説明

空調システム

【課題】建物の空調を行いつつ低エネルギー化を図ることが可能な空調システムを提供することを課題とする。
【解決手段】空調機2は、運転モードとして建物100の温度を調節する冷房手段及び暖房手段と建物100の外気を建物100の内部に送風する送風手段とを備えており、建物の外部の温度が設定温度範囲に含まれない場合、冷房手段又は暖房手段が作動し、建物の外部の温度が設定温度範囲に含まれる場合、送風手段に切り換わることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の全体の空調を行う空調システムが知られている。この空調システムは、例えば、冷房、暖房、除湿、加湿、空気洗浄、脱臭等を行うことができる複合型の空調機と、この空調機と各居室や廊下等を連結するダクトと、空調機を制御する制御部とで主に構成されている。制御部は、例えば利用者が設定した温度を記憶できるようになっており、建物の内部がその設定した温度となるように空調機を制御する。このような空調システムは、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
例えば、従来の空調システムでは、建物の内部の空気が、利用者が予め設定した温度から外れている場合は、強冷房又は強暖房を作動させて設定した温度になるように運転し、建物の内部の空気が利用者が予め設定した温度になった場合は、例えば弱冷房又は弱暖房を作動させてその設定した温度を維持するように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−229588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の空調システムは、例えば、夏季の夜等、建物の外部の温度が低下してその温度が、利用者が設定した温度と同等になる場合であっても、熱交換等を行って空調を行っていた。しかしながら、このような場合にまで、熱交換等を行って空調を行うことは、必要以上のエネルギーが消費されていることになる。利用者が空調システムをOFFにしたり、運転モードを切り換えたりすることで対応することはできるが、利用者に操作負担を強いることになる。
【0006】
本発明は、前記した問題に鑑みて創案されたものであり、建物の空調を行いつつ省エネルギー化を図ることが可能な空調システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、運転モードとして冷房手段、暖房手段及び送風手段を備えた空調機と、建物の外部の温度を計測する建物外計測手段と、利用者が設定した前記建物の内部に係る設定温度範囲と、前記建物の外部の温度と前記設定温度範囲とに対応した運転モードの切換条件と、を予め記憶する記憶手段と、複数の前記運転モードのうち、前記切換条件に適合した前記運転モードを選択する運転モード選択手段と、前記運転モード選択手段で選択された運転モードに前記空調機の運転を切り換える運転モード切換手段と、を有し、前記建物の外部の温度が前記設定温度範囲に含まれない場合、前記運転モードが前記冷房手段又は暖房手段に切り換わり、前記建物の外部の温度が前記設定温度範囲に含まれる場合、前記運転モードが前記送風手段に切り換わることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、建物の外部の温度が、利用者が設定した設定温度範囲に含まれている場合は、空調機の運転モードを送風手段に切り換えて建物の内部に外気をそのまま取り入れる。送風手段は、冷房手段や暖房手段に比べて消費するエネルギーが少ないため、省エネルギー化を図ることができる。また、設定温度範囲に含まれている外気を取り入れることで、建物の内部を利用者が望む環境に空調することができる。また、予め記憶された切換条件に基づいて運転モードが切り換わるため、利用者の操作負担を低減することができる。また、利用者は、温度の範囲を設定できるため、空調機にかかる負担を軽減できるとともに、環境共生効果も増大させることができる。
【0009】
また、本発明は、運転モードとして冷房手段、暖房手段及び送風手段を備えた空調機と、建物の外部の温度を計測する建物外計測手段と、前記建物の内部の温度を計測する建物内計測手段と、利用者が設定した前記建物の内部に係る設定温度範囲と、前記建物の外部の温度と内部の温度と前記設定温度範囲とに対応した前記運転モードの切換条件と、を予め記憶する記憶手段と、複数の前記運転モードのうち、前記切換条件に適合した前記運転モードを選択する運転モード選択手段と、前記運転モード選択手段で選択された運転モードに前記空調機の運転を切り換える運転モード切換手段と、を有し、前記建物の外部の温度が前記設定温度範囲に含まれない場合、及び、前記建物の外部の温度が設定温度範囲に含まれるが内部の温度が設定温度範囲に含まれない場合、前記運転モードが前記冷房手段又は暖房手段に切り換わり、前記建物の外部の温度が前記設定温度範囲に含まれ、かつ、前記建物の内部の温度が前記設定温度範囲に含まれる場合、前記運転モードが前記送風手段に切り換わることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、建物の外部と内部の温度が、設定温度範囲に含まれている場合は、空調機の運転モードを送風手段に切り換えて建物の内部に外気をそのまま取り入れる。送風手段は、冷房手段や暖房手段に比べて消費するエネルギーが少ないため、省エネルギー化を図ることができる。また、建物の外部及び内部の温度が設定温度範囲に含まれた状態で、設定温度範囲に含まれている外気を取り入れることで、快適性を向上させることができる。また、予め記憶された切換条件に基づいて運転モードが切り換わるため、利用者の操作負担を低減することができる。また、利用者は、例えば温度の範囲を設定できるため、空調機にかかる負担を軽減できるとともに、環境共生効果も増大させることができる。
【0011】
また、本発明は、運転モードとして除湿手段、加湿手段及び送風手段を備えた空調機と、建物の外部の湿度を計測する建物外計測手段と、利用者が設定した前記建物の内部に係る設定湿度範囲と、前記建物の外部の湿度と前記設定湿度範囲とに対応した運転モードの切換条件と、を予め記憶する記憶手段と、複数の前記運転モードのうち、前記切換条件に適合した前記運転モードを選択する運転モード選択手段と、前記運転モード選択手段で選択された運転モードに前記空調機の運転を切り換える運転モード切換手段と、を有し、前記建物の外部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれない場合、前記運転モードが前記除湿手段又は加湿手段に切り換わり、前記建物の外部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれる場合、前記運転モードが前記送風手段に切り換わることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、建物の外部の湿度が、利用者が設定した設定湿度範囲に含まれている場合は、空調機の運転モードを送風手段に切り換えて建物の内部に外気をそのまま取り入れる。送風手段は、除湿手段や加湿手段に比べて消費するエネルギーが少ないため、省エネルギー化を図ることができる。また、設定湿度範囲に含まれている外気を取り入れることで、建物の内部を利用者が望む環境に空調することができる。また、予め記憶された切換条件に基づいて運転モードが切り換わるため、利用者の操作負担を低減することができる。また、利用者は、湿度の範囲を設定できるため、空調機にかかる負担を軽減できるとともに、環境共生効果も増大させることができる。
【0013】
また、本発明は、運転モードとして除湿手段、加湿手段及び送風手段を備えた空調機と、建物の外部の湿度を計測する建物外計測手段と、前記建物の内部の湿度を計測する建物内計測手段と、利用者が設定した前記建物の内部に係る設定湿度範囲と、前記建物の外部の湿度と内部の湿度と前記設定湿度範囲とに対応した運転モードの切換条件と、を予め記憶する記憶手段と、複数の前記運転モードのうち、前記切換条件に適合した前記運転モードを選択する運転モード選択手段と、前記運転モード選択手段で選択された運転モードに前記空調機の運転を切り換える運転モード切換手段と、を有し、前記建物の外部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれない場合、及び、前記建物の外部の湿度が設定湿度範囲に含まれるが内部の湿度が設定湿度範囲に含まれない場合、前記運転モードが前記除湿手段又は加湿手段に切り換わり、前記建物の外部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれ、かつ、前記建物の内部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれる場合、前記運転モードが前記送風手段に切り換わることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、建物の外部と内部の湿度が、設定湿度範囲に含まれている場合は、空調機の運転モードを送風手段に切り換えて建物の内部に外気をそのまま取り入れる。送風手段は、除湿手段や加湿手段に比べて消費するエネルギーが少ないため、省エネルギー化を図ることができる。また、建物の内部の湿度が設定湿度範囲に含まれた状態で、設定湿度範囲に含まれている外気を取り入れることで、快適性を向上させることができる。また、予め記憶された切換条件に基づいて運転モードが切り換わるため、利用者の操作負担を低減することができる。また、利用者は、例えば湿度の範囲を設定できるため、空調機にかかる負担を軽減できるとともに、環境共生効果も増大させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る空調システムによれば、建物の空調を行いつつ省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る空調システムを示す全体模式図である。
