説明

立体の展開図作成方法および展開図作成装置、型枠製造装置および型枠製造方法、立体物、立体物の製造装置および製造方法、並びにプログラム

【課題】平面素材を切り貼りせずに展開図の折線に従って折ることで立体物を組立てることのできる展開図を1枚の平面から作成する。
【解決手段】円錐型で展開図を作成する場合、回転スイープ状立体の角数Nに応じた正N角形の平面を使用し、その平面を均等にN分割し(S100〜S110)、回転スイープ状立体を回転軸方向で開いた展開図を平面の各分割領域に配置する(S120)。各分割領域において、回転スイープ状立体の等高線と平行に回転スイープ状立体の稜線と対応する辺縁から分割領域の境界まで延長した線を補助線とする(S130)。各分割領域において、回転スイープ状立体の稜線と対応する辺縁を回転スイープ状立体の展開図の第1の折線とする。回転スイープ状立体の各等高線について補助線を予め定められた比率(円錐型では1:1)で内分する内分点同士を連結してできる線を回転スイープ状立体の展開図の第2の折線とする(S140)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体の展開図作成方法および展開図作成装置、型枠製造装置および型枠製造方法、立体物、立体物の製造装置および製造方法、並びにプログラムに関する。より詳細には、3次元の立体物の2次元の展開図を作成する仕組み、および、本発明の2次元の展開図を組立ててできる形状を持つ立体物およびその製法、このような形状を持つ立体物を製造する際に使用する型枠を製造(設計)する型枠製造装置および型枠製造方法、本発明の2次元の展開図を組立ててできる形状を持つ立体物の製造装置(特に型枠を利用する製造装置)および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元の立体物の形状としては種々のものが考えられるし、その立体物を如何様にして製造するかはその形状そのものにも左右される。
【0003】
たとえば、平面素材(紙など)を元にして、折るだけで作られる形状には厳しい制約があり、作成できる形は余りバリエーションがなかった。
【0004】
これに対して、本願発明者は、立体物の展開図を1枚の平面物から作成する仕組みを提案している(非特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】三谷純、“回転スイープ形状を内包する立体折紙の展開図自動生成手法”、日本応用数理学会 研究部会連合発表会(折紙工学、C会場(204号室)、3月8日)の資料
【非特許文献2】三谷純、“16.回転スイープ形状を内包する立体折紙の展開図自動生成手法”、2009年度日本図学会大会(セッション4:「図と幾何」、2009年5月9日)の資料
【0006】
非特許文献1,2に記載の仕組みは、2次元の折線を3次元空間の軸を中心に360/N度刻み(N>2)で回転させてできる軌跡として表わされる回転スイープの立体形状の展開図を1枚の平面(紙など)から作成する。その実現に当たっては、回転スイープ状立体を構成する隣接する構成面同士の間に適切な大きさの襞(ひだ)を配置する。回転スイープ状立体を基本形状としてその外側に襞が付加された形状の立体物の展開図を作成することになる。Nの値を大きくし、入力として用いる折線を細かい線分で表現して滑らかにすることで、近似的に曲面を持つ立体物の展開図も作成できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の形態は、非特許文献1,2に記載の仕組みと異なる手法で、回転スイープ形状を基本とする立体物の展開図を1枚の平面から作成する仕組みを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の第2の形態は、本発明の2次元の展開図を組立ててできる形状を持つ立体物およびその製法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明の第3の形態は、本発明の第1の形態で生成される展開図を組立ててできる形状を持つ立体物を製造する際に使用する型枠を製造(設計)する型枠製造装置および型枠製造方法、並びに、本発明の2次元の展開図を組立ててできる形状を持つ立体物の製造装置(特に型枠を利用する製造装置)および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の形態は、立体の展開図作成処理に関するもので、回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体の稜線を特定し、回転スイープ状立体を基本とし回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を1枚の平面で作成する。
【0011】
「展開図を1枚の平面で作成する」とは、2次元の展開図を、その折線に従って折ることで、立体物を組立てられることを意味する。
【0012】
好ましくは、回転スイープ状立体の角数に応じて平面を均等に分割し、回転スイープ状立体を回転軸方向で開いた展開図を平面のそれぞれの分割領域に配置し、分割領域のそれぞれにおいて、回転スイープ状立体の等高線と平行に回転スイープ状立体の稜線と対応する辺縁から分割領域の境界まで延長した線を補助線とする。
【0013】
そして、分割領域のそれぞれにおいて、回転スイープ状立体の稜線と対応する辺縁を回転スイープ状立体の展開図の第1の折線とするとともに、回転スイープ状立体の各等高線について補助線を予め定められた比率で内分する内分点同士を連結してできる線を回転スイープ状立体の展開図の第2の折線とする。
【0014】
本発明の第2の形態は、本発明の第1の形態で生成される展開図を、その折線に従って山折りまたは谷折りして組み立てることで立体物を形成するものである。
【0015】
本発明の第3の形態は、本発明の第1の形態で生成される展開図を組立ててできる形状を持つ立体物の製造手法に関するものである。詳しくは、回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体を基本とし回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を元にして型枠を形成する。そして、この型枠を利用して目的とする立体物を製造する。たとえば、回転スイープ状立体を基本とし回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の外形を表わすように型枠を組み立てる。そして、組立てられた型枠で形成される空間部分に樹脂や金属などの材料を充填し、充填された材料を硬化させ、充填された材料が硬化された後に型枠を除去する。
【0016】
なお、本発明に係る仕組み(立体物の製造に関するものは特に型枠を形成する点に関して)は、電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェアで実現することもでき、このためのプログラムやこのプログラムを格納した記録媒体を発明として抽出することも可能である。プログラムは、コンピュータ読取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよいし、有線あるいは無線による通信手段を介した配信により提供されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の形態および第2の形態によれば、回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体を基本とする立体物の展開図を1枚の平面から作成できる。本発明により作成された展開図の折線に従って折ることで回転スイープ状立体を基本とする立体物を組み立てることができる。
【0018】
その手法は、回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を作成するものである。回転スイープ状立体の外側に出す要素は、本発明は三角断面の突起であり、非特許文献1,2に記載の仕組みは襞であり、両者には相違があり、展開図を組立ててできる立体物の形状も両者では異なる。
【0019】
その結果、平面素材(紙など)を切ったり貼ったりせずに折るだけで作られる形状のバリエーションが広がり、意匠的、工業応用品的にも応用範囲を拡大できる。
【0020】
さらに、本発明の第3の形態によれば、第1の形態を利用して型枠を形成して、この型枠を使用して立体物を形成することで、回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】円錐型の展開図を作成する場合の基本的手法を説明する図である。
【図1A】円錐型の展開図を作成する場合の基本的手法の別例を説明する図である。
【図2】円柱型の展開図を作成する場合の基本的手法を説明する図である。
【図3】円錐型に適用される棄損防止処理を説明する図である。
【図4】タイリング処理の基本的な考え方を説明する図である。
【図5】タイリング処理で配置される回転スイープ状立体の基本要素の一例を示す図(N=3)である。
【図5A】タイリング処理で配置される回転スイープ状立体の基本要素の一例を示す図(N=4)である。
【図5B】タイリング処理で配置される回転スイープ状立体の基本要素の一例を示す図(N=6)である。
【図6】タイリング処理の適用の概要を説明する図(その1)である。
【図6A】タイリング処理の適用の概要を説明する図(その2)である。
【図7】本実施形態の展開図作成装置の一構成例を説明する図である。
【図8】円錐型の展開図を作成する手順の一例を示したフローチャートである。
【図8A】完成品に内包される立体形状から円錐型で展開図が作成される過程を視覚的に表した図(その1)である。
【図8B】完成品に内包される立体形状から円錐型で展開図が作成される過程を視覚的に表した図(その2)である。
【図8C】完成品に内包される立体形状から円錐型で展開図が作成される過程を視覚的に表した図(その3)である。
【図8D】円錐型の展開図を組み立ててできる作品例を示す図である。
【図9】円柱型の展開図を作成する手順の一例を示したフローチャートである。
【図9A】完成品に内包される立体形状から円柱型で展開図が作成される過程を視覚的に表した図(その1)である。
【図9B】完成品に内包される立体形状から円柱型で展開図が作成される過程を視覚的に表した図(その2)である。
【図9C】円柱型の展開図を組み立ててできる作品例を示す図である。
【図10】円錐型の第1作品例の詳細を示す図である。
【図10A】円錐型の第2作品例の詳細を示す図である。
【図10B】円錐型の第3作品例の詳細を示す図である。
【図10C】円錐型の第4作品例の詳細を示す図である。
【図11】円柱型の第1作品例の詳細を示す図である。
【図11A】円柱型の第2作品例の詳細を示す図である。
【図11B】円柱型の第3作品例の詳細を示す図である。
【図11C】円柱型の第4作品例の詳細を示す図である。
【図12】タイリング処理を適用した作品例を示す図である。
【図13】本実施形態の型枠設計装置の一構成例を説明する図である。
【図13A】型枠図面の生成処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図13B】本実施形態の立体物製造装置の一構成例を説明する図である。
