説明

空調システムの検査装置

【課題】この発明は、空調風が通る通路を開閉する開閉装置が作動範囲の両端の第一位置から第二位置まで正常に作動可能かどうかを自動的に検査可能とし、作業者の技量に左右されることなく、開閉装置の作動について精度の高い検査を実現することを目的とする。
【解決手段】この発明は、空調風の通る通路を開閉する開閉装置を備え、この開閉装置を駆動する駆動手段を備えた空調システムの検査装置において、空調システムの製造時、あるいは空調システムを車両に搭載後の整備時において、空調システム検査工程を実施可能な空調システム検査手段を備え、この空調システム検査手段が実施する空調システム検査工程において、開閉装置が作動範囲の両端の第一位置から第二位置まで移動可能かどうかを検査する開閉装置検査工程の実施命令が設定された場合は、次回の電源投入時に開閉装置検査工程を実施する開閉装置検査手段を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は空調システムの検査装置に係り、特に、空調システムの空調風が通る通路を開閉する開閉装置が、正常に作動可能かどうかを判定することができる空調システムの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車室内の環境を快適にし、また、窓の曇りや霜付き等を防止するために、空調システムを搭載している。空調システムは、空気吸い込み口から空調装置を経て車室内へ吹き出される空調風の通る通路を開閉する開閉装置を備え、この開閉装置を駆動する駆動手段を備えている。空調システムは、エアミックスダンパ、吹き出しモード切替ダンパ、吸い込み口切替ダンパ等の開閉装置を駆動手段で駆動して空調風の通る通路を開閉し、吹出空気の調整・モードの切替・空気吸い込み口の切替を行い、空調装置で調整された空調風を車室内に吹き出し、暖房・換気・空調を行っている。
空調システムは、空調ダクトにより形成される空調風が通る通路に開閉装置であるダンパを配設し、駆動手段であるアクチュエータにより駆動して通路を開閉しているが、製造時や車両搭載時にダンパの作動範囲に屑、部品などの異物が挟まった場合に、アクチュエータをロックさせてしまう可能性がある。
【0003】
そのため、従来の空調システムには、空調用ドアを駆動するモータアクチュエータを逆回転させる逆回転用操作スイッチを設け、モータアクチュエータがロックした場合に逆回転用操作スイッチでモータを逆回転させ、ロック状態を解除するものがある。
【特許文献1】実開昭61−33711号公報
【0004】
また、従来の空調システムには、風路開閉ドアにウォームホイールを設け、このウォームホイールにモータアクチュエータの出力軸に設けたウォームを直接噛み合わせ、モータアクチュエータの出力軸にウォームホイールの表面に接して異物を除去するブラシを設け、異物の噛み込みによるロックを防止するものがある。
【特許文献2】特開2006−76419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1及び2の空調システムでは、駆動手段がロックしていることを検知するために、作業者が「設定温度」、「MODE」等のスイッチを操作することにより、駆動手段で開閉装置を作動範囲の両端にある第一位置(例えば、全閉位置)及び第二位置(例えば、全開位置)まで駆動させ、ロックしていないか確認する必要があった。
このため、従来の空調システムは、作業者によるスイッチ操作での確認をしなければならないため、検査のための作業工数が必要となり、検査の作業が作業者の技量に依存することから、開閉装置の作動について精度の高い検査を実現しにくく、また、検査の作業忘れを生じる等の問題がある。
【0006】
