窓部構造及びこれを用いたPCカーテンウォールユニット
【課題】窓枠を使用し耐久性、耐火性、断熱性などの諸特性を満足させながらフレームレス化を実現し、デザイン性の向上を図った窓部構造とする。
【解決手段】外面側に化粧板3が張設されたコンクリート2によって開口部4が形成されるとともに、該開口部4に上枠6、下枠7及び左右縦枠8,9からなる窓枠5が固設され、ガラスGが支持された窓部構造において、前記窓枠5は前記コンクリート2に固設され、コンクリート2の開口部4よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板4によって隠蔽され、、前記化粧板3とガラス室外側面との間に、前記化粧板3の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延出させたガラス支持用ガスケット13を取り付けている。
【解決手段】外面側に化粧板3が張設されたコンクリート2によって開口部4が形成されるとともに、該開口部4に上枠6、下枠7及び左右縦枠8,9からなる窓枠5が固設され、ガラスGが支持された窓部構造において、前記窓枠5は前記コンクリート2に固設され、コンクリート2の開口部4よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板4によって隠蔽され、、前記化粧板3とガラス室外側面との間に、前記化粧板3の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延出させたガラス支持用ガスケット13を取り付けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外側から窓枠が見えないようにしてデザイン性を向上させた窓部構造及びこれを用いたPCカーテンウォールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な窓部の構造は、コンクリート躯体に形成した開口部の内周面に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠を固定し、これら窓枠の内部に開閉可能な障子を嵌め込むか、嵌め殺し状態でガラスを嵌合支持させるようにしている。
【0003】
一方、特に中層から高層のビル等では盛んにカーテンウォール工法が採用されている。このカーテンウォール工法には、今まで種々のものが提案されているが、外壁を構成するPC版(プレキャストコンクリート版)と、このPC版によって支持されるガラス等のパネルからなるPCカーテンウォールが市場に多く提供されている。
【0004】
前記PC版は、外面にレンガ、タイルや本石などの化粧板が一体的に張設され、外壁面のデザイン自由度が高いなどのメリットを有する他、高強度であるとともに、高い耐火性と断熱性を有し、かつ製造コストが廉価であるなどの利点を有し、近年の建物では多く採用されている。
【0005】
前記PCカーテンウォールの例としては、例えば下記特許文献1を挙げることができる。このPCカーテンウォールは、図11に示されるように、ガラスを有するカーテンウォールユニット50、50…と、プレキャストコンクリート製のPCカーテンウォール51、51…とを備えて構成されており、前記PCカーテンウォール51,51…を建物壁面に固定するとともに、PCカーテンウォール51、51…によって四周が囲まれた開口部に対してカーテンウォールユニット50、50…を設置した構造とされる。前記カーテンウォールユニット50は、上枠52、下枠53、および左右の縦枠54,55を四周枠組みした枠体内に障子を備えた構造となっている。
【0006】
前述した一般的な窓部構造やPCカーテンウォールにおいては、アルミ合金又はスチール等からなる窓枠を室外側に露出させた構造が一般的となっているが、近年はデザインの多様化によって、窓枠を露出させずにフレームレス化を図ったものも好まれる傾向にある。
【0007】
他方で、窓枠を有しないPCカーテンウォール構造が、下記特許文献2に開示されている。この特許文献2では、図12に示されるように、ガラス板G(板材)の端部を嵌め込む板材嵌込溝56とジッパー57を嵌め込むジッパー溝58とをゴム本体59に形成し、該ゴム本体59にコンクリート部60の取付溝61に嵌合されるアンカー62を突設したジッパーガスケット63が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−270251号公報
【特許文献2】特開2005−299178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献2に開示されたガラス支持構造の場合は、ガラス周囲に見付け幅の大きいジッパーガスケット63が室外側から見えるためデザイン性が悪いとともに、火災時には簡単にジッパーガスケット63が溶融しガラス自体が落下するおそれがあり耐火仕様を実現できていない。また、ジッパーガスケット63の経年劣化による強度低下が懸念されるなどの問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、窓枠を使用し耐久性、耐火性、断熱性などの諸特性を満足させながらフレームレス化を実現し、デザイン性の向上を図った窓部構造及びこれを用いたPCカーテンウォールユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、外面側に化粧板が張設されたコンクリートによって開口部が形成されるとともに、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部構造において、
前記窓枠は前記コンクリートに固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽され、前記化粧板とガラス室外側面との間に、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延出させたガラス支持用ガスケットを取り付けたことを特徴とする窓部構造が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明においては、窓枠は化粧板を避けてコンクリート側に固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽されている窓部構造とするものである。従って、窓枠を使用しているため耐久性、耐火性、断熱性などの諸特性を満足することができるとともに、化粧板によって窓枠が外部から隠蔽されるため視覚的にフレームレス化を実現することができる。
