説明

空調装置

【課題】風量調整部材を簡素な構造で空調ケース内に配設できる空調装置を実現する。
【解決手段】空気通路を形成する空調ケース2と、この空調ケース2内に送風空気を圧送する送風機6とを備え、空調ケース2内を流れる空気を冷却する蒸発器8を取り付けた状態と、この蒸発器8を取り外した状態とを選択的に設定可能であって、蒸発器8を取り外した状態では、取り外された蒸発器8と略同等の通風抵抗が得られる風量調整部材7を空調ケース2内に設定するように構成された空調装置において、空気通路の一部は、空調ケース2から着脱可能な小ケース部22として形成されており、この小ケース部22には、蒸発器8を配設する収納空間23が形成されており、この収納空間23よりも空気流れ上流側において、切断可能な風量調整部材7が小ケース部22に一体的に形成されている。これにより、風量調整部材を簡素な構造で空調ケース内に配設できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ケース内に配設される蒸発器、ヒータコア、もしくはフィルタ等の空調用機能部品の有無を選択的に設定可能な空調装置に関するものであり、例えば、車両に搭載する車両用空調装置に適用して好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空調装置として、例えば、特許文献1に示されるものが知られている。すなわち、特許文献1における空調装置は、例えば、寒冷地仕様車において、蒸発器を空調ケースから取り外した状態を設定できるようになっている。つまり、蒸発器の有無を選択的に設定可能な空調装置となっている。
【0003】
蒸発器を取り外した状態で空調ケースを構成した場合には、蒸発器を空調ケース内に取り付けたときに比べて、通風抵抗が変化し、吹出口からの吹き出し風量が変化してしまうのを防止するため、蒸発器と略同等の通風抵抗を有する風量調整部材が空調ケース内に取り付けられている。この風量調整部材は、蒸発器の上流側に設けられたフィルタ本体に着脱自在に設けられている。これによれば、蒸発器を取り付けた状態の通風抵抗を確保することができるため、吹出口からの吹き出し風量を略同一にできる。
【0004】
そして、蒸発器を取り付けた状態で空調ケースを構成した場合には、フィルタ本体の下流側に蒸発器を配設するとともに、風量調整部材をフィルタ本体から取り外すようにしている。このように、風量調整部材を空調ケース内に取り付け、あるいは取り外しが可能となっている。
【特許文献1】特開2001−30751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような構成によれば、風量調整部材を空調ケース内に取り付けるために、フィルタ本体に風量調整部材の被取付部材を形成することが必要である。これにより、部品点数の増加や風量調整部材を取り付けるための組付け工数の増加による製造コストの上昇を招く問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、風量調整部材を簡素な構造で空調ケース内に配設できるとともに、蒸発器、ヒータコアもしくはフィルタ等の空調用機能部品を後から空調ケース内に組み付けるときに、空調用機能部品を空調ケース内に組み付けることが簡便にできるとともに、風量調整部材を容易に取り外すことができる空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、空気通路を形成する空調ケース(2)と、この空調ケース(2)内に送風空気を圧送する送風手段(6)とを備え、空調ケース(2)内を流れる送風空気を空調する空調用熱交換器(8、9)を取り付けた状態と、この空調用熱交換器(8、9)を取り外した状態とを選択的に設定可能であって、空調用熱交換器(8、9)を取り外した状態では、取り外された空調用熱交換器(8、9)と略同等の通風抵抗が得られる風量調整部材(7)を空調ケース(2)内に設定するように構成された空調装置において、
空気通路の一部は、前記空調ケース(2)から着脱可能な小ケース部(22)として形成されており、この小ケース部(22)には、空調用熱交換器(8、9)を配設する収納空間(23)が形成されており、この収納空間(23)よりも空気流れ上流側において、切断可能な風量調整部材(7)が小ケース部(22)に一体的に形成されていることを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、風量調整部材(7)が小ケース部(22)に一体的に形成されていることにより、簡素な構造の風量調整部材(7)を空調ケース(2)内に配設できる。また、小ケース部(22)を空調ケース(2)から取り外すことにより、空調用熱交換器(8、9)を組み付けることが簡便にできるとともに、空調用熱交換器(8、9)を組み付けるときに、風量調整部材(7)を容易に取り外すことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、風量調整部材(7)は、空調用熱交換器(8、9)を取り外した状態のときに、取り外された空調用熱交換器(8、9)と略同等の風速分布が得られる形状に形成されていることを特徴としている。