説明

立体マーク

【課題】ホログラム様模様を発現する部分を有し、見映えがよく、立体感も良好な立体マークを提供する。
【解決手段】本発明の立体マーク10は、表面層1と裏面層2を含む少なくとも2層が貼り合わされたマークであって、表面層1は裏面層2に比較して相対的に濃色の模様を含み、少なくとも一部分は切り抜かれて切り抜き部3を形成しており、切り抜き部3から観察される裏面層2は表面層1に比較して相対的に明色又は淡色であり、かつ横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢を有する織物であることにより、ホログラム様模様を発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用ユニホーム、Tシャツ等の一般衣料、帽子、かばん、リュック等に使用するマークやワッペン等に有用な切り抜き部を有する立体マークに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ用ユニホーム、Tシャツ等の一般衣料、帽子、かばん、リュック等にはマークを付与する場合がある。従来、このようなマークは、比較的生地の厚いフェルト、織物、編物、不織布又は樹脂フィルム等を用いて所定のマークに形成し、ミシン縫製で生地若しくは基材に一体化するか又は接着剤を全面に塗布して生地若しくは基材に一体化していた。
【0003】
特許文献1には、樹脂を金型で加圧して立体成形したマークが提案されている。しかし、このマークは粗硬で、衣類や帽子に適用することは困難であった。特許文献2には、マークとなる部分を取り除いておき、残部をホットメルト接着剤によりユニホーム生地に貼り付けることにより、上記取り除いた部分からユニホーム生地が見えることを利用して立体模様とすることが提案されている。しかし、このマークはユニホーム生地が直接マークとして見えているので、見映えが良好とはならず、立体感に乏しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3079054号公報
【特許文献2】特開2003−293274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、ホログラム様模様を発現する部分を有し、見映えがよく、立体感も良好な立体マークを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の立体マークは、表面層と裏面層を含む少なくとも2層が貼り合わされたマークであって、上記表面層は上記裏面層に比較して相対的に濃色の模様を含み、少なくとも一部分は切り抜かれて切り抜き部を形成しており、上記切り抜き部から観察される上記裏面層は上記表面層に比較して相対的に明色又は淡色であり、かつ横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢を有する織物であることにより、ホログラム様模様を発現することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の立体マークは、表面層と裏面層を含む少なくとも2層が貼り合わされ、上記表面層は上記裏面層に比較して相対的に濃色の模様を含み、少なくとも一部分は切り抜かれて切り抜き部を形成しており、上記切り抜き部から観察される上記裏面層は上記表面層に比較して相対的に明色又は淡色であり、かつ横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢を有する織物であることにより、ホログラム様模様を発現する。すなわち、切り抜き部から観察される裏面層は表面層に比較して相対的に明色又は淡色であり、かつ横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢を有する織物であり、表面層の模様と切り抜き部から見える光沢部が異質であり、光沢部はあたかもホログラムのような模様を発現する。そして、表面層の濃色部分による切り抜き部から観察される明色又は淡色の裏面層を色彩的に浮き上がらせる効果と、切り抜き部から観察される裏面層の横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢との相乗効果により、切り抜き部から観察される裏面層のホログラム様模様はより鮮明となる。この結果、見映えがよく、立体感も良好な立体マークを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aは本発明の一実施例における立体マークの平面図であり、図1Bは同I−I線断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施例における立体マークの切り抜き部から観察される裏面層の織物の拡大平面図である。
