説明

窓開閉検出装置

【課題】窓開の窓閉を必要に応じて異なる感度で検出可能とする。
【解決手段】窓側に配置した窓開閉検出用マグネット46による磁力レベルを窓開閉検出用ホールセンサ50で検出し、窓開閉を判定する。閾値設定部75は窓の開を判定する開判定閾値TH1と窓の閉を判定する閉判定閾値TH2を異なる値に設定する。窓開閉監視部76は、所定時間毎の判定処理を実行し、前回の判定結果が開判定の場合は閉判定閾値TH1を選択して窓開閉検出用ホールセンサ50により検出した磁力レベルと比較し、前回の判定結果が閉判定の場合は開判定閾値TH2を選択して磁力レベルと比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓の開閉状態をホールセンサなどの磁気検知素子を使用して検出する窓開閉検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窓の開閉を検出して無線により監視盤に送信して警報させる無線式の窓開閉監視装置が知られている。このような窓開閉監視装置にあっては、窓ガラスに配置したマグネットの磁力を磁気検知素子で検出し、検出磁力が低下したときに窓開閉と判断して異常検出信号を監視盤に無線送信して警報させる。また窓に設けたクレセント錠の開閉レバーに配置したマグネットの磁力を別の磁気検知素子で検出し、検出磁力が低下したときにクレセント錠の開放と判断して異常検出信号を監視盤に無線送信して警報させている。
【0003】
従来の窓開閉装置に使用される磁気検知素子は主に磁力の強弱に応じて接点を機械的にオン、オフするリードスイッチを使用していたが、近年にあっては、ホール効果を利用して磁力を検出するホールセンサを採用することが検討されている。
【0004】
ホールセンサを磁気検知素子として使用する場合、検出対象とするマグネットに近いほど強い磁力がホールセンサを通過することで高いセンサ出力が得られる。ホールセンサで検出した磁気レベルに基づく窓の開閉検出は、窓を閉じた状態で検出される磁気レベルの最大値に対し、所定の率を乗じた低い値を判定閾値として設定し、監視中に、検出している磁気レベルが低下して判定閾値以下になったら窓開と判定して窓開を示す電文を監視盤に送信して警報させる。
【0005】
また窓の開を判定した後に、磁気レベルが増加して判定閾値を超えた時、窓閉と判定して窓閉を示す電文を監視盤に無線送信し、状態を表示させるようにしている。

【特許文献1】特開2003−281636号公報
【特許文献2】特開2001−14990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のホールセンサで検出した磁気レベルと所定の判定閾値との比較により窓の開又は閉を判定する窓開閉検出装置にあっては、窓の開判定と閉判定に同じ判定閾値を使用していたため、侵入者による窓開の検出については検出感度を高め、一方、窓閉の検出については逆に検出感度を低くしたいといった使用方法に対応できないという問題がある。
【0007】
また窓開と窓閉の判定に同じ判定閾値を使用していると、設置時には予想できなかったマグネットや回路等の経年変化や温度環境の変化など何らかの要因により窓閉状態での磁力レベルが低下して判定閾値に近い値となり、このような状態で風などにより窓がゆれた場合、磁力レベルが判定閾値を下回ったり超えたりする変化を生じ、窓の開閉誤検出が行われる恐れもある。
【0008】
本発明は、窓開と窓閉を必要に応じて異なる感度で検出可能とする窓開閉検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、窓の開閉状態を監視する窓開閉検出装置に於いて、
監視対象に配置したマグネットによる磁力レベルを検出する磁気検知素子と、
監視対象の開を判定する開判定閾値と監視対象の閉を判定する閉判定閾値を異なる値に設定する閾値設定部と、
