説明

空調システム

【課題】放熱器を設置した各部屋ごとにその部屋を空調するために消費された個別の電力消費量を把握することができる空調システムを得ること。
【解決手段】温水を利用して複数の室内4を空調する空調システム100において、温水を加熱する温水加熱手段111と、温水を利用して前記複数の室内4の各々を空調する複数の放熱器2と、温水を前記温水加熱手段111と複数の前記放熱器2との間で循環させる温水循環手段112と、前記温水加熱手段111と前記温水循環手段112とを備えた熱源機1の電力消費量を計測する電力消費量計測手段114と、前記当該室内の容積を示す容積情報を設定する空調容積情報設定手段を有する、前記複数の室内毎に設けられた複数のコントローラ3を備え、前記電力消費量と前記容積情報に基づいて、複数の前記放熱器2それぞれのために消費された前記放熱器2毎の電力消費量を算出して対応する前記コントローラ3に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機、放熱器、及びコントローラを備えた空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房などに代表される空調システムは家庭内で使用される機器のなかで電力の消費が大きい機器である。また、運転時間や設定温度などによって電力の消費量が大きく増減する。こういった機器においては、電力消費量や電気料金をコントローラなどに表示し、電力消費量が大きい場合や電気料金が高い場合は、使用者が運転時間や設定温度を変更することによって、電力消費量の削減、省エネルギー化を図ることができる。
【0003】
従来、コンセントに付属させて設けた表示盤にコンセントに接続された機器の電力消費量を表示する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、リモコンの表示器に電力消費量や電気料金を表示する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−114034号公報
【特許文献2】特開2001−99465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の電力消費量表示方法では、機器全体の電力消費量の把握は可能であるが、例えば一機の熱源機と複数の放熱器を組み合わせて使用する空調システムにおいて、放熱器を設置した各部屋単位では、個別に電力消費量を把握することはできないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、放熱器を設置した部屋毎にその部屋を空調するために消費された個別の電力消費量を把握することができる空調システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、温水を利用して複数の室内を空調する空調システムにおいて、前記温水を加熱する温水加熱手段と、前記温水を利用して前記複数の室内の各々を空調する複数の放熱手段と、前記温水を前記温水加熱手段と複数の前記放熱手段との間で循環させる温水循環手段と、前記温水加熱手段と前記温水循環手段とを備えた熱源機の電力消費量を計測する電力消費量計測手段と、前記当該室内の容積を示す容積情報を設定する空調容積情報設定手段を有する、前記複数の室内毎に設けられた複数のコントローラを備え、前記電力消費量と前記容積情報に基づいて、複数の前記放熱手段それぞれのために消費された前記放熱手段毎の電力消費量を算出して対応する前記コントローラに表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放熱器を設置した部屋単位毎に個別に電力消費量や電気料金を把握することが可能となる。その結果、例えば、他の部屋と電力消費量を比較し、著しく電力消費量が多い部屋があった場合に、その部屋の設定温度を下げる、或いは不要に運転していると考えられる場合は運転を停止するなど、従来の空調システムより省エネルギーや節電を意識した使い方が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1乃至4にかかる空調システムの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1にかかる空調システムの熱源機の制御部及びコントローラの構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2にかかる空調システムの熱源機の制御部及びコントローラの構成を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態3にかかる空調システムの熱源機の制御部及びコントローラの構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態4にかかる空調システムの熱源機の制御部及びコントローラの構成を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態4にかかる所定の速度指令電圧を与えた場合の回転数と流量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる空調システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる空調システムの実施の形態1の空調システム100の構成を示す図である。
