説明

立体描画セット

【課題】描画された絵を単に平面的でなく、視覚的効果、とりわけ立体的視覚効果が得られるように鑑賞可能な立体描画セットを提供する。
【解決手段】黒色又は暗色の背景台紙11と、前記背景台紙11に対し固定されるとともにこれを被覆する透明シート12と、前記透明シート12上に有彩色で描画可能かつ消去容易な筆記具30とを備えたことを特徴とする立体描画セット10。前記筆記具30は、少なくとも赤色及び青色で描画可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色又は暗色の背景台紙を被覆する透明シート上に、立体視が可能となるような描画をすることが可能な立体描画セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1〜3のように、下絵の上を被覆する透明シート上にフェルトペンやクレヨン等の筆記具で該下絵をなぞるように描画可能な描画セットが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 2009/035800 A1
【特許文献2】実開平7−12198号公報
【特許文献3】実用新案登録第3032776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、下絵を手本としての描画は可能であるが、描かれた絵はあくまで平面的にしか見えないものである。よって、絵を描くこと自体、また、その平面的な絵を見て楽しむ以外の付加的な楽しみ方は提供されていないものであった。
そこで本発明は、描画された絵を単に平面的でなく、視覚的効果、とりわけ立体的視覚効果が得られるように鑑賞可能な立体描画セットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)第1の発明
上記課題に鑑み、本件発明のうち第1の発明に係る立体描画セット10は、黒色又は暗色の背景台紙11と、前記背景台紙11に対し固定されるとともにこれを被覆する透明シート12と、前記透明シート12上に有彩色で描画可能かつ消去容易な筆記具30とを備えたことを特徴とする。
「背景台紙11」とは、黒色又は暗色で一色に塗られた台紙をいう。ここで、暗色とは、各色相において黒色に近い、低明度の色彩をいう。たとえば、暗灰色や濃紺などがこの暗色として挙げられる。なお、台紙の材質は紙、木材、合成樹脂等特に限定はない。この背景台紙11を紙で形成する場合には、たとえば黒画用紙のような、製紙段階で黒又は暗色に着色したものを使用してもよく、また、白色紙の一面を黒色又は暗色で印刷することとしてもよい。また、合成樹脂でこの背景台紙11を形成する場合、黒色又は暗色に着色された樹脂材料で成形することとしてもよく、また、成形された樹脂材料の一面を黒色又は暗色で印刷することとしてもよい。
【0006】
「透明シート12」とは、合成樹脂、ガラス等の、このシートが被覆する背景台紙11を視認可能な程度の透明度を有する材質で形成されたシートである。この透明シート12の表面は、後述の筆記具30による描画及びその消去が可能な程度の堅牢性及び平滑性を備えていることが望ましい。
透明シート12は背景台紙11に対して固定されるものであるが、具体的には様々な固定方法が可能である。たとえば、背景台紙11の周囲を枠体20で囲んで窓状の開口部21を形成し、その開口部21に透明シート12を装着するような方法が可能である。また、透明シート12を可撓性の材料で形成し、背景台紙11と透明シート12とを各々1辺で接着又は溶着することとしてもよい。また、背景台紙11と透明シート12とをファイリングすることで固定してもよい。
【0007】
「筆記具30」とは、透明シート12上に有彩色で描画可能かつ消去容易なものであれば特に限定されるものではない。ここで、「有彩色」とは黒・白及びこれらの混色以外の色で、彩度がプラス値であるものをいう。なお、彩度の値は、各色相において最高値又はそれに近い値であることが望ましい。また、「描画可能」とは、透明シート12の表面に、インク又は芯として形成される色材が容易に付着可能であることをいう。この色材は被覆性の高いものであることが望ましい。また、「消去容易」とは、透明シート12の表面に付着した色材が、その色材に応じた適当な手段、たとえばイレイサー、消しゴム、柔らかい布等を用いて、痕跡を残さない程度に容易に消去され得ることをいう。
【0008】
このようにして、透明シート12上に有彩色の筆記具30で描画された立体画31は、プリズム特性のあるレンズを備えた立体メガネ40を通して見ることで、立体的に鑑賞することが可能となっている。このような立体メガネ40としては、たとえば米国クロマテック社製のクロマデプス(商品名)3Dメガネがある。このような立体メガネ40は、プリズムの分光特性を利用し、左右で色彩ごとに分光視差を生じさせるものである。したがって、この立体メガネ40で透明シート12上に描画された立体画31を鑑賞すると、たとえば赤色は手前に、青色は奧に見えるという視覚効果が得られる。このとき、描画された立体画31の背景は透明シート12を通して背景台紙11の黒色又は暗色バックとなっているが、このような立体的視覚効果は黒色をバックにした場合最も顕著に発揮されることとなっている。
