説明

突起シート及び突起シートの製造方法

【課題】使用状態において基材シートから突起が外れる虞れを有効に回避し、長期に亘って良好な状態で使用可能な突起シート、及び該突起シートの製造方法を提供する。
【解決手段】基材シート2の表面に複数の突起3,3…を並設してある突起シート1において、基材シート2の裏面に当接する芯体4,4…を基材シート2と共に表面側に突出させて複数の突起3,3…を構成し、これらの突起3,3…の外れを、芯体4,4…の表面を覆う基材シート2の作用により防止できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、視覚障害者の誘導を目的として路面に敷設して使用される突起シート、及びこの突起シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歩道、公共施設内の通路、駅の構内、プラットホーム等、不特定多数の歩行者が通行する路面には、主として視覚障害を有する歩行者の誘導を目的とする誘導ラインが設けられている。この誘導ラインは、路面上に複数の突起を並設してなり、足裏での触感により、場所、方向、警告等の各種の情報を歩行者に伝えるようにしている。
【0003】
また道路上には、歩道と車道とを区分けする境界ラインが敷設されているが、この種の境界ラインの敷設においても同様に、路面上に複数の突起を並設することにより、滑り止め効果が得られるようにしている。
【0004】
本願出願人は、前述した誘導ラインを簡易にしかも確実に敷設する方法を、特許文献1に提案している。この方法においては、所望の形状、個数の突起を一面に並設してある突起シートを用い、まず、敷設面上にライン形成用の塗料を塗布してライン本体を形成し、次に前記突起シートを、突起の形成面を上向きとして前記塗料が硬化する前のライン本体上に載置し、硬化した塗料により前記突起シートを保持させて、該突起シートが備える突起をライン本体上に配置するようにしている。この方法は、突起を備える境界ラインの敷設においても適用可能である。
【0005】
突起シートは、不織布、ネット等の多孔質の基材シートの一面に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂材料により成形された突起を縦横に並べて設けてなる。このような突起シートをライン本体上に載置した場合、多孔質の基材シートの上面に塗料が滲み出した状態で硬化することから、ライン本体と突起シートとが強固に一体化される。従って、敷設面に塗料を塗布してライン本体を形成する工程、即ち、一般的なライン敷設の工程の実施後、形成されたライン本体上に突起シートを載置する工程を加えるだけで、該突起シートが備える複数の突起がライン本体の形成域全体に亘って並び、誘導ライン又は境界ラインを簡易に敷設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2847157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、以上のような誘導ライン又は境界ラインの敷設に使用する突起シートは、所望の突起形状を凹部として備える金型を基材シートの一面側に重ね、夫々の凹部内に樹脂材料を注入して硬化させ、前記一面上に個々の凹部に対応する突起を形成する手順により製造されている。
【0008】
このように製造される突起シートにおいて、夫々の突起と基材シートとは、突起を形成する樹脂材料が基材シート中に浸透して硬化することで一体化されているが、この一体化は、樹脂材料の浸透域内で生じているに過ぎない。従って、裁頭円錐形、半球形等の形状を有する小サイズの突起が縦横に並設してある突起シートにおいては、個々の突起と基材シートとの一体化が不十分であり、前述した誘導ライン又は境界ラインとしての使用状態において、歩行者の踏圧力等の外力の作用により、一部の突起が基材シートから外れ、見栄えの悪化を招くという問題がある。
【0009】
また以上の如き突起シートは、夫々の突起の組み合わせにより点字を構成し、視覚障害者に各種の情報を伝える点字シートとして使用され得るが、このような使用形態において前述した突起の外れが生じた場合、点字機能の喪失により、情報伝達の目的を果たし得なくなる。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、使用状態において基材シートから突起が外れる虞れを有効に回避し、長期に亘って良好な状態で使用可能な突起シート、及び該突起シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る突起シートは、基材シートの表面に複数の突起を並設してある突起シートにおいて、前記複数の突起は、前記基材シートの裏面に当接する各別の芯体を、前記基材シートと共に表面側に突出させて形成してあることを特徴とする。