【0012】
空調システム100は、熱源機1と、温水を利用して室内4を空調する放熱手段である放熱器2と、放熱器2と対をなす熱源機1の制御手段であるコントローラ3と、熱源機1と放熱器2を接続する温水配管5と、熱源機1とコントローラ3とを接続する配線群6とを備える。
【0013】
ここで、本実施の形態においては、室内4は複数あり、複数の室内それぞれにコントローラ3および放熱器2が備えられているとする。温水配管5は、各室内にある複数の放熱器2と一機の熱源器1を配管接続している。
【0014】
熱源機1は、熱源機1と複数の放熱器2との間を循環する温水を加熱する温水加熱手段111と、熱源機1と複数の放熱器2との間で温水を循環させる温水循環手段112と、各室内毎に、「開」または「閉」に切り替えることにより温水循環手段112から複数の放熱器2への温水の送水を開始または停止することができる温水回路開閉手段113と、熱源機1の電力消費量を計測する電力消費量計測手段114と、コントローラ3と配線群6を介して相互通信して熱源機1の各動作を制御する制御部120とを備える。
【0015】
温水加熱手段111としては、電気ヒーター式、ヒートポンプ式、ガス式、石油ボイラー式等の方式が考えられるが、これらの方式に限定されるものではない。
【0016】
配線群6は、制御部120を介して配線61、62、及び複数の配線63を含み、さらに配線64、65、69(図1では示さず)を含んでいる。また、配線61は制御部120と温水加熱手段111とを、配線62は制御部120と温水循環手段112とを、複数の配線63は制御部120と複数の温水回路開閉手段113とをそれぞれ接続している。
【0017】
これにより複数のコントローラ3は、制御部120を介して温水加熱手段111、温水循環手段112、それぞれのコントローラ3と対をなすそれぞれの放熱器に対応するそれぞれの温水回路開閉手段113を制御することができる。
【0018】
放熱器2としては、床暖房パネル、パネルラジエター、ファンコンベクターなどが考えられるが、一機の熱源機1に対して、複数の放熱器を接続することが可能である。なお、放熱器2はコントローラ3と一体のものであっても良い。
【0019】
温水配管5は、熱源機1において加熱することにより生成した温水を複数の放熱器2へ送水する往き水管51と、複数の放熱器2においてそれぞれの室内4に熱量を放熱した温水を熱源機1に循環させる戻り水管52とから構成される。温水配管5は銅配管や樹脂配管が使用されるが、これらの材料に限定されるものではない。
【0020】
なお、前記した複数の温水回路開閉手段113は往き水管51ではなくて、戻り水管52に備えられていてもかまわない。
【0021】
図2は、本発明にかかる空調システムの実施の形態1の熱源機1の制御部120及びコントローラ3の構成を示す図である。
【0022】
熱源機1の制御部120は電力消費量計測手段114での計測した電力消費量を記憶する電力消費量記憶部121と、放熱器2のために消費した電力消費量の算出を行う演算手段129を備える。なお、電力消費量記憶部121、演算手段129は、必ずしも制御部120内に備えられている必要はなく、制御部120の外部に備えられていてもかまわない。
【0023】
各コントローラ3は、熱源機1および放熱器2の運転の「入」または「切」を切り替えることができる運転入/切設定手段301、当該コントローラ3が設置された室内4の空調面積を設定するための空調面積設定手段321、空調面積設定手段321によって設定された空調面積を記憶する空調面積記憶部322、空調面積設定手段321によって設定された空調面積を確認するための空調面積表示部323、電力消費量記憶部121から送信される熱源機1で消費された電力消費量および放熱器2のために消費された電力消費量を記憶する電力消費量記憶部332、電力消費量記憶部332に記憶された電力消費量を確認するための電力消費量表示部333、電力消費量記憶部332に記憶されている電力消費量を消去する電力量積算リセット手段341、空調システム100が使用する電気料金の単価を設定する電気料金単価設定手段351、電気料金単価設定手段351によって設定された電気料金単価を記憶する電気料金単価記憶部352、電気料金単価設定手段351によって設定された電気料金単価を確認するための電気料金単価表示部353、電力消費量記憶部332に記憶されている放熱器2のために消費された電力消費量と電気料金単価記憶部352に記憶された電気料金単価に基づいて放熱器2のために使用した電気料金を算出する電気料金演算手段361、電気料金演算手段361によって算出された電気料金を記憶する電気料金記憶部362、電気料金演算手段361によって算出された電気料金を確認することができる電気料金表示部363を備える。