この発明によれば、空調用熱交換器(8、9)を取り外した状態の場合に、空調用熱交換器(8、9)を取り付けた状態と同じように、吹出空気の温度コントロール性を確保することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、風量調整部材(7)は、小ケース部(22)の底部から上方に突き出すように突起状の複数の平板で形成されていることを特徴としている。この発明によれば、風量調整部材(7)を小ケース部(22)に一体的に形成することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、空気通路を形成する空調ケース(2)と、この空調ケース(2)内に送風空気を圧送する送風手段(6)とを備え、空調ケース内を流れる送風空気を清浄するフィルタ(17)を取り付けた状態と、このフィルタ(17)を取り外した状態とを選択的に設定可能であって、フィルタ(17)を取り外した状態では、取り外されたフィルタ(17)と略同等の通風抵抗が得られる風量調整部材(7)を空調ケース(2)内に設定するように構成された空調装置において、
空気通路の一部は、空調ケース(2)から着脱可能な小ケース部(22)として形成されており、小ケース部(22)には、フィルタ(17)を配設する収納空間(23)が形成されており、この収納空間(23)よりも空気流れ上流側において、切断可能な風量調整部材(7)が小ケース部(22)に一体的に形成されていることを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、風量調整部材(7)が小ケース部(22)に一体的に形成されていることにより、簡素な構造の風量調整部材(7)を空調ケース(2)内に配設できる。また、小ケース部(22)を空調ケース(2)から取り外すことにより、フィルタ(7)を組み付けることが簡便にできるとともに、フィルタ(7)を組み付けるときに、風量調整部材(7)を容易に取り外すことができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、風量調整部材(7)は、フィルタ(17)を取り外した状態のときに、取り外されたフィルタ(17)と略同等の風速分布が得られる形状に形成されていることを特徴としている。この発明によれば、フィルタ(17)を取り外した状態のときに、フィルタ(17)を取り付けた状態と同じように、送風空気の風速分布を確保することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明では、風量調整部材(7)は、小ケース部(22)の底部から上方に突き出すように突起状の複数の平板で形成されていることを特徴としている。この発明によれば、風量調整部材(7)を小ケース部(22)に一体的に形成することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明では、風量調整部材(7)は、空気通路に突き出すように突起状に形成され、かつその根元部が切り欠くように形成されていることを特徴としている。この発明によれば、風量調整部材(7)を空調ケース(2)から容易に取り外すことができる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態における空調装置を図1乃至図7に基づいて説明する。ここでは、本発明の空調装置を、車両に搭載する車両用空調装置に適用したものである。図1は、蒸発器を取り外した状態の空調ユニットの全体構成を示す模式図である。図2は、蒸発器を取り付けた状態の空調ユニットの全体構成を示す模式図である。
【0018】
図3は、車両に搭載される空調ユニットの概略構成を示す側面図である。図4は、車両に搭載される空調ユニットの概略構成を示す正面図である。図5は、小ケースの構成を示す平面図である。図6(a)および図6(b)は、風量調整部材の形状を示す部分拡大図である。図7は、蒸発器を小ケースに取り付けたときの空調ユニットの分解構成図である。
【0019】
本実施形態の車両用空調装置では、蒸発器8(空調用熱交換器)を取り外した状態の空調ユニット1を工場で製造して販売店に出荷し、その販売店にて、風量調整部材7を取り外して蒸発器8を取り付けるように構成している。つまり、蒸発器8の有無を選択的に設定可能な空調ユニット1を構成している。
【0020】
そのため、蒸発器8を取り外した状態の空調ユニット1には、取り外した蒸発器8と、略同等となる通風抵抗並びに略同等となる風速分布を有する風量調整部材7が設けられている。また、取り外した蒸発器8を後から容易に組み込むことができるように構成している。ここで、蒸発器8を取り外した状態の空調ユニット1の構成について説明する。
【0021】
本実施形態の空調ユニット1は、図1に示すように、空気通路を形成する空調ケース2を備えている。この空調ケース2の上流側部位には、車室内の空気を吸込む内気吸込口3、車室外の空気を吸込む外気吸込口4、両吸込口3、4を選択的に開閉する内外気切替ドア5が設けられている。