磁気検知素子で検出した検出レベルと開判定閾値又は閉判定閾値との比較により監視対象の開又は閉を判定する窓開閉監視部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、窓開閉監視部は、所定時間毎の判定処理を実行し、前回の判定結果が閉判定の場合は開判定閾値を選択して磁力レベルと比較し、磁力レベルが開判定閾値以下の場合に監視対象の開を判定し、前回の判定結果が開判定の場合は閉判定閾値を選択して前記磁力レベルと比較し、磁力レベルが閉判定閾値以上の場合に監視対象の閉を判定する。
【0011】
また、閾値設定部は、逆に、開判定閾値に対し閉判定閾値を大きい値に設定しても良い。これは開判定の感度が低く、閉判定の感度が高いことを意味する。
【0012】
磁気検知素子はホールセンサである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁気検知素子で検出した窓などの監視対象に設けたマグネットによる磁力レベルと比較する判定値として、値の異なる開判定閾値と閉判定閾値を別々に設定したことにより、例えば、閉判定値に対し大きい値となる閉判定値を設定することで、窓開の検出感度を高め、閉鎖状態にある窓が開き始めた早い段階で窓開を判定して警報を行わせることができる。
【0014】
また、閉判定値に対し大きい値となる開判定値を設定した場合には、窓開の検出感度を低下させ、風などによる窓の動きに対し誤って窓開を検出してしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明による窓開閉検出装置の設置状態を示した説明図である。図1において、本発明の窓開閉検出装置10は監視対象とする窓サッシ12a,12bの縦枠に両面テープ又はビスなどにより固定される。窓開閉検出装置10の上側には、窓サッシ12a,12bを閉じた状態で、相対する位置に窓開閉検出マグネット14を両面テープで貼り付けており、窓開閉検出マグネット14の磁力を内蔵した磁気検知素子としてホールセンサにより検出している。
【0016】
窓サッシ12a,12bを開くと、窓開閉検出マグネット14が窓開閉検出装置10から離れることで磁力が低下し、この磁力の低下をホールセンサで検出して窓開を示す検出信号を別途設置された監視盤に無線で送信して警報させる。
【0017】
また窓開閉検出装置10はその下端を窓サッシ12a,12bに設けている監視対象物としてのクレセント錠16に近接するように配置し、クレセント錠16の開閉レバー18に貼り付けたクレセント錠検出マグネット20の磁力を下端側に内蔵したホールセンサで検出している。
【0018】
クレセント錠16は開閉レバー18を図示の垂直方向に回した操作位置で窓サッシ12a,12bを施錠しており、このときクレセント錠検出マグネット20は窓開閉検出装置10に最も近接してホールセンサで検出する磁力が最大となり、施錠状態を検出している。
【0019】
開閉レバー18を下側に回してクレセント錠16を開錠すると、クレセント錠検出マグネット20が離れることで磁力が低下し、この磁力の低下をホールセンサで検出して解錠状態を示す検出信号を監視装置に無線送信して警報させる。
【0020】
図2は本発明による窓開閉検出装置の実施形態を示した組立分解図である。図2において、本実施形態の窓開閉検出装置10は装置本体22とカバー部材24で構成される。
【0021】
装置本体22は、底部側から、ベース30、金属製のプレートロックカバー32、ボディケース36、アンテナ40を備えた回路基板38及び本体カバー42を組み立ており、更に電池44が着脱自在に設けられる。カバー部材24のクレセント錠側に位置する端部には、円錐状の集磁体26がホルダー部材28に組み込み固定された状態で収納される。
【0022】
回路基板38の上部側にはセンサ基板45が起立され、ここに窓開閉検出用ホールセンサ46及び処理回路部を実装している。また回路基板38の下端にはクレセント錠施錠検出用ホール素子48が設置されている。
【0023】