【0013】
また、前記化粧板とガラス室外側面との間に、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延出させたガラス支持用ガスケットを取り付けてあるため、ガラス支持用ガスケットから化粧板までの連続性が確保され、雨水等がシール材の隙間から浸入するのを防止するようになる。
【0014】
なお、本窓部構造は、一般住宅、低層ビル〜高層ビルまで、コンクリート現場打設工法、カーテンウォール工法等の工法形式を問わず、コンクリートに囲まれた窓部を有する構造一般に適用することが可能である。
【0015】
請求項2に係る本発明として、外面側に化粧板が張設されたコンクリートによって開口部が形成されるとともに、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部構造において、
前記窓枠は前記コンクリートに固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽され、
前記窓枠は、ガラス嵌合溝を形成するために室外側に起立片を有するとともに、該起立片の先端位置は前記化粧板の先端位置とほぼ同じ見付け位置となるように形成され、
前記起立片と前記化粧板との間に所定の隙間を有するとともに、該隙間にシール材を充填して封鎖し、ガラス室外側面と前記起立片との間に、前記シール材を覆うとともに、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延在させたガラス支持用ガスケットを取り付けたことを特徴とする窓部構造が提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明は、請求項1に係る発明に加え、窓部の好適な納まり構造を限定したものである。この窓部構造においては、前記窓枠は、ガラス嵌合溝を形成するために室外側に起立片を有するとともに、該起立片の先端位置は前記化粧板の先端位置とほぼ同じ見付け位置となるように形成され、化粧板が窓枠を隠蔽する。
【0017】
また、前記起立片と前記化粧板との間に所定の隙間を有するとともに、該隙間にシール材を充填して封鎖しているため、負圧、地震力、熱膨張などの影響によって窓枠から化粧板に外力が作用した際、前記シール材が緩衝材となって外力の作用をほぼ無くすか低減し、前記化粧板に割れや欠損が発生するのを防止する。
【0018】
更に、前記ガラスの室外側面と前記起立片との間に、前記シール材を覆うとともに、室外側方向に延びた先端部が前記化粧板の縁部に掛かるようにガラス支持用ガスケットを取り付けている。ガラス支持用ガスケットが前記シール材を覆うことでシール材の経年劣化を防止するとともに、前記ガラス支持用ガスケットの室外側方向に延びた先端部が前記化粧板の縁部に掛かるようにすることで、ガラス支持用ガスケットから化粧板までの連続性が確保され、雨水等がシール材の隙間から浸入するのを防止するようになる。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記シール材として、変形性能の高い軟質系材料を用いてある請求項2記載の窓部構造が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明は、前記シール材として、変形性能の高い軟質系材料を用いることにより、負圧、地震力、熱膨張などの影響によって窓枠から化粧板に作用する外力を効果的に吸収することが可能となる。
【0021】
請求項4に係る本発明として、前記ガラス支持用ガスケットの室外側方向に延びた先端部において、前記化粧板側の面にL字状の段部を形成し、このL字状段部を前記化粧板の縁部に係合させてある請求項1〜3いずれかに記載の窓部構造が提供される。
【0022】
上記請求項4記載の発明は、前記ガラス支持用ガスケットの室外側方向に延びた先端部において、前記化粧板側の面にL字状の段部を形成し、このL字状段部を前記化粧板の縁部に係合させるようにしたものである。従って、化粧板の縁部とガラス支持用ガスケットの先端部とがL字状の2面で接触するため、雨水等の浸入をより効果的に防止できるようになる。
【0023】
請求項5に係る本発明として、前記窓枠の内、下枠部において、前記化粧板の上面を外側に向けて傾斜させ排水勾配を設けてある請求項1〜4いずれかに記載の窓部構造が提供される。
【0024】
上記請求項5記載の発明は、下枠部において、前記化粧板の上面を外側に向けて傾斜させ排水勾配を設けたため、雨水を効果的に排出することが可能となる。
【0025】
請求項6に係る本発明として、前記ガラス支持用ガスケットは、ガラス面の室外側からガラスと前記起立片との間に挿入可能な構造としてある請求項2、3いずれかに記載の窓部構造が提供される。
【0026】
上記請求項6記載の発明は、前記ガラス支持用ガスケットは、ガラス面の室外側からガラスと前記起立片との間に挿入可能な構造とすることで、ガラス支持用ガスケットが経年劣化した際、室外側から簡単に交換することが可能となる。
【0027】
請求項7に係る本発明として、前記窓枠は、コンクリートに埋設されたアンカーフィンによって固定され、前記下枠部において、前記アンカーフィンと前記起立片との間にコンクリート内を貫通する排水路を設けてある請求項2、3、6いずれかに記載の窓部構造が提供される。
【0028】
上記請求項7記載の発明は、前記アンカーフィンを避け、前記アンカーフィンと前記起立片との間にコンクリート躯体内を貫通する排水通路を設けて雨水の排水を行うようにしたものである。
【0029】
請求項8に係る本発明として、コンクリートの外面側に化粧板が張設されるとともに、内方側に開口部が形成され、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部を備えるPCカーテンウォールユニットにおいて、前記窓部は請求項1〜7いずれかの窓部構造を備えることを特徴とするPCカーテンウォールユニットが提供される。
【0030】
上記請求項8記載の発明は、所謂PC版(プレキャストコンクリート版)によって製作されるPCカーテンウォールユニットに対して本窓部構造を適用したものである。
【発明の効果】
【0031】