【0024】
また、図2に示されるように、配線61は制御部120を介して運転入/切設定手段301と温水加熱手段111とを、配線62は制御部120を介して運転入/切設定手段301と温水循環手段112とを、配線63は制御部120を介して運転入/切設定手段301と当該コントローラ3に対応する温水回路開閉手段113とを、配線64は電力消費量記憶部121と電力消費量記憶部332とを、配線65は空調面積記憶部322と演算手段129とを、配線69は演算手段129と電力消費量記憶部332とをそれぞれ接続している。
【0025】
なお、本実施の形態においては、熱源機1とコントローラ3との接続は配線群6による有線接続としたが、同等の機能が実現できるのであれば無線接続であってもかまわない。
【0026】
さらに、運転入/切設定手段301と、温水加熱手段111、温水循環手段112、温水回路開閉手段113との接続は必ずしも制御部120を介さなくてもかまわない。
【0027】
空調面積設定手段321へは、施工時などの空調システム100の運転開始前に、当該コントローラ3と対をなす放熱器2が備えられた室内4の空調面積が予め入力される。空調面積設定手段321に入力された空調面積は、空調面積記憶部322に記憶されるとともに、熱源機1にデータとして送信される。
【0028】
熱源機1では複数のコントローラ3から送信された空調面積のデータを演算手段129において積算し、空調システム100全体の空調面積を算出する。また、施工時などの空調システム100の運転開始前に、電気料金単価設定手段351には予め電気料金単価が入力され、その値は電気料金単価記憶部352に記憶される。
【0029】
以下、本実施の形態における空調システム100の運転時の動作について説明する。
【0030】
コントローラ3の運転入/切設定手段301で運転「入」の操作が行われると、熱源機1は制御部120を介し配線63からの制御信号に従って、運転「入」の操作が行われたコントローラ3と対をなす放熱器2に接続された往き水管51の温水回路開閉手段113を「開」とする。それと同時に、配線61及び配線62からの制御信号に従ってそれぞれ温水加熱手段111、温水循環手段112を運転させて、温水を循環させる。
【0031】
これにより、当該コントローラ3と対をなす放熱器2に往き水管51及び戻り水管52を介して温水を循環させることが可能となり、当該コントローラ3がそなえられた室内4を暖房する。
【0032】
室内温度が設定温度に達した場合、或いは、運転入/切設定手段301で運転の「切」操作が行われた場合、当該コントローラ3は、熱源機1に運転停止の制御信号を送る。熱源機1は、当該コントローラ3と対をなす放熱器2が接続された温水回路開閉手段113を「閉」とする。
【0033】
すべてのコントローラ3から運転停止の制御信号が送信されるなどして、すべてのコントローラ3が熱源機1に運転の停止を要求してきた場合、熱源機1は停止状態に置かれる。また、いずれかのコントローラ3から運転要求の制御信号を送信されるなどして、熱源機1に運転の要求をしているコントローラ3が1台でもある場合は、熱源機1は運転を継続する。
【0034】
熱源機1はコントローラ3からの運転要求の有無に関わらず、常に、電力消費量計測手段114で電力消費量を計測し、計測した電力消費量を電力消費量記憶部121に積算保持する。
【0035】
また、電力消費量記憶部121に積算保持された電力消費量データは、例えば1時間毎など定期的に、配線64を介してコントローラ3の電力消費量記憶部332へ送信されて記憶される。
【0036】
電力消費量リセット手段341にてリセット操作が行われると、コントローラ3は熱源機1へ電力消費量リセット指示を行い、熱源機1は電力消費量記憶部121に記憶された電力消費量データをリセットし、再度、電力消費量の積算を開始する。この時、全てのコントローラ3の電力消費量記憶部332に記憶された電力消費量データもリセットされる。
【0037】
熱源機1の演算手段129において、電力消費量記憶部121に積算記憶されている空調システム100全体の電力消費量を、各コントローラ3の空調面積記憶部322に記憶されている室内4各々の空調面積と、コントローラ3毎の空調面積を積算した空調システム100全体の空調面積データとで按分することにより、各コントローラ3で空調している各々の室内4のために消費された各々の電力消費量を算出することが可能である。
【0038】
