説明

穿刺器具

【課題】穿刺針を確実に皮膚の所定の部位に穿刺することができる穿刺器具を提供すること。
【解決手段】穿刺器具1は、皮膚(真皮D)を穿刺針411により穿刺するものである。この穿刺器具1は、移動可能に保持された穿刺針411と、体表面に固定される平面2aを有する固定部2と、湾曲可能な平板状部材5を備えた皮膚変形手段3と、を備え、前記固定部2に沿って穿刺針411を移動させて、前記皮膚変形手段3により隆起させた皮膚に穿刺するように構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺器具に関し、皮膚の表面より穿刺して所定部位(例えば真皮)に対して用いられる穿刺器具に関する。
【背景技術】
【0002】
真皮は、表皮や皮下組織と比較すると毛細血管の密度が高く、またリンパ末端が存在するため、特に直接注入された薬剤は血管あるいはリンパ管に移行し、体液中に吸収される吸収速度が速いことが知られている。特に、真皮では、ホルモン、抗体医薬品、サイトカインなどの高分子物質を用いた薬剤を効率よく血液に吸収させることができる。また、真皮は効率の良い免疫の場であることが知られており、ワクチンの投与量を節約したり、弱いワクチンの感作を増強したりすることができる。
【0003】
また、真皮は、成人の人間では体表面(角質層の表面)から略一定の深さに存在することが知られている。このことは、言い換えれば、真皮に薬剤を注入する場合には、これらの人間に対しては、同じ長さ(深さ)の穿刺針を用いることができることを意味している。
【0004】
一般に、真皮の幅は、体表面に対して垂直方向を基準とすると、1mm〜4mm(平均値は1mm〜2mm)程度であり、また、図7に示すように、真皮は、角質層を含んだ幅0.06mm〜0.1mm程度の表皮Eと、皮下組織Sとの間に挟まれるようにして皮膚内に存在する。
【0005】
従って、表皮と皮下組織の間にする存在する真皮に、穿刺器具の先端部、例えば穿刺針の針先を正確に挿入することは難しく、誤って針先が皮下組織等に挿入されてしまうと、薬剤を効率よく吸収させることができないという問題が生じる。
【0006】
近年、例えば、前述した高分子医薬品を持続的に若しくはワンショットで真皮をターゲットとして投与することが試みられているが、このような場合、特に上述した問題が顕著になる。
【0007】
ここで、体内の真皮に薬剤を注入するために、体内に挿入される穿刺針の長さを規定した皮下注射装置が知られている(特許文献1)。また、皮膚内に存在する特定の層に薬剤を注入するために、皮膚内に挿入される穿刺針の深さ(挿入深さ)を所定の長さに規定し、体表面に対して垂直方向から穿刺針を皮膚内に挿入する薬液注入装置も知られている(特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−137343号公報
【特許文献2】特開2005−87519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これらの装置では、体表面に対して垂直方向から穿刺針が皮膚内に挿入される構成が採用されている。この場合、表皮の最外層である角質層は他の組織と比べて弾力に富むので、穿刺針を穿刺しようとすると、皮膚全体が弾性的に窪んで穿刺されず、また穿刺されても針先が真皮まで達しないことがある。
【0010】
また、真皮に対して垂直に穿刺針が挿入されると、真皮内における穿刺針の深さ(挿入深さ)が短くなり、例えば外部から何らかの衝撃等が加えられたような場合には、薬剤注入中の穿刺針が真皮から抜けてしまうという問題が生じてしまう。
【0011】
さらに、これらの装置を用いた場合には、真皮において、真皮の表面(表皮と真皮の境目)に形成された穿刺針の挿入口から、穿刺針の先端にある薬剤放出口までの距離が短くなり、薬剤放出口から真皮に注入された薬剤が、挿入口から真皮の外(表皮)へ漏れてしまうという問題も生じてしまう。
【0012】
本発明の目的は、上述の問題点を考慮し、穿刺針を確実に皮膚の所定の部位に穿刺することができる穿刺器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記(1)〜(4)の本発明により達成される。
(1)皮膚を穿刺針により穿刺する穿刺器具であって、
移動可能に保持された穿刺針と、
体表面に固定される平面を有する固定部と、
湾曲可能な平板状部材を備えた皮膚変形手段と、を備え、
前記固定部に沿って穿刺針を移動させて、前記皮膚変形手段により隆起させた皮膚に穿刺する構成としたこと
を特徴とする穿刺器具。
【0014】
(2)前記穿刺針を、湾曲した平板状部材によって隆起された皮膚に沿って、穿刺する構成としたこと
を特徴とする上記(1)に記載の穿刺器具。
【0015】
(3)前記平板状部材には、この平板状部材を湾曲させるための把手部が設けられていること