【図13C】本実施形態の立体物製造処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。説明は以下の順序で行なう。
1.基本概念(概要、円錐型(折線、ほぼ曲線)、円柱型、棄損防止、タイリング処理)
2.システム概要(基本構成、操作画面、電子計算機による構成)
3.展開図の作図手法(円錐型、円柱型)
4.作品例(円錐型、円柱型、タイリング)
5.立体物の製法(型枠設計装置、型枠設計処理、立体物製造装置、立体物製造処理)
【0023】
<基本概念>
[概要]
本実施形態の展開図を作成する手法は、1枚の平面素材(紙など)から、立体的な形状を製作するための展開図を自動生成する手法に関する。本実施形態は、回転スイープによって生成される軸対称形の立体形状を内包する立体物を対象とし、このような立体物の展開図を1枚の平面物で作成するための設計手法として、回転スイープ状立体QJの稜線に断面が三角形をなす突起(外部突起と称する)を付加する手法をとる点に特徴がある。
【0024】
ここで、軸対称な立体形状(回転スイープ状立体QJ)を内包する折紙の展開図を自動的に生成する際には、好ましくは、完成後の立体形状の幾何データを自動生成し、完成予想図をCG(CG(Computer Graphics )で表示するようにする。展開図を作成する処理は、ハードウェア、ソフトウェアの何れかの単独の構成や任意の組合せ形態で実現できる。
【0025】
好ましくは、展開図から完成物を組み立てる際(加工時)に、素材が棄損しないように折線が集中する箇所の折線を間引くようにする。好ましくは、CG表示上で操作者からの変更指示を受け付けて展開図にその変更を反映させるようにする。完成予想図を見ながら、計算機上でデザインの試行錯誤が容易にできるし、容易にバリエーション豊かな形状をデザインできる。
【0026】
回転スイープは、2次元の折線(あるいは曲線)を3次元空間内の軸を中心に回転させて軸対称形の立体形状を生成する手法であり、既存のCG(コンピュータグラフィックス)やCAD(電子計算機支援型設計)のコンピュータソフトで一般に用いられる形状生成操作の1つである。2次元の折線(あるいは曲線)は、回転スイープ状立体QJの稜線と対応するもので、稜線は、回転スイープ状立体QJの2つの面の境界にて各面の端縁を形成する線である。
【0027】
対象とする回転スイープの立体形状(回転スイープ状立体QJ)は、2次元の折線(あるいは曲線)を軸周りに360/N度(N>2)刻みで回転させてできる軌跡として表わされる多面体として表現される。Nの値を大きくし、入力として用いる折線を細かい線分での折線で表現して滑らかにすることで曲線になるから近似的に曲面折紙を作成できる。
【0028】
三角断面を持つ外部突起は、元の立体形状にとっては本質的に不要なものであり、表側に出ることが好ましくない場合もある。しかしながら、外部突起も作品(デザイン)の一部であると考えることで、単純な展開図で目的の形を表現できるという利点が得られる。さらに、入力の折線を滑らかにすることで、滑らかな曲面を持つ立体物を少ない労力で作成できる利点も得られる。
【0029】
一般的に、平面素材(紙など)を切ったり貼ったりせずに、折るだけで作られる形状には厳しい制約があり、作成できる形はあまりバリエーションがない。しかしながら、本実施形態の仕組みを適用することで、回転スイープの立体形状を内包し、回転スイープ状立体の稜線部分に三角断面の外部突起が付加された新たな立体物を1枚の平面物から組み立てることができる。稜線を曲線で規定することで曲面を含む形をも作ることができる。
【0030】
このような展開図の生成手法を適用して生成される展開図を元にして立体物を製造する際の型枠の図面(型枠図)を生成することもできる。型枠図に基づいて生成された型枠を組立てて、その内部にできる空間を樹脂や金属などの材料で充填して硬化させてから型枠(砂型など)を取り外すことで、回転スイープ状立体を基本形状に持ち、その稜線部分に三角断面の外部突起を持つ立体物を簡単に製造できる。
【0031】
意匠的にも工業応用品的にも応用範囲の広い形状を設計できるようになる。たとえば、ギフトやラッピングや新しいパッケージなどのデザインへの活用が考えられる。また、衣装の飾り(コサージュ)への活用も考えられる。さらには、ランプシェードなどの家具や意匠性の要求される製品デザインへの応用も考えられる。さらには、パッケージやランプシェードや衣装飾りなどを設計製造する企業に設計用のソフトウェアとして提供することも考えられる。三角断面の外部突起を持つ置物などとして提供することもできる。
【0032】
ここで、回転スイープで得られる立体物の展開図や型枠を作成する場合、基本的には、対象形状は、折線(あるいは曲線)を360/N刻みで回転させて得られるため、1つの展開面は台形を基本とし、特殊な場合に上底の長さがゼロの三角形となり、それら展開面の集合で3次元形状を構成できる。
【0033】
展開面が三角形、四角形の何れの場合でも(さらにそれらの組合せでも)、矩形(長方形)の平面物で展開図を作成でき、これを円柱型(あるいは円筒型)と称する。一方、展開面に三角形を持つ場合(さらに台形も持ってもよい)には正N角形の平面物で展開図を作成でき、これを円錐型と称する。
【0034】
何れの場合も、基本となる回転スイープ状立体を複数層に配置してそれぞれを密着させた構造にすることができる(後述の図10、図11A、図11B、図11Cを参照)。
【0035】
本実施形態の展開図の作成手法は、回転スイープの軸を3次元空間内で垂直に定めると、対象形状を折った後の展開形状を、等高面(水平面)で切断した断面図に対して、切断面の形状の頂点に三角形の断面の突起物が付加された状態のものにする。ここで、三角形の断面の突起物の寸法を如何様に設定すれば、1つの平面物から所望の形状の回転スイープ状立体QJを内包し、各稜線に三角断面の外部突起が付加された立体物の展開図を作成できるかが決まる。以下、この点について、円錐型と円柱型のそれぞれについて説明する。
【0036】
[円錐型:折線]
円錐型の展開図は、正N角形の平面(紙など)を基本として展開図を作成する手法である。本例の場合、対象形状を内包する少なくとも円錐状の形状を持つ立体物をなす展開面の隙間に、適切な大きさの三角断面の外部突起をなす領域を配置することで埋め合わせるようにして展開図を実現する。
【0037】
展開面の隙間に、適切な大きさの三角断面を配置するためには、基本となる2つの展開面の間に、三角形をなす部分の領域(三角断面領域AT)を入り込ませる必要がある。その条件について以下に考察する。
【0038】
図1は、円錐型の展開図を作成する場合の基本的手法を説明する図である。図1(1)は、一面が2等辺三角形をなした錐体(N角錐)の一部分を示した図である。図1(2)は、その錐体の一部分の水平断面図である。因みに、図1(2)はN=4の場合で示している。
【0039】
稜線OBには断面が三角形をなした三角断面の外部突起が付加されている。稜線は、展開図において、第1の折線と対応する。頂点Oから第1の面S1における底辺BB”への垂線と底辺BB”との交点をAとする。同様に、頂点Oから第2の面S2における底辺への垂線と底辺との交点をA’とする。外部突起の底辺側の2つの頂点をそれぞれC,C’とし、頂点C,C’を結ぶ底辺への頂点Oからの垂線との交点(底辺C,C’の中点)をDとする。図1(2)において、垂線O’Aと稜線O’Bのなす角∠AO’Bをαとする。αは、「360°/N×1/2=180°/N」となる。
【0040】
図1(3)は、図1(1)に示した立体物の一部分の展開図である。以下では、線分BCの長さを適切に設定することで、1枚の平面物(紙など)から図1(1)に示した立体物を組み立てることができることを示す。三角断面の外部突起を持つ回転スイープ状立体QJの展開図を作成するときには、隣接する2つの基本展開面S1,S2の間に三角断面領域ATを入り込ませることになる。図1(3)の展開図にはその様子が示されている。
【0041】
回転スイープ状立体QJはN角錐であるので、平面をN個の領域に分割して、各分割領域に基本展開面を均等に配置する。たとえば、2つの基本展開面S1,S2を配置する各分割領域の境界線をOEとする。稜線OBと対応する基本展開面S2側の辺をOB’とする。稜線(母線)と対応する展開図上の線は第1の折線となる。
【0042】
境界線OEに対して三角断面領域ATをなす部分を線対称で配置する。つまり、基本展開面S1側の辺OBと基本展開面S2側の辺OB’の間に三角断面領域ATの部分が境界線OEに対して線対称で配置される。したがって、立体物および展開図の何れにおいても、△OBCと△OB’C’は合同(△OBC≡△OB’C’)である(関係式1とする)。
【0043】
また、立体物において、△OBC’と△OABは同一平面上に配置されるし、△OBCと△OA’Bは同一平面上に配置される(関係式2とする)。一方、展開図では点A,B,Cは同一直線上に配置される。
【0044】
図1(2)より、CD=BCcosα(関係式3とする)である。図1(3)より、境界線OEに対して基本展開面S1側と基本展開面S2側は対称性を持つので、境界線OEと直線CC’は垂直(OE⊥CC’)であり、また、△AOEと△DCEは相似(△AOE∽△DCE)である。したがって、直線DCと直線CEとがなす角(∠DCE)はαに等しくなる。これより、CD=ECcosαとなる(関係式4とする)。関係式3と関係式4から、線分BCと線分ECとは同じ長さになる(BC=EC)。
【0045】
つまり、稜線に三角断面の外部突起が付加された回転スイープ状立体QJの展開図を作成して回転スイープ状立体QJを組み立てる際には、図1(3)中でBC=EC(B’C’=EC’)となるような点C(点C’)を頂点O側に連結してできる線分を展開図の第2の折線とすればよい。因みに、展開図(図1(3))から推測されるように、正N角形の平面物における頂点部分の三角形△CC’Eは不要な部分であり切り落としてもよい。
【0046】
図1(4)は、前記の条件を一般展開した場合を説明する図である。2等辺三角形の底辺BB”側のさらに下に底辺BB”と平行に所定の長さの水平線を配置し、2等辺三角形の底辺BB”との間で四角形を形成した状態を示している。この状態は、回転スイープ状立体QJの稜線を、「一定の条件を持つ折線」で表わすことと等価である。「一定の条件を持つ折線」と称したのは、突き抜けを防ぐためには、回転軸の軸方向に単調増加、または単調減少するような線である必要があることに基づく(非特許文献1,2の6.2を参照)。
【0047】
この場合、折線同士が交差する部分を通る水平線に着目して前述と同様にして考えればよい。たとえば、図1(4−1)において、頂点Oから新たに追加した水平線への垂線との交点をaとし、水平線上の四角形の頂点をb、水平線と境界線との交点をeとする。また、2等辺三角形の底辺BB”との間で四角形を形成したことに伴って形成する三角断面の外部突起(図1(4−2)を参照)をなす底辺をcc’とする。
【0048】
展開図では点a,b,c,eは同一直線上に配置されるので、線分bcと線分ecとを同じ長さにすることで(bc=ec)、円錐型により、1枚の正N角形の平面物で、回転スイープ状立体QJの展開図を作成することができる。因みに、正N角形の平面物における頂点部分の三角形△cc’eは不要な部分であり切り落としてもよい。
【0049】
[円錐型:ほぼ曲線]