【0022】
更に、この内外気切替ドア5の下流側には、空調ケース2内に送風空気を圧送する送風手段としての送風機6が設けられている。送風機6は、図示しないファンケース、ファン、ファンモータからなっている。送風機6の下流側には、空調ケース2において、上述したように、蒸発器8と、略同等の通風抵抗並びに略同等の風速分布を有する風量調整部材7(詳しくは後述する)が設けられている。また、この風量調整部材7の下流側には、空調ケース2において、必要に応じて配設される蒸発器8を収納するための収納空間23が形成されている。
【0023】
そして、収納空間23の下流側には、加熱用熱交換器としてのヒータコア9およびエアミックスドア10が設けられている。ヒータコア9は、図示しないエンジンの冷却水を熱源とする加熱用熱交換器で、空調ケース2内に流れる空気を加熱するためのものである。また、エアミックスドア10は、収納空間23(蒸発器8)を通過した送風空気のうち、ヒータコア9を通過して加熱される風量と、ヒータコア9をバイパスする風量との割合を調節することにより、車室内への吹出空気の吹出温度を調節するようになっている。
【0024】
そして、ヒータコア9の下流側には、車室内乗員の上半身に向けて風を吹き出すフェイス吹出開口部11、車室内乗員の足元に向けて風を吹き出すフット吹出開口部12、車両の前面窓ガラス内面に向けて風を吹き出すデフロスタ吹出開口部13がそれぞれ設けられている。
【0025】
また、フェイス吹出開口部11およびデフロスタ吹出開口部13の上流側には、フェイスデフロスタドア14が設けられ、フット吹出開口部12の上流側には、フットドア15が設けられている。フェイス吹出開口部11およびデフロスタ吹出開口部13は、フェイスデフロスタドア14により開閉されるようになっている。フット吹出開口部12は、フットドア15により開閉されるようになっている。
【0026】
フェイス吹出開口部11は、図示しないフェイスダクトおよびサイドフェィスダクトを介してフェイス吹出口およびサイドフェイス吹出口に接続されている。このフェイス吹出口およびサイドフェイス吹出口から、乗員の上半身に向けて風が吹き出される。
【0027】
デフロスタ吹出開口部13は、図示しないデフロスタダクトを介してデフロスタ吹出口に接続されている。このデフロスタ吹出口から、車両の前面窓ガラスの内面に向けて風が吹き出される。フット吹出開口部12は、図示しないフットダクトを介してフット吹出口に接続されている。このフット吹出口から、乗員の足元に向けて風が吹き出される。
【0028】
ここで、空気通路を形成する空調ケース2は、ポリプロピレンのような、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなっている。空調ケース2は、複数の分割ケースからなっており、複数の分割ケースは、空気通路内に配設される蒸発器8、ヒータコア9等の空調用熱交換器および制御ドア10、14、15等の機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により、一体的に結合されている。
【0029】
ところで、図1中に示す2点鎖線で囲まれた符号22は、空調ケース2内に形成される空気通路の一部であり、本実施形態では小ケース部と呼んでいる。この小ケース部22は、空調ケース2から着脱可能となるように構成している。つまり、空調ケース2は、図3および図4に示すように、図示しない内外気切替箱と、上ケース21と、小ケース部22との3分割となるように構成している。
【0030】
小ケース部22は、空調ユニット1の底部となる部分に相当し、その上方に上ケース21を重ね合わせるように構成している。図3および図4中に示す符号24は、小ケース部22に形成されたドレン口であり、小ケース部22は、このドレン口24が最下方になるように形成されている。
【0031】
更に、図3および図4中に示す符号25は、上ケース21および小ケース部22に形成された配管収納部であり、蒸発器8に接続される配管類および膨張弁などを収容できるように形成されている。配管収納部25は、上ケース21および小ケース部22の側方の一端側が外方に膨らむように形成されている。
【0032】
上ケース21側に形成された配管収納部25は、蒸発器8を取り付けたときに、その蒸発器8に接続される膨張弁および配管の接続口を収容し、小ケース部22側に形成された配管収納部25は、その配管の接続口に接続された配管類を収容するためのスペースになっている。上ケース21と小ケース部22とを重ね合わせることにより、配管収納部25が形成される。
【0033】
また、上ケース21の空気流れ上流側、即ちファンケースの上流側は、図示しない内外気切替箱に接続されている。前述した通り、内外気切替箱には、内気吸込口3、外気吸込口4および内外気切替ドア5が設けられている。また、内外気切替箱は、車室内の計器盤下方部のうち、中央部から助手席にオフセットして配置されている。
【0034】