【図2】本実施形態に係る空調機を示す図であって(a)は斜視図、(b)は模式水平断面図である。
【図3】本実施形態に係る空調システムを示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る操作パネルを示した図である。
【図5】(a)は基本全館空調運転において温度のみ設定した場合の切換条件を示した表であり、(b)は基本全館空調運転において湿度のみ設定した場合の切換条件を示した表である。
【図6】基本全館空調運転において温度と湿度を両方設定した場合の切換条件を示した表である。
【図7】(a)は全館空調高省エネ運転において温度のみ設定した場合の切換条件を示した表であり、(b)は全館空調高省エネ運転において湿度のみ設定した場合の切換条件を示した表である。
【図8】全館空調高省エネ運転において温度と湿度を両方設定した場合の切換条件を示した表である。
【図9】全館空調低省エネ運転において温度のみを設定した場合の切換条件を示した表である。
【図10】全館空調低省エネ運転において湿度のみを設定した場合の切換条件を示した表である。
【図11】全館空調低省エネ運転において温度及び湿度の両方を設定した場合の切換条件を示した表である。
【図12】空調システムの動作を示したフローチャートである。
【図13】基本全館空調運転の温度に係る動作を示したフローチャートである。
【図14】基本全館空調運転の湿度に係る動作を示したフローチャートである。
【図15】全館空調高省エネ運転の動作を示したフローチャートである。
【図16】全館空調低省エネ運転の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る空調システム1は、図1に示すように、例えば住宅やマンションなどの建物100の内部の空調を行うシステムである。まずは、建物100の構成について簡単に説明する。
【0018】
<建物100の構成>
建物100は、基礎部101と、居住部102と、天井部103とで構成されている。居住部102は、2階建てになっており、一階床111と、外壁112,113と、一階天井114と、二階床115と、二階天井116とで主に構成されている。居住部102の内部には、内壁や間仕切り等で構成された居住空間Jが形成されている。
【0019】
居住部102は、本実施形態では、五つの空間が形成されており、それぞれ第一居住空間J1、第二居住空間J2、第三居住空間J3、第四居住空間J4及び機械室J5とする。各空間は、内壁、間仕切り、階段、廊下等を介して空気が流通するようになっている。
【0020】
天井部103は、屋根125で主に構成されている。屋根裏空間Nは、二階天井116と外壁112,113と屋根125とで囲まれた空間である。
【0021】
<空調システム1の構成>
空調システム1は、図1及び図2に示すように、空調機2と、連結ダクト3と、制御装置4とで主に構成されている。本実施形態に係る空調システム1は、建物100(居住部102)の内部が、利用者が設定した環境となるように建物100の全体の空気を管理するとともに、送風を行って建物100の外気を効率よく取り入れることで省エネルギー化を図るものである。
【0022】
空調システム1は、送風を行わないで空調を行う「基本全館空調運転」に加えて、送風を行うことで外気を積極的に取り入れて高い省エネルギー化を図れる「全館空調高省エネ運転」と、建物100の内部の環境を考慮しつつ送風を行うことで外気を取り入れて省エネルギー化を図れる「全館空調低省エネ運転」とを実行することができる。
【0023】
空調機2は、各居住空間の空気の冷房、暖房、除湿、加湿等を行うことができる複合型の空調装置であって機械室J5に設置されている。空調機2は、図1及び図2に示すように、室内機11と、室外機12と、外気を取得する外気取得手段13と、建物100の内部の空気を排気する排気手段14と、建物100の内部の空気を室内機11内に取り入れるリターンエア取得部15とで主に構成されている。
【0024】
室内機11の内部には、図示しない熱交換器ユニット、ヒートポンプ式の冷暖房ユニット、除湿ユニット、加湿ユニット等が形成されており、空調された空気が連結ダクト3から各居住空間に送られるように構成されている。室内機11は、図3に示すように、空調手段として、冷房手段21、暖房手段22、除湿手段23、加湿手段24、送風手段25、清浄手段26、脱臭手段27を備えている。各空調手段の詳細については後記する。
【0025】
室外機12は、図1に示すように、冷媒管12aを介して室内機11に接続されている。外気取得手段13は、図2の(b)に示すように、建物100の外部の空気を室内機11内に取り入れる。外気取得手段13は、本実施形態では外壁112を貫通するダクト13aとダクト13aに連通する流路に設けられた図示しない吸気ファンとで構成されている。外気取得手段13は、図示しない熱交換器ユニットに接続されている。
【0026】
ダクト13aには、取り入れた外気の温度及び湿度等の環境条件を計測する建物外温湿度センサK1が設置されている。建物外温湿度センサK1は、特許請求の範囲の「建物外計測手段」に相当する。
【0027】
建物外温湿度センサK1は、制御装置4と電気的に接続されており、検知した温度信号及び湿度信号を制御装置4に送信するように構成されている。本実施形態では、例えば30分おきに温度信号及び湿度信号が制御装置4に送信されるようになっている。建物外温湿度センサK1は、外気の取り込み口に設置されているため、外気と略同じ温度や湿度を取得することができる。なお、温度信号及び湿度信号が制御装置4に送信される間隔については適宜設定すればよい。また、本実施形態では、建物外温湿度センサK1をダクト13aの内部に設置したが、建物100の外部に設置してもよい。
【0028】
排気手段14は、建物100の内部の空気を外部へ排気する。排気手段14は、本実施形態では、図示しない熱交換器ユニットに接続されており、外壁112を貫通するダクト14aとダクト14aに連通する流路に設けられた図示しない排気ファンとで構成されている。後記するリターンエア取得部15によって取り込まれた建物100の内部の空気の一部は、熱交換器ユニットに吸込まれ排気手段14を介して建物100の外部に排気される。
【0029】
リターンエア取得部15は、建物100の内部の空気を循環させるために室内機11内に空気を取り入れるための部位である。リターンエア取得部15は、図2に示すように、室内機11の内部に連通する開口部15aとこの開口部15aの内部に設けられた図示しない吸気ファンとで構成されている。リターンエア取得部15は、図示しない熱交換器ユニット、除湿ユニット及び加湿ユニットに接続されている。
【0030】
開口部15a付近には、建物100の内部の温度及び湿度等の環境条件を計測する建物内計測手段としての建物内温湿度センサK2が設置されている。建物内温湿度センサK2は、特許請求の範囲の「建物内計測手段」に相当する。
【0031】
建物内温湿度センサK2は、制御装置4と電気的に接続されており、検知した温度信号及び湿度信号を制御装置4に送信するように構成されている。本実施形態では、建物外温湿度センサK1と同じタイミングで、例えば30分おきに温度信号及び湿度信号が制御装置4に送信されるようになっている。建物内温湿度センサK2は、建物100の内部の空気の取り込み口に設置されているため、居住空間Jと略同じ温度や湿度を取得することができる。
【0032】
なお、温度信号及び湿度信号が制御装置4に送信される間隔については適宜設定すればよい。また、建物内温湿度センサK2は、本実施形態では開口部15a付近に設置したが、居住空間Jの壁等に設置してもよい。
【0033】
