説明

突入電流防止回路、および負荷駆動回路、ならびにそれらを用いた発光装置

【課題】平滑キャパシタに流れる突入電流を防止する。
【解決手段】平滑キャパシタCsは、電源30の出力端子32の電圧Voutを平滑化する。突入電流防止回路10は、平滑キャパシタCsに対する突入電流を防止する。保護抵抗Rpは、電源30の第1の端子から平滑キャパシタCsを経て電源30の第2の端子に至る経路上に設けられる。フォトリレー12の入力側の発光ダイオードD1は、出力電圧Voutにより駆動される負荷40に流れる負荷電流Iloadの経路上に設けられる。出力側のスイッチSW1は、保護抵抗Rpと並列に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路保護技術に関し、特に、平滑キャパシタに流れ込む突入電流の防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蛍光ランプに代えて、高効率、長寿命が期待される発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下、LEDと略す)を照明器具として利用する技術が提案されている。たとえば、特許文献1には、商用交流電圧を整流し、平滑キャパシタを含む平滑回路によって平滑化して、負荷であるLEDのアレイに供給するLED点灯装置が開示される。同文献記載のLED点灯装置によれば、発光ダイオードの駆動に必要な電圧を安定に供給し続けることができる。
【特許文献1】特開2004−273267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
平滑化キャパシタは、所定のノードもしくは端子に現れる電位を安定化するために利用される。平滑キャパシタは、安定化の対象となるノードと、接地電位端子や基準電圧端子などの別の端子との間に設けられる。しかしながら、同文献の装置では、回路の起動時等に平滑キャパシタに蓄えられた電荷がゼロもしくは非常に少ない状態において、突然、整流された電圧が平滑キャパシタに印加されると、回路素子の定格電流を越える突入電流が発生し、平滑キャパシタや、その他の回路素子の信頼性に影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的のひとつは、平滑キャパシタに流れる突入電流を防止する回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、所定のノードの電圧を平滑化するための平滑キャパシタに対する突入電流を防止する突入電流防止回路が提供される。この突入電流防止回路は、電源から平滑キャパシタを経て別の端子に至る経路上に設けられた保護抵抗と、入力側のダイオードが平滑キャパシタにより平滑された電圧により駆動される負荷の電流に応じた電流の経路上に設けられ、出力側のスイッチ素子が保護抵抗と並列に接続されたフォトリレーと、を備える。
【0006】
この態様によると、平滑キャパシタに現れる電圧が低い状態、言い換えれば、突入電流が発生しうる状態においては、フォトリレーの入力側のダイオードに流れる電流がしきい値を越えないため、フォトリレーの出力側のスイッチ素子がオフとなる。その結果、平滑キャパシタに流れ込む充電電流が保護抵抗によって制限され、突入電流の発生が抑制される。平滑キャパシタの充電が進み、平滑キャパシタに現れる電圧が突入電流が発生しない程度に大きくなり負荷の駆動が開始されると、フォトリレーの入力側のダイオードに流れる電流がしきい値を越え、フォトリレーの出力側のスイッチ素子がオンとなる。その結果、平滑キャパシタと同一経路に設けられた保護抵抗が、スイッチ素子によってバイパスされ、保護抵抗による不要な電力消費を低減することができる。なお、「負荷の電流に応じた電流」とは、負荷に流れる電流そのもののほか、その電流をコピーして得られる電流等も含む。
【0007】
フォトリレーの入力側の発光ダイオードは負荷の電流の経路上に設けられてもよい。この場合、負荷に流れる電流そのものによって、スイッチ素子のオン、オフを切り替えることができる。
【0008】
さらに、突入電流防止回路は、フォトリレーの入力側の発光ダイオードと並列に設けられた第2の発光ダイオードをさらに備えてもよい。この場合、負荷に流れる電流が、第2の発光ダイオードと、フォトリレーの入力側の発光ダイオードに分岐して流れるため、負荷の電流がフォトリレーの入力定格電流より大きい場合に好適に利用できる。
【0009】
本発明の別の態様においても、所定のノードの電圧を平滑化するための平滑キャパシタに対する突入電流を防止する突入電流防止回路が提供される。この突入電流防止回路は、電源から平滑キャパシタを経て別の端子に至る経路上に設けられた可変抵抗と、入力側のダイオードが平滑キャパシタの充電状態に応じた電流の経路上に設けられたフォトリレーと、を備える。可変抵抗の抵抗値を、フォトリレーの出力側のスイッチ素子のオンオフ状態に連動して変化せしめるとともに、スイッチ素子のオン状態における可変抵抗の抵抗値を、オフ状態における可変抵抗の抵抗値より低く設定する。
この態様によれば、充電状態に応じてフォトリレーのスイッチがオン、オフするため、充電状態に応じて、電源から別の端子に至る経路のインピーダンスを変化させることができ、突入電流を好適に防止することができる。
【0010】
ある態様において、平滑キャパシタの充電状態に応じた電流とは、平滑キャパシタにて平滑化された電圧によって駆動される負荷の電流に応じた電流であってもよい。
平滑キャパシタによって駆動される負荷の電流は、充電状態、すなわち、平滑キャパシタに現れる電圧に応じて変化する。したがって、この態様によれば、充電状態を好適にモニタして、突入電流を防止することができる。平滑キャパシタの充電状態に応じた電流としては、このほかに、平滑キャパシタに現れる電圧を電流に変換する電圧電流変換回路を設け、この出力電流を利用してもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、負荷駆動回路に関する。この負荷駆動回路は、交流電圧を整流する整流ブリッジ回路と、整流ブリッジ回路の出力電圧を平滑化し、駆動対象の負荷へと供給する平滑キャパシタと、整流ブリッジ回路の直流側の第1端子から平滑キャパシタを経て整流ブリッジ回路の直流側の第2端子に至る経路上に設けられた保護抵抗と、入力側のダイオードが負荷の駆動経路上に設けられ、出力側のスイッチ素子が保護抵抗と並列に接続されたフォトリレーと、を備える。