【図3】図3A〜Dは本発明において裏面層に用いる織物の織物組織図であり、図3Aは5枚緯朱子組織図、図3Bは6枚緯朱子織組織図、図3C及び図3Dは8枚緯朱子織組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の立体マークは、表面層と裏面層を含む少なくとも2層が貼り合わされている。表面層は裏面層に比較して相対的に濃色の模様(以下、単に表面層の濃色模様ともいう。)を含み、少なくとも一部分は切り抜かれて切り抜き部を形成しており、上記切り抜き部から裏面層が見え、上記切り抜き部から観察される上記裏面層は上記表面層に比較して相対的に明色又は淡色である。これにより、表面層の濃色部分は切り抜き部から観察される明色又は淡色の裏面層を色彩的に浮き上がらせる効果がある。また、切り抜き部から観察される裏面層は、横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢を有する織物であり、これにより、切り抜き部から観察される裏面層は、ホログラムのようなホログラム様模様を発現する。そして、表面層の濃色部分による切り抜き部から観察される明色又は淡色の裏面層を色彩的に浮き上がらせる効果と、切り抜き部から観察される裏面層の横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢との相乗効果により、切り抜き部から観察される裏面層のホログラム様模様はより鮮明となる。
【0010】
表面層と裏面層のほかに、例えば裏面層の裏にホットメルト接着剤層や補強層等を付加してもよい。表面層と裏面層との貼り合わせ手段は、ホットメルト接着剤層を用いてもよいし、他の接着剤を用いてもよい。
【0011】
上記切り抜き部から観察される裏面層の織物は、斜文織組織又は朱子織組織あることが好ましい。斜文織組織又は朱子織組織であると、糸を横方向に浮き上がらせて配列させることが容易である。上記朱子織(サテン)組織と及び斜文織組織としては、例えば、3枚斜文織、4枚斜文織、5枚経朱子、5枚緯朱子、6〜8枚緯朱子などが挙げられる。
【0012】
上記光沢を有する織物を構成する糸は、酸化チタンを実質的に含まないブライト糸であることが好ましい。ここで、酸化チタンを実質的に含まないとは、まったく含まないか、又は触媒量、若しくは製造装置に付着するなどして不可避的に含まれる程度の量は許容される。通常の衣料用繊維には遮蔽効果を出すために酸化チタンは0.5質量%程度含まれる。
【0013】
本発明で使用できる繊維素材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、又はナイロンが好ましい。糸の形状は、フィラメント、又は紡績糸が使用できるが、好ましくは生糸使いのマルチフィラメントである。
【0014】
上記表面層の濃色模様は、特に限定されず、プリント捺染、昇華転写プリントなどによる模様であってもよい。上記昇華転写プリントは、例えば、180〜200℃で、45〜60秒間、好ましくは、185℃で、45〜60秒間加圧加熱することにより行う。プリント模様以外にも、先染め糸による模様、浸染による模様等であってもよい。
【0015】
上記表面層は、表層が織物、編物又は不織布であり、裏層が樹脂フィルムであり、上記表層と上記裏層はラミネートにより一体化されていることが好ましい。上記樹脂フィルムとしては、ホットメルト樹脂フィルムを用いることが好ましい。ホットメルト樹脂フィルムを用いると、裏面層との接着一体化が容易になり、表面層の型崩れがなく耐洗濯性が良好となる。上記表面層と裏面層の一体化は、表面層のホットメルト樹脂フィルムからなる裏層と裏面層の表層が接するように、表面層と裏面層を重ね合わせた後、例えば、150〜170℃で、30〜90秒間、好ましくは160℃で60〜90秒間熱圧着させ、仮貼り付けることで行う。
【0016】
上記裏面層は、切り抜き部から観察される表層が織物であり、裏層が樹脂フィルムであり、上記表層と上記裏層はラミネートにより一体化されていることが好ましい。上記樹脂フィルムとしては、ホットメルト樹脂フィルムを用いることができる。ホットメルト樹脂フィルムを用いると、ユニホーム生地等への接着一体化が容易になり、マーク全体の補強にもなる。立体マークのユニホーム生地等への接着一体化は、例えば150〜170℃で、30〜60秒間、好ましくは150℃で40〜60秒間熱圧着させることで行う。
