説明

穿孔装置

【課題】複数のパンチ部材に穿孔動作させるスライド部材を駆動モータで往復動する装置構成において、異常発生時の復帰操作が容易であるシート穿孔装置を提供する。
【解決手段】複数のパンチ部材に穿孔動作を行わせるスライド部材を駆動モータとパンチ部材との間に伝動手段として配置する。そしてこのスライド部材を所定ストロークで直線的に往復動させ、その一方のストローク限位置に位置規制ストッパを設け、ストッパ位置で複数のパンチ部材がシートから離間した非穿孔位置に位置するように構成する。そして駆動モータの非駆動時にスライド部材を規制ストッパに向けて位置移動する操作部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機、印刷機、プリンタなどの画像形成装置から搬出されるシートにパンチ穴を穿孔するシート類穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、印刷機、複写機などから搬出されたシートに自動的にパンチ穴を穿孔する装置は、例えば後処理装置のシート処理部に内蔵され、或いは製本装置に内蔵されるユニットとして広く知られている。その構造は、処理経路に順次搬出されるシートを所定の処理位置にセットし、このシートの幅方向に複数のパンチ部材を配列して、2個所、3個所若しくは4個所に同時に穿孔処理している。そしてこれらの穴数および穿孔間隔は通常規格化されている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2001−009791号公報)には、シートを挟むように所定間隔で上部フレームと下部レームを配置し、この上部フレームに複数のパンチ部材が上下動自在に配列され、下部フレームにはパンチ部材と適合するダイ(刃受孔)が形成されている。そしてこの上部フレームに穿孔方向と直交する方向にカム板を設け、このカム板を駆動モータに連結して所定ストロークで往復動させている。このカム板にはV字溝カムが設けられ、この溝カムに各パンチ部材を係合させてカム板の左右往復動で複数のパンチ部材を同時に上下動させている。
【0004】
この場合特許文献1には特定の穴数(例えば2穴、4穴など)のパンチ部材を同時に穿孔する装置が開示されている。このため同文献にはフレームに複数のパンチ部材を穿孔方向に上下動可能に配置し、この穿孔方向と直交する方向に所定ストロークで往復動するスライドカム部材を設け、この部材に配置したカム溝に複数のパンチ部材を係合する機構が提案されている。そしてスライドカム部材をホームポジションから例えば右側の第1領域で往復動するときには2穴穿孔し、左側の第2領域で往復動するときには4穴穿孔するようになっている。
【0005】
このように複数のパンチ部材を同時に穿孔動作させる際に、シートが詰まる穿孔ジャムが生ずることがある。この穿孔ジャムのときにはオペレータがジャムしたシートを除去して装置を再起動するジャム処理が必要となる。そこで特許文献2(特開2001−129792号公報)には、回転軸の周囲に複数のパンチ刃を穿孔動作させるスライドカムに駆動モータとは別に駆動伝達機構を設け、この駆動伝達機構に設けた操作ノブでスライドカムを所定方向に強制移動するジャム処理機構が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−009791号公報
【特許文献2】特開2001−129792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように所定間隔に配置した複数のパンチ刃上下駆動する際に、パンチの上下方向値直交する方向にスライド部材を設け、駆動モータでこの部材を所定ストロークで往復動することによって複数のパンチ刃を同時に上下動することが比較的装置を小型コンパクトに構成できる機構として知られている。
【0008】
ところがこのような機構で複数のパンチ刃の1個所で穿孔ジャムが発生し駆動モータが過負荷で停止するとオペレータが処理作業しなければ装置を復帰させることが出来ない。このジャム処理は装置電源を停止し、外装カバーを開いて装置内部に詰まったシートをオペレータが除去する方法が採られている。また装置構成によっては外装カバーを閉じた状態で、操作ノブなどでパンチ部材を非穿孔位置に待避させた後にシートを除去している。
【0009】
前述の特許文献2には複数の穿孔刃に駆動モータから駆動力を伝達するスライドカムに操作ノブを設け、このノブを回転することによって穿孔刃を非穿孔位置に退避させることが提案されている。同文献にはスライドカム部材にラックを設け、このラックに噛合させたピニオンを操作ノブで回転する機構が開示されている。
【0010】
このように駆動モータとは別に伝動部材を所定方向に移動する操作ノブを、この伝動部材に直接連結すると次の不具合が生ずる。まずスライドカムなどの伝動部材が正常動作時に、装置異常時の操作ノブが一体的に運動するために駆動系全体の質量が大きくなり、駆動モータの負荷として消費電力の無駄を招く。また操作ノブが正常動作時の運動で騒音を発し、同時に操作ノブが装置外部に露出している場合には使用者に危害を及ぼすことがある。更に穿孔ジャムなどの装置異常時に操作ノブでパンチ部材をシートから離れた退避位置に移動する際に、その位置が正確に分からないためパンチ部材の位置を確認しながら操作しなければならない問題がある。
【0011】
そこで本発明者は、複数のパンチ部材を駆動するスライド部材を所定ストロークで往復動するように構成し、そのストローク限位置に規制ストッパを設けて、この位置で全部のパンチ部材が非穿孔位置に位置するように構成し、スライド部材とは異なる操作部材を同一方向に第1位置と第2位置との間で移動可能に設け、この操作部材をスライド部材の初期動作で第1位置に位置決めし、異常発生時に操作部材を第1位置から第2位置に移動することによってスライド部材を規制ストッパに突き当ててパンチ部材を非穿孔位置に位置決めするとの着想に至った。
【0012】
本発明は、複数のパンチ部材に穿孔動作させるスライド部材を駆動モータで往復動する装置構成において駆動モータの消費電力を低減し、騒音が少なく、異常発生時の復帰操作が容易であるシート穿孔装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するため本発明は、複数のパンチ部材に穿孔動作を行わせるスライド部材を駆動モータとパンチ部材との間に伝動手段として配置する。そしてこのスライド部材を所定ストロークで直線的に往復動させ、その一方のストローク限位置に位置規制ストッパを設け、ストッパ位置で複数のパンチ部材がシートから離間した非穿孔位置に位置するように構成する。