空調機2は、図3に示すように、建物100の内部の空調を行うための運転モードとして複数の空調手段を備えている。冷房手段21及び暖房手段22は、室内機11内の冷暖房ユニットにおいてヒートポンプにより温度調節を行うように構成されている。外気取得手段13によって取り込まれた外気は、熱交換器ユニットにおいて、リターンエア取得部15によって取り込まれた建物100の内部の空気の一部と熱交換され、冷暖房ユニットへ送られるようになっている。冷房手段21及び暖房手段22は、例えば、建物100の内部の環境が設定温度範囲に含まれていない場合は、出力の大きい強冷房又は強暖房を行って建物100の内部の空気が設定範囲に含まれるように構成されている。一方、冷房手段21及び暖房手段22は、例えば、建物100の内部の空気が設定温度範囲に含まれている場合は、出力の小さい弱冷房又は弱暖房を行って建物100の内部の空気が設定温度範囲を維持するように構成されている。
【0034】
ここで、「設定温度範囲」とは、利用者が設定した建物100の内部の温度の範囲を意味する。一方、「設定湿度範囲」とは、利用者が設定した建物100の内部の湿度の範囲を意味する。
【0035】
除湿手段23及び加湿手段24は、空気の湿度調節を行う。除湿手段23及び加湿手段24では、リターンエア取得部15によって取り込まれた建物100の内部の空気を利用して除湿又は加湿をそれぞれ行う。除湿手段23及び加湿手段24は、例えば、建物100の内部の空気が設定湿度範囲に含まれていない場合は、出力の大きい強除湿又は強加湿を行って建物100の内部の空気が設定温度範囲に含まれるように構成されている。
【0036】
一方、除湿手段23及び加湿手段24は、例えば、建物100の内部の空気が設定湿度範囲に含まれている場合は、出力の小さい弱除湿又は弱加湿を行って建物100の内部の空気が設定湿度範囲を維持するように構成されている。
【0037】
送風手段25は、連結ダクト3と外気取得手段13とを連結するダクトと、ファン(いずれも図示省略)とを備えており、外気取得手段13から取り入れた外気を熱交換せずにそのまま建物100の内部に送風するように構成されている。
【0038】
冷房手段21、暖房手段22、除湿手段23、加湿手段24及び送風手段25は、制御装置4と電気的に接続されており、制御装置4から送信される信号に基づいて作動又は停止するように構成されている。
【0039】
冷房手段21及び暖房手段22はいずれか一方のみが作動するようになっている。除湿手段23と加湿手段24はいずれか一方のみが作動するようになっている。冷房手段21及び暖房手段22のいずれか一方と、除湿手段23及び加湿手段24のいずれか一方とは同時に作動することができるようになっている。また、送風手段25と除湿手段23及び加湿手段24のいずれか一方とは同時に作動することができるようになっている。
【0040】
清浄手段26は、空気のゴミや塵などを取り除いて空気の清浄を行う。脱臭手段27は、空気の脱臭を行う。清浄手段26及び脱臭手段27は、例えば、室内機11内に設けられた空気清浄・脱臭フィルターで構成されている。本実施形態では空調システム1を作動させるときは、清浄手段26及び脱臭手段27は常に機能するようになっている。
【0041】
連結ダクト3は、図1に示すように、空調機2から送り出される空気を各居住空間J1〜J4に供給する。連結ダクト3は、一階用分岐チャンバC1と、二階用分岐チャンバC2と、各ダクトとで構成されている。
【0042】
一階用分岐チャンバC1は、屋根裏空間Nに配設されている。一階用分岐チャンバC1は、空調機2から送られた空気を一階の第一居住空間J1及び第二居住空間J2に供給するための部材である。一階用分岐チャンバC1は、主ダクトD1を介して空調機2に連結されている。また、一階用分岐チャンバC1は、分岐ダクトD2を介して第一吹出口F1に連結され、分岐ダクトD3を介して第二吹出口F2に連結され、分岐ダクトD4を介して第三吹出口F3に連結されている。
【0043】
二階用分岐チャンバC2は、屋根裏空間Nに配置されている。二階用分岐チャンバC2は、空調機2から送られた空気を二階の第三居住空間J3及び第四居住空間J4に供給するための部材である。二階用分岐チャンバC2は、主ダクトD5を介して空調機2に連結されている。また、二階用分岐チャンバC2は、分岐ダクトD6を介して第四吹出口F4に連結され、分岐ダクトD7を介して第五吹出口F5に連結され、分岐ダクトD8を介して第六吹出口F6に連結されている。なお、二階天井116には、一階用分岐チャンバC1を点検するための点検口116bと二階用分岐チャンバC2を点検するための点検口116aが形成されている。
【0044】
なお、空調機2のハード面においては、前記した構成に限定されるものではなく、全館冷暖房、除湿、加湿、送風、空気清浄、脱臭機能を備えた公知の空調機を用いてもよい。
【0045】
制御装置4は、空調機2を制御する装置である。制御装置4は、図3に示すように、本実施形態では、操作パネル31と、計測手段32と、記憶部33と、制御部34と、運転モード切換手段35とで主に構成されている。
【0046】
操作パネル31は、ボタン等で構成された操作手段37と、モニタ等で構成された表示手段38を備えている。操作手段37は、制御部34に電気的に接続されており、利用者が操作した設定温度範囲、設定湿度範囲や運転モード等の信号が制御部34に送信されるようになっている。利用者が設定した設定温度範囲及び設定湿度範囲は、制御部34を介して記憶部33に記憶される。
【0047】
表示手段38は、建物100の内外の現状の温度及び湿度を表示したり、利用者が設定した設定温度範囲や設定湿度範囲を表示したりする。また、表示手段38は、制御部34から送られてくる信号に基づいて、現状の運転モードを表示できるようになっている。操作パネル31の一例については後記する。
【0048】
計測手段32は、建物100の内部及び外部の温度及び湿度を取得してその信号を制御部34に送信する。計測手段32は、本実施形態では建物100の外部の温度及び湿度を計測する建物外温湿度センサK1と、建物100の内部の温度及び湿度を計測する建物内温湿度センサK2を備えている。
【0049】
記憶部33は、RAMやROM等を備えており、空調機2における「基本全館空調運転」、「全館空調高省エネ運転」、「全館空調低省エネ運転」を実行するための各種プログラム、運転モードの切換条件、利用者が設定した設定温度範囲及び設定湿度範囲等を記憶する機能を有している。切換条件については後記する。
【0050】
制御部34は、CPU等の演算装置を備えており、操作パネル31の操作に基づいて「暖房」、「冷房」、「除湿」、「加湿」、「送風」の5種類の個別運転と、「基本全館空調運転」、「全館空調高省エネ運転」、「全館空調低省エネ運転」の3種類のマニュアル運転を実行するように制御装置4の全体の動作を制御する。制御部34は、マニュアル運転では、計測手段32から送信された温度信号及び湿度信号と、記憶部33に記憶された設定温度範囲及び設定湿度範囲の少なくとも一方とを読み出して、記憶部33に予め記憶されている運転モードの切換条件と照合して空調機2の運転モードを選択する。本実施形態では、30分おきに温度及び湿度を取得するように設定しているので、制御部34は温度信号及び湿度信号の入力を契機に30分毎に照合(判定)を行う。
【0051】
本実施形態では、制御部34は、操作パネル31の操作によって設定された温度及び湿度の両方又はいずれか一方に基づいて、制御装置4の動作を制御することができるようになっている。制御部34は、選択した運転モードに関する運転モード選択信号を運転モード切換手段35に送信する。制御部34は、特許請求の範囲の「運転モード選択手段」に相当する。
【0052】
運転モード切換手段35は、制御部34から送られてきた運転モード選択信号に基づいて、選択された運転モードを作動又は停止させるよう冷房手段21、暖房手段22、除湿手段23、加湿手段24及び送風手段25に作動信号又は停止信号を送信する。
【0053】
このように制御装置4は、建物100の内外の環境条件に基づいて空調機2の運転モードを制御することにより、建物100の空調を行うように構成されている。
【0054】
図4は、実施形態に係る操作パネルを示した図である。操作パネル31は、電源ボタン40と、上段に配置されたマニュアル運転部41及び個別運転部42と、中段に配置された設定範囲部43と、下段に配置された現状環境表示部44とを備えている。
【0055】
電源ボタン40は、空調システム1の運転又は停止をするためのボタンである。電源ボタン40は、運転をしているときは点灯し、運転していないときは消灯するようになっている。
【0056】
マニュアル運転部41には、基本全館空調ボタン45と、高省エネボタン46と、低省エネボタン47とが形成されている。利用者が、基本全館空調ボタン45をON又はOFFにすると制御装置4が「基本全館空調運転」の制御を実行又は停止し、高省エネボタン46をON又はOFFにすると制御装置4が「全館空調高省エネ運転」の制御を実行又は停止し、低省エネボタン47をON又はOFFにすると、制御装置4が「全館空調低省エネ運転」を実行又は停止するように構成されている。基本全館空調ボタン45、高省エネボタン46、低省エネボタン47は、各運転が作動しているときに点灯し、停止しているときは消灯するようになっている。
【0057】