【0012】
この発明においては、基材シートの表面に並ぶ複数の突起を、裏面に当接する芯体により基材シートを表面側に押し上げて形成する。このように形成される突起は、芯体の表面が基材シートにより覆われた状態にあり、例えば、誘導ライン、点字シートとしての使用状態において外力の作用により外れ難く、長期に亘って良好な使用状態を維持することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る突起シートは、前記基材シートが、多孔質のシートであり、前記芯体が、樹脂製であって、前記基材シートの孔内に浸透した状態で硬化することにより、前記基材シートと一体化されていることを特徴とする。
【0014】
この発明においては、多孔質の基材シートが有する多数の小孔内に樹脂製の芯体が浸透して硬化し、基材シートと芯体とが強固に一体化されて突起を形成しており、使用状態での突起の外れを一層確実に防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る突起シートは、前記基材シートが、樹脂製のシートであり、前記芯体が、樹脂製であって、前記基材シートの接触部を溶融させて共に硬化することにより、前記基材シートと一体化されていることを特徴とする。
【0016】
この発明においては、樹脂製の基材シートと樹脂製の芯体とが、接触部において溶融して共に硬化することにより一体化されて突起を形成しており、使用状態での突起の外れを一層確実に防止することができる。
【0017】
本発明に係る突起シートの製造方法は、基材シートの表面に複数の突起を並設してある突起シートを製造する方法において、前記複数の突起の夫々に対応する凹部を合わせ面に並設してある凹型と、前記凹部の夫々に対応する注入孔を合わせ面に開設してある平型との間に前記基材シートを挾持し、前記注入孔の夫々に樹脂を注入し、前記基材シートを押し拡げつつ前記凹部の夫々に充填して硬化させ、硬化樹脂が形成する芯体を前記基材シートと共に突出させて前記複数の突起を形成することを特徴とする。
【0018】
この発明においては、凹型と平型との間に基材シートを挾持して、平型に設けた注入孔から樹脂を注入し、該樹脂が、基材シートを押し拡げつつ、凹型に設けた凹部内に充填されて硬化することにより芯体を形成するから、一般的な樹脂の射出成形の手順により、基材シートの表面側に、芯体と共に基材シートが突出する突起を、簡易にしかも確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る突起シートにおいては、基材シートの表面に並ぶ突起が、裏面に当接する芯体により基材シートと共に表面側に押し上げて形成されているから、誘導ライン、点字シートとしての使用状態において、基材シートから突起が外れる虞れを有効に回避し、見栄えの悪化、点字機能の喪失等の不具合を生じることなく、長期に亘って良好な状態を維持することが可能となる。
【0020】
また本発明に係る突起シートにおいては、多孔質の基材シートと樹脂製の芯体との組み合わせ、又は、樹脂製の基材シートと樹脂製の芯体との組み合わせにより、芯体と基材シートとが強固に一体化された突起を形成したから、使用状態での突起の外れを一層確実に防止し、長期に亘って良好な状態を維持することが可能となる。
【0021】
更に本発明に係る突起シートの製造方法においては、以上の効果が得られる突起シートを、一般的な樹脂の射出成形の手順により簡易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る突起シートの斜視図である。
【図2】図1に示す突起シートの要部の拡大断面図である。
【図3】突起シートの製造方法の説明図である。
【図4】突起シートを使用してなる誘導ラインの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、実施の形態に係る突起シートの斜視図、図2は、図1に示す突起シートの要部の拡大断面図である。
【0024】
図1に示すように突起シート1は、基材シート2の一面(表面)に複数の突起3,3…を備えている。これらの突起3,3…は、裁頭円錐状をなし、基材シート2の一面上で、相互間に一定の間隔を隔てて縦横に並設されている。
【0025】
図2に示すように突起3,3…は、夫々に対応する裁頭円錐形の芯体4の小径側端部を基材シート2の他面(裏面)に当て、該芯体4により基材シート2を表面側に押し上げ、基材シート2と共に表面側に突出させるように形成されている。図1中には、各突起3を形成する芯体4を破線により示してある。なお、突起3の形状は、図1に示す形状に限らず、円形又は長円形の柱状、半球状等の適宜の形状とすることができ、また突起3,3…の並設態様も、図1に示す態様に限らず適宜に設定することができる。
