説明

空調装置

【課題】送風機の作動不良を回避しつつ、空調装置作動時の低騒音化を図る。
【解決手段】電動機起動後において電動機22の回転を維持可能な電圧は、雰囲気温度が高くなるのに伴って低くなる。そこで、送風機起動後のブロワ電圧として設定することを許可する許可最低電圧の値を、雰囲気温度が高くなるのに伴って低下させる。これにより、雰囲気温度が高いときには低熱負荷時のブロワ電圧を従来よりも下げて低騒音化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機により羽根車を駆動する送風機を備える空調装置に関し、特に車両用空調装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置は、送風機の電動機に印加する電圧(以下、ブロワ電圧という)を熱負荷に応じて演算し、ブロワ電圧を制御して風量をコントロールするようにしている(例えば、特許文献1参照)。そして、近年、空調装置作動時の更なる低騒音化が求められており、その対応策のひとつとして、低熱負荷時のブロワ電圧を従来よりも下げて低風量化を図ることが検討されている。
【0003】
因みに、特許文献1に示された空調装置は、外気温から日射量を推定してブロワ電圧を制御することにより、日射センサを不要にしている。
【特許文献1】特開2006−290130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用空調装置は、送風機の作動不良を回避するために、低温時においても送風機の電動機が起動可能な電圧に基づいて、ブロワ電圧として設定可能な最低電圧を決めている。したがって、低熱負荷時のブロワ電圧を従来よりも下げることは困難であった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、送風機の作動不良を回避しつつ、空調装置作動時の低騒音化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電動機(22)により羽根車(21)を駆動する送風機(2)を備える空調装置において、送風機起動後のブロワ電圧として設定することを許可する許可最低電圧の値を、雰囲気温度が高くなるのに伴って低下させることを特徴とする。
【0007】
ところで、電動機起動後において電動機(22)の回転を維持可能な電圧は、雰囲気温度が高くなるのに伴って低くなる。したがって、本発明によれば、送風機(2)の作動不良を回避しつつ、雰囲気温度が高いときには低熱負荷時のブロワ電圧を従来よりも下げて空調装置作動時の低騒音化を図ることができる。
【0008】
また、雰囲気温度が高く且つ低熱負荷時には消費電力が低減されるため、例えば内燃機関により発電機を駆動し、その発電電力により送風機(2)を運転する場合、省燃費化を図ることができる。
【0009】
さらに、雰囲気温度が高いときには従来よりも低風量制御が可能であるため、熱負荷に応じてきめ細かい空調制御を行うことができる。
【0010】
この場合、送風機(2)を起動する際のブロワ電圧を、雰囲気温度が高くなるのに伴って低下させることができる。
【0011】
ところで、電動機(22)が起動可能な電圧は、雰囲気温度が高くなるのに伴って低くなる。したがって、雰囲気温度が高くなるのに伴って起動時ブロワ電圧を低下させることにより、送風機(2)の起動時の作動不良を回避しつつ、送風機(2)の起動時の低騒音化および省燃費化を図ることができる。
【0012】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態について説明する。図1は一実施形態に係る空調装置を示す図である。
【0014】
本実施形態の空調装置は、車両に搭載される空調装置であって、空調ケーシング1は、車室内における計器盤の下方に配置される。空調ケーシング1は、内部に空気通路を形成するものであり、車室内の空気を吸い込むための空気吸込口11と、車室内に空気を吹き出すための空気吹出口12とを有している。
【0015】
送風機2は、空調ケーシング1内に配置され、空気流を発生させる羽根車21と、羽根車21を駆動する電動機22とから構成されている。そして、電動機22により羽根車21を駆動することにより、空気吸込口11から空気を吸い込んで空気吹出口12から室内に向けて空気を吹き出すようになっている。
【0016】
エバポレータ3は、空調ケーシング1内において送風機2よりも空気流れ下流側に配置され、図示しない圧縮機等とともに冷媒を循環させる蒸気圧縮式冷凍サイクル装置を構成し、冷媒が空気から吸熱して蒸発することにより空気を冷却する。
【0017】
ヒータ4は、空調ケーシング1内においてエバポレータ3よりも空気流れ下流側に配置され、図示しない内燃機関の冷却水(温水)が循環し、冷却水により空気を加熱する。そして、ヒータ4に循環させる冷却水の流量を図示しない制御弁によって調整することにより、空気の加熱量を調整し、ひいては室内に向けて吹き出す空気の温度を調整するようになっている。
【0018】
電子制御装置5は、図示しないCPU、RAM、ROM、EEPROM等からなる周知のマイクロコンピュータを備え、マイクロコンピュータに記憶したプログラムに従って演算処理を行うものである。
【0019】
具体的には、電子制御装置5は、内気温度(車室内空気温度)を検出する内気温センサ61からの検出信号、外気温度を検出する外気温センサ62からの検出信号、日射量を検出する日射センサ63からの検出信号、乗員の好みの温度を設定するための温度設定スイッチ64からの操作信号に基づいて、電動機22に印加するブロワ電圧を演算すると共に、パワートランジスタ7を制御してブロワ電圧を制御する。なお、外気温センサ62は、本発明の温度センサに相当する。
【0020】
バッテリ8は、電動機22等に電力を供給するものであり、内燃機関にて駆動される図示しない発電機の発電電力により充電される。
【0021】
次に、送風機2の電動機22の制御について説明する。図2は電子制御装置5によって実行される処理の手順を示すフローチャートである。図2に示すように、まず、ステップS100において、温度設定スイッチ64により設定された設定温度情報および各センサ61〜63からの検出信号を読み込む。