図3は本実施形態による窓開閉検出装置10について、カバー部材24を装置本体22から外した状態を示した説明図である。装置本体22の上部には、赤と緑の2色LEDを用いた表示部56、施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力を判定するための閾値の登録処理を実行させる登録スイッチ60、カバー部材24の着脱を検出するタンパスイッチ64が設けられている。装置本体22はカバー部材24の嵌め込みを受けて嵌合固定する。
【0024】
カバー部材24は装置本体22に対し着脱自在であり、正面中央に表示窓57を設け、装置本体22の表示部56の表示状態が見えるようにしている。
【0025】
図4は本実施形態による窓開閉検出装置の回路構成を示したブロック図である。図4において、制御部として設けられたプロセッサ50はワンチップマイコンとして知られたコンピュータであり、1チップにCPU、ROM,RAM、AD変換ポート、各種の入出力ポートなどを備えており、本実施形態ではEEPROMなどの不揮発メモリ68を外付けしている。
【0026】
プロセッサ50に対しては窓開閉検出用ホールセンサ46で検出した窓ガラスに設けた窓開閉検出マグネット14による磁力レベル検出信号がアンプ52で増幅された後にAD変換ポート70に与えられ、デジタル変換した磁力レベル(AD変換値)を得ている。
【0027】
また、施錠検出用ホールセンサ48で検出したクレセント錠16の開閉レバー18に設けたクレセント錠検出マグネット20による磁力レベル検出信号がアンプ54で増幅された後にAD変換ポート72に与えられ、デジタル変換した磁力レベル(AD変換値)を得ている。
【0028】
プロセッサ50に対しては、表示部56、周波数切替スイッチ58、登録スイッチ60、テストスイッチ62、タンパスイッチ64、及び無線送信部66が設けられている。
【0029】
表示部56は緑と赤の2色LEDを設けており、例えば窓開や解錠などの異常検出で赤色LEDを点灯し、その後の正常復帰で緑色LEDを点灯する。周波数切替スイッチ58は無線送信部66について予め準備された複数の使用可能チャネルのいずれか1つを選択する。
【0030】
登録スイッチ60は本実施形態の窓開閉検出装置10の使用開始時に行う登録モードの設定に使用される。テストスイッチ62はリードスイッチが使用されており、テスト用のマグネットを近づけるとテストスイッチ62が動作してテスト用電文を無線送信部66から監視盤に送信させる。タンパスイッチ64はカバー部材24の着脱を検出するスイッチである。
【0031】
無線送信部66には送信回路が設けられ、監視状態を監視装置に対して無線通信を行う。
【0032】
不揮発メモリ68は装置の開判定閾値TH1と閉判定閾値TH2が予め記憶されている。
【0033】
プロセッサ50にはCPUによるプログラムの実行により実現される機能として、登録処理部74、閾値設定部75、窓開閉監視部76、施錠監視部78及び通信制御部80が設けられている。
【0034】
登録処理部74は、図1のように、窓開閉検出装置10、窓開閉検出マグネット14及びクレセント錠検出マグネット20の取り付け配置が完了した後、クレセント錠16の開閉レバー18を解錠位置に操作した状態とし、この状態で図3に示したようにカバー部材24を外して装置本体22の登録スイッチ60を操作すると、登録モードが設定され、登録処理が実行される。
【0035】
登録モードが開始されると表示部56の赤色LEDが点滅を始める。赤色LEDが点滅している間にクレセント錠16の開閉レバー18を施錠位置に操作してクレセント錠検出マグネット20を近づけた状態とし、カバー部材24を装置本体22に装着する。
【0036】
登録処理部74は登録モードの動作中は、施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルを取得し、予め設定した所定の有効レベルと比較し、有効レベルを超えていた場合には、不揮発メモリ68に磁力レベルとして記憶する。なお、2回目以降の磁力レベルは不揮発メモリ68の磁力レベルに上書きされる。
【0037】
