説明

窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒

【課題】アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属が添着又は層間結合された窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒、その製造方法、及び前記混合金属酸化物触媒を用いた窒素酸化物の分解方法を提供すること。
【解決手段】本発明の混合金属酸化物触媒は、低温でもNO、NO、又はこれらの混合物を分解することができて触媒活性に優れるうえ、貴金属を使用しなくて経済的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属を含むハイドロタルサイト(Hydrotalcite)型前駆体に非貴金属が添着又は層間結合された混合金属酸化物触媒、その製造方法、及び前記混合金属酸化物触媒を用いた窒素酸化物の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、全世界的に気候の変化による被害が増加するにつれて、大気環境問題への関心が高まっている。地球温暖化に関連した物質のうち、亜酸化窒素(NO)は、COに比べて310倍の高い温室効果を有し、大気中で安定した化合物であって、約20〜100年間大気に滞留するものと推定されている。また、成層圏のオゾン層を破壊して亜酸化窒素が2倍増加すると、オゾンは10%減少すると知られている。
【0003】
窒素酸化物は、化石燃料を使用する燃料装置及び各種廃棄物などを焼却処理する過程で必然的に発生し、大気の光化学反応によって光化学スモーク、及び人体に有害な各種2次汚染物質(OやPANなど)を副生させるなど、大気汚染面で重要度が高い。このような気候変化が引き起こす危機に対処するために、温室ガスとしての亜酸化窒素(NO)とNOを含む窒素酸化物を共に効率よく除去するための研究開発が求められる。
【0004】
OとNOの分解に関する既存の技術を考察すると、燃焼炉の温度制御や排気ガスの再循環、特殊バーナの装着などの方法が提示されてきたが、これらの方法はその性能が低かった。その後、選択的触媒還元脱窒法(SCR)が実用化されたが、設備費が高く、触媒エージング(Aging)により性能が低下するという問題点がある。
【0005】
Alini等はロジウム(Rh)を含有したハイドロタルサイト型の触媒を用いて400℃以上でNOガスを分解させる方法を特許文献1に開示したが、この方法は200ppm以下の極めて低い濃度のNOを対象として400℃以上の高温で反応させなければならず、高い触媒を使用する問題点があった。
【0006】
特許文献2では、軽炭化水素成分を含有した燃焼排気ガスを還元剤として用い、コバルト塩で交換されたβ−ゼオライト(β−Zeolite)を触媒として用いて、燃焼排気ガスに含有された窒素酸化物を触媒還元させる方法を開示しているが、NOの量に比べて還元剤の量を2倍以上にしてNOと高温で反応させるにも拘らず、転換率が低いという欠点があった。
【0007】
Javier P.R.等[Reduction of NO with CO Over FeMFI zeolites., Catal. 223(2004)]は、鉄(Fe)をゼオライト上にコートした触媒を用いて一酸化炭素(CO)還元剤の存在下でNOを分解させたとき、既存の技術に比べて分解性能が向上したが、400℃以上の高温で分解させなければならないという欠点があった。
【0008】
また、特許文献3では、固体粉末状の混合物の担体に金属を担持させた触媒を用いて、窒素酸化物を直接触媒還元法で還元させる方法を開示しているが、400℃以上の高温でも転換率が50%以下になるという欠点があった。
【0009】
Schwefer等は、特許文献4に開示されているように、鉄が含有されたZSM−5型触媒を用いて、アンモニア還元剤の存在下で450℃の温度、6.5barの圧力でNOとNOを分解させたが、NO転換率は64%、NO転換率は78%と多少低く、その分解温度及び圧力も高いという欠点があった。
【0010】
ナガタワヒハラは、特許文献5に開示されているように、鉄イオンで交換されたβ−ゼオライトを担体に硝酸鉄で浸漬させた後、500℃で5時間焼成させて「約4%酸化鉄を含有した、イオン交換されたゼオライト触媒」を製造し、この触媒をバインダーと混ぜた後、ハニカム支持体にコートして触媒の性能を試験した。ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOを、尿素還元剤の存在下で200℃の低温で分解させたが、転換率が43%程度と低いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ヨーロッパ公開特許第1262224号明細書
【特許文献2】韓国特許第0359675号明細書
【特許文献3】韓国特許第0408880号明細書
【特許文献4】米国登録特許第7462340号明細書
【特許文献5】米国登録特許第7501105号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明者らは、前述した従来の技術の問題点を解決するために広範囲な研究を重ねた結果、アルカリ金属を含むハイドロタルサイト(hydrotalcite)型前駆体に非貴金属が添着又は層間結合されて形成された混合金属酸化物触媒の場合、窒素酸化物を分解するにあたり、Rh、Pdなどの貴金属が使用された触媒と対等な活性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
