説明

空調装置

【課題】車両に乗車する乗員に感冒者が含まれている場合に、この感冒者のウィルス等が他の乗員付近に拡散されないように制御することが可能な空調装置を提供する。
【解決手段】温度センサ12により乗員の体温を検出し、体温が所定温度以上である場合には感冒者であるものと判断する。そして、感冒者が車両内の座席に着座した場合には、この着座する座席に応じて、空調制御する際の外部導入モードまたは内気循環モード、及び各座席の送風口、及び送風量を制御する。ドライバが感冒者である場合には、運転席をフットとし、助手席をベントとし、後席をベントとする。更に、運転席のフットより送出する空気量を少なくする。従って、ドライバ付近を通過する空気流は、他の座席側に向けて流れることなく、内気吸込口に導入されることになり、感冒者の細菌、ウィルス等により他の乗員が感染する確率を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に用いられる空調装置に係り、特に、車両内に感冒の乗員が乗車しているときに、この乗員近傍の空気を車両内の他の座席に拡散しないように空気流を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両内の空調装置を好適に制御する目的で、車両内の各座席に着座した乗員の状態に応じて、空気流が最適となるように制御する技術が提案されている。更に、昨今においては車両に感冒者(インフルエンザ等の患者)が乗車した場合に、該感冒者のウィルス等が他の乗員の近傍に拡散しないようにする空調制御の提案が望まれている。
【0003】
このような空調装置の従来例として、例えば、特開2005−306201号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。該特許文献1では、乗員の乗り込み時やドアの開閉時などに車両内に侵入する花粉が乗員の顔面付近を浮遊することを防止するために、イグニッションがオンとされた際に、送風機がオンとなって乗員の顔面付近に空気を送るようにしている。その結果、乗員の顔面付近に花粉が浮遊することを防止でき、花粉の除去効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−306201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例では、乗員の顔面付近に洗浄された空気を送出することにより、顔面付近から花粉を遠ざけるようにしており、花粉自体は車両内に浮遊する場合がある。従って、特許文献1の空調制御をウィルス等の拡散防止用の制御として適用する場合には、感冒者からウィルス等が拡散して他の乗員の近傍に浮遊するという問題を解決できない。そこで、何とか感冒者のウィルス等が他の乗員の方向へ拡散しないように制御する空調装置の提案が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、車両に乗車する乗員に感冒者が含まれている場合に、この感冒者のウィルス等が他の乗員付近に拡散されないように制御することが可能な空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、車両内の空気流を制御する空調装置において、車両内を複数のゾーンに区分し、各ゾーンのうち唯一のゾーンを選択する選択手段と、少なくとも2つのゾーンで独立に空気流を制御すると共に、前記選択手段にてゾーンが選択された際に、この選択されたゾーンに供給する空気量が、他のゾーンに供給する空気量よりも相対的に少なくなるように制御する空気流制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記車両内に供給される空気流は、車両内の空気を循環させる内気循環モード、または外部の空気を導入する外気導入モードのいずれかにより供給され、前記複数のゾーンのうちの一つは運転席であり、前記空気流制御手段は、前記選択手段にて前記運転席が選択された際に、前記内気循環モードで空気を供給し、且つ、前記運転席は足下から空気を供給し、その他のゾーンは足下以外から空気を供給することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記車両内に供給される空気流は、車両内の空気を循環させる内気循環モード、または外部の空気を導入する外気導入モードのいずれかにより供給され、前記複数のゾーンのうちの一つは助手席であり、前記空気流制御手段は、前記選択手段にて前記助手席が選択された際に、前記内気循環モードで空気を供給し、且つ、前記助手席は足下またはベントから空気を供給し、その他のゾーンは足下以外から空気を供給することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記車両内に供給される空気流は、車両内の空気を循環させる内気循環モード、または外部の空気を導入する外気導入モードのいずれかにより供給