ここで算出された各室内4毎の電力消費量を、配線69を介して各々のコントローラ3に送信することにより、その値が当該コントローラ3の電力消費量記憶部332に記憶される。また、上記した演算手段129の機能を各々のコントローラ3内部に設定することにより、これらの演算処理を各々のコントローラ3において行うことも可能である。
【0039】
各コントローラ3で電力消費量表示操作が行われた場合は、当該コントローラ3の電力消費量記憶部332に記憶された当該コントローラ3が備えられた室内4の空調のために消費された電力消費量が電力消費量表示部333に表示される。
【0040】
また、各コントローラ3で電気料金表示操作が行われた場合は、前述の電力消費量表示操作が行われた場合と同様に、各コントローラ3で空調制御している室内4の空調のために消費された電力消費量を算出して電力消費量記憶部332に記憶させる。電力消費量記憶部332に記憶された電力消費量に電気料金単価記憶部352に記憶された電気料金単価を電気料金演算手段361において乗算することにより、当該室内4の空調のためにかかった電気料金を算出し、電気料金表示部363に表示する。
【0041】
また、上記実施の形態においては、空調している各々の室内4の面積に基づいて、室内4それぞれの空調のために消費された電力消費量を算出した場合について説明したが、空調している部屋の容積情報をより直接的に示す容積そのものを用いることも可能である。
【0042】
これにより、室内の高さがそれぞれ異なる部屋を空調する場合において、更に精度を高めて各部屋の電力消費量及び電気料金を算出することが可能となる。この場合、上記空調面積は空調容積に、上記空調面積設定手段321は空調容積設定手段に、空調面積記憶部322は空調容積記憶部に、空調面積表示部323は空調容積表示部に、それぞれ置きかわるが、それ以外は上記と同様である。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によって、複数の放熱器2を設置した各部屋単位で、当該室内4の空調のために個別に消費された電力消費量や生じた電気料金を把握することが可能となる。
【0044】
これにより、例えば、特定の部屋と他の部屋それぞれの空調のために個別に消費された電力消費量を比較し、著しく電力消費量が多い部屋があった場合には、その部屋の設定温度を下げる、或いは不要に運転していると考えられる場合は運転を停止することができるようになる。したがって、従来の空調システムより省エネルギーや節電を意識した使い方が可能になる。
【0045】
実施の形態2.
本発明の本実施の形態2にかかる空調システム100の構成は、図1で示した部分に関しては、実施の形態1と同様である。
【0046】
ただし、以下の点で実施の形態1とは異なる。図3は、本発明にかかる空調システムの実施の形態2の熱源機1の制御部120及びコントローラ3の構成を示す図である。
【0047】
図3の実施の形態2の各コントローラ3は、実施の形態1のコントローラ3の構成を示す図2に対して、以下の追加がなされている。即ち、当該コントローラ3が備えられた室内4に対して熱源機1が運転している運転時間を計測する計時手段311と、計時手段311によって計測された運転時間を記憶する運転時間記憶部312がさらに追加されている。
【0048】
運転時の動作は実施の形態1の動作に加え、各コントローラ3が熱源機1に運転要求を行っている間、当該コントローラ3の計時手段311が計時作業を行い、運転時間記憶部312に当該放熱器2の運転時間として記憶させる。そして、例えば1時間毎など定期的に、熱源機1へ計時された運転時間のデータが配線66を介して送信される。
【0049】
熱源機1では演算手段129で各コントローラ3から送信された運転時間のデータと当該各部屋の空調面積のデータを乗算する。この乗算処理を設置されている各々のコントローラ3すべてについて行い、各々の乗算結果の値を合計する。
【0050】
電力消費量計測手段114で計測されたデータをもとに、熱源機1の電力消費量記憶部121に積算記憶されている空調システム100全体の電力消費量を、演算手段129において以下のように按分する。
【0051】
即ち、空調システム100全体の電力消費量を、各コントローラ3の空調面積記憶部322に記憶されている当該室内4の空調面積と運転時間記憶部312に積算記憶されている放熱器2の運転時間の各々の乗算結果と、各々の乗算結果を全て積算した値、即ち空調システム全体での累計となる空調面積と運転時間の乗算結果の積算値とで按分する。
【0052】
これにより、演算手段129において各コントローラ3で空調している室内4のために消費された電力消費量を算出することが可能となる。その値を、配線69を介して当該コントローラ3に送信して、当該コントローラ3の電力消費量記憶部332に記憶させる。
【0053】