【0017】
上記表面層の厚さは5〜500μm、上記裏面層の厚さは5〜500μm、上記立体マークの厚さは10〜1000μmであることが好ましい。上記の範囲であれば、マーク自体の強度も高く、耐洗濯性も良好となる。
【0018】
立体マークは、さらに、千鳥縫いや刺繍などで縁取りされてもよい。
【0019】
以下、図面を用いて詳細に説明する。図1Aは本発明の一実施例における立体マーク10の平面図であり、図1Bは同I−I線断面図である。立体マーク10は、表面層1と裏面層2の少なくとも2層が貼り合わされている。この例においては、表面層1は表層1aと裏層1bで構成され、表層1aは織物、編物又は不織布であり、裏層1bはホットメルト樹脂フィルムであり、表層1aと裏層1bはラミネートにより一体化されている。裏面層2も表層2aと裏層2bで構成され、表層2aは下記の織物であり、裏層2bはホットメルト樹脂フィルムであり、表層2aと裏層2bはラミネートにより一体化されている。表層1aは表層2aに比較して相対的に濃色の模様を含む。また、表面層1は少なくとも一部分は切り抜かれて切り抜き部3を形成している。切り抜き部3から表層2aが見え、切り抜き部3から観察される表層2aは表層1aに比較して相対的に明色又は淡色である。裏面層2の表層2aは、横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢を有する織物であることにより、ホログラム様模様を発現する。4は切り抜き残部である。表層1a(濃色の模様)と表層2a(表層1aに比較して相対的に明色又は淡色)との明度L値の差は10〜100であることが好ましい。ここで、明度L値の差は、例えば色差計(コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定することができる。
【0020】
図2は本発明の一実施例における立体マークの切り抜き部3から観察される裏面層2の表層2aの織物の拡大平面図である。この織物は5枚朱子組織の織物であり、1本の緯糸に注目したとき、経糸4本が連続して隠れ、次の1本が表に出る構造である。この構造により、緯糸が浮き上がって横方向に配列して観察される。5枚朱子組織の織物の場合、経5枚朱子組織でも緯5枚朱子組織であってもよく、立体マーク10にしたときに浮き上がり糸が横方向になるように配置する。
【0021】
図3A〜Dは本発明において裏面層2の表層2aに用いるいくつかの織物の織物組織図であり、図3Aは5枚緯朱子組織図、図3Bは6枚緯朱子織組織図、図3C及び図3Dは8枚緯朱子織組織図である。クロのドットが付与されている部分は緯糸が経糸に隠れている部分であり、白抜き部分は緯糸が見える部分である。このような構造の織物であれば、図3A〜Dに示す織物以外であっても使用できる。
【実施例】
【0022】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
(1)表面層
表面層1の表層1aは、ポリエステル繊維のマルチフィラメント仮撚加工糸(トータル繊度:167dtex、フィラメント数:48本)を用いて、22ゲージの丸編み機で編成した、ポリエステル繊維100質量%の変形スムース編地(東洋紡社製“BP−KSC1390”、編組織:3段スムース、ウェル数:30本/インチ、コース数:34本/インチ、目付け:397g/m2)を用いた。また、表面層の裏層1bとして、ポリエステル系ホットメルト樹脂フィルム(日本マタイ社製“PH405”、厚さ:100μm)を用いた。
【0024】
(2)裏面層
裏面層2の表層2aとして、たて糸がナイロン繊維のマルチフィラメント糸(トータル繊度:78dtex、フィラメント数:20本)2本の引き揃え糸であり、よこ糸がナイロン繊維のマルチフィラメント糸(トータル繊度:78dtex、フィラメント数:20本)4本の引き揃え糸であり、織物組織が5枚緯朱子である織物(田村駒社製“SK−A6900”、たて糸密度47本/インチ、よこ糸密度:45本/インチ、目付け:200g/m2)を用いた。裏面層の裏層2bとして、ポリウレタン系ホットメルト樹脂フィルム(ダイセル化学工業社製“2011”、厚さ:100μm)を用いた。
【0025】
(3)立体マークの作製
まず、上記表面層1の表層1aに、文字などを含む模様を昇華転写プリントした(185℃、50秒間)。次いで、昇華転写プリントした表面層をレーザー機(グラフテック社製)でレーザーカットし、図1A−Bに示すように切り抜いた。このとき、裏面層2も、その外縁が表面層1の外縁より1mmぐらい内側に位置するように、レーザーカットした。次いで、表面層1の裏層1bのホットメルト樹脂フィルムを裏面層2の表層2aに接するように重ね合わせて、熱圧着機(小西マーク社製)を用い、160℃の加熱温度で、60秒間プレス加熱(熱圧着加工)し、立体マーク10を得た。上記の熱圧着加工条件で表面層1と裏面層2を仮貼り付けして一体化した。
