説明

空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサー

【課題】自動車の空調シートから電気ヒーター・マットを省き、部品構成を簡素化させてその空調シートの部品点数を少なくしてコスト削減を図り、安価に製造可能にする。
【解決手段】ダブル・ラッセル、立体織物などの中空構造の立体ファブリック11を通気層になし、その中空構造の立体ファブリック11に多数の電気ヒーター線14を編み込み、あるいは、織り込んでその多数の電気ヒーター線14を電気ヒーター13になす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の空気調和装置で温度、湿度などを調節された空気をトリム・カバーに送風装置で送風可能にするところの空調シートや空気調和装置で空調された車室内の空気をトリム・カバーに送風装置で送風可能にするところの空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の空調シートでは、パッド・スペーサーが網状クッション体からなり、そして、通気穴付き樹脂フィルム・バッグに包み込まれ、そして、その通気穴付きバッグ面上に電気ヒーター・マットを積み重ねてシート・パッドとトリム・カバーとの間に挟み込み、自動車に装備された空気調和装置で調節された空気、すなわち、暖気や冷気が、また、その空気調和装置で空調された車室内の空気が送風装置でそのトリム・カバーに送られて乗員を温めたり、冷したりする構造が採られるので、部品点数が多くなって高価になった。
その電気ヒーター・マットは、不敷布に電気ヒーター線を縫製や溶着などで組み込んで独立したユニットになされるので、空調シートのコストが嵩んだ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許第4125721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、自動車の空調シートから電気ヒーター・マットを省き、部品構成を簡素化させてその空調シートの部品点数を少なくしてコスト削減を図り、安価に製造可能にするところの空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーは、ダブル・ラッセル、立体織物などの中空構造の立体ファブリックを通気層になし、その中空構造の立体ファブリックに多数の電気ヒーター線を編み込み、あるいは、織り込んでその多数の電気ヒーター線を電気ヒーターになす。
【発明の効果】
【0006】
この発明の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーでは、空調シートから電気ヒーター・マットが省かれ、部品構成が簡素化されてその空調シートの部品点数が少なくなり、コスト削減が図られ、そして、安価に製造可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーの具体例を活用するところの乗用車の空調ドライバー・シートを示した斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿ってシート・クッションを断面、そして、それを分解して示した部分分解斜視図ある。
【図3】その電気ヒーター組込みパッド・スペーサーを示した平面図である。
【図4】その電気ヒーター組込みパッド・スペーサーを部分的に拡大して示した部分斜視図である。
【図5】その電気ヒーターの電気回路図である。
【図6】別のパッド・スペーサーを示した平面図である。
【図7】その別のパッド・スペーサーを部分的に拡大して示した部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーは、ダブル・ラッセル、立体織物などの中空構造の立体ファブリックを通気層になし、その中空構造の立体ファブリックに多数の電気ヒーター線を編み込み、あるいは、織り込んでその多数の電気ヒーター線を電気ヒーターになす。
【0009】
そして、その中空構造の立体ファブリックが、そのダブル・ラッセルからなり、そして、その電気ヒーター線が、そのダブル・ラッセルの表面に編み込まれる。
また、その中空構造の立体ファブリックが、ダブル・ラッセルからなり、そして、その電気ヒーター線が、そのダブル・ラッセルの中間層に編み込まれる。
【0010】
その電気ヒーター線が、ニクロム線、カーボン糸などである。
【実施例1】
【0011】
以下、特定されて図示された具体例に基づいて、この発明の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーを説明するに、図1ないし図5は、乗用車の空調ドライ
バー・シート20に活用されるところのこの発明の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーの具体例10を示し、そして、この空調ドライバー・シート20は、シート・クッション21がシート・トラック(図示せず)およびハイト・アジャスター(図示せず)を組み込み、また、シート・バック22が左右のリクライニング・デバイス(図示せず)でそのシート・クッション21に前倒しおよび角度調整可能に支持され、さらに、ヘッドレスト23がそのシート・バッグ22に取り外し可能に取り付けられる構造に組み立てられ、そして、そのシート・クッション21がそのシート・トラックでその乗用車のボディ・フロアのフロント部分に前後調整可能に据え付けられる。
そして、この空調ドライバー・シート20は、その電気ヒーター組込みパッド・スペーサー10が電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサーとしてそのシート・クッション21に、電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサーとしてそのシート・バック22にそれぞれ活用され、その乗用車に装備された空気調和装置(図示せず)で調節された空気、すなわち、暖気または冷気がブロワ35によりその電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10を通ってシート・クッション・トリム・カバー32の裏面側に、別のブロワ(図示せず)により、その電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサー10を通ってシート・バック・トリム・カバー40の裏面側にそれぞれ送風される構造が採られ、そして、ドライバーの身体が即効的に暖められ、冷されるようにしてある。特に、その空気調和装置が暖房運転される際には、そのクッション・パッド・スペーサー10の電気ヒーター13にもそのバック・パッド・スペーサー10の電気ヒーター13にも通電されて併用され、そして、そのドライバーの身体がより即効的に暖められるようになされている。
【0012】