を特徴とする上記(1)に記載の穿刺器具。
【0016】
(4)前記平板状部材の体表面側には、皮膚接着手段が設けられていること
を特徴とする上記(1)に記載の穿刺器具。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、穿刺針を、皮膚より穿刺して、所定の部位に確実に到達させることができる。また、薬剤を確実に所定の部位に注入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の穿刺器具を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の穿刺器具の実施形態を示す斜視図である。図2は、図1中のA−A線の断面図を示したものである。
【0020】
また、図3及び図4は、図1に示す穿刺器具の使用方法を説明するための図(断面図)である。図5は、使用方法の説明を補足するために用いる図1中のB−B線の断面図を示したものであり、図6は、同じく使用方法の説明を補足するために用いる図1に示す穿刺器具の平面図を示したものである。
【0021】
なお、以下では、図2乃至図4の右側を「基端」、左側を「先端」として説明する。
【0022】
図1に示す穿刺器具1は、固定部である粘着パッド2と、皮膚を変形して隆起させる皮膚変形手段3と、穿刺針411を移動可能に保持する穿刺針移動手段4とを備えている。
【0023】
粘着パッド2は、全体に丸みがあり、その外周の一部に対向する凹部が形成されている形状、いわゆる翼状形状を有するように形成されている。
【0024】
なお、粘着パッド2の翼状形状は、穿刺針移動手段4が載置される側の面積が、皮膚変形手段3が設けられる側の面積よりも大きくなるように形成されている。このように、穿刺針移動手段4が載置される側の粘着パッド2の面積を大きくすることで、体表面Fに対する安定性を増して、穿刺針移動手段4による穿刺針411の移動を安定した状態で行うことができる。
【0025】
粘着パッド2には、皮膚変形手段3を体表面Fに載置させるための貫通孔21が形成されている。
【0026】
図2に示すように、粘着パッド2の体表面F側には、体表面Fに密着して粘着パッド2を固定するための平面2aが形成されている。この平面2aには、粘着手段が設けられており、粘着手段としては、平面2aに接着剤を層状に塗布してもよいし、両面テープで構成された粘着フィルムを貼付するようにしてもよい。
【0027】
接着剤によって、粘着パッド2の平面2aは、体表面Fに密着して固定されている。なお、体表面Fの下方には、角質層SC、角質層SCを含む表皮E、真皮D、皮下組織Sが、層状に配列されている。
【0028】
そして、後述するように、穿刺針移動手段4によって、穿刺針411が、粘着パッド2の平面2aに沿って先端方向へ移動し、皮膚変形手段3によって隆起された皮膚に穿刺する。
【0029】
このような粘着パッド2の構成材料としては、例えば、軟質ポリウレタン等の軟質ポリマーが挙げられる。
【0030】
皮膚変形手段3は、平板状部材5と、平板状部材5に取り付けられた把手6と、把手6を移動可能に保持する外枠7とを備えている。
【0031】
平板状部材5は、可撓性を有し、湾曲可能な略正方形状の平板で構成される。なお、本実施形態では、略正方形状のものを用いるが、例えば、矩形状のものを用いてもよい。
【0032】
また、図2に示すように、平板状部材5の体表面F側の面には、皮膚接着手段としての粘着フィルム8が設けられている。粘着フィルム8は、少なくとも、平板状部材5の把手6が設けられている辺及び平板状部材5の中心線5aに沿うようにして設けられている。なお、皮膚接着手段としては、平板状部材5に接着剤を層状に塗布してもよい。
【0033】
このような平板状部材5の構成材料としては、指等で変形可能であって弾性に富む材料であればよく、例えば、金属材料、各種樹脂が挙げられる。
【0034】
把手6は、L字形状の部材で構成されており、接着剤によって、平板状部材5の側部に固着されている。
【0035】
把手6を固着する位置は、平板状部材5が有する4辺のうち、穿刺針411の移動方向と平行な辺の中央部付近であり、2個の把手6が互いに対称となるようにして、平板状部材5に取り付けられる。
【0036】
外枠7は、立方体形状の部材で構成されており、4つの側面を有している。また、外枠7には、体表面F側に向って開口51が形成されている。
【0037】
また、穿刺針411の移動方向と平行となる2つの側面72の体表面F側には、把手6と係合するための係合孔(図示せず)が、それぞれ形成されている。
【0038】
2個の把手6が、外枠7に対して移動可能となるように係合孔に係合されている。すなわち、外枠7は、把手6を移動可能に保持する構成となっている。
【0039】