【0026】
図3は、突起シートの製造方法の説明図である。突起シート1の製造においては、図示のような凹型5及び平型6を使用する。凹型5及び平型6は、夫々と型合わせするための合わせ面を有しており、凹型5の合わせ面(図3における上面)には、突起3の外形に対応する複数の凹部50,50…が、突起3,3…と同一の態様にて並設され、また平型6の合わせ面(図3における下面)には、凹型5に設けた前記凹部50,50…の略中央に整合するように注入孔60,60…が開設してある。
【0027】
突起シート1の製造は、まず、図3Aに示すように、凹型5及び平型6を、夫々の合わせ面が上下に対向するように配置し、これらの間に基材シート2を位置決めした後、図3A中に矢符により示すように凹型5と平型6とを接近させて、図3Bに示すように、両型5,6の合わせ面間に基材シート2を挾持する。
【0028】
次に、図3B中に矢符により示すように、平型6に設けた注入孔60.60…に溶融した樹脂を注入する。注入孔60.60…は、凹型5に設けた凹部50,50…の略中央に夫々整合しており、各注入孔60に注入される樹脂は、夫々の開口端を覆う基材シート2を押し拡げつつ対応する凹部50内に射出され、該凹部50を密に満たすように充填されて、各凹部50の内面に基材シート2を密着させた状態で硬化する。
【0029】
これにより、図3Cに示すように、凹型5に設けた複数の凹部50,50…の夫々において、硬化した樹脂を芯体4とし、該芯体4の外側が基材シート2で覆われた突起3が形成される。この後、凹型5と平型6とを分離し、基材シート2を取り外すことにより、図1、図2に示すように、基材シート2の表面に突起3,3…が並設された突起シート1が製造される。
【0030】
基材シート2は、全面に微小な孔を多数備える多孔質のシートであるのが望ましい。この種の基材シート2を使用した場合、前述した製造の過程において凹部50内に射出される樹脂材料は、基材シート2の接触部位に存在する小孔内に浸透した状態で硬化するから、硬化後に形成される芯体4は、基材シート2と強固に一体化される上、この一体化は、裁頭円錐形をなす芯体4の天面及び側面において生じるから、突起シート1の表面に並ぶ突起3,3…は、使用状態で加わる外力の作用により外れる虞れが小さい。
【0031】
基材シート2を構成する多孔質のシートは、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等から選択される1種又は複数種の樹脂繊維を使用した不織布製のシートとすることができる。この種の基材シート2は、柔軟性、耐久性、耐候性等、用途に応じた種々の特性を持たせることができる。
【0032】
また、芯体4を構成する樹脂材料は、ABS樹脂,AES樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂等、射出成形に適した樹脂材料の1種又は複数種を、要求される特性に応じて適宜選択して用いることができる。
【0033】
基材シート2は、芯体4と同種又は異種の樹脂材料からなる非多孔質のシートであってもよい。この種の基材シート2は、凹部50内に射出される樹脂材料と接触し、一部が溶融して一体に硬化するから、基材シート2と芯体4とが強固に一体化された突起3,3…を形成することができる。
【0034】
以上のように構成された突起シート1は、歩道、公共施設内の通路、駅の構内及びプラットホーム等、不特定多数の歩行者が通行する路面上に、視覚障害者の誘導を目的とする誘導ラインを敷設する用途に使用される。
【0035】
図4は、突起シート1を使用してなる誘導ラインの斜視図である。本図に示すように誘導ラインは、敷設対象となる路面7に塗料を塗布してライン本体8を形成した後、塗料が硬化する前のライン本体8上に、突起3,3…が並設された表面を上向きとして突起シート1を載置し、更に、該突起シート1をライン本体8に弱く押し付ける手順により敷設される。
【0036】
ライン本体8を形成する塗料は、例えば、道路面上に各種の区画線を形成することを目的として広く使用されている常温硬化性の塗料である。ライン本体8上に載置された突起シート1は、硬化するライン本体8に保持され、この突起シート1が備える突起3,3…が、ライン本体8の上に突出する状態で並ぶ誘導ラインを構成することができる。
【0037】