【0014】
そこで駆動モータの非駆動時にスライド部材を規制ストッパに向けて位置移動する操作部材を設け、この操作部材は、(1)規制ストッパの反対側に位置するスライド部材のストローク限位置に配置し、(2)スライド部材の移動方向と同一方向に第1位置と第2位置との間で移動可能に装置フレームに取付け、(3)スライド部材をストローク限位置に移動するイニシャライズ動作で操作部材を第1位置に移動し、(4)パンチ部材の穿孔動作時には第1位置に位置させ、(5)駆動モータの非駆動時に第1位置から第2位置に移動する操作力によってスライド部材を規制ストッパに向けて位置移動させることを特徴としている。
【0015】
更にその構成を詳述すると、装置フレーム(30)と、装置フレームに非穿孔位置(Wp)と穿孔位置(Pp)との間で上下動するように配置された複数のパンチ部材(40)と、複数のパンチ部材を上下動するために所定ストロークで直線的に往復動するスライド部材(50)と、このスライド部材を往復動する駆動モータ(M)と、スライド部材を一方のストローク限位置に係止する位置規制ストッパ(26a、26b)とを備える。
【0016】
そしてスライド部材は、位置規制ストッパに係止された状態で複数のパンチ部材をシートから離間した非穿孔位置に位置決めするように構成し、装置フレームには、駆動モータの非駆動時にスライド部材を位置規制ストッパに向けて位置移動する操作部材を設ける。
【0017】
上記操作部材は、(1)スライド部材の規制ストッパの反対側に位置するストローク限位置に配置されていること、(2)装置フレームにスライド部材の移動方向と同一方向に第1位置と第2位置との間で移動可能に取付けられていること、(3)スライド部材をストローク限位置に移動するイニシャライズ動作でこのスライド部材によって第1位置に移動すること、(4)スライド部材がパンチ部材を上下動する往復動作時には連動することなく第1位置に位置すること、(5)駆動モータの非駆動時に第1位置から第2位置に移動する操作力によってスライド部材を規制ストッパに向けて位置移動する。
【0018】
また装置フレームには、操作部材を第1位置と第2位置との間で位置移動可能に支持するガイド部材(29a、29b)を設け、このガイド部材には、操作部材を第1位置に位置規制するストッパを設ける。そしてこのストッパでスライド部材を、位置規制ストッパの反対側に位置するストローク限位置に位置規制するように構成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、複数のパンチ部材に穿孔動作させるスライド部材をモータの非駆動時に規制ストッパに向けて位置移動する操作部材を規制ストッパの反対側のストローク限位置に配置し、スライド部材の移動方向に第1位置と第2位置との間で移動可能に装置フレームに支持し、スライド部材のイニシャライズ動作で第1位置に移動し、モータの非駆動時に第1位置から第2位置に移動する操作力によってスライド部材を規制ストッパに向けて位置移動させるようにしたものであるから以下の効果を奏する。
【0020】
操作部材は、パンチ部材の穿孔動作時にはスライド部材に連動することなく第1位置に位置しているから装置の正常動作時に操作部材が動作しないため駆動モータの消費電力の低減が可能である。これと同時に操作部材の移動による騒音が発生することがない。従ってスライド部材とその支持フレームを簡素化でき、装置を小型コンパクトに構成することが可能である。
【0021】
また、操作部材はスライド部材をストローク限位置に移動するイニシャライズ動作で第1位置に移動するから特別な位置移動手段を必要とすることがなく、穿孔ジャムなどの異常発生時には操作部材を第1位置から第2位置に移動する操作で複数のパンチ部材を非穿孔状態にシフトすることが出来、ジャムシートの除去が容易である。
【0022】
特にスライド部材をそのストローク限に配置した規制ストッパに突き当てることによって全てのパンチ部材を非穿孔状態に位置移動することが出来、オペレータは操作部材を第1位置から第2位置に移動する簡単な操作でジャム処理することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係わる穿孔装置の全体構成の説明図。
【図2】図1の装置における要部断面説明図。
【図3】図1の装置に於けるカム手段を示し、(a)は斜視説明図、(b)は円筒カムを平面に展開した状態を示す説明図。
【図4】図1の装置におけるスライド部材の移動を示す説明図であり、(a)は左限位置にある状態を示し、(b)は右限位置にある状態を示し、(c)は操作部材の構造説明図。
【図5】図1装置におけるスライド部材のストローク限位置を判別する判別手段の構成図であり、(a)はスライド部材のストローク限の位置規制の説明図であり、(b)は判別手段の構成を示すタイミングチャート。
【図6】図1装置におけるスライド部材とパンチ部材との位置関係の説明図。
【図7】図1乃至図4の装置のスライド部材と異なる実施形態のスライド部材(スライドカム)を示す説明図。
【図8】本発明に係わる穿孔装置の制御を示すフローチャート。
【図9】(a)は装置起動時の初期化動作を示すフローチャート、(b)は制御構成を示すブロック図である。
【図10】本発明に係わる画像形成装置における後処理装置の構成説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。
[基本構成の説明]
まず本発明の基本的構成について説明する。図1に全体構成を説明するように本発明は複数のパンチ部材40をパンチ間隔(規格間隔)に配列する。図示のものは装置フレーム(後述する上部フレーム30)に2穴穿孔用のパンチ部材40b、40cと、4穴穿孔用のパンチ部材40a、40b、40c、40dが上下動可能に軸支持してある。この複数のパンチ部材は、2穴穿孔用得に2つ、3穴穿孔用に3つのパンチ部材或いはそれ以外の組み合わせであっても良い。
【0025】