不揮発メモリ68に磁力レベルが有効に初期登録されると、表示部56の緑色LEDが点灯し、初期登録完了を知らせる。初期登録が完了すると、登録処理部74は、初期登録した磁力レベルVsに所定比率を乗じた値を算出し、クレセント錠の施錠解錠を判断する判定閾値として不揮発メモリ68に登録し、施錠監視部78によるクレセント錠の施錠監視を開始させる。
【0038】
一方、登録スイッチ60の操作により登録モードを設定してから所定時間以内に、クレセント錠16の開閉レバー18を施錠位置にする操作を行わなかった場合には、有効レベルを超える磁力レベルが得られないために、磁力レベルの初期登録が完了せず、所定時間が経過したときに、赤色LEDが点滅から点灯に切り替わり、初期登録の失敗を表示し、登録処理のエラー状態をセットすると共に、施錠監視処理部78によるクレセント錠の施錠監視を解除する。
【0039】
この場合には、開閉レバー18を解錠位置に戻し、登録スイッチ60を操作することで、再度、磁力レベルの登録を行うことができる。
【0040】
閾値設定部75は、窓開閉検出用ホールセンサ46で検出した磁気レベルで窓の開閉を判定するための閾値を設定するもので、窓が閉じて装置側面に対し所定距離離れた位置の窓開閉検出マグネット14の磁気レベルをスパンレベルとして測定して不揮発メモリ68に記憶する。また、窓開閉検出マグネット14がない窓が開いた磁力なし状態での磁気レベルを測定し、これを零点レベルとして不揮発メモリ68に記憶する。
【0041】
判定閾値の設定は、スパンレベルから零点レベルを差し引いて変化量を求め、この変化量に対し所定比率を乗じた低い値を算出し、これに零点レベルを加えた値を基準判定閾値THとして、不揮発メモリ68に記憶する。
【0042】
更に、基準判定閾値THに基づき開判定閾値TH1と閉判定閾値TH2を決定して不揮発メモリ68に設定する。例えば開判定閾値TH1として基準判定閾値THを使用した場合(TH1=TH)、閉判定閾値TH2としては、所定の変化量ΔTHを加算又は減算することで、
TH2=TH+ΔTH
又は、
TH2=TH−ΔTH
として決定する。
【0043】
また開判定閾値TH1と閉判定閾値TH2の大小関係については、開検出の感度を高くしたいか、閉検出の感度を高くしたいかの必要性に応じて適宜に設定する。例えば開検出の感度を高くしたい場合には、
TH1>TH2
となるように設定する。この設定は同時に閉検出の感度を高くしたことを意味する。
【0044】
逆に、開検出の感度を低くしたい場合には、
TH1<TH2
となるように設定する。この設定は同時に閉検出の感度を低くしたことを意味する。
【0045】
ここで、クレセント錠16については、設置場所により様々な構造や形があることから、設置場所での登録処理が必要となるが、窓開閉検出については、窓枠の構造、寸法など設置場所の状況がほぼ設置前に想定できることから、工場出荷段階で登録作業を行ってもよい。つまり、工場出荷段階において、装置側面に対し実際の設置状況で想定される装置と窓開閉検出マグネット14の想定距離だけ離した位置に窓開閉検出マグネット14を配置してそのときの磁力レベルをスパンレベルとして測定して不揮発メモリ68に記憶する。そして上述の閾値TH1とTH2を決定するようにしても良い。
【0046】
窓開閉監視部76は窓開閉検出用ホールセンサ46から得られた磁力レベルを不揮発メモリ68から読み出した開判定閾値TH1又は閉判定閾値TH2と比較し、窓の開又は閉を判定し、判定結果を示す電文を無線送信部66から監視盤に送信して警報又は警報解除を行わせる。
【0047】
即ち、窓開閉監視部76は、タイマ割込みによる所定時間毎の判定処理を実行しており、前回の判定結果が閉判定の場合は開判定閾値TH1を選択して磁力レベルと比較し、磁力レベルが開判定閾値TH1以下の場合に窓開を判定する。一方、前回の判定結果が開判定の場合は閉判定閾値TH2を選択して磁力レベルと比較し、磁力レベルが閉判定閾値TH2以上の場合に窓閉を判定する。
【0048】