図1Aは、円錐型の展開図を作成する場合の基本的手法の別例を説明する図である。基本的手法は前述と同じであるが、対象としている立体物(回転スイープ状立体QJ)の稜線がほぼ曲線で示される場合の対処を説明するものである。このような場合は、折線の角部分での水平線に着目したことから推測されるように、前述の水平線を等高線に置き換えて同様の手法を適用すればよい。図からも分かるように、事実上、稜線を細かい線分での折線で表現して滑らかにすることでほぼ曲線を表すことができるので、曲線を示す折線の角部分での水平線(等高線)に着目した処理を先述のようにして適用すればよい。
【0050】
たとえば、図1A(1)には、稜線が曲線の回転スイープ状立体QJを内包し、稜線に三角断面の外部突起が付加されている立体物の全体概要が示されている。図中には等高線aと領域分割線bが示されている。稜線(母線)と対応する展開図上の線は第1の折線となる。
【0051】
図1A(2)は、図1A(1)に示した立体物の1/4の部分(矢指Xの外部突起を含む部分)を取り出して示した図である。図1A(3)は、図1A(2)に示した1/4部分図におけるある階層部分(矢指Yの部分)を取り出して示した図である。この図は、図1(4−2)と対応する。 図1A(4)は、図1(1)に示した立体物の全体の展開図である。図1A(5)は、図1(1)に示した立体物の一部分(図1A(2)の部分)の展開図である。
【0052】
図1での説明と同様に、ほぼ曲線状の稜線に三角断面の外部突起が付加された回転スイープ状立体QJの展開図を作成して回転スイープ状立体QJを組み立てる際には、図1A(5)中でBC=ECとなるような点Cを連結してできる線分を展開図の第2の折線とすればよい。因みに、展開図(図1(4),(5))から推測されるように、正N角形の平面物における頂点部分の三角形△cc’eは不要な部分であり切り落としてもよい。
【0053】
このように、円錐型の場合は、正N角形の平面物を使用して、展開図の中心となる頂点Oと、回転スイープ状立体QJの等高線(水平線を含む)と対応する正N角形の辺と平行な線分を稜線と対応する辺(線)から分割領域の境界線まで延長した線を補助線とし、補助線を均等に2分する内分点を連結してできる線を第2の折線とすることで、所望の形状の回転スイープ状立体QJの展開図を作成できる。稜線が直線の場合には、つまり、回転スイープ状立体QJを複数の点を連結した折線で示す場合は、頂点Oと前述の各内分点をそれぞれ結んだ線分を第2の折線とすればよい。前述のように、稜線と対応する線が第1の折線となる。
【0054】
図1A(4)、図1A(5)では稜線を曲線で示しているので図示しないが、回転スイープ状立体QJの基本形状を折線で表わすときには、折線同士の交点を通る水平線を延長してできる補助線と第2の折線の交点(図1(3)のC,C’やc,c’)同士を連結して第3の折線を追加してもよい。図1では1/4部分しか示してないが、この操作を全体に施すことで、第3の折線は、たとえば、図1(3)の線分CC’や線分cc’と水平線で構成される(後述の図8Cを参照)。第3の折線を追加しなければ、展開図を組立てたときに完成される立体物の稜線を曲線にすることができ、その結果、完成された立体物の面を曲面にすることができる。
【0055】
[円柱型]
円柱型(円筒型)の展開図は、長方形(矩形)の平面(紙など)を基本として展開図を作成する手法である。本例の場合、対象形状を内包する円柱をなす展開面の隙間に、適切な大きさの三角断面の外部突起をなす領域を配置することで埋め合わせるようにして展開図を実現する。筒状に展開図を貼り合わせるパターンとなる。
【0056】
円錐型と同様に、展開面の隙間に、適切な大きさの三角断面を配置するためには、基本となる2つの展開面の間に、三角形をなす部分の領域(三角断面領域AT)を入り込ませる必要がある。その条件について以下に考察する。
【0057】
図2は、円柱型の展開図を作成する場合の基本的手法を説明する図である。図2(1)は、回転スイープ状立体QJの稜線の一部分を示した図である。図2(2)は、その回転スイープ状立体QJの一部分の水平断面図である。
【0058】
稜線Bbには断面が三角形をなした三角断面の外部突起が付加されている。稜線(母線)と対応する展開図上の線は第1の折線となる。点O’からの垂直線と水平線との交点をAとする。断面の中心角に関する角度をαとする。長方形に対する領域の分割数をNとしたとき、αは「360°/N×1/2=180°/N」となる。外部突起の底辺側の2つの頂点をそれぞれC,C’とし、頂点C,C’を結ぶ底辺C,C’の中点をDとする。
【0059】
図2(3)は、図2(1)に示した立体物の一部分の展開図である。先ず、長方形の下辺に着目して、線分BC(線分B’C’)の長さを適切に設定することで、1枚の平面物(紙など)から図2(1)に示した立体物を組み立てることができることを示す。回転スイープ状立体QJの展開図を作成するときには、隣接する2つの基本展開面S1,S2の間に三角断面領域ATを入り込ませることになる。図2(3)の展開図にはその様子が示されている。
【0060】
円錐型の場合と同様に、分割領域の境界線に対して対称性を持って三角断面領域ATを配置することになるので、底辺C,C’の中点Dは分割領域の境界線上に配置される。展開図では点A,B,C,D,C’B’は同一直線上に配置される。
【0061】
ここで、図2(2)より、CD=BCcosα(関係式3’とする)であり、CD:BC=cosα:1となる。つまり、展開図上において、点Cは、線分DBを、cosα:1に内分する位置に配置される。
【0062】
同様のことは、長方形の上辺に着目した場合でもいえる。すなわち、外部突起の上辺側の2つの頂点をそれぞれc,c’とし、頂点c,c’を結ぶ上辺c,c’の中点をdとする。上辺c,c’の中点dは分割領域の境界線上に配置される。展開図では点b,c,d,c’b’は同一直線上に配置される。
【0063】
ここで、図2(2)より、cd=bccosα=BCcosα(関係式3”とする)であり、cd:bc=cosα:1となる。つまり、展開図上において、点cは、線分dbを、cosα:1に内分する位置に配置される。
【0064】
このような関係を満たすことで、円柱型により、1枚の長方形の平面物で、回転スイープ状立体QJの展開図を作成することができる。
【0065】
つまり、円柱型の場合は、長方形の平面物を使用して、回転スイープ状立体QJの水平線と対応する展開図(長方形)の各分割領域の上辺(下辺)と平行に境界線まで延長した延長線(図のBDなどと対応)のcosα(境界線側):1(基本展開面の頂点側)となる内分点を連結することでできる線分を展開図の第2の折線とすることで、所望の形状の回転スイープ状立体QJの展開図を作成できる。稜線が直線の場合には、つまり、回転スイープ状立体QJを複数の点を連結した折線で示す場合は、前述の各内分点を結んだ線分を第2の折線とすればよい。
【0066】
図示しないが、対象としている立体物(回転スイープ状立体QJ)の稜線がほぼ曲線で示される場合には、前述の水平線を等高線に置き換えて同様の手法を適用すればよい。回転スイープ状立体QJの基本形状を折線で表わすときには、折線同士の交点を通る水平線を延長してできる補助線と第2の折線の交点同士を連結して第3の折線を追加してもよい。第3の折線を追加しなければ、展開図を組立てたときに完成される立体物の稜線を曲線にすることができる。
【0067】
[棄損防止]
図3は、円錐型に適用される棄損防止処理を説明する図である。円錐型で作成した展開図から立体物を組み立てる(作成する)場合、図3(1−1)、図3(2−1)に示すように、複数の折線が交差する点(頂点)では、折り筋の加工時や折り操作時に破けてしまう虞れがある。
【0068】
その対策として、本実施形態では、本手法を適用しない場合に折線が集合する部分(他の分割領域との境界側の端点:図の矢指A)では、折線が交差しないように、その線分の端点を頂点(領域境界)から離れる方向に一定距離移動させる。
【0069】
この棄損防止処理は、図3(1−2)、図3(2−2)に示すように、頂点に向かう全ての折線に対して適用してもよい。あるいは、間引いて処理してもよい。たとえば、図3(1−2)に示すように、同一の頂点を共有する線分が3以上である場合に、2つを除く3つ目以降の各線分に、端点を頂点から離れる方向に一定距離移動させる。あるいは図3(2−3)に示すように、同一の頂点を共有する線分が3以上である場合に、幾つかおき(図は1つおき)の線分に、端点を頂点から離れる方向に一定距離移動させる。
【0070】
このような棄損防止の対処をした上で展開図を紙などに出力することで、頂点部分に折線が集中せず破れを防止できる。
【0071】
因みに、円柱型でも棄損防止処理を適用してもよいが、多くのケースではその必要性は乏しい。円柱型で展開図を作成する場合は、円錐型の頂点部分が存在せず、また、殆どのケースでは、折線が一箇所に集中するのは稜線(母線)と対応する1本の第2の折線と水平線に対応する1本の第3の折線に限られるので、ここで説明した棄損防止処理を適用する意義は殆どないと考えてよい。
【0072】
[タイリング処理]
図4〜図6Aは、タイリング処理を説明する図である。ここで、図4は、タイリング処理の基本的な考え方を説明する図である。図5〜図5Bは、タイリング処理で配置される回転スイープ状立体QJの基本要素の一例を示す図である。図6〜図6Aは、タイリング処理の適用の概要を説明する図である。
【0073】
回転スイープ状立体QJの稜線に三角断面の外部突起を持つ立体物を複数配した(敷き詰めた)状態のものを1枚の平面物から作成することもできる。このような仕組みをタイリングと称する。ただし、タイリング処理は、全ての回転スイープ状立体QJに対して適用できるものではなく、ある条件を満たすものについてのみ適用できる。以下では、このような三角断面の外部突起を持つ立体折紙を敷き詰めた形状(タイリングパターン)の展開図を作成する手法について説明する。
【0074】
立体折紙の敷詰めなどに適用するタイリング処理において、平面を充填できる(タイリングできる)正多角形は、図4(1)に示すように、正三角形(1−1)、正四角形(1−2)、正六角形(1−3)の3つである。各頂点に立体折紙を配置した形を1枚の紙から作ることを立体折紙の敷詰め(タイリング処理)という。
【0075】
タイリング処理の基本的な考え方は、図4(2)に示すように、図中の矢指Aの箇所に立体折紙を配置した場合、それに接続するように図中の○で示した場所に立体折紙を配置することにある。つまり、それぞれN=6,4,3の円錐型の展開図に組み立てられた立体物(たとえば立体折紙)を配置することになる。円錐型の展開図では、任意の大きさの平面を同じパターンで埋め尽くすことが可能である。円柱型の展開図ではタイリング処理を適用できない。つまり、実現可能なための条件としては、先ず、回転スイープ状立体QJの展開図(立体折紙)が円錐型で構成されることと、タイリングできる正多角形は、正三角形、正四角形、正六角形の3つであるということである。
【0076】
複数の展開図を敷き詰める際の手順から実現可能なための条件としては、図4(3)に示すように、回転スイープ状立体QJの稜線をなす母線を構成する最後の線分を水平にすることがポイントになる。このようにすると、図4(2)に示す矢指Aと図中の○で示した場所にN=6,4,3の円錐型の立体折紙の展開図をタイリングできる。
【0077】