突起シート1が、前述した不織布等の多孔質の基材シート2を備える場合、ライン本体8を形成する塗料が多数の小孔を経て基材シート2の上面に滲み出した状態で硬化することから、ライン本体8と突起シート1とは強固に一体化される。また、突起シート1が備える突起3,3…は、基材シート2を裏面側から当接する芯体4,4…により押し上げ、該基材シート2と共に表面側に突出させて形成されており、各突起3,3…の表面は、夫々の芯体4,4…と一体化された基材シート2により覆われている。
【0038】
従って、図4に示すように敷設された誘導ラインにおいて、路面7上に並ぶ突起3,3…は、歩行者の踏圧力等、使用状態で不可避に加わる外力の作用により外れる虞れが小さく、敷設時の状態を長期に亘って維持し、見栄えの悪化等の不具合の発生を有効に回避することができる。
【0039】
なお、基材シート2が樹脂材料からなる非多孔質のシートである場合には、複数の突起3,3…間の適宜位置に予め複数の小孔を設け、これらの小孔により、ライン本体8上に載置する際の空気抜き作用及び塗料の浸入硬化による固定作用を行わせるのが望ましい。
【0040】
以上の如き誘導ラインの敷設は、路面7上に各種のラインを設けるために従来から実施されている手順でライン本体8を形成した後、該ライン本体8上に突起シート1を載置する作業を追加するだけで実施可能であり、掘り返し、埋め戻し等の煩雑な作業を必要とせずに既存の路面7上に誘導ラインを簡易に敷設することが可能となる。
【0041】
なお以上のように構成された突起シート1は、前述した如く、路面7上に歩道と車道とを区分けする境界ラインを敷設する用途においても同様に使用可能である。この場合、突起シート1が備える突起3,3…が外れ難いことから、これらの突起3,3…による滑り止め効果を、長期に亘って良好に維持することができる。
【0042】
更に、以上のように構成された突起シート1は、複数の突起3、3…の組み合わせにより点字を構成し、公共施設の壁面等に被着して、視覚障害者に各種の情報を伝える点字シートとしての使用が可能である。この場合、誘導ライン又は境界ラインの場合と同様に、被着対象箇所に塗料を塗布し、該塗料が硬化する前に塗布面上に突起シート1を押し付けて一体化させる手順により、適宜の箇所に点字シートを簡易に設けることが可能である。このように設けられた点字シートにおいては、使用状態において不可避に加わる外力により突起3,3…が外れ、点字機能を喪失して情報伝達の目的を果たし得なくなる虞れを有効に回避することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 突起シート
2 基材シート
3 突起
4 芯体
5 凹型
6 平型
50 凹部
60 注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの表面に複数の突起を並設してある突起シートにおいて、
前記複数の突起は、前記基材シートの裏面に当接する各別の芯体を、前記基材シートと共に表面側に突出させて形成してあることを特徴とする突起シート。
【請求項2】
前記基材シートは、多孔質のシートであり、前記芯体は、樹脂製であって、前記基材シートの孔内に浸透した状態で硬化することにより、前記基材シートと一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の突起シート。
【請求項3】
前記基材シートは、樹脂製のシートであり、前記芯体は、樹脂製であって、前記基材シートの接触部を溶融させて共に硬化することにより、前記基材シートと一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の突起シート。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の突起シートを製造する方法であって、
前記複数の突起の夫々に対応する凹部を合わせ面に並設してある凹型と、前記凹部の夫々に対応する注入孔を合わせ面に開設してある平型との間に前記基材シートを挾持し、
前記注入孔の夫々に樹脂を注入し、前記基材シートを押し拡げつつ前記凹部の夫々に充填して硬化させ、硬化樹脂が形成する芯体を前記基材シートと共に突出させて前記複数の突起を形成することを特徴とする突起シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−202074(P2012−202074A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66261(P2011−66261)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000205650)大崎工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】