【0009】
(2)第2の発明
本発明のうち第2の発明は、前記第1の発明の特徴に加え、前記背景台紙11と前記透明シート12との間に着脱自在に挿入可能な下絵シート13をさらに備えたことを特徴とする。
すなわち、下絵シート13を背景台紙11と透明シート12との間に挿入することで、下絵14を手本になぞって描画することが可能となっている。そして、描画後は下絵シート12を外せば、上述の第1の発明のように立体メガネ40を使用して立体的な視覚効果を得ることができる。
(3)第3の発明
本発明のうち第3の発明は、前記第1又は第2の発明の特徴に加え、前記背景台紙11と前記透明シート12との間に着脱自在に挿入可能な白色台紙15をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
前記第1の発明の項でも述べたとおり、プリズム特性のあるレンズによる色彩の分光視差を利用した立体的視覚効果は黒色を背景としたときに最も効果的である。しかし、白色を背景とした場合には、黒色背景の場合とは異なり、青緑系が手前に見え、黄色系が奥に見えるようになる。その結果、立体的視覚効果に変化をもたらすことになる。
このように白色台紙15を背景台紙11と透明シート12との間に挿入することで、描画後の立体画31の立体的視覚効果が変化することになる。
(4)第4の発明
本発明のうち第4の発明は、前記第1、第2又は第3の発明の特徴に加え、前記筆記具30は、少なくとも赤色及び青色で描画可能なものであることを特徴とする。
【0011】
前記第1の発明の項で述べたプリズム特性のあるレンズを備えた立体メガネ40による立体的視覚効果は、特に赤色が近くに見え、青色が遠くに見えるように分光視差を生じさせるものである。よって、筆記具30として赤色と青色との2色を最低限備えていれば、この2色の対比による立体的視覚効果を得ることができる。
(5)第5の発明
本発明のうち第5の発明は、前記第4の発明の特徴に加え、前記筆記具30としてさらに、赤色及び青色以外の色相で描画可能であるものを備えたことを特徴とする。
赤色及び青色以外の色相、たとえば橙色、黄色、緑色のような色彩は、前記第1の発明の項で述べたプリズム特性のあるレンズを備えた立体メガネ40による分光視差は、赤色及び青色の中間段階に位置することになる。また紫色の場合は青色よりもより遠くに見えることになる。よってこれらの色彩で描画可能な筆記具30を備えることで、赤色及び青色の筆記具30のみの場合に比べより複雑微妙な立体的視覚効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のように構成されているので、以下に記す効果を奏する。
すなわち、本発明のうち第1の発明の構成によれば、黒色又は暗色の背景台紙に固定されこれを被覆する透明シート上に、有彩色の筆記具で描画し、これをプリズム特性のあるレンズを備えた立体メガネで鑑賞すれば、黒色又は暗色を背景にして左右で色彩ごとの分光視差を生じさせることで、立体的な視覚効果を生じさせることができる。また、描画された絵は容易に消去できるので、何度も繰り返し描画を楽しむことができる。
また、第2の発明の構成によれば、第1の発明の効果に加え、下絵を手本になぞって描画することが可能となるので描画が容易になるとともに、描画後は下絵を外せば第1の発明と同様の立体的な視覚効果を楽しむことができる。
【0013】
さらに、第3の発明の構成によれば、第1又は第2の発明の効果に加え、白色を背景にした立体的視覚効果の変化を容易に楽しむことができる。
また、第4の発明の構成によれば、第1、第2又は第3の発明の効果に加え、赤色が近くに、青色が遠くに見えるような立体的視覚効果を楽しむことが可能となる。
さらに、第5の発明の構成によれば、第4の発明の効果に加え、赤色及び青色のみの場合に比べより複雑微妙な立体的視覚効果を楽しむことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態において、描画前の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態において、描画中の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態において使用される筆記具の一形態の部分断面図(A)と、別の形態の断面図(B)である。
【図4】本発明の第1の実施の形態において使用される固形描画材のうち、円柱状に成形されるもの(A)及び四角柱状に成形されるもの(B)をそれぞれ斜視図で示す。
【図5】本発明の第1の実施の形態において使用される固形描画具の例を斜視図で示す。
【図6】図5のVI−VI断面の一部を拡大して示す。
【図7】鉛筆削り器により切削した図5の固形描画具を斜視図で示す。
【図8】本発明の第1の実施の形態において使用される固形描画具の別の例を斜視図で示す。
【図9】本発明の第1の実施の形態において、描画後の状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態で使用される立体メガネを斜視図で示す。