され、前記複数のゾーンのうちの一つは後部席であり、前記空気流制御手段は、前記選択手段にて前記後部席が選択された際に、前記外気導入モードで空気を供給し、且つ、前記後部席は足下、またはバイレベルで空気を供給し、その他のゾーンは足下以外から空気を供給することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1において、前記車両内に供給される空気流は、車両内の空気を循環させる内気循環モード、または外部の空気を導入する外気導入モードのいずれかにより供給され、前記複数のゾーンのうちの一つは後部右席または後部左席であり、前記空気流制御手段は、前記選択手段にて前記後部右席または後部左席が選択された際に、前記外気導入モードで空気を供給し、且つ、選択された座席は足下、またはバイレベルで空気を供給し、その他のゾーンは足下以外から空気を供給することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5において、前記選択手段は、乗員の体温を測定する温度検出手段を備え、該温度検出手段で検出される体温が所定温度以上である乗員が存在する場合に、この乗員が着座する座席を選択対象のゾーンとすることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記温度検出手段は、赤外線センサであることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6において、前記温度検出手段は、車内の乗員が接触する部位に取り付けてこの乗員の体温を測定する温度センサであることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜5において、前記選択手段は、乗員により飛散される飛沫を検出する飛沫検出手段を備え、所定量の飛沫が検出された場合に、この乗員が着座する座席を選択対象のゾーンとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る空調装置では、選択手段でゾーンが選択された際に、このゾーンに供給する空気量が他のゾーンに供給する空気量よりも少なくなるように制御されるので、選択されたゾーンに存在する空気は他のゾーンに向けて流れることなく車外に排出されるか、或いは、内気吸込口に導入されてフィルタ等により殺菌される。従って、感冒者が存在する場合であってもこの感冒者のウィルス等が他のゾーンに広がることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る空調装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る空調装置で、ドライバモードが実施された場合の車両内の空気流を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る空調装置で、助手席モードが実施された場合の車両内の空気流を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る空調装置で、後席モードが実施された場合の車両内の空気流を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る空調装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態に係る空調装置の、各制御モードにおける各送風口、送風量切替用アクチュエータ、及び外気、内気切替用アクチュエータの設定状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る空調装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る空調装置の、各制御モードにおける各送風口、送風量切替用アクチュエータ、及び外気、内気切替用アクチュエータの設定状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る空調装置の電気的な構成を示すブロック図である。図1に示すように、この空調装置は、総括的な制御を行う制御部11と、車両内に空気を送出するブロワ14と、車両内の各座席(運転席、助手席、後右席、後左席)のゾーン(空間)に送出する空気の、送風口、及び送風量を調節する送風口、送風量切替用アクチュエータ15〜18と、空気取り入れ口ドア(図示省略)を調節して外気導入モードまたは内気循環モードを切り替える外気、内気切替用アクチュエータ19と、入力用の操作スイッチSW1と、車両の乗員の体温を検出する温度センサ12(温度検出手段)と、乗員から放出される飛沫を検出する飛沫センサ13(飛沫検出手段)と、を備えている。
【0019】