上記パンチ部材40には、対向する位置に刃受孔(ダイ)38を配置する。図示のものは装置フレーム(後述する下部フレーム35)に各パンチ部材に対向する位置に配置されている。そして上記上部フレーム30にはスライド部材50が所定ストロークで往復動可能に支持され、このスライド部材50に駆動モータMが連結されている。スライド部材50とパンチ部材40との間にはスライド部材50の直線運動をパンチ部材40の上下運動に変換するカム機構(図1の実施形態ではラック51、図7の実施形態では溝カム83)が配置されている。
【0026】
このようにスライド部材50(図1左右方向移動)とパンチ部材40(図1上下方向移動)とは、略々直交する方向に移動可能に上部フレーム30に支持され、駆動モータMによってスライド部材50は所定ストロークで往復動し、後述するカム機構でパンチ部材40が穿孔方向に上下動するように構成されている。
【0027】
そしてスライド部材50には往復動する一方のストローク限(図1及び図4に示す右限位置RL)に位置規制ストッパ26(以下「第1ストッパ」という)が設けられている。つまりスライド部材50を摺動可能に支持している上部フレーム30に、第1ストッパ26が突起(折曲げ片、ピンなど)で構成されている。
【0028】
そこで本発明は図4(b)に示すようにスライド部材50の一方のストローク限(図示のものは右限位置RL)ではすべてのパンチ部材40(第1乃至第4パンチ部材40a〜40d)は上死点(非穿孔位置)Wpに位置するように後述するカム機構が設定されている。従ってスライド部材50を一方の右限位置RLに移動すると、その先端が第1ストッパ26に当接し、この状態ですべてのパンチ部材40が非穿孔位置Wpに位置するようになっている。
【0029】
そこで本発明は、駆動モータMの非駆動時にスライド部材50を第1ストッパ26に向けて位置移動する操作部材28を次のように装置フレームに配置することを特徴としている。図4に示すように上部フレーム30には、操作部材28が所定範囲で位置移動可能に配置されている。
【0030】
この操作部材28は第1ストッパ26の反対側に位置するスライド部材50のストローク左限位置LLに配置され、この位置でスライド部材50と係合する。そしてスライド部材50の移動方向(図4左右方向)と同一方向に第1位置SL1と第2位置SL2との間で位置移動可能に上部フレーム30に取り付けられている。
【0031】
そしてスライド部材50をストロークの左限位置LLに移動すると、図4(a)に示すように操作部材28は第1位置SL1に移動する。また操作部材28を第1位置SL1から第2位置SL2に移動すると図4(b)に示すようにスライド部材50を第1ストッパ26に向けて位置移動する。
【0032】
上述の操作部材28は、例えば次のように構成する、図4(c)に示すように上部フレーム30にはガイドピン29a、29bが設けられ、このカイドピンに嵌合するスリット溝28xが操作部材28に設けられている。このように装置フレーム30にガイド部材(ガイドピン、ガイド溝、ガイドレールなど)29を設け、このガイド部材と嵌合する係合部材(スリット溝、スライダなど)28xを操作部材28に設ける。これによって操作部材28は第1位置SL1と第2位置SL2間でスライド部材50の移動方向と同一方向に摺動可能となる。
【0033】
上記操作部材28は樹脂、金属などの操作片で構成され、その一端には係合部28aが設けられ、この係合部28aがスライド部材50の受動部50xと係合する。そして操作部材28には操作部28bが設けられ、図示のものはこの操作部28bをオペレータが図4(a)矢印方向にプッシュする形状に構成されている。
【0034】
このようにスライド部材50の第1ストッパ26の反対側のストローク限(左限位置)LLには操作部材28がスライド部材50とは分離して同一方向に移動可能に構成され、この操作部材28の係合部28aはスライド部材50の受動部50xと係合するように構成されている。尚この場合に、操作部材28の係合部28aとスライド部材50の受動部50xとは互いに結合することなく操作部材28が第1位置SL1から第2位置SL2に移動する動作でスライド部材50を押し動かすように互いの部材が衝合するようになっている。
【0035】
更に、上記操作部材28にはスライド部材50が左限位置LLのときその運動を規制する第2ストッパ27が設けられている。図4に示す形態ではスリット溝28xの端面が第2ストッパ27を構成している。従ってスライド部材50は前述した第1ストッパ26で一方のストローク限(図示のものは右限位置)RLで運動規制され、他方のストローク限(左限位置)LLは操作部材28で運動規制されることとなる。
【0036】
上記スライド部材50には、パンチ部材40に2穴穿孔動作を行わせる第1領域Raと4穴穿孔動作を行わせる第2領域Rbが図5(b)に示すように設定されている。パンチ部材40はストロークSで往復動し、そのストローク限に第1ストッパ26と第2ストッパ27が設けられている。このストロークSの中央部にホームポジションHpが設定してあり、ホームポジションHpから例えば右方向に移動するときには第1領域Ra(2穴穿孔)、左方向に移動するときには第2領域Rb(4穴穿孔)のように領域設定されている。そして第1領域Raから距離を隔てて第1ストッパ26が、第2領域Rbから距離を隔てて第2ストッパ27が配置されている。
【0037】
そこで後述する制御手段60は装置起動時にイニシャライズ動作としてスライド部材50が左限位置LLに移動するように駆動モータMを制御する。このイニシャライズ動作で操作部材28は第1位置SL1に位置決めされる。その後、制御手段60はスライド部材50をホームポジションHpに移動し、オペレータによって設定された穿孔数に応じて第1領域Ra間で往復動させるか、或いは第2領域Rb間で往復動させる。
【0038】
上記制御のため、図5に示すように両領域の中央部のホームポジションHpそしてスライド部材50にセンサフラグ55が設けられ、このフラグ55(図示のものは第1フラグ55a、第2フラグ55b、第3フラグ55c)を検知するポジションセンサShが装置フレームに配置されている。そして第1フラグ55aと第2フラグ55bの間に第1領域Raが設定され、第1フラグ55aと第3フラグ55cの間に第2領域Rbが設定されている。
【0039】
[スライド部材の駆動制御]