【0022】
次に、ステップS110に進み、ステップS100で読み込んだ設定温度およびセンサ61〜63の検出信号等に基づいて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度を算出する。なお、目標吹出温度は、ROMに記憶された式により算出する。ここで、目標吹出温度は、環境条件の変化にかかわらず、車室内を設定温度に維持するために必要な吹出空気温度である。
【0023】
次に、ステップS120に進んで送風機2が起動しているか否かを判定し、送風機2が起動していない場合には(ステップS120がNO)、ステップS130に進む。
【0024】
そして、起動時ブロワ電圧演算手段としてのステップS130では、送風機2を起動する際のブロワ電圧(以下、起動時ブロワ電圧という)を、ステップS100で読み込んだ外気温センサ62からの検出信号に基づいて演算する。ここで、図3は、電動機22が起動可能な電圧と雰囲気温度との関係を示すもので、雰囲気温度が高くなるのに伴って起動可能な電圧は低下する。そこで、ステップS130では、外気温センサ62で検出した外気温が高くなるのに伴って、起動時ブロワ電圧を低下させる。なお、起動時ブロワ電圧と外気温との関係を定義したマップがROMに記憶されており、起動時ブロワ電圧はそのマップから求められる。
【0025】
続いて、ステップS140に進み、ブロワ電圧がステップS130で求めた起動時ブロワ電圧となるように、パワートランジスタ7を制御する。このように、外気温が高くなるのに伴って起動時ブロワ電圧を低下させることにより、送風機2の起動時の作動不良を回避しつつ、送風機2の起動時の低騒音化および消費電力低減による省燃費化を図ることができる。
【0026】
一方、ステップS120において送風機2がすでに起動していると判定された場合には(ステップS120がYES)、ステップS150に進む。
【0027】
そして、許可最低電圧演算手段としてのステップS150では、送風機2の起動後におけるブロワ電圧(以下、起動後ブロワ電圧という)として設定することを許可する許可最低電圧の値を、ステップS100で読み込んだ外気温センサ62からの検出信号に基づいて算出する。ここで、起動可能な電圧と雰囲気温度との関係と同様に、電動機22が起動した後に回転を維持可能な電圧は、雰囲気温度が高くなるのに伴って低下する。そこで、ステップS150では、外気温センサ62で検出した外気温が高くなるのに伴って、許可最低電圧の値を低下させる。なお、許可最低電圧と外気温との関係を定義したマップがROMに記憶されており、起動後ブロワ電圧の目標値はそのマップから求められる。
【0028】
次に、起動後ブロワ電圧演算手段としてのステップS160に進み、起動後ブロワ電圧を算出する。このステップS160では、まず、ステップS110で求めた目標吹出温度に基づいて、起動後ブロワ電圧の目標値を算出する。そして、算出した起動後ブロワ電圧の目標値とステップS150で求めた許可最低電圧の値とを比較する。このとき、起動後ブロワ電圧の目標値が許可最低電圧の値以上であれば起動後ブロワ電圧の目標値を起動後ブロワ電圧として決定し、起動後ブロワ電圧の目標値が許可最低電圧の値未満であれば許可最低電圧の値を起動後ブロワ電圧として決定する。なお、起動後ブロワ電圧の目標値と目標吹出温度との関係を定義したマップがROMに記憶されており、起動後ブロワ電圧の目標値はそのマップから求められる。
【0029】
続いて、ステップS140に進み、ブロワ電圧がステップS160で求めた起動後ブロワ電圧となるように、パワートランジスタ7を制御する。
【0030】
このように、外気温が高くなるのに伴って許可最低電圧の値を低下させることにより、送風機2の作動不良を回避しつつ、外気温が高いときには低熱負荷時のブロワ電圧を従来よりも下げて空調装置作動時の低騒音化を図ることができる。また、外気温が高く且つ低熱負荷時には消費電力が低減されるため、省燃費化を図ることができる。さらに、外気温が高いときには従来よりも低風量制御が可能であるため、熱負荷に応じてきめ細かい空調制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る空調装置を示す図である。
【図2】図1の電子制御装置5によって実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】電動機が起動可能な電圧と雰囲気温度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1…空調ケーシング、2…送風機、21…羽根車、22…電動機、62…外気温センサ(温度センサ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路を形成する空調ケーシング(1)と、
前記空調ケーシング(1)内に配置され、電動機(22)により羽根車(21)を駆動して空気を室内に向けて吹き出す送風機(2)と、
雰囲気温度を検出する温度センサ(62)と、
前記送風機(2)の起動後に前記電動機(22)に印加する起動後ブロワ電圧を演算する起動後ブロワ電圧演算手段(S160)と、
前記起動後ブロワ電圧として設定することを許可する許可最低電圧の値を演算すると共に、前記温度センサ(62)で検出した雰囲気温度が高くなるのに伴って前記許可最低電圧の値を低下させる許可最低電圧演算手段(S150)とを備えることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記送風機(2)を起動する際に前記電動機(22)に印加する起動時ブロワ電圧を演算すると共に、前記温度センサ(62)で検出した雰囲気温度が高くなるのに伴って前記起動時ブロワ電圧を低下させる起動時ブロワ電圧演算手段(130)を備えることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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