また、演算手段129のこれらの機能を各コントローラ3内部に設定することで、上記演算処理を各コントローラ3にて行うことも可能である。
【0054】
各コントローラ3で電力消費量表示操作が行われた場合は、実施の形態1と同様に、電力消費量記憶部332に記憶された当該コントローラ3が備えられた室内4の空調のために消費された電力消費量が電力消費量表示部333に表示される。
【0055】
また、各コントローラ3で電気料金表示操作が行われた場合は、実施の形態1と同様に当該室内4の空調のためにかかった電気料金を算出し、電気料金表示部363に表示する。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態においては、実施の形態1で使用した部屋毎の空調面積のデータに加えて、各部屋に対して熱源機が実際に空調を行った運転時間のデータも使用して各部屋の電力消費量と電気料金を算出する。
【0057】
これにより、各放熱器を設置したそれぞれの部屋に対して熱源機が実際に空調を行った運転時間が異なる状況下においては、各部屋の空調面積の比率から部屋毎に電力消費量や電気料金を算出した実施の形態1の空調システムに比べて、より高い精度で部屋毎の電力消費量や電気料金把握することが可能となる。
【0058】
その結果、例えば、特定の部屋と他の部屋それぞれの空調のために個別に消費された電力消費量を比較し、著しく電力消費量が多い部屋があった場合には、その部屋の設定温度を下げる、或いは不要に運転していると考えられる場合は運転を停止することができるようになる。したがって、従来の空調システムより省エネルギーや節電を意識した使い方が可能になる。
【0059】
また、上記実施の形態においても、面積に変えて空調している各々の室内4の容積情報をより直接的に示す容積そのものを用いることも可能である。これにより、室内の高さがそれぞれ異なる部屋を空調する場合において、更に精度を高めて部屋毎の電力消費量及び電気料金を算出することが可能となる。
【0060】
この場合も、上記空調面積は空調容積に、上記空調面積設定手段321は空調容積設定手段に、空調面積記憶部322は空調容積記憶部に、空調面積表示部323は空調容積表示部に、それぞれ置きかわるが、それ以外は上記と同様である。
【0061】
実施の形態3.
本発明の本実施の形態3にかかる空調システム100の構成は、図1で示した部分に関しては、実施の形態1及び2と同様である。
【0062】
ただし、以下の点で実施の形態1及び2とは異なる。
【0063】
図4は、本発明にかかる空調システムの実施の形態3の熱源機1の制御部120及びコントローラ3の構成を示す図である。即ち、図4においては、実施の形態1にかかる図2に示されているコントローラ3の空調面積設定手段321、空調面積記憶部322、空調面積表示部323、配線65等がない。そのかわりに、熱源機1に複数の流量検知手段122が新たに備えられている。
【0064】
流量検知手段122は、放熱器2に流れる温水流量を検知することができ、これら複数の流量検知手段122は、各々の放熱器2に流れる温水流量をそれぞれ個別に検知できるように、放熱器2の台数分、即ち空調する室内4の数だけ設けられている。
【0065】
ただし、複数の放熱器2で一つの部屋の空調を行うことも可能であり、その場合、放熱器2の台数と流量検知手段122の数は必ずしも合致している必要はない。また、これら複数の流量検知手段122は、熱源機1の外に備えられていてもかまわない。
【0066】
以下、本実施の形態における空調システム100の運転時の動作について説明する。
【0067】
コントローラ3の運転入/切設定手段301で運転「入」の操作が行われると、熱源機1は制御部120を介し配線63からの制御信号に従って、運転「入」の操作が行われたコントローラ3と対をなす放熱器2に接続された往き水管51の温水回路開閉手段113を「開」とする。それと同時に、配線61及び配線62からの制御信号に従ってそれぞれ温水加熱手段111、温水循環手段112を運転さて、温水を循環させる。
【0068】
これにより、当該コントローラ3と対をなす放熱器2に往き水管51及び戻り水管52を介して温水を循環させることが可能となり、当該コントローラ3がそなえられた室内4を暖房する。
【0069】
その際、熱源機1内に各放熱器2に備えられた流量検知手段122を用いて、各放熱器2に流された温水流量を検知する。温水流量は、温水配管5、即ち、往き水管51及び戻り水管52のどの位置で検知してもかまわない。
【0070】
検知された部屋毎の温水流量は部屋毎に積算され、所定の記憶装置(図示せず)に記憶される。従って、複数の放熱器2が運転状態にある場合はそれぞれの放熱器2に流された温水流量をそれぞれ独立して積算して記憶させる。
【0071】
演算手段129では複数の放熱器2に流れる温水流量を合計し、空調システム100全体で循環させられた温水流量を算出する。更に空調システム100全体の温水流量を積算し、所定の記憶装置(図示せず)に記憶する。