【図11】本発明の第1の実施の形態において、描画後の状態を示す斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態を斜視図で示す(A)とともに、描画中の状態を斜視図(B)で、及び完成前の状態を平面図(C)でそれぞれ示す。
【図13】本発明の第3の実施の形態を斜視図で示す(A)とともに、描画前の状態(B)及び描画後の状態(C)をそれぞれ斜視図で示す。
【図14】本発明の第3の実施の形態の変形例において、描画前の状態(A)及び描画後の状態(B)をそれぞれ斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
(1)第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態に係る立体描画セット10においては、図1に示すように、長方形の黒色の背景台紙11の周囲に枠体20が形成され、その枠体20の前面の開口部21に透明シート12が装着されている。すなわち透明シート12は、この枠体20によって背景台紙11に固定されているものである。そして枠体20の上辺にはスリット22が形成され、そこから下絵シート13を挿入可能となっている。
下絵シート13を挿入すると、図2に示すように下絵14が透明シート12越しに視認可能となる。この状態で、筆記具30を用いて下絵14を手本になぞって描画することができる。すなわち、描画後の描線は透明シート12の表面に付着しているものである。このとき、筆記具30としては少なくとも赤色及び青色のものを使用することが望ましい。
【0016】
この筆記具30に収納するインク組成物としては、隠蔽剤を含むものが挙げられる。すなわち、黒色又は暗色の背景台紙を被覆して立体的な視覚効果を生じさせるため、高隠蔽性の色材を含有することが好ましい。高隠蔽性の色材としては、金属酸化物、白色の樹脂粒子などが単独に用いられ、あるいは、併用されるのが普通である。特に、金属酸化物の酸化チタン又は酸化亜鉛が好適に用いられ、さらには、酸化チタンが隠蔽力の点で一般的に用いられている。
ところで、透明シート12は合成樹脂、ガラス等からなるものであるので、この筆記具30に収納するインク組成物が水性インクではない、いわゆる油性インクの組成物であれば何ら問題なく筆記及び描画が容易である。しかし、このインク組成物が、いわゆる水性インクであると、表面張力のバランスから、透明シート12には筆記及び描画を行うことが困難である。そこで、このインク組成物が水性インクの場合には、界面活性剤の添加による表面張力の調整が必要となる。用いることのできる界面活性剤としては、インク組成物の性能、安定性等に影響がなければ特に制限はなく何でも使用することができる。
【0017】
以下に、このインク組成物が水性インクの場合の配合組成の例を示す。
(配合例1)
ジョンクリル61J(樹脂分31%、アンモニア中和水溶液;BASFジャパン社製):9重量%
酸化チタン:6重量%
赤色202号:4重量%
サーフィノール465(界面活性剤、日信化学工業社製):0.1重量%
水:残余
上記配合組成のうち、色材(酸化チタン、赤色202号)以外の成分を、先にマグネチックスターラーによって撹拌混合し、樹脂を十分に均一に溶解させた後、色材を添加し、ビーズミルによって1時間分散させて赤インクを調整した。
【0018】
(配合例2)
ジョンクリル61J:10重量%
酸化チタン:4重量%
群青:4重量%
サーフィノール485(界面活性剤、日信化学工業社製):0.1重量%
水:残余
配合例1の赤色202号を群青に入れ替えた以外は、配合例1と同様にして青インクを調整した。
【0019】
ところで、これらの高隠蔽性のインク組成物を用いて筆記及び描画を行う際、書き間違いあるいは描画のはみ出し等の誤りが起こりうる。そのため、「修正用」として黒色又は暗色の背景台紙と同様の黒色のインク組成物が求められる。以下はその配合例である。
(配合例3)
トリエタノールアミン:1.2重量%
ジョンクリル67(BASFジャパン社製):1重量%
カーボンブラック:5重量%
サーフィノール465:0.1重量%
水:残余
配合例1の色材をカーボンブラックに入れ替えた以外は、配合例1と同様にして黒インクを調整した。
【0020】
上記したような水性のインク組成物は、前記筆記具30としての、図3(A)に示すような部分断面図の筆記具36に収容することができる。
この筆記具36の軸本体361は有底筒状でインク収容管を兼ねており、バルブ体362が前方に備えられている。軸本体361内には撹拌子366が封入されており、インクに含まれる酸化チタンあるいはカーボンブラック等の比重の大きな粒子が、軸本体361内で沈降してハードケーキを形成した時に再撹拌を行うことができる。
前記バルブ体362の前方にはペン芯363が配され、先軸部364により軸本体先端部を封止するとともに、バルブ体362及びペン芯363を係止している。バルブ体362には、常にこのバルブ体362を閉じるように押圧するバネ部材362aが含まれている。ペン芯363は、繊維束又は粒子の焼結体からなる連続気泡の多孔質体を含むものから構成されている。この筆記具36を使用する際には、ペン芯363を筆記される透明シート12等に押し当て(ポンピング)、バルブ体362を開放し、インクを流出させ、ペン芯363までインクを染み出させることにより、筆記及び描画が可能となる。