これに対して、上ケース21および小ケース部22は、車室内の計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。この上ケース21には、送風機6、ヒータコア9および制御ドア10、14、15等を収容できるように形成されている。送風機6は、車両後方側の上方に配置され、ヒータコア9は、車両前方側の上下方向のほぼ中央に配置されている。
【0035】
また、上ケース21には、ヒータコア9と送風機6との間の上方に各吹出開口部11、12、13が形成されている。フェイス吹出開口部11は、送風機6の上方にて、車両後方側が開口するように形成されている。デフロスタ吹出開口部13は、フェイス吹出開口部11と対向する位置に、車両前方側が開口するように形成されている。フット吹出開口部12は、上ケース21の側壁に形成されている。
【0036】
ここで、小ケース部22は、送風機6から吐出された送風空気を、ヒータコア9およびエアミックスドア10側に流すための空気通路を形成している。この小ケース部22は、送風機6により車両後方側の下方に向けて吹き出された送風空気が、小ケース部22の底面を車両前方側に沿って流れ、小ケース部22の上方に配設されたヒータコア9およびエアミックスドア10側に向けて導くように形成されている。
【0037】
つまり、小ケース部22は、図5に示すように、車両上方側端部(即ち、上ケース21の車両下方側端部と結合される分割面)が、空気通路を形成するために開口されている。前述の通り、小ケース部22の上方側には、配管類および膨張弁が接続された蒸発器8を収容するための収納空間23が形成されている(図3参照)。収納空間23は、図5中に示す2点鎖線で囲まれた部分に相当している。この収納空間23に対して、車両後方側に形成された開口部22aは、送風機6から吐出された送風空気が流れる空調通路である。
【0038】
また、図5中に示す符号26は、収納空間23における空気通路23aと配管収納部25とを区画する仕切り板である。この空気通路23aは、蒸発器8の通風部分に相当するコア部(図示せず)が配設される部分であり、蒸発器8を取り外した状態の空調ユニット1では、開口している。
【0039】
そして、小ケース部22の底部には、図5および図6(a)に示すように、切断可能な複数の風量調整部材7が一体的に形成されている。この風量調整部材7は、上述した収納空間23における空気通路23aを流れる送風空気が、収納空間23に配設される蒸発器8と、略同等となる通風抵抗並びに略同等となる風速分布が得られる形状に形成している。
【0040】
つまり、車両後方側の開口部22aから下方に向けて吹き出される送風空気を遮るとともに、上方の空気通路23aを流れる送風空気の車両左右方向および車両前後方向に対して、風速分布を均一となる形状に形成している。そのため、上方に突き出す突起状の平板により風量調整部材7を複数個形成するとともに、送風空気の風向を変えるように風量調整部材7を車両左右方向に向けて傾斜させている。
【0041】
つまり、風量調整部材7の傾斜により、車両左右方向に分かれて送風空気が流れる。具体的には、車両前方側のドレーン口24の上方から車両後方側に向けて見た場合、小ケース部22の底部から風量調整部材7がハの字状に立つように形成されている。言い換えれば、風量調整部材7は、送風空気の流れ方向に対し、略逆ハの字状に傾斜するように形成されている。
【0042】
また、車両前方端に配設される風量調整部材7は、ハの字の一方が小ケース部22の前方壁と平行に立つように形成されている。このような形状の風量調整部材7により、送風機6により車両後方側の下方に向けて吹き出された送風空気が、小ケース部22の底面を車両前方側に沿って流れるときに、通風抵抗が負荷されるとともに、その風向が変えられる。このため、その上方に形成された空気通路23aを流れる送風空気に対して、収納空間23に蒸発器8が配設された場合と比較した場合、略同等となる通風抵抗並びに略同等となる風速分布が得られる。
【0043】
更に、それぞれの風量調整部材7の根元部には、図6(a)に示すように、切断可能な切り欠き部7aが形成されている。この切り欠き部7aは、蒸発器8を取り付けたときに、風量調整部材7を小ケース部22から切り離すための薄肉部である。
【0044】
風量調整部材7を切り欠き部7a近傍で折り曲げることにより、風量調整部材7を小ケース部22から容易に取り外すことができる。これによれば、突起状の風量調整部材7を形成する成形型に切り欠き部7aを成形する凸部を追加するのみであるため、型費が安くできる。
【0045】
なお、本実施形態では、図6(a)に示すような切り欠き部7aを形成したが、これに限らず、図6(b)に示すように、突起状の風量調整部材7の根元部が薄肉状となる切り欠き部7bを形成しても良い。
【0046】
また、蒸発器8を取り外した状態の空調ユニット1では、配管収納部25は、蒸発器8を取り付けたときにおいて、蒸発器8に接続される膨張弁および配管類を収容するスペースであるため、仕切り板26を閉塞するように別体の塞ぎ部材(図示せず)が設けられている。これにより、小ケース部22の空気通路23aを流れる送風空気が、配管収納部25側に漏れることがない。
【0047】