【0012】
この態様によると、負荷の電流が、フォトリレーのしきい値電流(トリガ電流)に達する前は、保護抵抗が作用して突入電流が防止されるとともに、負荷の電流がフォトリレーのしきい値電流を越えるとスイッチがオンし、保護抵抗がバイパスされるため、無駄な電力消費を低減することができる。
【0013】
ある態様の負荷駆動回路は、負荷およびフォトリレーの出力側のスイッチと同一経路上に設けられた定電流回路をさらに備えてもよい。この場合、出力電圧が負荷を駆動するために必要な電圧を越えると、負荷を定電流駆動することができる。さらに、定電流回路によって生成される定電流の値を、フォトリレーのしきい値電流より大きく設定することにより、負荷の駆動開始とともに、確実にフォトリレーの出力側のスイッチ素子をオンすることができる。
【0014】
平滑キャパシタは、一端が整流ブリッジ回路の直流側の第1端子に接続されてもよく、保護抵抗は、その一端が整流ブリッジ回路の直流側の第2端子に接続され、その他端が平滑キャパシタの他端に接続されてもよい。負荷およびフォトリレーの入力側のダイオードを、平滑キャパシタと並列に接続してもよい。
【0015】
ある態様において、整流ブリッジ回路は、ダイオードブリッジを含んでもよい。負荷駆動回路はさらに、ダイオードブリッジの直流側の正負の端子の間に接続された放電制御スイッチをさらに備えてもよい。
平滑キャパシタの一端には、100Vを超す高い電圧が現れる場合がある。この場合に、負荷を駆動しないときに放電制御スイッチをオンすることにより、平滑キャパシタに蓄えられた電荷の放電経路を形成し、平滑キャパシタの端子電圧を低下させることができる。その結果、人体への感電や、その他の要因による短絡故障などを防止することができる。
【0016】
負荷駆動回路は、ダイオードブリッジの直流側の正負の端子の間に、放電制御スイッチと直列に設けられた放電用抵抗をさらに備えてもよい。この場合、時定数を調節することができるため、放電速度を任意に設定することができる。
【0017】
放電制御スイッチは、入力側の発光ダイオードと出力側のスイッチ素子を含むフォトリレーで構成されてもよい。スイッチ素子を、放電制御スイッチとして、ダイオードブリッジの直流側の正負の端子の間に配置し、発光ダイオードを、負荷の駆動経路上に配置してもよい。
入力側の発光ダイオードに電流が流れた状態において、出力側のスイッチ素子がオフするタイプのフォトリレーを設けることにより、負荷の駆動状態に応じて、自動的に放電制御スイッチのオフ、オンを切り替えることができる。
【0018】
負荷駆動回路は、フォトリレーのスイッチ素子と直列に接続された放電用抵抗をさらに備えてもよい。この場合、時定数を調節することができるため、放電速度を任意に設定することができる。
【0019】
駆動対象の負荷は、非駆動状態においてハイインピーダンスとなるデバイスであってもよい。
負荷が非駆動状態においてハイインピーダンスとなると、平滑キャパシタの放電経路が存在しないことになるため、放電制御スイッチを設けることによる利点をより享受できる。
【0020】
駆動対象の負荷は、直列に接続された複数の発光ダイオードであってもよい。発光ダイオードは、非発光状態において、ほとんど電流が流れないハイインピーダンスとなるため、放電制御スイッチを設けることによる利点をより享受できる。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、発光装置である。この発光装置は、直列に接続された複数のダイオードと、複数の発光ダイオードを駆動対象の負荷として駆動する負荷駆動回路と、を備える。
この態様によると、負荷駆動回路の出力電圧が低い状態、すなわち突入電流が発生しうる状態においては、出力電圧が発光ダイオードの発光しきい値電圧より低いため、フォトリレーの入力側のダイオードには電流が流れず、保護抵抗を平滑キャパシタに作用させ、突入電流の発生を抑制することができる。その後、出力電圧が上昇し、発光ダイオードの発光しきい値電圧を越えると、発光ダイオードに電流が流れ、フォトリレーのしきい値電流を越えるため、出力側のスイッチがオンして保護抵抗がバイパスされ、出力電圧の大部分を、発光ダイオードに有効に利用することができる。
【0022】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、平滑キャパシタに流れる突入電流を防止し、かつ突入電流防止回路による消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る負荷駆動装置100の構成を示す回路図である。図1には、負荷駆動装置100とともに、駆動対象となる負荷40が示されている。負荷駆動装置100は、電源30、平滑キャパシタCsおよび突入電流防止回路10を含んで構成される。
【0026】
電源30は、負荷40を駆動するために必要な駆動電圧(以下、出力電圧ともいう)Voutを生成し、出力端子32から出力する。電源30は、交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータや、入力された直流電圧を昇圧あるいは降圧し、安定化して出力するDC/DCコンバータなどである。以下、電源30の2つの端子を、第1端子P5、第2端子P6という。第2端子P6は、電位の基準を与える。
【0027】
平滑キャパシタCsは、所定のノード、本実施の形態においては電源30の出力端子32の出力電圧Voutを平滑化するために設けられている。平滑キャパシタCsは、平滑化の対象となるノードと固定電圧端子とを結ぶ経路であって、負荷40と並列の経路上に配置される。図1の回路において、平滑キャパシタCsは、一端が平滑化の対象となる出力端子32に接続され、他端が、後述する保護抵抗Rpを介して接地される。平滑キャパシタCsの容量値は、アプリケーションに応じて適宜選択すればよく、たとえば数μF〜数百μFの電解コンデンサを用いることができる。そのほか、セラミックコンデンサなどを利用してもよい。
【0028】
ある実施の形態においては、平滑キャパシタCsは、電源30の一部を構成してもよい。たとえば、電源30がスイッチングレギュレータやチャージポンプ回路の場合、その出力キャパシタが平滑キャパシタCsに相当する。
【0029】