したがって、本発明の目的は、アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属が添着又は層間結合された窒素酸化物分解用触媒を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、窒素酸化物分解用触媒を製造する方法を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、前記窒素酸化物分解用触媒を用いて低温でもNO、NOまたはこれらの混合物を分解することが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明の一様態によれば、本発明は、アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属が添着又は層間結合された窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒を提供する。
【0017】
本発明の好適な一具現例によれば、本発明のアルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体は下記の化学式1で表される。
【0018】
[化学式1]
・[M2+1−x3+(OH)x+[An−(x+a)/n・bHO]
【0019】
式中、LはNa、K、Li、Rb、CsおよびFrよりなる群から一つ以上選択され、M2+はMg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Sr2+、Ba2+、Fe2+、Cu2+、Co2+、Pd2+およびMn2+よりなる群から一つ以上選択され、N3+はAl3+、Mn3+、Fe3+、Co3+、Ni3+、Cr3+、Ga3+、B3+、La3+、Ce3+およびRh3+よりなる群から一つ以上選択され、An−はCO2−、NO、SO2−、Cl、OH、SiO2−、MnO2−、HPO2−、MnO2−、HGaO2−、HVO2−、ClOおよびBO2−よりなる群から一つ以上選択され、xは0.01〜0.5であり、aは0.01〜1であり、bは0〜20の整数である。
【0020】
本発明の他の好適な一具現例によれば、本発明の非貴金属はNi、Co、Fe、Mn、Al、Ce、Cu、Zn、Ba、Mg、Ca及びSrよりなる群から一つ以上選択され、前記非貴金属の含量は0.01〜20重量%である。
【0021】
本発明の他の様態によれば、本発明は、アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体を用意する段階と、前記ハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属を添着又は層間結合させる段階と、前記非貴金属が添着又は層間結合されたアルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体を100〜1000℃で焼成させて混合金属酸化物触媒を形成する段階とを含んでなる、窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の別の様態によれば、本発明は、アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属が添着又は層間結合された触媒の存在下で、NO、NO、またはこれらの混合物を含む窒素酸化物と、還元剤を含む気体混合物とを反応させて前記NO、NO、またはこれらの混合物を分解させることを特徴とする、混合金属酸化物触媒を用いた窒素酸化物の分解方法を提供する。
【0023】
本発明の好適な一具現例によれば、本発明の還元剤は、炭素数1〜6の炭化水素、炭素数1〜6のアルコール、NH、およびCOよりなる群から一つ以上選択される。
【0024】
本発明の他の好適な一具現例によれば、本発明の触媒を通過する気体の時間当たり空間速度は1000h−1〜100,000h−1であり、前記気体の圧力は大気圧(1atm)以上である。
【0025】
本発明の別の好適な一具現例によれば、本発明の反応温度は100〜500℃である。
【0026】
本発明の別の好適な一具現例によれば、本発明の窒素酸化物は0.001〜31重量%であり、前記還元剤は0.001〜21重量%である。
【発明の効果】
【0027】
窒素酸化物を分解するにあたり、本発明のアルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体から製造された混合金属酸化物触媒を使用する場合、Ph、Rdなどの高価の貴金属を使用しなくても、貴金属を使用した場合と対等な触媒活性を持つため、製造コストを低減することができる。また、300℃以下の低温でも窒素酸化物の分解率に優れて運転費用を節減することができ、結果として触媒を長期間使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0029】
前述したように、本発明は、カリウム(K)などのアルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属が添着又は層間結合(intercalation)されており、工業的に発生するNO、NOおよびこれらの混合物を含む窒素酸化物を簡単かつ経済的な工程によって分解しうる窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒を提供する。
【0030】