以上詳説のとおり本発明によれば、窓枠を使用し耐久性、耐火性、断熱性などの諸特性を満足させながらフレームレス化を実現し、デザイン性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るPCカーテンウォールを用いた建物の外観図である。
【図2】図1のII−II線矢視図(横断面図)である。
【図3】図1のIII−III線矢視図(縦断面図)である。
【図4】PCカーテンウォールの窓部縦断面図である。
【図5】PCカーテンウォールの窓部横断面図である。
【図6】上枠6部分の拡大断面図である。
【図7】窓枠の正面図である。
【図8】図6のVII−VII線矢視図(横断面図)である。
【図9】図6のVIII−VIII線矢視図(縦断面図)である。
【図10】ガラス支持用ガスケットの他例を示す上枠部縦断面図である。
【図11】特許文献1に係るPCカーテンウォールの外観図である。
【図12】特許文献2に係るジッパーガスケットの要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0034】
図1〜図3に示されるように、各PCカーテンウォールユニット1、1…は、コンクリート2の外面側に化粧板3が張設されるとともに、内方側に開口部4が形成され、該開口部4に上枠6、下枠7及び左右縦枠8,9からなる窓枠5が固設され、ガラスGが支持された窓部Wを備えるものである。
【0035】
このPCカーテンウォールユニット1は、工場で製作され、建物の建設現場に搬入され、建物の壁面に対して左右上下方向に隣接配置され、スパンドレル部(腰部)の床端部に設けられるファスナー(図示せず)によって支持されるようになっている。なお、ガラスGについては、予め工場で設置して現場に搬入しても良いし、ガラスGを除くPCカーテンウォールユニット1を取り付けた後、現場で設置してもよい。
【0036】
PCカーテンウォールユニット1で使用されるコンクリート2(以下、PC版ともいう。)は、流動性の高いコンクリートを使用し、型枠の隅々まで骨材を分離させることなく充填することができるようにするのが望ましく、コンクリート2の圧縮強度(設計基準強度)は、50N/mm2程度とするのが望ましい。外面側の化粧版3としては、本石やタイルなどを使用することが可能であるが、本PCカーテンウォールユニット1では、PC版2の表面に本石を張設している。本石の厚みは概ね20〜40mm程度である。
【0037】
以下、更に図面に基づいて詳述する。
【0038】
図4及び図5に示されるように、PCカーテンウォールユニット1の開口部4の上面には上枠6が固設され、下面には下枠7が固設され、左右側面には左右縦枠8,9が固設されている。
【0039】
前記上枠6は、水平板6aの室内側端部に裏面側に延在し、PC版2に埋設された第1アンカーフィン6bと、見込み幅内の裏面中間にPC版2に埋設された第2アンカーフィン6cとによって開口部4に固定されている。内面側には、室外側端部にガスケット保持を兼ねるとともに、開口中心側に直立する起立片6dと、室内側端部に係止片6fと、中間に係止片6eとを有し、これら係止片6e、6fに係止された押縁10が取り付けられ、前記起立片6dと押縁10とによってガラス嵌合溝Mが形成されている。前記アンカーフィン6b、6cは、部材の全長に亘って設けられていても良いし、部分的であってもよい。更には断続的に設けられてもよい。なお、内面側には窓枠5の組立のために2箇所のビスホールが設けられている。
【0040】
前記下枠7は、水平板7aの室内側端部に裏面側に延在し、PC版2に埋設された第1アンカーフィン7bと、見込み幅内の裏面中間にPC版2に埋設された第2アンカーフィン7cとによって開口部4に固定されている。内面側には、室外側端部にガスケット保持を兼ねるとともに、開口中心側に直立する起立片7dと、室内側に中空部7eを有し、これら起立片7dと中空部7eとによってガラス嵌合溝Mが形成されている。内面側には上枠6と同様、組立のために2箇所のビスホールが設けられている。なお、前記下枠7においては、前記第2アンカーフィン7cと前記起立片7dとの間にコンクリート2内を貫通する排水路23を設け、下枠7に浸入してきた雨水を排出するようにしている。
【0041】
一方、左右縦枠8(9)は、上記上枠6と同様に、水平板8a(9a)の室内側端部に裏面側に延在し、PC版2に埋設された第1アンカーフィン8b(9b)と、見込み幅内の裏面中間にPC版2に埋設された第2アンカーフィン8c(9c)とによって開口部4に固定されている。内面側には、室外側端部にガスケット保持を兼ねるとともに、開口中心側に直立する起立片8d(9d)と、室内側端部に係止片8f(9f)と、中間に係止片8e(9e)とを有し、これら係止片8e(9e)、8f(9f)に係止された押縁10が取り付けられ、前記起立片8d(9d)と押縁10とによってガラス嵌合溝Mが形成されている。これら左右縦枠8(9)にはビスホールが設けられていない。
【0042】
前記上枠6、下枠7,左右縦枠8,9は、図7〜図9に示されるように、左右縦枠8,9の上下部において水平板8a(9a)を残して切り欠かれ、この切欠き部に上枠6,下枠7が接合され、側面から螺入させたビス20、20…によって方形状に組み立てられる。前記上枠6、下枠7の仕口には薄いシール用シート11,12が介在され、止水性が確保されている。
【0043】
一方、ガラスGは複層ガラスとされ、前記上枠6,下枠7及び左右縦枠8,9によって四周方向に沿って形成されたガラス嵌合溝M内に支持されている。ガラスGは、ガラスGの室内側周囲において押縁10,中空部7eとの間に配置されたバックアップ材16とシール材17と、ガラスGの室外側周囲において前記起立片6d、7d、8d、9dとの間に配置されたガラス支持用ガスケット13とによって挟み付けられるように支持されている。なお、前記ガラス指示用ガスケット13は、四周方向に同じガスケットが使用されている。
【0044】
以下、更に前記上枠6,下枠7及び左右縦枠8,9からなる窓枠5の納まり構造について手順をまじえながら詳述する。
【0045】
前記上枠6、下枠7,左右縦枠8,9からなる窓枠5は、前記コンクリート2側に固設され、コンクリート2の開口部4よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板3によって隠蔽されるようになっている。
【0046】