この発明は、空調風が通る通路を開閉する開閉装置が、作動範囲の両端の第一位置から第二位置まで、正常に作動可能かどうかを自動的に検査可能とし、作業者の技量に左右されることなく、開閉装置の作動について精度の高い検査を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、空気吸い込み口から空調装置を経て車室内へ吹き出される空調風の通る通路を開閉する開閉装置を備え、この開閉装置を駆動する駆動手段を備えた空調システムの検査装置において、前記空調システムの製造時、あるいは前記空調システムを車両に搭載後の整備時において、空調システム検査工程を実施可能な空調システム検査手段を備え、この空調システム検査手段が実施する空調システム検査工程において、前記開閉装置が作動範囲の両端の第一位置から第二位置まで移動可能かどうかを検査する開閉装置検査工程の実施命令が設定された場合は、次回の電源投入時に前記開閉装置検査工程を実施する開閉装置検査手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の空調システムの検査装置は、空調風が通る通路を開閉する開閉装置が、作動範囲の両端の第一位置(例えば、全閉位置)から第二位置(例えば、全開位置)まで、正常に作動可能かどうかを自動的に検査可能である。
これにより、この発明の空調システムの検査装置は、作業者の技量に左右されることなく、開閉装置の作動について精度の高い検査を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図6は、この発明の実施例を示すものである。図1は空調システムの検査装置のブロック図、図2は空調システムの検査装置の概略構成図、図3は通路のエアミックスダンパ部分の拡大構成図、図4はアクチュエータ検査フラグ設定のフローチャート、図5は開閉装置検査工程のフローチャート、図6は開閉装置検査工程のタイムチャートである。図2において、1は車両に搭載された空調システムである。空調システム1は、空調ダクト2により形成される通路3を設けている。通路3には、車室内に空気を送給するブロアファン4と、空気を冷却するエバポレータ5と、空気を加熱するヒータコア6とから構成する空調装置7を配置している。
前記ブロアファン4は、ブロアファンモータ8により駆動されて通路3の空気を車室内に供給する。前記エバポレータ5は、ブロアファン4の下流側の通路3に配置され、コンプレッサ9により圧縮された冷媒の気化潜熱により通過する空気を冷却する。コンプレッサ9は、電磁クラッチ10を介してエンジンに接続され、エンジンの駆動力により駆動されて冷媒を圧縮する。前記ヒータコア6は、エバポレータ5の下流側の通路3に配置され、ヒータ用冷却水通路11により供給されるエンジン冷却水を熱源として空気を加熱する。ヒータ用冷却水通路11には、ヒータコア6に対してエンジン冷却水を供給・遮断するヒータ用冷却水バルブ12を設けている。
【0011】
前記ヒータコア6は、通路3の流れ方向に対して交差する幅方向一側に偏らせて配置している。これにより、ヒータコア6を配置した部位の通路3は、通路3の幅方向一側でヒータコア6を配置したヒータコア通路13と、通路3の幅方向他側でヒータコア通路13に平行なバイパス通路14とに2分して形成されている。ヒータコア通路13とバイパス通路14とは、ヒータコア6の下流側において合流している。
ヒータコア通路13とバイパス通路14とに2分された通路3には、ヒータコア通路13とバイパス通路14とを選択的に開閉するエアミックスダンパ15を設けている。エアミックスダンパ15は、エアミックスアクチュエータ16により駆動され、空調風をヒータコア通路13とバイパス通路14とに選択的に流通させる。
エアミックスアクチュエータ16は、図1に示すように、エアミックスダンパ15を駆動するエアミックスモータ17を備え、エアミックスモータ17の動作位置からエアミックスダンパ15の位置を検出するエアミックスダンパ位置センサ18を備えている。
【0012】
前記ヒータコア6の下流側の通路3は、下流側を、空調装置7の空調風を車室内に吹き出すベント通路19と、空調風を乗員の足下に吹き出すフット通路20と、空調風をウインドウに吹き出すデフロスタ通路21とに分岐している。ベント通路19は、センタベント吹出口22及びサイドベント吹き出し口23・24に分岐して開口している。フット通路20は、フット吹き出し口25に開口している。デフロスタ通路21は、デフロスタ吹き出し口26に開口している。
前記ベント通路19の上流側の通路3には、ベント通路19を開閉するベント用吹き出しモード切替ダンパ27を設けている。前記フット通路20には、フット吹き出し口26を開閉するフット用吹き出しモード切替ダンパ28を設けている。ベント用吹き出しモード切替ダンパ27及びフット用吹き出しモード切替ダンパ28は、連結されており、吹き出しモード切替アクチュエータ29により駆動され、センタベント吹出口22及びサイドベント吹き出し口23・24とフット吹き出し口25とを連携して開閉する。