上記スライド部材50には駆動モータMが、減速ギアG1を介して連結され、このモータMの正逆転でスライド部材50が往復動するように駆動連結されている。この駆動モータMには回転時にエンコーダ54が設けられ、エンコードセンサSeで駆動モータMの速度制御(PWM制御)を行うように構成されている。
【0040】
このような構成において後述する制御手段60は、上記スライド部材50がストローク限位置に位置するか否かを判別する判別手段60aを設ける。この判別手段60aは次の第1第2第3実施形態のいずれかで構成する。
【0041】
第1の実施形態は、上記記判別手段60aを、「駆動モータMの回転を検出するエンコーダ54と、このエンコーダの回転量からスライド部材50が位置規制ストッパ(第1ストッパ)26に突き当たって停止したことを判別する」ように構成する。この場合は、エンコーダ54の回転量を制御手段60で駆動モータMの回転が停止したことを判断し、このときスライド部材50が位置規制ストッパ26(第1ストッパ)に位置すると判断する。
【0042】
第2の実施形態は、上記判別手段60aを、「スライド部材50のストローク限に配置されたポジションセンサ」で構成する。この場合は、図5(a)に破線で示すようにスライド部材50がストローク右限位置(RL)の第1ストッパ26に突当たった位置にフラグ55xと限ポジションセンサSxを設ける。
【0043】
第3の実施形態は、上記判別手段60aを、「スライド部材50が第1ストッパ26に停止した駆動モータMの負荷変動を検出する」ように構成する。この場合は、図示しないが駆動モータMの駆動電流値を検出する。そしてこの電流値が基準値より大きく変動したときスライド部材50が第1ストッパ26に突き当たって停止したと判断する。この駆動モータMの駆動電流検出回路は既に広く知られているので説明を省略する。
【0044】
なお、いずれの場合も制御手段60は、駆動モータMに初期化動作を行なわせる際に、この駆動モータMを穿孔動作時より低速で回転することが好ましい。後述する装置は駆動モータMをPWM制御している。そこで駆動モータMに供給する電源パルスのデューティ比を通常の穿孔動作時より初期動作時に低くする。
【0045】
次に図示の装置についてその構成を詳述する。図1に示す穿孔装置Aは4つのパンチ部材40a〜40dで被穿孔シートに2穴又は4穴の穿孔を施す装置を示す。またスライド部材50はラックで構成し、駆動モータMの回転を複数のパンチ部材40にラジアル方向の回転運動として伝達する場合を示す。これと共に図示のものは各パンチ部材40a、40b、40c、40dが上死点から下死点にラジアル方向に回転しながらスラスト方向(穿孔方向)に穿孔動作する装置を示している。以下その構成について説明する。
【0046】
図1に示すようにこの装置は上部フレーム(ベースフレーム)30と、下部フレーム(ダイプレート)35とで構成されている。この上部フレーム30と下部フレーム35は被穿孔シート(以下単に「シート」という)をセットする間隔を隔てて上下に対向するように配置され、その長さ寸法はシートの幅方向長さより大きく形成されている。そして上部フレーム30には所定の規格(ファイル穴規格)に応じた間隔で第1パンチ部材40a、第2パンチ部材40b、第3パンチ部材40c、第4パンチ部材40dが上下動自在に軸支持されている。また下部フレーム35には各パンチ部材に対向する位置に刃受孔(ダイ)38が設けられている。
【0047】
上記各パンチ部材40a〜40dは通常の円柱形状に構成され、その先端に穿孔刃41が設けられている。この第1乃至第4パンチ部材40a〜40dは同一構造で構成されているのでその1つについて説明する。上記上部フレーム30は図2に示すように断面コ字状のチャンネル部材で構成され、上下に対向する上ガイド31と下ガイド32にガイド孔31a、32aが設けられている。パンチ部材40はこのガイド孔31aに上軸部42aが、ガイド孔32aに下軸部42bが嵌合支持されている。
【0048】
従ってパンチ部材40は上部フレーム30に図2上下方向(穿孔方向)に摺動自在に支持されている。またパンチ部材40には鍔状段差部43が設けてある。上記下部フレーム35は上部フレーム30に前述の間隙を形成して固定ネジ39で一体に取り付けてあり、この上部フレーム30,下部フレーム35でユニット化されている。
【0049】
そこで上記パンチ部材40にはカム手段(図示のものは円筒カム44)が一体に設けてあり、この円筒カム44の外周には傾斜カム面45θを有するカム溝45が形成してある。この円筒カム44で構成したカム手段は後述するようにパンチ部材40に作用する駆動力をスラスト方向とラジアル方向に運動変換する運動変換手段を構成している。
【0050】
一方前記上部フレーム30にはこのカム溝45と係合するカムフォロア部材33が固定してある。図示のカムフォロア部材33は、台座部33aとガイド軸部33bとカム係合部(以下リードピンという)33cとを備え、前記ガイド孔31a、32aと所定の位置関係となるように上部フレーム30に形成した取付け孔に嵌合し台座部33aをビスなどで固定する。
【0051】
そしてガイド軸部33bは後述するスライド部材50をガイドし、リードピン33cは上記カム溝45と係合するピン形状に構成されている。従ってパンチ部材40は上部フレーム30に上下摺動自在に支持され、これに設けたリードピン33cにカム溝45が係合保持される。このリードピン33cがカムフォロアを構成している。
【0052】
また、上記パンチ部材40には受動歯車46が一体に取り付けられている。この受動歯車46は後述する伝動手段(ラック)51に歯合され、駆動モータMに連結されている。このように構成されたパンチ部材40は、穿孔刃41及び上下軸部42a、42bを例えばSUS系鋼材のような研磨性の良い素材で構成する。この他鉄系金属或いはセラミックなどで形成しても良い。また、円筒カム44と受動歯車46とはPOM(ジュラコン樹脂)などの合成樹脂で成形することが加工性、静音性などから好ましが、特にその材質を特定するものではない。
【0053】
そしてパンチ部材40の穿孔刃41と円筒カム44と受動歯車46とを一体化する。この一体化はこれらの三者を一体的に回転させる為であり、成型時にインサート成形によって一体化するか或いは固定ビス、接着剤などで固定する。例えばパンチ部材40の軸部を断面非円形(角軸、Dカット軸など)に形成し、これに例えば樹脂で一体成形した円筒カム44と受動歯車46とを圧入して必要に応じて固定ビス、接着剤などで固定する。尚上記円筒カム44に形成したカム溝45の形状については後述する。