また、蒸発器8を取り外した状態の空調ユニット1では、ドレン口24においても、別体の塞ぎ部材(図示せず)により、閉塞されている。これにより、送風機6から吹き出される送風空気が、ドレン口24を介して外部に漏れることがない。
【0048】
以上のように構成された(蒸発器8を取り外した状態の)空調ユニット1は、風量調整部材7を小ケース部22に設けたことにより、空気通路23aを流れる送風空気が、収納空間23に蒸発器8を取り付けた状態と、略同等となる通風抵抗並びに略同等となる風速分布を有することができる。
【0049】
従って、空気通路23aの下流側において、空気通路23aを通過した送風空気のうち、ヒータコア9を通過して加熱される風量と、ヒータコア9をバイパスする風量との割合を調節するエアミックスドア10が、収納空間23に蒸発器8を取り付けた状態と同じように、作動させることができる。これにより、各吹出開口部11、12、13から吹き出す吹出空気の温度調節が容易にできる。つまり、蒸発器8を取り外した状態の空調ユニット1であっても、蒸発器8を取り付けた状態と同じように、吹出空気の温度コントロール性を確保することができる。
【0050】
以上のように本実施形態の空調ユニット1は、例えば、寒冷地仕様車において、蒸発器8を空調ユニット1から取り外した状態を設定できるようになっている。
【0051】
次に、蒸発器8を取り付けた空調ユニット1について、図2および図7に基づいて説明する。この場合には、図2および図7に示すように、小ケース部22に設けられた風量調整部材7を取り外して、蒸発器8を収納空間23に配設している。
【0052】
具体的には、蒸発器8を取り外した状態の空調ユニット1において、空調ケース2から小ケース22を分割する。つまり、上ケース21と小ケース22とを分ける。そして、小ケース22内の塞ぎ部材(図示せず)を取り除く。これにより、風量調整部材7が外部に露出される。
【0053】
次に、風量調整部材7の切り欠き部7a近傍を折り曲げて、風量調整部材7を取り外す。これにより、蒸発器8の空気流れ上流側に配設された遮蔽物が撤去される。そして、蒸発器8を収納空間23に配設する。そして、小ケース22の上方に上ケース21を重ね合わせて空調ケース2を形成する。
【0054】
ここで、蒸発器8は、図示しないコンプレッサ、コンデンサ、レシーバおよび膨張弁とともに、周知の冷凍サイクルを構成する冷却用熱交換器である。これにより、蒸発器8を取り付けた状態の空調ユニット1が形成される。
【0055】
以上のような構成による空調ユニット1によれば、風量調整部材7が小ケース部22に一体的に形成されていることにより、簡素な構造の風量調整部材7を空調ケース2内に配設できる。また、小ケース部22を空調ケース2から取り外すことにより、蒸発器8を組み付けることが簡便にできるとともに、蒸発器8を組み付けるときに、風量調整部材7を容易に取り外すことができる。
【0056】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、蒸発器8を取り外した場合の空調ユニット1の例を構成したが、蒸発器8の代わりに、フィルタ17を取り外すことができる空調ユニット1とすることも可能である。図8は、第2実施形態におけるフィルタを取り付けた状態の空調ユニットの全体構成を示す模式図である。本実施形態では、フィルタ17の有無を選択的に設定可能な空調ユニット1として構成している。また、フィルタ17は、空調ケース2内を流れる空気を清浄するものである。
【0057】
本実施形態の空調ユニット1は、図8に示すように、送風機6の下流側とエアミックスドア10およびヒータコア9との間に、空調ケース2から分割する小ケース部22を形成している。そして、その小ケース部22には、フィルタ17と略同等の通風抵抗を有する風量調整部材7が設けられるとともに、フィルタ17を後から容易に組み込むことができる収納空間23が形成されている。
【0058】
そして、小ケース部22の底部には、切断可能な複数の風量調整部材7が一体的に形成されている。この風量調整部材7は、収納空間23に配設されるフィルタ17と、略同等となる通風抵抗並びに略同等となる風速分布が得られる形状に形成している。そして、フィルタ17を取り付けた状態の空調ユニット1の場合には、小ケース部22に設けられた風量調整部材7を切り欠き部7a近傍から取り外して、フィルタ17を収納空間23に配設している。
【0059】
これによれば、第1実施形態と同じように、風量調整部材7が小ケース部22に一体的に形成されていることにより、簡素な構造の風量調整部材7を空調ケース2内に配設できる。また、小ケース部22を空調ケース2から取り外すことにより、フィルタ17を組み付けることが簡便にできるとともに、フィルタ17を組み付けるときに、風量調整部材7を容易に取り外すことができる。
【0060】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、蒸発器8もしくはフィルタ17を取り外した状態の空調ユニット1の例を説明したが、蒸発器8もしくはフィルタ17の代わりに、ヒータコア9(空調用熱交換器)を取り外し可能とする空調ユニット1とすることも可能である。