吹き出しモード切替アクチュエータ29は、図1に示すように、ベント用吹き出しモード切替ダンパ27及びフット用吹き出しモード切替ダンパ28を駆動する吹き出しモード切替モータ30を備え、吹き出しモード切替モータ30の動作位置からベント用吹き出しモード切替ダンパ27及びフット用吹き出しモード切替ダンパ28の位置を検出する吹き出しモード切替ダンパ位置センサ31を備えている。
【0013】
前記ブロアファン4の上流側の通路3は、車室内の空気を導入する車室内空気吸い込み口32と、車室外の空気を導入する車室外空気吸い込み口33とに分岐して開口している。車室内空気吸い込み口32と車室外空気吸い込み口33とに分岐する部位の通路3には、吸い込み口切替ダンパ34を設けている。吸い込み口切替ダンパ34は、吸い込み口切替アクチュエータ35により駆動され、車室内空気吸い込み口32と車室外空気吸い込み口33とを選択的に開閉し、車室内空気と車室外空気とを選択的に通路3に導入する。
吸い込み口切替アクチュエータ35は、図1に示すように、吸い込み口切替ダンパ34を駆動する吸い込み口切替モータ36を備え、吸い込み口切替モータ36の動作位置から吸い込み口切替ダンパ34の位置を検出する吸い込み口切替ダンパ位置センサ37を備えている。
【0014】
前記エアミックスダンパ15とベント用吹き出しモード切替ダンパ27とフット用吹き出しモード切替ダンパ28と吸い込み口切替ダンパ34とは、車室内・車室外空気吸い込み口32・33から空調装置7を経て車室内へ吹き出される空調風の通る前記通路3を開閉する開閉装置38を構成する。前記エアミックスアクチュエータ16と吹き出しモード切替アクチュエータ29と吸い込み口切替アクチュエータ35とは、開閉装置38を駆動する駆動手段39を構成する。
前記ブロアファンモータ8と電磁クラッチ10とヒータ用冷却水バルブ12とエアミックスアクチュエータ16と吹き出しモード切替アクチュエータ29と吸い込み口切替アクチュエータ35とは、空調システム1の空調制御装置40に接続している。
空調制御装置40には、図1に示すように、気温等を検出する各種センサ41と、空調風の温度・風量等を設定する操作パネル42と、イグニッションスイッチ(ING)43を介して電源であるバッテリ44とを接続している。空調制御装置40は、各種センサ41からデータを取り込んで空調装置7・開閉装置38を作動させ、車室内の内気温度が操作パネル42で設定された温度に近づくように空調風の温度・風量を制御する。
【0015】
空調システム1は、例えば図3に示すように、空調ダクト2により形成される空調風が通る通路3に空調装置7のヒータコア6を配設し、駆動手段39の一つであるエアミックスアクチュエータ16により開閉装置38の一つであるエアミックスダンパ15を、作動範囲θaの両端の第一位置P1(例えば、ヒータコア通路13の全閉位置、バイパス通路14の全開位置)から第二位置P2(例えば、ヒータコア通路13の全開位置、バイパス通路14の全閉位置)まで駆動して、ヒータコア通路13とバイパス通路14とを選択的に開閉し、空調風をヒータコア通路13とバイパス通路14とに選択的に流通させる。
しかし、空調システム1の製造時や車両への搭載時に、エアミックスダンパ15の作動範囲θaに屑、部品等の異物Sが挟まった場合には、エアミックスダンパ15が作動範囲θaの両端の第一位置P1及び第二位置P2まで移動することができず、途中位置P3で止まって作動範囲θaがθbだけ狭いθcになってしまい、エアミックスアクチュエータ16をロックさせてしまう可能性がある。
【0016】
この空調システム1には、図1に示すように、検査装置45を設けている。検査装置45は、空調制御装置40に空調システム検査手段46を備えている。空調システム検査手段46は、空調システム1の製造時、あるいは空調システム1を車両に搭載後の整備時において、システムを構成する空調装置7・開閉装置38・駆動手段39の動作や故障等の空調システム検査工程を実施可能である。
前記検査装置45は、開閉装置検査手段47を備えている。開閉装置検査手段47は、空調システム検査手段46が実施する空調システム検査工程において、開閉装置38が作動範囲の両端の第一位置から第二位置まで移動可能かどうかを検査する開閉装置検査工程の実施命令(後述のアクチュエータ検査フラグ)が設定された場合は、次回の電源投入時に開閉装置検査工程を実施する。