【0072】
熱源機1の演算手段129において、電力消費量記憶部121に積算記憶されている空調システム100全体の電力消費量を、各放熱器2の積算温水流量と、空調システム全体の積算温水流量とで按分することにより、各コントローラ3で空調している各々の室内4のために消費された各々の電力消費量を算出することが可能である。
【0073】
ここで算出された室内4毎の電力消費量を、配線69を介して各々のコントローラ3に送信することにより、その値が当該コントローラ3の電力消費量記憶部332に記憶させる。
【0074】
また、上記した演算手段129の機能を各々のコントローラ3内部に設定することにより、これらの演算処理を各々のコントローラ3において行うことも可能である。
【0075】
各コントローラ3で電力消費量表示操作が行われた場合は、実施の形態1と同様に、当該コントローラ3の電力消費量記憶部332に記憶された当該コントローラ3が備えられた室内4の空調のために消費された電力消費量が電力消費量表示部333に表示される。
【0076】
また、各コントローラ3で電気料金表示操作が行われた場合は、実施の形態1と同様に当該室内4の空調のためにかかった電気料金を算出し、電気料金表示部363に表示する。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態においては、実施の形態1及び2でコントローラ3に備えられていた空調面積設定手段321、空調面積記憶部322、空調面積表示部323、計時手段311、運転時間記憶部312を設ける必要がない。従って、実施の形態1及び2に比べ、コントローラ3の構成が簡易化できる。
【0078】
そのかわりに、熱源機1に複数の放熱器2のそれぞれに流れる温水流量を検知する流量検知手段122を放熱器2の数だけ設けることによって、コントローラ3に空調面積等のデータを入力する必要がなくなる。これにより、実施の形態1及び2のコントローラ3に比べて利用者にとってより使い易いものとなる。
【0079】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4にかかる空調システム100の構成は、図1で示した部分に関しては、実施の形態1乃至3と同様である。
【0080】
ただし、以下の点で実施の形態1乃至3とは異なる。図5は、本発明にかかる空調システムの実施の形態4の熱源機1の制御部120及びコントローラ3の構成を示す図である。即ち、図5においては、実施の形態2にかかる図3に示されているコントローラ3の空調面積設定手段321、空調面積記憶部322、空調面積表示部323、配線65等がない。そのかわりに、熱源機1に回転数―流量特性記憶部123が新たに備えられている。
【0081】
また、熱源機1の温水循環手段112は速度指令電圧に応じて回転数を可変し、回転数フィードバック信号の送信が可能なポンプ、例えばDCポンプを用いる。熱源機1の回転数―流量特性記憶部123には予め、所定の速度指令電圧を与えた場合の回転数と温水流量の関係が記憶されている。
【0082】
図6は、本発明にかかる空調システムの実施の形態4における、所定の速度指令電圧を与えた場合の回転数と温水流量の関係の一例を示す図である。図6からわかるように、速度指令電圧を固定した場合、回転数が高いほど温水流量が小さく、回転数が低いほど温水流量が大きいという特性があり、回転数が既知であれば、その時の温水流量を算出することが可能である。
【0083】
以下、本実施の形態における空調システム100の運転時の動作について説明する。
【0084】
本実施の形態の空調システム100は、初期運転時に図1に示す温水回路開閉手段113を各部屋に対応する1回路ずつ順に開閉する。温水循環手段112は所定の速度指令電圧で運転させる。これにより得られた回転数フィードバック信号は演算手段129に入力される(図示せず)。
【0085】
上記回転数フィードバック信号と回転数―流量特性記憶部123に予め記憶された図6に示した回転数―流量特性とから、各部屋に対応する温水回路1回路毎にそれぞれ単独運転した場合の温水流量を、演算手段129において算出する。
【0086】
即ち、本実施の形態においては、温水循環手段112に速度指令電圧に応じて回転数を可変し、回転数フィードバック信号の送信が可能なDCポンプを用いるので、各部屋に対応する温水回路1回路毎にそれぞれ単独運転した場合の当該ポンプの回転数が得られる。そして得られた回転数に基づいて、図6の関係から各部屋に単独運転した場合の温水流量を求めることが可能である。
【0087】
これにより、各部屋にその部屋に備えられた放熱器2にのみ温水が循環するようにして空調した場合の温水流量を算出する。算出された、各部屋に対応する温水回路毎の温水流量は、所定の記憶装置(図示せず)に記憶される。
【0088】