更に、窓開閉監視部76は外部から強力な磁石を近づけることで磁力レベルが閾値以下としないようにして窓を開けるような所謂不正行為に対処するため、磁力レベルが扉閉での磁力レベルに対し所定比率大きい閾値を超えた時にも窓開と見做して窓開を示す電文を送信するようにしている。また、スパンレベル及び零点レベルに基づき通常使用状態の磁力レベルの適正範囲を設定し、磁力レベルが適正範囲から上下に外れた場合には不正行為が発生したと判定するようにしても良い。つまり、上限値を窓閉時のスパンレベルよりも所定比率分高い値に設定し、下限値を扉開時の零点レベルよりも所定比率小さい値に設定して、適正範囲内に磁力レベルがあるかを検出して不正行為を判定するようにしてもよい。
【0049】
施錠監視部78は施錠検出用ホールセンサ48から得られた磁力レベルを登録処理部74により設定した閾値と比較し、閾値以下となった場合にクレセント錠の解錠と判断して解錠を示す電文を無線送信部66から監視盤に送信して警報させる。また、施錠監視部78は、解錠を検出した後に、正常に戻った場合にも、その旨の電文を監視盤に無線送信する。
【0050】
通信制御部80は開閉監視部76及び施錠監視部78の判断に基づく電文の送信に加え、一定時間間隔ごとに定期通報の電文を送信させる。
【0051】
図5は図1の設置状態におけるホールセンサとマグネットの関係を示した説明図であり、図5(A)に平面を示し、図5(B)に横方向から見た状態を示している。
【0052】
図5(A)に示すように、本実施形態の窓開閉検出装置10は内側に位置する窓サッシ12aの縦枠に両面テープ又はビスにより取り付けられ、窓開閉検出装置10の右側面に相対して窓サッシ12bのガラス面に窓開閉検出マグネット14を両面テープで接着している。
【0053】
窓開閉検出装置10に内蔵した窓開閉検出用ホールセンサ46は、図5(B)に示すように、窓開閉検出マグネット14に有効検出面を相対するようにセンサ基板45に実装しており、窓サッシ12a,12bを閉じた図示の状態で、装置側面からの距離dは最小となり、窓開閉検出マグネット14は破線で示す磁力線の方向に応じて例えばプラス極性で最大となる磁気レベル検出信号を出力している。
【0054】
窓閉における最小距離dは、窓サッシの構造や窓開閉検出装置10の取り付け状態により変化するが、本実施形態にあっては、規定範囲内の距離に配置されたときの磁力レベルに対し窓閉の判定結果が効率よく得られるように、アンプ52による増幅率や判定閾値を設定している。
【0055】
図6は、図1に対し窓の開閉が逆になった設置状態におけるホールセンサとマグネットの関係を示した説明図である。この場合には図6(A)に示すように、窓サッシ12bが内側となり、その縦枠に図5とは反対向きに窓開閉検出装置10が設置される。
【0056】
このため図6(B)の横方向から見た状態では、窓サッシ12aのガラス面に貼り付けた窓開閉検出マグネット14による破線で示す磁力線は窓開閉検出用ホールセンサ46を左から右に通過し、図5(B)の場合とは逆方向となるため、窓開閉検出用ホールセンサ46からはマイナスとなる逆極性の磁力レベル検出信号が出力される。
【0057】
図7は図4のAD変換ポート70による磁気レベル検出信号のAD変換特性を示したグラフ図である。図4に示した窓開閉検出用ホールセンサ46は磁力線の通過方向によりプラス極性の磁気レベル検出信号とマイナス極性の磁気レベル検出信号を出力する。
【0058】
窓開閉検出用ホールセンサ46からの磁気レベル検出信号はアンプ52で増幅される。アンプ52で増幅された磁力レベル検出信号(電圧信号)はAD変換ポート70により例えば8ビットの磁力レベルデータ(AD変換値)に変換される。
【0059】
このAD変換ポート70の変換特性は、図7の縦軸に示すように、10進AD変換値として0〜256の値を持ち、入力するプラス極性の磁気レベル検出信号0〜+VmaxをAD変換値128〜256に変換し、入力するマイナス極性の磁気レベル検出信号0〜−VmaxをAD変換値128〜0に変換する。
【0060】
図8は本実施形態における装置側面から窓開閉検出マグネット14までの距離dに対する窓開閉検出用ホールセンサ46で検出した磁力レベルの関係を示したグラフ図である。なお、実際のAD変換ポート70の変換特性は図7のようになるが、図8にあっては、説明を簡単にするため、磁化レベル検出信号の極性に関らず、AD変換値を0〜128として示している。