前記空調システム検査手段46は、少なくともエアミックスダンパ15、ベント用・フット用吹き出しモード切替ダンパ27・28、吸い込み口切替ダンパ34から構成される開閉装置38の各ダンパ15・27・28・34が、作動範囲の両端の第一位置及び第二位置でそれぞれ検出される第一正規値及び第二正規値を予め記憶している。
前記開閉装置検査手段47は、開閉装置検査工程の実施時に、駆動手段39であるエアミックスアクチュエータ16と吹き出しモード切替アクチュエータ29と吸い込み口切替アクチュエータ35とを用いて各ダンパ15・27・28・34を作動範囲の両端の第一位置から第二位置まで移動させた場合に、第一位置に位置したとされる場所で検出された第一検出値及び第二位置に位置したとされる場所で検出された第二検出値と、検査対象としている各ダンパ15・27・28・34の空調システム検査手段46に記憶してある第一正規値及び第二正規値とを比較して、各ダンパ15・27・28・34の作動が正常かどうかを判定する。
【0017】
次に、この実施例の作用を説明する。
空調システム1の検査装置45は、車両に搭載されている場合に、図4に示すように、イグニッションスイッチ(IGN)43のON(図6のt1)で、処理がスタートすると(A01)、空調システム検査工程によるシステム検査モードであるかを判断する(A02)。この判断(A02)がNOの場合は、この判断(A02)を繰り返す。システム検査モードがON(図6のt2)で、判断(A02)がYESの場合は、開閉装置検査工程の実施命令であるアクチュエータ検査フラグをONにする設定操作が有るかを判断する(A03)。
この判断(A03)がNOの場合は、判断(A02)に戻る。アクチュエータ検査フラグをONにする設定操作が有り、判断(A03)がYESの場合は、アクチュエータ検査フラグのON(図6のt3)に設定し(A04)、リターンする(A05)。
このように、開閉装置38の検査を行う場合は、この開閉装置38の検査を行う前の、空調システム検査工程おいてシステム検査を実施している(システム検査モード)ときに、開閉装置検査工程の実施命令であるアクチュエータ検査フラグをONにする設定を操作パネル42の操作により行う。アクチュエータ検査フラグのONの設定は、その後、イグニッションスイッチ43のOFFでシステム検査モードがOFF(図6のt4)になっても、空調システム検査手段46に保持される。
【0018】
次に、空調システム1の検査装置45は、図5に示すように、処理がスタートすると(B01)、OFF(図6のt4)されたイグニッションスイッチ(IGN)43がONになったかを判断する(B02)。この判断(B02)がNOの場合は、リターンする(B09)。イグニッションスイッチ43がON(図6のt5)になり、判断(B02)がYESの場合は、アクチュエータ検査フラグがONであるかを判断する(B03)。
この判断(B03)がNOの場合は、リターンする(B09)。この判断(B03)がYESの場合は、エアミックスアクチュエータ16のエアミックスモータ17によりエアミックスダンパ15を作動範囲の両端の第一位置(例えば、ヒータコア通路13の全閉位置、バイパス通路14の全開位置)から第二位置(例えば、ヒータコア通路13の全開位置、バイパス通路14の全閉位置)まで駆動し(B04)、エアミックスダンパ位置センサ18により第一位置に位置したとされる場所(図6のt5)で第一検出値を検出し、第二位置に位置したとされる場所(図6のt6)で第二検出値を検出する。
次に、吹き出しモード切替アクチュエータ29の吹き出しモード切替モータ30によりベント用・フット用吹き出しモード切替ダンパ27・28を作動範囲の両端の第一位置(例えば、センタベント・サイドベント吹き出し口22・23・24の全閉位置、フット吹き出し口25の全閉位置)から第二位置(例えば、センタベント・サイドベント吹き出し口22・23・24の全開位置、フット吹き出し口25の全開位置)まで駆動し(B05)、吹き出しモード切替ダンパ位置センサ31により第一位置に位置したとされる場所(図6のt6)で第一検出値を検出し、第二位置に位置したとされる場所(図6のt7、あるいはt8)で第二検出値を検出する。