温度センサ12は、乗員の体温を測定するセンサであり、乗員が着座するシートの接触部に設けて乗員の温度を検出するセンサや、対象者が運転者の場合には、ステアリングに設けて運転者の体温を検出するセンサを用いることができる。また、赤外線センサ等、乗員と離れた位置から乗員の体温を測定するセンサを用いることも可能である。そして、乗員の体温が一定の体温を上回った場合にオンとなるように作動する。
【0020】
飛沫センサ13は、乗員による咳やくしゃみ等で飛散した飛沫を検出するセンサであり、飛沫が一定量検出された場合にオンとなるように作動する。
【0021】
操作スイッチSW1は、車両内の座席を特定する機能を備えており、感冒者が乗車することが予め判っている場合に、該操作スイッチSW1を操作することにより、感冒者の着座位置を設定することが可能である。
【0022】
本実施形態では、上述した温度センサ12、飛沫センサ13、及び操作スイッチSW1のうちの少なくとも1つを用いることにより、車両に乗車した乗員に感冒者が含まれているか否かを判定する。即ち、温度センサ12を用いる場合には、乗員の体温に基づいて感冒者を特定し、飛沫センサ13を用いる場合には、飛沫量に基づいて感冒者を特定し、操作スイッチSW1を用いる場合には、操作入力により感冒者を特定する。従って、温度センサ12,飛沫センサ13,操作スイッチSW1は選択手段としての機能を備えている。なお、図1では、説明の便宜上温度センサ12,飛沫センサ13,操作スイッチSW1を全て記載したが、これらのうちの少なくとも一つを備えることにより、感冒者を特定することが可能である。
【0023】
制御部11は、上述の温度センサ12、飛沫センサ13、或いは操作スイッチSW1により特定される感冒者の着座位置に基づいて、各送風口、送風量切替用アクチュエータ15〜18を個別に制御することにより、各座席のゾーンの送風口、及び送風量を個別に設定する。更に外気、内気切替用アクチュエータ19を制御することにより、空気取り入れ口ドアを制御して内気循環モードと外気導入モードを切り替える。更に、後述するように、感冒者が着座する座席が特定された際には、この座席の送風口より送出する送風量を他の座席の送風口より送出する送風量よりも少なくなるように制御する。
【0024】
即ち、制御部11は、少なくとも2つのゾーンで独立に空気流を制御すると共に、選択手段(温度センサ12、飛沫センサ13、操作スイッチSW1)にてゾーンが選択された際に、この選択されたゾーンに供給する空気量が、他のゾーンに供給する空気量よりも相対的に少なくなるように制御する空気流制御手段としての機能を備える。
【0025】
ブロワ14は、内気循環モードが選択されている場合には車内の内気吸込口より空気を導入し、外気導入モードが選択されている場合には外気を導入し、導入した空気をフィルタ処理した後、選択された送風口から車内に放出する。
【0026】
[第1実施形態の説明]
以下、本発明の第1実施形態に係る空調装置の具体的な処理手順について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、ステップS11において制御部11は、温度センサ12を作動させる。これにより、車両に乗車する各乗員の体温を測定することができる。
【0027】
その後、ステップS12において制御部11は、温度センサ12で測定した体温のデータに基づいて、車両内に感冒者が存在するか否かを判断する。例えば、体温が38度以上の乗員が存在する場合に、この乗員を感冒者であると判断する。なお、ここでの処理では温度センサ12を用いて感冒者を特定する例について説明するが、飛沫センサ13、或いは操作スイッチSW1により感冒者を特定するようにしても良い。
【0028】
そして、感冒者が存在すると判断した場合には(ステップS12でYES)、ステップS13に処理を進め、感冒者が存在しないと判断した場合には(ステップS12でNO)、本処理を終了する。
【0029】
ステップS13において制御部11は、感冒者は運転席の乗員であるか否かを判断する。そして、運転席の乗員でない場合には(ステップS13でNO)、ステップS15に処理を進め、運転席の乗員である場合には(ステップS13でYES)、ステップS14に処理を進める。
【0030】
ステップS14において制御部11は、制御モードをドライバモードに設定する。なお、ドライバモードの詳細については後述する。
【0031】
ステップS15において制御部11は、感冒者は助手席の乗員であるか否かを判断する。そして、助手席の乗員でない場合には(ステップS15でNO)、ステップS17に処理を進め、助手席の乗員である場合には(ステップS15でYES)、ステップS16に処理を進める。
【0032】
ステップS16において制御部11は、制御モードを助手席モードに設定する。なお、助手席モードの詳細については後述する。
【0033】
ステップS17において、制御部11は感冒者は後席の乗員であると判断し、ステップS18において制御モードを後席モードに設定する。なお、後席モードの詳細については後述する。
【0034】