個別運転部42には、暖房手段22に対応する暖房ボタン51、冷房手段21に対応する冷房ボタン52、除湿手段23に対応する除湿ボタン53、加湿手段24に対応する加湿ボタン54、清浄手段26に対応する清浄ボタン55、脱臭手段27に対応する脱臭ボタン56、送風手段25に対応する送風ボタン57が形成されている。各運転モードが作動している場合は、それに対応するボタンが点灯し、停止している場合は、それに対応するボタンが消灯するようになっている。
【0058】
また、本実施形態では、電源ボタン40をONにした後、暖房ボタン51、冷房ボタン52、除湿ボタン53、加湿ボタン54、送風ボタン57をそれぞれON又はOFFにすることで、各運転モードが個別に運転又は停止するように構成されている。
【0059】
なお、マニュアル運転部41のいずれか一のボタンをONにすると、他のボタンはOFFになるように構成されている。
【0060】
設定範囲部43には、設定温度範囲ボタン61と、設定湿度範囲ボタン62と、設定温度最小値表示部63と、設定温度最大値表示部64と、カウントボタン65と、設定湿度最小値表示部66と、設定湿度最大値表示部67と、カウントボタン68とが形成されている。
【0061】
利用者が建物100の内部の温度を設定したい場合は、設定温度範囲ボタン61をONにしつつ、カウントボタン65を操作して所望の温度の最小値と最大値を入力する。設定温度最小値表示部63及び設定温度最大値表示部64には、利用者が望む温度の最小値及び最大値がそれぞれ表示される。入力された設定温度範囲は、記憶部33に記憶される。利用者が温度の設定を望まない場合は、設定温度範囲ボタン61をOFFにする。設定温度範囲ボタン61をONにすると設定温度範囲ボタン61が点灯し、OFFにすると消灯するようになっている。設定温度範囲ボタン61がOFFの場合、カウントボタン65の操作は無効である。
【0062】
利用者が建物100の内部の湿度を設定したい場合は、設定湿度範囲ボタン62をONにしつつ、カウントボタン68を操作して所望の湿度の最小値と最大値を入力する。設定湿度最小値表示部66及び設定湿度最大値表示部67には、利用者が望む湿度の最小値及び最大値がそれぞれ表示される。入力された設定湿度範囲は、記憶部33に記憶される。利用者が湿度の設定を望まない場合は、設定湿度範囲ボタン62をOFFにする。設定湿度範囲ボタン62をONにすると設定湿度範囲ボタン62が点灯し、OFFにすると消灯するようになっている。設定湿度範囲ボタン62がOFFの場合、カウントボタン68の操作は無効である。
【0063】
現状環境表示部44には、建物100の内部の温度を表示する室内温度表示部71と、建物100の内部の湿度を表示する室内湿度表示部72と、建物100の外部の温度を表示する外気温度表示部73と、建物100の外部の湿度を表示する外気湿度表示部74とが形成されている。
【0064】
制御部34は、建物内温湿度センサK2から送信された温度を室内温度表示部71に表示させ、湿度を室内湿度表示部72に表示させる。また、制御部34は、建物外温湿度センサK1から送信された温度を外気温度表示部73に表示させ、湿度を外気湿度表示部74に表示させる。これにより、利用者は、現状の建物100の内部の温度及び湿度と外部の温度及び湿度を把握することができる。
【0065】
なお、図4に示す操作パネル31はあくまで一例であって、本発明を限定するものではない。例えば、リモコンで制御装置4を操作できるように構成してもよい。
【0066】
<運転モードの切換条件>
次に、記憶部33に予め記憶されている運転モードの切換条件について説明する。
空調システム1は、本実施形態では、「暖房」、「冷房」、「除湿」、「加湿」、「送風」の5種類の個別運転と、「基本全館空調運転」、「全館空調高省エネ運転」、「全館空調低省エネ運転」の3種類のマニュアル運転を実行するように構成されている。空調システム1は、各マニュアル運転において、設定温度範囲のみ設定した場合、設定湿度範囲のみ設定した場合、設定温度範囲及び設定湿度範囲の両方を設定した場合について運転を行うことができる。
なお、個別運転については、前記した個別運転部42の各ボタンを操作することで該当する空調手段が個別に運転するだけであるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
<基本全館空調運転>
基本全館空調運転は、全館空調高省エネ運転及び全館空調低省エネ運転の前提となる運転方式であって、建物100の内部の温度及び湿度が、利用者が設定した温度及び湿度となるように運転する。図5の(a)は基本全館空調運転において温度のみ設定した場合の切換条件を示した表であり、(b)は基本全館空調運転において湿度のみ設定した場合の切換条件を示した表である。図6は基本全館空調運転において温度と湿度を両方設定した場合の切換条件を示した表である。
【0068】
各表の縦の項目は、建物100の内部の環境条件と運転モードを示している。図5の(a)の「Tr」は建物の内部の温度(建物内温度)を示し、「Tmin」は設定温度範囲の最小値を示し、「Tmax」は設定温度範囲の最大値を示す。図5の(b)の「Mr」は建物の内部の湿度(建物内湿度)を示し、「Mmin」は設定湿度範囲の最小値を示し、「Mmax」は設定湿度範囲の最大値を示す。「exTr=24℃」とは、建物の内部の温度が例えば24℃である場合を示しており、「exMr=50%」とは、建物の内部の湿度が例えば50%である場合を示している。設定温度は例えば22〜26℃、設定湿度は例えば40〜60%に設定されているものとする。
【0069】
図5の(a)に示すように、切換条件1〜3は、基本全館空調運転において、温度のみ設定した場合の切換条件を示している。
【0070】
切換条件1では、制御部34が、建物内温湿度センサK2(図3参照)から送信された建物内温度Trが設定温度範囲の最小値Tminから最大値Tmaxに含まれる(Tmin≦Tr≦Tmax)と判定した場合、「弱冷房」又は「弱暖房」を選択するように設定されている。つまり、制御部34は、建物100の内部の温度が設定温度範囲内を維持するように「弱冷房」又は「弱暖房」を選択する。
【0071】
弱冷房又は弱暖房の選択は、夏及び秋は弱冷房、冬及び春は弱暖房などと季節と対応させてもよいし、外気の基準温度値(例えば25℃)を決めておき、基準温度値より建物外温湿度センサK1で検出された現状の外気の温度が高かったら弱冷房、低かったら弱暖房となるように設定してもよい。また、例えば、それまで強冷房が作動していた場合は弱冷房を選択し、強暖房が作動していた場合は弱暖房を選択するように設定してもよい。
【0072】
切換条件2では、制御部34が、建物内温湿度センサK2から送信された建物内温度Trが設定温度範囲の最大値Tmaxを超える(Tmax<Tr)と判定した場合、「強冷房」を選択するように設定されている。
【0073】
切換条件3では、制御部34が、建物内温湿度センサK2から送信された建物内温度Trが設定温度範囲の最小値Tminに満たない(Tr<Tmin)と判定した場合、「強暖房」を選択するように設定されている。
【0074】
図5の(b)に示すように、切換条件4〜6は、基本全館空調運転において、湿度のみ設定した場合の切換条件を示している。
【0075】
切換条件4では、制御部34が、建物内温湿度センサK2(図3参照)から送信された建物内湿度Mrが設定湿度範囲の最小値Mminから最大値Mmaxに含まれる(Mmin≦Mr≦Mmax)と判定した場合、「弱除湿」又は「弱加湿」を選択するように設定されている。つまり、建物100の内部の湿度が設定湿度範囲内を維持するように「弱除湿」又は「弱加湿」を選択する。
【0076】
弱除湿又は弱加湿の選択は、夏及び秋は弱除湿、冬及び春は弱加湿などと季節と対応させてもよいし、外気の基準湿度値(例えば50%)を決めておき、基準湿度値より建物外温湿度センサK1で検出された現状の外気の湿度が高かったら弱除湿、低かったら弱加湿となるように設定してもよい。また、例えば、それまで強除湿が作動していた場合は弱除湿を選択し、強加湿が作動していた場合は弱加湿を選択するように設定してもよい。
【0077】
切換条件5では、制御部34が、建物内温湿度センサK2から送信された建物内湿度Mrが設定湿度範囲の最大値Mmaxを超える(Mmax<Mr)と判定した場合、「強除湿」を選択するように設定されている。
【0078】
切換条件6では、制御部34が、建物内温湿度センサK2から送信された建物内湿度Mrが設定湿度範囲の最小値Mminに満たない(Mr<Mmin)と判定した場合、「強加湿」を選択するように設定されている。
【0079】
図6に示すように、切換条件7〜15は、基本全館空調運転において、温度及び湿度を設定した場合の切換条件を示している。
【0080】
切換条件7〜15は、切換条件1〜3と切換条件4〜6とをAND条件でそれぞれ組み合わせたものと同等であるため、各条件を図6に示して詳細な説明は省略する。
【0081】
<全館空調高省エネ運転>
全館空調高省エネ運転は、建物の内部の環境を利用者が設定した環境にするとともに高い省エネ効果を図ることができる運転方式である。全館空調高省エネ運転は、外気の環境に応じて送風を行う点で基本全館空調運転と相違する。