【0026】
(実施例2)
裏面層の表層2aとして、たて糸がポリエステル繊維のマルチフィラメント生糸(トータル繊度:167dtex、フィラメント数:36本)であり、よこ糸がポリエステル繊維のマルチフィラメント糸(トータル繊度:167dtex、フィラメント数:36本)2本を撚り合わせた合撚糸であり、織物組織が斜文織の変り織である織物(東レ社製“SK−SWM2600”、たて糸密度130本/インチ、よこ糸密度:92本/インチ、目付け:270g/m2)を用いたこと、及び裏面層の裏層2bとして、ポリウレタン系ホットメルト樹脂フィルム(ダイセル化学工業社製“6501”、厚さ:100μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の立体マークを得た。
【0027】
(実施例3)
裏面層の表層2aとして、たて糸がポリエステル繊維のマルチフィラメント糸(トータル繊度:56dtex、フィラメント数:36本)であり、よこ糸がポリエステルのマルチフィラメント仮撚加工糸(トータル繊度:167dtex、フィラメント数:72本)であり、織物組織が5枚緯朱子である織物(東レ社製“SS−9090AB”、たて糸密度:282本/インチ、よこ糸密度:102本/インチ、目付け:181g/m2)を用いたこと、裏面層の裏層2bとして、ポリウレタン系ホットメルト樹脂フィルム(ダイセル化学工業社製“6501”、厚さ:100μm)を用いたこと、及び千鳥縫いで縁取りしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の立体マークを得た。
【0028】
(評価)
実施例1〜3の立体マーク10を、裏面層2の裏層2bが接するようにバスケットボールチームのユニホームに配置し、熱圧着機(小西マーク社製)を用い、加熱温度は160℃の加熱温度で、40秒間熱圧着し、立体マーク10をユニホームに貼り付けた。その結果、切り抜き部3(裏面層の表層2a)は、横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢があり、この光沢部はあたかもホログラムのような模様であった。
【符号の説明】
【0029】
1 表面層
1a 表面層の表層
1b 表面層の裏層
2 裏面層
2a 裏面層の表層
2b 裏面層の裏層
3 切り抜き部
4 切り抜き残部
10 立体マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と裏面層を含む少なくとも2層が貼り合わされたマークであって、
前記表面層は前記裏面層に比較して相対的に濃色の模様を含み、少なくとも一部分は切り抜かれて切り抜き部を形成しており、
前記切り抜き部から観察される前記裏面層は前記表面層に比較して相対的に明色又は淡色であり、かつ横方向に浮き上がらせて配列した糸による光沢を有する織物であることにより、ホログラム様模様を発現することを特徴とする立体マーク。
【請求項2】
前記切り抜き部から観察される裏面層の織物は、斜文織組織又は朱子織組織である請求項1に記載の立体マーク。
【請求項3】
前記表面層の濃色模様は、プリント捺染による模様である請求項1又は2に記載の立体マーク。
【請求項4】
前記表面層は、表層が織物、編物又は不織布であり、裏層が樹脂フィルムであり、前記表層と前記裏層はラミネートにより一体化されている請求項1〜3のいずれかに記載の立体マーク。
【請求項5】
前記裏面層は、前記切り抜き部から観察される表層が織物であり、裏層が樹脂フィルムであり、前記表層と前記裏層はラミネートにより一体化されている請求項1〜4のいずれかに記載の立体マーク。
【請求項6】
前記光沢を有する織物を構成する糸は、酸化チタンを実質的に含まないブライト糸である請求項1〜5のいずれかに記載の立体マーク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−222716(P2010−222716A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68833(P2009−68833)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(594047614)小西マーク株式会社 (1)
【Fターム(参考)】