図2〜図4は、各制御モードにおける空気流を示す説明図、図6は、各制御モードにおける各送風口、送風量切替用アクチュエータ15〜18、及び外気、内気切替用アクチュエータ19の設定状態を示す説明図である。なお、図2〜図4において、符号aと数字(サフィックス)で示す実線はウィルス等が含まれる可能性のある空気流を示し、符号bと数字(サフィックス)で示す点線はウィルス等を含まない空気流を示している。以下、図2〜図4、図6を参照して、上述したドライバモード、助手席モード、及び後席モードについてそれぞれ説明する。
【0035】
[ドライバモード]
ドライバモードが設定された場合には、図6に示すように外気、内気切替用アクチュエータ19の動作により内気循環モードとする。また、運転席への送風口を足下であるフット(足下)とし、助手席の送風口を中段部であるベント(ベンチレータ)とし、後席の送風口をベントまたはバイレベル(ベントと足下)とする。更に、運転席のフットより吹き出す風量を他の送風口より吹き出す風量よりも少なくする。
【0036】
その結果、図2の符号a1に示すように、運転席の下方に設けられる送風口(フット)より吹き出す空気は、ドライバの足下付近から助手席の足下付近に向かって流れ、助手席の下方に設けられる内気吸込口より空調装置内に導入されることとなる。そして、内気循環とされているので、内気吸込口より導入された空気は空調装置内の抗菌フィルタ(図示省略)を通過することにより殺菌、不活性化された後、いずれかの送風口より車内に送風される。
【0037】
また、図2の符号b1,b2に示すように、助手席の中段部に設けられる送風口であるベントより吹き出される空気は、助手席の乗員付近を通過した後、車両の後部座席側に送風される。更に、図2の符号b3,b4に示すように、後席の中段部に設けられる送風口であるベントより吹き出される空気は、後席に着座する乗員付近に送風されることとなる。なお、後席の送風口をバイレベルとしても良い。
【0038】
そして、上述したように、運転席のフットより吹き出される空気は、他の送風口より吹き出される空気よりも空気量が少ないので、ドライバ付近の空気が他の乗員の方向に向けて流れる気流は存在せず、ドライバのウィルス等が他の乗員の方向に向かって流れることを防止することができる。
【0039】
[助手席モード]
助手席モードが設定された場合には、図6に示すように外気、内気切替用アクチュエータ19の動作により内気循環モードとする。また、運転席の送風口をベントとし、助手席の送風口をベントまたはフットとし、後席の送風口をベントまたはバイレベルとする。更に、助手席のベントより吹き出す風量を他の送風口より吹き出す風量よりも少なくする。
【0040】
その結果、図3の符号b11,a11、及び符号b12,a12に示すように、助手席の中段部に設けられた送風口であるベントより吹き出す空気は、助手席の乗員付近を通過した後、下方に向かって流れ、該助手席の足下付近に設けられる内気吸込口より空調装置内に導入されることとなる。そして、内気循環モードとされているので、内気吸込口より導入された空気は抗菌フィルタ等により殺菌、不活性化された後、いずれかの送風口より車内に送風される。
【0041】
また、図3の符号b13,b14に示すように、運転席の中段部に設けられる送風口であるベントより吹き出される空気は、運転席の乗員付近を通過した後、車両の後部座席側に送風される。更に、図3の符号b15,b16に示すように、後席の中段部に設けられる送風口であるベントより吹き出される空気は、後席に着座する乗員付近に送風されることとなる。なお、後席の送風口をバイレベルとしても良い。
【0042】
そして、上述したように、助手席のベントより吹き出される空気は、他の送風口より吹き出される空気よりも空気量が少ないので、助手席の乗員付近を通過した空気が他の乗員の方向に向けて流れる気流は存在せず、助手席の乗員のウィルス等が他の乗員の方向に向かって流れることを防止することができる。
【0043】
[後席モード]
後席モードが設定された場合には、図6に示すように外気、内気切替用アクチュエータ19の動作により外気導入モードとする。また、運転席の送風口をベントとし、助手席の送風口をベントとし、後席の送風口をフットまたはバイレベルとする。更に、後席の送風口(フットまたはバイレベル)より吹き出す風量を他の送風口より吹き出す風量よりも少なくする。
【0044】
その結果、図4の符号b21及びb22に示すように、助手席の中段部に設けられる送風口であるベントより吹き出す空気は、助手席の乗員付近を通過した後、後席の方向に向かって流れる。また、図4の符号b23及びb24に示すように、運転席の中段部に設けられる送風口であるベントより吹き出す空気は、運転席の乗員付近を通過した後、後席の方向に向かって流れる。
【0045】
更に、図4の符号b25,a21、及び符号b26,a22に示すように、後席の中段部に設けられる送風口であるベントより吹き出される空気は、後席に着座する乗員付近を通過した後、後方に向けて流れる。この際、外気導入モードとされているので、後方に向けて流れた空気(後席の乗員付近を通過した空気)は、車室後部に設けられるグリルより車両の外部に排出されることとなる。なお、後席の送風口をバイレベルとしても良い。