さらに、この空調ドライバー・シート20では、そのシート・クッション21にもそのシート・バック22にもその電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10、その電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサー10がクッション・パッド・スペーサー・トリム・バッグ30、バック・パッド・スペーサー・トリム・バック39に対応して包み込まれた状態でそのシート・クッション21の着座面24、そのシート・バック22の背当て面25に対応してシート・クッション・パッド26、シート・バック・パッド38とシート・クッション・トリム・カバー32、シート・バック・トリム・カバー40との間に挟まれて配置され、そして、その電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10、その電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサー10がシート・ダクト
(図示せず)、別のシート・ダクト(図示せず)でその空気調和装置の熱交換器(図示せず)の出口(図示せず)に接続され、また、そのクッション・パッド・スペーサー10の電気ヒーター13、そのバック・パッド・スペーサー10の電気ヒーター13が、その乗用車の電源、すなわち、バッテリー43にそれぞれ電気的に接続される。
【0013】
このシート・クッション21は、所定の箇所においてパッド着座面27からパッド裏面28に送風穴29を貫通させるシート・クッション・パッド26と、そのクッション・パッド・スペーサー・トリム・バッグ30に包み込まれた状態でそのシート・クッション・パッド26のそのパッド着座面27に配置されるその電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10と、表皮材33の裏面に通気性パッド(オープン・セル・ウレタン・パッド)34を一体的に積層し、そして、そのシート・クッション・パッド26とそのクッション・パッド・スペーサー・トリム・バック30に包み込まれた状態のその電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10との上に被せられて接着されるシート・クッション・トリム・カバー32とを含み、そして、そのシート・クッション・パッド26がそれらを組付けた状態でシート・クッション・フレーム(図示せず)に組み付けられ、そのシート・クッション・トリム・カバー32が端末処理されて組み立てられ、そして、そのブロア35がそれの送風口37をその送風穴29にはめ合わせてそのシート・クッション・パッド26のそのパッド裏面28に固定的に取り付けられ、そのシート・ダクトで吸入口36をその空気調和装置のその熱交換器のその出口に接続させ、また、その電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10のその電気ヒーター13がその乗用車のそのバッテリー43に電気的に接続される。
【0014】
その電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10は、ダブル・ラッセル、立体織物などの中空構造の立体ファブリック11を通気層12になし、その中空構造の立体ファブリック11に多数の電気ヒーター線14を編み込み、あるいは、織り込んで作られ、その多数の電気ヒーター線14をその電気ヒーター13になしている。
その電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10では、その中空構造の立体ファブリック11はそのダブル・ラッセルであり、また、その多数の電気ヒーター線14はニクロム線が用いられ、そのダブル・ラッセル11の製造工程でそのダブル・ラッセル11の表面に編み込まれ、そして、それらの両端を電極15、16に接続し、コード17でその電極15、16をその乗用車のそのバッテリー43に電気的に接続されてその電気ヒーター13になされ、そして、ヒーター・スイッチ18でオン・オフされる。勿論、その多数の電気ヒーター線14はカーボン糸などが用いられてもかまわない。
【0015】
この電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10は、そのダブル・ラッセル11を構成する糸の一部をそのニクロム線14、カーボン糸に置き換えて編まれ、あるいは、織られてもかまわない。
そのように、この電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10は、その中空構造の立体ファブリック11、すなわち、そのダブル・ラッセル11の製造工程でそのダブル・ラッセル11に編み込まれ、あるいは、織り込まれるので、電気ヒーター・マットが省かれて部品構成が簡素化されて安価になる。
【0016】
そのクッション・パッド・スペーサー・トリム・バッグ30は、所定の大きさの樹脂フィルム・バッグでそれの内部にその電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10を入れ、袋口を密閉して用いられる。このクッション・パッド・スペーサー・トリム・バッグ30は、そのクッション・パッド・スペーサー10の上面側に対応する部分に複数の通気穴31を、そのクッション・パッド・スペーサー10の下面側に対応する部分に送風取入れ口(図示せず)をそれぞれ開口させ、そして、そのクッション・パッド・スペーサー10を包み込んでそのシート・クッション・パッド26のそのパッド着座面27に配置した状態でその送付取入れ口はそのシート・クッション・パッド26のその送風穴2
9に合わせられてその電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10に送風可能にする。
【0017】
一方、そのシート・バック22は、そのシート・クッション21と同様に所定の箇所においてパッド背当て面(図示せず)からパッド背裏面(図示せず)に送風穴(図示せず)を貫通させるシート・バック・パッド38と、そのバック・パッド・スペーサー・トリム・バック39に包み込まれた状態でそのシート・バック・パッド38のその背当て面に配置されるその電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサー10と、表皮材41の裏面に通気性パッド(オープン・セル・ウレタン・パッド)42を一体的に積層し、そして、そのシート・バック・パッド38とそのバック・パッド・スペーサー・トリム・バック39に包み込まれた状態でその電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサー10との上に被せられて接着されるシート・バック・トリム・カバー40とを含み、そして、そのシート・バック・パッド38がそれらを組付けた状態でシート・バック・フレーム(図示せず)に組み付けられ、そのシート・バック・トリム・カバー40が端末処理されて組み立てられ、そして、その別のブロアがそれの送風口(図示せず)をその送風穴にはめ合わせてそのシート・バック・パッド38のそのパッド背裏面に固定的に取り付けられ、その別のシート・ダクトでそれの吸入口(図示せず)をその空気調和装置のその熱交換器のその出口に接続させ、また、その電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサー10のその電気ヒーター13がその乗用車のそのバッテリー43に電気的に接続される。