上記のようにして各部屋単独運転毎に得られた温水流量の比は、空調システム全体を運転したとき、即ち全部屋同時に温水を流して空調をしたときに各室内4の各放熱器2を流れる温水流量の比になっていることが分かっている。以下の説明はこの考えに基づいている。
【0089】
以降の運転においては、各コントローラ3で熱源機1に運転要求を行っている間、当該コントローラ3の計時手段311が計時作業を行い、運転時間記憶部312に当該放熱器2の運転時間として記憶させる。そして、例えば1時間毎など定期的に、熱源機1へ計時された運転時間のデータが配線66を介して送信される。
【0090】
熱源機1では演算手段129で各コントローラ3から送信された運転時間のデータと当該各部屋に対応する温水流量のデータを乗算する。この乗算処理を設置されている各々のコントローラ3すべてについて行い、各々の乗算結果の値を合計する。
【0091】
電力消費量計測手段114で計測されたデータをもとに、熱源機1の電力消費量記憶部121に積算記憶されている空調システム100全体の電力消費量を、演算手段129において以下のように按分する。
【0092】
即ち、空調システム100全体の電力消費量を、各コントローラ3から送信された運転時間とコントローラ3と対をなす放熱器2を単独で運転した時の温水流量の乗算結果と、各々の乗算結果を全て積算した値、即ち空調システム全体の運転時間と単独運転時の温水流量の乗算結果の積算値とで按分する。
【0093】
これにより、演算手段129において各コントローラ3で空調している室内4のために消費された電力消費量を算出することが可能となる。その値を、配線69を介して当該コントローラ3に送信して、当該コントローラ3の電力消費量記憶部332に記憶させる。
【0094】
また、各放熱器2を単独で運転した時の温水流量のデータを各コントローラ3に与えることが出来れば、演算手段129のこれらの機能をコントローラ3内部に設定することで、上記演算処理を各コントローラ3にて行うことも可能である。
【0095】
各コントローラ3で電力消費量表示操作が行われた場合は、実施の形態1と同様に、電力消費量記憶部332に記憶された当該コントローラ3が備えられた室内4の空調のために消費された電力消費量が電力消費量表示部333に表示される。
【0096】
また、各コントローラ3で電気料金表示操作が行われた場合は、実施の形態1と同様に当該室内4の空調のためにかかった電気料金を算出し、電気料金表示部363に表示する。
【0097】
以上説明したように、本実施の形態においては、熱源機1の温水循環手段112に速度指令電圧に応じて回転数を可変し、回転数フィードバック信号の送信が可能なDCポンプを用い、回転数―流量特性から温水流量を算出する。これにより、実施の形態1及び2のように各コントローラ3に各部屋の空調面積を入力する必要がなく、利用者にとってより使い易いものとなる。
【0098】
また、実施の形態3で使用した図4の流量検知手段122が不要となるため、熱源機1の構造を簡略化でき、空調システム全体のコストの低減にもつながる。
【0099】
なお、以上説明した実施の形態1乃至4においては、熱源機1とコントローラ3との接続は配線群6による有線接続としたが、同等の機能が実現できるのであれば、無線接続であってもかまわない。また、実施の形態1乃至4で用いた図1においては、各コントローラ3は、隣接する部屋同士の各コントローラ3が配線で接続することにより熱源機1の制御部120と通信するように示されているが、各コントローラ3が直接制御部120と配線接続されていても構わない。
【0100】
実施の形態1乃至4の全てにおいて個別に消費された電力消費量や生じた電気料金を把握することが可能となり、各々の部屋それぞれの空調のために個別に消費された電力消費量を比較し、著しく電力消費量が多い部屋があった場合には、その部屋の設定温度を下げる、或いは不要に運転していると考えられる場合は運転を停止することができるようになる。したがって、上記実施の形態により、従来の空調システムより省エネルギーや節電を意識した使い方が可能になる。
【0101】
さらに、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出されうる。例えば、実施の形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出されうる。更に、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように、本発明にかかる空調システムは、床暖房などに代表される暖房機器に有用であり、特に、電力消費量の削減、省エネルギー化が望まれる家庭内空調システムに適している。
【符号の説明】
【0103】
1 熱源機
2 放熱器
3 コントローラ
4 室内
5 温水配管
51 往き水管
52 戻り水管
6 配線群
61、62、63、64、65、66、69 配線