【0054】
また上記パンチ部材40の先端に設けられた穿孔刃41の形状は先端面が断面U字状、V字状など波状にカットされ、被穿孔シートと当接する端面は凹凸形状に形成されている。これはシートを貫通する穿孔刃41を先鋭状に形成するのと同時にパンチ部材40をラジアル方向に回転させながら穿孔する際の剪断力を大きくするためである。更に穿孔刃41の形状は先端が先鋭状に尖った斜裁形状に構成することによって更に穿孔時の剪断作用を大きくすることが出来る。
【0055】
次に上部フレーム30にはスライド部材50が図1左右方向に移動自在に組み込まれる。このスライド部材50にはラック51が形成され、このラック51は上述のように上部フレーム30に複数(図示のものは4個所)配置されたパンチ部材40a〜40dの各受動歯車46と噛合するようになっている。そしてスライド部材50はその上下方向を前記カムフォロア部材33のガイド軸部33bと下ガイド32との間に規制され、またその前後方向を上部フレーム30の背面と各受動歯車46との間に規制され(図2参照)、図1左右方向に移動(摺動)自在に支持されている。これによって各パンチ部材40a〜40dの受動歯車46とスライド部材50のラック51とが噛合され、スライド部材50の移動量に応じて各パンチ部材40a〜40dは所定の角度関係(後述の位相差)でそれぞれ回転されることとなる。
【0056】
上記スライド部材50には駆動モータMが次のように連結されている。前記上部フレーム30にはブラケット53で駆動モータMが取り付けてあり、その回転軸は減速歯車を介して駆動歯車G1に連結されている。そしてこの駆動歯車G1がスライド部材50のラック51に歯合してある。従って駆動モータMの正逆転でスライド部材50は図1左右方向に移動することとなる。尚図示54はモータの回転軸に設けたエンコーダであり、Seはこれを検出するエンコードセンサである。
【0057】
また、上記スライド部材50のホームポジションを位置検出するポジションセンサShが装置フレームに配置されている。図4に示すようにスライド部材50にはセンサフラグ55a、55b、55cが設けてあり、ポジションセンサShでフラグ位置を検出するようになっている。
【0058】
次に上述のように構成されたパンチ部材40のカム溝45について説明する。前述のように各パンチ部材40a〜40dに設けられた円筒カム44には図3(a)(b)に示すようなカム溝45が設けられている。図示のものは被穿孔シートにパンチ穴を2穴と4穴いずれかを選択して穿孔する構造にしてある。この関係で第1パンチ部材40aと第4パンチ部材40dの各円筒カム44の外周に同一形状のカム溝45a、45dが、第2パンチ部材40bと第3パンチ部材40cの円筒カム44の外周には同一形状のカム溝45b、45cが形成してある。
【0059】
上記各カム溝45a〜45dには穿孔方向に(図3(a)上下方向)に対し所定角度(θ)傾斜した傾斜カム面45θが設けられ、第1,第4カム溝45a、45dには1個所、第2,第3カム溝45b、45cには2個所に傾斜カム面45θが形成されている(図3(b)参照)。そして第1,第4カム溝45a、45dの傾斜カム面45θと第2,第3カム溝45b、45cの1つの傾斜カム面45θはそれぞれ円筒カム44の同一角度位置(第1角度位置)に配置され、この第1角度位置で被穿孔シートに4穴開けする。
【0060】
また第2,第3カム溝45b、45cの他の傾斜カム面45θは円筒カム44の上記第1角度位置と異なる角度位置(第2角度位置)で同一角度位置に形成され、この第2角度位置ではシートに2穴開けする。この第2角度位置では第1,第4カム溝45a、45dは円筒カム44の外周方向に水平な直線溝で形成されている。
【0061】
従って前述のように上部フレーム30に固定されたリードピン33cと係合している第1乃至第4カム溝45a〜45dは上記第1角度位置では第1乃至第4パンチ部材40a〜40dが被穿孔シートに4穴穿孔し、上記第2角度位置では第2、第3パンチ部材40b、40cが被穿孔シートに2穴穿孔することとなる。
【0062】
また上記各円筒カム44は所定角度ずつ位相差を有するように上部フレーム30に取り付けられ、同時孔開けする際に各パンチ部材40a〜40dの孔開けタイミングを異ならせている。つまり図1に示すように4穴開けの時、各パンチ部材40a〜40dは、第1パンチ部材40a、第2パンチ部材40b、第3パンチ部材40c、第4パンチ部材40dの順に時間差(カム溝の変移差)を持って孔開けタイミングをズラしている。2穴開けの時も同様に第2パンチ部材40b、第3パンチ部材40cの順に位相差を持たせている。
【0063】
このような位相差は装置組み立て時に各パンチ部材40a〜40dの受動歯車46を前述のスライド部材50のラック51と歯合する際にカム溝45a〜45dの位置を所定角度ずつズラせることによって孔開けタイミングを異ならせるようにする。
【0064】
以上パンチ穴を2穴,4穴にする場合について説明したが、前述のパンチ部材40の配置間隔及び配置数を変更することにより3穴打ち、或いは中央の間隔を異ならせてシート上下に4穴穿孔することも可能であることは勿論である。また、図1の装置で円筒カム44にはその外周全域にカム溝45を形成したが、これは傾斜カム面45θの部分のみに形成し、このカム部分でパンチ部材40を往復動する構成であっても良い。更に本発明にあって穿孔刃41の端面形状をU字、V字状にカットする場合を示したがこれは半裁円形状であっても良い。
【0065】
[パンチ部材の動作制御]
次に上述のパンチ部材40の動作制御について説明する。まず第1〜第4パンチ部材40a〜40dの穿孔動作を図3(b)に基づいて説明する。同図は前述の円筒カム44を平面に展開したカム線図を示し、第2第3パンチ部材45b、45cには2つの傾斜カム面45θが形成してあり、第1第4パンチ部材40a、40dには1つの傾斜カム面45θが形成されている。
【0066】
そして全てのパンチ部材45a〜45dには同一個所(正確には少許の位相差を有する)に傾斜カム面θが形成されている。そこで図3(b)に図示する位置にホームポジションHP1、HP2、HP3が設定され、第1ホームポジションHP1と第2ホームポジションHP2間でスライド部材50を往復動すると被穿孔シートには4穴の穿孔が施され、第2ホームポジションHP2と第3ホームポジションHP3間でスライド部材50を往復動すると被穿孔シートには2穴の穿孔が施されるように構成されている。