【0021】
前記先軸部にはキャップ体365が装着され、ペン芯363を保護する。
筆記具36は前記の通り、水性インクが収容されるので、これら各部材は主として熱可塑性樹脂によって構成される。前記のバネ部材362aについては、ステンレス製のものが用いられる。
図3(B)の断面図に示す筆記具37は、水性インク組成物を収容する前記筆記具30としての別の形態である。上記筆記具36と同じ部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
この筆記具37は、ペン芯363の代わりに穂筆373が設けられており、毛筆様の描線を引くことが可能となっている。ペン先が穂筆373であるので、前記筆記具36で行うようなポンピング動作を行うことができないため、軸本体371後端に設けられたノック部377をノックする動作がノック棒378を通してバルブ体362へ伝達され、バルブ体362を開閉させる。この筆記具37の撹拌子376は、軸本体371内にノック棒378が挿通されているため、円筒形となっている。
【0022】
本発明においては、上記した通り油性インクも好適に使用することができる。以下に油性インクの配合組成の例を示す。
(配合例4)
酸化チタン:19.7重量%
ロジン変性マレイン酸樹脂:12.3重量%
アルキド樹脂:9.6重量%
Solvent Red 168:1.3重量%
キシレン:残余
上記配合組成のうち、色材(酸化チタン、Solvent Red 168)以外の成分を、先にマグネチックスターラーによって撹拌混合し、樹脂を十分に均一に溶解させた後、色材を添加し、ボールミルによって1時間分散させて赤インクを調整した。
【0023】
(配合例5)
酸化チタン:23.9重量%
ロジン変性マレイン酸樹脂:12.7重量%
アルキド樹脂:8.5重量%
Solvent Blue 58:0.7重量%
キシレン:残余
以上の各成分を配合例4と同様にして青インクを調整した。
(配合例6)
カーボンブラック:7.0重量%
ロジン変性マレイン酸樹脂:12.0重量%
アルキド樹脂:25.0重量%
キシレン:残余
上記配合組成のうち、色材(カーボンブラック)以外の成分を、先にマグネチックスターラーによって撹拌混合し、樹脂を十分に均一に溶解させた後、色材を添加し、ボールミルによって1時間分散させて「修正用」黒インクを調整した。
【0024】
これらの配合例4〜6の油性のインク組成物は図3(A)の部分断面図に示すような筆記具36と同様の筆記具30に収容することができる。
ただし、油性のインクであるので、筆記具30の各部材は熱可塑性樹脂(ナイロン以外)の使用は忌避すべきである。特に軸本体361はアルミ等の金属製であれば問題ない。
なお、本発明においては、前記筆記具30として、前記透明シートに濃く明確に描画できれば固形描画材38でも使用することができる。たとえば、少なくとも樹脂、ワックス類、顔料、二酸化チタン、体質材からなる固形描画材38であって、樹脂としてロジン及び/又はロジンのグリセリンエステル等ロジン変成物を0.5重量%から20重量%、ワックス類として融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はペンタエリスリトール脂肪酸エステルを8重量%から50重量%の範囲で含む固形描画材38を挙げることができる。
【0025】
以下に、上記したような固形描画材38の配合例と製造方法の一例を示す。
(配合例7)
ステアリン酸グリセリド(融点61℃):43重量%
ロジンエステル:16重量%
タルク:18重量%
二酸化チタン:12重量%
パーマネントレッド:11重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、図4(A)に示すような直径8.0mmの赤色の固形描画材38を得た。
【0026】
(配合例8)
ウルシロウ(融点52℃):22重量%
ロジン:9重量%
パラフィンワックス135F(日本精蝋):23重量%
マイクロクリスタリンワックス2045(日本精蝋):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:13重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:150g/10分)
タルク:8重量%
二酸化チタン:10重量%
群青:6重量%
フタロシアニンブルー:4重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、図4(A)に示すような直径8.0mmの青色の固形描画材38を得た。
【0027】
(配合例9)
パラフィンワックス150F(日本精蝋):34重量%
マイクロクリスタリンワックス2045(融点67℃、日本精蝋):10重量%
YSレジンPX800(テルペン樹脂、ヤスハラケミカル):15重量%
タルク:17重量%
二酸化チタン:14重量%
群青:6重量%