突入電流防止回路10は、平滑キャパシタCsに対する突入電流を防止するために設けられ、フォトリレー12および保護抵抗Rpを含んで構成される。保護抵抗Rpは、電源30の第1端子P5から平滑キャパシタCsを経て電源30の第2端子P6に至る経路上に設けられる。本実施の形態では、保護抵抗Rpが平滑キャパシタCsの低電圧側に設けられているが、保護抵抗Rpを平滑キャパシタCsの高電圧側に設けてもよい。
【0030】
保護抵抗Rpは、平滑キャパシタCsと直列に接続されて、平滑キャパシタCsの充電電流が急激に増加するのを防止する機能を果たす。平滑キャパシタCsに印加される充電電圧Vsは、電源30の出力電圧Voutと保護抵抗Rpの電圧降下Vdを用いて、Vs=(Vout−Vd)で与えられる。したがって、充電電流Ichgが増加すると、保護抵抗Rpでの電圧降下Vdが大きくなり、充電電圧Vsが小さくなり充電電流Ichgが減少するように帰還がかかり、充電電流Ichgの急激な増加が抑制される。別の観点からみれば、平滑キャパシタCsと保護抵抗RpはRCフィルタを形成しており、フィルタの作用によって、出力電圧Voutの高周波成分が除去され、充電電流Ichgの急激な増加が抑制されると見ることも可能である。
したがって、保護抵抗Rpの抵抗値は、出力電圧Vout、平滑キャパシタCsの耐圧、定格電流等を考慮して設定すればよい。たとえば、保護抵抗Rpの抵抗値は、数十Ωから数kΩの範囲に設定する。
【0031】
フォトリレー12は、入力端子P1、P2および出力端子P3、P4を備え、入力端子P1とP2の間に、発光素子である発光ダイオードD1が、アノードが入力端子P1側、カソードが入力端子P2側となる向きにて設けられている。発光ダイオードD1は、順方向しきい値電圧を超える電圧が印加され、電流が流れると発光する。出力端子P3とP4の間には、スイッチSW1(フォトトランジスタ)が設けられる。スイッチSW1と発光ダイオードD1は、光結合されており、スイッチSW1は発光ダイオードD1からの出力される光を受けるとオンし、光を受けない場合にはオフとなる。フォトリレー12は、発光ダイオードD1とスイッチSW1を含んでパッケージ化され市販されるものを利用すればよい。
【0032】
フォトリレー12の入力側の発光ダイオードD1は、平滑キャパシタCsにより平滑された電圧Voutにより駆動される負荷40に流れる電流Iloadに応じたモニタ電流Imの経路上に設けられる。本実施の形態では、モニタ電流Imは、負荷電流Iloadである。
【0033】
保護抵抗Rpは、上述のように突入電流を防止するための保護素子として機能する反面、負荷電流Iloadの経路上に配置されるため、損失要素としても働くことになる。したがって、保護抵抗Rpは、突入電流が発生しうる期間のみ平滑キャパシタCsに作用し、突入電流が発生しない状態では、その抵抗値はなるべく低く、ゼロであることが望ましい。そこで、フォトリレー12の出力側のスイッチSW1は、保護抵抗Rpと並列に接続される。スイッチSW1がオンすると、保護抵抗Rpはバイパスされるため、保護抵抗RpとスイッチSW1の合成抵抗が低下し、実質的な抵抗値が下げられる。別の観点から見れば、保護抵抗RpとスイッチSW1は、可変抵抗を構成していると考えられる。
【0034】
以上のように構成された負荷駆動装置100の動作について説明する。図2は、負荷駆動装置100の動作状態を示すタイムチャートである。図2は、上から順に、出力電圧Vout、負荷電流Iload、充電電流Ichg、スイッチSW1のオンオフ状態を示す。スイッチSW1の波形は、ハイレベルがオンの状態に対応する。なお、図2および後出の図4の縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。
【0035】
時刻t0〜t1の期間、出力電圧Voutは生成されておらず、0Vを維持している。時刻t1に、電源30が起動し、出力電圧Voutが目標値に向かって上昇し始める。出力電圧Voutの上昇とともに平滑キャパシタCsが充電されるため、充電電流Ichgも、時刻t1に上昇し始める。
【0036】
負荷電流Iload、すなわちモニタ電流Imが上昇して、時刻t2に、フォトリレー12のしきい値電流Ithを越えると、スイッチSW1がオンし、保護抵抗Rpがバイパスされる。保護抵抗Rpがバイパスされると、保護抵抗Rpでの電圧降下Vdが小さくなり、電源30の出力電圧Voutを、効率よく負荷40に供給することができる。その後、負荷40が出力電圧Voutにもとづいて、安定に駆動される。
【0037】
仮に、保護抵抗Rpが設けられていないとすると、充電電流Ichgは、図2に破線で示すように、急激に上昇して突入電流となる。本実施の形態に係る負荷駆動装置100においては、起動開始直後には、スイッチSW1がオフ状態であるため、保護抵抗Rpが平滑キャパシタCsと直列に接続された状態となっており、突入電流が好適に抑制されている。
【0038】
図1の突入電流防止回路10により、突入電流を好適に抑制するための条件をまとめると、以下の通りである。
平滑キャパシタCsに対する突入電流が発生しうるのは、出力電圧Voutが低く、負荷電流Iloadが流れない、もしくは流れても小さい状態である。したがって、平滑キャパシタCsおよび負荷40に、突入電流が発生しうる範囲の出力電圧Voutが供給された状態で、負荷40に流れる負荷電流の最大値をImaxとするとき、
Imax<Ith …(1)
が成り立てばよい。この場合、突入電流が発生しうる状態で、フォトリレー12のスイッチSW1はオンしないため、保護抵抗Rpを機能させて突入電流を防止することができる。
【0039】
また、出力電圧Voutが、突入電流が発生しうる範囲を超えて大きくなり、負荷40に供給された状態、すなわち通常の駆動状態において負荷40に流れる負荷電流の最小値をIminとするとき、
Imin>Ith …(2)
が成り立てばよい。式(2)が成り立てば、通常の駆動状態において、保護抵抗Rpが常にバイパスされるため、高効率駆動が実現できる。言い換えれば、負荷電流Iloadは、通常状態において、しきい値電流Ithよりも大きければその範囲で変動してもよい。
【0040】
このように、本実施の形態に係る突入電流防止回路10によれば、平滑キャパシタCsに対する突入電流を好適に防止しつつ、平滑キャパシタCsが充電されると、発光ダイオードD1の電流が増加する。発光ダイオードD1への電流増加にともない、スイッチSW1がオンされ、保護抵抗Rpがバイパスされる。その結果、保護抵抗Rpによる不要な電力消費を抑制することができるとともに、負荷に印加される電圧も高い状態を維持できる。