詳しくは、前記窓枠5は前記化粧板3を避けてコンクリート2側に固設され、前記化粧板3はコンクリート2の開口部4よりも開口中心側方向に延在し、前記化粧板3の先端位置は前記窓枠5の各起立片6d、7d、8d、9dの先端位置とほぼ同じ見付け位置となっている。前記化粧板3の先端位置は、前記窓枠5の各起立片6d、7d、8d、9dの先端位置よりも僅かであれば手前側でもよいが、好ましくは同じ見付け位置か、前記起立片6d、7d、8d、9dの先端位置よりも若干開口部中心側方向に突出して形成されているようにする。前記起立片6d、7d、8d、9dと前記化粧板3との間には所定幅の隙間21を有するようにし、この隙間21にバックアップ材14、シール材15を充填して封鎖している。つまり、前記窓枠5を化粧板3に接触させることなく配置し、これらの間に隙間21を形成し、この隙間21をシール材15によって充填することにより、負圧、地震力、熱膨張などの影響によって窓枠5から化粧板3側に外力が作用した際、前記シール材15が緩衝材となって外力が作用しないようにするか低減させ、前記化粧板3に割れや欠損が発生するのを防止する。前記シール材15としては、緩衝材としての機能を効果的に発揮するように、変形性能の高い軟質系材料を用いるのが望ましい。このようなシール材料としては、ポリサルファイド系やウレタン系が望ましい。
【0047】
前記窓枠5の設置が完了したならば、前記窓枠5のガラス嵌合溝MにガラスGを設置するが、これに先行して先ず最初に、前記起立片6d、7d、8d、9dに対してガラス支持用ガスケット13を取り付ける。このガラス支持用ガスケット13は、詳細には図6に示されるように、略断面L字状を成す部材であり、一方の辺がガラス面に当接してガラスGを支持する当接片13aであり、他方の辺は室外側方向に延び、前記シール材15を覆う額縁部13bとなっている。前記額縁部13bの先端は前記化粧板3の縁部に掛かるようになっている。図示例では、前記額縁部13bの先端部において、前記化粧板3側の面にL字状の段部13cを形成し、このL字状段部13cを前記化粧板3の縁部に係合させるようにしている。また、窓枠5の内、下枠7においては、ガラス面からの雨水が流下し易いように、前記化粧板3の上面3aを外側に向けて傾斜させ排水勾配を設けている。
【0048】
前記ガラス支持用ガスケット13の設置が完了したならば、前記下枠7の底面にセッティングブロック18を設置し、この上にガラスGを載置したならば、上枠6、左右縦枠8,9において、押縁10を取り付ける。そして、ガラスGの背面側(室内面側)の周囲において、押縁10,中空部7eとの間にバックアップ材16とシール材17とを充填し、前記ガラス支持用ガスケット13と前記バックアップ材16,シール材17とによりガラスGを挟みこむように支持する。
【0049】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、ガラス支持用ガスケット13は、ガラスGよりも先に取り付ける必要があり、経年劣化により交換が必要になった際、ガラスGを取り外さないと交換できない構造となっているが、ガラス面の室外側からガラスGと前記起立片6d、7d、8d、9dとの間に挿入可能な構造とすることも可能である。具体的には図10に示されるように(上枠6のみを図示)、上枠6の起立片6dにはガラス面方向に開口を向けたL字片6gを形成しておき、ガラス支持用ガスケット19は、ガラス面側の当接片を前記L字片6gとガラス面との間に挿入される第1挿入部19aと、前記L字片6gに挿入される第2挿入19bとから構成し、ガラス面の室外側から押入することにより設置可能とする。なお、室外側方向に延びる額縁部19cについては、前記ガラス支持用ガスケット13と同様、前記化粧板3側の面にL字状の段部19dを形成し、このL字状段部19dを前記化粧板3の縁部に係合させるようにしている。
【符号の説明】
【0050】
1…PCカーテンウォールユニット、2…コンクリート、3…化粧板、4…開口部、5…窓枠、6…上枠、7…下枠、8・9…左右縦枠、10…押縁、13・19…ガラス支持用ガスケット、14・16…バックアップ材、15・17…シール材、6b・7b・8b・9b…第1アンカーフィン、6c・7c・8c・9c…第2アンカーフィン
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外側から窓枠が見えないようにしてデザイン性を向上させた窓部構造及びこれを用いたPCカーテンウォールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な窓部の構造は、コンクリート躯体に形成した開口部の内周面に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠を固定し、これら窓枠の内部に開閉可能な障子を嵌め込むか、嵌め殺し状態でガラスを嵌合支持させるようにしている。
【0003】
一方、特に中層から高層のビル等では盛んにカーテンウォール工法が採用されている。このカーテンウォール工法には、今まで種々のものが提案されているが、外壁を構成するPC版(プレキャストコンクリート版)と、このPC版によって支持されるガラス等のパネルからなるPCカーテンウォールが市場に多く提供されている。
【0004】
前記PC版は、外面にレンガ、タイルや本石などの化粧板が一体的に張設され、外壁面のデザイン自由度が高いなどのメリットを有する他、高強度であるとともに、高い耐火性と断熱性を有し、かつ製造コストが廉価であるなどの利点を有し、近年の建物では多く採用されている。
【0005】
前記PCカーテンウォールの例としては、例えば下記特許文献1を挙げることができる。このPCカーテンウォールは、図11に示されるように、ガラスを有するカーテンウォールユニット50、50…と、プレキャストコンクリート製のPCカーテンウォール51、51…とを備えて構成されており、前記PCカーテンウォール51,51…を建物壁面に固定するとともに、PCカーテンウォール51、51…によって四周が囲まれた開口部に対してカーテンウォールユニット50、50…を設置した構造とされる。前記カーテンウォールユニット50は、上枠52、下枠53、および左右の縦枠54,55を四周枠組みした枠体内に障子を備えた構造となっている。
【0006】
前述した一般的な窓部構造やPCカーテンウォールにおいては、アルミ合金又はスチール等からなる窓枠を室外側に露出させた構造が一般的となっているが、近年はデザインの多様化によって、窓枠を露出させずにフレームレス化を図ったものも好まれる傾向にある。
【0007】