また、外枠7の穿刺針移動手段4と対向する側面71には、挿通孔7aが形成されている。挿通孔7aは、半円形状を有するように形成されており、この挿通孔7aを介して、穿刺針移動手段4によって、穿刺針411が外枠7内に挿入される。
【0040】
穿刺針移動手段4は、穿刺針411を有する注射具41と、注射具41を載置固定する載置部材42と、載置部材42を移動可能に支持する支持部材43とから構成される。
【0041】
注射具41は、穿刺針411と、固定外筒412と、固定外筒412内で摺動し得る内部外筒413と、内部外筒413内で摺動し得るガスケット414と、ガスケット414を移動操作するプランジャ415とを備えている。
【0042】
固定外筒412は、有底筒状の形状を有しており、接着剤等により、載置部材42上に載置固定されている。また、固定外筒412の底部の中央部付近には、穿刺針411の挿通を行うための穿刺針孔412aが形成されている。
【0043】
内部外筒413は、有底筒状の形状を有している。また、底部の中央部付近には、穿刺針411が接着固着されている。
【0044】
穿刺針411の針先411aは、固体外筒412に設けられた穿刺針孔412aから突出しないように設けられている。すなわち、穿刺針411は、その針先411aが、穿刺針孔412aが設けられている固定外筒412の底面よりも内側かつ穿刺針孔412aの近傍に位置するように、固定外筒412に対して設置されている。
【0045】
このように構成することにより、穿刺針411の針先411aを保護することができる。また、針先411aが見えにくくなるので、使用者の恐怖感を少なくすることができる。
【0046】
穿刺針411の外径は、穿刺器具1の用途等によっても若干異なるが、0.05mm〜2.5mm程度であるのが好ましく、特に0.1mm〜1.5mm程度であるのが好ましい。
【0047】
穿刺針411の構成材料としては、例えば、ステレンス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の金属材料が挙げられる。また、穿刺部材411は、例えば、塑性加工によって製造される。
【0048】
内部外筒413は、プランジャ415の操作により、固定外筒412内を、内部外筒413の長手方向に摺動することができ、内部外筒413が摺動する際には、内部外筒413に固着された穿刺針411が、穿刺針孔412aを通じて、固定外筒412から出し入れされる。
【0049】
固定外筒412及び内部外筒413の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンのような各種樹脂が挙げられる。なお、固定外筒412及び内部外筒413の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であることが望ましい。
【0050】
内部外筒413内には、弾性材料で構成されたガスケット414が収納されている。
【0051】
ガスケット414の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、スチレン系等の各種熱可塑性エストラマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0052】
ガスケット414と内部外筒413とで囲まれる空間内には、液室417が形成されており、この液室417には、予め液体が液密に収納されている。
【0053】
液体としては、例えば、注射用治療薬、ホルモン、抗体医薬品、サイトカイン、ワクチンなどの高分子物質を用いた薬液が挙げられる。
【0054】
ガスケット414には、ガスケット414を内部外筒413内で長手方向に移動操作するプランジャ415が連結されている。
【0055】
プランジャ415の基端には、板状のフランジ416が一体的に形成されている。このフランジ416を指等で押圧することにより、プランジャ415を操作する。
【0056】
載置部材42は、注射具41を載置するための平面部421を有するように構成されている。平面部421の長手方向端部には、移動可能に支持部材43と係合するためのコの字状の係合部422が、粘着パッド2に向けて突出形成されている。
【0057】
支持部材43は、載置部材42と摺動可能に接触する平面部431を有する矩形の板状体で構成されている。支持部材43の長手方向の端部には、載置部材42に形成されたコの字状の係合部422と合致するような係合凸部432が、粘着パッド2と水平の方向に突出形成されている。
【0058】
支持部材43の平面部431と反対側の平面には、粘着パッド2と接着固定するための平面部433が形成されている。図2に示すように、支持部材43の平面部433は、接着剤等により、粘着パッド2上に固定されている。
【0059】