また、LEDランプに応用した場合は、LEDの数を直列に増やすことができ、より明るいランプを実現できる。すなわち、保護抵抗Rpの電圧降下分を、LED点灯電圧に有効利用できる。
【0041】
本実施の形態では、保護抵抗Rpをバイパスするために、フォトリレー12を利用している。このフォトリレー12は、発光ダイオードD1およびスイッチSW1で構成されているため、平滑キャパシタCsを保護するために必要な素子は、保護抵抗Rp、発光ダイオードD1、スイッチSW1で済み、非常に簡易な回路構成とすることができる。フォトリレーは、数ミリ角の非常に小さなものが利用できるため、突入電流防止回路10を設けたことによる回路面積の増大はわずかに抑えることができる。
【0042】
また、好適な回路保護を実現するために考慮すべき条件は、上記式(1)、(2)であるが、しきい値電流Ithは、負荷電流の最小値Iminに近い方がより安全であり、この上限を満たすフォトリレー12を選択して接続すればすむため、設計が非常に容易である。
【0043】
以下、比較対象となる回路に対する本実施の形態に係る突入電流防止回路10の優位性について説明する。
(第1の比較例) フォトリレー12を用いず、MOSFETで構成されるスイッチを保護抵抗Rpと並列に設けた場合
この場合、スイッチをオン、オフするために、負荷電流あるいは負荷電圧を検出し、これをコンパレータなどを利用してしきい値と比較し、スイッチのオンオフを制御する必要がある。この場合、スイッチをオンオフするための電源回路や制御回路が必要となり、部品点数の増加、それに伴う回路面積やコストの増大が問題となる。スイッチとしてサイリスタを利用した場合でも同様である。
【0044】
第1の比較例に対して、本実施の形態に係る突入電流防止回路10は、フォトリレー12を利用するため、スイッチとその制御回路が、出力側のスイッチSW1と入力側の発光ダイオードD1で構成されるという利点がある。
【0045】
(第2の比較例) 保護抵抗Rpの位置にサーミスタを設けた場合
この場合、温度の上昇とともに自動的に突入電流防止用に設けられた抵抗値が低下するため、スイッチを設ける必要がなくなる。しかし、サーミスタの温度が上昇している状態で、平滑キャパシタCsの電荷が放電されると、サーミスタの抵抗値が低い状態で充電が行われるため、突入電流が発生するおそれがある。また、サーミスタの抵抗値の変化量は、せいぜい数倍程度である。したがって、ある程度温度が上昇しても、抵抗値は数分の1に低下するにすぎず、損失の低減にも限度がある。
【0046】
第2の比較例に対して、実施の形態に係る突入電流防止回路10は、温度のように間接的な状態量ではなく、負荷の動作状態を直接モニタし、ひいては平滑キャパシタCsの充電状態を間接的にモニタして抵抗値を切り替えるため、突入電流の発生をより確実に防止することができる。また、スイッチSW1がオンした状態における電圧降下Vdは、フォトリレー12のスイッチSW1のオン抵抗に比例するが、このオン抵抗は、数十mΩから数Ω程度の範囲であるため、本実施の形態では、電圧降下Vdによる電力損失を、第2の比較例に対して低減することができる。
【0047】
なお、本実施の形態に係る突入電流防止回路10においては、以下の突入電流の防止方法が実現されている点に留意すべきである。その方法とは、
(1)電源30から平滑キャパシタCsを経て固定電圧端子に至る経路上に可変抵抗を設けるステップと、
(2)入力側のダイオードD1が平滑キャパシタCsの充電状態に応じた電流Imの経路上にフォトリレー12を設けるステップと、
(3)可変抵抗の抵抗値を、フォトリレー12の出力側のスイッチSW1のオンオフ状態に連動して変化せしめるステップと、を備える。
ここで、可変抵抗(抵抗値切り替え部)は、保護抵抗RpおよびスイッチSW1を含んでおり、スイッチSW1のオンオフに連動して、抵抗値が切り替えられる。また、平滑キャパシタCsの充電状態として、平滑キャパシタCsにて平滑化された電圧Voutによって駆動される負荷40の電流Iloadを、モニタ電流Imによってモニタしている。スイッチSWのオン状態における可変抵抗の抵抗値は、オフ状態における可変抵抗の抵抗値より低く設定される。したがって、この方法を実現しうる回路は、本発明の範囲に含まれる。
【0048】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、一般的な負荷の駆動回路について説明した。第2の実施の形態では、突入電流防止回路10を利用した回路として、負荷にLEDが設けられた発光装置について説明する。
【0049】
図3は、第2の実施の形態に係る発光装置200の構成を示す回路図である。発光装置200は、複数のLED42を含む負荷40と、複数のLED42を駆動するためのLED駆動回路100aを備える。
【0050】
LED駆動回路100aは、電源30、定電流回路20、突入電流防止回路10、平滑キャパシタCsを含む。電源30は交流電源34および整流回路36を含む。交流電源34は交流電圧Vacを生成し、整流回路36は交流電圧Vacを整流する。交流電圧Vacとして、商用交流電圧を利用する場合、交流電源34はLED駆動回路100aの外部に設けられる。
【0051】
整流回路36の出力端子は、電源30の出力端子32となっている。したがって、整流回路36の出力の電圧が、平滑キャパシタCsによって平滑化され、出力電圧Voutとして負荷40に供給される。
LED42の輝度を一定に保つためには、定電流駆動する必要がある。そこで、所定の定電流Icを生成する定電流回路20が、LED42の駆動経路上に設けられる。この定電流Icは、負荷電流Iloadと一致する。定電流回路20の構成は特に限定されるものではなく、公知の回路を利用すればよい。または、定電流ダイオードを利用してもよい。負荷電流Iloadを所定の値に設定するために、電流経路上にスイッチング素子を設け、PWM(パルス幅変調)信号にもとづいてスイッチング駆動し電流を調節する機構を設けてもよい。
【0052】
第1の実施の形態で説明したように、突入電流防止回路10は、フォトリレー12、保護抵抗Rpを含む。保護抵抗Rpは、電源30の第1の端子から平滑キャパシタCsを経て電源30の第2の端子に至る経路上に設けられる。本実施の形態においても、保護抵抗Rpは、平滑キャパシタCsの低電圧側に設けられているが、これを平滑キャパシタCsの高電圧側に設けてもよい。