他方で、窓枠を有しないPCカーテンウォール構造が、下記特許文献2に開示されている。この特許文献2では、図12に示されるように、ガラス板G(板材)の端部を嵌め込む板材嵌込溝56とジッパー57を嵌め込むジッパー溝58とをゴム本体59に形成し、該ゴム本体59にコンクリート部60の取付溝61に嵌合されるアンカー62を突設したジッパーガスケット63が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−270251号公報
【特許文献2】特開2005−299178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献2に開示されたガラス支持構造の場合は、ガラス周囲に見付け幅の大きいジッパーガスケット63が室外側から見えるためデザイン性が悪いとともに、火災時には簡単にジッパーガスケット63が溶融しガラス自体が落下するおそれがあり耐火仕様を実現できていない。また、ジッパーガスケット63の経年劣化による強度低下が懸念されるなどの問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、窓枠を使用し耐久性、耐火性、断熱性などの諸特性を満足させながらフレームレス化を実現し、デザイン性の向上を図った窓部構造及びこれを用いたPCカーテンウォールユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、外面側に化粧板が張設されたコンクリートによって開口部が形成されるとともに、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部構造において、
前記窓枠は前記コンクリートに固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽され、前記化粧板とガラス室外側面との間に、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延出させたガラス支持用ガスケットを取り付けたことを特徴とする窓部構造が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明においては、窓枠は化粧板を避けてコンクリート側に固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽されている窓部構造とするものである。従って、窓枠を使用しているため耐久性、耐火性、断熱性などの諸特性を満足することができるとともに、化粧板によって窓枠が外部から隠蔽されるため視覚的にフレームレス化を実現することができる。
【0013】
また、前記化粧板とガラス室外側面との間に、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延出させたガラス支持用ガスケットを取り付けてあるため、ガラス支持用ガスケットから化粧板までの連続性が確保され、雨水等がシール材の隙間から浸入するのを防止するようになる。
【0014】
なお、本窓部構造は、一般住宅、低層ビル〜高層ビルまで、コンクリート現場打設工法、カーテンウォール工法等の工法形式を問わず、コンクリートに囲まれた窓部を有する構造一般に適用することが可能である。
【0015】
請求項2に係る本発明として、外面側に化粧板が張設されたコンクリートによって開口部が形成されるとともに、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部構造において、
前記窓枠は前記コンクリートに固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽され、
前記窓枠は、ガラス嵌合溝を形成するために室外側に起立片を有するとともに、該起立片の先端位置は前記化粧板の先端位置とほぼ同じ見付け位置となるように形成され、
前記起立片と前記化粧板との間に所定の隙間を有するとともに、該隙間にシール材を充填して封鎖し、ガラス室外側面と前記起立片との間に、前記シール材を覆うとともに、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延在させたガラス支持用ガスケットを取り付けたことを特徴とする窓部構造が提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明は、請求項1に係る発明に加え、窓部の好適な納まり構造を限定したものである。この窓部構造においては、前記窓枠は、ガラス嵌合溝を形成するために室外側に起立片を有するとともに、該起立片の先端位置は前記化粧板の先端位置とほぼ同じ見付け位置となるように形成され、化粧板が窓枠を隠蔽する。
【0017】
また、前記起立片と前記化粧板との間に所定の隙間を有するとともに、該隙間にシール材を充填して封鎖しているため、負圧、地震力、熱膨張などの影響によって窓枠から化粧板に外力が作用した際、前記シール材が緩衝材となって外力の作用をほぼ無くすか低減し、前記化粧板に割れや欠損が発生するのを防止する。
【0018】
更に、前記ガラスの室外側面と前記起立片との間に、前記シール材を覆うとともに、室外側方向に延びた先端部が前記化粧板の縁部に掛かるようにガラス支持用ガスケットを取り付けている。ガラス支持用ガスケットが前記シール材を覆うことでシール材の経年劣化を防止するとともに、前記ガラス支持用ガスケットの室外側方向に延びた先端部が前記化粧板の縁部に掛かるようにすることで、ガラス支持用ガスケットから化粧板までの連続性が確保され、雨水等がシール材の隙間から浸入するのを防止するようになる。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記シール材として、変形性能の高い軟質系材料を用いてある請求項2記載の窓部構造が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明は、前記シール材として、変形性能の高い軟質系材料を用いることにより、負圧、地震力、熱膨張などの影響によって窓枠から化粧板に作用する外力を効果的に吸収することが可能となる。
【0021】
請求項4に係る本発明として、前記ガラス支持用ガスケットの室外側方向に延びた先端部において、前記化粧板側の面にL字状の段部を形成し、このL字状段部を前記化粧板の縁部に係合させてある請求項1〜3いずれかに記載の窓部構造が提供される。
【0022】