図4(3−1)や図4(3−2)の例のように、稜線をなす母線の最後の要素が水平であればよく、その他の部分の形状は基本的には不問である。タイリングする各立体折紙も全てが同一の形状の物であることは必須でなく、バラバラの形状のものを敷き詰めることもできる。ただし、タイリングをするためには、図6Aに示した展開図からも分かるように、連結される各立体の襞の幅(第1の折線(稜線)と第2の折線のそれぞれの間隔)が同一である必要がある(これを「タイリングの制約」と称する)。これ以降は説明のために図4(3−1)の入力を例に説明する。
【0078】
図4(3−1)の入力に対して、N=3,4,6の展開図を円錐型により生成する。たとえば、N=3のときは図5のような形状を得られる。N=4のときは図5Aのような形状を得られる。N=6のときは図5Bのような形状を得られる。それぞれ、図中の(1)が外観図であり、(2)が展開図である。
【0079】
ここで、N=3のときの図5に着目したとき、展開図の外周は切取り線であり、それは不要なので削除すると、図6(1)に示すようになる。図6(2)に示すように、正六角形をタイリングした各頂点上にN=3の立体折紙(図5、図6(1)に示す図)を配置し、外側に延びる折線を延長し隣接する展開図の折線と接続することでタイリング処理が完了する。入力とした母線の最後を水平にしたのは、この接続ができるようにするためである。任意の数だけ繰り返し配置できるし、母線の最後の要素を除く他の要素の形状は不問でありたとえば図4(3−2)の入力例でもよいから、バラバラの形状のものを配置することもできる。
【0080】
正四角形や正三角形のタイリングの場合でも同様である。たとえば、図6A(1)に示すように、正四角形をタイリングした各頂点上にN=4の立体折紙(図5Aに示す図を参照)を配置し、外側に延びる折線を延長し隣接する展開図の折線と接続することでタイリング処理が完了する。図6A(2)に示すように、正三角形をタイリングした各頂点上にN=6の立体折紙(図5Bに示す図を参照)を配置し、外側に延びる折線を延長し隣接する展開図の折線と接続することでタイリング処理が完了する。
【0081】
<システム概要>
図7は、本実施形態の展開図作成装置の一構成例を説明する図である。ここで、図7(1)は、本実施形態の展開図作成装置の一構成例を示すブロック図である。図7(2)は、展開図作成装置100の他の構成例(電子計算機で構成する場合)を示すブロック図である。
【0082】
[基本構成]
図7(1)には、本実施形態の展開図作成装置の一構成例を示すブロック図が示されている。本実施形態の展開図作成装置100は、立体形状特定部110、記憶部130、表示制御部150、展開図作成部170、印刷制御部180(画像形成制御部)、主制御部190を備える。
【0083】
立体形状特定部110は、対象となる立体物の基本形状を特定する。立体形状特定部110としては、たとえば、実際の立体物から3次元(3D)スキャナなどで立体物の基本形状を特定する手法をとることができる。3Dスキャナを用いる場合、レーザ光線で対象物をスキャンし、3次元座標を持つ点群データを取得することができ、種々の対象物を高精度で効率的に3次元モデル化し解析することができる。また、立体物の2次元図面や写真などを2次元(2D)スキャナで読み取ってそのデータから立体物の基本形状を特定する手法をとることもできる。これらスキャナ装置を用いる手法はスキャナ装置が必要であるが操作者の入力の手間が掛らないという利点がある。
【0084】
あるいは、立体形状特定部110は、製図(図形)ソフトのデータを流用するようにしてもよい。この場合、既に作成されている図形データを無駄にしなくて済むし、スキャナ装置が不要であるし、操作者は立体物の基本形状を入力する手間を省ける利点がある。
【0085】
さらには、立体形状特定部110は、GUI(Graphical User Interface)を利用した操作画面で基本形状を特定する線(を特定する座標)の入力を操作者より受け付けるようにしてもよい。操作者の入力の手間が掛るが特殊な装置が不要であるし、スキャナ装置や製図(図形)ソフトのデータがない場合でも立体物の展開図を作成できる利点がある。
【0086】
ここで、本実施形態の「対象となる立体物」は、回転スイープ形状を持つ立体物を対象とする。そして、完成された立体物としては、回転スイープ状立体を内包し(基本とし)、回転スイープ形状の稜線部分に、断面が三角形状の外部突起を持つものとする。
【0087】
記憶部130は、各種の処理で使用するデータ(立体の3次元データや展開図データなど)を記憶する。表示制御部150は、たとえば液晶表示装置やCRT表示装置などの各種の表示デバイスを使用して、各種の画面表示を行なう。
【0088】
展開図作成部170は、立体形状特定部110で特定された立体物の基本形状(回転スイープ形状)を元にして、回転スイープ形状の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を作成する。
【0089】
印刷制御部180は、印刷装置を使用して展開図作成部170で生成された展開図を平面物(たとえば紙など)に印刷する。主制御部190は、展開図作成装置100の各機能部を制御する。
【0090】
展開図作成部170は、詳細には、稜線特定部172、作成方式特定部174、折線特定部178を有する。
【0091】
稜線特定部172は、回転スイープ形状を持つ立体物の稜線(母線)を特定する。折線特定部178は、稜線(母線)と対応する展開図上の第1の線を第1の折線とする。
【0092】
稜線の特定方法としては、立体形状特定部110が実際の立体物からの形状を特定する場合は、特定された形状データから立体物の稜線を特定する。また展開図作成部170は、立体形状特定部110が操作画面で物体の基本形状を特定する線や座標の入力をGUIを利用して受け付ける場合は、入力された線や座標の情報から立体物の稜線を特定する。
【0093】
作成方式特定部174は、操作部の機能を具備し、2次元平面の分割数Nの指定と円錐型および円柱型の何れで展開図を作成するか、タイリング処理の有無などの指定を受け付けて展開図の形式を決定する。たとえば、作成方式特定部174は、立体形状特定部110が実際の立体物から(3次元スキャナなどで)基本形状を特定している場合には特定された基本形状の面数に分割数Nを整合させる。なお、基本形状の面数とは異なる分割数Nの入力を受け付けることで、基本形状を、実際の立体物とは異なるようにすることもできる。また、作成方式特定部174は、立体形状特定部110が線や座標の入力を受け付けて立体物の基本形状を特定している場合には、分割数Nの指定を受け付ける。
【0094】
折線特定部178は、作成方式特定部174で決定された作成方式に従って、展開図の折線を予め定められた手順に従って決定する。たとえば、折線特定部178は、先ず、平面をN個に分割し、稜線と分割数Nで決まる基本の展開面の形状を分割領域のそれぞれに均等に配置する。その後、回転スイープ状立体の稜線(母線)と対応する展開図上の第1の線と、等高線(水平線)に対応する展開図上の第2の線(辺)、とが交差する点を第1の交点とする。また、折線特定部178は、第2の線を領域の境界まで延長したときに領域の境界と交差する点を第2の交点とする。
【0095】
そして、折線特定部178は、第1の交点と第2の交点との間を予め定められた比率で内分する点を設定する。内分点は、前述のように、円錐型の場合は中点であり、円柱型の場合はcos(π/N):1となる点である。そして、各等高線(水平線)についての内分点同士を連結するように第2の折線を追加する。
【0096】
折線特定部178はさらに、追加した第2の折線と第2の線の延長との交点を特定し、その交点同士を連結するように第3の折線を追加する。
【0097】
[操作画面]
図示しないが、表示制御部150は、基本概念における説明から理解されるように、円錐型で展開するのか円柱型(円筒型)で展開するのかの情報、分割数N、基本となる回転スイープ状立体を規定する母線(稜線)を指示する折線の入力などを受け付ける操作画面の提示を行なう。展開図作成部170は、この操作で受け付けた情報に基づいて、前述した導出過程に従って各種の線分を追加していく。
【0098】
また、表示制御部150は、完成品の状態を示す3Dモデルを提示する。好ましくは、作成された展開図から立体物を組み立てて行く過程またはその逆の過程をアニメーション表示する。好ましくは、3Dモデルに対しての変更操作を直接に受け付け展開図に反映させる。つまり、表示された3次元状の模式図上で変更指示を受け付け、その受け付けた情報に従って展開図を作成し直す。たとえば、変更指示を折線の入力画面に自動的に反映させ同様の処理過程を繰り返すことで、変更後の展開図や3Dモデルを提示する。
【0099】
実際の立体物をスキャナで読み取るあるいは操作者が画面上をマウスなどの指示部材で折線を入力する、という単純なインタフェースで様々な形の立体物の展開図およびその完成品(たとえば折紙作品)を設計できる。折った後の形状は3DCG技術で画面上に表示されるため、実際の平面物(紙など)を折らずに試行錯誤することができる。折線入力からの変更操作だけでなく3Dモデルからの変更操作によっても試行錯誤することができるようにすることで使い勝手がよくなる。
【0100】
[電子計算機による構成]
図7(2)には、展開図作成装置100の他の構成例のブロック図が示されている。ここでは、パーソナルコンピュータなどの電子計算機を利用して、ソフトウェアを実行するマイクロプロセッサなどから構築される展開図作成処理の制御機構のより現実的なハードウェア構成を示している。
【0101】
すなわち、本実施形態において、展開図作成処理並びにこの処理に関わる制御処理を行なう展開図作成装置100の仕組みは、ハードウェア処理回路により構成することに限らず、その機能を実現するプログラムコードに基づき電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェア的に実現される。よって、本実施形態に係る仕組みを、電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェアで実現するために好適なプログラムあるいはこのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記憶媒体が発明として抽出される。ソフトウェアにより実行させる仕組みとすることで、ハードウェアの変更を伴うことなく、処理手順などが容易に変更されることとなる。
【0102】
前述の一連の展開図作成処理はハードウェアまたはソフトウェアの単独に限らずその両者の複合構成によっても実現され得る。ソフトウェアによる処理を実行する場合、処理手順を示したプログラムを、ハードウェアに組み込まれたコンピュータ内の記憶媒体に組み込んで(インストールして)実行させたり、各種処理が実行可能な汎用の電子計算機にプログラムを組み込んで実行させる。
【0103】
展開図作成処理機能をコンピュータに実行させるプログラムは、CD−ROMなどの記録媒体を通じて配布される。また、このプログラムは、CD−ROMではなくFDに格納されてもよい。また、MOドライブを設け、MOに前記プログラムを格納してもよく、またフラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリカードなど、その他の記録媒体にプログラムを格納してもよい。さらに、ソフトウェアを構成するプログラムは、記録媒体を介して提供されることに限らず、有線または無線などの通信網を介して提供されてもよい。たとえば、他のサーバなどからインターネットなどのネットワークを経由してプログラムをダウンロードして取得したり、更新したりしてもよい。