【0067】
そこで前述のスライド部材50には図5に示すようにセンサフラグ55a、55b、55cが設けてあり、このフラグを検出するポジションセンサShがホームポジションHp(図5参照)に配置してある。また駆動モータMには前述したようにエンコーダ54とエンコードセンサSeが配置されている。
【0068】
上記ホームポジションHpは図5に示すようにスライド部材50の第1領域Raと第2領域Rbの中間に設定され、ホームポジションHpから第1領域Raで往復動するときにはパンチ部材が2穴穿孔を実行し、第2領域Rbで往復動するときには4穴穿孔するようになっている。
【0069】
そして第1領域Raは第1フラグ55aと第2フラグ55bをポジションセンサShで検出して動作基準位置(穿孔開始点)を判別し、第2領域Rbは第1フラグ55aと第3フラグ55cを検出して動作基準位置(穿孔開始点)を判別している。このとき初期状態でスライド部材50がフラグ55aをポジションセンサShが検出するホームポジションに位置決めす必要が生ずる。以下このホームポジションの位置決めについて説明する。
【0070】
図6(a)はスライド部材50が左限位置LLで第2ストッパ27に突き当たった状態を示し、第2フラグ55bでポジションセンサShはON状態となる。(b)はスライド部材50が第1領域Raに位置する状態を示し、この位置でもセンサShはON状態となるように第2フラグ55bが形成されている。
【0071】
図6(c)はスライド部材50がホームポジションHpに位置する状態を示し、第1フラグ55aでポジションセンサShはON状態となる。(d)はスライド部材50が第2領域Rbに位置する状態を示し、第3フラグ55cでポジションセンサShはON状態となる。(e)はスライド部材50が右限位置RLで第1ストッパ26に突き当たった状態を示し、この位置でもポジションセンサShはON状態となるように第3フラグ55cが形成されている。
【0072】
そこで通常の穿孔動作では、図6(c)のホームポジションHpにスライド部材50を位置させる。そして制御手段60で2穴穿孔が選択された場合にはスライド部材50を図(c)から図(b)に移動する。つまりスライド部材50を第1領域Raで往復動させる。このときの移動量は前述したエンコーダ54のパルス数で制御する。この動作でシートには2穴穿孔が施される。
【0073】
また4穴穿孔が場合には、スライド部材50を図(c)から図(d)に移動する。つまりスライド部材50を第2領域Rbで往復動させる。この動作でシートには4穴穿孔が施される。
【0074】
次に装置起動時、或いはジャム処理後の装置再開時にスライド部材50は図(a)〜(e)のいずれに位置するか判らない。そこで後述する制御手段60は駆動モータMをスライド部材50の一方のストローク限(右限位置RLまたは左限位置LL)に向けて移動する。これを第1ストッパ26について説明すると、制御手段60は初期化動作時にはスライド部材50を図6右側に移動するように駆動モータMを制御する。するとスライド部材50が図(a)(b)(c)(d)のときには右側に移動して第1ストッパ26に突き当たって停止する。また図(e)のときにはその位置に静止している。
【0075】
そこで後述する判別手段60aは、前述した第1実施形態の場合には、駆動モータMの回転を検出するエンコーダ54と、このエンコーダの回転量からスライド部材54が第1ストッパ26に突き当たって停止したことを判別する。また第2の実施形態の場合にはスライド部材50のストローク限に配置された限ポジションセンサSxで検知する。また第3実施形態の場合にはスライド部材50が第1ストッパ26に停止した駆動モータMの負荷変動を検出する。
【0076】
そして前述したように駆動モータMを逆転させてスライド部材50を復帰方向(図6左方向)に移動させる。そしてこのスライド部材50がホームポジションHpに戻るとポジションセンサShがこれを検出する。その検知信号で駆動モータMを停止する。つまりポジションセンサShは第3フラグ55cを検知したON状態(右限位置)からOFF状態(第2領域Rb)、次いでON状態(ホームポジション)となる。このOFF状態からON状態となったときに駆動モータMを停止するとスライド部材50をホームポジションHpに位置付けることが出来る。
【0077】
このように本発明は、初期化動作でスライド部材50を予め設定したストローク限の一方(図示のものは右限位置RL)に移動するように駆動モータMを制御し、この移動でスライド部材50がストローク限に位置することを確認する判別手段60aを設け、次いでスライド部材50を逆方向に移動してホームポジションHpに移動する。そしてこのポジションセンサShからの信号で駆動モータMを停止するか、或いは後続する穿孔動作に移行することを特徴としている。
【0078】
[スライドカムによる穿孔機構]
次に図7に示す実施形態について説明する。パンチ部材40の構成は前述の第1、第2の実施形態と同一であるので同一符号を付して説明を省略する。そこで図7に示すものは、所定ストロークで往復動する往復伝動部材をスライドカム82で構成する場合を示す。図1と同様に装備した駆動モータMに連結されたスライドカム82にはV字状の溝カム83が形成され、このV字状の溝カム83は穿孔方向に所定角度で傾斜した傾斜カム面83aを備えている。そしてこのV字状の溝カム83に係合するカムフォロアピン83pがパンチ部材40に嵌合したキャップ部材84に植設してある。そしてキャップ部材84はパンチ部材40の上端部に回動可能にピボット支持してある。その他の構成は図1と同一である。
【0079】
このような構成に於いてスライドカム82を図示左右方向に所定ストロークで往復動すると、V字状の溝カム83の傾斜カム面83aがカムフォロアピン83pを上死点から下死点に向けてスラスト方向に押下する。そして上記溝カム83の傾斜方向が反転するとパンチ部材40は復帰スプリング69で下死点から上死点に復帰する。かかる過程でパンチ部材40は上死点から下死点には反時計方向に回転しながらシートを穿孔し、下死点から上死点に復帰するときには時計方向に回転方向を反転させる。このとき穿孔刃41に付着とした屑紙片80は四方八方に振り飛ばされることとなる。
【0080】