載置部材42及び支持部材43の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のような各種樹脂が挙げられ、これらの樹脂を所定の形状を有する金型に流し込む成形加工等により、載置部材42及び支持部材43が製造される。
【0060】
なお、穿刺針移動手段4としては、載置部材42上に、穿刺針とシリンジとを一体にした構成の注射具を固定保持するような構成としてもよい。この場合には、載置部材42が皮膚変形手段3に最も近づくように移動したときに、穿刺針411の針先411aが、皮膚変形手段3により隆起された皮膚に穿刺できるように、穿刺針411の長さを調整する。
【0061】
次に、図3乃至図6を用いて、本実施形態の穿刺器具1の使用方法(作用)について説明する。
【0062】
まず、粘着パッド2を体表面Fの所定の位置に載置する。このとき、粘着パッド2の平面2aが、粘着パッド2の体表面F側に設けられた粘着フィルムにより、体表面Fに接着固定される。
【0063】
また、粘着パッド2に形成された貫通孔21に嵌合し、粘着パッド2に固定されている外枠7も、皮膚上に載置される。同時に、外枠7に保持されている平面状部材5と把手6も皮膚上に載置される。
【0064】
このとき、体表面Fに載置するために、穿刺器具1を軽く押さえれば、平板状部材5は、皮膚の弾性によって、粘着フィルム8を介して、体表面Fに固定される。
【0065】
また、図3(a)及び図5(a)に示すように、平面状部材5は、わずかに上方へ湾曲するような状態で、皮膚に載置される。このように、あらかじめ平板状部材5をわずかに湾曲させておくことで、把手6により平面状部材5を湾曲させる際に、容易に平板状部材5を上方へ湾曲させることができる。
【0066】
また、図6(a)に示すように、穿刺針411の移動方向と平板状部材5の中心線5aとが一致するように、皮膚変形手段3及び穿刺針移動手段4が、粘着パッド2上に配置されている。
【0067】
つぎに、粘着パット2上に突出している把手6を指等で把持して、外枠7に近づくように移動させ、平板状部材5に力を加える。これにより、平面状部材5は、平板状部材5の中心線5aに沿うようにして湾曲する。
【0068】
このとき、両把手6から加えられる力によって、粘着フィルム8によって平板状部材5と接着固定している体表面Fには、平板状部材5の中心線5a方向に押し出されるような力が加わる。
【0069】
さらに、把手6を外枠7に近づけると、平板状部材5はさらに湾曲する。また、同時に、図3(b)に示すように、平板状部材5と接着固定された部分に挟まれている体表面Fが、押し出されて上方へ隆起する。これにより、隆起した体表面Fが、平板状部材5に設けられている粘着フィルム8に接触し、平板状部材5に接着固定される。
【0070】
すなわち、角質層SCを含む表皮E、真皮D、皮下組織Sが、それぞれ上方へ引き上げられた状態で、皮膚が、平板状部材5に固定される。
【0071】
このとき、隆起した体表面Fが、湾曲した平板状部材5の中心線5aと平行になるように固定されるので、真皮Dの一部も中心線5aと平行になるような状態で固定される。
【0072】
また、図5(b)に示すように、隆起された表皮E、真皮D,皮下組織Sは、それぞれ平面状部材5の湾曲に沿うような状態で固定される。なお、外枠7に移動可能に係合されている把手6の移動距離は、隆起される皮膚の高さが一定となるように設定されている。
【0073】
次に、注射具41が固定保持されている載置部材42を、先端方向にスライドさせる。
【0074】
次に、フランジ416を指等で押圧することにより、プランジャ415を操作して、内部外筒413を、固定外筒412と摺動させながら、先端方向へ移動させる。これにより、内部外筒413に固着された穿刺針411が、穿刺針孔412aから外枠7の側面71に設けられた挿通孔7aに挿入される。
【0075】
このとき、図6(b)に示すように、注射具41の穿刺針411は、平面状部材5の中心線5aと一致する状態で穿刺される。
【0076】
また、図3(c)に示すように、皮膚内において、穿刺針411は、隆起した真皮Dと平行になるような状態で穿刺される。
【0077】
この状態から、さらにフランジ416を指等で押圧することにより、プランジャ415を操作して、内部外筒413と摺動させながら、ガスケット414を先端方向へ移動させる。これにより、図4(d)に示すように、液室417に収納されている薬剤50が、穿刺針411の針先411aから、真皮Dへ注入される。
【0078】
薬剤を真皮Dに注入した後、フランジ416を指等で引くことにより、プランジャ415を操作し、ガスケット414を基端方向へ移動させて、穿刺針411を、穿刺部位から引き抜く。
【0079】
さらに、プランジャ415を基端方向へ移動させて、図4(e)に示すように、穿刺針411を穿刺針孔412aから固定外筒412内に収納する。
【0080】