【0104】
さらに、展開図作成処理を行なう機能を実現するプログラムコードを記述したファイルとしてプログラムが提供されるが、この場合、一括のプログラムファイルとして提供されることに限らず、コンピュータで構成されるシステムのハードウェア構成に応じて、個別のプログラムモジュールとして提供されてもよい。
【0105】
たとえば、コンピュータシステム900は、中央制御部910、記憶部912、操作部914、図示を割愛したその他の周辺部材を有している。
【0106】
中央制御部910は、CPU(Central Processing Unit )やマイクロプロセッサ(microprocessor)で構成される。この中央制御部910は、コンピュータが行なう演算と制御の機能を超小型の集積回路に集約させたCPUを代表例とする電子計算機の中枢をなすものと同様のものである。
【0107】
記憶部912は、読出専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)、または随時読出し・書込みが可能なメモリであるRAMやハードディスク装置(HDD)などを具備する。ROMには展開図作成処理機能用の制御プログラムなどが格納される。操作部914は、キーボードやマウスなどで利用者による操作を受け付けるためのユーザインタフェースである。
【0108】
なお、コンピュータシステム900の制御系としては、メモリカードなどの図示を割愛した外部記録媒体を挿脱可能に構成し、またインターネットなどの通信網との接続が可能に構成するとよい。このためには、制御系は、中央制御部910や記憶部912の他に、可搬型の記録媒体の情報を読み込むメモリ読出部920や外部との通信インタフェース手段としての通信I/F922を備えるようにするとよい。メモリ読出部920を備えることで外部記録媒体からプログラムのインストールや更新に対応する。通信I/F922を備えることで、通信網を介しプログラムのインストールや更新に対応する。基本的な展開図作成処理の仕組みは前述したものと同様である。
【0109】
なお、ここでは、展開図作成装置100の機能をコンピュータにてソフトウェア上で実現する構成例で説明しているが、本実施形態の展開図作成処理を実現するための展開図作成装置100の各部(機能ブロックを含む)の具体的手段は、ハードウェア、ソフトウェア、通信手段、これらの組み合わせ、その他の手段を用いることができ、このこと自体は当業者において自明である。また、機能ブロック同士が複合して1つの機能ブロックに集約されてもよい。また、コンピュータにプログラム処理を実行させるソフトウェアは、組合せの態様に応じて分散してインストールされる。
【0110】
ソフトウェアで行なう仕組みは、並列処理や連続処理に柔軟に対処し得るものの、処理が複雑になるに連れ、処理時間が長くなるため、処理速度の低下が問題となる。これに対して、ハードウェア処理回路で構築すると、処理が複雑であっても、処理速度の低下が防止され、高いスループットを得る高速化を図ったアクセラレータシステムが構築される。
【0111】
<展開図の作図手法>
[円錐型]
図8〜図8Dは、円錐型の展開図を作成する手順を説明する図である。ここで、図8は、円錐型の展開図を作成する手順の一例を示したフローチャートである。図8A〜図8Cは、基本の(完成品に内包される)立体形状(本例では回転スイープ状立体QJ)から円錐型で展開図が作成される過程を視覚的に表した図である。図8Dは、円錐型の展開図を作成する手順に従って作成された展開図を組み立ててできる作品例である。
【0112】
以下では、回転スイープ状立体QJが四角柱上に四角錐が載った状態の構造体である場合を例として説明するが、これに限らず、あらゆる回転スイープ状立体QJに適用できる。以下の処理は予め定めたプログラムに従って自動的に実行される。全体の動作は、主制御部190が制御する。
【0113】
図8A(1)には、基本の(完成品に内包される)回転スイープ状立体QJが示され、図8A(2)には、1枚の紙で本実施形態の手順に従って作成される完成された立体物(回転スイープ状立体QJに三角断面の外部突起が付加されたもの)の形状が示されている。回転スイープ状立体QJを構成する辺のうち、水平なものを「水平線」、そうでないものを「母線」と呼ぶ。
【0114】
立体形状特定部110は、たとえば、スキャナや既存データを利用するなどして、展開図の作成対象となる回転スイープ状立体QJ(図8A(1))の形状データなどを取得する(S100)。作成方式特定部174は、操作画面上で、分割数Nと円錐型・円柱型の何れで展開図を作成するかの指示を受け付ける。基本的にはこれらの指示に従うが、ユーザから円錐型の指示があった場合において、回転軸上に頂点座標が存在しない場合には円錐型ではなく円柱型を適用しその旨を操作者に通知する。または、回転軸上に頂点を追加して円錐型とする。なお、円柱型の場合には、回転軸上の頂点の存在の有無に関わらず適用可能であるので、ユーザの指示が円柱型の場合にはこれに従う。
【0115】
次に、作成方式特定部174は、立体形状特定部110が取得したデータや受け付けた指示情報などから、回転スイープ状立体QJの形状を示す線分のうちの母線Mと水平線Lの組合せで規定される面(基本展開面)を特定する(S102)。つまり、対象とする回転スイープ状立体QJを回転軸Cの方向で開いた展開図の一面(図8A(3))を特定する。これが、展開図における基本図形となる。
【0116】
母線Mは、回転スイープ状立体QJの稜線(Edge)をなすものである。母線M(稜線)とは、隣接する2つの面の境界に位置して各面の端縁を形成するものであり、2つの面と関連付けられる。水平線Lは、回転スイープ状立体QJの水平面上に位置する線であり、面(展開図における基本図形)内での折り目部分に相当する。たとえば、面Aの端縁を形成する母線Mは母線M1〜M4であり、このうち母線M1,M2は隣接する面A,Bの境界に位置している。たとえば、母線M1は、M1(A,B)のように各面A,Bの識別番号に関連付けられる。他の母線M2〜M8も同様である。母線M(稜線)を特定することは、CG(computer graphics)の分野における「Half Edge構造」として知られている。なお、基本展開面や展開図における回転スイープ状立体QJでの母線Mおよび水平線Lとの対応関係が明らかとなるように、各図でも母線Mおよび水平線Lと同じ符号を使用して示す。
【0117】
因みに、ここまでの処理は、展開図作成部170(の稜線特定部172)において、操作画面で、回転スイープ状立体QJの母線Mを示す折線Qの入力で代用できる。たとえば、図8A(4)に示すように、操作画面上で、回転スイープ状立体の回転軸Cを表示し、同一画面上で、回転スイープ状立体QJの基本形状(母線M)を示す折線(または座標P_@)の入力を受け付ける。また、分割数Nと円錐型・円柱型の何れで展開図を作成するかの指示を受け付ける。指定された折線Qを回転軸Cを中心に(360/N)度だけ回転させ、対応する頂点をそれぞれ連結してできる稜線に囲まれた(3次元空間にできる)多角形を平面に配置することで、展開図における基本図形となる面を特定できる。
【0118】
展開図作成部170は、中心から360°/N(図の例ではN=4)の間隔で正N角形の平面を分割する(S110、図8A(5))。展開図作成部170は、対象とする回転スイープ状立体QJを回転軸Cの方向で開いた展開図である基本図形をそれぞれの領域に配置する(S120、図8B(1))。対称性から、それぞれの領域に同じ形の展開図が作図されることになる。
【0119】
因みに、水平線Lと対応する線(辺)や母線Mと対応する線の山谷の別は、対象とする元の回転スイープ状立体QJの形状によって定まるが、本例では水平線Lに対応する線は山折りとなり、母線Mに対応する線(第1の折線)は谷となる。ここでは水平線Lを示しているが、先の説明から理解されるように、水平線Lと対応する線を含む「第3の折線」は、曲面化のためには入れない(後述の図10B(3)、図10C(3)を参照)。折線を細かい線分で表現して滑らかにすることで近似的に曲面を作成する点に鑑みると、折線として入れる入れないの判断は、角度が浅い(180度に近い)か否かで判断すればよい。
【0120】
展開図作成部170は、水平線Lに対応する展開図上の辺を領域の境界B(図中の破線)まで延ばし、これを補助線Sとする(S130、図8B(2))。展開図作成部170は、先に説明した論理に基づいて、展開図の中心Oおよび補助線Sの中点を結ぶ第2の折線Tを追加する(S140、図8C(1))。展開図作成部170は、ステップS140で追加した第2の折線Tと補助線Sの交点CR(図8C(2)中の○印)を結ぶ線Xおよび線Yを追加する(S150)。
【0121】
交点CR同士を各分割領域の全体に亘って連結、追加してできる線(線X、補助線S、水平線Lの全体や線Y、補助線S、水平線Lの全体)が回転スイープ状立体QJの展開図の第3の折線となる。因みに、第3の折線を構成する水平線L以外の線Xおよび線Yや補助線Sの山谷の別も、対象とする元の回転スイープ状立体QJの形状に基づいて決定する。たとえば、水平線Lに対応する線を山折りとするこの例では、補助線Sは谷折りとし、線Xや線Yは山折りとする。なお、稜線を曲線とすることで立体物の面を曲面とする場合には、ステップS150の処理を割愛して第3の折線を設けないようにするとよい。
【0122】
因みに、補助線Sは、第2の折線や第3の折線(第3の折線では特にそれを構成する線Xや線Y)を特定するための仮想的なもので、展開図の折線となるものではない。実際の計算機上(実際のプログラム)では、「補助線S」というものは使用せずに第2の折線や第3の折線を特定することもできる。
【0123】
基本的には、ここまでの処理で円錐型の展開図が完成する。本実施形態では、さらに好ましくは、折線が集中し得る頂点部分に関して、棄損防止処理を行なう(S160,S162)。すなわち、棄損防止処理を適用しない場合に折線が集合する頂点部分では、折線が交差しないように、その線分(全てを対象にしてもよいし任意に間引いたものを対象としてもよい)の端点を頂点から離れる方向に一定距離移動させる。
【0124】
このようにして、回転スイープ状立体QJを基本形状とし(内包し)、三角断面の外部突起が付加された立体物の展開図が正N角形の平面物から作成され、それに基づき立体モデルが組み立てられる。棄損防止処理も適用した後に展開図を紙などに印刷出力することで、頂点部分に折線が集中せず、組立て作業時に頂点部分での破れを防止できる。
【0125】
表示制御部150は、展開図作成部170で生成された展開図やその展開図に基づく完成品の状態を示す3Dモデルを表示デバイスに表示し(S174)、必要に応じて3Dモデル上で変更を直接に受け付ける(S176,S178)。色や模様を付けて展開図や3Dモデルを作成してもよい。変更指示があったときには、その変更情報を自動的に展開図作成に反映させ、同様の過程を繰り返すことで(たとえばステップS102に戻って同様の処理を繰り返す)、変更後の展開図と3Dモデルを提示する。