また、本発明では、アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体を用意する段階と、前記ハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属を添着又は層間結合させる段階と、前記非貴金属が添着又は層間結合されたアルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体を100〜1000℃で焼成(calcination)させて混合金属酸化物触媒を形成する段階とを含んでなる、窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒の製造方法を提供する。
【0031】
ハイドロタルサイト型化合物は、層が陽イオンを帯び、中間に陰イオンを交換することが可能な通常陰イオン性の粘土系である。地球上に豊富に存在するマグネシウムやアルミニウムなどの水和物から構成されており、一般に層状二重水和物に金属陽イオンを導入する方法としては、キレート剤との錯陰イオンを形成した後、これを共沈法などを用いて人工的に合成する。
【0032】
ハイドロタルサイト型化合物は、高い表面積と記憶効果、及び塩基性組成などの特徴を示し、熱を加えることにより、化合物は非常に小さいサイズの結晶性、熱処理に対する安定性を有する均質性の酸化物を形成する。層状構造は、2価の金属が部分的に大きさの類似した3価金属で置換されることにより、層内に電荷が相対的に足りなくて陽に荷電し、こうして生成された陽電荷を相殺するために層と層との間にCO2−又はOHなどの陰イオンが挟み込み、水がその周りに配位しながら形成する。
【0033】
本発明は、このようなハイドロタルサイト型化合物にカリウム(K)などのアルカリ金属を添加した化学物質を混合金属酸化物触媒の前駆体として使用する。
【0034】
本発明で使用されるアルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体は、下記化学式1で表される多孔性物質であって、多様な物質として使用される物質である。
【0035】
[化学式1]
・[M2+1−x3+(OH)x+[An−(x+a)/n・bHO]
【0036】
前記ハイドロタルサイト型前駆体において、L、M2+及びN3+はそれぞれ金属陽イオンであって、LはNa、K、Li、Rb、CsおよびFrなどから選択される1価のアルカリ金属陽イオンが使用され、M2+はMg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Sr2+、Ba2+、Fe2+、Cu2+、Co2+、Pd2+およびMn2+などから選択される2価の金属陽イオンが使用され、N3+はAl3+、Mn3+、Fe3+、Co3+、Ni3+、Cr3+、Ga3+、B3+、La3+、Ce3+およびRh3+などから選択される3価の金属陽イオンが使用される。前記M2+とN3+のモル比は1:1〜100:1であり、さらに好ましくは1:1〜5:1である。
【0037】
また、前記ハイドロタルサイト型前駆体において、An−は−1、−2または−3の電荷を有するCO2−、NO、SO2−、Cl、OH、SiO2−、MnO2−、HPO2−、MnO2−、HGaO2−、HVO2−、ClOおよびBO2−などから構成された陰イオン化合物であって、単独または2種以上の組み合わせで使用される。
【0038】
一方、前記式において、aは0.01〜1であり、xは0.01〜0.5であり、bは0〜20の整数である。
【0039】
本発明のアルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体から製造された混合金属酸化物の場合、非貴金属が添着又は層間結合されており、従来から触媒活性を増加させるために使用されてきた高価の貴金属を代替することができる。
【0040】
本発明の混合金属酸化物を製造するにあたり、アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属を添着または層間結合することは、例えば、非貴金属ナイトレート溶液を用意した後、その溶液をハイドロタルサイト型前駆体と混合させて両物質の間にイオン交換反応を誘導することにより可能である。
【0041】
ここで、前記ハイドロタルサイト型前駆体が添着又は層間結合される非貴金属は、Ni、Co、Fe、Mn、Al、Ce、Cu、Zn、Ba、Mg、Ca及びScなどの中から、好ましくはNi、Co、Fe、Mg、Al、Caなどの中から少なくとも一つを選択して使用し、最も好ましくはNiを使用する。一方、非貴金属の含量は0.01〜20重量%であり、好ましくは0.01〜15重量%である。前記貴金属の含量が0.01重量未満であれば、非貴金属の使用による触媒活性増加効果が殆ど発現せず、20重量%超過であれば、混合金属酸化物に形成されている気孔を塞いで触媒の比表面積を減少させて分解率を低下させるという欠点がある。
【0042】
本発明は、非貴金属が添着または層間結合されたアルカリ金属を含む前記ハイドロタルサイト型前駆体を100〜1000℃の温度、好ましくは400〜800℃の温度で焼成するとき、混合金属酸化物の形で安定に製造される。
【0043】
本発明の混合金属酸化物触媒は、その使用目的および効率などを考慮し、前記焼成過程を経た後、新しい非貴金属を添着又は層間結合することができる。たとえば、アルミニウム(Al)非貴金属が層間結合されているアルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体から製造された混合金属酸化物にマグネシウム(Mg)ナイトレート溶液を混合した後、乾燥させることにより、本発明の触媒を製造することができる。
【0044】
また、本発明のアルカリ金属を含む混合金属酸化物触媒を製造する過程は、発明の技術的な思想範囲を外れない範囲内で様々に変形できる。
【0045】