【0061】
図8の特性は、例えば図5の設置状態で、装置側面から窓開閉検出マグネット14までの距離dをd=0〜24mmの範囲で変化させて測定した磁力レベルに対応したAD変換値を示している。
【0062】
このような特性において、例えばd=20mmとなるマグネット配置を予定したとすると、このときのP点に対応した磁力レベルVsが求まる。この磁力レベルVsは、この設置状態の最大レベルであり、所謂スパンレベルを与える。
【0063】
このスパンレベルを与える磁力レベルVsの中には、ホールセンサのバラツキによるオフセットが含まれている。そこで、磁力が無いときの磁力レベルを零点レベルV0として測定する。
【0064】
窓開閉検出マグネット14の磁力を検出した窓開閉検出用ホールセンサ46からの磁力レベルから零点レベルを差し引いた値が真の磁力レベルを示す。そこで、d=20mmでの磁力レベルVsについても、(Vs−V0)として校正し、これから所定比率αだけ低い値を基準判定閾値THに設定する。
【0065】
即ち、基準判定閾値THは
TH=(1−α)(Vs−V0)+V0
として決定される。
【0066】
このようにして基準判定閾値が決定できたならば、例えば前述したように、開判定閾値TH1=THとし、閉判定閾値TH2は所定の変化量ΔTHを加算又は減算することで、
TH2=TH+ΔTH
又は、
TH2=TH−ΔTH
として決定する。
【0067】
図9は開判定閾値TH1を高い値に設定し、閉判定閾値TH2を低い値に設定した場合の開閉判定を示した説明図である。
【0068】
図9(A)はAD変換値であり、0〜128の範囲を持ち、窓閉状態での磁力レベルVsに対し、所定比率αだけ下がった値として開判定閾値TH1が設定され、それより低い値として閉判定閾値TH2が設定されている。
【0069】
図9(B)は開判定を示す。前回の磁力レベルがTH2を超えていて窓閉の判定状態にあったとすると、この場合には開判定閾値TH1が選択され、現時点で取得した磁力レベルと比較し、TH1以下であれば窓開と判定する。
【0070】
図9(C)は閉判定を示す。前回の磁力レベルがTH1以下にあって窓開の判定状態にあったとすると、この場合には閉判定閾値TH2が選択され、現時点で取得した磁力レベルと比較し、TH2以上であれば窓閉と判定する。
【0071】
この場合には、開判定閾値TH1が高いため、窓の開放方向の動きに対し早めに窓開が判定され、窓開の検出感度を高めることができる。また閉判定閾値TH2が低いため、窓の閉鎖方向の動きに対し早めに窓閉が判定され、窓閉の検出感度も高めることができる。
【0072】
図10は開判定閾値TH1を低い値に設定し、閉判定閾値TH2を高い値に設定した場合の開閉判定を示した説明図である。
【0073】
図10(A)はAD変換値であり、0〜128の範囲を持ち、窓閉状態での磁力レベルVsに対し、所定比率αだけ下がった値として開判定閾値TH1が設定され、それより高い値として閉判定閾値TH2が設定されている。
【0074】
図10(B)は開判定を示す。前回の磁力レベルがTH2を超えていて窓閉の判定状態にあったとすると、この場合には開判定閾値TH1が選択され、現時点で取得した磁力レベルと比較し、TH1以下であれば窓開と判定する。
【0075】
図10(C)は閉判定を示す。前回の磁力レベルがTH1以下にあって窓開の判定状態にあったとすると、この場合には閉判定閾値TH2が選択され、現時点で取得した磁力レベルと比較し、TH2以上であれば窓閉と判定する。
【0076】
この場合には、開判定閾値TH1が低いため、窓の開放方向の動きに対し遅めに窓開が判定され、窓開の検出感度を低くし、閉鎖状態の窓が風などによって開閉方向の移動ではなく、窓同士が近づいたり離れたりすることで、装置側面から窓開閉検出マグネット14までの距離dが変わったときの磁力レベル検出値の変動を、窓の開閉と誤検出することを抑制することができる。また閉判定閾値TH2が高いため、窓の閉鎖方向の動きに対し遅めに窓閉が判定され、窓閉の検出感度を低くでき、窓が最後まで閉まったことを検出できる。