100 空調システム
111 温水加熱手段
112 温水循環手段
113 温水回路開閉手段
114 電力消費量計測手段
120 制御部
121 電力消費量記憶部
122 流量検知手段
123 回転数−流量特性記憶部
129 演算手段
301 運転入/切設定手段
311 計時手段
312 運転時間記憶部
321 空調面積設定手段
322 空調面積記憶部
323 空調面積表示部
332 電力消費量記憶部
333 電力消費量表示部
341 電力消費量リセット手段
351 電気料金単価設定手段
352 電気料金単価記憶部
353 電気料金単価表示部
361 電気料金演算手段
362 電気料金記憶部
363 電気料金表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を利用して複数の室内を空調する空調システムにおいて、
前記温水を加熱する温水加熱手段と、
前記温水を利用して前記複数の室内の各々を空調する複数の放熱手段と、
前記温水を前記温水加熱手段と複数の前記放熱手段との間で循環させる温水循環手段と、
前記温水加熱手段と前記温水循環手段とを備えた熱源機の電力消費量を計測する電力消費量計測手段と、
前記当該室内の容積を示す容積情報を設定する空調容積情報設定手段を有する、前記複数の室内毎に設けられた複数のコントローラを備え、
前記電力消費量と前記容積情報に基づいて、複数の前記放熱手段それぞれのために消費された前記放熱手段毎の電力消費量を算出して対応する前記コントローラに表示することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
温水を利用して複数の室内を空調する空調システムにおいて、
前記温水を加熱する温水加熱手段と、
前記温水を利用して前記複数の室内の各々を空調する複数の放熱手段と、
前記温水を前記温水加熱手段と複数の前記放熱手段との間で循環させる温水循環手段と、
前記温水加熱手段と前記温水循環手段とを備えた熱源機の電力消費量を計測する電力消費量計測手段と、
前記当該室内の容積を示す容積情報を設定する空調容積情報設定手段を有する、前記複数の室内毎に設けられた複数のコントローラと、
複数の前記放熱手段それぞれに対して前記熱源機が運転しているそれぞれの運転時間を計測する複数の計時手段を備え、
前記電力消費量と前記運転時間と前記容積情報に基づいて、複数の前記放熱手段それぞれのために消費された前記放熱手段毎の電力消費量を算出して対応する前記コントローラに表示することを特徴とする空調システム。
【請求項3】
温水を利用して複数の室内を空調する空調システムにおいて、
前記温水を加熱する温水加熱手段と、
前記温水を利用して前記複数の室内の各々を空調する複数の放熱手段と、
前記温水を前記温水加熱手段と複数の前記放熱手段との間で循環させる温水循環手段と、
前記温水加熱手段と前記温水循環手段とを備えた熱源機の電力消費量を計測する電力消費量計測手段と、
複数の前記放熱手段それぞれに流れる温水流量をそれぞれ個別に検知する複数の流量検知手段と、
前記複数の室内毎に設けられた複数のコントローラを備え、
前記電力消費量と前記温水流量に基づいて、複数の前記放熱手段それぞれのために消費された前記放熱手段毎の電力消費量を算出して対応する前記コントローラに表示することを特徴とする空調システム。
【請求項4】
温水を利用して複数の室内を空調する空調システムにおいて、
前記温水を加熱する温水加熱手段と、
前記温水を利用して前記複数の室内の各々を空調する複数の放熱手段と、
前記温水を前記温水加熱手段と複数の前記放熱手段との間で循環させる、速度指令電圧に応じて回転数を可変し、回転数フィードバック信号の送信が可能なポンプを備えた温水循環手段と、
前記温水加熱手段と前記温水循環手段とを備えた熱源機の電力消費量を計測する電力消費量計測手段と、
複数の前記放熱手段それぞれに対して前記熱源機が運転しているそれぞれの運転時間を計測する複数の計時手段と、
前記ポンプの回転数に基づいて、複数の前記放熱手段それぞれを単独運転した場合の温水流量を求める手段と、
前記複数の室内毎に設けられた複数のコントローラを備え、
前記電力消費量と前記運転時間と前記放熱手段それぞれを単独運転した場合の温水流量に基づいて、複数の前記放熱手段それぞれのために消費された前記放熱手段毎の電力消費量を算出して対応する前記コントローラに表示することを特徴とする空調システム。
【請求項5】
算出された前記放熱手段毎の電力消費量に電気料金単価を乗ずることにより前記放熱手段毎の電気料金を算出する電気料金演算手段をさらに備え、
前記放熱手段毎の電気料金を、それぞれに対応する前記コントローラに表示することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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