【0082】
図7の(a)は全館空調高省エネ運転において温度のみ設定した場合の切換条件を示した表であり、(b)は全館空調高省エネ運転において湿度のみ設定した場合の切換条件を示した表である。図8は、全館空調高省エネ運転において温度と湿度を両方設定した場合の切換条件を示した表である。
【0083】
全館空調高省エネ運転は、基本的には「基本全館空調運転」を行い、ある条件が揃ったときに、「送風」に切り換わるように設定されている。表の縦の項目は、建物100の外部の環境条件と運転モードを示している。図7の(a)の「Tg」は建物の外部の温度(建物外温度)を示し、図7の(b)の「Mg」は建物の外部の湿度(建物外湿度)を示している。
【0084】
図7の(a)に示すように、切換条件16〜18は、全館空調高省エネ運転において温度のみ設定した場合の切換条件を示している。
【0085】
切換条件16では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲の最小値Tminから最大値Tmaxに含まれる(Tmin≦Tg≦Tmax)と判定した場合、「送風」を選択するように設定されている。
【0086】
切換条件17では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲の最大値Tmaxを超える(Tmax<Tg)と判定した場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。
【0087】
切換条件18では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲の最小値Tminに満たない(Tg<Tmin)と判定した場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。
【0088】
図7の(b)に示すように、切換条件19〜21は、全館空調高省エネ運転において湿度のみ設定した場合の切換条件を示している。
【0089】
切換条件19では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外湿度Mgが設定湿度範囲の最小値Mminから最大値Mmaxに含まれる(Mmin≦Mg≦Mmax)と判定した場合、「送風」を選択するように設定されている。
【0090】
切換条件20では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外湿度Mgが設定湿度範囲の最大値Tmaxを超える(Mmax<Mg)と判定した場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。
【0091】
切換条件21では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外湿度Mgが設定湿度範囲の最小値Mminに満たない(Mg<Mmin)と判定した場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。
【0092】
図8に示すように、切換条件22〜30は、全館空調高省エネ運転において温度及び湿度を設定した場合の切換条件を示している。
【0093】
切換条件22では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲の最小値Tminから最大値Tmaxに含まれる(Tmin≦Tg≦Tmax)と判定し、かつ、建物外湿度Mgが設定湿度範囲の最小値Mminから最大値Mmaxに含まれる(Mmin≦Mg≦Mmax)と判定した場合、「送風」を選択するように設定されている。
【0094】
切換条件23〜30は、建物外温度Tg及び建物外湿度Mgの少なくともいずれか一方が設定範囲に含まれない場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。つまり、切換条件23〜30では、外気が設定範囲に含まれないから送風は行わない。
【0095】
<全館空調低省エネ運転>
全館空調低省エネ運転は、建物の内部の環境を利用者が設定した環境にするとともに、省エネを図ることができる運転方式である。全館空調低省エネ運転は、外気の環境に応じて送風を行う点で基本全館空調運転と相違する。また、全館空調低省エネ運転は、省エネ効率は全館空調高省エネ運転より低いが、全館空調高省エネ運転よりも建物の内部の環境を快適にすることができる運転方式である。
【0096】
図9は、全館空調低省エネ運転において温度のみを設定した場合の切換条件を示した表である。図9に示すように、切換条件31〜39は、全館空調低省エネ運転において、建物100の外部の温度と内部の温度に基づいて判定するように設定されている。全館空調低省エネ運転では、基本的には「基本全館空調運転」を行い、ある条件が揃ったときに、「送風」に切り換わるように設定されている。
【0097】
切換条件31では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲の最小値Tminから最大値Tmaxに含まれる(Tmin≦Tg≦Tmax)と判定し、かつ、建物内温湿度センサK2から送信された建物内温度Trが設定温度範囲の最小値Tminから最大値Tmaxに含まれる(Tmin≦Tr≦Tmax)と判定した場合、「送風」を選択するように設定されている。
【0098】
切換条件32及び切換条件33では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲の最小値Tminから最大値Tmaxに含まれる(Tmin≦Tg≦Tmax)と判定したが、建物内温度Trが設定温度範囲に含まれない(Tmax<Tr、Tr<Tmin)と判定した場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。つまり、前記した全館空調高省エネ運転では図7の切換条件16に示すように、外気が設定温度範囲に含まれれば直ちに送風を行うが、この全館空調低省エネ運転では建物の内部の温度を設定温度範囲に含めることを優先するため、全館空調高省エネ運転よりも省エネ効率は低下するが、建物の内部を快適にすることができる。
【0099】
切換条件34〜39では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲の最大値Tmaxを超える(Tmax<Tg)と判定した場合か、又は、建物外温度Tgが設定温度範囲の最小値Tminに満たない(Tg<Tmin)と判定された場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。つまり、切換条件34〜39では、外気が設定温度範囲に含まれないから送風は行わない。
【0100】
図10は、全館空調低省エネ運転において湿度のみを設定した場合の切換条件を示した表である。図10に示すように、切換条件40〜48は、全館空調低省エネ運転において、建物100の外部の湿度と内部の湿度に基づいて判定するように設定されている。
【0101】
切換条件40では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外湿度Mgが設定温度範囲の最小値Mminから最大値Mmaxに含まれる(Mmin≦Mg≦Mmax)と判定し、かつ、建物内温湿度センサK2(図3参照)から送信された建物内湿度Mrが設定湿度範囲の最小値Mminから最大値Mmaxに含まれる(Mmin≦Mr≦Mmax)と判定した場合、「送風」を選択するように設定されている。
【0102】
切換条件41及び切換条件42では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外湿度Mgが設定湿度範囲の最小値Mminから最大値Mmaxに含まれる(Mmin≦Mg≦Mmax)と判定したが、建物内湿度Mrが設定温度範囲に含まれない(Mmax<Mr、Mr<Mmin)と判定した場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。つまり、前記した全館空調高省エネ運転では図7の切換条件19に示すように、外気が設定湿度範囲に含まれれば直ちに送風を行うが、この全館空調低省エネ運転では建物の内部の湿度を設定湿度範囲に含めることを優先するため、全館空調高省エネ運転よりも省エネ効率は低下するが、建物の内部を快適にすることができる。
【0103】
切換条件43〜48では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外湿度Mgが設定湿度範囲の最大値Mmaxを超える(Mmax<Mg)と判定した場合か、又は、建物外湿度Mgが、設定湿度範囲の最小値Mminに満たない(Mg<Mmin)と判定した場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。つまり、切換条件43〜48では、外気が設定湿度範囲に含まれないから送風は行わない。