【0046】
そして、上述したように、後席のベントより吹き出される空気は、他の送風口より吹き出される空気よりも空気量が少ないので、後席の乗員付近を通過した空気が他の乗員の方向に向けて流れる気流は存在せず、助手席の乗員のウィルス等が他の乗員の方向に向かって流れることを防止することができる。
【0047】
このようにして、本実施形態に係る空調装置では、温度センサ12、飛沫センサ13、或いは操作スイッチSW1により感冒者が着座する座席が特定された場合には、この感冒者付近を通過した空気が他の乗員付近を通過しないように、各座席の送風口より吹き出される空気の流れ、及び空気量を制御する。従って、感冒者が乗車した場合において、該感冒者のウィルス等により他の乗員が感染する確率を極めて低くすることができ、感染の拡大を予防することができる。
【0048】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、後席が後右席と後左席でそれぞれ独立して空調制御を行う。即ち、前述した第1実施形態では、感冒者が後席に乗車した場合には、左右の座席に関係なく同一の制御モード(後席モード)で空調制御したが、第2実施形態では、感冒者が後右席に着座している場合には後右席モードとし、感冒者が後左席に着座している場合には後左席モードとして空調制御する。
【0049】
以下、第2実施形態に係る空調装置の具体的な処理手順について、図7に示すフローチャート、及び図8に示す制御モードの対応図を参照して説明する。なお、図7に示すステップS31〜S36の処理は、図5に示したステップS11〜16の処理と同様であるので説明を省略する。以下、図7のステップS37からの処理について説明する。
【0050】
ステップS37において制御部11は、感冒者は後右席であるか否かを判断する。そして、後右席でない場合には(ステップS37でNO)、ステップS39に処理を進め、後右席である場合には(ステップS37でYES)、ステップS38に処理を進める。
【0051】
ステップS38において制御部11は、制御モードを後右席モードに設定する。また、ステップS39において制御部11は、感冒者は後左席に着座しているものと判断し、更に、ステップS40において制御モードを後左席モードに設定する。以下、後右席モード及び後左席モードについて説明する。
【0052】
[後右席モード]
後右席モードが設定された場合には、図8に示すように外気、内気切替用アクチュエータ19の動作により外気導入モードとする。また、運転席の送風口をベントとし、助手席の送風口をベントとし、後右席の送風口をフットまたはバイレベル(ベントと足下)とし、後左席の送風口をベントまたはバイレベルとする。更に、後右席のフット(またはバイレベル)より吹き出す風量を他の送風口より吹き出す風量よりも少なくする。
【0053】
このような制御を行うことにより、後右席に着座した乗員近傍の空気は車両の後方に向けて流れ、グリルを経由して車両外部に排出される。また、後右席のフット(またはバイレベル)より吹き出される空気は、他の送風口より吹き出される空気よりも空気量が少ないので、後右席の乗員付近を通過した空気が他の乗員の方向に向けて流れる気流は存在せず、後右席の乗員のウィルス等が他の乗員の方向に向かって流れることを防止することができる。
【0054】
[後左席モード]
後左席モードが設定された場合には、図8に示すように外気、内気切替用アクチュエータ19の動作により外気導入モードとする。また、運転席の送風口をベントとし、助手席の送風口をベントとし、後右席の送風口をベントまたはバイレベルとし、後左席の送風口をフットまたはバイレベルとする。更に、後左席のフット(またはバイレベル)より吹き出す風量を他の送風口より吹き出す風量よりも少なくする。
【0055】
このような制御を行うことにより、後左席に着座した乗員近傍の空気は車両の後方に向けて流れ、グリルを経由して車両外部に排出される。また、後左席のフット(またはバイレベル)より吹き出される空気は、他の送風口より吹き出される空気よりも空気量が少ないので、後左席の乗員付近を通過した空気が他の乗員の方向に向けて流れる気流は存在せず、後左席の乗員のウィルス等が他の乗員の方向に向かって流れることを防止することができる。
【0056】
このようにして、第2実施形態に係る空調装置では、前述した第1実施形態に示した空調装置の効果に加え、後席の右側と左側で独立に空気流を制御することができるので、よりきめの細かい空調制御が可能となり、感冒者のウィルス等による他の乗員の感染を効果的に予防することができる。
【0057】
以上、本発明の空調装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0058】