上記請求項4記載の発明は、前記ガラス支持用ガスケットの室外側方向に延びた先端部において、前記化粧板側の面にL字状の段部を形成し、このL字状段部を前記化粧板の縁部に係合させるようにしたものである。従って、化粧板の縁部とガラス支持用ガスケットの先端部とがL字状の2面で接触するため、雨水等の浸入をより効果的に防止できるようになる。
【0023】
請求項5に係る本発明として、前記窓枠の内、下枠部において、前記化粧板の上面を外側に向けて傾斜させ排水勾配を設けてある請求項1〜4いずれかに記載の窓部構造が提供される。
【0024】
上記請求項5記載の発明は、下枠部において、前記化粧板の上面を外側に向けて傾斜させ排水勾配を設けたため、雨水を効果的に排出することが可能となる。
【0025】
請求項6に係る本発明として、前記ガラス支持用ガスケットは、ガラス面の室外側からガラスと前記起立片との間に挿入可能な構造としてある請求項2、3いずれかに記載の窓部構造が提供される。
【0026】
上記請求項6記載の発明は、前記ガラス支持用ガスケットは、ガラス面の室外側からガラスと前記起立片との間に挿入可能な構造とすることで、ガラス支持用ガスケットが経年劣化した際、室外側から簡単に交換することが可能となる。
【0027】
請求項7に係る本発明として、前記窓枠は、コンクリートに埋設されたアンカーフィンによって固定され、前記下枠部において、前記アンカーフィンと前記起立片との間にコンクリート内を貫通する排水路を設けてある請求項2、3、6いずれかに記載の窓部構造が提供される。
【0028】
上記請求項7記載の発明は、前記アンカーフィンを避け、前記アンカーフィンと前記起立片との間にコンクリート躯体内を貫通する排水通路を設けて雨水の排水を行うようにしたものである。
【0029】
請求項8に係る本発明として、コンクリートの外面側に化粧板が張設されるとともに、内方側に開口部が形成され、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部を備えるPCカーテンウォールユニットにおいて、前記窓部は請求項1〜7いずれかの窓部構造を備えることを特徴とするPCカーテンウォールユニットが提供される。
【0030】
上記請求項8記載の発明は、所謂PC版(プレキャストコンクリート版)によって製作されるPCカーテンウォールユニットに対して本窓部構造を適用したものである。
【発明の効果】
【0031】
以上詳説のとおり本発明によれば、窓枠を使用し耐久性、耐火性、断熱性などの諸特性を満足させながらフレームレス化を実現し、デザイン性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るPCカーテンウォールを用いた建物の外観図である。
【図2】図1のII−II線矢視図(横断面図)である。
【図3】図1のIII−III線矢視図(縦断面図)である。
【図4】PCカーテンウォールの窓部縦断面図である。
【図5】PCカーテンウォールの窓部横断面図である。
【図6】上枠6部分の拡大断面図である。
【図7】窓枠の正面図である。
【図8】図6のVII−VII線矢視図(横断面図)である。
【図9】図6のVIII−VIII線矢視図(縦断面図)である。
【図10】ガラス支持用ガスケットの他例を示す上枠部縦断面図である。
【図11】特許文献1に係るPCカーテンウォールの外観図である。
【図12】特許文献2に係るジッパーガスケットの要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0034】
図1〜図3に示されるように、各PCカーテンウォールユニット1、1…は、コンクリート2の外面側に化粧板3が張設されるとともに、内方側に開口部4が形成され、該開口部4に上枠6、下枠7及び左右縦枠8,9からなる窓枠5が固設され、ガラスGが支持された窓部Wを備えるものである。
【0035】
このPCカーテンウォールユニット1は、工場で製作され、建物の建設現場に搬入され、建物の壁面に対して左右上下方向に隣接配置され、スパンドレル部(腰部)の床端部に設けられるファスナー(図示せず)によって支持されるようになっている。なお、ガラスGについては、予め工場で設置して現場に搬入しても良いし、ガラスGを除くPCカーテンウォールユニット1を取り付けた後、現場で設置してもよい。
【0036】
PCカーテンウォールユニット1で使用されるコンクリート2(以下、PC版ともいう。)は、流動性の高いコンクリートを使用し、型枠の隅々まで骨材を分離させることなく充填することができるようにするのが望ましく、コンクリート2の圧縮強度(設計基準強度)は、50N/mm2程度とするのが望ましい。外面側の化粧版3としては、本石やタイルなどを使用することが可能であるが、本PCカーテンウォールユニット1では、PC版2の表面に本石を張設している。本石の厚みは概ね20〜40mm程度である。
【0037】
以下、更に図面に基づいて詳述する。
【0038】
図4及び図5に示されるように、PCカーテンウォールユニット1の開口部4の上面には上枠6が固設され、下面には下枠7が固設され、左右側面には左右縦枠8,9が固設されている。
【0039】
前記上枠6は、水平板6aの室内側端部に裏面側に延在し、PC版2に埋設された第1アンカーフィン6bと、見込み幅内の裏面中間にPC版2に埋設された第2アンカーフィン6cとによって開口部4に固定されている。内面側には、室外側端部にガスケット保持を兼ねるとともに、開口中心側に直立する起立片6dと、室内側端部に係止片6fと、中間に係止片6eとを有し、これら係止片6e、6fに係止された押縁10が取り付けられ、前記起立片6dと押縁10とによってガラス嵌合溝Mが形成されている。前記アンカーフィン6b、6cは、部材の全長に亘って設けられていても良いし、部分的であってもよい。更には断続的に設けられてもよい。なお、内面側には窓枠5の組立のために2箇所のビスホールが設けられている。
【0040】
前記下枠7は、水平板7aの室内側端部に裏面側に延在し、PC版2に埋設された第1アンカーフィン7bと、見込み幅内の裏面中間にPC版2に埋設された第2アンカーフィン7cとによって開口部4に固定されている。内面側には、室外側端部にガスケット保持を兼ねるとともに、開口中心側に直立する起立片7dと、室内側に中空部7eを有し、これら起立片7dと中空部7eとによってガラス嵌合溝Mが形成されている。内面側には上枠6と同様、組立のために2箇所のビスホールが設けられている。なお、前記下枠7においては、前記第2アンカーフィン7cと前記起立片7dとの間にコンクリート2内を貫通する排水路23を設け、下枠7に浸入してきた雨水を排出するようにしている。