【0104】
図11は、全館空調低省エネ運転において温度及び湿度の両方を設定した場合の切換条件を示した表である。図11に示すように、切換条件49〜129(設定範囲に含まれる場合と超過する場合と満たない場合とで3通りあり、それが建物の内外の温度又は湿度で4項目あるため3の4乗の81通り)は、建物100の外部の温度及び湿度と、内部の温度及び湿度に基づいて判定するように設定されている。
【0105】
切換条件49は、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲の最小値Tminから最大値Tmaxに含まれる(Tmin≦Tg≦Tmax)と判定し、かつ、建物外湿度Mgが設定湿度範囲の最小値Mminから最大値Mmaxに含まれる(Mmin≦Mg≦Mmax)と判定し、かつ、建物内温湿度センサK2(図3参照)から送信された建物内温度Trが設定温度範囲の最小値Tminから最大値Tmaxに含まれる(Tmin≦Tr≦Tmax)と判定し、かつ、建物内湿度Mrが設定湿度範囲の最小値Mminから最大値Mmaxに含まれる(Mmin≦Mr≦Mmax)と判定した場合、「送風」を選択するように設定されている。
【0106】
切換条件50〜57では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲の最小値Tminから最大値Tmaxに含まれる(Tmin≦Tg≦Tmax)と判定し、かつ、建物外湿度Mgが設定湿度範囲の最小値Mminから最大値Mmaxに含まれる(Mmin≦Mg≦Mmax)と判定したが、建物内温度Tr及び建物内湿度Mrの少なくとも一方が設定範囲から外れていると判定した場合、前記した「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。つまり、前記した全館空調高省エネ運転では、図8の切換条件22に示すように、外気が設定温度範囲及び設定湿度範囲に含まれれば直ちに送風を行っているが、この全館空調低省エネ運転では建物の内部の温度及び湿度をそれぞれの設定範囲に含めることを優先するため、全館空調高省エネ運転よりも省エネ効率は低下するが、建物の内部を快適にすることができる。
【0107】
切換条件58〜129では、制御部34が、建物外温湿度センサK1(図3参照)から送信された建物外温度Tgが設定温度範囲に含まれない場合、又は、建物外湿度Mgが設定湿度範囲に含まれない場合、「基本全館空調運転」を実行するように設定されている。つまり、外気が設定温度範囲及び設定湿度範囲に含まれないから送風は行わない。
【0108】
次に、フローチャートを用いて本実施形態に係る空調システム1の動作について説明する。
【0109】
図12は、空調システムの動作を示したフローチャートである。図13は、基本全館空調運転の温度に係る動作を示したフローチャートである。図14は、基本全館空調運転の湿度に係る動作を示したフローチャートである。図15は、全館空調高省エネ運転の動作を示したフローチャートである。図16は、全館空調低省エネ運転の動作を示したフローチャートである。
【0110】
図12に示すように、まず、制御部34は、電源ボタン40がONになっているか否かを判定する(ステップS1)。
【0111】
電源ボタン40がONになっていると判定した場合(ステップS1,YES)、制御部34は、基本全館空調ボタンがONになっているか否か判定する(ステップS2)。電源ボタン40がONになっていないと判定した場合(ステップS1,NO)は終了する。
【0112】
基本全館空調ボタンがONになっていると判定した場合(ステップS2,YES)、制御部34は、ステップS11及びステップS21(図13及び図14参照)を行う。基本全館空調ボタンがONになっていないと判定した場合(ステップS2,NO)、制御部34は、高省エネボタンがONになっているか否かを判定する(ステップS3)。
【0113】
高省エネボタンがONになっていると判定した場合(ステップS3,YES)、制御部34は、ステップS31(図14参照)を行う。高省エネボタンがONになっていないと判定した場合(ステップS3,NO)、制御部34は、低省エネボタンがONになっているか否かを判定する(ステップS4)。
【0114】
低省エネボタンがONになっていると判定した場合(ステップS4,YES)、制御部34は、ステップS41(図16参照)を行う。低省エネボタンがONになっていないと判定した場合(ステップS4,NO)、制御部34は、個別運転部のボタンがONになっているか否かを判定する(ステップS5)。
【0115】
個別運転部のボタンがONになっていると判定した場合(ステップS5,YES)、制御部34は、ONになっている運転モードを選択する。制御部34は、選択した運転モード選択信号を運転モード切換手段35に送信する。運転モード切換手段35は、制御部34から送信された運転モード選択信号を受けると、対応する運転モードに作動信号を送信し、対応しない運転モードに停止信号を送信する。制御部34は、利用者がONにした個別運転部のボタンにかかる運転モードを選択し、ステップS1に戻る。
【0116】
個別運転ボタンがONになっていないと判定した場合(ステップS5,NO)、つまり、マニュアル運転部41及び個別運転部42のいずれのボタンもONになっていない場合、制御部34は、ステップS1に戻る。
【0117】
<基本全館空調運転の動作>
基本全館空調ボタンがONになっていると判定した場合(ステップS2,YES)、制御部34は、図13に示す温度に係る制御と、図14に示す湿度に係る制御を並行して行う。
【0118】
図13に示すように、制御部34は、設定温度範囲ボタン61がONになっているか否か判定する(ステップS11)。設定温度範囲ボタン61がONになっていると判定した場合(ステップS11,YES)、制御部34は、建物内温湿度センサK2から温度信号を受信したか否か判定する(ステップS12)。設定温度範囲ボタン61がONになっていないと判定した場合(ステップS11,NO)、ステップS1(図12参照)に戻る。
【0119】
温度信号を受信したと判定した場合(ステップS12,YES)、制御部34は、建物内温湿度センサK2によって計測された建物内温度Trが、設定温度範囲に含まれるか否か判定する(ステップS13)。温度信号を受信していないと判定した場合(ステップS12,NO)、制御部34は、ステップS12の判定を繰り返し行う。
【0120】
建物内温度Trが、設定温度範囲に含まれると判定した場合(ステップS13,YES)、制御部34は、記憶部33に予め記憶されている切換条件を参照して弱冷房又は弱暖房を選択する(ステップS14)。
【0121】
建物内温度Trが、設定温度範囲に含まれないと判定した場合(ステップS13,NO)、制御部34は、建物内温度Trが、設定温度範囲の最大値Tmaxよりも大きいか否かを判定する(ステップS15)。
【0122】
建物内温度Trが、設定温度範囲の最大値Tmaxよりも大きいと判定した場合(ステップS15,YES)、制御部34は、記憶部33に予め記憶されている切換条件を参照して強冷房を選択する(ステップS16)。
【0123】
建物内温度Trが、設定温度範囲の最大値Tmaxよりも大きくないと判定した場合(ステップS15,NO)、つまり、建物内温度Trが設定温度範囲の最小値Tminより小さい場合、制御部34は、記憶部33に予め記憶されている切換条件を参照して強暖房を選択する(ステップS17)。
【0124】
ステップS14,16,17のそれぞれのステップにおいて、制御部34は、選択した運転モード選択信号を運転モード切換手段35に送信する。運転モード切換手段35は、制御部34から送信された運転モード選択信号を受けると、対応する運転モードに作動信号を送信し、対応しない運転モードに停止信号を送信する。制御部34は、運転モードを選択したら、ステップS1(図12参照)に戻る。
【0125】
また、図14に示すように、制御部34は、設定湿度範囲ボタン62がONになっているか否か判定する(ステップS21)。設定湿度範囲ボタン62がONになっていると判定した場合(ステップS21,YES)、制御部34は、建物内温湿度センサK2から湿度信号を受信したか否か判定する(ステップS22)。設定湿度範囲ボタン62がONになっていないと判定した場合(ステップS22,NO)、ステップS1(図12参照)に戻る。
【0126】
湿度信号を受信したと判定した場合(ステップS22,YES)、制御部34は、建物内温湿度センサK2によって計測された建物内湿度Mrが、設定湿度範囲に含まれるか否か判定する(ステップS23)。湿度信号を受信していないと判定した場合(ステップS22,NO)、制御部34は、ステップS22の判定を繰り返し行う。
【0127】
建物内湿度Mrが、設定湿度範囲に含まれると判定した場合(ステップS23,YES)、制御部34は、記憶部33に予め記憶されている切換条件を参照して弱除湿又は弱加湿を選択する(ステップS24)。
【0128】