【0061】
また、以上の実施形態では、本発明を車両用空調装置に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、家庭用空調装置などの他の空調装置に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】蒸発器を取り外した状態における第1実施形態の空調ユニットの全体構成を示す模式図である。
【図2】蒸発器を取り付けた状態における第1実施形態の空調ユニットの全体構成を示す模式図である。
【図3】車両に搭載される第1実施形態の空調ユニットの概略構成を示す側面図である。
【図4】車両に搭載される第1実施形態の空調ユニットの概略構成を示す正面図である。
【図5】第1実施形態における小ケースの全体構成を示す平面図である。
【図6】(a)および(b)は、第1実施形態における風量調整部材の形状を示す部分拡大図である。
【図7】第1実施形態における蒸発器を小ケースに取り付けたときの空調ユニットの分解構成図である。
【図8】フィルタを取り外した状態における第2実施形態の空調ユニットの全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0063】
2…空調ケース
6…送風機(送風手段)
7…風量調整部材
8…蒸発器(空調用熱交換器)
9…ヒータコア(空調用熱交換器)
17…フィルタ
22…小ケース部
23…収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路を形成する空調ケース(2)と、
前記空調ケース(2)内に送風空気を圧送する送風手段(6)とを備え、
前記空調ケース(2)内を流れる送風空気を空調する空調用熱交換器(8、9)を取り付けた状態と、前記空調用熱交換器(8、9)を取り外した状態とを選択的に設定可能であって、
前記空調用熱交換器(8、9)を取り外した状態では、取り外された前記空調用熱交換器(8、9)と略同等の通風抵抗が得られる風量調整部材(7)を前記空調ケース(2)内に設定するように構成された空調装置において、
前記空気通路の一部は、前記空調ケース(2)から着脱可能な小ケース部(22)として形成されており、
前記小ケース部(22)には、前記空調用熱交換器(8、9)を配設する収納空間(23)が形成されており、前記収納空間(23)よりも空気流れ上流側において、切断可能な前記風量調整部材(7)が前記小ケース部(22)に一体的に形成されていることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記風量調整部材(7)は、前記空調用熱交換器(8、9)を取り外した状態のときに、取り外された前記空調用熱交換器(8、9)と略同等の風速分布が得られる形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記風量調整部材(7)は、前記小ケース部(22)の底部から上方に突き出すように突起状の複数の平板で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の空調装置。
【請求項4】
空気通路を形成する空調ケース(2)と、
前記空調ケース(2)内に送風空気を圧送する送風手段(6)とを備え、
前記空調ケース(2)内を流れる送風空気を清浄するフィルタ(17)を取り付けた状態と、前記フィルタ(17)を取り外した状態とを選択的に設定可能であって、
前記フィルタ(17)を取り外した状態では、取り外された前記フィルタ(17)と略同等の通風抵抗が得られる風量調整部材(7)を前記空調ケース(2)内に設定するように構成された空調装置において、
前記空気通路の一部は、前記空調ケース(2)から着脱可能な小ケース部(22)として形成されており、
前記小ケース部(22)には、前記フィルタ(17)を配設する収納空間(23)が形成されており、前記収納空間(23)よりも空気流れ上流側において、切断可能な前記風量調整部材(7)が前記小ケース部(22)に一体的に形成されていることを特徴とする空調装置。
【請求項5】
前記風量調整部材(7)は、前記フィルタ(17)を取り外した状態のときに、取り外された前記フィルタ(17)と略同等の風速分布が得られる形状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の空調装置。
【請求項6】
前記風量調整部材(7)は、前記小ケース部(22)の底部から上方に突き出すように突起状の複数の平板で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の空調装置。
【請求項7】
前記風量調整部材(7)は、前記空気通路に突き出すように突起状に形成され、かつその根元部が切り欠くように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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