一変形例によれば、アルカリ金属のみが含まれたハイドロタルサイト型前駆体から製造された混合金属酸化物を焼成させた後、非貴金属を含浸し、非貴金属及びアルカリ金属が含まれた混合金属酸化物を製造することができる。他の変形例によれば、非貴金属のみが含まれたハイドロタルサイト型前駆体から製造された混合金属酸化物を焼成させた後、アルカリ金属を含浸し、非貴金属及びアルカリ金属の含まれた混合金属酸化物を製造してもよい。
【0046】
本発明の非貴金属が添着または層間結合されたアルカリ金属を含む混合金属酸化物触媒は、従来の貴金属が添着又は層間結合された触媒と比較して対等な、窒素酸化物を分解する触媒活性を持っている。本発明によれば、ハイドロタルサイト型前駆体から製造された混合金属酸化物触媒を用いてNO、NO及びこれらの混合物を分解させる反応において、前記触媒層を通過する気体混合物には0.001〜31重量%の窒素酸化物および0.001〜21重量%の還元剤が含まれる。
【0047】
本発明で使用される還元剤は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソプロパン、イソブタン、2−ブタン、イソペンタン、2−ペンタン、t−ペンタン、イソヘキサン及び2−ヘキサンなどの炭素数1〜6の炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノールなどの炭素数1〜6のアルコール類;SO;CO;及びNHの中から単独でまたは2種以上を選択して使用する。この際、前記気体混合物中の還元剤の使用量は0.001〜21重量%であることがよい。還元剤の使用量が0.001重量%未満であれば、還元能力が足りず、充分にNOとNOをNとOに還元させず、21重量%超過であれば、未反応還元剤と反応副産物が多く生成され、これを除去する工程が追加されるという問題点があった。
【0048】
しかも、酸素(O)を前記還元剤と共に使用することができ、前記気体混合物中の酸素の使用量は0.001〜21重量%であることが好ましい。前記使用量が0.001重量%未満であれば、還元剤が酸化しないためNOとNOを還元させることができず、21重量%超過であれば、Oが触媒の活性点を占拠してNOとNOが反応しないため分解率が著しく減少する。
【0049】
本発明の分解反応において前記触媒層を通過する気体の時間当たり空間速度GHSV(Gas Hour Space Velocity)は、1,000h−1〜200,000h−1の間であり、好ましくは30,000〜100,000h−1である。GHSVが1,000h−1未満であれば、処理量が少なくて経済性がなく、GHSVが200,000h−1超過であれば、触媒との接触時間が短くてNO又はNOの分解効率が減少する。
【0050】
一方、前記触媒層を通過する気体の圧力は大気圧(1atm)以上が好ましく、圧力が増加すればするほど、分解率は増加する。
【0051】
本発明によれば、前記ハイドロタルサイト型前駆体から製造された混合金属酸化物触媒を用いたNO、NO及びこれらの混合物を分解させる反応において、前記触媒層を通過する気体の温度は100〜500℃であり、より好ましくは100〜300℃であり、よりさらに好ましくは150〜250℃である。本発明の触媒の場合、その層を通過する気体の温度が100℃未満であれば、充分な活性化エネルギーを得ることができないためNOとNOが分解せず、500℃以下でも気体の効率が良いため、これを超過する場合、あまり多くのエネルギーが使用されてNOとNOの分解に多くの費用がかかる。
【0052】
本発明の混合金属酸化物触媒は、ハイドロタルサイト型前駆体に貴金属が添加又は層間結合された混合金属酸化物触媒と対等な窒素酸化物分解率を有する。一方、前記効果はハイドロタルサイト型前駆体ではなく、ブルサイト(brucite)型前駆体から製造された混合金属酸化物によっても達成できる。ブルサイト型前駆体は、前記化学式1においてa=0、x=0の場合をいう。下記実施例に示されているように、ブルサイト型前駆体から得られた金属酸化物内に非貴金属が添加又は層間結合された触媒を用いて本発明の方法によって窒素酸化物を分解する場合、低温でも分解効率に優れることが分かる(比較例6参照)。
【0053】
以下、実施例によって本発明をよりさらに具体的に説明する。ところが、本発明の範疇はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実施例]
混合金属酸化物の製造
NaOH及びNaCOを計算された比率(3.5:1のモル比)で蒸留水に溶解した。前記溶液を反応器に添加した後、1モルのメタル(II)ナイトレート(Co、Fe等)、1モルのメタル(III)ナイトレート(Al、Mnなど)、およびアルカリ(K等)ナイトレートを一定のモル比で蒸留水に溶解した溶液を4時間ゆっくり加えながら、一定の速度で攪拌した。全ての反応物が添加されて沈殿が作られると、均一な混合のために30分間攪拌した。沈殿が完全に混合されると、65℃で16時間エージング(aging)した。反応が完了すると、蒸留水で洗浄した。この際、過量の水を用いて3回の洗浄を経て得られたハイドロタルサイト型混合物を非貴金属(ニッケルなど)ナイトレート溶液に混合し、イオン交換反応を介して非貴金属をハイドロタルサイト型化合物内に添着又は層間結合させた。その後、反応が完了すると、蒸留水で洗浄した後、110℃で12時間乾燥させた。乾燥させた前駆体を25℃から500℃まで昇温させ、500℃で4時間焼成して混合金属酸化物触媒を得た。製造された触媒を、NO分解実験に使用される前まで乾燥装置(desiccator)内で保管し、使用前に、窒素或いはCO雰囲気で完全還元させる前処理過程を経た。
【0055】
窒素酸化物の分解率の測定