【0041】
一方、左右縦枠8(9)は、上記上枠6と同様に、水平板8a(9a)の室内側端部に裏面側に延在し、PC版2に埋設された第1アンカーフィン8b(9b)と、見込み幅内の裏面中間にPC版2に埋設された第2アンカーフィン8c(9c)とによって開口部4に固定されている。内面側には、室外側端部にガスケット保持を兼ねるとともに、開口中心側に直立する起立片8d(9d)と、室内側端部に係止片8f(9f)と、中間に係止片8e(9e)とを有し、これら係止片8e(9e)、8f(9f)に係止された押縁10が取り付けられ、前記起立片8d(9d)と押縁10とによってガラス嵌合溝Mが形成されている。これら左右縦枠8(9)にはビスホールが設けられていない。
【0042】
前記上枠6、下枠7,左右縦枠8,9は、図7〜図9に示されるように、左右縦枠8,9の上下部において水平板8a(9a)を残して切り欠かれ、この切欠き部に上枠6,下枠7が接合され、側面から螺入させたビス20、20…によって方形状に組み立てられる。前記上枠6、下枠7の仕口には薄いシール用シート11,12が介在され、止水性が確保されている。
【0043】
一方、ガラスGは複層ガラスとされ、前記上枠6,下枠7及び左右縦枠8,9によって四周方向に沿って形成されたガラス嵌合溝M内に支持されている。ガラスGは、ガラスGの室内側周囲において押縁10,中空部7eとの間に配置されたバックアップ材16とシール材17と、ガラスGの室外側周囲において前記起立片6d、7d、8d、9dとの間に配置されたガラス支持用ガスケット13とによって挟み付けられるように支持されている。なお、前記ガラス指示用ガスケット13は、四周方向に同じガスケットが使用されている。
【0044】
以下、更に前記上枠6,下枠7及び左右縦枠8,9からなる窓枠5の納まり構造について手順をまじえながら詳述する。
【0045】
前記上枠6、下枠7,左右縦枠8,9からなる窓枠5は、前記コンクリート2側に固設され、コンクリート2の開口部4よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板3によって隠蔽されるようになっている。
【0046】
詳しくは、前記窓枠5は前記化粧板3を避けてコンクリート2側に固設され、前記化粧板3はコンクリート2の開口部4よりも開口中心側方向に延在し、前記化粧板3の先端位置は前記窓枠5の各起立片6d、7d、8d、9dの先端位置とほぼ同じ見付け位置となっている。前記化粧板3の先端位置は、前記窓枠5の各起立片6d、7d、8d、9dの先端位置よりも僅かであれば手前側でもよいが、好ましくは同じ見付け位置か、前記起立片6d、7d、8d、9dの先端位置よりも若干開口部中心側方向に突出して形成されているようにする。前記起立片6d、7d、8d、9dと前記化粧板3との間には所定幅の隙間21を有するようにし、この隙間21にバックアップ材14、シール材15を充填して封鎖している。つまり、前記窓枠5を化粧板3に接触させることなく配置し、これらの間に隙間21を形成し、この隙間21をシール材15によって充填することにより、負圧、地震力、熱膨張などの影響によって窓枠5から化粧板3側に外力が作用した際、前記シール材15が緩衝材となって外力が作用しないようにするか低減させ、前記化粧板3に割れや欠損が発生するのを防止する。前記シール材15としては、緩衝材としての機能を効果的に発揮するように、変形性能の高い軟質系材料を用いるのが望ましい。このようなシール材料としては、ポリサルファイド系やウレタン系が望ましい。
【0047】
前記窓枠5の設置が完了したならば、前記窓枠5のガラス嵌合溝MにガラスGを設置するが、これに先行して先ず最初に、前記起立片6d、7d、8d、9dに対してガラス支持用ガスケット13を取り付ける。このガラス支持用ガスケット13は、詳細には図6に示されるように、略断面L字状を成す部材であり、一方の辺がガラス面に当接してガラスGを支持する当接片13aであり、他方の辺は室外側方向に延び、前記シール材15を覆う額縁部13bとなっている。前記額縁部13bの先端は前記化粧板3の縁部に掛かるようになっている。図示例では、前記額縁部13bの先端部において、前記化粧板3側の面にL字状の段部13cを形成し、このL字状段部13cを前記化粧板3の縁部に係合させるようにしている。また、窓枠5の内、下枠7においては、ガラス面からの雨水が流下し易いように、前記化粧板3の上面3aを外側に向けて傾斜させ排水勾配を設けている。
【0048】
前記ガラス支持用ガスケット13の設置が完了したならば、前記下枠7の底面にセッティングブロック18を設置し、この上にガラスGを載置したならば、上枠6、左右縦枠8,9において、押縁10を取り付ける。そして、ガラスGの背面側(室内面側)の周囲において、押縁10,中空部7eとの間にバックアップ材16とシール材17とを充填し、前記ガラス支持用ガスケット13と前記バックアップ材16,シール材17とによりガラスGを挟みこむように支持する。
【0049】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、ガラス支持用ガスケット13は、ガラスGよりも先に取り付ける必要があり、経年劣化により交換が必要になった際、ガラスGを取り外さないと交換できない構造となっているが、ガラス面の室外側からガラスGと前記起立片6d、7d、8d、9dとの間に挿入可能な構造とすることも可能である。具体的には図10に示されるように(上枠6のみを図示)、上枠6の起立片6dにはガラス面方向に開口を向けたL字片6gを形成しておき、ガラス支持用ガスケット19は、ガラス面側の当接片を前記L字片6gとガラス面との間に挿入される第1挿入部19aと、前記L字片6gに挿入される第2挿入19bとから構成し、ガラス面の室外側から押入することにより設置可能とする。なお、室外側方向に延びる額縁部19cについては、前記ガラス支持用ガスケット13と同様、前記化粧板3側の面にL字状の段部19dを形成し、このL字状段部19dを前記化粧板3の縁部に係合させるようにしている。
【符号の説明】
【0050】
