男性における1gのラクトースよりもより高い食後CCK応答を持続することを報告している(Peikin,S.R.,Springer,C.J.,Dockray,G.J.,Calam,J.Oral administration of the proteinase inhibitor potato 2 stimulates release of CCK in man.Gastoenterology.Abstract,1987(92):A1570)。我々の研究は、PI2が以前に示されているよりもはるかに低い投薬量で長時間より高い食後のCCKレベルを持続することを確認する。
【0026】
本明細書の統計学的解析は、3つの主要な発見を支持する。第1に、ベースラインでCCKの非ゼロ値を示すことが見出された被験者のうち、処置後の食前および食後の両方で、PI2のインパクトが最も顕著であること。ベースラインCCK値が大きいほど、被験者についての活性処置の相対的インパクトが大きい。第2に、1時間処置後食事の摂取直前のPI2のインパクトは、ともに、CCKのベースラインの存在およびPI2の投薬レベルに依存する(すなわち、投与応答効果が処置後試験食前に観測された)。第3に、PI2は、180分の食後測定期間にわたってCCK食後値にインパクトを与える。この食後の効果は、CCKのレベルが180分の食後評価期間の一部または全てにわたってAUCとして捕捉される時、処置相互作用によって共分散(CCKT-60)の形で明瞭となり、また、ベースラインCCK値(CCKT0またはCCKAVG)を各食後時点(30分、60分、120分および180分)でCCKから差し引き、変換スコアを解析する時に明瞭となる。
【0027】
我々の結果は、空腹時CCKが健康な女性で投与依存風なPI2消費後60分上昇する。コレシストキニンが十二指腸での消化された脂質および/または蛋白質の存在の関数としてのみ血中に放出される数時間と一般に考えられる(Burton-Freeman,B.,Davis,P.A.,Schneeman,B.O.Plasma cholecystokinin is associated with subjective measures of satiety in women.Am.J.Clin.Nutr.2002(76):659-657;Burton-Freeman,B.,Davis,P.A.,Schneeman,,B.O.Interaction of fat availability and sex on post-prandial satiety and cholecystokinin after mixed-food meals.Am.J.Clin.Nutr.2004(80):1207-1214)。CCK放出の調節についてのヒトおよび動物についての以前の分析は、プロテナーゼ阻害剤が空腹のラットにてCCK放出を刺激することができるが、ヒトにては、CCK放出のポジティブな背景栄養刺激が必要であったことを示唆している(Green G.M.Feedback inhibition of cholecystokinin secretion by bile acids and pancreatic proteases.In:Cholecystokinin,edited by Reeve,J.R.New York Academy of Sciences,1994,p167-179.Liddle,R.A.Regulation of cholecystokinin secretion by intraluminal releasing factors.Am.J Physiol.1995(269):G319-327)。この概念は、数種のCCK生理学総説にて記載されている(Liddle,R.A.Cholecystokinin cell.Annu.Rev.Physiol 1997(59):221-42.Moran,T.H.and Kinzig K.P.,Gastrointestinal satiety signal II.Cholecystokinin.Gastrointest liver Physiol 2004(286):183-188)。しかし、我々のデータは、代わりに、PI2が単独でCCK放出を刺激することができることを示し、CCKレベルを増加させるためには、経口投与されるプロテナーゼ阻害剤が食事とともに投与される必要があるという概して保持されていた概念は予想し得なかったことに妥当ではないことを示す。PI2の経口摂取が投与応答風に食前CCKレベルの増加を生ずるという観測の理由は、現在不明瞭である。
【0028】
まとめ
本研究の結果は、PI2の15〜30mgの食前摂取が食事前の空腹時のCCK濃度にインパクトを有し、さらに、先のPI2処置によるより高い空腹時のCCKレベルと個々に食事に応答する食後のCCKを高めることを立証する。食後のCCK応答が増加することは、満腹感を促進し、糖血負荷を低下させるのに重要な関係を有し、これは、ひいては、ヒトにて体重の損失および体重のコントロールを促進する。したがって、PI2は、体重損失および体重維持を促進するための有効剤として作用しうる。
【0029】
前述の記載および図面は、本発明の例を示す実施態様を含む。本明細書に記載する前述の実施態様および方法は、当業者の能力、体験および好みに基づいて変化させることができる。ある種の順序で方法の工程を単に列挙するのは、方法の工程の順序についていかなる制限をも加えるものではない。前述の記載および図面は、本発明を単に説明および例示するだけであり、本発明は、特許請求の範囲の請求項がかく制限しない限り、それに限定されるものではない。当業者であれば、本開示を眼にすれば、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の変更および変形をなすことができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、投与時(T0)〜空腹時60分後(T-60)CCKまでの血漿CCKの3つの異なる処置との相関のチャートであり;各点は、処置を有する被験者を表し;回帰直線は、T0でのCCKレベルがT-60での処置とCCKレベルとの相互作用によって影響を受けることを示す。
【図2】図2は、3つの処置のうち180分間にわたる食後の血漿CCK応答のチャートであり;15mg投与でのCCK濃度がプラシーボとは有意に異なっていた。
【図3】図3は、3つの処置のうち0〜90分、0〜120分および0〜180分での食後血漿CCK AUCのチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者にてコレシストキニンの空腹時血漿レベルを上昇させる方法であって、その被験者にポテトプロテナーゼ阻害剤II(PI2)を経口投与する工程を含む方法。
【請求項2】
PI2が、カプセル形態で投与するためまたは食事もしくは飲料に添加するために粉末形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PI2の量が、約1〜約1500mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PI2の量が、約1〜約150mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
PI2の量が、約5〜約50mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
食事前のPI2の経口投与に応答してコレシストキニンの空腹時血漿レベルの高度の上昇を有する被験者を特定する方法であって、PI2の経口投与前の被験者における血漿コレシストキニンレベルを測定する工程を含む方法。
【請求項7】
血漿コレシストキニンの測定がPI2の投与後ただし食事前に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
PI2の経口投与により血漿コレシストキニンレベルを上昇させることが最も有益であるように思われる被験者を特定する方法であって、PI2の投与前に被験者の血漿コレシストキニンレベルを測定する工程を含む方法。
【請求項9】
血漿コレシストキニンの測定が、PI2の投与後ただし食事前に行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかの方法に従い特定される被験者にて食事に続き満腹感を延長させるための方法であって、食事前に被験者にPI2を経口投与する工程を含む方法。
【請求項11】
PI2が、カプセル形態である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PI2の量が、約1〜約1500mgである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
PI2の量が、約1〜約150mgである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
PI2の量が、約5〜約50mgである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
満腹感が、食事に続き、少なくとも3時間長くなる、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−533013(P2008−533013A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500801(P2008−500801)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/007906
【国際公開番号】WO2006/096632
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(504008209)
【Fターム(参考)】