【0053】
フォトリレー12の入力側の発光ダイオードD1は、負荷40の駆動経路上に、負荷40および定電流回路20と直列に設けられる。また、スイッチSW1は、保護抵抗Rpと並列に接続される。本実施の形態においても、モニタ電流Imは、負荷電流Iloadである。また、本実施の形態においても、負荷40およびフォトリレー12の入力側の発光ダイオードD1は、平滑キャパシタCsと並列に接続されている。フォトリレー12のしきい値電流Ithは、Ith<Icとなるように設定する。
【0054】
負荷40には、n(nは自然数)個のLED42が接続されている場合、LED42に定電流Icが流れている状態(以下、安定駆動状態という)における定電流回路20の電圧降下をVcs、フォトリレー12の発光ダイオードD1の順方向しきい値電圧をVf’とするとき、
Vout=Vd+Vcs+Vf’+Vload
が成り立つ。また、負荷電圧Vloadは、
Vload=n×Vf
で与えられる。
【0055】
上述のように、Ic>Ithが成り立つため、所定の定電流Icが流れてLED42が発光している状態においては、フォトリレー12のスイッチSW1はオン状態となる。スイッチSW1のオン抵抗をRonとするとき、安定駆動状態における保護抵抗Rpの両端の電圧降下Vdは、
Vd=(Rp//Ron)×Ic
で与えられる一定値となる。なお、(Rp//Ron)はRpとRonの並列合成抵抗を表す。さらに、所定の電流が流れているときの発光ダイオードD1の順方向しきい値電圧Vf’も一定値をとる。
【0056】
したがって、ある出力電圧Voutが与えられるとき、LED42の個数nは、
n≦(Vout−Vd−Vcs−Vf’)/Vf
となる。商用交流電圧を整流する場合、出力電圧Voutは、140Vとなる。具体的な数値を例示すれば、Vout=140V、Ic=20mA、Rp//Ron=10Ω、Vcs=4V、Vf’=1V、Vf=3Vのとき、n≦44.9となる。LED42の個数は、電力の有効利用の観点から見ればなるべく大きい方が望ましいため、n=44個となる。
【0057】
以上のように構成されたLED駆動回路100aの動作について説明する。図4は、図3のLED駆動回路100aの動作状態を示すタイムチャートである。図4は、上から順に、交流電圧Vac、出力電圧Vout、充電電流Ichg、負荷電流Iload、スイッチSW1のオンオフ状態を示す。なお、破線Ichg’は、保護抵抗Rpが設けられていないときの突入電流を示している。
【0058】
時刻t1に、交流電圧Vacが0Vから上昇し始め、これに伴い、整流回路36の出力も、破線Vout’で示される波形に従って上昇する。その結果、充電電流Ichgが流れはじめ、平滑キャパシタCsの充電が開始される。平滑キャパシタCsの充電とともに、出力電圧Voutが上昇する。
【0059】
時刻t2に、負荷電流Iloadが、フォトリレー12のしきい値電流を超えると、スイッチSW1がオンする。
【0060】
本実施の形態に係るLED駆動回路100aによれば、出力電圧Voutが低い状態、すなわち突入電流が発生しうる状態においては、LED42に電流が流れないため、スイッチSW1はオフとなり、保護抵抗Rpによって突入電流が抑制される。その後、出力電圧Voutが上昇して負荷電流Iloadがしきい値を超えるとスイッチSW1がオンし、保護抵抗Rpの両端の電圧降下Vdが低減される。
【0061】
このように、本実施の形態に係る突入電流防止回路10は、LEDの駆動回路に好適に用いることができる。
【0062】
上述の実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0063】
実施の形態では、フォトリレー12の発光ダイオードD1を負荷電流Iloadの経路上に配置し、負荷電流Iloadをモニタする場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、モニタ電流Imは、負荷40の状態をモニタできればよいため、負荷電流Iloadに比例した電流であってもよい。図5は、変形例に係る突入電流防止回路10aの構成の一部を示す回路図である。図5の突入電流防止回路10aにおいて、負荷40に流れる負荷電流Iloadをk倍するカレントミラー回路44が設けられている。フォトリレー12の発光ダイオードD1は、カレントミラー回路44の出力側の電流経路上に接続され、電流Im=k×Iloadをモニタする。
【0064】
たとえば、負荷40に流れる負荷電流Iloadがフォトリレー12の定格電流を超える場合には、負荷電流Iloadをカレントミラー回路を利用してk(k<1)倍すればよい。あるいは、フォトリレー12のしきい値電流は一定であるため、ミラー比kを調節することにより、負荷電流Iloadに対する見かけ上のしきい値電流を調節することができる。
【0065】
図11は、別の変形例に係る突入電流防止回路10eの構成の一部を示す回路図である。突入電流防止回路10eは、図5の突入電流防止回路10aと同様に、負荷電流Iloadがフォトリレー12の定格入力電流より大きい場合に好適に使用される。
フォトリレー12は、発光ダイオードD1と直列に接続された抵抗成分R1を含む。図11の突入電流防止回路10eは、フォトリレー12の発光ダイオードD1(および抵抗成分R1)と並列に設けられた発光ダイオードD3を備える。つまり、負荷40に流れる負荷電流Iloadは、発光ダイオードD1と発光ダイオードD3に分岐する。その結果、発光ダイオードD1には、発光ダイオードD1および抵抗成分R1と発光ダイオードD3により定まる分流比kに応じた電流Im=k×Iloadが流れる。具体的には、発光ダイオードD1、D3の抵抗値をそれぞれr1、r3と書くとき、k=r3/(r1+r3+R1)となる。図11の突入電流防止回路10eによれば、フォトリレー12の入力側に並列に負荷の発光ダイオードD3を挿入することで、フォトリレー12の入力側の定格電流に適応できる。
【0066】