例えば、上述した実施形態では、車両内のゾーンを運転席、助手席、後席の3区分、或いは運転席、助手席、後右席、後左席の4区分とする例について説明したが、前席と後席による2区分や、助手席と後席の2区分、運転席と後席の2区分として、各ゾーン毎の空調制御を行うようにすることも可能である。
【0059】
また、上述した実施形態では、車両内の空調について説明したが、船舶や鉄道車両などにおいても適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、車両に感冒者が乗車した場合に他の乗員にウィルス等が感染することを防止することに利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
11 制御部
12 温度センサ
13 飛沫センサ
14 ブロワ
15 送風口、送風量切替用アクチュエータ(運転席)
16 送風口、送風量切替用アクチュエータ(助手席)
17 送風口、送風量切替用アクチュエータ(後右席)
18 送風口、送風量切替用アクチュエータ(後左席)
19 外気、内気切替用アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の空気流を制御する空調装置において、
車両内を複数のゾーンに区分し、各ゾーンのうち唯一のゾーンを選択する選択手段と、
少なくとも2つのゾーンで独立に空気流を制御すると共に、前記選択手段にてゾーンが選択された際に、この選択されたゾーンに供給する空気量が、他のゾーンに供給する空気量よりも相対的に少なくなるように制御する空気流制御手段と、
を備えたことを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記車両内に供給される空気流は、車両内の空気を循環させる内気循環モード、または外部の空気を導入する外気導入モードのいずれかにより供給され、
前記複数のゾーンのうちの一つは運転席であり、
前記空気流制御手段は、前記選択手段にて前記運転席が選択された際に、前記内気循環モードで空気を供給し、且つ、前記運転席は足下から空気を供給し、その他のゾーンは足下以外から空気を供給することを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記車両内に供給される空気流は、車両内の空気を循環させる内気循環モード、または外部の空気を導入する外気導入モードのいずれかにより供給され、
前記複数のゾーンのうちの一つは助手席であり、
前記空気流制御手段は、前記選択手段にて前記助手席が選択された際に、前記内気循環モードで空気を供給し、且つ、前記助手席は足下またはベントから空気を供給し、その他のゾーンは足下以外から空気を供給することを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項4】
前記車両内に供給される空気流は、車両内の空気を循環させる内気循環モード、または外部の空気を導入する外気導入モードのいずれかにより供給され、
前記複数のゾーンのうちの一つは後部席であり、
前記空気流制御手段は、前記選択手段にて前記後部席が選択された際に、前記外気導入モードで空気を供給し、且つ、前記後部席は足下、またはバイレベルで空気を供給し、その他のゾーンは足下以外から空気を供給することを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項5】
前記車両内に供給される空気流は、車両内の空気を循環させる内気循環モード、または外部の空気を導入する外気導入モードのいずれかにより供給され、
前記複数のゾーンのうちの一つは後部右席または後部左席であり、
前記空気流制御手段は、前記選択手段にて前記後部右席または後部左席が選択された際に、前記外気導入モードで空気を供給し、且つ、選択された座席は足下、またはバイレベルで空気を供給し、その他のゾーンは足下以外から空気を供給することを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項6】
前記選択手段は、乗員の体温を測定する温度検出手段を備え、該温度検出手段で検出される体温が所定温度以上である乗員が存在する場合に、この乗員が着座する座席を選択対象のゾーンとすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項7】
前記温度検出手段は、赤外線センサであることを特徴とする請求項6に記載の空調装置。
【請求項8】
前記温度検出手段は、車内の乗員が接触する部位に取り付けてこの乗員の体温を測定する温度センサであることを特徴とする請求項6に記載の空調装置。
【請求項9】
前記選択手段は、乗員により飛散される飛沫を検出する飛沫検出手段を備え、所定量の飛沫が検出された場合に、この乗員が着座する座席を選択対象のゾーンとすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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