建物内湿度Mrが、設定湿度範囲に含まれないと判定した場合(ステップS23,NO)、制御部34は、建物内湿度Mrが、設定湿度範囲の最大値Mmaxよりも大きいか否かを判定する(ステップS25)。
【0129】
建物内湿度Mrが、設定湿度範囲の最大値Mmaxよりも大きいと判定した場合(ステップS25,YES)、制御部34は、記憶部33に予め記憶されている切換条件を参照して強除湿を選択する(ステップS26)。
【0130】
建物内湿度Mrが、設定湿度範囲の最大値Mmaxよりも大きくないと判定した場合(ステップS25,NO)、つまり、建物内湿度Mrが設定湿度範囲の最小値Mminより小さい場合、制御部34は、記憶部33に予め記憶されている切換条件を参照して強加湿を選択する(ステップS27)。
【0131】
ステップS24,26,27のそれぞれのステップにおいて、制御部34は、選択した運転モード選択信号を運転モード切換手段35に送信する。運転モード切換手段35は、制御部34から送信された運転モード選択信号を受けると、対応する運転モードに作動信号を送信し、対応しない運転モードに停止信号を送信する。制御部34は、運転モードを選択したら、ステップS1(図12参照)に戻る。
【0132】
以上示した基本全館空調運転では建物100の内部の温度及び湿度が、利用者が設定した設定温度範囲及び設定湿度範囲に含まれていなければこの範囲に含まれるように空調し、含まれていればその状態を維持するように運転する。
【0133】
<全館空調高省エネ運転の動作>
図12に示すように、ステップS3において、高省エネボタンがONになっていると判定した場合(ステップS3,YES)、図15に示すように、制御部34は、全館空調高省エネ運転の制御を行う。ここでは、全館空調高省エネ運転において、温度のみ設定した場合を中心に説明する。
【0134】
制御部34は、設定温度範囲ボタンが及び設定湿度範囲ボタンの両方がONになっているか否か判定する(ステップS31)。
【0135】
設定温度範囲ボタンが及び設定湿度範囲ボタンの両方がONになっていない場合(ステップS31,NO)、制御部34は、設定湿度範囲ボタンのみがONになっているか否か判定する(ステップS32)。
【0136】
設定湿度範囲ボタンのみがONになっていない場合(ステップS32,NO)、制御部34は、設定温度範囲ボタンのみがONになっているか否か判定する(ステップS33)。
【0137】
設定温度範囲ボタンのみがONになっている場合(ステップS33,YES)、制御部34は、温度信号を受信したか否か判定する(ステップS34,YES)。設定温度範囲ボタンのみがONになっていない場合(ステップS33,NO)、つまり、設定温度範囲ボタン及び設定湿度範囲ボタンのいずれもONになっていない場合、ステップ31に戻る。
【0138】
温度信号を受信したと判定した場合(ステップS34,YES)、制御部34は、建物外温湿度センサK1によって計測された建物外温度Tgが設定温度範囲に含まれるか否か判定する(ステップS35)。温度信号を受信していないと判定した場合(ステップS34,NO)、ステップS34の判定を繰り返し行う。
【0139】
建物外温度Tgが設定温度範囲に含まれると判定した場合(ステップS35,YES)、制御部34は、記憶部33に予め記憶されている切換条件を参照して送風を選択する(ステップS36)。
【0140】
ステップS36において、制御部34は、選択した運転モード選択信号を運転モード切換手段35に送信する。運転モード切換手段35は、制御部34から送信された運転モード選択信号を受けると、対応する送風手段25に作動信号を送信し、その他の運転モードに停止信号を送信する。制御部34は、運転モードを選択したら、ステップS1(図12参照)に戻る。
【0141】
建物外温度Tgが設定温度範囲に含まれないと判定した場合(ステップS35,NO)、ステップS13(図13)に移行する。つまり、建物外温度Tgが、設定温度範囲に含まれない場合は、送風は行わず基本全館空調運転を行う。
【0142】
設定温度範囲ボタン61及び設定湿度範囲ボタン62の両方がONになっている場合(ステップS31,YES)、全館空調高省エネ運転における温度及び湿度を設定した制御を行う(ステップS37)。全館空調高省エネ運転において、温度及び湿度を設定した場合、図8に示すように、建物外温度Tg及び建物外湿度Mgが設定範囲に含まれた場合のみ送風を行う。その他の条件の場合は図13のステップS13(符合「E」で示す)及び図14のステップS23(符合「F」で示す)に移行して基本全館空調運転を行う。全館空調高省エネ運転の温度及び湿度を設定した場合の詳細な動作については、前記した温度の条件に湿度の条件を加えるだけであるため説明を省略する。
【0143】
また、設定湿度範囲ボタン62のみONになっていると判定した場合(ステップS32,YES)、全館空調高省エネ運転における湿度のみ設定した制御を行う(ステップS38)。全館空調高省エネ運転において、湿度のみ設定した場合、図7の(b)に示すように、建物外湿度Mgが設定湿度範囲に含まれた場合のみ送風を行う。その他の条件の場合は図14のステップS23(符合「F」で示す)に移行して基本全館空調運転を行う。全館空調高省エネ運転の湿度のみを設定した場合については、前記した温度の条件を湿度の条件に置き換えるだけなので、詳細な動作については説明を省略する。
【0144】
以上説明した全館空調高省エネ運転では、建物外温度Tgが設定温度範囲に含まれている場合は、空調機の運転モードを送風手段25に切り換えて建物100の内部に外気をそのまま取り入れる。つまり、送風手段25では、外気を加熱、冷却、除湿及び加湿せずに、そのまま取り入れる。送風手段25は、冷房手段21、暖房手段22、除湿手段23及び加湿手段24に比べて消費するエネルギーが少ないため、省エネルギー化を図ることができる。また、設定温度範囲に含まれている外気を取り入れることで、建物100の内部を利用者が望む環境に空調することができる。また、利用者は、温度の範囲を設定できるため、空調機にかかる負担を軽減できるとともに、環境共生効果も増大させることができる。
【0145】
また、全館空調高省エネ運転では、予め記憶された切換条件に基づいて運転モードが切り換わるため、利用者の操作負担を低減することができる。また、本実施形態では、最初にボタンを操作するだけで、送風によって外気を効率よく取り入れつつ、建物100の内部を快適な状態に保つことができる。
【0146】
<全館空調低省エネ運転の動作>
図12に示すように、ステップS4において、低省エネボタンがONになっていると判定した場合(ステップS4,YES)、図16に示すように、制御部34は、全館空調低省エネ運転の制御を行う。ここでは、全館空調低省エネ運転において、温度のみ設定した場合を中心に説明する。
【0147】
制御部34は、設定温度範囲ボタン61が及び設定湿度範囲ボタン62の両方がONになっているか否か判定する(ステップS41)。
【0148】
設定温度範囲ボタン61が及び設定湿度範囲ボタン62の両方がONになっていない場合(ステップS41,NO)、制御部34は、設定湿度範囲ボタン62のみがONになっているか否か判定する(ステップS42)。
【0149】
設定湿度範囲ボタン62のみがONになっていない場合(ステップS42,NO)、制御部34は、設定温度範囲ボタン61のみがONになっているか否か判定する(ステップS43)。
【0150】
設定温度範囲ボタン61のみがONになっている場合(ステップS43,YES)、制御部34は、温度信号を受信したか否か判定する(ステップS44)。設定温度範囲ボタン61のみがONになっていない場合(ステップS43,NO)、つまり、設定温度範囲ボタン61及び設定湿度範囲ボタン62のいずれもONになっていない場合、ステップ41に戻る。
【0151】
温度信号を受信したと判定した場合(ステップS44,YES)、制御部34は、建物外温湿度センサK1によって計測された建物外温度Tgが設定温度範囲に含まれており、かつ、建物内温湿度センサK2によって計測された建物内温度Trが設定温度範囲に含まれているか否か判定する(ステップS45)。温度信号を受信しないと判定した場合(ステップS44,NO)、ステップS44の判定を繰り返し行う。
【0152】
建物外温度Tgが設定温度範囲に含まれ、かつ、建物内温度Trが設定温度範囲に含まれると判定した場合(ステップS45,YES)、制御部34は、記憶部33に予め記憶されている切換条件を参照して送風を選択する(ステップS46)。
【0153】
ステップS46において、制御部34は、選択した運転モード選択信号を運転モード切換手段35に送信する。運転モード切換手段35は、制御部34から送信された運転モード選択信号を受けると、対応する送風手段25に作動信号を送信し、その他の運転モードに停止信号を送信する。制御部34は、運転モードを選択したら、ステップS1(図12参照)に戻る。
【0154】
建物外温度Tg及び建物内温度Trの少なくとも一方が設定温度範囲に含まれていないと判定した場合(ステップS45,NO)、ステップS13(図13)に移行する。つまり、建物外温度Tgが、設定温度範囲に含まれない場合は、送風は行わず基本全館空調運転を行う。