さらに、実施の形態では、負荷電流Iloadに応じた電流にもとづき、フォトリレー12を制御する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。負荷電流Iloadは、平滑キャパシタCsの充電状態、すなわち平滑キャパシタCsの電圧を示す状態量の一例であり、平滑キャパシタCsの電圧に応じた電流にもとづいて、フォトリレー12を制御する構成であればよい。たとえば、平滑キャパシタCsの電圧を電流に変換する電圧電流変換回路を設け、フォトリレー12の発光ダイオードD1を電圧電流変換回路の出力電流の経路上に設けてもよい。
【0067】
実施の形態では、フォトリレー12をひとつだけ設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。図6は、複数のフォトリレー12を備える変形例に係る突入電流防止回路10bの回路図を示す。図6の回路では、出力電圧Voutによって、複数の経路に分岐した負荷40a、40bが駆動される。複数のフォトリレー12a、12bの入力側の発光ダイオードD1a、D1bは、負荷40a、40bの駆動経路上に配置される。フォトリレー12a、12bの出力側のスイッチSW1a、SW1bは、保護抵抗Rpに対して、並列に接続される。
【0068】
図6の回路では、出力電圧Voutがある程度大きくなり、負荷40a、40bの少なくとも一方が駆動されて負荷電流Iloada、Iloadbのいずれかが流れれば、保護抵抗Rpをバイパスすることができる。この回路は、負荷40a、40bの少なくとも一方が駆動されている状態において、突入電流が発生しない場合に有効である。
【0069】
図7は、複数のフォトリレー12を備える突入電流防止回路10の別の構成を示す回路図である。図7の突入電流防止回路10cは、2つの保護抵抗Rpa、Rpbを備える。2つのフォトリレー12a、12bのスイッチSW1a、SW1bは、それぞれ保護抵抗Rpa、Rpbと並列に接続される。
【0070】
この突入電流防止回路10cでは、直列接続される保護抵抗RpaおよびRpbが、平滑キャパシタCsに対する突入電流の防止に寄与する。したがって、たとえば負荷40aのみが駆動されるとき、保護抵抗は、Rpbのみとなり、負荷40bのみが駆動されるとき、保護抵抗はRpaのみとなり、いずれも駆動されていないときには、保護抵抗はRpa+Rpbとなる。したがって、負荷の駆動状態に応じて、保護抵抗の値を変化させることができる。また、負荷40a、40bの両方が駆動され、負荷電流の合計が大きいときには、保護抵抗Rpa、Rpbがともにバイパスされるため、電力損失を好適に低減することができる。
【0071】
図8は、複数のフォトリレー12を備える突入電流防止回路のさらに別の構成を示す回路図である。図8の回路では、複数のフォトリレー12a、12bの入力側の発光ダイオードD1a、D1bが、負荷40と同一経路上に直列に接続される。また、平滑キャパシタCsの経路上には、保護抵抗Rpa、Rpbが直列に設けられており、フォトリレー12a、12bの出力側のスイッチSW1a、SW1bが、保護抵抗Rpa、Rpbに対して並列に接続されている。フォトリレー12aとフォトリレー12bは、異なるしきい値電流Ith1、Ith2を有している。
【0072】
図8の回路によれば、負荷40に流れる負荷電流Iloadが変化する場合に、保護抵抗Rpの抵抗値を、負荷電流Iloadに応じて段階的に切り替えることができる。一般に、負荷電流Iloadは、出力電圧Voutの大きさに応じて変化する。そこで、出力電圧Voutが低い状態、すなわち突入電流が発生するおそれが高い場合には、負荷電流Iloadは低くなり、Iload<Ith1<Ith2となって、保護抵抗の値は、Rpa+Rpbとなり、突入電流の防止能力が高くなる。
【0073】
出力電圧Voutの上昇にともない負荷電流Iloadが増加し、Ith1<Iload<Ith2となると、スイッチSW1aがオンし、保護抵抗の値はRpbとなる。この状態では、保護抵抗Rpbによって突入電流が抑制されるとともに、保護抵抗Rpaによる電力損失が低減されている。
【0074】
さらに出力電圧Voutが上昇し、Ith1<Ith2<Iloadとなると、スイッチSW1a、SW1bがともにオンし、保護抵抗Rpa、Rpbがともにバイパスされ、電力損失がさらに低減される。
【0075】
このように図8の突入電流防止回路10dによれば、負荷電流Iloadが変化するような負荷に対して、突入電流の抑制と、電力損失の低減の機能を発揮することができる。
【0076】
(第3の実施の形態)
第1、第2の実施の形態では、平滑キャパシタに対する突入電流の防止技術について説明した。つまり、装置、回路の起動時の動作に着目した技術である。これに対して、第3の実施の形態では、装置、回路の使用後、あるいは停止時の動作に着目した技術について説明する。
【0077】
図3の発光装置200について検討する。上述したように、平滑キャパシタCsには、商用交流電圧を平滑化した電圧(Vout)が印加され、印加された電圧に比例した電荷が蓄えられる。ここで、LEDなどの負荷40の駆動を停止する場合、電源30を停止する。
【0078】
電源30の停止後、出力電圧VoutがVf×nより幾分高い場合には、各LED42に順方向しきい値電圧Vfを超える電圧が印加されるため、LED42に順方向電流が流れて平滑キャパシタCsから電荷が放電される。ところが、放電によって出力電圧Voutがある程度まで下がると、各LED42に印加される電圧が順方向しきい値電圧Vfより小さくなるため、LED42は遮断、もしくはハイインピーダンス状態となる。すなわち、平滑キャパシタCsに蓄えられた電荷は放電経路を失い、出力電圧VoutがVf×n付近より低下せず、高電圧が残留するという問題がある。
【0079】
たとえば図3の発光装置200が照明として利用される状況では、ユーザがLEDを交換する場合が想定される。この場合に、平滑キャパシタCsに電荷が蓄えられていると、ユーザが感電するおそれがある。かかる問題は負荷40がLED42以外の場合にも発生しうる。第3の実施の形態は、こうした問題を解決する技術を提供する。
【0080】
図9は、第3の実施の形態に係る発光装置200bの構成を示す回路図である。以下、図9の発光装置200bについて、図3の発光装置200との相違点を中心に説明する。発光装置200bは、図3の発光装置200に比べてさらに、放電制御スイッチSWdis、放電用抵抗Rdis、電源スイッチSWpを備える。
【0081】