【0077】
図11は図4のプロセッサによる本実施形態の窓開閉検出処理を示したフローチャートである。
【0078】
図11において、電池44の装着により電源が投入されると、ステップS1で初期化処理と自己診断処理が実行され、異常が無ければステップS2に進み、不揮発メモリ68に記憶されている開判定閾値TH1と閉判定閾値TH2を含むデータを読み込む。
【0079】
続いてステップS3に進み、登録モードか否か判定し、登録モードであればステップS3に進み、施錠検出用ホールセンサ48による磁力レベルに基づくクレセント錠16の開閉検出のための閾値設定を含む登録処理を実行する。登録モードは前述したように、図3のように、カバー部材24を外して登録スイッチ60を操作することで開始される。
【0080】
続いてステップS6で所定の監視周期への到達の有無を判定しており、監視周期への到達を判定するとステップS6で電池44に対するローバッテリ監視処理を実行する。このとき電池電圧が規定電圧以下に低下していると、ローバッテリを示す電文を監視盤に無線送信して障害表示を行わせる。
【0081】
次にステップS7で窓開閉監視処理を実行し、窓開又は窓閉を判定すると、その内容を示す電文を監視盤に送信する。更にステップS8で施錠監視処理を実行し、解錠またはその後の施錠を判定すると、その内容を示す電文を監視盤に送信する。続いてステップS9で定期通報時間経過かを判別し、経過を判別した場合にはステップS10に進み、定期通報電文を監視盤に送信する定期通報処理を行う。
【0082】
図12は図11のステップS7における窓開閉監視処理の詳細を示したフローチャートである。図12において、まずステップS11で窓開閉検出用ホールセンサ46による磁力レベルを取得し、ステップS12で前回は閉判定か否かチェックする。
【0083】
前回が閉判定であった場合には、ステップS13に進み、開判定閾値TH1を選択し、ステップS14で磁力レベルが開判定閾値TH1以下か否か判定する。磁力レベルが開判定閾値TH1以下の場合には、ステップS15に進んで窓開を判定し、ステップS16で開判定電文を監視装置に送信し、警報動作を行わせる。
【0084】
一方、ステップS12で前回が開判定であった場合には、ステップS17に進み、閉判定閾値TH2を選択し、ステップS18で磁力レベルが閉判定閾値TH2以上か否か判定する。磁力レベルが開判定閾値TH2以上の場合には、ステップS19に進んで窓閉を判定し、ステップS20で閉判定電文を監視装置に送信し、警報解除動作を行わせる。
【0085】
なお、上記の実施形態にあっては、クレセント錠の解錠と施錠を検出するようにしているが、窓開閉検出のみの窓開閉検出装置についても、そのまま適用できる。
【0086】
また、開判定閾値TH1と閉判定閾値TH2の決め方は上記の実施形態に限定されず、異なる閾値として適宜の方法で決定することができる。
【0087】
また、上記の実施形態は窓開閉の判定閾値の設定を例にとるものであったが、クレセント錠の開閉状態を監視対象とし、クレセント錠の解錠施錠監視についても、同様に解錠判定閾値と施錠判定閾値を異なる値に設定して、開錠と施錠を判定するようにしても良い。
【0088】
また、各閾値との比較で使用する磁力レベルは、一回の磁力レベルを単純に比較するのではなく、複数回の磁力レベルの平均値を計算して閾値と比較するようにしても良い。これにより、風などによる扉の振動で磁力レベルが短期的に大きく変動した場合であっても扉開と誤って判断するのを防ぐことができる。また判定閾値付近を所定の短時間以内に上下に変動した場合は、開閉の判定を保留して、所定時間以上に渡って閾値を超えている場合に、開閉判定を行って、状態信号を無線通信するようにしても良い。
【0089】
また、開判定閾値TH1と閉判定閾値TH2のどちらを大きくするか、つまり図9、図10のどちらのモードを採用するかは、任意に切り換え設定できるようにしても良い。
【0090】