【0126】
展開図作成部170はさらに、必要に応じてタイリング処理を行なう(S180,S182)。このときにも、表示制御部150は、展開図作成部170で生成された展開図やその展開図に基づく完成品の状態を示す3Dモデルを表示デバイスに表示し(S184)、必要に応じて3Dモデル上で変更を直接に受け付ける(S186,S188)。変更指示があったときには、その変更情報を自動的に反映させ、同様の過程を繰り返すことで(たとえばステップS180に戻って同様の処理を繰り返す)、タイリング処理に関しての変更後の展開図や3Dモデルを提示する。
【0127】
また、好ましくは、展開図と立体形状との対応を確認できるように、立体に含まれる面と展開図に含まれる面の対応関係を示しつつ、展開図から完成品の3Dモデルの中間形状をアニメーションで表示するとよい(S190)。このようなアニメーション表示を実現するには、2つの形状をアニメーションによって補間するモーフィング処理や、ポリゴンモデルをベースとした面の剛体変換を適用することで滑らかなアニメーションを行なうなど、公知の技術を利用するとよい。
【0128】
一般的に、展開図から完成された立体物(紙模型)を組み立てるときには、展開図だけが与えられても完成品を想像できない、展開図の要素と完成品の要素の対応付けが分かり難いなどのため、「組立て方」が分かり難く組立てに手間が掛ることがある。その手助けとして通常のペーパークラフトなどでは、展開図とともに「組立て説明書」が付属されることがある。
【0129】
計算機や専用の展開図作成装置100で展開図を作成した場合には、立体に含まれる面と展開図に含まれる面の対応関係が自明であり、また表示装置には3Dモデル(立体モデル)と展開図の両方を表示できることから、これらを有効に活用することで、計算機などによって展開図を作成するだけでなく、組立て時の支援を行なうこともできる。
【0130】
最終的に展開図の作成が完了すると(S192−YES)、印刷制御部180は、印刷装置により展開図を紙などの平面物に印刷する(S192)。印刷された展開図を組み立てることで、たとえば図8Dに示すような立体物が完成する。因みに、完了しないときには、主制御部190は、希望する処理ステップへ戻る(S192−NO)。
【0131】
[円柱型]
図9〜図9Cは、円柱型の展開図を作成する手順を説明する図である。ここで、図9は、円柱型の展開図を作成する手順の一例を示したフローチャートである。図9A〜図9Bは、基本の立体形状(本例では回転スイープ状立体QJ)から展開図が作成される過程を視覚的に表した図である。図9Cは、この手順で作成された展開図を組み立ててできる作品例である。
【0132】
以下では、回転スイープ状立体QJが四角柱上に四角錐が載った状態の構造体である場合を例として説明するが、これに限らず、あらゆる回転スイープ状立体QJに適用できる。以下の処理は予め定めたプログラムに従って自動的に実行される。全体の動作は、主制御部190が制御する。以下では、特に、円錐型との相違点に着目して説明する。特段の説明のない部分は円錐型と同様でよい。
【0133】
図9A(1)には基本の回転スイープ状立体QJが示され、図9A(2)には1枚の紙で本実施形態の手順に従って作成される完成された立体物(回転スイープ状立体QJに三角断面の外部突起が付加されたもの)の形状が示されている。円錐型と同様に、回転スイープ状立体QJを構成する辺のうち、水平なものを水平線、そうでないものを「母線」と呼ぶ。
【0134】
立体形状特定部110は、展開図の作成対象となる回転スイープ状立体QJ(図9A(1))の3次元データを取得する(S200)。次に、立体形状特定部110は、取得したデータから、回転スイープ状立体QJの形状を示す線分のうちの母線Mと水平線Lの組合せで規定される面を特定する(S202)。つまり、対象とする回転スイープ状立体QJを回転軸Cの方向で開いた展開図の一面(図9A(3))を特定する。これが、展開図における基本図形となる。
【0135】
因みに、ここまでの処理は、円錐型と同様に、操作画面を使用することで、回転スイープ状立体QJの母線Mを示す折線Qの入力で代用できる(図9A(4))。
【0136】
展開図作成部170は、中心から360°/N(図の例ではN=4)の間隔で長方形状の平面を分割する(S210、図9A(5))。展開図作成部170は、対象とする回転スイープ状立体QJを回転軸Cの方向で開いた展開図である基本図形をそれぞれの領域に配置する(S220、図9B(1))。対称性から、それぞれの領域に同じ形の展開図が作図されることになる。各展開図の間隔によって外部突起の大きさが変化する。因みに、水平線Lや母線Mの山谷の別は、対象とする元の回転スイープ状立体QJの形状によって定まるが、本例では水平線Lに対応する線は山折りとなり、母線Mに対応する線は谷となる。
【0137】
展開図作成部170は、水平線Lに対応する展開図上の辺を領域の境界B(図中の破線)まで延ばし、これを補助線Sとする(S230、図9B(2))。
【0138】
展開図作成部170は、先に説明した論理に基づいて、長方形の平面物の各分割領域の上辺および下辺のそれぞれについて、基本展開面の頂点から境界線まで延長した延長線(補助線S)をcosα(境界線側):1(基本展開面の頂点側)で内分する点を結ぶ第2の折線Tを追加する(S240、図9B(3))。
【0139】
展開図作成部170は、ステップS240で追加した第2の折線Tと補助線Sの交点CR(図9B(4)中の○印)を結ぶ線Zを追加する(S250)。交点CR同士を各分割領域の全体に亘って連結、追加してできる線(線Z、補助線S、水平線Lの全体)が回転スイープ状立体QJの展開図の第3の折線となる。第3の折線を構成する水平線L以外の線Zの山谷の別も、対象とする元の回転スイープ状立体QJの形状に基づいて決定する。たとえば、水平線Lに対応する線を山折りとするこの例では、補助線Sは谷折りとし、線Zは山折りとする。なお、稜線を曲線とすることで立体物の面を曲面とする場合には、ステップS250の処理を割愛して第3の折線を設けないようにするとよい。
【0140】
このようにして、回転スイープ状立体QJを内包し、三角断面の外部突起が付加された立体物の展開図が長方形の平面物から作成される。印刷された展開図を組み立てることで、たとえば図9Cに示すような立体物が完成する。
【0141】
因みに、円錐型とは異なり、折線が集中し得る頂点部分が存在しないので、棄損防止処理を行なう必要はない。また、タイリング処理の適用もない。なお、展開図の長手方向の端縁には糊代部を付けるとよい。
【0142】
<作品例>
[円錐型]
図10〜図10Cは、円錐型の作品例の詳細(第1作品例〜第4作品例)を示す図である。各図においてそれぞれ、入力される折れ線(母線)が左上の(1)の欄に示され、3D(3次元)モデルが右上の(2)の欄に示され、展開図が左下の(3)の欄に示され、作品例の写真が右下の(4)の欄に示されている。3Dモデルはたとえば、ワイヤーフレームモデル、サーフェスモデル、ソリッドモデル、ボクセルモデル、ポリゴンモデル(その一例であるメッシュモデルも含む)、などの公知の手法を適用すればよい。
【0143】
円錐型の場合であるから、何れも、回転スイープ状立体の回転軸C上に頂点P_0の座標が必ず配置され、回転スイープ状立体の母線Mを示す折線Qをなすように座標P_@(@は座標番号)が入力される。各座標P_@を通る水平方向の線が回転スイープ状立体QJ(完成品だけでなく3Dモデルも含む)の水平線L(等高線の一例)と対応する。
【0144】
図10に示す第1作品例は、分割数Nが4の場合である。基本となる回転スイープ状立体は、四角錐を互いに逆にして底面同士が接合するように2層で密着させた構造である。したがって、回転スイープ状立体の母線を示す折線Qは、上半分と下半分とが回転スイープ状立体の回転軸Cと直交する水平基線L_0に対して対称となっている。一方に対して他方は鏡像の関係にある。一方は頂点P_0の座標以外に水平基線L_0上に1つ目の座標P_1が指定されているだけである。水平基線L_0は、3Dモデル(図10(2))の水平線Lと対応する。
【0145】
図10Aに示す第2作品例は、分割数Nが6の場合である。基本となる回転スイープ状立体は、六角柱であり上面と底面が水平になる構造である。したがって、回転スイープ状立体の母線を示す折線Qは、上面をなすように回転スイープ状立体の回転軸C上の頂点P_0の座標以外に、頂点P_0の座標を通り水平基線L_0と平行な線上のある距離を隔てた所に1つ目の座標P_1が指定され、その座標P_1を水平基線L_0に射影させた位置に2つ目の座標P_2が指定されている。また、この例では完成立体物におけるスカート部をなすように、水平基線L_0上の回転軸Cからさらに隔てた所に3つ目の座標P_3が指定されている。展開図(図10A(3))から推測されるように、座標P_3が指定されていない場合は、完成立体物においてスカート部は形成されない。因みに、回転スイープ状立体の上面は水平になるので展開図(図10A(3))においては、中心を通る線は省略される。
【0146】
図10Bに示す第3作品例は、分割数Nが6の場合である。基本となる回転スイープ状立体は、概ね半球状であり、上面が開放された構造である。したがって、回転スイープ状立体の母線を示す折線Qは、回転スイープ状立体の回転軸C上の頂点P_0の座標が回転軸Cの下の方に指定され、さらに、入力として用いる折線Qを細かい線分で滑らかに球状を表現するように多数(この例は8個)の座標P_1〜P_8が指定されている。上面を開放とするべく終点の座標P_8は回転軸C上から離れた位置に指定される。因みに、回転スイープ状立体の上面は水平になるので展開図(図10B(3))においては、中心を通る線は省略される。展開図(図10B(2))では、3Dモデル(図10B(3))の座標P_1〜P_8と対応する位置を連結した水平線をなす折線は、完成品(図10B(4))において曲面で表すべく図示を省略している。
【0147】
図10Cに示す第4作品例は、分割数Nが5の場合である。基本となる回転スイープ状立体は、概ね壺状であり、下面が開放された構造である。したがって、回転スイープ状立体の母線を示す折線Qは、回転スイープ状立体の回転軸C上の頂点P_0の座標が回転軸Cの上の方に指定され、さらに、入力として用いる折線Qを細かい線分で滑らかに壺状を表現するように多数(この例は12個)の座標P_1〜P_12 が指定されている。下面を開放とするべく終点の座標P_12 は回転軸C上から離れた位置に指定される。因みに、展開図(図10C(2))では、3Dモデル(図10C(3))の座標P_1〜P_12 と対応する位置を連結した水平線をなす折線は、完成品(図10C(4))において曲面で表すべく図示を省略している。
【0148】
[円柱型]
図11〜図11Cは、円柱型の作品例の詳細(第1作品例〜第4作品例)を示す図である。各図においてそれぞれ、入力される折れ線(母線)が左上の(1)の欄に示され、3D(3次元)モデルが右上の(2)の欄に示され、展開図が2段目の(3)の欄に示され、作品例の写真が3段目の(4)の欄に示されている。
【0149】
回転スイープ状立体の母線Mを示す折線Qをなすように座標P_@が入力される。因みに、円柱型の場合であるから、円錐型とは異なり、回転スイープ状立体の回転軸C上に頂点P_0の座標が配置される場合もあれば配置されない場合もある。各座標P_@を通る水平方向の線が回転スイープ状立体QJ(完成品だけでなく3Dモデルも含む)の水平線Lと対応する。