負荷駆動装置100bの整流回路36は、ダイオードブリッジで構成される。放電制御スイッチSWdisは、ダイオードブリッジの直流側の正負の端子P5、P6の間に接続される。別の見方をすれば、放電制御スイッチSWdisは、平滑キャパシタCsの両端の間に設けられる。放電制御スイッチSWdisは、負荷40の駆動中にオフ状態となり、駆動停止後にオン状態となる。電源スイッチSWpは、電源30bによる交流電圧Vacの供給を制御するスイッチである。電源スイッチSWpがオンすると、負荷40に出力電圧Voutが供給され、LED42が点灯する。電源スイッチSWpがオフすると、交流電圧Vacが遮断されるため、負荷40への電力供給が停止し、LED42が消灯する。したがって、放電制御スイッチSWdisのオン、オフを、電源スイッチSWpのオン、オフと連動させ、一方がオンのとき他方がオフとなるように制御してもよい。なお、電源スイッチSWp、放電制御スイッチSWdisは、機械的なスイッチでもよいし、電子的なスイッチであってもよい。機械的なスイッチを利用する場合には、装置を安価に構成することができる。
【0082】
放電用抵抗Rdisは、ダイオードブリッジの直流側の正負の端子P5、P6の間に、放電制御スイッチSwdisと直列に設けられる。
【0083】
図9の発光装置200bの動作について説明する。電源スイッチSWpをオンすると、放電制御スイッチSWdisがオフし、発光装置200bは図3の発光装置200と同様に動作する。
電源スイッチSWpをオフすると、負荷40に対する電力供給が停止し、LED42が消灯する。このとき、放電制御スイッチSWdisがオンするため、放電制御スイッチSWdisと放電用抵抗Rdisによって、平滑キャパシタCsに蓄えられた電荷の放電経路が形成される。平滑キャパシタCsに蓄えられた電荷は、放電制御スイッチSWdis、放電用抵抗Rdisを介して放電されるため、出力電圧Voutを0V付近まで低下させることができる。
【0084】
このように、図9の発光装置200bによれば、放電制御スイッチSWdisを設け、負荷40の非駆動状態にオンすることにより、平滑キャパシタCsに高電圧が残留するという問題を解決することができる。
さらに、放電経路上に放電用抵抗Rdisを設けることにより、CR時定数が調節されるため、出力電圧Voutが0Vまで低下するまでの時間を好適に調節することができる。なお、放電制御スイッチSWdisのオン抵抗が十分に大きい場合や、出力電圧Voutを急速に低下させたい場合には、放電用抵抗Rdisを省略してもよい。
【0085】
図10は、第3の実施の形態に係る発光装置の別の構成の一部を示す回路図である。図10の回路図では、電源30および負荷40の駆動経路上の定電流回路20やフォトリレー12を省略している。図10の発光装置200cは、放電用フォトリレー50を備える。放電用フォトリレー50は、入力側の発光ダイオードD2と、出力側のスイッチSW2を含む。この放電用フォトリレー50では、入力側の発光ダイオードD2に電流が流れて発光すると、出力側のスイッチSW2がオフし、発光ダイオードD2に電流が流れないとき、スイッチSW2がオンする。すなわち、図1や図3のフォトリレー12とは逆の動作をする。このようなフォトリレーは市販されている。
【0086】
図10の発光装置200cでは、図9の放電制御スイッチSWdisが放電用フォトリレー50で構成される。すなわち、放電用フォトリレー50のスイッチSW2が放電制御スイッチSWdisとして、平滑キャパシタCsの両端に、放電用抵抗Rdisと直列に接続される。図10において、放電用抵抗Rdisは、図9と同様に放電速度を調節する役割を果たす。入力側の発光ダイオードD2は、負荷40(LED42)の駆動経路上に配置される。
【0087】
図10の発光装置200cの動作を説明する。LED42を消灯するために電源30を停止し、しばらくすると発光ダイオードD2に電流が流れなくなる。その結果、スイッチSW2がオンし、放電用抵抗Rdis、スイッチSW2を介して平滑キャパシタCsの電荷が放電され、出力電圧Voutが0Vまで低下していく。したがって、図10の発光装置200cによっても、図9の発光装置200bと同様に、平滑キャパシタCsに高電圧が残留するという問題を解決することができる。
【0088】
さらに、図10の発光装置200cでは、放電経路を負荷40側に設けることになるため、スイッチSW2、放電用抵抗Rdisの設置が容易になるという利点がある。すなわち、たとえば図10の発光装置200cが天井などに固定照明として利用される場合、放電用抵抗Rdis、放電用フォトリレー50、定電流回路(不図示)をモジュール化すれば、壁に放電制御スイッチSWdisを設置する工事が不要となり便宜である。
【0089】
また図10の回路では、放電用抵抗Rdisが小さすぎる場合、LED42、放電用フォトリレー50の発光ダイオードD2に電流が流れない。したがって、起動直後において放電用フォトリレー50のスイッチSW2はオン状態を維持し、LED42は点灯できなるなるという問題がある。したがって、放電用抵抗Rdisの抵抗値は、負荷40の合成動作抵抗より大きくする必要がある。
【0090】
第3の実施の形態では、図9、図10を参照しながら、平滑キャパシタCsの残留電圧の放電機構について説明した。図9、図10では、いずれも負荷40としてLED42を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、非駆動状態においてハイインピーダンスとなる様々なデバイスを負荷として駆動する負荷駆動装置100に利用することができる。
【0091】
また、図9、図10の回路では、第1、第2の実施の形態で説明したフォトリレー12を用いた突入電流防止機構とともに、放電制御スイッチSWdisを利用した平滑キャパシタCsの放電機構を設ける場合について説明した。しかし、本発明のある態様では、これに限定されるものではなく、突入電流防止機構を備えない回路においても、放電制御スイッチSWdisを設けることにより、残留電圧を無くする効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1の実施の形態に係る負荷駆動装置の構成を示す回路図である。
【図2】負荷駆動装置の動作状態を示すタイムチャートである。
【図3】第2の実施の形態に係る発光装置の構成を示す回路図である。
【図4】図3のLED駆動回路の動作状態を示すタイムチャートである。
【図5】変形例に係る突入電流防止回路の構成の一部を示す回路図である。
【図6】複数のフォトリレーを備える突入電流防止回路の変形例を示す図である。