尚、図7に示す装置にはスライドカム82の位置を検出するセンサフラグとポジションセンサとが図1の装置と同一の構成で配置してあり、このスライドカム82には図1の装置と同様に図示しない駆動モータMに連結してある。従って2穴、4穴の穿孔動作は図1の装置と同一の構成で制御される。
【0081】
[駆動制御手段の構成]
図9(b)に図1の装置の制御構成を示す。例えば制御手段60を制御CPUで構成し、図示しないコントロールパネルから2穴4穴の選択手段61を構成する。そして制御CPU60はROM62のプログラムとRAM63の制御データに従って初期化動作と穿孔動作を実行する。上記制御CPU60にはポジションセンサShの検知信号とエンコーダ54の検知信号がエンコードセンサSeから電送される。またジャム検出手段の検知信号が送られる。図示のジャム検出手段はスライド部材50が所定時間内にホームポジションHpに復帰しないときジャムと判定するようにポジションセンサShの検知信号でジャム検出している。
【0082】
次に図8のフローチャートに基づいてパンチ動作を説明する。装置電源が投入され、装置が起動する(St100)と制御手段60は初期動作を行う。この動作は後述するがスライド部材50がホームポジションHpに位置するか否かを検出して(St101)、この位置以外のときにはスライド部材50をホームポジションHpに移動する(St102)。この初期動作でスライド部材50がホームポジションHpに移動しないときには装置故障としてエラー警告する(St103)。次に制御手段60は例えば後処理装置Cから2穴孔開けであるか4穴孔開けであるか孔開けモードの選択信号(St104)を受ける。
【0083】
次に制御手段60は孔開けモードの選択信号で指示された穿孔動作を実行するが、このときスライド部材50はホームポジションHpに位置している。そこで制御手段60は被穿孔シートが所定の穿孔位置にセットされているか否か例えば図示しないペーパセンサからの信号で判断する(St105)。被穿孔シートが穿孔位置にセットされているときには駆動モータMを回転駆動する(St106)。
【0084】
このとき例えば2穴穿孔のときにはスライド部材50を第1領域Ra方向に駆動モータMを回転し、4穴穿孔のときには第2領域Rb方向に駆動モータMを回転する。すると被穿孔シートには2穴又は4穴の穿孔が施される(St107)。次に制御手段60はスライド部材50による穿孔動作の終了をポジションセンサShで2穴穿孔のときには第2フラグ55bの検知、4穴穿孔のきには第3フラグ55cを検知する(St108)。
【0085】
この穿孔終了の検知信号で所定時間内にセンサONしたときには、穿孔位置に次シートが準備されるか否かを図示しないペーパセンサからの信号で判断し(St109)、次シート有りのときにはステップSt105に戻り、次シートなしのときにはジョブ終了とする(St110)。また、所定時間経過してもセンサONしないとき(St111)には装置電源をOFFし(St112)、同時にジャム表示する(St113)。そしてジャム処理後の装置電源ON(St114)で上述の初期化動作に移行する。
【0086】
上記初期化動作について図9(a)のフローチャートに従って説明する。初期化指示信号を受けると制御手段60は駆動モータMを予め設定された方向、図示装置ではスライド部材50を第1ストッパ26に向けて移動する方向に回転する(St120)。そしてスライド部材50が第1ストッパ26に到達したかいなかを判別手段60aで判別する(St121)。この判別でスライド部材50が右限位置RLのときには駆動モータMを逆転する(St122)。そしてポジションセンサShがONになるか否かを判断し(St123)、スライド部材50がホームポジションHpのときには駆動モータMを停止し、前述した穿孔動作に移行する。
【0087】
[後処理装置の説明]
次に本発明に係わる画像形成装置Bにおける後処理装置Cの構成を図10に従って説明する。図10に示す画像形成システムは、シートに順次印刷を施す画像形成装置Bと、この画像形成装置Bの下流側に付設された後処理装置Cとから構成されている。そして画像形成装置Bで画像形成したシートを後処理装置Cで印刷済のシートに穿孔処理を施すように構成されている。
【0088】
まず画像形成装置Bは複写機、プリンタ、印刷機など種々の構造のものが採用可能であるが図示のものは静電印刷装置を示す。この画像形成装置Bはケーシング1内に給紙部2と、印字部3と、排紙部4と制御部(図示せず)とが内蔵されている。給紙部2にはシートサイズに応じた複数のカセット5が準備され、制御部から指示されたサイズのシートが給紙経路6に繰り出される。この給紙経路6にはレジストローラ7が設けられ、シートを先端揃えした後所定のタイミングで下流側の印字部3に給送する。
【0089】
印字部3には静電ドラム10が設けられ、このドラム10の周囲には印字ヘッド9、現像器11、転写チャージャ12などが配置されている。そして印字ヘッド9は例えばレーザ発光器などで構成され、静電ドラム10上に静電潜像を形成し、この潜像に現像器11でトナーインクを付着し、転写チャージャ12でシートに印刷する。この印刷シートは定着器13で定着され17に搬出される。排紙部4には上記ケーシング1に形成した排紙口14と排紙ローラ15が配置されている。
【0090】
尚、図示16は循環経路であり、排紙経路17からの印刷シートをスッチバック経路で表裏反転した後再びレジストローラ7に送り、印刷シートの裏面に画像形成する。このように片面若しくは両面に画像形成された印刷シートは排紙口14から排紙ローラ15で搬出される。
【0091】
図示Dはスキャナユニットであり、上記印字ヘッド9で印刷する原稿画像を光学的に読み取る。その構造は一般的に知られているように原稿シートを載置セットするプラテン20と、このプラテン20に沿って原稿画像をスキャンするキャリッジ18と、このキャリッジ18からの光学像を光電変換する光学読取手段(例えばCCDディバイス)19とから構成されている。また図示のものは原稿シートを自動的にプラテンに給送する原稿送り装置Eがプラテン20上に装備してある。
【0092】