【0150】
図11に示す第1作品例は、分割数Nが4の場合である。基本となる回転スイープ状立体は、四角錐の下に四角柱が配置された構造である。
【0151】
図11Aに示す第2作品例は、分割数Nが4の場合である。基本となる回転スイープ状立体は、円錐型の第1作品例と同様に、四角錐を互いに逆にして底面同士が接合するように2層で密着させた構造である。したがって、回転スイープ状立体の母線を示す折線Qは、上半分と下半分とが回転スイープ状立体の回転軸Cと直交する水平基線L_0に対して対称となっている。一方に対して他方は鏡像の関係にある。一方は頂点P_0の座標以外に水平基線L_0上に1つ目の座標P_1が指定されているだけである。
【0152】
図11Bに示す第3作品例は、分割数Nが6の場合である。基本となる回転スイープ状立体の母線を示す折線Qは、上半分と下半分とが回転スイープ状立体の回転軸Cと直交する水平基線L_0に対して対称となっている。頂点P_0の座標は配置されておらず全体としては、座標P_2でサイズが規定された円筒の上面と下面(座標P_1の部分)を絞った状態である。
【0153】
図11Cに示す第4作品例は、分割数Nが6の場合である。基本となる回転スイープ状立体の母線を示す折線Qは、第3作品例と同様に、上半分と下半分とが回転スイープ状立体の回転軸Cと直交する水平基線L_0に対して対称となっている。頂点P_0の座標は配置されておらず全体としては、座標P_6でサイズが規定された球の上側と下側(座標P_1の部分)をカットした状態である。換言すると、第3作品例よりも、入力として用いる折線Qを細かい線分で滑らかに球状を表現するように多数(この例は11個)の座標P_1〜P_11 が指定されている。上側と下側を開放とするべく終点の座標P_1,P_11 は回転軸C上から離れた位置に指定される。因みに、展開図(図11C(2))では、3Dモデル(図11C(3))の座標P_1〜P_11 と対応する位置を連結した水平線をなす折線は、完成品(図11C(4))において曲面で表すべく図示を省略している。
【0154】
[タイリング]
図12は、タイリング処理を適用した作品例を示す図である。図12(1)は、正六角形をタイリングした各頂点上にN=3の立体折紙を敷き詰めて配置したものである。図12(2)は、正四角形をタイリングした各頂点上にN=4の立体折紙を敷き詰めて配置したものである。図12(3)は、正三角形をタイリングした各頂点上にN=6の立体折紙を敷き詰めて配置したものである。
【0155】
<立体物の製法>
次に、本実施形態の展開図の生成手法を適用して生成される展開図を元にして立体物を製造する仕組みについて説明する。基本的には、立体物を製造する際に使用する型枠図面を展開図作成装置100で生成される展開図に基づいて設計し、その設計図面(型枠図面)に基づいて型枠を生成し、生成された型枠を立体物の外形を表わすように組み立て、その内部にできる空間に充填物を詰め込んで硬化させるという製法をとる。以下、順に説明する。
【0156】
[型枠設計装置]
図13は、本実施形態の型枠設計装置の一構成例を説明する図である。本実施形態の型枠設計装置300は、本実施形態の展開図作成装置100を利用して型枠図面を設計(製造)するものである。
【0157】
図示のように、型枠設計装置300は、展開図作成装置100を内蔵し、さらに、型枠図生成部310を備えている。展開図作成装置100は、前述のように、回転スイープ状立体QJを基本とし、回転スイープ状立体QJの稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を作成する展開図作成部170を有している。型枠図生成部310は、展開図作成部170で生成される展開図に基づいて型枠図面を生成する。型枠図生成部310で生成される型枠図面の情報は表示制御部150や印刷制御部180に通知される。
【0158】
展開図から型枠図面を生成する際には、基本的には、それぞれの折線部分で型枠を区分けするとよい。もちろん、これは一例であり、その他の公知の手法を用いてもよい。何れにしても、型枠図面に基づいて生成された型枠を組み立てることで、回転スイープ状立体QJを基本とし回転スイープ状立体QJの稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の外形を表わすことができるように型枠を製造(設計)できればよい。
【0159】
[型枠設計処理]
図13Aは、立体物の製造に使用する型枠図面の生成処理手順の一例を示したフローチャートである。
【0160】
型枠設計装置300に内蔵された展開図作成装置100は、図8や図9に示した手順に従って、回転スイープ状立体QJの稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を作成する(S100〜S192,S200〜S292)。
【0161】
この後、型枠図生成部310は、展開図作成部170で生成される展開図に基づいて型枠図面を生成する(S310)。
【0162】
表示制御部150は、型枠図生成部310で生成された型枠図やその型枠図に基づく完成品(立体物)の状態を示す3Dモデルを表示デバイスに表示し(S374)、必要に応じて3Dモデル上で変更を直接に受け付ける(S376,S378)。変更指示があったときには、その変更情報を自動的に型枠図作成に反映させ、同様の過程を繰り返すことで(たとえばステップS310に戻って同様の処理を繰り返す)、変更後の型枠図と3Dモデルを提示する。
【0163】
また、好ましくは、型枠図と立体形状との対応を確認できるように、立体に含まれる面と型枠図(に含まれる各型枠の面)の対応関係を示しつつ、型枠を組み上げて完成品となるまでの中間形状をアニメーションで表示するとよい(S290)。
【0164】
[立体物製造装置・立体物製造処理]
図13Bは、本実施形態の立体物製造装置の一構成例を説明する図である。図13Cは、本実施形態の立体物製造処理手順の一例を説明するフローチャートである。
【0165】
本実施形態の立体物製造装置400は、本実施形態の展開図作成装置100を利用して型枠図面を設計(製造)する型枠設計装置300で生成された型枠図面に基づいて生成された型枠を使用して立体物を製造するものである。当然に、製造された完成品は、回転スイープ状立体QJを基本とし回転スイープ状立体QJの稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物となる。
【0166】
図13Bに示すように、立体物製造装置400は、型枠組立てライン410、材料充填ライン420、材料硬化ライン430、型枠除去ライン440を備え、流れ作業にて立体物を製造するようになっている。もちろん、これは一例であり、流れ作業によらない製法をとってもよい。立体物製造装置400の前段側には、型枠設計装置300と型枠製造工場390が配置され、これらの各処理によって立体物が形成される。
【0167】
型枠設計装置300で生成された型枠図面(あるいはその図面ファイル)は型枠製造工場390(たとえば外注)に供給される(S300〜S394)。型枠製造工場390では、型枠図面に従って型枠を製造し、立体物製造装置400を備えた立体物製造工場に納品する(S400)。
【0168】
型枠組立てライン410は、型枠組立て部の一例であり、型枠製造工場390から納品された型枠を、回転スイープ状立体を基本とし回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の外形を表わすように組み立てる(S410:型枠組立工程)。
【0169】
材料充填ライン420は、材料充填部の一例であり、組立てられた型枠によって形成される空間部分に、樹脂(たとえば紫外線硬化樹脂)や金属などの材料を充填する(S420:材料充填工程)。
【0170】
材料硬化ライン430は、材料硬化部の一例であり、充填された材料を紫外線の照射や放熱によって硬化させる(S430:材料硬化工程)。
【0171】
型枠除去ライン440は、型枠除去部の一例であり、充填された材料が硬化された後に型枠を除去する(S440:型枠除去工程)。
【0172】
このような手順によって製造される立体物は、回転スイープ状立体QJを基本形状に持ち、その稜線部分に三角断面の外部突起を持つ立体物となり、たとえば、置物やデザイン性のある重石などとして利用することができる。
【符号の説明】
【0173】
100…展開図作成装置、110…立体形状特定部、130…記憶部、150…表示制御部、170…展開図作成部、172…稜線特定部、174…作成方式特定部、178…折線特定部、180…印刷制御部、190…主制御部、300…型枠設計装置(型枠製造装置)、310…型枠図生成部、400…立体物製造装置、410…型枠組立てライン、420…材料充填ライン、430…材料硬化ライン、440…型枠除去ライン、900…コンピュータシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転スイープ形状を持つ立体物の稜線を特定し、回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を1枚の平面で作成する展開図作成部と、
前記平面の分割数Nの指示を受け付ける操作部と、
を備え、
前記展開図作成部は、作成方式特定部と折線特定部を有し、
前記作成方式特定部は、前記操作部が受け付けた情報と前記回転スイープ状立体の稜線との関係に基づいて、作成する展開図の基本の平面の形状を特定し、
前記折線特定部は、
前記分割数Nに応じて平面を均等に分割し、
特定された展開図の基本の平面の形状を前記平面のそれぞれの分割領域に配置し、
前記分割領域のそれぞれにおいて、
前記回転スイープ状立体の稜線と対応する第1の線を前記回転スイープ状立体の展開図の第1の折線とし、
前記第1の線と前記回転スイープ状立体の等高線と対応する第2の線とが交差する第1の交点と前記第2の線を延長したときの前記領域の境界と交差する第2の交点との間を予め定められた比率で内分する内分点同士を連結してできる線を前記回転スイープ状立体の展開図の第2の折線とする
展開図作成装置。
【請求項2】
前記折線特定部は、前記第2の線を延長したときの前記第2の折線との交点同士を連結してできる線を前記回転スイープ状立体の展開図の第3の折線とする
請求項1に記載の展開図作成装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記分割数Nとしたときに正N角形の平面を基本として展開図を作成する円錐型と前記分割数Nとしたときに長方形の平面を基本として展開図を作成する円柱型の何れで展開図を作成するかの指示を受け付け、
前記折線特定部は、前記操作部が前記円錐型の指示を受け付けた場合は、前記第1の交点と前記第2の交点との間を均等に2分する中点を前記内分点とする
請求項1に記載の展開図作成装置。
【請求項4】
前記操作部は、前記分割数Nとしたときに正N角形の平面を基本として展開図を作成する円錐型と前記分割数Nとしたときに長方形の平面を基本として展開図を作成する円柱型の何れで展開図を作成するかの指示を受け付け、
前記折線特定部は、前記操作部が前記円柱型の指示を受け付けた場合は、前記内分点を、前記分割領域の境界側をcosα(α=π/N)とし、前記稜線と対応する線側を1とする比率に基づき特定する