さらに、吸い込み口切替アクチュエータ35の吸い込み口切替モータ36により吸い込み口切替ダンパ34を作動範囲の両端の第一位置(例えば、車室内空気吸い込み口32の全閉位置、車室外空気吸い込み口33の全開位置)から第二位置(例えば、車室内空気吸い込み口32の全開位置、車室外空気吸い込み口33の全閉位置)まで駆動し(B06)、吸い込み口切替ダンパ位置センサ37により第一位置に位置したとされる場所(図6のt7、あるいはt8)で第一検出値を検出し、第二位置に位置したとされる場所(図6のt9、あるいはt10)で第二検出値を検出する。
各ダンパ15・27・28・34を作動範囲の第一位置から第二位置まで駆動して位置を検出した後に、駆動途中でロック判定があったかを判断する(B07)。この判断(B07)は、第一位置に位置したとされる場所で検出された第一検出値及び第二位置に位置したとされる場所で検出された第二検出値と、検査対象としている各ダンパ15・27・28・34の空調システム検査手段46にそれぞれ記憶してある第一正規値及び第二正規値とを比較して、各ダンパ15・27・28・34の作動が正常かどうかを判定する。
例えば、吹き出しモード切替アクチュエータ29が途中で停止(図6のt7)して第二位置(図6のt8)まで達せず、ロック有りの判定で判断(B07)がYESの場合は、故障有りの信号を出力(図6のt7)して警告灯の点滅を行い(B08)、リターンする(B09)。
一方、吹き出しモード切替アクチュエータ28が途中で停止せずに第二位置(図6のt8)まで達し、ロック無しの判定で判断(B07)がNOの場合は、吸い込み口切替アクチュエータ35の停止(図6のt10)による検査の正常終了に合わせて、アクチュエータ検査フラグをOFF(図6のt10)にし(B10)、リターンする(B09)。なお、各アクチュエータ16・29・35は、検査の正常終了後に検査開始位置に戻し、以後は通常制御に従い駆動させる。
【0019】
このように、この空調システム1の検査装置45は、アクチュエータ検査フラグをONに設定した空調システム検査工程が終了して電源を遮断した後に、再び電源が投入されたときに、アクチュエータ検査フラグがONされているかを判断する。検査装置45は、アクチュエータ検査フラグがONである場合は、開閉装置検査工程による検査を実施し、各ダンパ15・27・28・34の作動が正常かどうかを判定する。検査装置45は、開閉装置検査工程において、異物S(図3参照)が挟まって各アクチュエータ16・29・35のロックが有ると判定した場合は故障有りの信号を出力し、正常と判定した場合はアクチュエータ検査フラグをOFFする。
したがって、この空調システム1の検査装置45は、空調風が通る通路3を開閉する開閉装置38が、作動範囲の両端の第一位置(例えば、全閉位置)及び第二位置(例えば、全開位置)まで、正常に作動可能かどうかを自動的に検査可能である。
これにより、この空調システム1の検査装置45は、作業者の技量に左右されることなく、開閉装置38の作動について精度の高い検査を実現することが可能である。
また、この空調システム1の検査装置45は、開閉装置38を、少なくともエアミックスダンパ15、ベント用・フット用吹き出しモード切替ダンパ27・28、吸い込み口切替ダンパ34から構成し、空調システム検査手段46は、各ダンパ15・27・28・34が作動範囲の両端の第一位置及び第二位置でそれぞれ検出される第一正規値及び第二正規値を予め記憶し、開閉装置検査手段47は、開閉装置検査工程の実施時に、駆動手段39を用いて各ダンパ15・27・28・34を作動範囲の両端の第一位置から第二位置まで移動させた場合に、第一位置に位置したとされる場所で検出された第一検出値及び第二位置に位置したとされる場所で検出された第二検出値と、検査対象としている各ダンパ15・27・28・34の空調システム検査手段46に記憶してある第一正規値及び第二正規値とを比較して、各ダンパ15・27・28・34の作動が正常かどうかを判定する。
これにより、この空調システム1の検査装置45は、予め設定された第一正規値及び第二正規値と検出された第一検出値及び第二検出値とを比較するだけで、開閉装置38が正常に作動可能かどうかを判定することができる。