【0018】
その電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサー10は、そのシート・クッション21のその電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10と同じて同様に活用される。
【0019】
そのバック・パッド・スペーサー・トリム・バック39は、そのシート・クッション21のそのクッション・パッド・スペーサー・トリム・バック30と同じて同様に活用される。
このバック・パッド・スペーサー・トリム・バッグ39は、それの送風取入れ口(図示せず)をそのシート・バック・パッド38のその送風穴に合わせ、その電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサー10に送風可能にする。
【0020】
したがって、この電気ヒーター組込みパッド・スペーサー10、すなわち、その電気ヒーター組込みクッション・パッド・スペーサー10、その電気ヒーター組込みバック・パッド・スペーサー10では、その空調ドライバー・シート20から電気ヒーター・マットが省かれ、部品構成が簡素化されてその空調ドライバー・シート20の部品点数が少なくなり、コスト削減が図られ、そして、安価に製造可能になる。
【実施例2】
【0021】
図6および図7は、その乗用車のその空調ドライバー・シートに活用されるところのこの発明の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーの別の具体例50を示し、そして、この電気ヒーター組込みパッド・スペーサー50は、ダブル・ラッセル51を通気層52になし、そのダブル・ラッセル51の中間層をヒーター線経路になしてそのダブル・ラッセル51のその中間層に多数のニクロム線54を通すようにそのダブル・ラッセル51にその多数のニクロム線54を編み込んで作られ、その多数のニクロム線54で電気ヒーター53をなし、そして、その電気ヒーター53、すなわち、その多数のニクロム線54の両端に通電して発熱させる。
【0022】
先に図面を参照して説明されたところのこの発明の特定された具体例から明らかであるように、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、この発明の内容は、その発明の性質(nature)および本質(substance)に由来し
、そして、それらを内在させると客観的に認められる別の態様に容易に具体化される。勿論、この発明の内容は、その発明の課題に相応し(be commensurate with)、そして、その発明の成立に必須である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
上述から理解されるように、この発明の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッドは、ダブル・ラッセル、立体織物などの中空構造の立体ファブリックを通気層になし、その中空構造の立体ファブリックに多数の電気ヒーター線を編み込み、あるいは、織り込んでその多数の電気ヒーター線を電気ヒーターになすので、この発明の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサーでは、電気ヒーター・マットが空調シートから省かれ、部品構成が簡素化されその空調シートの部品点数が少なくなり、シート組立作業が簡単でその作業時間が短縮され、コスト削減が図られ、そして、安価に製造可能になり、その結果、自動車シート、特に空調シートにとって非常に有用で実用的である。
【符号の説明】
【0024】
10 電気ヒーター組込みパッド・スペーサー
11 中空構造の立体ファブリック
12 通気層
13 電気ヒーター
14 電気ヒーター線/ニクロム線
15 電極
16 電極
17 コード
18 ヒーター・スイッチ
20 空調ドライバー・シート
21 シート・クッション
22 シート・バック
23 ヘッドレスト
24 着座面
25 背当て面
26 シート・クッション・パッド
27 パッド着座面
28 パッド裏面
29 送風穴
30 クッション・パッド・スペーサー・トリム・バッグ
31 通気穴
32 シート・クッション・トリム・カバー
33 表皮材
34 通気性パッド
35 ブロア
36 吸入口
37 送風口
38 シート・バック・パッド
39 バック・パッド・スペーサー・トリム・バッグ
40 シート・バック・トリム・カバー
41 表皮材
42 通気性パッド
43 バッテリー
50 電気ヒーター組込みパッド・スペーサー
51 ダブル・ラッセル
52 通気層
53 電気ヒーター
54 ニクロム線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブル・ラッセル、立体織物などの中空構造の立体ファブリックを通気層になし、その中空構造の立体ファブリックに多数の電気ヒーター線を編み込み、あるいは、織り込んでその多数の電気ヒーター線を電気ヒーターになすところの空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサー。
【請求項2】
その中空構造の立体ファブリックが、そのダブル・ラッセルからなり、そして、その電気ヒーター線が、そのダブル・ラッセルの表面に編み込まれる請求項1に記載の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサー。
【請求項3】
その中空構造の立体ファブリックが、ダブル・ラッセルからなり、そして、その電気ヒーター線が、そのダブル・ラッセルの中間層に編み込まれる請求項1に記載の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサー。
【請求項4】
その電気ヒーター線が、ニクロム線、カーボン糸などである請求項1ないし3の何れかに記載の空調シートに用いる電気ヒーター組込みパッド・スペーサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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