請求項1に記載の展開図作成装置。
【請求項5】
前記折線特定部は、前記第2の折線の他の前記分割領域との境界側の端点を、領域境界から離れる方向に一定距離移動させる
請求項1に記載の展開図作成装置。
【請求項6】
前記展開図作成部は、前記回転スイープ状立体の稜線に三角断面の外部突起を持つ立体物を複数配した状態の立体物の展開図を1枚の平面で作成するに当たり、
分割数が6で円錐型による展開図を組み立ててできる前記回転スイープ状立体の稜線に三角断面の外部突起を持つ立体物を正三角形の各頂点に配置する、または、
分割数が4で円錐型による展開図を組み立ててできる前記回転スイープ状立体の稜線に三角断面の外部突起を持つ立体物を正四角形の各頂点に配置する、または、
分割数が3で円錐型による展開図を組み立ててできる前記回転スイープ状立体の稜線に三角断面の外部突起を持つ立体物を正六角形の各頂点に配置し、
各立体物についての展開図において外側に延びる前記第2の折線を延長して隣接する他の立体物の展開図の前記第2の折線と接続する
請求項1に記載の展開図作成装置。
【請求項7】
回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体の稜線を特定し、前記回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を1枚の平面で作成するに当たり、
前記回転スイープ状立体の角数に応じて平面を均等に分割し、
前記回転スイープ状立体を回転軸方向で開いた展開図の基本の平面の形状を前記平面のそれぞれの分割領域に配置し、
前記分割領域のそれぞれにおいて、
前記回転スイープ状立体の稜線と対応する第1の線を前記回転スイープ状立体の展開図の第1の折線とし、
前記第1の線と前記回転スイープ状立体の等高線と対応する第2の線とが交差する第1の交点と前記第2の線を延長したときの前記領域の境界と交差する第2の交点との間を予め定められた比率で内分する内分点同士を連結してできる線を前記回転スイープ状立体の展開図の第2の折線とする
展開図作成方法。
【請求項8】
回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体の稜線を特定する稜線特定工程と、
前記回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を展開図作成部により1枚の平面で作成する展開図作成工程と、
前記分割領域の数Nの指示と円錐型と円柱型の何れで展開図を作成するかの指示を受け付ける工程とを備え、
前記展開図作成工程は、作成方式特定工程と折線特定工程を有し、
前記作成方式特定工程は、分割領域の数Nと円錐型と円柱型の何れで展開図を作成するかの情報と前記回転スイープ状立体の稜線との関係に基づいて、作成する展開図の基本の平面の形状を特定し、
前記折線特定工程は、
前記回転スイープ状立体の角数に応じて平面を均等に分割し、
前記回転スイープ状立体を回転軸方向で開いた展開図の基本の平面の形状を前記平面のそれぞれの分割領域に配置し、
前記分割領域のそれぞれにおいて、
前記回転スイープ状立体の稜線と対応する第1の線を前記回転スイープ状立体の展開図の第1の折線とし、
前記第1の線と前記回転スイープ状立体の等高線と対応する第2の線とが交差する第1の交点と前記第2の線を延長したときの前記領域の境界と交差する第2の交点との間を予め定められた比率で内分する内分点同士を連結してできる線を前記回転スイープ状立体の展開図の第2の折線とし、
各工程を電子計算機に実行させることで立体の展開図を作成するためのプログラム。
【請求項9】
回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物を組立てるための折線を示した1枚の平面物で生成されている展開図を前記折線に従って山折りまたは谷折りして組み立てることで形成された立体物であり、
前記立体物を1枚の平面物に展開したときには、
前記回転スイープ状立体の角数に応じて平面が均等に分割され、
前記回転スイープ状立体を回転軸方向で開いた展開図の基本の平面の形状が前記平面のそれぞれの分割領域に配置され、
前記分割領域のそれぞれにおいて、
前記回転スイープ状立体の稜線と対応する第1の線が前記回転スイープ状立体の展開図の第1の折線になっており、
前記第1の線と前記回転スイープ状立体の等高線と対応する第2の線とが交差する第1の交点と前記第2の線を延長したときの前記領域の境界と交差する第2の交点との間を予め定められた比率で内分する内分点同士を連結してできる線が前記回転スイープ状立体の展開図の第2の折線になっている
立体物。
【請求項10】
回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物を組立てるための折線を示した展開図を1枚の平面で作成し、
作成された展開図を前記折線に従って山折りまたは谷折りして組み立てることで、立体物を製造するに当たり、
前記回転スイープ状立体の角数に応じて平面を均等に分割し、
前記回転スイープ状立体を回転軸方向で開いた展開図の基本の平面の形状を前記平面のそれぞれの分割領域に配置し、
前記分割領域のそれぞれにおいて、
前記回転スイープ状立体の稜線と対応する第1の線を前記回転スイープ状立体の展開図の第1の折線とし、
前記第1の線と前記回転スイープ状立体の等高線と対応する第2の線とが交差する第1の交点と前記第2の線を延長したときの前記領域の境界と交差する第2の交点との間を予め定められた比率で内分する内分点同士を連結してできる線を前記回転スイープ状立体の展開図の第2の折線とする
立体物の製造方法。
【請求項11】
回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を作成する展開図作成部と、
前記平面の分割数Nの指示と円錐型と円柱型の何れで展開図を作成するかの指示を受け付ける操作部と、
前記展開図作成部で生成される展開図に基づいて型枠図を生成する型枠図生成部と、
を備え、
前記展開図作成部は、作成方式特定部と折線特定部を有し、
前記作成方式特定部は、前記操作部が受け付けた情報と前記回転スイープ状立体の稜線との関係に基づいて、作成する展開図の基本の平面の形状を特定し、
前記折線特定部は、
前記分割数Nに応じて平面を均等に分割し、
特定された展開図の基本の平面の形状を前記平面のそれぞれの分割領域に配置し、
前記分割領域のそれぞれにおいて、
前記回転スイープ状立体の稜線と対応する第1の線を前記回転スイープ状立体の展開図の第1の折線とし、
前記第1の線と前記回転スイープ状立体の等高線と対応する第2の線とが交差する第1の交点と前記第2の線を延長したときの前記領域の境界と交差する第2の交点との間を予め定められた比率で内分する内分点同士を連結してできる線を前記回転スイープ状立体の展開図の第2の折線とする
型枠製造装置。
【請求項12】
回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を作成する展開図作成工程と、
前記平面の分割数Nの指示と円錐型と円柱型の何れで展開図を作成するかの指示を受け付ける指示受付工程と、
前記展開図作成工程で生成される展開図に基づいて型枠図を生成する型枠図生成工程と、
を備え、
前記展開図作成工程は、作成方式特定工程と折線特定工程を有し、
前記作成方式特定工程は、前記指示受付工程が受け付けた情報と前記回転スイープ状立体の稜線との関係に基づいて、作成する展開図の基本の平面の形状を特定し、
前記折線特定工程は、
前記分割数Nに応じて平面を均等に分割し、
特定された展開図の基本の平面の形状を前記平面のそれぞれの分割領域に配置し、
前記分割領域のそれぞれにおいて、
前記回転スイープ状立体の稜線と対応する第1の線を前記回転スイープ状立体の展開図の第1の折線とし、
前記第1の線と前記回転スイープ状立体の等高線と対応する第2の線とが交差する第1の交点と前記第2の線を延長したときの前記領域の境界と交差する第2の交点との間を予め定められた比率で内分する内分点同士を連結してできる線を前記回転スイープ状立体の展開図の第2の折線とする
型枠製造方法。
【請求項13】
回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を元にして請求項11に記載の型枠製造装置によって形成された型枠を、前記回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の外形を表わすように組み立てる組立て部と、
組立てられた前記型枠によって形成される空間に材料を充填する充填部と、
充填された材料を硬化させる硬化部と、
充填された材料が硬化された後に前記型枠を除去する除去部と、
を備えた立体物の製造装置。
【請求項14】
回転スイープ形状を持つ立体物である回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の展開図を元にして請求項12に記載の型枠製造方法によって形成された型枠を、前記回転スイープ状立体を基本とし前記回転スイープ状立体の稜線部分に断面が三角形状の外部突起を持つ立体物の外形を表わすように組み立てる型枠組立工程と、
組立てられた前記型枠によって形成される空間に材料を充填する充填工程と、
充填された材料を硬化させる硬化工程と、
充填された材料が硬化された後に前記型枠を除去する除去工程と、
を備えた立体物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図8】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図9B】
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【図13】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図1A】
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【図5】
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【図5A】
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【図5B】
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【図8A】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9C】
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【図10】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−243033(P2011−243033A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115230(P2010−115230)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけタイプ)における「折紙のデジタルアーカイブ構築のための基盤技術とその応用」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】