【図7】複数のフォトリレーを備える突入電流防止回路の別の構成を示す回路図である。
【図8】複数のフォトリレーを備える突入電流防止回路のさらに別の構成を示す回路図である。
【図9】第3の実施の形態に係る発光装置の構成を示す回路図である。
【図10】第3の実施の形態に係る発光装置の別の構成の一部を示す回路図である。
【図11】別の変形例に係る突入電流防止回路の構成の一部を示す回路図である。
【符号の説明】
【0093】
10 突入電流防止回路、 12 フォトリレー、 20 定電流回路、 30 電源、 32 出力端子、 34 交流電源、 36 整流回路、 40 負荷、 42 LED、 44 カレントミラー回路、 D1 発光ダイオード、 SW1 スイッチ、 100 負荷駆動装置、 100a LED駆動回路、 200 発光装置、 Rp 保護抵抗、 Cs 平滑キャパシタ、 SWdis 放電制御スイッチ、 Rdis 放電用抵抗、 50 放電用フォトリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のノードの電圧を平滑化するための平滑キャパシタに対する突入電流を防止する突入電流防止回路であって、
電源から前記平滑キャパシタを経て別の端子に至る経路上に設けられた保護抵抗と、
入力側の発光ダイオードが、前記平滑キャパシタにより平滑された電圧により駆動される負荷の電流に応じた電流の経路上に設けられ、出力側のスイッチ素子が、前記保護抵抗と並列に接続されたフォトリレーと、
を備えることを特徴とする突入電流防止回路。
【請求項2】
前記フォトリレーの前記入力側の発光ダイオードは前記負荷の電流の経路上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の突入電流防止回路。
【請求項3】
前記フォトリレーの前記入力側の発光ダイオードと並列に設けられた第2の発光ダイオードをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の突入電流防止回路。
【請求項4】
所定のノードの電圧を平滑化するための平滑キャパシタに対する突入電流を防止する突入電流防止回路であって、
電源から前記平滑キャパシタを経て別の端子に至る経路上に設けられた可変抵抗と、
入力側の発光ダイオードが前記平滑キャパシタの充電状態に応じた電流の経路上に設けられたフォトリレーと、
を備え、
前記可変抵抗の抵抗値を、前記フォトリレーの出力側のスイッチ素子のオンオフ状態に連動して変化せしめるとともに、前記スイッチ素子のオン状態における前記可変抵抗の抵抗値を、オフ状態における前記可変抵抗の抵抗値より低く設定することを特徴とする突入電流防止回路。
【請求項5】
前記平滑キャパシタの充電状態に応じた電流とは、前記平滑キャパシタにて平滑化された電圧によって駆動される負荷の電流に応じた電流であることを特徴とする請求項4に記載の突入電流防止回路。
【請求項6】
交流電圧を整流する整流ブリッジ回路と、
前記整流ブリッジ回路の出力電圧を平滑化し、駆動対象の負荷へと供給する平滑キャパシタと、
前記整流ブリッジ回路の直流側の第1端子から前記平滑キャパシタを経て前記整流ブリッジ回路の直流側の第2端子に至る経路上に設けられた保護抵抗と、
入力側のダイオードが前記負荷の駆動経路上に設けられ、出力側のスイッチ素子が前記保護抵抗と並列に接続されたフォトリレーと、
を備えることを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項7】
前記負荷および前記フォトリレーの出力側のスイッチ素子と同一経路上に設けられた定電流回路をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の負荷駆動回路。
【請求項8】
前記平滑キャパシタは、一端が前記整流ブリッジ回路の直流側の第1端子に接続され、
前記保護抵抗は、一端が前記整流ブリッジ回路の直流側の第2端子に接続され、他端が前記平滑キャパシタの他端に接続されており、
前記負荷および前記フォトリレーの入力側のダイオードを、前記平滑キャパシタと並列に接続したことを特徴とする請求項6に記載の負荷駆動回路。
【請求項9】
前記整流ブリッジ回路は、ダイオードブリッジを含み、
負荷駆動回路はさらに、前記ダイオードブリッジの直流側の正負の端子の間に接続された放電制御スイッチをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の負荷駆動回路。
【請求項10】
前記ダイオードブリッジの直流側の正負の端子の間に、前記放電制御スイッチと直列に設けられた放電用抵抗をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の負荷駆動回路。
【請求項11】
前記放電制御スイッチは、
入力側の発光ダイオードと出力側のスイッチ素子を含むフォトリレーで構成され、
前記スイッチ素子を、前記放電制御スイッチとして、前記ダイオードブリッジの直流側の正負の端子の間に、前記発光ダイオードを、前記負荷の駆動経路上に配置したことを特徴とする請求項9に記載の負荷駆動回路。
【請求項12】
前記フォトリレーの前記スイッチ素子と直列に接続された放電用抵抗をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の負荷駆動回路。
【請求項13】
前記駆動対象の負荷は、非駆動状態においてハイインピーダンスとなるデバイスであることを特徴とする請求項6から12のいずれかに記載の負荷駆動回路。
【請求項14】
前記駆動対象の負荷は、直列に接続された複数の発光ダイオードであることを特徴とする請求項6から12のいずれかに記載の負荷駆動回路。
【請求項15】
直列に接続された複数の発光ダイオードと、
前記複数の発光ダイオードを前記駆動対象の負荷として駆動する請求項6から13のいずれかに記載の負荷駆動回路と、
を備えることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−125339(P2008−125339A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149635(P2007−149635)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】