また、本発明はその目的と利点を損なうことの無い適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明による窓開閉検出装置の設置状態を示した説明図
【図2】本発明による窓開閉検出装置の実施形態を示した組立分解図
【図3】本実施形態による窓開閉検出装置についてカバー部材を装置本体から外した状態を示した説明図
【図4】本実施形態による窓開閉検出装置の回路構成を示したブロック図
【図5】図1の設置状態におけるホールセンサとマグネットの関係を示した説明図
【図6】図1に対し窓の開閉が逆になった設置状態におけるホールセンサとマグネットの関係を示した説明図
【図7】図4のAD変換ポートによる磁気レベル検出信号のAD変換特性を示したグラフ図
【図8】本実施形態における装置側面からマグネットまでの距離に対するホールセンサで検出した磁力レベルの関係を示したグラフ図
【図9】開判定閾値TH1を高い値に設定し、閉判定閾値TH2を低い値に設定した場合の開閉判定を示した説明図
【図10】開判定閾値TH1を低い値に設定し、閉判定閾値TH2を高い値に設定した場合の開閉判定を示した説明図
【図11】図4のプロセッサによる本実施形態の窓開閉検出処理を示したフローチャート
【図12】図11のステップS7における窓開閉監視処理の詳細を示したフローチャート
【符号の説明】
【0092】
10:窓開閉検出装置
12a,12b:窓サッシ
14:窓開閉検出マグネット
16:クレセント錠
18:開閉レバー
20:クレセント錠検出マグネット
22:装置本体
24:カバー部材
46:窓開閉検出用ホールセンサ
48:施錠検出用ホールセンサ
60:登録スイッチ
74:登録処理部
75:閾値設定部
76:開閉監視部
78:施錠監視部
80:通信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓の開閉状態を監視する窓開閉検出装置に於いて、
監視対象に配置したマグネットによる磁力レベルを検出する磁気検知素子と、
前記監視対象の開を判定する開判定閾値と前記監視対象の閉を判定する閉判定閾値を異なる値に設定する閾値設定部と、
前記磁気検知素子で検出した検出レベルと前記開判定閾値又は閉判定閾値との比較により監視対象の開又は閉を判定する窓開閉監視部と、
を備えたことを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の窓開閉監視装置に於いて、前記窓開閉監視部は、所定時間毎の判定処理を実行し、
前回の判定結果が閉判定の場合は前記開判定閾値を選択して前記磁力レベルと比較し、前記磁力レベルが前記開判定閾値以下の場合に監視対象の窓開を判定し、
前回の判定結果が開判定の場合は前記閉判定閾値を選択して前記磁力レベルと比較し、前記磁力レベルが前記閉判定閾値以上の場合に監視対象の窓閉を判定することを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の窓開閉監視装置に於いて、前記閾値設定部は前記開判定閾値に対し前記閉判定閾値を小さい値に設定したことを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項4】
請求項1記載の窓開閉監視装置に於いて、前記閾値設定部は前記開判定閾値に対し前記閉判定閾値を大きい値に設定したことを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項5】
請求項1記載の窓開閉監視装置に於いて、前記磁気検知素子はホールセンサであることを特徴とする窓開閉検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−129005(P2010−129005A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305785(P2008−305785)
【出願日】平成20年11月30日(2008.11.30)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】