[比較例1]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたCo−Pd−Ce−Al(2/0.01/0.01/1)のモル比を有する金属酸化物触媒0.2gを用いて、NO12,500ppm、CO12,500ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス200mL/min(SV42,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃で96%、250℃以上では100%であった。
【0056】
[比較例2]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたCo−Rh−Ce−Al(1/0.2/0.01/1)のモル比を有する金属酸化物触媒0.4gを用いて、NO12,500ppm、CO12,500ppm、NO100ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス200mL/min(SV30,000hr−1)流量における分解効率を測定した結果、200℃でNOが99%、NOが99%であったが、250℃以上ではNO及びNOが100%であった。
【0057】
[比較例3]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたCo−Rh−Al(1/0.2/1)のモル比を有する金属酸化物触媒0.3gを用いて、NO12,500ppm、CO17,500ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス200mL/min(SV30,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃で98%、250℃以上では100%であった。
【0058】
[比較例4]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたCo−Pd−Al(1/0.1/1)のモル比を有する金属酸化物触媒0.285gを用いて、NO12,500ppm、CO12,500ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス200mL/min(SV30,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃以上で100%であった。
【0059】
[比較例5]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−Pd−Co(1/0.05/1)のモル比を有する金属酸化物触媒3.397gを用いて、NO344ppm、CO3,900ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス400mL/min(SV39,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、250℃以上で100%であった。
【0060】
[比較例6]
ブルサイト型前駆体から製造されたNi酸化物3.394gを用いて、NO446ppm、CO3,866ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス500mL/min(SV41,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃以上で100%であった。
【0061】
[実施例1]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K(1/1)のモル比を有する金属酸化物触媒0.20gを用いて、NO12,500ppm、CO17,500ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス400mL/min(SV55,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、175℃で92%、200℃以上で100%であった。
【0062】
[実施例2]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K(1/0.5)のモル比を有する金属酸化物触媒0.20gを用いて、NO12,500ppm、CO17,500ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス400mL/min(SV55,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、175℃で68%、200℃以上で100%であった。
【0063】
[実施例3]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K(1/0.2)のモル比を有する金属酸化物触媒0.20gを用いて、NO12,500ppm、CO17,500ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス400mL/min(SV55,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、175℃で51%、200℃以上で100%であった。
【0064】
[実施例4]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K(1/1)のモル比を有する金属酸化物触媒0.20gを用いて、NO12,500ppm、NO12,500ppm、CO30,000ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス400mL/min(SV55,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、175℃で55%、200℃以上で100%であった。