【0155】
設定温度範囲ボタン61が及び設定湿度範囲ボタン62の両方がONになっている場合(ステップS41,YES)、全館空調高省エネ運転における温度及び湿度を設定した制御を行う(ステップS47)。全館空調高省エネ運転において、温度及び湿度を設定した場合、図11に示すように、建物外温度Tg、建物外湿度Mg、建物内温度Tr及び建物内湿度Mrの全てが設定範囲に含まれた場合のみ送風を行う。その他の条件の場合は図13のステップS13(符合「E」で示す)及び図14のステップS23(符合「F」で示す)に移行して基本全館空調運転を行う。全館空調高省エネ運転の温度及び湿度を設定した場合の詳細な動作については、前記した温度の条件に湿度の条件を加えるだけであるため説明を省略する。
【0156】
また、設定湿度範囲ボタン62のみONになっていると判定した場合(ステップS42,YES)、全館空調低省エネ運転における湿度のみ設定した制御を行う(ステップS48)。全館空調低省エネ運転において、湿度のみ設定した場合、図10に示すように、建物外湿度Mgが設定湿度範囲に含まれ、かつ、建物内湿度Mrが設定湿度範囲に含まれる場合のみ送風を行う。その他の条件の場合は図14のステップS23(符合「F」で示す)に移行して基本全館空調運転を行う。全館空調低省エネ運転の湿度のみを設定した場合については、前記した温度の条件を湿度の条件に置き換えるだけなので、詳細な動作については説明を省略する。
【0157】
以上説明した全館空調低省エネ運転では、建物外温度Tg及び建物内温度Trが設定温度範囲に含まれている場合は、空調機の運転モードを送風手段25に切り換えて建物100の内部に外気をそのまま取り入れる。送風手段25は、冷房手段21、暖房手段22、除湿手段23及び加湿手段24に比べて消費するエネルギーが少ないため、省エネルギー化を図ることができる。また、設定温度範囲に含まれている外気を取り入れることで、建物100の内部を利用者が望む環境に空調することができる。また、利用者は、温度の範囲を設定できるため、空調機にかかる負担を軽減できるとともに、環境共生効果も増大させることができる。
【0158】
また、全館空調低省エネ運転では、建物の内部の温度を設定温度範囲に含まれた状態にしてから外気を取り入れることで、省エネの効率は前記した全館空調高省エネ運転に比べて劣るが、快適性は向上させることができる。
【0159】
また、予め記憶された切換条件に基づいて運転モードが切り換わるため、利用者の操作負担を低減することができる。また、本実施形態では、最初にボタンを操作するだけで、外気を効率よく取り入れつつ、建物100の内部を快適な状態に保つことができる。
【0160】
ここで、従来の空調システムは、例えば温度の設定を範囲ではなく、一の温度を設定するものであった。しかし、一の温度の設定ではその温度に人体が順応してしまい、温度環境に対する適応能力が低下する慮りもある。この点、本実施形態によれば、例えば温度を範囲として設定できるため、温度環境に対する適応能力の低下を防ぐことができる。また、例えば温度の設定を範囲で行い、かつ、送風を行って外気を建物100の内部に取り入れることにより環境共生効果を相乗的に高めることができる。
【0161】
以上、本発明の実施形態について説明したが、発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、基本全館空調運転において、建物内温度Tr又は建物内湿度Mrが設定範囲に含まれている場合、その環境状況を維持するために空調システム1の運転を一旦停止させ、それ以降の判定時において設定範囲に建物内温度Tr又は建物内湿度Mrが含まれていないと判定した場合、空調システム1を再度作動させてもよい。
【符号の説明】
【0162】
1 空調システム
2 空調機
3 連結ダクト
4 制御装置
11 室内機
12 室外機
13 外気取得手段
14 排気手段
15 リターンエア取得手段
21 冷房手段
22 暖房手段
23 除湿手段
24 加湿手段
25 送風手段
26 清浄手段
27 脱臭手段
31 操作パネル
32 計測手段
33 記憶部
34 制御部
35 運転モード切換手段
K1 建物外温湿度センサ
K2 建物内温湿度センサ
Tg 建物外温度
Tr 建物内温度
Mg 建物外湿度
Mr 建物内湿度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転モードとして冷房手段、暖房手段及び送風手段を備えた空調機と、
建物の外部の温度を計測する建物外計測手段と、
利用者が設定した前記建物の内部に係る設定温度範囲と、前記建物の外部の温度と前記設定温度範囲とに対応した運転モードの切換条件と、を予め記憶する記憶手段と、
複数の前記運転モードのうち、前記切換条件に適合した前記運転モードを選択する運転モード選択手段と、
前記運転モード選択手段で選択された運転モードに前記空調機の運転を切り換える運転モード切換手段と、を有し、
前記建物の外部の温度が前記設定温度範囲に含まれない場合、前記運転モードが前記冷房手段又は暖房手段に切り換わり、
前記建物の外部の温度が前記設定温度範囲に含まれる場合、前記運転モードが前記送風手段に切り換わることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
運転モードとして冷房手段、暖房手段及び送風手段を備えた空調機と、
建物の外部の温度を計測する建物外計測手段と、
前記建物の内部の温度を計測する建物内計測手段と、
利用者が設定した前記建物の内部に係る設定温度範囲と、前記建物の外部の温度と内部の温度と前記設定温度範囲とに対応した前記運転モードの切換条件と、を予め記憶する記憶手段と、
複数の前記運転モードのうち、前記切換条件に適合した前記運転モードを選択する運転モード選択手段と、
前記運転モード選択手段で選択された運転モードに運転を切り換える運転モード切換手段と、を有し、
前記建物の外部の温度が前記設定温度範囲に含まれない場合、及び、前記建物の外部の温度が設定温度範囲に含まれるが内部の温度が設定温度範囲に含まれない場合、前記運転モードが前記冷房手段又は暖房手段に切り換わり、
前記建物の外部の温度が前記設定温度範囲に含まれ、かつ、前記建物の内部の温度が前記設定温度範囲に含まれる場合、前記運転モードが前記送風手段に切り換わることを特徴とする空調システム。
【請求項3】
運転モードとして除湿手段、加湿手段及び送風手段を備えた空調機と、
建物の外部の湿度を計測する建物外計測手段と、
利用者が設定した前記建物の内部に係る設定湿度範囲と、前記建物の外部の湿度と前記設定湿度範囲とに対応した運転モードの切換条件と、を予め記憶する記憶手段と、
複数の前記運転モードのうち、前記切換条件に適合した前記運転モードを選択する運転モード選択手段と、
前記運転モード選択手段で選択された運転モードに前記空調機の運転を切り換える運転モード切換手段と、を有し、
前記建物の外部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれない場合、前記運転モードが前記除湿手段又は加湿手段に切り換わり、
前記建物の外部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれる場合、前記運転モードが前記送風手段に切り換わることを特徴とする空調システム。
【請求項4】
運転モードとして除湿手段、加湿手段及び送風手段を備えた空調機と、
建物の外部の湿度を計測する建物外計測手段と、
前記建物の内部の湿度を計測する建物内計測手段と、
利用者が設定した前記建物の内部に係る設定湿度範囲と、前記建物の外部の湿度と内部の湿度と前記設定湿度範囲とに対応した運転モードの切換条件と、を予め記憶する記憶手段と、
複数の前記運転モードのうち、前記切換条件に適合した前記運転モードを選択する運転モード選択手段と、
前記運転モード選択手段で選択された運転モードに前記空調機の運転を切り換える運転モード切換手段と、を有し、
前記建物の外部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれない場合、及び、前記建物の外部の湿度が設定湿度範囲に含まれるが内部の湿度が設定湿度範囲に含まれない場合、前記運転モードが前記除湿手段又は加湿手段に切り換わり、
前記建物の外部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれ、かつ、前記建物の内部の湿度が前記設定湿度範囲に含まれる場合、前記運転モードが前記送風手段に切り換わることを特徴とする空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−172952(P2012−172952A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38488(P2011−38488)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】