そこで上記画像形成装置Bの排紙口14には後処理装置Cが連設してある。この後処理装置Cはシート搬送経路22と、この搬送経路22に配置した穿孔装置Aと排紙スタッカ21とから構成されている。シート搬送経路22には穿孔装置Aの上流側に整合手段23bが設けられ、シート後端を整合する。またシート搬送経路22には正逆転ローラ24が配置され、搬入口23aからのシートを整合手段23bに突き当て整合し、同時にこの正逆転ローラ24は穿孔装置Aからシートを排紙スタッカ21に搬出する。図示Siはシート検知センサである。尚、穿孔装置Aは先に説明した図1に示す装置で構成されている。
【0093】
このように構成された後処理装置Cは画像形成装置Bから印刷済のシートを搬入口25から受け取り、シート後端をシート検知センサSiで検知し、シート後端が整合手段23bを通過したタイミングで正逆転ローラ24を逆転(図示反時計方向)する。するとシートはスイッチバックされシート後端が整合手段23bに突き当て整合される。この整合後に正逆転ローラ24は停止し、シートをその位置に保持する。
【0094】
この状態で穿孔装置Aは駆動モータMを駆動して前述の穿孔動作を実行する。穿孔動作の実行後は正逆転ローラ24を図示時計方向に回転しパンチ穴を施されたシートを排紙スタッカ21に搬出する。尚この後処理装置Cには、図示しないがステープルユニット、スタンプユニットなどが装置仕様に応じて組み込まれる。
【符号の説明】
【0095】
26 位置規制ストッパ(第1ストッパ)
27 第2ストッパ
28 操作部材
28a 係合部
28b 操作部
28x スリット溝(係合部材)
29 ガイド部材
29a ガイドピン
29b ガイドピン
30 上部フレーム(装置フレーム)
35 下部フレーム(装置フレーム)
40 パンチ部材
40a 第1パンチ部材
40b 第2パンチ部材
40c 第3パンチ部材
40d 第4パンチ部材
41 穿孔刃
44 カム手段(円筒カム)
45 カム溝(45a〜45d)
46 受動歯車
50 スライド部材
50x 受動部
51 ラック(伝動手段)
60 制御手段(制御CPU)
60a 判別手段
60c ジャム検出手段
M 駆動モータ
RL 右限位置
LL 左限位置
SL1 第1位置
SL2 第2位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置にセットされたシート類にパンチ穴を穿孔する装置であって、
装置フレームと、
前記装置フレームに非穿孔位置と穿孔位置との間で上下動するように配置された複数のパンチ部材と、
前記複数のパンチ部材を上下動するために所定ストロークで直線的に往復動するスライド部材と、
前記スライド部材を往復動する駆動モータと、
前記スライド部材を一方のストローク限位置に係止する位置規制ストッパと、
を備え、
前記スライド部材は、前記位置規制ストッパに係止された状態で前記複数のパンチ部材をシートから離間した非穿孔位置に位置決めするように構成され、
前記装置フレームには、前記駆動モータの非駆動時に前記スライド部材を前記位置規制ストッパに向けて位置移動する操作部材が設けられ、
この操作部材は、
(1)前記スライド部材の前記位置規制ストッパの反対側に位置するストローク限位置に配置されていること、
(2)前記装置フレームに前記スライド部材の移動方向と同一方向に第1位置と第2位置との間で移動可能に取付けられていること、
(3)前記スライド部材をストローク限位置に移動するイニシャライズ動作でこのスライド部材によって前記第1位置に移動すること、
(4)前記スライド部材が前記パンチ部材を上下動する穿孔動作時には連動することなく前記第1位置に位置すること、
(5)前記駆動モータの非駆動時に第1位置から第2位置に移動する操作力によって前記スライド部材を前記位置規制ストッパに向けて位置移動すること、
を特徴とするシート類穿孔装置。
【請求項2】
前記装置フレームには、前記操作部材を前記第1位置と第2位置との間で位置移動可能に支持するガイド部材が設けられ、
このガイド部材には、前記操作部材を前記第1位置に位置規制するストッパが設けられ、
このストッパで前記スライド部材を、前記位置規制ストッパの反対側に位置するストローク限位置に位置規制することを特徴とする請求項1に記載のシート類穿孔装置。
【請求項3】
前記複数のパンチ部材は、2つ以上のグループに区割され、
前記スライド部材は、往復動する前記ストローク内に前記第1のグループのパンチ部材に穿孔動作を実行させる第1領域と、異なる他のグループのパンチ部材に穿孔動作を実行させる第2領域が設定され、
前記スライド部材の前記位置規制ストッパが配置されているストローク限位置は、前記第1領域又は第2領域の外側に距離を隔てて配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート類穿孔装置。
【請求項4】
前記駆動モータには、制御手段が設けられ、
この制御手段は、装置のイニシャライズ時に前記スライド部材を前記第1位置に移動した後に、前記第1領域と第2領域の中間に設定されたホームポジションに位置決めするように前記駆動モータを制御することを特徴とする請求項3に記載のシート類穿孔装置。
【請求項5】
前記装置フレームには、前記スライド部材の位置を検出する検出手段と、
この検出手段の検出結果に基づいて、前記駆動モータを制御する制御手段と、
が設けられ、
前記検出手段は、
前記第1領域と第2領域の間に設定された前記スライド部材のホームポジションを検知するポジションセンサと、
前記スライド部材がストローク限位置に位置するか否かを判別する判別手段と、
で構成され、
前記制御手段は、初期化動作として前記駆動モータに、
前記スライド部材を所定のストローク限位置に移動する動作と、
前記検出手段のストローク限位置判別手段に基づいて前記スライド部材を逆方向に復帰移動させる動作と、
前記スライド部材の復帰移動で前記ポジションセンサの検知信号を取得した後に、このスライド部材を選択された前記第1領域又は前記第2領域に移動する動作を行わせることを特徴とする請求項3又は4に記載のシート類穿孔装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−183531(P2011−183531A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53533(P2010−53533)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(595165047)株式会社セーコウ (38)
【Fターム(参考)】