フタロシアニンブルー:4重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練した後、加熱溶融させ、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの図4(B)に示すような青色の固形描画材38を得た。
【0028】
(配合例10)
前記配合例7の配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、図5に示すような直径7.0mm、長さ120mmの赤色の固形描画材38を得た。この固形描画材38の外周に、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シート391を図6に示すように5周巻き回し、図5に示すような直径8.0mm、長さ120mmの、前記筆記具30としての固形描画具39を得た。この固形描画具39を、三菱鉛筆製ミニ鉛筆削り器(商品名:ポケットシャープナーDPS−101 PLT)を用いて、図7に示すように先端が尖るように切削した。
【0029】
(配合例11)
前記配合例7の配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、図8に示すような直径7.5mmの赤色の固形描画材38を得た。そして、これを10℃に保持した。一方、ポリプロピレンを射出成形し、直径8.0mm、内径7.5mmの、一端が閉じた筒状の外層容器392を得た(図8参照)。この外層容器30を90℃に保持したまま、前記固形描画材38を挿入し、図8に示すような直径8.0mmの、前記筆記具30としての固形描画具39を得た。この固形描画具39を、三菱鉛筆製ミニ鉛筆削り器(商品名:ポケットシャープナーDPS−101 PLT)を用いて先端が尖るように切削した。
【0030】
これらの配合例7〜9の固形描画材38並びに配合例10及び11の固形描画具39は、透明シート、具体的には、プラスチック、ガラス等の平滑な非吸収面に対しても、クレヨン等に比べ、格段に濃く描画可能である。また、これらのような固形描画材は前記透明シートに描画した場合でも、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具等で容易に消去できる。そのため、前述の液体インクを用いた筆記具とは異なり、画面の修正は容易であり、「修正用」として黒色の描画材を用意する必要はない。仮に、このような「修正用」の描画剤がどうしても必要な場合には、酸化チタンあるいは有彩色の色材の代わりにカーボンブラックを添加し、同様の配合組成を同様の製造方法によって製造することができる。
【0031】
上述の筆記具30にて描画後に下絵シート13を取り外すと、透明シート12越しに背景台紙11が視認可能となり、この黒色を背景にして透明シート12上に描かれた立体画31が見えることになる(図9参照)。この状態で、図10に示す立体メガネ40を使用した鑑賞に供されることになる。
ここで、図10に示す立体メガネ40としては、米国クロマテック社製のクロマデプス(商品名)3Dメガネが用いられる。この立体メガネ40は、紙製のメガネ枠41に、1対のマイクロプリズムレンズ42R,42Lが装着されているものである。そして、右側のマイクロプリズムレンズ42Rは、赤色は右方へ変位し、青色は左方へ変位するような分光特性を備えている。一方、左側のマイクロプリズムレンズ42Lはこの逆に、赤色は左方へ変位し、青色は右方へ変位するような分光特性を備えている。これは、同一の分光特性のマイクロプリズムレンズを、左右で逆向きにメガネ枠41に装着することで可能となる。このような分光特性の結果、立体画31のうち、赤色で描かれた部分の視差は実際の透明シート12上より大きくなるため、その部分は手前にあるように見えることになる。逆に青色で描かれた部分の視差は小さくなるので奥側に見えることになる。
【0032】
このような立体メガネ40を用いて図9のような黒色を背景とした透明シート12上の立体画を見るときには、赤色で描かれた部分は手前に飛び出して見え、一方青色で描かれた部分は奧に引っ込んで見えることで、立体画31は立体的に視認されることとなる。
また、図11に示すように、スリット22から白色台紙15を挿入すると、立体画31は白色を背景とすることになる。この状態で図10の立体メガネ40を用いて鑑賞すると、青緑系が手前に見え、黄色系が奥に見えるようになり、黒色背景の場合とは異なった立体的視覚効果が得られることになる。
もちろん、下絵シート13なしで、自由なイマジネーションに基づいて立体画31を描画することも可能である。
【0033】
そして、透明シート12上に描かれた立体画31は、柔らかい布等で拭き取れば痕跡を残さず容易に消去可能であり、何度でも別の立体画31を描画することが可能である。