【0065】
[実施例5]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K(1/0.5)のモル比を有する金属酸化物触媒0.20gを用いて、NO12,500ppm、NO12,500ppm、CO30,000ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス400mL/min(SV55,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃で78%、250℃以上で100%であった。
【0066】
[実施例6]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K(1/0.2)のモル比を有する金属酸化物触媒0.20gを用いて、NO12,500ppm、NO12,500ppm、CO30,000ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス400mL/min(SV55,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃で65%、250℃以上で100%であった。
【0067】
[実施例7]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K(1/1)のモル比を有する金属酸化物触媒1.355gを用いて、NO2,000ppm、CO4,000ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス500mL/min(SV75,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃で100%であった。
【0068】
[実施例8]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K−Pd(1/1/0.1)のモル比を有する金属酸化物触媒1.898gを用いて、NO2,000ppm、CO4,000ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス500mL/min(SV75,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃で85%、220℃以上で100%であった。
【0069】
[実施例9]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K−Pd(1/0.2/0.1)のモル比を有する金属酸化物触媒3.72gを用いて、NO900ppm、NO520ppm、CO5,000ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス500mL/min(SV33,000hr−1)流量におけるNOとNOの分解効率を測定した結果、200℃でそれぞれ100%および80%であり、250℃以上では両方とも100%であった。
【0070】
[実施例10]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K−Rh(1/0.2/0.02)のモル比を有する金属酸化物触媒3.582gを用いて、NO785ppm、CO3,000ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス500mL/min(SV39,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃で98%、220℃以上で100%であった。
【0071】
[実施例11]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K−Rh(1/0.2/0.02)のモル比を有する金属酸化物触媒3.582gを用いて、NO435ppm、CO2,000ppm及び残量の窒素ガスからなる総ガス500mL/min(SV39,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃以上で100%であった。
【0072】
[実施例12]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K(1/1)のモル比を有する金属酸化物触媒0.20gを用いて、NO12,500ppm、NO12,500ppm、CO17,500ppm、SO125ppmおよび残量の窒素ガスからなる総ガス400mL/min(SV55,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃以上で100%であった。
【0073】
[実施例13]
ハイドロタルサイト前駆体から製造されたNi−K(1/1)のモル比を有する金属酸化物触媒0.20gを用いて、NO12,500ppm、NO12,500ppm、CO17,500ppm、NH150ppmおよび残量の窒素ガスからなる総ガス400mL/min(SV55,000hr−1)流量におけるNOの分解効率を測定した結果、200℃以上で100%であった。
【0074】
前記比較例1〜6及び実施例1〜13の組成物、反応条件及び窒素酸化物の分解率を下記表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から分かるように、アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属が添着又は総間結合された触媒の場合、250℃以下の温度で窒素酸化物の分解率が100%に到達する点で、従来のRh、Pdなどの貴金属が使用された触媒と対等な効果を持っている。