なお、この実施例では、車両搭載後の空調システム1についてイグニッションスイッチ43のON・OFFにより検査装置45を動作させたが、車両に搭載される前の空調システム1については各アクチュエータ16・29・35の駆動電源のON・OFFにより検査装置45を動作させることができる。これにより、検査装置44による検査は、生産工場における空調システム1の製造時だけでなく、空調システム1を車両に搭載後の整備工場における整備時においても実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明は、空調風が通る通路を開閉する開閉装置が正常に作動可能かどうかを自動的に検査可能とし、作業者の技量に左右されることなく、開閉装置の作動について精度の高い検査を実現することことができるものであり、空調システムだけでなく、他の制御システムにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例を示す空調システムの検査装置のブロック図である。
【図2】実施例を示す空調システムの検査装置の概略構成図である。
【図3】実施例を示す通路のエアミックスダンパ部分の拡大構成図である。
【図4】実施例を示すアクチュエータ検査フラグ設定のフローチャートである。
【図5】実施例を示す開閉装置検査工程のフローチャートである。
【図6】実施例を示す開閉装置検査工程のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1 空調システム
2 空調ダクト
3 通路
4 ブロアファン
5 エバポレータ
6 ヒータコア
7 空調装置
15 エアミックスダンパ
16 エアミックスアクチュエータ
17 エアミックスモータ
18 エアミックスダンパ位置センサ
27 ベント用吹き出しモード切替ダンパ
28 フット用吹き出しモード切替ダンパ
29 吹き出しモード切替アクチュエータ
30 吹き出しモード切替モータ
31 吹き出しモード切替ダンパ位置センサ
34 吸い込み口切替ダンパ
35 吸い込み口切替アクチュエータ
36 吸い込み口切替モータ
37 吸い込み口切替ダンパ位置センサ
38 開閉装置
39 駆動手段
40 空調制御装置
43 イグニッションスイッチ
45 検査装置
46 空調システム検査手段
47 開閉装置検査手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸い込み口から空調装置を経て車室内へ吹き出される空調風の通る通路を開閉する開閉装置を備え、
この開閉装置を駆動する駆動手段を備えた空調システムの検査装置において、
前記空調システムの製造時、あるいは前記空調システムを車両に搭載後の整備時において、空調システム検査工程を実施可能な空調システム検査手段を備え、
この空調システム検査手段が実施する空調システム検査工程において、前記開閉装置が作動範囲の両端の第一位置から第二位置まで移動可能かどうかを検査する開閉装置検査工程の実施命令が設定された場合は、次回の電源投入時に前記開閉装置検査工程を実施する開閉装置検査手段を備えていることを特徴とする空調システムの検査装置。
【請求項2】
前記開閉装置は、少なくともエアミックスダンパ、吹き出しモード切替ダンパ、吸い込み口切替ダンパから構成され、
前記空調システム検査手段は、前記各ダンパが作動範囲の両端の第一位置及び第二位置でそれぞれ検出される第一正規値及び第二正規値を予め記憶しており、
前記開閉装置検査手段は、開閉装置検査工程の実施時に、前記駆動手段を用いて前記各ダンパを作動範囲の両端の第一位置から第二位置まで移動させた場合に、
第一位置に位置したとされる場所で検出された第一検出値及び第二位置に位置したとされる場所で検出された第二検出値と、検査対象としている各ダンパの前記第一正規値及び第二正規値とを比較して、
前記各ダンパの作動が正常かどうかを判定することを特徴とする請求項1に記載の空調システムの検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−132277(P2009−132277A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310182(P2007−310182)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】