(2)第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る立体描画セット10は、図12(A)に示すように、クリアファイル状の外観を呈している。すなわち、図12(C)に示すような、略長方形状の透明な合成樹脂シート50の右半分に黒色のシルク印刷を施すことで、この部分が背景台紙11となる。また、印刷の施されていない左半分は透明シート12となる。この合成樹脂シート50を二つ折りにして合わせた3辺のうちの1辺51を熱圧着すると図12(A)に示すような立体描画セット10が得られる。そして、図12(B)に示すように、透明シート12上に筆記具30を用いて立体画31を描画可能であり、描画後の立体画31は透明シート12越しの背景台紙11を背景にすることで図10に示す立体メガネ40を用いた立体的視覚効果が得られることは前記第1の実施の形態と同様である。また、透明シート12と背景台紙11との間に下絵シート13又は白色台紙15を挿入可能であることも前記第1の実施の形態と同様である。
【0034】
(3)第3の実施の形態
第3の実施の形態に係る立体描画セット10は、図13(A)に示すように、筆記具30としての多色ペンのケース60の蓋部分61として形成されている。すなわち、ケース60の蓋部分61の内側面61aが黒色に塗られており、この部分が背景台紙11となる。そしてこの背景台紙11を被覆するように、透明な合成樹脂製の透明シート12が、その上辺を接着することで固定されている(図13(B)参照)。なお、図13(B)に示すように、背景台紙11と透明シート12との間には下絵シート13が挿入可能であり、筆記具30を用いて透明シート12上に立体画31を描画可能である。描画後は下絵シート13を除去すれば、図13(C)に示すように、透明シート12越しに視認される背景台紙11を背景として立体画31が見えることになる。この状態で図10に示す立体メガネ40を用いた立体的視覚効果が得られることは前記第1の実施の形態と同様である。背景台紙11と透明シート12との間に白色台紙15が挿入可能であることもまた同様である。
【0035】
なお、蓋部分61を含めたケース60自体を黒色の合成樹脂で成形した場合には、そのままでその蓋部分61の内側面61aは背景台紙11として上記と同様な効果を発揮することができる。
また、本実施の形態の変形例として、図14(A)に示すように、透明シート12は可動式の中蓋62として形成することができる。もちろん、蓋部分61の内側面61aは黒色に塗られて背景台紙11となっていることは図13と同様である。また、図14(B)に示すように、透明シート12上に筆記具30を用いて立体画31を描画可能であることもまた同様である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、黒色又は暗色の背景台紙を被覆する透明シート上に有彩色の筆記具で立体画を描画し、それを立体メガネを用いて立体視で鑑賞するような描画セットとして利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 立体描画セット 11 背景台紙 12 透明シート
13 下絵シート 14 下絵 15 白色台紙
20 枠体 21 開口部 22 スリット
30 筆記具 31 立体画
36 筆記具 361 軸本体 362 バルブ体
362a バネ部材 363 ペン芯 364 先軸部
365 キャップ体 366 撹拌子
37 筆記具 371 軸本体 373 穂筆
376 撹拌子 377 ノック部 378 ノック棒
38 固形描画材
39 固形描画具 391 保護シート 392 外層容器
40 立体メガネ 41 メガネ枠
42R 右側のマイクロプリズムレンズ
42L 左側のマイクロプリズムレンズ
50 合成樹脂シート 51 熱圧着された1辺
60 ケース 61 蓋部分 61a 内側面
62 中蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色又は暗色の背景台紙と、
前記背景台紙に対し固定されるとともにこれを被覆する透明シートと、
前記透明シート上に有彩色で描画可能かつ消去容易な筆記具とを備えたことを特徴とする立体描画セット。
【請求項2】
前記背景台紙と前記透明シートとの間に着脱自在に挿入可能な下絵シートをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の立体描画セット。
【請求項3】
前記背景台紙と前記透明シートとの間に着脱自在に挿入可能な白色台紙をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の立体描画セット。
【請求項4】
前記筆記具は、少なくとも赤色及び青色で描画可能なものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の立体描画セット。
【請求項5】
前記筆記具としてさらに、赤色及び青色以外の色相で描画可能であるものを備えたことを特徴とする請求項4記載の立体描画セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−176600(P2012−176600A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171445(P2011−171445)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】