【0077】
また、本発明における窒素酸化物の分解率は、アルカリ金属の含量が増加するほど(実施例1〜3参照)、また還元剤の含量が増加するほど(実施例4、13及び14参照)、その効率が良いことを確認することができる。
【0078】
以上、本発明の内容の特定な部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとっては、このような具体的技術は好適な実施様態に過ぎず、本発明の範囲を制限するものでないことは明白であろう。よって、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とその等価物によって定義されるべきといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属が添着又は層間結合された窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒。
【請求項2】
前記アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体は下記の化学式1で表されることを特徴とする、請求項1に記載の窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒。
[化学式1]
・[M2+1−x3+(OH)x+[An−(x+a)/n・bHO]
(式中、LはNa、K、Li、Rb、CsおよびFrよりなる群から一つ以上選択され、M2+はMg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Sr2+、Ba2+、Fe2+、Cu2+、Co2+、Pd2+およびMn2+よりなる群から一つ以上選択され、N3+はAl3+、Mn3+、Fe3+、Co3+、Ni3+、Cr3+、Ga3+、B3+、La3+、Ce3+およびRh3+よりなる群から一つ以上選択され、An−はCO2−、NO、SO2−、Cl、OH、SiO2−、MnO2−、HPO2−、MnO2−、HGaO2−、HVO2−、ClOおよびBO2−よりなる群から一つ以上選択され、xは0.01〜0.5であり、aは0.01〜1であり、bは0〜20の整数である。)
【請求項3】
前記非貴金属はNi、Co、Fe、Mn、Al、Ce、Cu、Zn、Ba、Mg、Ca及びSrよりなる群から一つ以上選択され、前記非貴金属の含量は0.01〜20重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒。
【請求項4】
アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体を用意する段階と、
前記ハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属を添着又は層間結合させる段階と、
前記非貴金属が添着又は層間結合されたアルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体を100〜1000℃で焼成させて混合金属酸化物触媒を形成する段階とを含んでなる、窒素酸化物分解用混合金属酸化物触媒の製造方法。
【請求項5】
アルカリ金属を含むハイドロタルサイト型前駆体に非貴金属が添着又は層間結合された混合金属酸化物触媒の存在下で、NO、NO、またはこれらの混合物を含む窒素酸化物と、還元剤を含む気体混合物とを反応させて前記NO、NO、またはこれらの混合物を分解させることを特徴とする、混合金属酸化物触媒を用いた窒素酸化物の分解方法。
【請求項6】
前記還元剤は炭素数1〜6の炭化水素、炭素数1〜6のアルコール、SO、NH、およびCOよりなる群から一つ以上選択されることを特徴とする、請求項5に記載の混合金属酸化物触媒を用いた窒素酸化物の分解方法。
【請求項7】
前記触媒を通過する気体の時間当たり空間速度は1,000h−1〜200,000h−1であり、前記気体の圧力は大気圧(1atm)以上であることを特徴とする、請求項5に記載の混合金属酸化物触媒を用いた窒素酸化物の分解方法。
【請求項8】
前記反応温度が150〜500℃であることを特徴とする、請求項5に記載の混合金属酸化物触媒を用いた窒素酸化物の分解方法。
【請求項9】
前記窒素酸化物は0.001〜31重量%であり、前記還元剤は0.001〜21重量%であることを特徴とする、請求項5に記載の混合金属酸化物触媒を用いた窒素酸化物の分解方法。

【公表番号】特表2013−505830(P2013−505830A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532013(P2012−532013)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006683
【国際公開番号】WO2011/040775
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512082587)サンミュン大学校産学協力団 (1)
【氏名又は名称原語表記】SANGMYUNG UNIVERSITY, COUNCIL FOR INDUSTRY ACADEMIC COOPERATION
【住所又は居所原語表記】Sangmyung University, 98−20, San, Anseo−dong, dongnam−gu Cheonan−si, Chungcheongnam−do 330−720
【Fターム(参考)】