次に、この状態で、注射器具41が固定保持されている載置部材42を、基端方向にスライドさせて、図4(f)の状態とする。
【0081】
このように、本実施形態の穿刺器具1によれば、把手6により、真皮Dを含む皮膚を隆起させて、皮膚を平面状部材5に設けられた粘着フィルム8で固定した後、穿刺針411により穿刺することができる。すなわち、皮膚を隆起させた状態で穿刺作業を行うので、穿刺針411を確実に皮膚(真皮D)に穿刺することができ、また、皮膚内の真皮Dに確実に薬剤を注入することができる。
【0082】
また、穿刺針411を皮膚内の真皮Dと略平行な状態となるように穿刺するので、真皮D内における穿刺針411の挿入深さが長くなり、外部から衝撃等が加えられた場合であっても、薬剤注入中の穿刺針411が真皮Dから抜けてしまうことを防止できる。
【0083】
また、表皮Eと真皮Dとの境目に形成された穿刺針411の挿入口から、針先411aにある薬剤放出口までの距離が長くなるので、一旦薬剤放出口から真皮Dに注入された薬剤が、逆流して挿入口から表皮Eへ漏れてしまうことを防止できる。
【0084】
なお、上記の実施形態では、1つの穿刺針411及び穿刺針移動手段4で説明したが、穿刺針及び穿刺針移動手段を複数設けてもよい。この場合、湾曲させた平面状部材5に対して平行になるように、複数の穿刺針を配置させることが好ましい。このように構成することにより、皮膚内における複数の穿刺針の挿入位置を、皮膚の深さ方向で一定の深さとすることができる。
【0085】
また、上記の実施形態は、いずれも真皮に穿刺針を穿刺する例で説明したが、本発明の穿刺器具は、真皮の他に皮内や皮下組織、更には筋肉に穿刺する場合にも用いることができるものである。
【0086】
また、本発明の穿刺器具は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、その他材料、構成等において本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。特に、外枠7の形状、構造等は、同様の機能を発揮し得る任意のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、本発明の穿刺器具の斜視図である。
【図2】図2は、図1中のA−A線断面図である。
【図3】図3は、図1に示す穿刺器具の使用方法を説明するための図(断面図)である。
【図4】図4は、図1に示す穿刺器具の使用方法を説明するための図(断面図)である。
【図5】図5は、図1に示す穿刺器具の使用方法の説明を補助するために用いる図1中のB−B線断面図である。
【図6】図6は、図1に示す穿刺器具の使用方法の説明を補助するために用いる平面図である。
【図7】図7は、一般的な皮膚構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1・・穿刺器具
2・・粘着パッド
2a・・平面部
21・・貫通孔
3・・皮膚変形手段
4・・穿刺針移動手段
41・・注射具
411・・穿刺針
411a・・針先
412・・固定外筒
412a・・挿入孔
413・・内部外筒
414・・ガスケット
415・・プランジャ
416・・フランジ
417・・液室
42・・載置部材
421・・平面部
422・・係合部
43・・支持部材
431・・平面部
432・・突部
433・・平面部
5・・平面状部材
5a・・中心線
51・・開口部
6・・把手
7・・外枠
7a・・挿通孔
71・・側面
72・・側面
8・・粘着フィルム
F・・体表面
SC・・角質層
E・・表皮
D・・真皮
S・・皮下組織

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚を穿刺針により穿刺する穿刺器具であって、
移動可能に保持された穿刺針と、
体表面に固定される平面を有する固定部と、
湾曲可能な平板状部材を備えた皮膚変形手段と、を備え、
前記固定部に沿って穿刺針を移動させて、前記皮膚変形手段により隆起させた皮膚に穿刺する構成としたこと
を特徴とする穿刺器具。
【請求項2】
前記穿刺針を、湾曲した平板状部材によって隆起された皮膚に沿って、穿刺する構成としたこと
を特徴とする請求項1に記載の穿刺器具。
【請求項3】
前記平板状部材には、この平板状部材を湾曲させるための把手部が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の穿刺器具。
【請求項4】
前記平板状部材の体表面側には、皮膚接着手段が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の穿刺器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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