1…PCカーテンウォールユニット、2…コンクリート、3…化粧板、4…開口部、5…窓枠、6…上枠、7…下枠、8・9…左右縦枠、10…押縁、13・19…ガラス支持用ガスケット、14・16…バックアップ材、15・17…シール材、6b・7b・8b・9b…第1アンカーフィン、6c・7c・8c・9c…第2アンカーフィン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面側に化粧板が張設されたコンクリートによって開口部が形成されるとともに、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部構造において、
前記窓枠は前記コンクリートに固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽され、前記化粧板とガラス室外側面との間に、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延出させたガラス支持用ガスケットを取り付けたことを特徴とする窓部構造。
【請求項2】
外面側に化粧板が張設されたコンクリートによって開口部が形成されるとともに、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部構造において、
前記窓枠は前記コンクリートに固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽され、
前記窓枠は、ガラス嵌合溝を形成するために室外側に起立片を有するとともに、該起立片の先端位置は前記化粧板の先端位置とほぼ同じ見付け位置となるように形成され、
前記起立片と前記化粧板との間に所定の隙間を有するとともに、該隙間にシール材を充填して封鎖し、ガラス室外側面と前記起立片との間に、前記シール材を覆うとともに、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延在させたガラス支持用ガスケットを取り付けたことを特徴とする窓部構造。
【請求項3】
前記シール材として、変形性能の高い軟質系材料を用いてある請求項2記載の窓部構造。
【請求項4】
前記ガラス支持用ガスケットの室外側方向に延びた先端部において、前記化粧板側の面にL字状の段部を形成し、このL字状段部を前記化粧板の縁部に係合させてある請求項1〜3いずれかに記載の窓部構造。
【請求項5】
前記窓枠の内、下枠部において、前記化粧板の上面を外側に向けて傾斜させ排水勾配を設けてある請求項1〜4いずれかに記載の窓部構造。
【請求項6】
前記ガラス支持用ガスケットは、ガラス面の室外側からガラスと前記起立片との間に挿入可能な構造としてある請求項2、3いずれかに記載の窓部構造。
【請求項7】
前記窓枠は、コンクリートに埋設されたアンカーフィンによって固定され、前記下枠部において、前記アンカーフィンと前記起立片との間にコンクリート内を貫通する排水路を設けてある請求項2、3、6いずれかに記載の窓部構造。
【請求項8】
コンクリートの外面側に化粧板が張設されるとともに、内方側に開口部が形成され、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部を備えるPCカーテンウォールユニットにおいて、前記窓部は請求項1〜7いずれかの窓部構造を備えることを特徴とするPCカーテンウォールユニット。
【請求項1】
外面側に化粧板が張設されたコンクリートによって開口部が形成されるとともに、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部構造において、
前記窓枠は前記コンクリートに固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽され、前記化粧板とガラス室外側面との間に、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延出させたガラス支持用ガスケットを取り付けたことを特徴とする窓部構造。
【請求項2】
外面側に化粧板が張設されたコンクリートによって開口部が形成されるとともに、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部構造において、
前記窓枠は前記コンクリートに固設され、コンクリートの開口部よりも開口中心側方向に延在する前記化粧板によって隠蔽され、
前記窓枠は、ガラス嵌合溝を形成するために室外側に起立片を有するとともに、該起立片の先端位置は前記化粧板の先端位置とほぼ同じ見付け位置となるように形成され、
前記起立片と前記化粧板との間に所定の隙間を有するとともに、該隙間にシール材を充填して封鎖し、ガラス室外側面と前記起立片との間に、前記シール材を覆うとともに、前記化粧板の縁部に掛かるように先端部を室外側方向に延在させたガラス支持用ガスケットを取り付けたことを特徴とする窓部構造。
【請求項3】
前記シール材として、変形性能の高い軟質系材料を用いてある請求項2記載の窓部構造。
【請求項4】
前記ガラス支持用ガスケットの室外側方向に延びた先端部において、前記化粧板側の面にL字状の段部を形成し、このL字状段部を前記化粧板の縁部に係合させてある請求項1〜3いずれかに記載の窓部構造。
【請求項5】
前記窓枠の内、下枠部において、前記化粧板の上面を外側に向けて傾斜させ排水勾配を設けてある請求項1〜4いずれかに記載の窓部構造。
【請求項6】
前記ガラス支持用ガスケットは、ガラス面の室外側からガラスと前記起立片との間に挿入可能な構造としてある請求項2、3いずれかに記載の窓部構造。
【請求項7】
前記窓枠は、コンクリートに埋設されたアンカーフィンによって固定され、前記下枠部において、前記アンカーフィンと前記起立片との間にコンクリート内を貫通する排水路を設けてある請求項2、3、6いずれかに記載の窓部構造。
【請求項8】
コンクリートの外面側に化粧板が張設されるとともに、内方側に開口部が形成され、該開口部に上枠、下枠及び左右縦枠からなる窓枠が固設され、ガラスが支持された窓部を備えるPCカーテンウォールユニットにおいて、前記窓部は請求項1〜7いずれかの窓部構造を備えることを特徴とするPCカーテンウォールユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−11147(P2013−11147A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145918(P2011−145918)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
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